説明

発泡性肥料製剤

【課題】湛水状態の水田などの圃場に直接投げ込み施用することで、直ちに肥料成分を水中に放出拡散させることができ、作業時間の短縮、省力化が可能となる発泡性肥料製剤であって、小型で1単位当たりの質量が小さく、そして施用量が少なくてよく、保存安定性がよく、取り扱いが便利であり、しかも安価である発泡性肥料製剤の提供。
【解決手段】少なくとも、炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体と水溶性固体酸粉粒体とからなる発泡成分と、必須成分として配合されるカリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分とを含有する固体状組成物からなる発泡性肥料製剤により課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡性肥料製剤に関するものであり、さらに詳しくは水田などに使用するカリウム源などの肥料成分を含む発泡性肥料顆粒剤あるいは発泡性肥料錠剤などの形態の発泡性肥料製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農薬活性成分、炭酸塩、水溶性固体酸および高沸点溶剤からなる水面施用発泡性農薬製剤(特許文献1参照)、農薬活性成分、炭酸塩もしくは炭酸水素塩、固体酸および酸化ホウ素からなる安定化された発泡性農薬製剤(特許文献2参照)、ニトロ系殺虫成分、界面活性剤、発泡剤および結合剤を含有する水田害虫防除用錠剤またはカプセル(特許文献3参照)、農薬有効成分、室温で固体のポリエチレングリコールなどのグリコール、炭酸塩および固体酸とからなる発泡性農薬組成物(特許文献4参照)、田水に溶解する除草成分、界面活性剤、結合剤を含有する水田除草用錠剤を湛水した水田に施用する水田除草方法(特許文献5参照)、酵母エキスに炭酸塩および/もしくは炭酸水素塩、および水溶性固体酸を含有する植物用発泡製剤を水中投入時に反応して炭酸ガスを発生させ含有された酵母エキスやメチオニンを容易に均一に溶解、拡散できる植物用発泡製剤(特許文献6参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開平5−85901号公報
【特許文献2】特開平6−211604号公報
【特許文献3】特開平5−70304号公報
【特許文献4】4特開平5−208901号公報
【特許文献5】5特開平11−349404号公報
【特許文献6】国際公開WO97/41732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のように、従来、発泡性農薬製剤、水田害虫防除用錠剤またはカプセル、水田除草用錠剤を湛水した水田に施用する水田除草方法、酵母エキスやメチオニンを容易に均一に溶解、拡散できる植物用発泡製剤など多数提案されているが、発泡性肥料の場合は、発泡性を付与しない肥料に比べてコスト高になり、農薬や防虫剤などに比べて施用量が多いなどのために提案されておらず、使用されておらず、普及していなかった。
しかし、最近は多少コスト高になっても楽に肥料を施用したいという要求がある他、肥料の施用量をなるべく抑えて、味がよいなど高品質の作物を作りたいなどの要望が高まってきており、生産者や消費者などの要望や環境が変化している。
【0004】
本発明の目的は、前記のような生産者や消費者などの要望や環境の変化に対応して、湛水状態の水田などの圃場に直接投げ込み施用することで、直ちに肥料成分を水中に放出拡散させることができ、作業時間の短縮、省力化が可能となる発泡性肥料製剤であって、小型で1単位当たりの質量が小さく、そして施用量が少なくてよく、保存安定性がよく、取り扱いが便利であり、しかも安価である発泡性肥料製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はかかる問題について鋭意研究した結果、炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体と水溶性固体酸粉粒体とからなる発泡成分と、カリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分とを含有する固体状組成物からなる発泡性肥料製剤あるいは、
カリウム源として炭酸カリウム粉粒体および/もしくは炭酸水素カリウム粉粒体を使用し、これらの粉粒体と水溶性固体酸粉粒体を含有する固体状組成物からなる発泡性肥料製剤を、例えば、顆粒剤または錠剤などにすることによって、水中に投入すると発泡成分の炭酸塩などの粉粒体と水溶性固体酸粉粒体が反応して炭酸ガスを発生し、カリウム、チッ素、リンなどの肥料成分が容易に、しかも均一に溶解、拡散するので、小型で1単位当たりの質量が小さく、そして施用量が少なくてよく、作業時間の短縮、省力化が可能となり、保存安定性がよく、取り扱いが便利であり、しかも安価である発泡性肥料製剤を提供ことが可能となり、上記課題を解決できることを見いだし本発明を成すに到った。
【0006】
本発明の請求項1の発明は、少なくとも、炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体と水溶性固体酸粉粒体とからなる発泡成分と、必須成分として配合されるカリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分とを含有する固体状組成物からなることを特徴とする発泡性肥料製剤である。
【0007】
本発明の請求項2の発明は、カリウム源としての炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体と水溶性固体酸粉粒体とからなる発泡成分と、必要に応じて配合されるチッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分とを含有する固体状組成物からなることを特徴とする発泡性肥料製剤である。
【0008】
本発明の請求項3の発明は、請求項1あるいは請求項2記載の発泡性肥料製剤において、前記カリウム源が炭酸カリウム粉粒体であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4の発明は、請求項3記載の発泡性肥料製剤において、製剤全体中の炭酸カリウム粉粒体の含有量が5〜80質量%であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発泡性肥料製剤において、各成分中の水分の含有量を調整して製剤中の水分の全含有量が5質量%以下となるように制御したことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6の発明は、請求項1記載の発泡性肥料製剤において、炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体の平均粒径と、水溶性固体酸粉粒体の平均粒径と、カリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分粉粒体の平均粒径とがいずれも0.001〜1.5mmであり、バインダーを用いないか、あるいは極小量のバインダーを用いて製剤化されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7の発明は、請求項2記載の発泡性肥料製剤において、前記カリウム源としての炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体の平均粒径と、前記水溶性固体酸粉粒体の平均粒径と、必要に応じて配合されるチッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分粉粒体の平均粒径とがいずれも0.001〜1.5mmであり、バインダーを用いないか、あるいは極小量のバインダーを用いて製剤化されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発泡性肥料製剤において、製剤を水に溶解した際のpHが2〜10であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の発泡性肥料製剤において、必要に応じて農薬活性成分、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種以上を適量含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1の発明は、少なくとも、炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体と水溶性固体酸粉粒体とからなる発泡成分と、必須成分として配合されるカリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分とを含有する固体状組成物からなることを特徴とする発泡性肥料製剤であり、
例えば、顆粒剤または錠剤などにすることによって、水中に投入すると発泡成分の炭酸塩などの粉粒体と水溶性固体酸粉粒体が溶解して反応して炭酸ガスを発生し、カリウム、チッ素、リンなどの肥料成分が容易に、しかも均一に溶解、拡散するので、小型で1単位当たりの質量が小さく、そして施用量が少なくてよく、作業時間の短縮、省力化が可能となり、保存安定性がよく、取り扱いが便利であり、しかも安価であるという顕著な効果を奏する。
【0016】
本発明の請求項2の発明は、カリウム源としての炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体と水溶性固体酸粉粒体とからなる発泡成分と、必要に応じて配合されるチッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分とを含有する固体状組成物からなることを特徴とする発泡性肥料製剤であり、
炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体をカリウム源とするとともに発泡成分として使用したので、例えば、顆粒剤または錠剤などにすることによって、水中に投入するとカリウム源としての炭酸カリウムなどの粉粒体と水溶性固体酸粉粒体が溶解して反応して炭酸ガスを発生し、カリウムなどの肥料成分が容易に、しかも均一に溶解、拡散するので、小型で1単位当たりの質量が小さく、そして施用量が少なくてよく、作業時間の短縮、省力化が可能となり、保存安定性がよく、取り扱いが便利であり、しかも安価であるという顕著な効果を奏する。
チッ素源、リン源などの他の肥料成分を適量配合して併用すれば、多くの施用目的に適合させて効果的に使用できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0017】
本発明の請求項3の発明は、請求項1あるいは請求項2記載の発泡性肥料製剤において、前記カリウム源が炭酸カリウム粉粒体であることを特徴とするものであり、
炭酸カリウム粉粒体は成形性に優れるので各種の製剤に成形し易く、かつ潮解性が少ないため成形後に水溶性固体酸と反応し発泡することが少なく、保存安定性がよりよい、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0018】
本発明の請求項4の発明は、請求項3記載の発泡性肥料製剤において、製剤全体中の炭酸カリウム粉粒体の含有量が5〜80質量%であることを特徴とするものであり、
成形性や、カリウムの均一溶解、均一拡散を損なうことなく、使用目的によってカリウムの含有量を調整した安定性に優れた製剤を提供できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0019】
本発明の請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発泡性肥料製剤において、各成分中の水分の含有量を調整して製剤中の水分の全含有量が5質量%以下となるように制御したことを特徴とするものであり、
各成分の保存安定性が高まるとともに、成形後の製剤が発泡しにくく保存安定性が高まる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0020】
本発明の請求項6の発明は、請求項1記載の発泡性肥料製剤において、炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体の平均粒径と、水溶性固体酸粉粒体の平均粒径と、カリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分粉粒体の平均粒径とがいずれも0.001〜1.5mmであり、バインダーを用いないか、あるいは極小量のバインダーを用いて製剤化されていることを特徴とするものであり、
特定の平均粒径のものを組み合わせて使用することにより、製剤すると、粒子相互の密な充填が起こり最密充填構造となるので、バインダーを用いなくても良好に製剤化することができ、強度に優れた製剤を得ることが可能になり、バインダーを使用する場合でも極小量のバインダーを用いて製剤化できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0021】
本発明の請求項7の発明は、請求項2記載の発泡性肥料製剤において、前記カリウム源としての炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体の平均粒径と、前記水溶性固体酸粉粒体の平均粒径と、必要に応じて配合されるチッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分粉粒体の平均粒径とがいずれも0.001〜1.5mmであり、バインダーを用いないか、あるいは極小量のバインダーを用いて製剤化されていることを特徴とするものであり、
特定の平均粒径のものを組み合わせて使用することにより、製剤すると、粒子相互の密な充填が起こり最密充填構造となるので、バインダーを用いなくても良好に製剤化することができ、強度に優れた製剤を得ることが可能になり、バインダーを使用する場合でも極小量のバインダーを用いて製剤化できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0022】
本発明の請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発泡性肥料製剤において、製剤を水に溶解した際のpHが2〜10であることを特徴とするものであり、
水中に投入した際に炭酸ガスが良好に発生し、カリウムなどの肥料成分が容易に、より確実に均一に溶解、拡散する、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0023】
本発明の請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の発泡性肥料製剤において、必要に応じて農薬活性成分、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種以上を適量含有することを特徴とするものであり、
適量の農薬活性成分を併用することにより、発泡性や保存安定性などを損なうことなく農薬活性成分の作用効果を得ることができ、界面活性剤を併用することにより各種病原菌に対して殺菌効果を発揮させたり、また最適HLBを有する適量の界面活性剤を併用することにより、発泡性や保存安定性などを損なうことなく水濡れ性を向上させて水溶性や発泡性を改善して各成分が容易に、より確実に均一に溶解、拡散するようにしたり、発泡性や保存安定性などを損なうことなく撥水性を向上させて水分吸収性や潮解性を低減させて保存安定性を向上できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明について以下に詳しく説明する。
図1は、炭酸カリウム粉粒体および水溶性固体酸粉粒体とからなる本発明の発泡性肥料製剤の一例の顕微鏡写真を模式的に説明する断面説明図である。
図1において、本発明の発泡性肥料製剤1は、平均粒径0.001〜1.5mmの炭酸カリウム粉粒体の粒子2A、2B、2C・・・・・と、平均粒径0.001〜1.5mmの水溶性固体酸粉粒体の粒子3A、3B、3C・・・・・の粒子相互の密な充填が起こりほぼ最密充填構造を形成している。本発明の発泡性肥料製剤1はバインダーを用いなくても強度が高く良好に製剤化されている。
本発明の発泡性肥料製剤1は炭酸カリウム粉粒体をカリウム源とするとともに発泡成分として使用したので、小型で1個当たりの質量が小さく、保存安定性がよく、取り扱いが便利であり、そして施用量が少なくてよく、安価であり、そして水田などの水中に投入するとカリ炭酸カリウム粉粒体と水溶性固体酸粉粒体が溶解して反応して炭酸ガスを発生して、カリウムが容易に、均一に溶解、拡散するので、作業時間の短縮、省力化が可能となる。
【0025】
本発明の第1の発明において使用する炭酸塩粉粒体や炭酸水素塩粉粒体は特に限定されるものではなく、具体的には、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、セスキ炭酸カリウム、セスキ炭酸アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウムなどの粉粒体が挙げられ、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムの粉粒体が好ましく用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
これらの炭酸塩粉粒体や炭酸水素塩粉粒体の内、例えば炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、セスキ炭酸アンモニウムなどを使用すれば、チッ素源とすることもできる。
【0026】
本発明の第2の発明においては、カリウム源および発泡成分として、炭酸カリウム粉粒体や炭酸水素カリウム粉粒体を用いる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
中でも、炭酸カリウム粉粒体は成形性に優れるので各種の製剤に成形し易く、かつ潮解性が少ないので、保存安定性がよく好ましく使用できる。
【0027】
本発明の第1の発明および第2の発明(以下まとめて本発明と称す)において使用する水溶性固体酸粉粒体としては、特に限定されるものではなく、具体的には、例えばクエン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、フマル酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、ホウ酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどの粉粒体が挙げられるが、特にクエン酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、フマル酸、リン酸二水素ナトリウムの粉粒体が好ましく用いることができる。これらの水溶性固体酸粉粒体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
これらの水溶性固体酸粉粒体の内、例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどを使用すれば、リン源とすることもできる。
【0028】
炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体と水溶性固体酸粉粒体の合計含有量、および炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体と水溶性固体酸粉粒体の合計含有量は本発明の発泡性肥料製剤の全重量に対して5〜99.999質量%の範囲であり、より好ましくは、10〜90質量%、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲である。
【0029】
また、炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体と水溶性固体酸粉粒体の質量比、および炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体と水溶性固体酸粉粒体は1:10〜10:1の範囲であり、より好ましくは3:7〜7:3の範囲である。質量比が1:10〜10:1の範囲外になると、反応したときの炭酸ガスの発生量が少なくなり、その他の成分の拡散性が悪くなる。しかも、溶解した水の性質が強い酸性や、アルカリ性になり易くなるため好ましくない。
【0030】
また、本発明において、発泡性肥料製剤全体中の炭酸カリウム粉粒体の含有量が5〜80質量%であることが好ましい。5質量%未満では成形性が悪化し、炭酸水素カリウム粉粒体の含有量を増やすと潮解性が大きくなる恐れがあり、また5質量%未満では、カリウム量が少なく、用途がなくなる恐れがある。80質量%を超えると発泡性が損なわれる恐れがある。5〜80質量%の範囲内にすることにより成形性やカリウムの均一溶解、均一拡散を損なうことなく、保存安定性に優れ、使用目的にマッチするように調整したカリウムの含有量を有する発泡性肥料製剤を提供できる。
【0031】
本発明の発泡性肥料製剤を水に溶解した際のpHが2〜10であることが好ましい。より好ましくは、pHが3〜9、さらに好ましくはpH4〜8の範囲である。pHが2〜10であると、水中に投入した際に炭酸ガスが良好に発生し、含有されたカリウムなどの成分が容易に、より確実に均一に溶解、拡散する。
pHが2未満では、本発明の発泡性肥料製剤を溶解した水が強い酸性を示し、作物などを損なう恐れがあり、pHが10を超えると、本発明の発泡性肥料製剤を溶解した水が強いアルカリ性を示し、作物などを損なう恐れがある。
【0032】
本発明の発泡性肥料製剤中に水分が存在すると、炭酸塩などの粉粒体と水溶性固体酸粉粒体が一部溶解して、反応して炭酸ガスを発生し、性能が損なわれるので、製剤中の水分の全含有量を可及的に少なくすることが好ましい。また、本発明の発泡性肥料製剤を例えば防湿性や防水性のあるポリオレフィンフィルムなどで包装したり、ガラス容器中に収納するなどして外部の水分と接触させないようにすることが好ましい。
各成分中の水分の含有量を調整して本発明の発泡性肥料製剤中の水分の全含有量を5質量%以下、可及的に少なくするにすることが、各成分の保存安定性が高まるとともに、成形後の本発明の発泡性肥料製剤が発泡しにくく保存安定性が高まるので好ましい。
【0033】
炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体の平均粒径と、水溶性固体酸粉粒体の平均粒径と、カリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分粉粒体の平均粒径とがいずれも0.001〜1.5mmの範囲内となるように制御して調製すると、好ましくは0.001〜1.5mmの範囲内であってもなるべく広い粒径分布が得られるように制御して調製すると、これらを用いて製剤すると、粒子相互の密な充填が起こり最密充填構造となるので、バインダーを用いなくても良好に製剤化することができ強度に優れた製剤を得ることが可能になり、バインダーを使用する場合でも極小量のバインダーを用いて製剤化でき強度に優れた製剤を得ることができる。
【0034】
前記カリウム源としての炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体の平均粒径と、前記水溶性固体酸粉粒体の平均粒径と、必要に応じて配合されるチッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分粉粒体の平均粒径とがいずれも0.001〜1.5mmとなるように制御して調製すると、好ましくは0.001〜1.5mmの範囲内であってもなるべく広い粒径分布が得られるように制御して調製すると、これらを用いて製剤すると、粒子相互の密な充填が起こり最密充填構造となるので、バインダーを用いなくても良好に製剤化することができ、強度に優れた製剤を得ることが可能になり、バインダーを使用する場合でも極小量のバインダーを用いて製剤化できる。
【0035】
前記のように0.001〜1.5mmの範囲内であってもなるべく広い粒径分布が得られるように制御して調製するということは、具体的には調製した粉粒体について、d75[メデイアン(75%)径]、d50[メデイアン(50%)径]およびd25[メデイアン(25%)径]を測定した時、(d75/d25)>1.2であり、かつ(d50/d25)>1.2となるように制御して調製することであり、さらに好ましくは(d75/d25)>1.5であり、かつ(d50/d25)>1.5となるように制御して調製することである。
【0036】
d75は粉粒体全体の75%がふるいを通過する時の目合いであり、
d50は粉粒体全体の50%がふるいを通過する時の目合いであり、
d25は粉粒体全体の25%がふるいを通過する時の目合いである。
【0037】
前記の(d75/d25)や(d50/d25)の数値が大きくなるほど粒度分布曲線がゆるやかになり、前記の(d75/d25)や(d50/d25)の数値が小さくなるほど粒度分布曲線がシャープになることを意味する。
【0038】
平均粒径が0.001mm未満では見掛け密度が低く、飛散し易く、取り扱い性や成形性が劣り製剤化が困難となる恐れがあり、1.5mmを超えると粒子相互の密な充填が起こり難くなる恐れがある。
前記のように各成分の平均粒径を所定の範囲になるように制御して調製すると取り扱い性がよく、均一に混合し易く、製剤化すると、粒子相互の密な充填が起こり最密充填構造となるので本発明において好ましい。
さらに0.001〜1.5mmの範囲内であってもなるべく広い粒径分布が得られるように制御して調製すると、製剤すると、粒子相互のより密な充填が確実に起こり最密充填構造となるのでより好ましい。
【0039】
なお、このような平均粒径の粉粒体を得るための方法としては、特に制限されず、公知の粉砕方法や篩別方法などから適宜選択することができる。例えば、スタンプミル、ピンミル、振動ミル、ロールミル粉砕法、凍結後粉砕法、ボールミル、ジェットミルなどが挙げられる。
【0040】
また、本発明の発泡性肥料製剤に対して、上記各性能を大きく損なわない範囲において、バインダー、鉱物質微粉末、吸収性微粉末、分解阻止剤、滑剤、着色剤、増量剤、崩壊剤、乾燥剤、薬害軽減剤、植物生育調整成分などを適宜含有することができる。
【0041】
バインダーとしては、例えば澱粉、澱粉誘導体、乳糖、デキストリン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アラビアガム、トラガントガム、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
鉱物質微粉末としては、例えばタルク、クレー、ベントナイト、珪藻土などが挙げられる。
吸収性微粉末としては、例えばホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0042】
本発明において使用される農薬活性成分としては、特に限定されるものではないが、具体的には例えば下記のものを挙げることができる。またこれらの農薬活性成分はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。尚、下記の農薬活性成分名は、農薬ハンドブック(社団法人 日本植物防疫協会発行、1989年)記載の一般名である。
【0043】
除草剤活性成分としては、例えば以下のものが挙げられる。
2,4−D、MCP、MCPB、CNP、MCC、DCPA、ACN、フェノチオール、クロメプロップ、ナプロアニリド、クロメトキシニル、ベンチオカーブ、ビフェノックス、エスプロカルブ、モリネート、ジメピレート、ブタクロール、プレチラクロール、ブロモブチド、メフェナセット、ダイムロン、ベンスルフロンメチル、シメトリン、プロメトリン、ジメタメトリン、ベンタゾン、オキサジアゾン、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナップ、トリフルラリン、ピペロホスなど。
【0044】
殺虫剤活性成分としては、例えば以下のものが挙げられる。
BRP、CVMP、PMP、PAP、DEP、EPN、NAC、MTMC、MIPC、BPMC、PHC、MPMC、XMC、MPP、MEP、ピリミホスメチル、ダイアジノン、イソキサチオン、ピリダフェンチオン、クロルピリホスメチル、バミドチオン、マラソン、ジメトエート、エチルチオメトン、モノクロトホス、ジメチルビンホス、プロパホス、ベンダイオカルブ、カルボスルファン、ベンフラカルブ、チオジカルブ、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、ブプロフェジンなど。
【0045】
殺菌剤活性成分としては、例えば以下のものが挙げられる。
塩基性硫酸銅、塩基性塩化銅、水酸化第二銅、有機硫黄ニッケル塩、キャプタン、チラウム、TPN、フラサイド、IBP、EDDP、チオファネートメチル、ベノミル、イプロジオン、メプロニル、フルトラニル、テフロフラタム、ペンシクロン、メタラキシル、トリフルミゾール、ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシンA、オキシテトラサイクシン、ヒドロキシイソキサゾール、メタスルホカルブ、MAF、MAFE、ベンチアゾール、フェナジンオキシド、ジクロメジン、プロペナゾール、イソプロチオラン、トリシクラゾール、ピロキロン、オキソニック酸、グアザチンなど。
【0046】
農薬活性成分が液体であるか、もしくは水以外の溶媒を添加して液状になっている場合には、農薬活性成分をケイ酸などの粉末給油性担体に収着させた後、使用することができる。また、これらの農薬活性成分が低融点の場合は、結晶化防止のために脂肪酸アルコールエステル、多塩基酸アルコールエステル、多価アルコール脂肪酸エステル、高級アルコールなどの高沸点溶媒を添加することができる。
これらの農薬活性成分の量は、活性成分の種類によって異なるが、一般的には本発明の発泡性肥料製剤に対して0.1〜60質量%の範囲であり、好ましくは1〜50質量%である。
【0047】
本発明において使用される肥料成分としては、カリ源、チッ素源、リン源となるものなどであり、合成品、天然品などいずれでもよく、特に限定されるものではない。具体例として例えば、下記のものを挙げることができる。
堆肥、きゅう肥、家畜の糞尿、人糞尿、草木灰、木灰、稲わら、麦わら、籾がら、米糠、麦糠、大豆鞘、窒素質肥料、リン酸質肥料、加里質肥料、複合肥料、石灰質肥料、ケイ酸質肥料、苦土肥料、マンガン質肥料、ほう素質肥料、微量要素複合肥料、有機質肥料、魚かす、家畜および家きんの糞、家畜および家きんの糞処理物、家畜および家きんの糞燃焼灰、汚泥肥料、製糖副産石灰、転炉さい、貝灰石粉末、各種農産物のかす、食品工業のかす、発酵工業の廃棄物、発酵粕、繊維工業の廃棄物、水産工業の廃棄物、下水汚泥、都市ゴミコンポスト、骨灰など。これらの肥料成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
また、これらの肥料成分以外に、ゼオライト、ベントナイト、バーミキュライト、泥炭、パーライト、腐食酸質資材、木炭、ポリエチレンイミン系資材、ポリビニールアルコール系資材などの土壌改良剤を混合することも可能である。これらの肥料成分は、乾燥した原料を使用する方が剤の製造上有利である。
これらの肥料成分の量は、肥料成分の種類、使用目的、使用方法によって異なるが、一般的には本発明の発泡性肥料製剤に対して0.1〜90質量%の範囲であり、好ましくは1〜50質量%である。
【0049】
本発明において使用される界面活性剤としては、例えばアルキルスルホコハク酸塩、縮合リン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル酢酸エステル硫酸塩などのアニオン系界面活性剤が挙げられ、その塩としてアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。
【0050】
さらにポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのノニオン系界面活性剤などを挙げることができる。
【0051】
また、必要に応じてカチオン系、両イオン系界面活性剤を用いてもよい。例えば、雨媒伝播性病原カンキツ黒点病菌(D.citri)の対象薬剤を成分に混入する場合はカチオン系、風媒伝播性病原ウリ類うどんこ病菌(S.fuliginea)の対象薬剤を成分に混入する場合はアニオン系、また中間型伝播性病原イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)の対象薬剤を成分に混入する場合はノニオン系などを好ましく使用することができる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明において使用する界面活性剤のHLBは特に限定されないが、発泡性や保存安定性などを損なうことなく水濡れ性を向上させて水溶性や発泡性を改善して各成分が容易に、より確実に均一に溶解、拡散するようにしたり、あるいは逆に発泡性や保存安定性などを損なうことなく撥水性を向上させて水分吸収性や潮解性を低減させて保存安定性を向上させるため、HLB3〜20の範囲が好ましく、HLB8〜13の範囲がより好ましい。
HLBが3未満あるいはHLBが20を越えると発泡性や保存安定性などを損なう恐れがあるので、好ましくない。
【0053】
本発明でいう製剤とは、顆粒剤、錠剤、パック剤、粉末、カプセルなどを包含する。
本発明でいう顆粒剤とは、粉末状の固体状組成物を顆粒状に造粒したものであり、その形状は造粒法により異なり、球状を呈するものから不定形のものまで種々存在する。顆粒剤の平均粒径は約0.01〜10mm、好ましくは約0.02〜4mmの範囲である。
【0054】
本発明でいう錠剤とは、粉末状あるいは顆粒状の組成物を一定の形に圧縮成形したものであり、円柱形をしたものから不定形のものまで種々存在する。錠剤の大きさは施用方法により異なるが、円柱形のものの場合、通常直径約5〜100mm、厚さ約1〜50mmの範囲であり、1錠当たりの重量は約0.1〜300g、好ましくは約1〜100g、さらに好ましくは約5〜70gである。
【0055】
本発明の発泡性肥料製剤は、水に溶解して散布、潅注、浸漬する方法の他に、錠剤あるいは顆粒剤を、手撒きや、散粒機によって均一に直接施用することができる。
例えば、湛水条件下の水田に10アール当たり2〜200個、好ましくは5〜50個の錠剤を直接施用すると、水との接触により炭酸ガスを発生してカリウムなどの有効成分が水田中に速やかに溶出、拡散する。その溶出、拡散に要する時間は、数分〜数時間程度と短く、特殊な機械を必要とせず、しかも直接水田に入ることなく畦畔などから投げ込めばよいので、作業の面、保管の面、輸送の面からも利用価値の高いものである。
【0056】
また、本発明の発泡性肥料製剤は、例えばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール誘導体などを素材とした高分子フィルムや水溶性紙を用いて、上記の顆粒剤あるいは錠剤を包装し密封したパック剤とすることも可能である。
【0057】
本発明の発泡性肥料製剤の製造方法は特に限定されるものではない。具体的には、例えば下記の方法で製造できる。
顆粒剤の製造方法の例としては、炭酸カリウム粉粒体もしくは炭酸水素カリウム粉粒体、水溶性固体酸粉粒体、必要に応じてその他の肥料成分粉粒体や補助剤を必要量添加し、均一に混合した粉末状の固体状組成物を、ローラーコンパクター、ブリケッティングマシンなどの乾式造粒機またはスラッグマシンを用いてシート状、ピロー状造粒物またはスラッグとし、これを整粒機などで粗粉砕して、平均粒径が約0.01〜10mm、好ましくは約0.02〜4mmの範囲の顆粒剤を得る方法を挙げることができる。
【0058】
また、造粒機を使用する前の粉末状の固体状組成物、例えば水に沈む位の平均粒径が約0.01mm未満の粉末状の固体状組成物をそのまま圃場で使用することも可能であるが、取り扱いを考慮すると、例えばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール誘導体などを素材とした水溶性高分子フィルムや水溶性紙を用いて、上記の粉末を包装し密封したパック剤として使用することが好ましい。
【0059】
錠剤の製造方法の例としては、前記粉末状の固体状組成物あるいは上記顆粒剤を一定重量ずつ臼にいれて打錠して錠剤とする例を挙げることができるが、工業的にはブリケッティングマシンまたはタブレッティングマシンなどで連続的に加圧成形して得ることができる。
【実施例】
【0060】
次に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1):
炭酸ナトリウム(和光純薬(株)製)3.15kg、クエン酸(和光純薬(株)製)3.15kg、硫酸アンモニウム(和光純薬(株)製)4.72kg、塩化カリウム(和光純薬(株)製)1.58kg、バインダー(ポリエチレングリコール、平均分子量6000、PEG#6000P、和光純薬(株)製)0.63kg、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、和光純薬(株)製)0.13kgを均一に混合した後、打錠機(菊水(株)製)により成形を行い、直径50mm、厚さ15mmの製剤a13.36kgを得た。
上記の各成分の配合は、水田10アール当たりチッ素1kg、カリ1kg施用することを前提にして決定したものである。
製剤aについて下記の溶解性試験および保存安定性試験を行い、その結果を表1に示す。
保存安定性試験の結果、やや包装が膨むが、安定性は良好であった。溶解性試験の結果、溶解時間は25分であり、溶解性が良好であった。
【0062】
(溶解性試験)
常温の水10リットルに得られた製剤の1錠を溶解し、全部溶解するまでの溶解時間(分)を測定する。
○:溶解時間が短く、溶解性が良好である。
△:溶解時間がやや長く、溶解性がやや良好である。
×:溶解時間が長く、溶解性不良である。
【0063】
(保存安定性試験)
得られた製剤をアルミニウム蒸着フィルムで包装し、40℃で1ケ月保存した後の包装の膨らみ具合などを肉眼で観察した。
○:包装の膨みがないかあるいはやや膨らむが、安定性が良好である。
△:包装が膨らみ、安定性がやや不良である。
【0064】
(実施例2):
炭酸水素カリウム(和光純薬(株)製)2.13kg、クエン酸(和光純薬(株)製)2.13kg、硫酸アンモニウム(和光純薬(株)製)4.72kg、バインダー(ポリエチレングリコール、平均分子量6000、PEG#6000P、和光純薬(株)製)0.45kg、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、和光純薬(株)製)0.09kgを均一に混合した後、打錠機(菊水(株)製)により成形を行い、直径50mm、厚さ15mmの製剤b9.15kgを得た。
上記の各成分の配合は、水田10アール当たりチッ素1kg、カリ1kg施用することを前提にして決定したものである。
製剤bについて前記の溶解性試験および保存安定性試験を行い、その結果を表1に示す。
保存安定性試験の結果、包装が膨み、安定性はやや不良であった。溶解性試験の結果、溶解時間は1時間10分であり、溶解性は良好であった。
【0065】
(実施例3):
炭酸カリウム(和光純薬(株)製)1.47kg、クエン酸(和光純薬(株)製)1.47kg、硫酸アンモニウム(和光純薬(株)製)4.72kg、バインダー(ポリエチレングリコール、平均分子量6000、PEG#6000P、和光純薬(株)製)0.38kg、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、和光純薬(株)製)0.08kgを均一に混合した後、打錠機(菊水(株)製)により成形を行い、直径50mm、厚さ15mmの製剤c8.11kgを得た。
上記の各成分の配合は、水田10アール当たりチッ素1kg、カリ1kg施用することを前提にして決定したものである。
製剤cについて前記の溶解性試験および保存安定性試験を行い、その結果を表1に示す。
保存安定性試験の結果、包装の膨みがなく、安定性が良好であった。溶解性試験の結果、溶解時間は15分であり、溶解性も良好であった。
【0066】
(比較例1):
硫酸アンモニウム(和光純薬(株)製)4.72kg、塩化カリウム(和光純薬(株)製)1.58kg、バインダー(ポリエチレングリコール、平均分子量6000、PEG#6000P、和光純薬(株)製)0.31kg、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)(和光純薬(株)製)0.06kgを均一に混合した後、打錠機(菊水(株)製)により成形を行い、直径50mm、厚さ15mmの製剤d(無発泡性製剤)6.68kgを得た。
上記の各成分の配合は、水田10アール当たりチッ素1kg、カリ1kg施用することを前提にして決定したものである。
製剤dについて前記の溶解性試験および保存安定性試験を行い、その結果を表1に示す。
保存安定性試験の結果、包装の膨みがなく、安定性は良好であった。溶解性試験の結果、溶解時間が2時間45分であり、溶解性が不良であった。
【0067】
【表1】

【0068】
(実施例4):
実施例1の製剤aと同じ組成の混合物の錠剤を下記のようにして作成し、その錠剤を用いて、施設内にビニールシートを用いて図1に示したようなミニ水田を設置して分散性試験を行った。
すなわち、実施例1の製剤aと同じ組成の混合物を直径20mmのタブレッテイングマシンにて厚さ5mmの錠剤(約3〜4g程度の錠剤)に加工して使用した。
施用量は、設置した5m×5m×高さ10cmのミニ水田に深さ5cmになるように湛水状態とし(水量1.25t、水温20℃)、カリ成分(K2 Oとして)が10gになるように得られた錠剤を刃物でカットして調製した。
調製した錠剤をミニ水田の中心部(H地点)に、静かに入れ、投入から30分後、1時間後、5時間後の分散の様子をH地点およびH地点から3m離れた各4隅(A〜D地点)で下記の定量分析試験法により定量分析した。
【0069】
(定量分析試験法):
原子吸光測光法にて定量分析した。
【0070】
そして得られた分析値を、剤中の水溶性カリウムが均一分散した場合の理論値(8質量ppm)で除した比率(%)=[(分析値)/(8質量ppm)]×100を算出した。
そして得られた分析値および前記比率(%)を表2に示した。
【0071】
(実施例5):
実施例2の製剤bと同じ組成の混合物を用いた以外は実施例4と同様にしてH地点および各4隅(A〜D地点)の定量分析を行い、得られた分析値および前記比率(%)を表3に示した。
【0072】
(実施例6):
実施例3の製剤cと同じ組成の混合物を用いた以外は実施例4と同様にしてH地点および各4隅(A〜D地点)の定量分析を行い、得られた分析値および前記比率(%)を表4に示した。
【0073】
(比較例2):
比較例1の製剤d(無発泡性製剤)と同じ組成の混合物を用いた以外は実施例4と同様にしてH地点および各4隅(A〜D地点)の定量分析を行い、得られた分析値および前記比率(%)を表5に示した。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
表2〜4から、本発明の実施例4〜6の場合は、いずれも錠剤が溶け終わった直後の30分後では、やや成分のバラつきが見られたが、1時間後ではほぼ均一に成分が分散していることが判る。
それに対して、比較例2の無発泡性錠剤の場合は、泡による水の拡散がないため、錠剤の溶解性・崩壊性が極端に悪く、錠剤が全て崩壊し溶解するまでに約2時間を要した。
また、表5から完全溶解後の5時間後の分散状態も悪く、投入地点(H地点)で理論値の約500%という高い比率が得られ、逆に各4隅(A〜D地点)では理論値の数%という低い比率が得られたことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の発泡性肥料製剤は、例えば、顆粒剤または錠剤などにすることによって、水中に投入すると発泡成分の炭酸塩などの粉粒体と水溶性固体酸粉粒体が反応して炭酸ガスを発生し、カリウム、チッ素、リンなどの肥料成分が容易に、しかも均一に溶解、拡散するので、小型で1単位当たりの質量が小さく、そして施用量が少なくてよく、作業時間の短縮、省力化が可能となり、保存安定性がよく、取り扱いが便利であり、しかも安価であるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】炭酸カリウム粉粒体および水溶性固体酸粉粒体とからなる本発明の発泡性肥料製剤の1例の顕微鏡写真を模式的に説明する断面説明図である。
【図2】ビニールシートを用いて作成した分散性試験用のミニ水田を説明する平面説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1 発泡性肥料製剤
2A、2B、2C・・・・・ 炭酸カリウム粉粒体の粒子
3A、3B、3C・・・・・ 水溶性固体酸粉粒体の粒子
H ミニ水田の中心部
A〜D ミニ水田のH地点から3m離れた各4隅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体と水溶性固体酸粉粒体とからなる発泡成分と、必須成分として配合されるカリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分とを含有する固体状組成物からなることを特徴とする発泡性肥料製剤。
【請求項2】
カリウム源としての炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体と水溶性固体酸粉粒体とからなる発泡成分と、必要に応じて配合されるチッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分とを含有する固体状組成物からなることを特徴とする発泡性肥料製剤。
【請求項3】
前記カリウム源が炭酸カリウム粉粒体であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の発泡性肥料製剤。
【請求項4】
製剤全体中の炭酸カリウム粉粒体の含有量が5〜80質量%であることを特徴とする請求項3記載の発泡性肥料製剤。
【請求項5】
各成分中の水分の含有量を調整して製剤中の水分の全含有量が5質量%以下となるように制御したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の発泡性肥料製剤。
【請求項6】
炭酸塩粉粒体および/または炭酸水素塩粉粒体の平均粒径と、水溶性固体酸粉粒体の平均粒径と、カリウム源、チッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分粉粒体の平均粒径とがいずれも0.001〜1.5mmであり、バインダーを用いないか、あるいは極小量のバインダーを用いて製剤化されていることを特徴とする請求項1記載の発泡性肥料製剤。
【請求項7】
前記カリウム源としての炭酸カリウム粉粒体および/または炭酸水素カリウム粉粒体の平均粒径と、前記水溶性固体酸粉粒体の平均粒径と、必要に応じて配合されるチッ素源およびリン源から選ばれる少なくとも1つの肥料成分粉粒体の平均粒径とがいずれも0.001〜1.5mmであり、バインダーを用いないか、あるいは極小量のバインダーを用いて製剤化されていることを特徴とする請求項2記載の発泡性肥料製剤。
【請求項8】
製剤を水に溶解した際のpHが2〜10であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の発泡性肥料製剤。
【請求項9】
必要に応じて農薬活性成分、界面活性剤から選ばれる少なくとも1種以上を適量含有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の発泡性肥料製剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−238386(P2007−238386A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64550(P2006−64550)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(502036044)株式会社ファイトクローム (1)
【Fターム(参考)】