説明

発泡剤として使用可能な不燃性組成物

本発明は熱硬化性ポリマーの製造において発泡剤として使用可能な組成物に関する。より詳細には、本発明は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc)と、トランス−1,2−ジクロロエチレンと、少なくとも1種の不燃性ハイドロフルオロカーボンを含有する組成物及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性ポリマーの製造において発泡剤として使用可能な組成物に関する。より詳細には、本発明は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc)と、トランス−1,2−ジクロロエチレンと、少なくとも1種の不燃性ハイドロフルオロカーボンを含有する組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フォーム(例えばポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォーム)の製造において1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンを発泡剤として使用することは公知である。しかし、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンは引火性であるため、他の化合物(例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(134a)又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(227ea)(米国特許第6080799)号)と併用されている。これらの化合物は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc)よりも沸点が低いので、二成分組成物では365mfcとの併用に起因する問題がある。
【0003】
即ち、高温気候下の保存中の圧力上昇又は選択的蒸発による組成変化の問題を生じることが多い。
【0004】
更に、365mfcの引火性を低下させるための化合物を添加すると高価になることが多いので、発泡剤の費用(価格)が増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願出願人はトランス−1,2−ジクロロエチレンを添加すると上記欠点を制限でき、場合により不燃物質含量を低減できることを今回発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の主題は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc)と、トランス−1,2−ジクロロエチレンと、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(134a)及び1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(227ea)から選択される少なくとも1種の化合物を含有する組成物である。
【0007】
本発明の組成物は365mfc5〜94重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜94重量%と、134a及び/又は227ea1〜60重量%を含有することが好ましい。
【0008】
227eaの場合、特に好ましい組成物は365mfc50〜90重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜30重量%と、227ea2〜21重量%を含有する。
【0009】
134aの場合、特に好ましい組成物は365mfc59〜90重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜30重量%と、134a3〜11重量%を含有する。
【0010】
本発明の組成物は標準測定条件(ASTM規格D3828)下で引火点を示さないという利点がある。
【0011】
365mfc5〜25重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン65〜90重量%と、134a及び/又は227ea2〜20重量%を含有する組成物も有利である。
【0012】
第1の主題の組成物はハイドロクロロフルオロカーボンを含有しないことが好ましい。
【0013】
本発明の組成物は例えばフェノール/ホルムアルデヒド縮合物又はポリウレタン等の熱硬化性ポリマーフォームの製造において発泡剤として使用することができる。本発明の組成物はポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームの製造に特に適している。
【0014】
本発明の第2の主題は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc)と、トランス−1,2−ジクロロエチレンと、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(134a)及び1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(227ea)から選択される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする熱硬化性ポリマーフォーム用発泡剤である。
【0015】
本発明の発泡剤は365mfc5〜94重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜94重量%と、134a及び/又は227ea1〜60重量%を含有することが好ましい。
【0016】
特に好ましい発泡剤は365mfc50〜90重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜30重量%と、227ea2〜21重量%を含有する。
【0017】
365mfc59〜90重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜30重量%と、134a3〜11重量%を含有する発泡剤も好ましい。
【0018】
365mfc5〜25重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン65〜90重量%と、134a及び/又は227ea2〜20重量%を含有する発泡剤も有利である。
【0019】
本発明の発泡剤はハイドロクロロフルオロカーボンを含有しないことが好ましい。
【0020】
ポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームの製造方法は一般に公知であり、一般に有機ポリイソシアネート(ジイソシアネートを含む)を発泡剤の存在下でポリオール又はポリオール混合物と反応させる。
【0021】
本発明の第3の主題は第2の主題の発泡剤の存在下で有機ポリイソシアネート(ジイソシアネートを含む)をポリオール又はポリオール混合物と反応させるポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームの製造方法である。
【0022】
発泡剤の使用量はこうして製造されるフォームに所望される密度によって異なる。この量は一般にポリオール100重量部当たり1〜60重量部である。ポリオール100重量部当たり10〜35重量部が好ましい。
【0023】
ポリイソシアネートとポリオール又はポリオール混合物の反応はアミン及び/又は他の触媒と界面活性剤を使用して活性化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ポリイソシアネートとしては、特に炭素原子数18までの炭化水素基をもつ脂肪族ポリイソシアネート、炭素原子数15までの炭化水素基をもつ脂環式ポリイソシアネート、炭素原子数6〜15の芳香族炭化水素基をもつ芳香族ポリイソシアネート及び炭素原子数8〜15の芳香脂肪族炭化水素基をもつ芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0025】
好ましいポリイソシアネートは2,4−及び2,6−ジイソシアナトトルエン、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート並びにその混合物である。変性ポリイソシアネート(例えばカルボジイミド基、ウレタン基、イソシアヌレート基、尿素基又はビ尿素基を含むもの)も適切であると思われる。
【0026】
ポリオールとしては、特にグリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエーテルポリオール類(例えばアルキレンオキシド又はアルキレンオキシド混合物とグリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールの縮合により得られるもの)、又はポリエステルポリオール類(例えばポリカルボン酸、特に蓚酸、マロン酸、琥珀酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸とグリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールから得られるもの)が挙げられる。
【0027】
アルキレンオキシド、特にエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを芳香族アミン、特に2,4−及び2,6−トルエンジアミン混合物に付加することにより得られるポリエーテルポリオール類も適切である。
【0028】
多くの用例では、ポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームの成分はプレミックスである。より一般には、これらのフォームの処方は2成分としてプレミックスされる。第1の成分(「成分A」とも言う)はイソシアネート又はポリイソシアネート組成物を含む。第2の成分(「成分B」とも言う)はポリオール又はポリオール混合物と、界面活性剤と、触媒と、発泡剤を含む。
【0029】
本発明の第4の主題はポリオールと第2の主題の発泡剤を含有する組成物である。この組成物はポリオール100重量部と発泡剤1〜60重量部を含有することが好ましい。
【0030】
本発明の第4の主題の組成物はポリオール100重量部と、好ましくは365mfc5〜94重量%とトランス−1,2−ジクロロエチレン5〜94重量%と134a及び/又は227ea1〜60重量%から主に構成される発泡剤10〜35重量部を含有すると有利である。
【0031】
ポリオール100重量部と、365mfc5〜25重量%、トランス−1,2−ジクロロエチレン65〜90重量%、及び134a及び/又は227ea2〜20重量%から主に構成される発泡剤10〜35重量部を含有する組成物も有利である。
【0032】
第4の主題の組成物は使用温度範囲内で標準測定条件(ASTM規格D3828)下に引火点を示さないという利点がある。温度範囲は−30〜61℃が好ましい。
【0033】
第4の主題の組成物は更に界面活性剤及び/又は触媒を添加することができる。
【0034】
本発明の第4の主題の組成物は溶剤、エアゾール及び/又は冷却剤として使用することができる。
【実施例1】
【0035】
365mfc86重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン10重量%と、227ea4重量%を含有する組成物を製造した。その後、こうして製造した組成物の引火点を−30℃から沸点までの温度範囲内で標準条件(ASTM規格D3828)下に測定した。
【0036】
この組成物の気泡温度と露点も測定し、2種の温度の差を「グライド」と言う。
【0037】
更に、50℃の気泡圧も測定した。
【0038】
結果
試験温度範囲で引火点は観察されず、1気圧のグライドは4.43K(C)であり、気泡圧は1.79バールであった。
【実施例2】
【0039】
365mfc77重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン20重量%と、227ea3重量%を含有する組成物を製造した。その後、こうして製造した組成物の引火点を−30℃から沸点までの温度範囲内で標準条件(ASTM規格D3828)下に測定した。
【0040】
この組成物の気泡温度と露点も測定し、2種の温度の差を「グライド」と言う。
【0041】
更に、50℃の気泡圧も測定した。
【0042】
結果
試験温度範囲で引火点は観察されず、1気圧のグライドは3.56K(C)であり、気泡圧は1.71バールであった。
【実施例3】
【0043】
365mfc25重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン25重量%と、134a50重量%を含有する組成物を製造した。その後、上記実施例と同一条件下で引火点と気泡圧を測定した。
【0044】
結果
試験温度範囲で引火点は観察されず、気泡圧は6.6バールであった。
【実施例4】
【0045】
365mfc50重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン25重量%と、134a25重量%を含有する組成物を製造した。
【0046】
その後、実施例3と同一条件下で引火点と気泡圧を測定した。
【0047】
結果
試験温度範囲で引火点は観察されず、気泡圧は4.1バールであった。
【実施例5】
【0048】
実施例3で製造した組成物11.2gをポリオールStepanpol PS2412(ポリエステル型ポリオール)100gと混合した。
【0049】
その後、−30℃〜61℃の温度範囲内で標準条件(ASTM規格D3828)下に引火点を測定した。
【0050】
結果
引火点は観察されなかった。
【実施例6】
【0051】
実施例4で製造した組成物12.4gをポリオールStepanpol PS2412 100gと混合した。
【0052】
その後、−30℃〜61℃の温度範囲内で標準条件(ASTM規格D3828)下に引火点を測定した。
【0053】
結果
引火点は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc)と、トランス−1,2−ジクロロエチレンと、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(134a)及び1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(227ea)から選択される少なくとも1種の化合物を含有する組成物。
【請求項2】
365mfc5〜94重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜94重量%と、134a及び/又は227ea1〜60重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
365mfc50〜90重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜30重量%と、227ea2〜21重量%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
365mfc59〜90重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン5〜30重量%と、134a3〜11重量%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
365mfc5〜25重量%と、トランス−1,2−ジクロロエチレン65〜90重量%と、134a及び/又は227ea2〜20重量%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物から構成されることを特徴とする発泡剤。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡剤を使用することを特徴とする熱硬化性ポリマーフォームの製造方法。
【請求項8】
ポリイソシアネートをポリオール又はポリオール混合物と反応させることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
更にポリオールを含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
溶剤、エアゾール及び/又は冷却剤として使用することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−531813(P2007−531813A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506796(P2007−506796)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000615
【国際公開番号】WO2005/108477
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】