説明

発泡性樹脂粒子

【課題】環状オレフィン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸した発泡性樹脂粒子を提供する。
【解決手段】環状オレフィン系樹脂粒子は、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体で形成されていてもよく、揮発性発泡剤は、脂肪族炭化水素であってもよい。前記揮発性発泡剤の割合は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して10〜90重量部程度であってもよい。揮発性発泡剤を含浸後、室温、常圧の条件下で、1日保管した発泡性樹脂粒子に対する前記条件下で30日保管した発泡性樹脂粒子の発泡剤の保持率は、60〜100%程度であってもよい。前記発泡性樹脂粒子は、オレフィン系樹脂であっても、長期に亘り揮発性発泡剤を保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品などに有用な発泡性樹脂粒子、その製造方法、前記発泡性樹脂粒子で形成された成形体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性樹脂粒子として、オレフィン系樹脂で形成された発泡性樹脂粒子が知られている。例えば、特開昭59−62119号公報(特許文献1)には、プロピレン系共重合樹脂で構成された予備発泡粒子を、金型に充填し、加熱、発泡させて得られる発泡成形体において、特定の密度を有するプロピレン系共重合樹脂発泡成形体が開示されている。特開昭60−152534号公報(特許文献2)には、温度を変えて測定した溶融張力の対数を縦軸にとり、絶対温度の逆数を横軸にとってプロットしたときの勾配が1500より小さいオレフィン系樹脂を基材として用いる型内発泡成形用ポリオレフィン系予備発泡粒子が開示されている。この文献には、オレフィン系樹脂の種類としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが記載されている。特開昭59−176147号公報(特許文献3)には、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形体よりなる2以上の芯材構成部材を接合一体化してなることを特徴とするバンパー用芯材が開示されている。特開昭61−46744号公報(特許文献4)には、エチレンの比率が0.1〜8.0の重量%のエチレン−プロピレンランダム共重合体であって、密度が0.047〜0.18kg/cmの合成樹脂発泡体により形成された自動車バンパー用芯材が開示されている。
【0003】
しかし、これらの文献では、オレフィン系樹脂(ポリプロピレンなど)を用いるため、樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸しても、揮発性発泡剤の保持率が不十分であるとともに、発泡成形体の剛性も不十分である。このような問題を解決するために、様々な取り組みがなされている。
【0004】
例えば、特開昭58−136631号公報(特許文献5)には、ポリプロピレン系樹脂粒子への発泡剤の含浸と加熱を多段階に行い、且つ二段階目以降の発泡剤として(a)無機ガスと(b)低沸点有機化合物とから成る混合ガスを用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造法が開示されている。しかし、この文献では、混合ガスを用いる必要があり、工程が複雑になる。
【0005】
また、特開昭62−235332号公報(特許文献6)には、ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対し、該ポリオレフィンとの相溶性パラメータの差が特定の範囲内の単量体(A)3〜40重量%、塩化ビニリデン(B)30〜90重量%、および単量体(A)と塩化ビニリデン(B)の中間の相溶性パラメータをもつか、又は単量体(A)の相溶性パラメータかまたは塩化ビニリデン(B)の相溶性パラメータかいずれかからの差が特定の範囲内の相溶性パラメータをもつ単量体(C)5〜50重量%からなる共重合体10〜150重量部をポリオレフィン系樹脂粒子の表面に被覆してなるポリオレフィン系樹脂粒子が開示されている。しかし、この文献では、ポリオレフィン系樹脂粒子の表面にガスバリヤー性のある共重合体膜を被覆する必要があるため、工程が煩雑になる。
【0006】
オレフィン系樹脂の剛性が不十分であるという問題点を改善するために、スチレン系樹脂の使用も検討されている。例えば、特開昭62−227631号公報(引用文献7)には、発泡能力の異なる2種以上のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を混合して型内成形用金型に充填し加熱成形するビーズ法型内発泡成形体の製造方法が開示されている。しかし、スチレン系樹脂は、剛性を有しているが、耐薬品性が低い。
【0007】
また、特開平6−107837号公報(引用文献8)には、アルカリ金属炭酸塩と発泡剤とにより形成される気泡を備える環状オレフィンコポリマー樹脂からなる環状オレフィンコポリマー樹脂発泡体が開示されている。この文献では、アルカリ金属炭酸塩と発泡剤とを混合して用いるため、環状オレフィンコポリマー樹脂中にアルカリ金属炭酸塩が微粒子状に分散し、発泡セルを均一で微細に形成することができず、外観特性が低下する。また、この文献には、発泡性樹脂粒子について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−62119号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭60−152534号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開昭59−176147号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開昭61−46744号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開昭58−136631号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開昭62−235332号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開昭62−227631号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】特開平6−107837号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、オレフィン系樹脂であっても、長期に亘り揮発性発泡剤を保持できる発泡性樹脂粒子、その製造方法、前記発泡性樹脂粒子で形成された成形体、及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、揮発性発泡剤を含浸した状態で、安定に保管可能な発泡性樹脂粒子、その製造方法、前記発泡性樹脂粒子で形成された成形体、及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、耐熱性及び剛性に優れた発泡性樹脂粒子、その製造方法、前記発泡性樹脂粒子で形成された成形体、及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、外観特性に優れた成形体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、環状オレフィン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させると、長期に亘り、揮発性発泡剤を保持できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の発泡性樹脂粒子は、環状オレフィン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸した発泡性樹脂粒子である。前記環状オレフィン系樹脂粒子は、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体で形成されていてもよい。前記揮発性発泡剤は、脂肪族炭化水素であってもよい。前記揮発性発泡剤の割合は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して10〜90重量部程度であってもよい。揮発性発泡剤を含浸後、室温、常圧の条件下で、1日保管した発泡性樹脂粒子に対する前記条件下で30日保管した発泡性樹脂粒子の発泡剤の保持率は、60〜100%程度であってもよい。
【0015】
本発明には、環状オレフィン系樹脂粒子に、加圧下で揮発性発泡剤を含浸する発泡性樹脂粒子の製造方法も含まれる。また、本発明には、前記発泡性樹脂粒子で形成された成形体も含まれる。さらに、本発明には、前記発泡性樹脂粒子を発泡成形して前記成形体を製造する方法も含まれる。この方法では、発泡性樹脂粒子を予備発泡して予備発泡粒子を生成させた後、前記予備発泡粒子を発泡成形してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発泡性樹脂粒子は、環状オレフィン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させるため、オレフィン系樹脂であっても、長期に亘り揮発性発泡剤を保持できる。さらに、前記発泡性樹脂粒子は、揮発性発泡剤を含浸した状態で、安定に保管可能である。そのため、長期に亘り、安定に発泡できる。さらにまた、前記発泡性樹脂粒子は、環状オレフィン系樹脂で構成されるため、前記発泡性樹脂粒子で形成された成形体は、耐熱性及び剛性に優れるとともに外観特性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発泡性樹脂粒子)
本発明の発泡性樹脂粒子は、環状オレフィン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸している。
【0018】
環状オレフィン系樹脂は、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂であればよい。環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。
【0019】
代表的な環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン類、シクロペンタジエン類又はジシクロペンタジエン類、ノルボルネン類とシクロペンタジエンとの縮合により得られる1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン類、ヘキサシクロ[6.6.1.1.1.0.0]ヘプタデセン−4類、1−ブテンとシクロペンタジエンとから合成される6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどの多環式オレフィンが例示できる。
【0020】
また、環状オレフィンは、置換基{例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−5アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)、アルケニル基(例えば、プロペニル基などのC2−10アルケニル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5−10シクロアルケニル基など)、アルキリデン基(例えば、エチリデン基などのC2−10アルキリデン基、好ましくはC2−5アルキリデン基など)など]、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−10アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC2−5アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−10アルコキシ−カルボニル基)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基(=O)、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基など)など}を有していてもよい。環状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて置換基を有していてもよい。
【0021】
具体的な環状オレフィンとしては、単環式オレフィン[例えば、シクロアルケン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロC3−10アルケンなど)など、シクロアルカジエン(例えば、シクロペンタジエンなどのシクロC3−10アルカジエン)など];二環式オレフィン{例えば、ビシクロアルケン[例えば、ノルボルネン類(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネン、7−オキソ−2−ノルボルネンなど)などのC4−20ビシクロアルケンなど]、ビシクロアルカジエン[例えば、ノルボルナジエン類(例えば、2,5−ノルボルナジエン、5−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5−シアノ−2,5−ノルボルナジエン、5−メトキシカルボニル−2,5−ノルボルナジエン、5−フェニル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2,5−ノルボルナジエン、7−オキソ−2−ノルボルナジエンなど)など]など}、三環式オレフィン{例えば、トリシクロアルケン[例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)などのC6−25トリシクロアルケンなど]、トリシクロアルカジエン[例えば、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエンなどのC6−25トリシクロアルカジエンなど]など}、四環以上の多環式オレフィン{例えば、四環式オレフィン[例えば、テトラシクロアルケン(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどのC8−30テトラシクロアルケンなど)など]、五環式オレフィン[例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC10−35ペンタシクロアルカジエン)など]、六環式オレフィン[例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンなどのC12−40ヘキサシクロアルケン)など]など}などが挙げられる。
【0022】
これらの環状オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、多環式オレフィン(特に、ノルボルネン類などの二環式オレフィン)が好ましい。
【0023】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンの単独又は共重合体(例えば、単環式オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体など)であってもよく、環状オレフィンと共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。
【0024】
共重合可能なモノマーとしては、環状オレフィンと共重合可能な限り特に限定されず、前記鎖状オレフィン系樹脂の項で例示されたモノマーなどが挙げられる。これらの共重合可能なモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。共重合可能なモノマーのうち、鎖状オレフィン(エチレンなどの直鎖状オレフィンなど)、エチレン系不飽和カルボン酸及びその酸無水物((メタ)アクリル酸など)などが好ましい。
【0025】
環状オレフィン系共重合体において環状オレフィン(特に、ノルボルネンなどの二環式オレフィン)の含有量は、環状オレフィン系樹脂全体に対して、40〜100モル%程度の範囲から選択でき、例えば、50〜80モル%、好ましくは55〜75モル%(例えば、60〜75モル%)、さらに好ましくは60〜70モル%程度であってもよい。
【0026】
好ましい環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンと鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)オレフィンとの共重合体、例えば、多環式オレフィン(二乃至六環式オレフィンなど)と鎖状オレフィンとの共重合体[二環式オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体(特に、ノルボルネン類とエチレンとの共重合体など)など]などが挙げられる。
【0027】
環状オレフィン系樹脂は、付加重合により得られた樹脂であってもよく、開環重合(開環メタセシス重合など)により得られた樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂(例えば、開環メタセシス重合により得られた樹脂など)は、水素添加された水添樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂は、結晶性又は非晶性樹脂であってもよく、通常、非晶性樹脂であってもよい。なお、環状オレフィン系樹脂は、慣用の重合方法(例えば、チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタロセン系触媒を用いた付加重合、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合など)により調製してもよい。
【0028】
環状オレフィン系樹脂の数平均分子量は、例えば、5,000〜300,000、好ましくは10,000〜200,000、さらに好ましくは20,000〜150,000(特に、30,000〜120,000)程度であってもよい。
【0029】
前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、60〜190℃(例えば、60〜185℃)、好ましくは65〜180℃、さらに好ましくは70〜179℃(特に、75〜178℃)程度であってもよい。また、前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、比較的高温であってもよく、100℃以上(例えば、105〜185℃)、好ましくは110〜180℃、さらに好ましくは115〜179℃(特に、120〜178℃)程度であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂の荷重たわみ温度は、80〜180℃(例えば、80〜178℃)、好ましくは85〜175℃、さらに好ましくは90〜173℃(特に、95〜170℃)程度であってもよい。
【0030】
前記揮発性発泡剤としては、例えば、不活性又は不燃性ガス(窒素、炭酸ガス、フロン、代替フロンなど)、水、有機系物理発泡剤{例えば、脂肪族炭化水素[プロパン、ブタン(n−ブタン、イソブタンなど)、ペンタン(n−ペンタン、イソペンタンなど)、ヘキサン(n−ヘキサンなど)など]、芳香族炭化水素(トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(三塩化フッ化メタンなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、石油エーテルなど)、ケトン類(アセトンなど)など}などが挙げられる。これらの揮発性発泡剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記揮発性発泡剤のうち、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類などが好ましく、特に、脂肪族炭化水素(ブタン、ペンタンなどのC3−6アルカンなど)が好ましい。このような揮発性発泡剤を用いると、環状オレフィン系樹脂中で、ガス状に分散するため、発泡セルが均一で微細に形成でき、外観特性に優れた成形体を形成できる。
【0031】
従来のポリプロピレン系樹脂粒子は、前記揮発性発泡剤の保持率が低いため、揮発性発泡剤を含浸した粒子の状態では安定に保管できず、含浸後直ちに発泡する必要がある。また、従来のポリスチレン系樹脂は、発泡剤を保持するのが困難であるため、発泡剤を含浸した後、加圧空気槽の中に保持して気泡の内圧を空気で高める必要があり、通常の成形装置で成形することが困難である。これに対して、本発明では、環状オレフィン系樹脂粒子を用いるため、長期に亘り、揮発性発泡剤を保持することができる。そのため、揮発性発泡剤を含浸した状態で安定に保管可能である。さらに、環状オレフィン系樹脂は、剛性が高く、スチレン系樹脂に対して耐薬品性が高い。
【0032】
揮発性発泡剤の割合は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して10〜90重量部、好ましくは12〜80重量部、さらに好ましくは13〜70重量部(特に、15〜60重量部)程度であってもよい。
【0033】
前記発泡性樹脂粒子は、長期間保管しても発泡剤を保持できる。例えば、揮発性発泡剤を含浸後、室温、常圧の条件下で、1日保管した発泡性樹脂粒子に対する前記条件下で30日保管した発泡性樹脂粒子の発泡剤の保持率は、60〜100%、好ましくは70〜98%、さらに好ましくは80〜95%程度であってもよい。発泡性樹脂粒子の発泡剤の保持率は、発泡性樹脂粒子の発泡保持率に対応する。
【0034】
前記発泡性樹脂粒子は、添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、安定剤[酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など]、有機又は無機充填剤(粉粒状又は繊維状補強剤を含む)、滑剤、離型剤、潤滑剤、着色剤(染料や顔料など)、表面平滑剤、収縮防止剤、発泡核剤、難燃剤、抗菌剤、防腐剤、防カビ剤、防虫剤、消臭剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらのうち、発泡核剤を含んでいる場合が多い。前記発泡核剤としては、例えば、ケイ酸塩(タルク、ゼオライトなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、金属酸化物(シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。前記発泡核剤のうち、特に、タルクなどのケイ酸塩などを使用すると、気泡構造を均一化できる。前記発泡核剤の平均粒径は、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜80μm、さらに好ましくは1〜50μm程度であってもよい。
【0035】
各添加剤の割合は、それぞれ、前記オレフィン系樹脂粒子100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.15〜20重量部(例えば、0.2〜15重量部)、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。また、前記発泡核剤の割合は、前記オレフィン系樹脂粒子100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.15〜15重量部(例えば、0.2〜12重量部)、さらに好ましくは0.5〜10重量部(特に、0.5〜5重量部)程度であってもよい。なお、前記安定剤の割合は、オレフィン系樹脂に対して、重量換算で1000ppm以下(例えば、1〜950ppm)、好ましくは50〜900ppm、さらに好ましくは100〜800ppm程度であってもよい。
【0036】
前記発泡性樹脂粒子の形状は、球状、楕円体状、ペレットなどであってもよく、通常、球状、ペレットなどである場合が多い。前記発泡性樹脂粒子の平均粒径は、0.1〜10mm、好ましくは0.3〜8mm、さらに好ましくは0.5〜6mm(特に、0.6〜4mm)程度であってもよい。
【0037】
(発泡性樹脂粒子の製造方法)
前記環状オレフィン系樹脂粒子に、加圧下で前記揮発性発泡剤を含浸して発泡性樹脂粒子を製造できる。
【0038】
環状オレフィン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸できれば、含浸方法は特に制限されず、通常、加圧下で環状オレフィン系樹脂粒子と揮発性発泡剤とを接触させることにより含浸できる。前記含浸方法では、例えば、加圧下において、液状又はガス状の揮発性発泡剤の雰囲気下に、環状オレフィン系樹脂粒子を投入してもよい。
【0039】
含浸圧力は、0.05〜1MPa、好ましくは0.06〜0.8MPa、さらに好ましくは0.07〜0.6MPa程度であってもよい。含浸温度は、例えば、1〜100℃、好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜26℃、通常、室温(例えば、15〜25℃)程度であってもよい。含浸時間は、5分間〜10時間、好ましくは10分間〜9時間、さらに好ましくは20分間〜8時間程度であってもよい。
【0040】
(成形体)
本発明には、前記発泡性樹脂粒子で形成された成形体(又は発泡体)も含まれる。
【0041】
前記成形体の発泡倍率は、10〜150倍、好ましくは15〜130倍、さらに好ましくは20〜120倍程度であってもよい。前記発泡性樹脂粒子は、揮発性発泡剤を含浸した状態で、安定に保管可能であるため、長期に亘り、安定に発泡できる。
【0042】
前記成形体の見掛密度は、0.005〜0.1g/cm、好ましくは0.008〜0.08g/cm、さらに好ましくは0.01〜0.05g/cm程度であってもよい。
【0043】
前記成形体の独立気泡率は、80%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは83〜99%、さらに好ましくは85〜98%程度であってもよい。
【0044】
前記成形体の発泡セル径は、1μm〜3mmの範囲から選択でき、好ましくは10μm〜2.8mm、さらに好ましくは50μm〜2.6mm程度であってもよく、通常、1〜500μm(好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm)程度と微細であってもよい。前記発泡性樹脂粒子の項で記載したように、揮発性発泡剤を用いると、均一で微細な発泡セルを形成できるため、成形体の外観特性を向上できる。
【0045】
(成形体の製造方法)
前記発泡性樹脂粒子を発泡成形して前記成形体を製造できる。前記成形体は、通常、金型、容器などに発泡性樹脂粒子又は後述する予備発泡粒子を充填し、加熱及び加圧して形成できる。
【0046】
なお、必要に応じて、発泡成形(第2の発泡成形)に先立って、予備発泡(第1の発泡成形)を行い、予備発泡粒子を形成してもよい。予備発泡粒子は、通常、金型、容器などに発泡性樹脂粒子を充填し、加熱及び加圧して形成できる。
【0047】
予備発泡成形温度は、80℃〜環状オレフィン系樹脂(又は基材樹脂)のガラス転移温度(例えば、80〜120℃)、好ましくは85℃〜環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度−5℃(例えば、85〜110℃)、さらに好ましくは90℃〜環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度−10℃(例えば、90〜100℃)程度であってもよい。予備発泡成形圧力は、常圧であってもよく、0.1013MPa以上、0.25MPa未満、好ましくは0.13〜0.23MPa、さらに好ましくは0.15〜0.2MPa程度であってもよい。予備発泡成形時間は、5〜30秒間、好ましくは6〜25秒間、さらに好ましくは8〜20秒間程度であってもよい。予備発泡倍率は、5〜50倍、好ましくは10〜45倍、さらに好ましくは15〜40倍程度であってもよく、通常、5〜30倍程度であってもよい。
【0048】
このような予備発泡を行った後、発泡成形を行うと、成形体の密度分布を小さくでき、均一な発泡セルを形成できるため、外観特性に優れた成形体を形成できる。
【0049】
発泡成形における発泡成形温度は、80℃〜環状オレフィン系樹脂(又は基材樹脂)のガラス転移温度(例えば、80〜120℃)、好ましくは83℃〜環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度−5℃(例えば、83〜110℃)、さらに好ましくは85℃〜環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度−10℃(例えば、85〜100℃)程度であってもよい。発泡成形圧力は、0.25〜1MPa、好ましくは0.3〜0.8MPa、さらに好ましくは0.35〜0.6MPa程度であってもよい。発泡成形時間は、5〜30秒間、好ましくは6〜25秒間、さらに好ましくは8〜20秒間程度であってもよい。発泡倍率は、10〜150倍、好ましくは15〜130倍、さらに好ましくは20〜120倍程度であってもよい。
【0050】
本発明の発泡性樹脂粒子は、揮発性発泡剤の保持率が高いため、予備発泡を行っても揮発性発泡剤を保持できる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0052】
実施例及び比較例で用いた樹脂粒子、添加剤及び揮発性発泡剤を下記に示す。
(樹脂粒子)
環状オレフィン系樹脂A:ポリプラスチックス(株)製、TOPAS 6017、ガラス転移温度 178℃、荷重たわみ温度170℃
環状オレフィン系樹脂B:ポリプラスチックス(株)製、TOPAS 6013、ガラス転移温度 140℃、荷重たわみ温度130℃
環状オレフィン系樹脂C:ポリプラスチックス(株)製、TOPAS 8007、ガラス転移温度 80℃、荷重たわみ温度75℃
ポリプロピレン:サンアロマー(株)製、PF814
(添加剤)
タルク
(揮発性発泡剤)
ペンタン
ブタン。
【0053】
実施例1〜7、及び比較例1〜2
表1に示す割合で、樹脂粒子及び添加剤を、揮発性発泡剤中へ室温(20℃)下で投入した。樹脂粒子、添加剤及び揮発性発泡剤を接触させ、表1に示す含浸圧力で樹脂粒子に発泡剤を含浸させた。含浸後、1時間風乾して発泡性樹脂粒子を得た。100mm×120mm×140mmの容器内に得られた発泡性樹脂粒子を充填し、4.9×10Pa(5kg/cm)の圧力の水蒸気を前記容器内に吹き込み、88℃で10秒間加熱して発泡成形し、成形体を得た。得られた成形体を30℃で24時間、大気圧下で乾燥した。この操作を、室温で1日保管した樹脂粒子及び室温で30日保管した樹粒子について、それぞれ行った。
【0054】
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
[見掛密度]
水中置換法により、得られた成形体の試験片の見掛密度を測定した。
【0057】
[発泡倍率]
実施例及び比較例で得られた発泡体の発泡倍率は、以下の式に基づいて算出した。
発泡倍率=発泡性樹脂粒子の密度/成形体の密度
なお、表中の発泡倍率1日は、常温(20℃)で1日保管した発泡性樹脂粒子で形成された成形体の発泡倍率を示し、発泡倍率30日は、常温で30日保管した発泡性樹脂粒子で形成された成形体の発泡倍率を示す。
【0058】
また、常温(20℃)で30日保管した発泡性樹脂粒子で形成された成形体の発泡倍率について、以下のように評価した。
○…10倍以上
×…10倍未満。
【0059】
[発泡保持率]
1日保管した発泡性樹脂粒子で形成された成形体の発泡倍率に対する30日保管した発泡性樹脂粒子で形成された成形体の発泡倍率を百分率で表した。
【0060】
また、成形体の発泡保持率について、以下のように評価した。
○…60%以上
△…40%以上、60%未満
×…40%未満。
【0061】
[総合評価]
得られた成形体について、以下のように、総合評価した。
◎…発泡倍率が10倍以上、かつ発泡保持率が60%以上
×…発泡倍率が10倍未満、及び/又は発泡保持率が60%未満。
【0062】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例の発泡性樹脂粒子は、環状オレフィン系樹脂を用いるため、長期間に亘り、揮発性発泡剤を保持できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の発泡性樹脂粒子は、自動車部品[バンパーの中芯(バンパー内部のエネルギー吸収体など)、天井の基材、シートバックの基材など]などに使用できる。また、吸水性が小さいため、電子分野における緩衝材(電子部品用緩衝材、オフィスオートメーション機器用緩衝材など)、船舶部品(防舷材など)などにも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸した発泡性樹脂粒子。
【請求項2】
環状オレフィン系樹脂粒子が、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体で形成されている請求項1記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項3】
揮発性発泡剤が、脂肪族炭化水素である請求項1又は2記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項4】
揮発性発泡剤の割合が、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して10〜90重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項5】
揮発性発泡剤を含浸後、室温、常圧の条件下で、1日保管した発泡性樹脂粒子に対する前記条件下で30日保管した発泡性樹脂粒子の発泡剤の保持率が60〜100%である請求項1〜4のいずれかに記載の発泡性樹脂粒子。
【請求項6】
環状オレフィン系樹脂粒子に、加圧下で揮発性発泡剤を含浸する請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性樹脂粒子で形成された成形体。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性樹脂粒子を発泡成形して請求項7記載の成形体を製造する方法。
【請求項9】
発泡性樹脂粒子を予備発泡して予備発泡粒子を生成させた後、前記予備発泡粒子を発泡成形する請求項8記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−189582(P2010−189582A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37097(P2009−37097)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000214788)ダイセルノバフォーム株式会社 (25)
【Fターム(参考)】