説明

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体

【課題】優れた熱安定性と融着率を有する発泡粒子及び発泡成形体を与えうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂と、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と、発泡剤とを少なくとも含み、前記脂肪族アミド系化合物が、前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部の含有量で前記ポリスチレン系樹脂中に内在されることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、加熱による平均気泡径の変動の少ない発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、樹脂粒子への発泡剤の含浸工程と、発泡剤含有樹脂粒子の常温(例えば、25℃)下での熟成工程とを経ることにより製造されていた。熟成工程には、長期間(通常、数日〜数十日間)を要していた。このような熟成工程を施すことなく発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させると、得られた発泡粒子の気泡が不均一になったり、気泡が粗大になったりする。
熟成工程を施した後の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の気泡は、この粒子の保管状態によって影響を受ける。即ち、保管時の温度が高温である場合、短時間(例えば温度が35℃の場合、数時間)で熟成工程による気泡の不均一性の防止及び粗大化の防止の効果が失われることがある。このような熟成の効果が失われる現象は、逆熟成と一般に称されている。
【0003】
上記のような不均一な気泡及び/又は粗大な気泡を含む発泡粒子からは、そのような気泡の存在により、所定の形状や物性を有する発泡成形体を得られないことがあった。このため不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生を抑制しうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の提供が望まれていた。
不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生を抑制しうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する技術として、特開2003−335891号公報(特許文献1)に記載された技術が知られている。この公報では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に、気泡調整剤を含有させることにより、不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生が抑制できるとされている。
【0004】
上記公報では、気泡調整剤として、メタクリル酸メチル系共重合体、タルク、脂肪族ビスアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられており、その内、脂肪酸ビスアミドが好ましいとされている。更に、脂肪族ビスアミドとして、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスミスチリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドが挙げられ、実施例では、エチレンビスステアリン酸アミドのみの使用による効果が確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−335891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記公報に記載された技術では、気泡調整剤を添加しない場合より、若干、不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生を抑制できるものの、未だ不十分であった。そのため、これら気泡の発生をより抑制しうる技術の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、種々の気泡調整剤による上記抑制効果を確認した。その結果、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物が、高い抑制効果を示すことを見出し本発明に至った。
かくして本発明によれば、ポリスチレン系樹脂と、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と、発泡剤とを少なくとも含み、
前記脂肪族アミド系化合物が、前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部の含有量で前記ポリスチレン系樹脂中に内在されることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られた発泡粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記発泡粒子を発泡成形して得られた発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡粒子及び発泡成形体の不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生をより抑制しうる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。また、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、高温下で保管した場合でも逆熟成が生じ難い。
【0010】
また、脂肪族アミド系化合物が、1つのアミン化合物と、1つ又は2つのヒドロキシ基を有する脂肪酸とのアミドであり、脂肪酸が、10〜50の炭素数を有する酸である場合、上記気泡の発生を更に抑制できる。
更に、脂肪族アミド系化合物が、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドから選択される場合、上記気泡の発生を更に抑制できる。
また、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、それを発泡して得られた発泡粒子の平均気泡径と、それを45℃で24時間の熱処理に付し、次いで発泡して得られた発泡粒子の平均気泡径との差が±6μm未満となる、熱安定性を有する場合、上記気泡の発生が更に抑制された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の熱処理前の発泡粒子の断面写真である。
【図2】実施例1の熱処理後の発泡粒子の断面写真である。
【図3】比較例3の熱処理後の発泡粒子の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(以下、発泡性樹脂粒子と称する)は、ポリスチレン系樹脂と、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と、発泡剤とを少なくとも含む。
(1)ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物(以下、ヒドロキシ基含有アミド系化合物とも称する)
ヒドロキシ基含有アミド系化合物は、気泡調整剤としての役割を有し、その分子中にヒドロキシ基を有している。発明者は、ヒドロキシ基が、不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生をより抑制するものと考えている。このような気泡の発生は、ヒドロキシ基含有アミド系化合物についての示唆のない上記公報からは得られない本発明に特有の効果である。更に、ヒドロキシ基の存在及び不存在が上記気泡の発生の抑制に与える影響を実施例にて、発明者は確認している。
ヒドロキシ基含有アミド系化合物には、例えば、1つのアミン化合物と1つのヒドロキシ基を有する脂肪酸とのアミド、1つのアミン化合物と、2つのヒドロキシ基を有する脂肪酸とのアミドを使用できる。前者は、ヒドロキシ基含有脂肪酸アミドであり、後者は、ヒドロキシ基含有脂肪酸ビスアミドである。
【0013】
ここで、脂肪酸は、10〜50の炭素数を有する酸から選択することが好ましい。炭素数が10より少ない場合、脂肪酸の臭気が強くなり、特に、食品用途には用いることが困難となることがある。一方、炭素数が50より多い場合、脂肪酸の可塑効果が弱くなり、型内発泡成形時に、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士の融着性が不充分となることがある。より好ましい炭素数は、14〜45である。具体的な脂肪酸としては、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
また、ヒドロキシ基は、脂肪酸中に少なくとも1つ存在している必要がある。ヒドロキシ基の数は、2個以上であってもよいが、製造コストの観点から、1つであることが好ましい。ヒドロキシ基の位置は、特に限定されない。
【0014】
アミン化合物としては、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等の1つのアミノ基有するアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等の1つのアミノ基を有するアミン等の脂肪族第一アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等の脂肪族第二アミン等の飽和脂肪族アミン;アリルアミン、ジアリルアミン等の不飽和脂肪族アミン;シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン等の飽和脂環族アミン;アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、フェニレンジアミン等の芳香族アミンが挙げられる。
具体的な脂肪族アミド系化合物としては、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0015】
(2)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。
また、ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体も挙げられる。
上記スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0016】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマー由来の成分が主成分(50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは99.8重量%以上)を占めることが好ましい。更にポリスチレン系樹脂は、スチレン由来の成分を50重量%以上含有していることが好ましく、ポリスチレンのみからなることがより好ましい。
更に、ポリスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量は、20万〜50万が好ましい。20万より小さいと、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡成形体の機械的強度が低下することがある。一方、50万より大きいと、発泡性樹脂粒子の発泡性が低下し、高倍率の発泡成形体を得ることができないことがある。より好ましい分子量は、24万〜40万である。
【0017】
(3)ポリスチレン系樹脂とヒドロキシ基含有アミド系化合物の含有量
ヒドロキシ基含有アミド系化合物は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部の含有量でポリスチレン系樹脂中に内在されている。0.001重量部より少ないと、不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生の抑制効果が十分得られないことがある。1重量部より多いと、発泡成形体を構成する発泡粒子同士の融着性が不十分になり、発泡成形体の物性が劣ることがある。好ましい含有量は、0.01〜0.50重量部であり、より好ましい含有量は、0.02〜0.30重量部である。
【0018】
ヒドロキシ基含有アミド系化合物は、ポリスチレン系樹脂粒子に内在されていることが重要である。ここで、内在とは、粒子表面に存在するのではなく、粒子の内部に存在し、粒子を水洗しただけでは容易に除去されない状態であることを意味する。なお、内在していることは、例えば、ヒドロキシ基含有アミド系化合物に特有の置換基(例えば、ヒドロキシ基、アミノ基)のピークをIRのような測定機器で検出することにより確認できる。
【0019】
(4)発泡剤
発泡剤は、発泡性樹脂粒子内に存在している。
発泡剤としては、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、ノルマルヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、HCFC−141b、HCFC−142b、HCFC−124、HFC−134a、HFC−152a等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭素水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
発泡剤の使用量は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは2〜12重量部、より好ましくは3〜9重量部である。
【0020】
(5)他の成分
発泡性樹脂粒子は、公知の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、展着剤、発泡助剤、難燃剤、難燃助剤、気泡調整剤、充填剤、滑剤、着色剤等が挙げられる。
融着促進剤としては、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセライド、カプリン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド等が挙げられる。融着促進剤は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.003〜0.009重量部含まれていることが好ましい。0.003重量部より少ないと、十分な融着促進効果が得られないことがある。0.009重量部より多いと、予備発泡時のブロッキング量の発生が多くなることがある。より好ましい含有量は、0.003〜0.006重量部である。
【0021】
ブロッキング防止剤としては、ステアリン酸亜鉛、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。ブロッキング防止剤は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.2〜0.8重量部含まれていることが好ましい。0.2重量部より少ないと、ブロッキング防止効果が十分でないことがある。0.8重量部より多いと、成形時の融着が阻害されることがある。より好ましい含有量は、0.3〜0.7重量部である。
展着剤としては、ポリエチレングリコール、ポリブテン、シリコンオイル等が挙げられる。展着剤は、発泡性樹脂粒子100重量部に対して、0.02〜0.08重量部含まれていることが好ましい。0.02重量部より少ないと、十分な展着効果が得られないことがある。0.08重量部より多いと、粒子がべとつき、被覆した薬剤が移送中に多く剥離してしまうことがある。より好ましい含有量は、0.01〜0.04重量部である。
【0022】
発泡助剤としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、フタル酸ジオクチル、テトラクロロエチレン等が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。
また、難燃助剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物が挙げられる。
酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート等が挙げられる。
【0023】
(6)発泡性樹脂粒子の形状
発泡性樹脂粒子の形状は、特に限定されず、球形、円筒状、不定形等のいずれの形状も取りえる。この内、成形型内への充填性を考慮すると、球形又は円筒状であることが好ましい。
発泡性樹脂粒子は、0.2〜1.0mmの間の粒子径を有していることが好ましい。粒子径が0.2mm未満では、易揮発性発泡剤の逸散速度が速すぎてビーズライフが短くなることがある。粒子径が1.0mmよりも大きいと、発泡粒子の粒子径が大きくなるため、成形型内への充填性が劣ることがある。より好ましい粒子径は、0.2〜0.7mmの間である。粒子径の調整は、所望する粒子径に対応する目開きの篩を用いて篩うことで行うことができる。また、発泡性樹脂粒子は、0.2〜0.6mmのメジアン径を有していることが好ましい。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、それを発泡して得られた発泡粒子の平均気泡径と、それを45℃で24時間の熱処理に付し、次いで発泡して得られた発泡粒子の平均気泡径との差が±6μm未満となる、熱安定性を有している。
【0024】
(7)発泡性樹脂粒子の製造方法
発泡性樹脂粒子は、例えば、ヒドロキシ基含有アミド系化合物存在下で、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。
ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができる。例えば、
(i)押出機で溶融混練したポリスチレン系樹脂をストランド状に押し出し、ストランドをカットしてポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法、
(ii)水性媒体、スチレン系モノマー及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系モノマーを懸濁重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造する懸濁重合法、
(iii)水性媒体及びポリスチレン系樹脂の種粒子をオートクレーブ内に供給し、種粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系モノマーを連続的にあるいは断続的に供給して、種粒子にスチレン系モノマーを吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させてポリスチレン系樹脂粒子を製造するシード重合法等
により得られたポリスチレン系樹脂粒子が挙げられる。なお、種粒子は、上記(ii)の懸濁重合法により得られた粒子を分級することで入手できる。
【0025】
上記懸濁重合法及びシード重合法において用いられる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、イソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシ−3、3、5トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0026】
水性媒体中にポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性懸濁液は、上記懸濁重合法又はシード重合法による重合後の反応液を水性懸濁液として用いても、あるいは、上記懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を反応液から分離し、このポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成してもよい。
水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、アルコール等が挙げられル。この内、水が好ましい。
【0027】
また、上記懸濁重合法又はシード重合法において、スチレン系モノマーを重合させる際に、スチレン系モノマーの液滴又は種粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよい。このような懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機塩等が挙げられる。難水溶性無機塩を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
【0028】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、β−テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホネート等が挙げられる。この内、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0029】
懸濁重合法又はシード重合法によって得られたポリスチレン系樹脂粒子を別途用意した水性媒体に懸濁させて水性懸濁液を形成する場合にも、ポリスチレン系樹脂粒子の分散性を安定させるために、上述の懸濁安定剤やアニオン界面活性剤を水性媒体中に添加してもよい。
この際、難水溶性無機塩の水性媒体中への添加量は、水性媒体100重量部に対して0.2〜2重量部であることが好ましい。0.2重量部より少ないと、水性媒体中におけるポリスチレン系樹脂粒子の分散性が低下し、ポリスチレン系樹脂粒子が塊状になってしまうことがある。2重量部より多いと、ポリスチレン系樹脂粒子を分散させてなる水性媒体の粘性が上昇して、ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に均一に分散できないことがある。
【0030】
発泡剤のポリスチレン系樹脂粒子への含浸は、ヒドロキシ基含有アミド系化合物の存在下であれば、スチレン系モノマーの重合後の粒子に行ってもよく、成長途上粒子に行ってもよい。重合の途中での含浸は、水性媒体中で含浸させる方法(湿式含浸法)により行うことができる。重合の途中での含浸は、通常重合後期に行うことが好ましい。重合後の含浸は、湿式含浸法か、又は媒体非存在下で含浸させる方法(乾式含浸法)により行うことができる。この内、ヒドロキシ基含有アミド系化合物を粒子に内在させる観点から、重合後に発泡剤を含浸することが好ましい。
重合後の発泡剤の含浸は、80〜120℃の加温下で1〜4時間行うことが好ましい。更に、必要に応じて加圧下で行ってもよい。
【0031】
発泡性樹脂粒子は、発泡剤の含浸後に、所定の粉末成分量にするために、適宜洗浄される。ここで、製造工程中、分散安定剤に無機塩を使用している場合は塩酸等の強酸により、無機塩を水溶性の塩にして取り除くことが好ましい。
次に、発泡性樹脂粒子の表面に融着促進剤等の他の成分を塗布してもよい。塗布する方法としては攪拌機中で他の成分と発泡性樹脂粒子とを攪拌するのが好ましい。攪拌機としてはスーパーミキサー、タンブラーミキサー、レディゲミキサー等の攪拌機が用いられる。
【0032】
(発泡粒子)
発泡粒子は、発泡性樹脂粒子を発泡させて得ることができる。得られた発泡粒子は、ヒドロキシ基含有アミド系化合物の作用により、不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生が抑制されている。発泡粒子は、例えば、クッションの詰め物としてそのまま使用できる。また、発泡成形体の原料としても使用できる。後者の場合、発泡粒子は、通常、予備発泡粒子と称される。
発泡粒子は0.01g/cm3以上の嵩密度を持つことが好ましい。嵩密度が0.01g/cm3を下回ると発泡成形体の強度が低下することがある。発泡粒子を発泡成形体の原料として使用する場合、発泡粒子は0.2g/cm3以下の嵩密度を持つことが好ましい。0.2g/cm3を下回ると、生産性が低下することがある。より好ましい嵩密度は、0.01〜0.2g/cm3の範囲である。
【0033】
(発泡成形体)
発泡成形体は、発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで製造できる。
得られた発泡成形体は、ヒドロキシ基含有アミド系化合物の作用により、不均一な気泡及び/又は粗大な気泡の発生が抑制されている。このような発泡成形体は、油脂成分を含有する飲食品、例えば、即席麺、フライドチキン、脂肪含有食品、レギュラーコーヒーや、特に発泡成形体に対する浸透性が高いカレー等の容器として用いられるのが好適である。その他、家庭用エアーコンディショナー等に用いられるドレンパン(受け皿)、携帯用アイスボックス等の容器としても有用である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各種測定法を下記する。
<メジアン径>
メジアン径とはD50で表現される値である。具体的には、ふるい目開き4.00mm、目開き3.35mm、目開き2.80mm、目開き2.36mm、目開き2.00mm、目開き1.70mm、目開き1.40mm、目開き1.18mm、目開き1.00mm、目開き0.85mm、目開き0.71mm、目開き0.60mm、目開き0.50mm、目開き0.425mm、目開き0.355mm、目開き0.300mm、目開き0.250mm、目開き0.212mm、目開き0.180mmのJIS標準ふるいで分級し、その結果から得られた累積重量分布曲線を元にして累積重量が50%となる粒子径をメジアン径と称する。
【0035】
<重量平均分子量>
重量平均分子量は、以下の方法で測定されたスチレン換算重量平均分子量をいう。
即ち、ポリスチレン系樹脂30mgをTHF10ミリリットルで溶解する。得られた溶液を、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した後、クロマトグラフを用いて平均分子量を下記条件にて測定する。
測定装置:HLC−8320GPC(東ソー社製)
カラム :TSKgel SuperMultiporeHZ−M ×2
検出器 :HLC−8320GPC内蔵RI検出器/UV−8320
検出条件:Pol(+)、Res(0.5s)/λ(254nm)、Pol(+)、Res(0.5s)
濃度:0.2wt%
注入量:10μl
圧力:3.5Mpa
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
溶離液:THF
流量:0.35ml/分
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製商品名「shodex」重量平均分子量:1030000及び東ソー社製の重量平均分子量:5480000,3840000,355000,102000,37900,9100,2630,495のポリスチレン
【0036】
<嵩密度>
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VmlをJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
【0037】
<発泡粒子の熱安定性試験>
発泡性樹脂粒子を20℃で5日間保管する。保管後の発泡性樹脂粒子を60gずつの2つに分ける。一方の発泡性樹脂粒子60gを1〜5分間発泡させることで、嵩密度0.025g/cm3の発泡粒子を得る。また、他方の発泡性樹脂粒子60gをポリエチレン製の袋に入れる。この状態で発泡性樹脂粒子を45℃で24時間の熱処理に付す。熱処理後の発泡性樹脂粒子60gを1〜5分間発泡させることで、嵩密度0.025g/cm3の発泡粒子を得る。
得られた発泡粒子の平均気泡径を下記の手順で測定し、熱処理前後の平均気泡径の差が6μm以上の場合を安定性不良の×とし、6μm未満の場合を安定性良好の○とする。
【0038】
平均気泡径は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定された値である。具体的には、発泡粒子30粒を略二等分になるように切断する。粒子表面から中心部を含む断面において、中心から半径250μmの切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製S−3000N)により100倍に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、任意の箇所に長さ60mmの直線を五本引く。直線上に存在する気泡数から平均気泡径を下記式により算出する。
平均気泡径=60/(気泡数×写真の倍率)/0.616
なお、直線は、できるだけ気泡に点接触しないように引く。点接触する場合は、点接触する気泡も気泡数に含める。直線の一端又は両端が、気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合は、その気泡も気泡数に含める。
【0039】
<発泡成形体の密度>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(30×30×2mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(kg/ml)を求める。
【0040】
<発泡成形体の融着率>
試験シート(30×30×2mmの密度0.1g/cm3の発泡成形体)にカッターナイフで深さ約1mmの切り込み線を入れる。この後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手で二分割する。その破断面における発泡粒子について、全粒子の数(a)と粒子内で破断している粒子の数(b)とを数える。結果を、式[(b)/(a)]×100に代入して得られた値を融着率(%)とする。融着率80%以上を○、80%未満を×と評価する。
【0041】
[実施例1]
(発泡性樹脂粒子の製造)
攪拌装置を備えたステンレス製の内容量100リットルのオートクレーブ内に、イオン交換水40kgを供給した。このイオン交換水中に、攪拌しながらスチレン40kg、リン酸三カルシウム(ブーデンハイム社製C13−09)40g、過硫酸カリウム0.5g、純度75重量%のベンゾイルパーオキサイド140g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート30gを供給することで、懸濁液を作製した。
次に、上記懸濁液を200RPMの攪拌速度で攪拌しながら1時間かけて90℃に昇温し、この温度で6時間保持することで、スチレンモノマーを重合させた。更に、オートクレーブ内の温度を125℃に昇温し、この温度で2時間15分保持することで重合を完結させた。
しかる後、オートクレーブ内の温度を25℃まで下げ、オートクレーブ内からポリスチレン樹脂粒子(a)を取り出した。ポリスチレン樹脂粒子(a)を複数回洗浄及び脱水した後、乾燥させた。乾燥後のポリスチレン樹脂粒子(a)を分級することで0.2〜1.2mmの粒子径のポリスチレン樹脂粒子(b)を得た。ポリスチレン樹脂粒子(b)の重量平均分子量は30万であった。
【0042】
次に、攪拌装置を備えたステンレス製の内容量100リットルのオートクレーブ内に、イオン交換水40kgとポリスチレン系樹脂粒子(b)40kgを供給することで、懸濁液を得た。この懸濁液に、リン酸三カルシウム40g、α−オレフィンスルホネート(ライオン社製リポランPJ−400)0.4g、12−ヒドロキシステアリン酸アミド(日本化成社製ダイヤミッドKH)12g、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(住友化学社製スミライザーTPL)12g及びエチレンビスステアリン酸アミド(花王社製花王ワックスEBFF)12gを添加した。次いで、プロパン460g、ノルマルペンタン1600g及びイソペンタン400gをオートクレーブに圧入した。圧入後、懸濁液を110℃まで40分かけて昇温し、この温度で3時間保持した。
【0043】
懸濁液を室温(約25℃)まで冷却した後、懸濁液のpHが2となるまで35%の塩酸を添加することで、リン酸三カルシウムを分解した。続いて、懸濁液を脱水機にて10分間注水しながら洗浄し、次いで脱水した後、気流乾燥することによって発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。
得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子を、JISに規定された目開きが0.600mmの篩で篩い、通過した発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集した。次に、収集した発泡性ポリスチレン樹脂粒子を目開きが0.300mmの篩で篩い、篩上に残った発泡性ポリスチレン樹脂粒子を収集した。2回の篩い後の発泡性ポリスチレン樹脂粒子のメジアン径は、0.45mmであった。
【0044】
上記メジアン径の発泡性ポリスチレン樹脂粒子8kg(100重量部)をスーパーミキサー(内容積20リットル)に投入した。次いで、このミキサー内に、発泡性ポリスチレン樹脂粒子100重量部に対して、ポリエチレングリコールA(日油社製PEG−300;分子量300)0.02重量部を添加して3分間攪拌した。その後、ステアリン酸亜鉛(日油社製ジンクステアレートGF−200)0.05重量部、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド(川研ファインケミカル社製K3ワックス500)0.02重量部を順次添加した。添加後、740RPMの回転速度で3分間攪拌することで、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面処理を行った。
なお、表面処理された発泡性ポリスチレン樹脂粒子において、発泡性スチレン系樹脂粒子、ポリエチレングリコール、ステアリン酸亜鉛及び12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドの存在割合は、スーパーミキサー中のそれぞれの存在割合と同じであった。
【0045】
(発泡粒子の製造)
表面処理された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を、回転翼を内蔵したバッチ型予備発泡機に投入した。投入後、嵩密度0.1g/cm3になるように、発泡性ポリスチレン樹脂粒子を水蒸気で均一に加熱発泡することで、発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を、大気中、常温(約25℃)で12時間熟成及び乾燥させた。得られた発泡粒子の熱処理前後の断面写真を図1及び2に示す。図1及び2から、熱処理後も発泡粒子を構成する気泡径の変動が抑制されていることがわかる。
【0046】
(発泡成形体の製造)
得られた発泡粒子を12時間熟成・乾燥させた後、カップ形成用金型に充填し、発泡粒子を蒸気圧0.22MPa(ゲージ圧)で6秒間加熱した後、常温(約25℃)まで冷却することでカップ状の発泡成形体を得た。発泡成形体は、リップ部口径95mm、底部口径68mm、高さ105mm、内容量400ml、肉厚約2mmであった。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
【0047】
実施例2
12−ヒドロキシステアリン酸アミドに代えてN,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドを使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
実施例3
12−ヒドロキシステアリン酸アミドに代えてヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドを使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を12gから2gに変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
実施例5
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を12gから120gに変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
12−ヒドロキシステアリン酸アミドに代えてエチレンビスステアリン酸アミド(花王社製花王ワックスEBFF)を使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
比較例2
12−ヒドロキシステアリン酸アミドに代えてメチレンビスステアリン酸アミド(日本化成社製ビスアマイド日本化成)を使用すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
【0050】
比較例3
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を12gから0.32gに変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。比較例3の発泡粒子の熱処理後の断面写真を図3に示す。図3から、熱処理により中心部の気泡径が肥大化していることがわかる。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
比較例4
12−ヒドロキシステアリン酸アミドの添加量を12gから800gに変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
【0051】
比較例5
12−ヒドロキシステアリン酸アミドを使用しないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体の熱安定性及び熱融着率の測定結果を表1に示す。
比較例6
比較例5の発泡性ポリスチレン樹脂粒子8kg(100重量部)をスーパーミキサー(内容積20リットル)で表面処理する際、ミキサー内に、発泡性ポリスチレン樹脂粒子100重量部に対して、ポリエチレングリコールA(日油社製PEG−300;分子量300)0.02重量部を添加して3分間攪拌した後、12−ヒドロキシステアリン酸アミド(日本化成社製ダイヤミッドK)を0.02重量部添加したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
表1中、HSAは12−ヒドロキシステアリン酸アミド、EBHSAはN,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、HMBHSAはヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、EBSAはエチレンビスステアリン酸アミド、MBSAはメチレンビスステアリン酸アミドを、それぞれ意味する。
表1から、ヒドロキシ基含有アミド系化合物を含む発泡性樹脂粒子から得られた発泡粒子及び発泡成形体は、優れた熱安定性と融着率を有することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂と、ヒドロキシ基を有する脂肪族アミド系化合物と、発泡剤とを少なくとも含み、
前記脂肪族アミド系化合物が、前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部の含有量で前記ポリスチレン系樹脂中に内在されることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記脂肪族アミド系化合物が、1つのアミン化合物と、1つ又は2つのヒドロキシ基を有する脂肪酸とのアミドであり、前記脂肪酸が、10〜50の炭素数を有する酸である請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記脂肪族アミド系化合物が、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドから選択される請求項1又は2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、それを発泡して得られた発泡粒子の平均気泡径と、それを45℃で24時間の熱処理に付し、次いで発泡して得られた発泡粒子の平均気泡径との差が±6μm未満となる、熱安定性を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項6】
請求項5に記載の発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32449(P2013−32449A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169559(P2011−169559)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】