説明

発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法及び発泡成形体

【課題】溶融押出法により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する際に、リサイクル原料を利用でき、発泡性に優れ、成形サイクルが短く、外観良好でかつ十分な機械強度を有するバランスのとれた発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の提供。
【解決手段】発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、ブタンを2〜8質量部の比率で含有し、かつ前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融押出法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法及び該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から製造される発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、所謂、溶融押出法により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法に関して、例えば、特許文献1,2に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、発泡剤含有熱可塑性樹脂の溶融混練物を、ペレタイズ用ダイス内に導入してダイスの押出孔に向けて流路を流動させ、次いでこの流路よりも流路断面積の大きい流路に流入させた後、押出孔を通過させ、その出口から加圧液中に押出し、即時切断して粒子とし、次いで冷却することを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、熱可塑性樹脂(A)と、発泡剤(B)と、該熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して1.5重量部以下の無機質粉末(C)とを溶融混練し、次いでこれをダイヘッドの押出孔から加圧液中に押出し、即時切断した後、冷却することを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−136176号公報
【特許文献2】特開平6−298983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載された製造方法では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造した場合、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡能力が低く、高発泡倍数の発泡成形体を製造することが困難であるという問題がある。また、該樹脂粒子から製造された発泡成形体は、機械強度が劣るという問題もある。さらに、該樹脂粒子から製造された発泡成形体は、外観に劣り、外観美麗な発泡成形体を得ることが難しかった。
また、ポリスチレン系樹脂としてリサイクル原料を用いた場合には、前述した各問題が増加される場合があり、従ってリサイクル原料の利用には不向きであった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、溶融押出法により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する際に、リサイクル原料を利用でき、発泡性に優れ、成形サイクルが短く、外観良好でかつ十分な機械強度を有するバランスのとれた発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、ブタンを2〜8質量部の比率で含有し、かつ前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【0009】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが14万〜27万の範囲であることが好ましい。
【0010】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが14万〜21.5万の範囲であることが好ましい。
【0011】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが14万〜18.5万の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る溶融押出法により得られたものであることが好ましい。
【0013】
また本発明は、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体を提供する。
【0014】
本発明の発泡成形体において、発泡成形体中の発泡粒の平均気泡径が50μm〜300μmの範囲であることが好ましい。
【0015】
また本発明は、押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る製造方法において、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、ブタンを2〜8質量部の比率で含有し、かつ前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0016】
また本発明は、押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を型内発泡成形して発泡成形体とする発泡成形体の製造方法において、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、ブタンを2〜8質量部の比率で含有し、かつ前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲である発泡成形体の製造方法を提供する。
【0017】
また本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体において、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、イソブタンとノルマルブタンをその合計量0.1〜3.0質量部の範囲で含有していることを特徴とする発泡成形体を提供する。
【0018】
前記発泡成形体において、前記イソブタンとノルマルブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=30:70〜99:1の範囲であることが好ましい。
【0019】
前記発泡成形体において、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が前述した本発明に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、適正な比率のイソブタンとノルマルブタンを発泡剤として使用し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中に含有させることにより、発泡性に優れ、かつ成形サイクルが短く、十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造できる。また、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であれば、発泡性に優れ、かつ成形サイクルが短く、十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造でき、ポリスチレン系樹脂としてリサイクル原料を利用することができる。
【0021】
本発明の発泡成形体は、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を型内発泡成形して得られたものなので、高発泡倍数の発泡成形体を製造でき、強度に優れ、外観が良好な発泡成形体を提供できる。
【0022】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、高発泡倍数の発泡成形体を製造でき、強度に優れ、外観が良好な発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を容易に製造することができる。
また、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法によれば、ポリスチレン系樹脂のリサイクル原料を利用して、バージン原料に近い強度が得られ、外観が良好な発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、ブタンを2〜8質量部の比率で含有し、かつ前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲であることを特徴としている。
【0025】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0026】
また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
また、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよく、添加する樹脂としては、例えば、発泡成形体の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0027】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(以下、バージンポリスチレンと記す。)を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、あるいは非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料、あるいは家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンターなど)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混錬してリペレットしたリサイクル原料の中から、重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲となる原料を適宜選択し、又は重量平均分子量Mwが異なる複数のリサイクル原料を適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwは、12万〜32万の範囲であり、14万〜27万の範囲が好ましく、14万〜21.5万の範囲がより好ましい。ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが前記範囲未満であると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の高圧成形性が悪化し、また得られる発泡成形体の機械的強度が低下するおそれがある。ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが前記範囲を超えると、低圧成形性が悪くなり、発泡成形の加熱時間を短縮することが困難になる。
【0029】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、ポリスチレン系樹脂に含有させる発泡剤としては、必須成分として発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対しブタンを2〜8質量部含有し、前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲である。前記ブタン(ブタン組成物)は、単独でポリスチレン系樹脂に含有させてもよいし、補助成分として他の揮発性発泡剤や溶剤・可塑剤を添加しても良い。前記ブタンに添加可能な補助成分としての揮発性発泡剤は、プロパン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。前記ブタンに添加可能な補助成分としての溶剤・可塑剤は、リモネン、ピネンなどのテルペン系炭化水素、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニルなどのアジピン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチルなどのセバシン酸エステルなどのエステル化合物などが挙げられる。
【0030】
この発泡剤のイソブタンとノルマルブタンとの比率は、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲であり、イソブタン:ノルマルブタン=20:80〜70:30の範囲が好ましく、イソブタン:ノルマルブタン=30:70〜50:50の範囲がより好ましい。この発泡剤のイソブタンとノルマルブタンとの比率が、前記質量比の範囲よりもイソブタンが多い場合、又はイソブタンのみを使用した場合は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から発泡成形体を製造する際、キャビティ内に予備発泡粒子を充填した成形型のキャビティ内に加熱用水蒸気を吹き込んで加熱した後、発泡成形体を取り出し可能な温度まで冷却するための冷却時間が著しく長くなり、生産性が悪くなってしまう。一方、前記質量比の範囲よりもノルマルブタンが多い場合、又はノルマルブタンのみを使用した場合は、得られる発泡成形体の機械強度が低下してしまう。
【0031】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、ポリスチレン系樹脂に含有させる前記発泡剤の量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、前記のブタン(ブタン組成物)を2〜8質量部の範囲であり、好ましくは3〜7質量部の範囲であり、より好ましくは4〜6質量部の範囲である。ブタンの量が前記範囲未満であると、その発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡成形する際に、十分な発泡倍数に到達することができないおそれがある。一方、ブタンの量が前記範囲を超えると、発泡性能の改善が頭打ちとなり、また発泡性スチレン系樹脂粒子を用いたスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下するおそれがある)。
【0032】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、必要に応じて前記発泡剤以外にも、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造において一般的に使用されている他の添加剤、例えば、タルク、珪酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等の発泡核剤、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等の着色剤などの添加剤を、ポリスチレン系樹脂中に添加することができる。
【0033】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面には、従来の発泡スチレン系樹脂粒子に対して通常行われているように、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、帯電防止剤などの表面処理剤をコーティングすることができ、表面処理剤のコーティングを行うことで、樹脂粒子(ビーズ)の流動性、予備発泡特性などを改善することもできる。前記表面処理剤の総添加量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2.0質量部程度の量が好ましい。
【0034】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の粒径は、特に限定されないが、通常は平均粒径が0.3〜2.0mmの範囲であることが好ましく、0.5〜1.4mmの範囲であることがより好ましい。
また、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の形状は特に限定されないが、球状であるか、或いは球に近い形状とすることが好ましい。
【0035】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性能に優れており、加熱して高い発泡倍数に予備発泡させることができ、低密度の発泡成形体を製造することができる。
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から発泡成形体を製造するには、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いた通常の型内発泡成形方法によって実施できる。即ち、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を成形する形状のキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填し、水蒸気を吹き込んで加熱し、型内発泡成形し、成形型を冷却後に発泡成形体を取り出すことによって製造可能である。
【0036】
本発明の発泡成形体は、発泡粒の平均気泡径が50μm〜300μmの範囲であることが好ましく、80μm〜250μmの範囲であることがより好ましい。平均気泡径が前記範囲未満であると、型内発泡成形時に、得られる発泡成形体の粒子間隙が多くなり外観が損なわれるおそれがあり)、平均気泡径が前記範囲を超えると、得られる発泡成形体の強度が低下するおそれがある。
【0037】
また、この発泡成形体は、通常、0.015〜0.2g/cmの密度を有する。好ましくは、密度が0.0166〜0.05g/cmの範囲であり、より好ましくは、密度が0.02〜0.033g/cmの範囲である。該発泡成形体の密度が0.015g/cmより小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下するため好ましくない。一方、発泡成形体の密度が0.2g/cmより大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。また、この密度を発泡倍数で示すと、発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm)であることから、この発泡成形体は5〜67(倍)の発泡倍数を有し、好ましい発泡倍数は20〜60(倍)であり、より好ましい発泡倍数は30〜50(倍)である。
本発明の発泡成形体は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体において、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、イソブタンとノルマルブタンをその合計量0.1〜3.0質量部の範囲で含有していることを特徴としている。
本発明の発泡成形体において、発泡成形体を構成するポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwは、12万〜32万の範囲であり、14万〜27万の範囲が好ましく、14万〜21.5万の範囲がより好ましい。ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが前記範囲未満であると、高圧成形性が悪化し、発泡成形体の機械的強度が低下するおそれがある。ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが前記範囲を超えると、低圧成形性が悪くなり、発泡成形の加熱時間を短縮することが困難になる。
本発明の発泡成形体において、発泡成形体を構成するポリスチレン系樹脂に含有させる発泡剤としては、必須成分としてポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対し、イソブタンとノルマルブタンをその合計量0.1〜3.0質量部の範囲であり、好ましくは0.1〜2.0質量部の範囲であり、より好ましくは0.3〜1.0質量部の範囲である。イソブタンとノルマルブタンの合計量が前記範囲未満であると、型内発泡成形によって発泡成形体を製造する際に十分な発泡倍数に到達することができないおそれがある。一方、イソブタンとノルマルブタンの合計量が前記範囲を超えると、型内発泡成形によって発泡成形体を製造する際に製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下するおそれがある。
本発明の発泡成形体において、発泡剤のイソブタンとノルマルブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=30:70〜99:1の範囲であることが好ましく、60:40〜99:1の範囲であることがより好ましく、90:10〜99:1の範囲であることが最も好ましい。この発泡剤のイソブタンとノルマルブタンとの比率が、前記質量比の範囲よりもイソブタンが多い場合、又はイソブタンのみを使用した場合は、型内発泡成形によって発泡成形体を製造する際に短時間での製造が難しくなるおそれがある。一方、前記質量比の範囲よりもノルマルブタンが多い場合、又はノルマルブタンのみを使用した場合は、発泡成形体の機械強度が低下してしまうおそれがある。
【0038】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、従来より周知の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法、例えば、懸濁重合法、溶融押出法などによって製造することができるが、リサイクル原料から容易に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造できることから、溶融押出法によって製造することが好ましい。溶融押出法は、押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る。
【0039】
図1は、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図である。本例の製造装置は、押出機1と、押出機1の先端に取り付けられた多数の小孔を有するダイ2と、押出機1内に樹脂原料等を投入する原料供給ホッパー3と、押出機1内の溶融樹脂に発泡剤供給口5を通して発泡剤を圧入する高圧ポンプ4と、ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面に冷却水を接触させるように設けられ、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7と、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッティング室7内に回転可能に設けられたカッター6と、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して運ばれる発泡性粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥して発泡性粒子を得る固液分離機能付き脱水乾燥機10と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて分離された冷却水を溜める水槽8と、この水槽8内の冷却水をカッティング室7に送る高圧ポンプ9と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて脱水乾燥された発泡性粒子を貯留する貯留容器11とを備えて構成されている。
押出機としては、スクリュを用いる押出機またはスクリュを用いない押出機のいずれも用いることができる。スクリュを用いる押出機としては、例えば、単軸式押出機、多軸式押出機、ベント式押出機、タンデム式押出機などが挙げられる。スクリュを用いない押出機としては、例えば、プランジャ式押出機、ギアポンプ式押出機などが挙げられる。また、いずれの押出機もスタティックミキサーを用いることができる。これらの押出機のうち、生産性の面からスクリュを用いた押出機が好ましい。
【0040】
この製造装置を用い、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造するには、まず、原料のポリスチレン系樹脂、及び発泡核剤などの所望の添加剤を秤量し、原料供給ホッパー3から押出機1内に投入する。原料のポリスチレン系樹脂は、ペレット状や顆粒状にして事前に良く混合してから1つの原料供給ホッパーから投入してもよいし、あるいは例えば複数のロットを用いる場合は各ロットごとに供給量を調整した複数の原料供給ホッパーから投入し、押出機内でそれらを混合してもよい。また、複数のロットのリサイクル原料を組み合わせて使用する場合には、複数のロットの原料を事前に良く混合し、磁気選別や篩分け、比重選別、送風選別などの適当な選別手段により異物を除去しておくことが好ましい。
【0041】
押出機1内にポリスチレン系樹脂を供給後、この樹脂を加熱溶融し、発泡剤供給口5から高圧ポンプ4によって発泡剤を圧入し、溶融物に発泡剤を混合し、押出機1内に必要に応じて設けられる異物除去用のスクリーンを通して、溶融物をさらに混練しながら先端側に移動させ、発泡剤を添加した溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出す。
【0042】
ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面は、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7内に配置され、且つカッティング室7内には、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッター6が回転可能に設けられている。発泡剤添加済みの溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出すと、溶融物は粒状に切断され、同時に冷却水と接触して急冷され、発泡が抑えられたまま固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子となる。
【0043】
形成された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して固液分離機能付き脱水乾燥機10に運ばれ、ここで発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥する。乾燥された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、貯留容器11に貯留される。
【0044】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、適正な比率のイソブタンとノルマルブタンを発泡剤として使用し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中に含有させることにより、発泡性に優れ、かつ成形サイクルが短く、十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造できる。また、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であれば、発泡性に優れ、かつ成形サイクルが短く、十分な機械的強度を有する発泡成形体を製造でき、ポリスチレン系樹脂としてリサイクル原料を利用することができる。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造)
重量平均分子量18.3万のリサイクル原料100質量部に対し、微粉末タルク0.3質量部を加え、これらを口径90mmの単軸押出機に、時間当たり130kgで連続供給した。押出機内温度としては、最高温度210℃に設定し、樹脂を溶融させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して6質量部のブタン(イソブタン:ノルマルブタン=30:70(質量比))を押出機の途中から圧入した。押出機内で樹脂と発泡剤を混練するとともに冷却し、押出機先端部での樹脂温度を170℃、ダイの樹脂導入部の圧力を15MPaに保持して、直径0.6mmでランド長さが3.0mmの小孔が200個配置されたダイより、このダイの吐出側に連結され30℃の水が循環するカッティング室内に、発泡剤含有溶融樹脂を押し出すと同時に、円周方向に10枚の刃を有する高速回転カッターにて押出物を切断した。切断した粒子を循環水で冷却しながら、粒子分離器に搬送し、粒子を循環水と分離した。さらに、捕集した粒子を脱水・乾燥して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、変形、ヒゲ等の発生もなく、ほぼ完全な球体であり、平均粒径は約1.1mmであった。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.15質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部を発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面全面に均一に被覆した。
【0046】
(発泡成形体の製造)
前記の通り製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、15℃の保冷庫中に入れ、72時間に亘って放置した後、円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.05MPaの水蒸気により加熱し、予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子は、嵩密度0.02g/cm(嵩発泡倍数50倍)であった。
続いて、得られた予備発泡粒子を室温雰囲気下、24時間に亘って放置した後、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に予備発泡粒子を充填し、その後、成形型のキャビティ内を水蒸気でゲージ圧0.08MPaの圧力で20秒間に亘って加熱し、その後、成形型のキャビティ内の圧力が0.01MPaになるまで冷却し、その後成形型を開き、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状の発泡成形体を取り出した。得られた発泡成形体は、密度0.02g/cm(発泡倍数50倍)であった。
【0047】
前述した通りの方法で製造した実施例1のポリスチレン系樹脂、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体について、以下の評価試験を行った。
【0048】
<重量平均分子量の測定>
押出機に投入する原料となるポリスチレン系樹脂、及び溶融押出法によって作製した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂について、それぞれの樹脂約4mgをTHF(テトラヒドロフラン)4mLに溶解し、非水系0.45μmクロマトディスクで濾過後、東ソー社製 HLC−8320GPC(RI検出器内臓)を用いてポリスチレン換算分子量を測定した。その測定条件はカラムが東ソー社製TOSOH TSKgel SuperMultiporeHZ-H(φ4.6×150mm)2本、ガードカラムが東ソー社製TOSOH TSKguardSuperMP(HZ)-H(φ4.6×20mm)1本を用い、カラム温度(40℃)、移動相(THF)、移動相流量(0.2ml/min)、ポンプ温度・検出器(40℃)、検出(RI)、注入量(20μL)、検量線用標準PS(昭和電工社製(Shodex)分子量Mwが5,620,000と3,120,000と1,250,000と442,000と131,000と54,000と20,000と7,590と3,450と1,320)とした。)
【0049】
<発泡剤含有量と発泡剤組成の測定>
実施例(及び比較例)で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を15℃の保冷庫に72時間に亘って放置した後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中の発泡剤量(イソブタンとノルマルブタンの合計の含有量、単位:質量%)と発泡剤組成(イソブタンとノルマルブタンの質量比)を、ガスクロマトグラフィーを用い、下記の条件で測定した。
ガスクロマトグラフィー(GC):島津製作所社製GC−14B
・検出器:FID・加熱炉:島津製作所社製PYR−1A
・カラム:信和化工社製(直径3mm×長さ3m)液相1スクワラン25%、担体lShimalite60〜80NAW
・加熱炉温度:180℃
・カラム温度:70℃
【0050】
<予備発泡粒子の嵩発泡倍数>
約5gの予備発泡粒子の質量(a)を小数以下2位で秤量した。次に、最小目盛り単位が5cmである500cmメスシリンダーに秤量した予備発泡粒子を入れ、これに、メスシリンダーの口径よりやや小さい円形の樹脂板で、その中心に幅約1.5cm、長さ約30cmの棒状の樹脂板が直立して固定された押圧具をあてて、予備発泡粒子の体積(b)を読み取り、式(b)/(a)により予備発泡粒子の嵩発泡倍数を求めた。
【0051】
<成形サイクルの評価>
長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に予備発泡粒子を充填し、その後、成形型のキャビティ内を水蒸気でゲージ圧0.08MPaの圧力で20秒間に亘って加熱し、その後、成形型のキャビティ内の圧力が0.01MPaになるまでの冷却時間を測定し、次の評価基準:
特に良好(◎):210秒未満
良好(○):210秒以上300秒未満
不良(×):300秒以上
に基づき、成形サイクルを評価した。
【0052】
<平均気泡径の測定>
実施例(及び比較例)で得られた発泡成形体を剃刀刃で切断し、その切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製S−3000N)で30倍に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の一直線上(長さ60mm)にある気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出した。但し任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにした(接してしまう場合は気泡数に含める)。計測は10ヶ所とし、その平均弦長を求めた後、気泡径を算出し、平均気泡径D(μm)とした。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
気泡径D=t/0.616×1000
【0053】
<強度の評価>
実施例(及び比較例)で得られた発泡成形体について、JISA9511:2006「発泡プラスチック保温材」記載の方法に準じて曲げ強度を測定した。すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用い、試験体サイズは75mm×300mm×50mmとし、圧縮速度を10mm/min、先端治具は加圧くさび10R、支持台10Rで、支点間距離200mmの条件として測定し、次式にて曲げ強度を算出した。試験片の数は3個とし、その平均値を求めた。
曲げ強度(MPa)=3FL/2bh
(ここで、Fは曲げ最大荷重(N)を表し、Lは支点間距離(mm)を表し、bは試験片の幅(mm)を表し、hは試験片の厚み(mm)を表す。)
このようにして曲げ強度の平均値を求め、次の評価基準:
特に良好(◎):曲げ強度が0.28MPa以上
良好(○):曲げ強度が0.25MPa以上0.28MPa未満
不良(×):曲げ強度が0.25MPa未満
に基づき、強度を評価した。
【0054】
<総合評価>
前記<成形サイクルの評価>及び<強度の評価>の評価結果について、次の評価基準:
特に良好(◎):両評価とも◎
良好(○):一方の評価が◎、他方の評価が○
不良(×):両評価のいずれか一方又は両方が×
に基づき、総合評価した。
【0055】
実施例1について、前述した重量平均分子量の測定、発泡剤含有量の測定、成形サイクルの評価、平均気泡径の測定及び強度の評価、並びに総合評価を行い、その結果を表1に記す。
【0056】
[実施例2]
実施例1で用いた重量平均分子量18.7万のリサイクル原料に代えて、重量平均分子量20.8万のリサイクル原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0057】
[実施例3]
実施例1で用いた重量平均分子量18.7万のリサイクル原料に代えて、重量平均分子量25.4万のリサイクル原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0058】
[実施例4]
実施例1で用いた重量平均分子量18.7万のリサイクル原料に代えて、重量平均分子量28.3万のリサイクル原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0059】
[実施例5]
発泡剤として、イソブタン:ノルマルブタン=50:50(質量比)の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0060】
[実施例6]
発泡剤として、イソブタン:ノルマルブタン=70:30(質量比)の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0061】
[実施例7]
発泡剤として4質量部のブタン(イソブタン:ノルマルブタン=30:70(質量比))と2質量部のペンタン(イソペンタン:ノルマルペンタン=30:70(質量比))の組成としたこと以外は実施例1同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0062】
[実施例8]
発泡剤として6質量部のブタン(イソブタン:ノルマルブタン=30:70(質量比))と溶剤・可塑剤として1質量部のアジピン酸ジイソブチル(DIBA)の組成としたこと以外は実施例1同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0063】
[比較例1]
実施例1で用いた重量平均分子量18.7万のリサイクル原料に代えて、重量平均分子量34万のバージンポリスチレン(PSジャパン社製、銘柄名:G9305)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0064】
[比較例2]
実施例1で用いた重量平均分子量18.7万のリサイクル原料に代えて、重量平均分子量10.6万のリサイクル原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0065】
[比較例3]
発泡剤としてイソブタンのみ(イソブタン:ノルマルブタン=100:0)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0066】
[比較例4]
発泡剤としてノルマルブタンのみ(イソブタン:ノルマルブタン=0:100)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前述した各項目の評価試験を行った。その結果を表1に記す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1の結果より、重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であるポリスチレン系樹脂を用い、発泡剤として、イソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲であるブタンを主成分として用いた実施例1〜7で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、優れた発泡性能を有し、型内発泡成形によって発泡成形体を製造する際に短時間で製造が可能となり、成形サイクルの評価が特に良好又は良好であった。
また、実施例1〜7で得られた発泡成形体は、曲げ強度が0.28MPa以上であり、特に良好であった。
また、実施例1〜8で得られた発泡成形体は、粒子間隙が少なく、外観美麗で良好であった。
一方、重量平均分子量Mwが本発明の範囲を超えるポリスチレン系樹脂を用いた比較例1は、型内発泡成形によって発泡成形体を製造する際に短時間での製造が難しくなり、成形サイクルの評価が不良となった。
また、重量平均分子量Mwが本発明の範囲未満であるポリスチレン系樹脂を用いた比較例2は、得られた発泡成形体の強度が弱くなり、曲げ強度が不良となった。また、発泡剤としてイソブタンのみを使用した比較例3は、型内発泡成形によって発泡成形体を製造する際に短時間での製造が難しくなり、成形サイクルの評価が不良となった。
また、発泡剤としてノルマルブタンのみを使用した比較例4は、得られた発泡成形体の強度が弱くなり、曲げ強度が不良となった。
【0069】
[実施例9]
実施例1で得られた発泡成形体を23℃±5℃の室内に30日、及び90日に亘って放置した後、以下の<発泡成形体中の発泡剤含有量と発泡剤組成の測定>に従って発泡剤含有量と組成を分析し、また前記<強度の評価>に従って発泡成形体の強度を、測定・評価した。
【0070】
<発泡成形体中の発泡剤含有量と発泡剤組成の測定>
実施例で得られた発泡成形体の略中心部から長さ方向に35mm、幅方向に5mm、厚み方向に5mmの大きさを有する直方体を切り出し、この試験片の重量を測定する。そして上記試験片を180℃の加熱炉に供給して、発泡成形体中の発泡剤含有量(イソブタンとノルマルブタンの合計の含有量、単位:質量%)と発泡剤組成(イソブタンとノルマルブタンの質量比)を、ガスクロマトグラフィーを用い、下記の条件で測定した。
ガスクロマトグラフィー(GC):島津製作所社製GC−14B
・検出器:FID・加熱炉:島津製作所社製PYR−1A
・カラム:信和化工社製(直径3mm×長さ3m)液相1スクワラン25%、担体lShimalite60〜80NAW
・カラム温度:70℃
・加熱炉温度:180℃
【0071】
30日後の発泡剤量(イソブタンとノルマルブタンの合計の含有量)は0.4質量%、イソブタンとノルマルブタンの比率はイソブタン:ノルマルブタン=98:2 、強度の評価は特に良好(◎)であった。
90日後の発泡剤量(イソブタンとノルマルブタンの合計の含有量)は0.4質量%、イソブタンとノルマルブタンの比率はイソブタン:ノルマルブタン=98:2、強度の評価は特に良好(◎)であった。
【0072】
[実施例10]
発泡成形体として実施例6で得られた発泡成形体を用いたこと以外は実施例9と同様にして発泡剤含有量の測定及び強度の評価を行なった。
30日後の発泡剤量(イソブタンとノルマルブタンの合計の含有量)は0.6質量%、イソブタンとノルマルブタンの比率はイソブタン:ノルマルブタン=98:2、強度の評価は特に良好(◎)であった。
90日後の発泡剤量(イソブタンとノルマルブタンの合計の含有量)は0.6質量%、イソブタンとノルマルブタンの比率はイソブタン:ノルマルブタン=98:2、強度の評価は特に良好(◎)であった。
【0073】
前記実施例9,10の結果から、本発明に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて製造された発泡成形体において、発泡剤として加えたブタン(イソブタン+ノルマルブタン)の組成は、発泡成形体製造後30日以上経過したものでは、イソブタンが大部分を占めていた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法と発泡成形体に関し、特に、溶融押出法により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する際に、リサイクル原料を利用でき、発泡性に優れ、成形サイクルが短く、外観良好でかつ十分な機械強度を有するバランスのとれた発泡成形体を製造可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法に関する。この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られた発泡成形体は、緩衝材、容器、断熱材などの用途に使用される。
【符号の説明】
【0075】
1…押出機(樹脂供給装置)、2…ダイ、3…原料供給ホッパー、4…高圧ポンプ、5…発泡剤供給口、6…カッター、7…カッティング室、8…水槽、9…高圧ポンプ、10…固液分離機能付き脱水乾燥機、11…貯留容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂を粒子状としてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、ブタンを2〜8質量部の比率で含有し、かつ前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが14万〜27万の範囲である請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが14万〜21.5万の範囲である請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが14万〜18.5万の範囲である請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る溶融押出法により得られた請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体。
【請求項7】
発泡成形体中の発泡粒の平均気泡径が50μm〜300μmの範囲である請求項6に記載の発泡成形体。
【請求項8】
押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る製造方法において、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、ブタンを2〜8質量部の比率で含有し、かつ前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得、この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を型内発泡成形して発泡成形体とする発泡成形体の製造方法において、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、ブタンを2〜8質量部の比率で含有し、かつ前記ブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=10:90〜80:20の範囲である発泡成形体の製造方法。
【請求項10】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子を型内発泡成形して得られた発泡成形体において、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwが12万〜32万の範囲であり、発泡剤は、必須成分としてポリスチレン系樹脂100質量部に対し、イソブタンとノルマルブタンをその合計量0.1〜3.0質量部の範囲で含有していることを特徴とする発泡成形体。
【請求項11】
前記イソブタンとノルマルブタンの組成が、質量比でイソブタン:ノルマルブタン=30:70〜99:1の範囲である請求項10に記載の発泡成形体。
【請求項12】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子である請求項10又は11に記載の発泡成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−167267(P2012−167267A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14055(P2012−14055)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】