説明

発泡壁紙

【課題】アゾジカルボンアミド系発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより発泡樹脂層が形成され、且つ、隣接層としてエチレン−メタクリル酸共重合体含有樹脂層を有する発泡壁紙であって、発泡樹脂層とエチレン−メタクリル酸共重合体含有樹脂層との界面で生じる黄変による意匠性の低下が抑制されている発泡壁紙を提供する。
【解決手段】紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層が順に積層されている発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層は、アゾジカルボンアミド系の熱分解型発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層を発泡させることによって形成した層であり、
(2)非発泡樹脂層は、樹脂成分としてエチレン−メタクリル酸共重合体を含有し、且つ、無機顔料を5〜10重量%含有する、発泡壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面の装飾に有用な、発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙(発泡化粧シート)としては、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂の発泡樹脂層を形成したものが知られている。近年では、環境に配慮して発泡樹脂層には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂などの、ハロゲンを含有しない樹脂が用いられてきている(特許文献1〜3等)。
【0003】
発泡壁紙の層構成としては、例えば、紙質基材上に発泡樹脂層と非発泡樹脂層(非発泡樹脂層A)とを順に積層したものが知られている。このような発泡壁紙において、表面の耐スクラッチ性を高めるために、非発泡樹脂層Aに含まれる樹脂成分としてエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)を用いることが提案されている。
【0004】
しかしながら、非発泡樹脂層Aに含まれる樹脂成分としてEMAAを用いた発泡壁紙には次の問題がある。即ち、発泡剤含有樹脂層を発泡(加熱発泡)させることにより発泡樹脂層を形成する際に、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)系の発泡剤を使用する場合には、発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとの界面で黄変が生じるという問題がある。上記問題は、EMAAとADCA系発泡剤とが反応することにより生じると考えられる。
【0005】
上記黄変は、発泡壁紙の意匠性を損なうおそれがあるため、黄変の発生を抑制するか、又は黄変が生じたとしても、意匠性を損なわないように改善することが求められている。
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紙質基材上に発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとを順に有する発泡壁紙であって、発泡樹脂層がADCA系発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成されるものであり、且つ、非発泡樹脂層Aが樹脂成分としてEMAAを含有する場合でも、発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとの界面で生じる黄変による意匠性の低下が抑制されている発泡壁紙を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、非発泡樹脂層Aに特定量の無機顔料を含有する場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の発泡壁紙に関する。
1. 紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層が順に積層されている発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層は、アゾジカルボンアミド系の熱分解型発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層を発泡させることによって形成した層であり、
(2)非発泡樹脂層は、樹脂成分としてエチレン−メタクリル酸共重合体を含有し、且つ、無機顔料を5〜10重量%含有する、発泡壁紙。
2. 発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層は、同時溶融押出しにより形成される、上記項1に記載の発泡壁紙。
3. 無機顔料は、二酸化チタン、亜鉛華、鉛白、チタン酸ストロンチウム及びリトポンからなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1又は2に記載の発泡壁紙。
4. 無機顔料は、二酸化チタンである、上記項1又は2に記載の発泡壁紙。
5. エチレン−メタクリル酸共重合体は、メタクリル酸含有量が15重量%以下である、上記項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。
6. 紙質基材と発泡樹脂層との間に更に非発泡樹脂層が形成されている、上記項1〜5のいずれかに記載の発泡壁紙。
7. シート最表面層の上からエンボス加工が施されている、上記項1〜6のいずれかに記載の発泡壁紙。

以下、本発明の発泡壁紙について詳細に説明する。
【0009】
1.発泡壁紙
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層が順に積層されている発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層は、アゾジカルボンアミド(ADCA)系の熱分解型発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層を発泡させることによって形成した層であり、
(2)非発泡樹脂層は、樹脂成分としてエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)を含有し、且つ、無機顔料を5〜10重量%含有する、ことを特徴とする。
【0010】
紙質基材
紙質基材の材質は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
【0011】
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0012】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
【0013】
非発泡樹脂層B
本発明では、必要に応じて紙質基材と発泡樹脂層との間に非発泡樹脂層(非発泡樹脂層B)が形成されていてもよい。特に、非発泡樹脂層Bが接着剤層として形成される場合は、紙質基材と発泡樹脂層との優れた密着性が得られる。
【0014】
非発泡樹脂層Bとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等を好適に用いることができる。非発泡樹脂層Bは樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。
【0015】
非発泡樹脂層Bの厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0016】
発泡樹脂層
発泡樹脂層は、ADCA系発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成された層である。発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分としては限定されないが、例えば、EVA、EMAA等が好ましい。これらの樹脂成分は2種以上を用いてもよい。
【0017】
発泡剤含有樹脂層には、各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、セル調整剤、無機充填剤、顔料、安定剤、滑剤などが挙げられる。例えば、発泡剤含有樹脂層は、EVA、無機充填剤、顔料、ADCA系発泡剤及びセル調整剤を含有する樹脂組成物により好適に形成できる。
【0018】
樹脂成分としてEVAを用いる場合には、酢酸ビニル含有量(VA含有量)は限定的ではないが、特に5〜30重量%程度であることが好ましく、10〜20重量%程度がより好ましい。
【0019】
樹脂成分としてEMAAを用いる場合には、メタクリル酸含有量(MAA含有量)は限定的ではないが、特に15重量%以下が好ましく、10〜15重量%がより好ましい。
【0020】
樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は特に限定されないが、5〜75g/10分程度が好ましく、30〜70g/10分程度がより好ましい。
【0021】
なお、本明細書のMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K 6922記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」の温度を120℃としたものである。
【0022】
発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は限定されず、発泡壁紙の種類、用途等に応じて適宜設計することができる。
【0023】
発泡剤としては、ADCA系発泡剤を含む。ADCA系発泡剤は熱分解型発泡剤であり、熱を加えることにより発泡する。本発明では、ADCA系発泡剤のほかに、公知の熱分解型発泡剤を併用してもよい。発泡剤の含有量は、所望の発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であり、発泡剤は、樹脂成分100重量部に対して、1〜20重量部程度とすることが好ましい。
【0024】
セル調整剤は、例えばステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を使用することができる。セル調整剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して、0.3〜10重量部程度が好ましく、1〜5重量部程度がより好ましい。
【0025】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して0〜100重量部程度が好ましく、20〜70重量部程度がより好ましい。
【0026】
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して10〜50重量部程度が好ましく、15〜30重量部程度がより好ましい。
【0027】
発泡剤含有樹脂層を発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すれば良い。
【0028】
非発泡樹脂層A
非発泡樹脂層(非発泡樹脂層A)は、主として発泡樹脂層を保護するものである。本発明では、樹脂成分としてEMAAを含有するものを用いる。EMAAを用いることにより、発泡壁紙の耐スクラッチ性を高めることができる。
【0029】
前記共重合体におけるメタクリル酸の含有量は15重量%以下が好ましく、10〜15重量%程度がより好ましい。上記範囲に設定することにより、耐スクラッチ性の向上効果が得られ易い。
【0030】
非発泡樹脂層Aの厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0031】
また、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100重量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0032】
前記樹脂成分のメルトフローレート値は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に20〜80g/10分、さらに25〜60g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。
【0033】
本発明では、非発泡樹脂層Aは無機顔料を5〜10重量%含有する。かかる無機顔料としては白色顔料であることが好ましく、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、鉛白、チタン酸ストロンチウム、リトポン(酸化亜鉛と硫化亜鉛との混合顔料)が挙げられる。これらの白色顔料の中でも、二酸化チタンが好ましい。無機顔料の平均粒子径や形状は限定されず、顔料として使用する場合と同等でよい。
【0034】
このような無機顔料を用いることにより、発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとの界面で黄変が生じたとしても、それによる意匠性の低下を緩和することができる。また、非発泡樹脂層Aが無機顔料を含有することにより、発泡壁紙の耐スクラッチ性の向上にも寄与すると共に、発泡壁紙をカッターで裁断する際のカッター加工性の向上にも寄与する。
【0035】
絵柄模様層
本発明では、非発泡樹脂層Aのおもて面に必要に応じて絵柄模様層を有してもよい。
【0036】
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0037】
絵柄模様層は、例えば、非発泡樹脂層Aのおもて面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤(又は分散媒)を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0038】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0039】
結着材樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0040】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
【0041】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0042】
表面保護層(オーバーコート層)
本発明では、絵柄模様層の表面に艶調整及び/又は絵柄模様層の保護を意図して表面保護層を有してもよい。表面保護層の種類は限定的ではない。艶調整を目的とする表面保護層であれば、例えば、シリカなどの既知フィラーを含む表面保護層がある。表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層と表面保護層との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
【0043】
発泡壁紙の表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性、絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0044】
表面保護層の厚みは限定的ではないが、0.1〜15μm程度が好ましい。
【0045】
エンボス
本発明では、適宜エンボス模様を付してもよい。この場合、発泡壁紙の最表面層(紙質基材と反対側)の上からエンボス加工すれば良い。エンボス加工は、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施することができる。例えば、最表面層が表面保護層である場合は、そのおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0046】
2.発泡壁紙の製造方法
発泡壁紙の製造方法は特に限定されない。例えば、紙質基材上に発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとを有する発泡壁紙は、紙質基材上に発泡剤含有樹脂層と非発泡樹脂層Aとを同時溶融押出しにより製膜後、加熱により発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層とすることにより得られる。
【0047】
同時溶融押出しには、2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。この場合、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物及び非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すればよい。この方法では、同時押出し積層体は、紙質基材上に同時積層(成膜)する。紙質基材上に押出しと同時に積層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため紙質基材と接着される。
【0048】
なお、予め2種2層を同時成膜した積層体を用意して、それを紙質基材上に載せて、熱ラミネートすることにより紙質基材と接着してもよい。
【0049】
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合であって、発泡剤含有樹脂層を押出し成形により形成する場合には、押出し成形機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これがシート表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記非発泡樹脂層A及び非発泡樹脂層Bを、発泡剤含有樹脂層とともに同時押出し成形することが好ましい。このように発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し成形することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。なお、本発明では、非発泡樹脂層Aに無機顔料を含むが、含有量は5〜10重量%と低く抑えられているため、非発泡樹脂層Aを原因とする目やには発生し難い。
【0050】
紙質基材上に同時積層後は、発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する。加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【0051】
前記加熱処理の前に、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋できるため、発泡壁紙の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。なお、架橋は、化学架橋剤(架橋剤又は架橋助剤ともいう。)を用いて実施することもできる。
【0052】
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよい。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋剤は、樹脂成分100重量部に対して0〜10重量部程度とすることが好ましく、特に1〜4重量部とすることがより好ましい。
【0053】
電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を形成した場合には、電子線照射によって表面保護層を硬化させることができる。このような電子線照射は、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂を架橋させるために行う電子線照射と同時(同処理)とできる。つまり、発泡剤含有樹脂層、非発泡樹脂層A、絵柄模様層及び電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を順に形成後、電子線照射を行って、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂を架橋するとともに表面保護層に含まれる樹脂を硬化させることができる。
【0054】
絵柄模様層を有する発泡壁紙を製造する場合には、上記加熱処理前に非発泡樹脂層の表面に絵柄模様層を形成することが好ましい。絵柄模様層の形成方法は、前記の通りとすれば良い。
【発明の効果】
【0055】
本発明の発泡壁紙は、非発泡樹脂層Aに5〜10重量%の無機顔料を含有するため、発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとの界面で黄変が生じたとしても、それによる意匠性の低下が抑制されている。また、非発泡樹脂層Aが無機顔料を含有することは発泡壁紙の耐スクラッチ性の向上にも寄与すると共に、発泡壁紙をカッターで裁断する際のカット加工性の向上にも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0057】
実施例1
3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に厚み10μm/100μm/10μmになるように裏打紙に押出し製膜した。これにより、裏打紙/非発泡樹脂層B/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Aからなる積層体を得た。
【0058】
押出し条件は、非発泡樹脂層Aを形成するための樹脂組成物を収容したシリンダー温度は140℃とし、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物を収容したシリンダー温度は120℃とし、非発泡樹脂層Bを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は100℃とした。また、ダイス温度はいずれも120℃とした。
【0059】
上記積層体に対して、非発泡樹脂層Aの側から電子線(200KV,3Mrad)を照射して特に発泡剤含有樹脂層と非発泡樹脂層Bとを樹脂架橋した。また、非発泡樹脂層A上にコロナ放電処理を行った。
【0060】
次に、非発泡樹脂層A上にEVA系水性エマルジョンを塗布(2g/m)してプライマー層を形成し、更に水性インキ「ハイドリック」(大日精化工業製)により布目絵柄を印刷した。
【0061】
次に、布目絵柄を印刷した積層体をギアオーブンで加熱(220℃×30秒)し、発泡剤含有樹脂層を発泡させた。
【0062】
最後に、上記発泡体に対して布目パターンの凹凸エンボスを施して発泡壁紙を得た。
【0063】
各層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
【0064】
非発泡樹脂層Aは、EMAA「ニュクレルN1560(MAA含有量:15%)、三井・デュポン ポリケミカル製」90重量部及び二酸化チタン(無機顔料)「タイピュアR−108、デュポン製」10重量部からなる樹脂組成物により形成した。
【0065】
発泡剤含有樹脂層は、EVA「エバテート H4011(VA含有量:20%、融点:84℃)、住友化学製」100重量部、炭酸カルシウム「ホワイトンH、東洋ファインケミカル製」40重量部、二酸化チタン「タイピュアR−108、デュポン製」20重量部、ADCA系発泡剤「ビニホールAC#3、永和化成工業製」4重量部、安定剤「アデカスタブOF−101、ADEKA製」5重量部及び架橋助剤「オプスターJUA−702、JSR製」1重量部からなる樹脂組成物により形成した。
【0066】
上記2種類の樹脂組成物としては、各成分を混練後にストランドカットして得られるペレットを用いた。
【0067】
非発泡樹脂層Bは、EVA「エバフレックスEV150(VA含有量:33%、融点:61℃)、三井・デュポン ポリケミカル製」により形成した。
【0068】
実施例2
発泡剤含有樹脂層を、EMAA「ニュクレルN035C(MAA含有量:10%)、三井・デュポン ポリケミカル製」100重量部、炭酸カルシウム「ホワイトンH、東洋ファインケミカル製」40重量部、二酸化チタン「タイピュアR−108、デュポン製」20重量部及びADCA系発泡剤「ビニホールAC#3、永和化成工業製」4重量部からなる樹脂組成物により形成した以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を得た。
【0069】
比較例1
非発泡樹脂層Aを、EMAA「ニュクレルN1560(MAA含有量:15%)のみから形成した以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を得た。
【0070】
比較例2
非発泡樹脂層Aを、EMAA「ニュクレルN1035(MAA含有量:10%)のみから形成した以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を得た。
【0071】
比較例3
非発泡樹脂層Aを、EMAA「ニュクレルN0200H(MAA含有量:2%)のみから形成した以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を得た。
【0072】
比較例4
非発泡樹脂層Aの二酸化チタン含有量を15重量部とした以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を得た。
【0073】
比較例5
非発泡樹脂層Aの二酸化チタン含有量を4重量部とした以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を得た。
【0074】
試験例1
実施例及び比較例で作製した発泡壁紙に関して、1)製造時の押出し加工性、2)発泡壁紙の黄変の程度、3)発泡壁紙の耐スクラッチ性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0075】
各評価項目の評価基準は、次の通りとした。
【0076】
1)押出し加工性
○…製膜時に目やにの発生が認められず、均一に製膜できる。
×…製膜時に目やにの発生が認められて、表面に筋が残る。
【0077】
2)黄変の程度
発泡壁紙の黄色味を色差計で測定することにより評価した。色差計としては、CIE1976Lab表色系(JIS Z 8729)の色差計を用いた。色差計を用いて発泡壁紙の白度を測定し、黄色味の程度(b値)により評価した。
◎…5未満
○…5以上5.5未満
△…5.5以上6未満
×…6以上
3)耐スクラッチ性
各化粧シートのおもて面の耐スクラッチ性を、壁紙製品規格協議会制定の表面強化壁紙の評価強化性能試験方法によって評価した。
◎…表面に跡が残らない
○…表面に僅かに跡が残る
△…樹脂層が僅かに破れる
×…樹脂層が破れて見える
【0078】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層が順に積層されている発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層は、アゾジカルボンアミド系の熱分解型発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層を発泡させることによって形成した層であり、
(2)非発泡樹脂層は、樹脂成分としてエチレン−メタクリル酸共重合体を含有し、且つ、無機顔料を5〜10重量%含有する、発泡壁紙。
【請求項2】
発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層は、同時溶融押出しにより形成される、請求項1に記載の発泡壁紙。
【請求項3】
無機顔料は、二酸化チタン、亜鉛華、鉛白、チタン酸ストロンチウム及びリトポンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の発泡壁紙。
【請求項4】
無機顔料は、二酸化チタンである、請求項1又は2に記載の発泡壁紙。
【請求項5】
エチレン−メタクリル酸共重合体は、メタクリル酸含有量が15重量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項6】
紙質基材と発泡樹脂層との間に更に非発泡樹脂層が形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項7】
シート最表面層の上からエンボス加工が施されている、請求項1〜6のいずれかに記載の発泡壁紙。

【公開番号】特開2008−81885(P2008−81885A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263200(P2006−263200)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】