説明

発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物およびその発泡成形体

【課題】耐熱性、機械的強度、柔軟性、変形後の回復性のバランスに優れる発泡成形体を好適に製造することができる発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】プロピレン単独重合体およびプロピレン・α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むプロピレン系樹脂組成物であって、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピーク温度(Tm)が140〜165℃の範囲にあり、かつ融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが50mJ/mg未満であり、温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の50重量%以下であることを特徴とする発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の材料として好適なプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン発泡成形体は、耐候性、耐薬品性、加工性、衛生性、リサイクル性に優れており、自動車の内装材、断熱材、土木・建築の目地材、吸音材、スポーツ用品あるいは食品包装の緩衝材、空調設備の断熱材などに広く利用されている。ポリオレフィン発泡成形体のうちポリエチレン発泡成形体は、柔軟性、伸び性などに優れているが、耐熱性、機械的強度などに問題がある。一方、より高融点であるポリプロピレン発泡成形体は、ポリエチレン発泡成形体の問題点である耐熱性、機械的強度に優れているが、柔軟性が不足すると共に、変形後の回復性が劣るという問題がある。
【0003】
また、ポリオレフィン発泡成形体以外の発泡成形体、例えばポリウレタン発泡成形体は、リサイクル性において問題がある。
これらの問題に対して、特定の線状低密度ポリエチレンを含有する発泡性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、特定のポリプロピレン系樹脂と特定のポリエチレン系樹脂とを含有するオレフィン系樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、さらに融解エネルギーが特定の範囲にある架橋オレフィン系樹脂発泡体(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、何れの場合も、耐熱性および機械的強度と、柔軟性および変形後の回復性とのバランスに優れる発泡成形体を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開平05−247247号公報
【特許文献2】特開平07−070350号公報
【特許文献3】特開2000−248097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐熱性、機械的強度、柔軟性および変形後の回復性のバランスに優れる発泡成形体を好適に製造することができる発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体およびプロピレン・α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むプロピレン系樹脂組成物であって、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピーク温度(Tm)が140〜165℃の範囲にあり、かつ融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが50mJ/mg未満であり、温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の50重量%以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR;JIS K7210、230℃、荷重2.16kg)が0.01〜30g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0008】
上記α−オレフィンは、エチレンであることが好ましい。
また、本発明の発泡成形体は、上記発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物を発泡させて得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、その融解ピーク温度(Tm)が140〜165℃の範囲にあり、ポリエチレン系樹脂に比べ高い。このため、従来のポリエチレン発泡成形体が耐熱性あるいは機械的強度で問題になる用途においても、前記組成物を発泡させて得られる発泡成形体を有利に使用することができる。
【0010】
さらに、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、その融解エネルギーおよび温度上昇溶離分別における80℃以上の溶出成分量が通常のプロピレン系樹脂に比べ小さい。このため、従来のポリプロピレン発泡成形体が柔軟性あるいは変形後の回復性で問題になる用途においても、前記組成物を発泡させて得られる発泡成形体を有利に使用することができる。
【0011】
即ち、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物を発泡させて得られる発泡成形体は、耐熱性および機械的強度と、柔軟性および変形後の回復性とのバランスに優れる、従来には無かったポリオレフィン発泡成形体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物およびその発泡成形体について具体的に説明する。
【0013】
〔発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物〕
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体およびプロピレン・α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「プロピレン系樹脂」ともいう。)を含むプロピレン系樹脂組成物であって、(1)示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピーク温度(Tm)、(2)示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギー、および(3)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が以下に記載する範囲にあることを特徴とし、さらに(4)メルトフローレート(MFR)が以下に記載する範囲にあることが好ましい。
【0014】
<要件(1):融解ピーク温度(Tm)>
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピーク温度(Tm)が、140〜165℃、好ましくは145〜165℃、さらに好ましくは150〜165の範囲にある。融解ピーク温度(Tm)が前記範囲にあると、前記組成物を発泡させて得られる発泡成形体は、耐熱性および機械的強度に優れる。
【0015】
<要件(2):融解エネルギー>
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが、50mJ/mg未満、好ましくは3〜47mJ/mg、さらに好ましくは5〜45mJ/mgの範囲にある。融解エネルギーが前記範囲にあると、前記組成物を発泡させて得られる発泡成形体は、柔軟性および変形後の回復性に優れる。
【0016】
<要件(3):温度上昇溶離分別(TREF)>
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、温度上昇溶離分別(TREF)によ
って得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の50重量%以下、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜50重量%の範囲にある。溶出温度80℃以上における溶出成分量が前記範囲にあると、前記組成物を発泡させて得られる発泡成形体は、柔軟性および変形後の回復性に優れる。
【0017】
なお、上記の温度上昇溶離分別とは公知の分析法であって、原理的には、高温で測定対象試料を溶媒に完全に溶解させた後に冷却して、溶液中に存在させておいた不活性担体の表面に薄いポリマー層を形成させる。このとき、結晶化しやすい高結晶性成分から、結晶化しにくい低結晶性成分、非晶性成分の順にポリマー層が形成される。次いで、連続または段階的に昇温すると、前記と逆に、非晶性成分、低結晶性成分から溶出し、最後に高結晶性成分が溶出する。このようにして、各温度での溶出成分量と溶出温度によって描かれる溶出曲線とからポリマーの組成分布を分析するものであり、測定方法の詳細については、例えばJournal of Applied Polymer Science,Vol.26,4217〜4231(1981)に記載されている。
【0018】
<要件(4):メルトフローレート(MFR)>
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR;JIS K7210、230℃、荷重2.16kg)が、通常0.01〜30g/10分、好ましくは0.02〜20g/10分、より好ましくは0.03〜10g/10分の範囲にある。MFRが前記範囲にあると、前記組成物を発泡させて得られる発泡成形体は、成形性と機械的強度および外観とのバランスに優れる。
【0019】
<プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体>
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物に用いられる上記プロピレン単独重合体としては、立体規則性が高く高結晶性のプロピレン単独重合体、立体規則性が低く非晶性または低結晶性のプロピレン単独重合体などが挙げられる。これらは、上記要件(1)〜(3)を充足するように2種以上を適宜混合して用いるか、あるいは上記プロピレン単独重合体と後述のプロピレン・α−オレフィン共重合体とを適宜混合して用いる。なお、高結晶性のプロピレン単独重合体を用いる場合、発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物における高結晶性のプロピレン単独重合体の含有量は、通常50重量%以下である。
【0020】
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物に用いられる上記プロピレン・α−オレフィン共重合体は、プロピレンと炭素数2以上のα−オレフィン(ただし、プロピレンを除く。以下同じ。)とのランダムまたはブロック共重合体である。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記α−オレフィンとしては、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3−エチル−1−ペンテン、ジメチル−1−ペンテン、メチルエチル−1−ペンテン、ジエチル−1−ヘキセン、トリメチル−1−ペンテン、ジメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ヘプテン、ジメチル−1−オクテン、エチル−1−オクテン、メチル−1−ノネン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどが挙げられる。これらの中では、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが好ましく、中でもエチレンが最も好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記プロピレン・α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィン由来の構成単位の含有量は、通常0mol%を超えて80mol%以下、好ましくは0.2〜70mol%
、さらに好ましくは0.4〜60mol%の範囲にある。これらの中では、α−オレフィン由来の構成単位の含有量が10mol%以下の共重合体は、上記要件(1)を充足する共重合体となり、α−オレフィン由来の構成単位の含有量が10mol%を超える共重合体は、上記要件(2)および(3)を充足する共重合体となり易い。したがって、α−オレフィン由来の構成単位の含有量が異なる共重合体を2種以上併用するか、上記プロピレン単独重合体と混合することにより、上記要件(1)〜(3)を充足するプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体あるいはプロピレン・α−オレフィン共重合体は、周期律表第IV族の遷移金属を用いるメタロセン化合物とメチルアルミノキサンまたはアルキルアルミニウムもしくはアルキルアルミニウムハライドとからなるメタロセン触媒、バナジウム系触媒、三塩化チタンあるいは四塩化チタンを塩化マグネシウムなどのマグネシウム化合物に担持させたチタン系触媒、アニオン重合触媒、ラジカル重合触媒などの存在下に、プロピレンを単独重合、またはプロピレンとα−オレフィンとを共重合することにより得られる。
【0024】
重合は、スラリー重合、バルク重合、気相重合、液相重合などの何れの方法でもよい。こうした重合は、バッチ式、セミバッチ式、連続式による何れの方式を採用してもよく、また、単段重合あるいは多段重合の何れの方式を採用してもよい。なお、かかる多段重合においては、上記重合体は、気相重合または液相重合で製造してもよく、気相重合と液相重合とを組み合わせて製造してもよい。また、重合中、水素を導入することにより分子量を調節したり、得られた重合体を有機過酸化物などの分子量調節剤(分解剤)により分子量を調節してもよい。
【0025】
なお、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物には、プロピレン単独重合体およびプロピレン・α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロピレン系樹脂が、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上含まれる。
【0026】
<添加剤>
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、加工安定剤、耐候安定剤、分解剤、中和剤、結晶核剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤を添加してもよい。前記添加剤の添加量は、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物を発泡させて得られる発泡成形体に要求される諸特性あるいは成形条件に応じて適宜決定すればよい。
上記分解剤としては、例えばパーヘキサ25B(日本油脂製)などの過酸化物が挙げられる。
【0027】
〔発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物の製造方法〕
上記要件(1)〜(3)、好ましくは要件(4)を充足する本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、以下の方法で得ることができる。
【0028】
プロピレン系樹脂の融解ピーク温度(Tm)および融解エネルギーは、得られるプロピレン系樹脂の立体規則性と結晶性とに依存する。即ち、プロピレン系樹脂の立体規則性が高いとその融解ピーク温度(Tm)は通常165℃以上になるが、同時に融解エネルギーも通常100mJ/mg以上になる。一方、プロピレン系樹脂の立体規則性を低くしたり、プロピレンと共重合させるα―オレフィンの量が増えると結晶性が低下し、融解エネルギーが通常1mJ/mg以下になる。
【0029】
一般的に、融解ピーク温度(Tm)が上記要件(1)を充足するプロピレン系樹脂は、上記公知の触媒を用い、プロピレンを単独重合するか、プロピレンと少量のα―オレフィ
ンとを共重合することにより得られる。しかしながら、このようにして得られたプロピレン系樹脂の融解エネルギーは、通常60〜100mJ/mgの範囲にある。
【0030】
一方、非晶性もしくは低結晶性のプロピレン単独重合体、またはプロピレン・α−オレフィン共重合体は、通常は融解ピーク温度(Tm)を有さないか、140℃未満である。また、それらの融解エネルギーは通常0〜30mJ/mgの範囲にある。
【0031】
したがって、融解ピーク温度(Tm)が140〜165℃、好ましくは145〜165℃の範囲にあるプロピレン単独重合体またはプロピレン・α―オレフィン共重合体(高結晶性成分)と、融解エネルギーが0〜30mJ/mg、好ましくは0〜20mJ/mgの範囲にある非晶性もしくは低結晶性のプロピレン単独重合体またはプロピレン・α―オレフィン共重合体(低結晶性成分)とを適宜混合することにより、上記要件(1)および要件(2)を共に充足するプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
高結晶性成分と低結晶性成分との混合は、先に高結晶性成分を所定の量で重合した後、引続き低結晶性成分を重合する、いわゆるブロック共重合法により製造してもよいし、予め得られた高結晶性成分と低結晶性成分とを混合あるいは溶融混練して製造してもよい。これらの中では、ブロック共重合法により得られた2種以上のプロピレン系樹脂を混合してプロピレン系樹脂組成物を製造することが好ましい。
【0033】
また、プロピレン系樹脂組成物の温度上昇溶離分別(TREF)の溶出温度80℃以上における溶出成分量(要件(3))は、プロピレン単独重合体またはプロピレン・α―オレフィン共重合体の立体規則性を低くすると減少し、あるいはプロピレン・α―オレフィン共重合体中のα―オレフィン含有量を増すと減少する。ここで、立体規則性は主に重合触媒の選択によって調節することが可能である。
【0034】
また、プロピレン系樹脂組成物のMFR(要件(4))は、プロピレン系樹脂の重合条件により調節可能である他、プロピレン系樹脂に添加する上記分解剤の種類と量、および分解温度ならびに分解時間を選択することでも適宜調節することができる。
【0035】
〔発泡成形体の製造〕
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物は、発泡剤と混合して、従来から公知の方法で発泡成形することができる。発泡成形方法としては、例えば常圧発泡、加圧発泡、押出発泡、射出発泡、プレス発泡、型内発泡、ビーズ発泡などが挙げられる。
【0036】
また、発泡成形する際に、適度な粘弾性を発泡成形体に付与するためにプロピレン系樹脂組成物を架橋処理してもよい。架橋処理する場合には、過酸化物を用いた化学架橋あるいは電子線架橋を適用することができ、必要に応じて架橋助剤としてジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーを用いることができる。
【0037】
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物を発泡成形して得られる発泡成形体の発泡倍率は、通常1.3〜40倍、好ましくは2〜30倍の範囲にある。
【0038】
<発泡剤>
上記発泡剤としては、物理発泡剤あるいは化学発泡剤などが挙げられる。前記物理発泡剤あるいは化学発泡剤は、それぞれを単独で用いてもよいが、物理発泡剤と化学発泡剤とを併用してもよい。
【0039】
上記物理発泡剤としては、例えば窒素ガス、二酸化炭素、空気、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、ジクロロエタン、ジクロロジフルオロメタン、ジク
ロロモノフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタンなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記物理発泡剤は、液体状態、超臨界状態、および気体状態のいずれも使用可能である。
【0040】
上記化学発泡剤としては、例えば重曹;重曹とクエン酸、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸などの有機酸との混合物;トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート、ジアゾアミノベンゼン、トリヒドラジノトリアジンなどのアゾまたはジアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジドなどのヒドラジン誘導体;N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ化合物;p−トルエンスルホニルセミカルバジド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジドなどのセミカルバジド化合物、アジ化合物、トリアゾール化合物などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、上記発泡剤と共に、発泡助剤として酸化亜鉛、尿素などを、気泡調整剤としてタルク、ステアリン酸亜鉛、ケイ酸カルシウムなどを用いてもよい。
上記発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、成形方法、あるいは目的とする発泡倍率により異なるので特に限定されないが、上記発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0042】
〔発泡成形体〕
本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物を発泡成形して得られる発泡成形体は、耐熱性および機械的強度と、柔軟性および変形後の回復性とのバランスに優れている。
【0043】
したがって、本発明の発泡成形体は、耐候性、耐薬品性、加工性、衛生性、リサイクル性に優れており、自動車の内装材、断熱材、土木・建築の目地材、吸音材、スポーツ用品あるいは食品包装の緩衝材、空調設備の断熱材などに広く利用することができる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物およびその発泡成形体について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0045】
≪示差走査熱量測定≫
プロピレン系樹脂組成物の融解ピーク温度は、Diamond DSC(Perkin−Elmer社製)を用いて、JIS K7121に準拠して求めた値であり、窒素気流下、以下の条件で測定し、下記(3)の過程から融解ピーク温度を求めた。
(1)500℃/分の速度で230℃に昇温してサンプルを一度融解させ、10分保持する。
(2)10℃/分の速度で30℃に降温して、1分保持する。
(3)30℃から10℃/分の速度で230℃に昇温する。
【0046】
また、プロピレン系樹脂組成物の140℃以上の融解エネルギーは、上述の融解ピーク温度測定と同じ条件で測定し、JIS K7122に準拠して全融解ピーク面積から求められる融解エネルギーのうち、140℃以上の融解ピーク面積から求められる融解エネルギーに相当する値である。
【0047】
≪温度上昇溶離分別≫
プロピレン系樹脂組成物の温度上昇溶離分別は、以下の条件で測定した。
カラム:4.2mmφ×150mm(ステンレス製)
充填剤:クロモソルブP(30〜60メッシュ)
溶媒:o−ジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
試料濃度:6mg/ml
試料注入量:0.5ml
結晶化:135℃から5℃/hrの速度で0℃に降温して、30分保持する。
溶出:0℃から40℃/hrの速度で135℃に昇温する。
検出器:IR(MIRAN社製、検出波長3.41μm)
【0048】
≪メルトフローレート(MFR)≫
プロピレン系樹脂組成物のMFRは、JIS K7210(230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定した。
【0049】
≪発泡倍率≫
発泡成形体の比重を水中置換法により測定し、発泡倍率を算出した。
≪圧縮硬さ≫
縦10mm、横10mm、厚さ約10mmの直方体の試験片の厚さを測定した後、圧縮試験機に配置して、10mm/分の速度で初期の厚さの25%だけ圧縮して停止し、20秒後の荷重から応力を算出して圧縮硬さとした。
【0050】
≪25%圧縮歪み≫
縦10mm、横10mm、厚さ約10mmの直方体の試験片の厚さを測定し、これをt0とした。次に試験片を圧縮試験機に設置して、10mm/分の速度で初期の試験片の厚さの25%だけ圧縮固定し、この時の厚さをt1とした。このまま23℃の条件で22時間放置し、その後、圧縮を開放して、23℃の条件で24時間放置した後、試験片の厚さを測定して、その厚さをt2とした。(t0−t2)/(t0−t1)×100(%)を25%圧縮歪みとした。
【0051】
≪引張試験≫
小型のダンベル打抜型(全長:50mm、平行部長さ:30mm、平行部幅:5mm、チャック部幅10mm)で打抜いた試験片をチャック間距離30mmで引張試験機に取り付け、引張速度10mm/分で引張り、切断にいたるまでの最大荷重と切断時のチャック間距離とから、引張破断強度と引張破断伸びとを算出した。
【0052】
〔製造例1〕
(1)固体触媒成分の調製
窒素ガスで充分に置換した内容積500Lのステンレス鋼製の触媒反応槽に、ジエトキシマグネシウム16kg、精製ヘプタン80L、四塩化ケイ素2.4L、およびフタル酸ジエチル2.3Lを仕込んだ。前記触媒反応槽内を90℃に保ち、攪拌しながら四塩化チタン77Lを加え、110℃で2時間反応させた後、固体成分を分離して80℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタン122Lを加え、110℃で2時間反応させた後、精製ヘプタンで充分洗浄し、固体触媒成分を得た。
【0053】
(2)予備重合
窒素ガスで充分に置換した内容積80Lのステンレス鋼製重合反応槽に、上記(1)で得られた固体触媒成分4kg、精製ヘプタン40L、トリエチルアルミニウム1.6mol、およびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.4molを仕込んだ。前記重合反応槽内を40℃に保ち、攪拌しながらプロピレンを連続的に2時間供給し、ほぼ常圧で予
備重合した。プロピレンの供給を停止した後、前記重合反応槽内を40℃で30分間保持した後、精製ヘプタンで充分洗浄し、予備重合触媒を得た。
【0054】
(3)重合
窒素ガスで充分に置換した内容積5Lの攪拌機付きステンレス鋼製重合反応槽に、液体プロピレンを3L、トリエチルアルミニウム1.7mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.17mmol、および水素を気相中の濃度が6.5mol%になるように加え、該重合反応槽内の温度を55℃に昇温した。次に、上記(2)で得られた予備重合触媒をチタン原子換算で0.011mmol加え、55℃で30分間プロピレン重合を行った(工程1)。次に、エチレンを気相中の圧力が0.16MPaとなる量で供給し、55℃で100分間プロピレン/エチレン共重合を行った(工程2)。反応終了後、降温し未反応モノマーをパージして、ポリプロピレン成分およびプロピレン/エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であるポリマー(A)を得た。得られたポリマー(A)を、70℃で1時間乾燥した。このポリマー(A)の一部を採取し分析した結果、MFRは0.05g/10分、エチレン由来の構成単位の含有量は30mol%であった。
【0055】
〔製造例2〕
製造例1で得られたポリマー(A)100重量部に対して、酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.2重量部、安定剤としてDHT−4A(協和化学社製)0.05重量部、および分解剤として過酸化物であるパーヘキサ25B−40(日本油脂製;純度40%)1.2重量部を配合し、攪拌混合を充分行った。次に、KZW31二軸押出機(テクノベル社製、スクリュー径31mm、L/D=30)を用い、シリンダー温度240℃、ダイス温度200℃、スクリュー回転数300rpm、押出量16kg/hで混練してポリマー(B)を得た。得られたポリマー(B)のMFRは75g/10分であった。
【0056】
〔製造例3〕
(1)固体触媒成分の調製、および(2)予備重合は、製造例1と同様の条件で行った。
【0057】
(3)重合
窒素ガスで充分に置換した内容積5Lの攪拌機付きステンレス鋼製重合反応槽に、液体プロピレンを3L、トリエチルアルミニウム1.7mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.17mmol、および水素を気相中の濃度が9.0mol%になるように加え、該重合反応槽内の温度を55℃に昇温した。次に、上記(2)で得られた予備重合触媒をチタン原子換算で0.011mmol加え、55℃で30分間プロピレン重合を行った(工程1)。次に、エチレンを気相中の圧力が0.23MPaとなる量で供給し、55℃で100分間プロピレン/エチレン共重合を行った(工程2)。反応終了後、降温し未反応モノマーをパージして、ポリプロピレン成分およびプロピレン/エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であるポリマー(C)を得た。得られたポリマー(C)を、70℃で1時間乾燥した。このポリマー(C)の一部を採取し分析した結果、MFRは0.03g/10分、エチレン由来の構成単位の含有量は40mol%であった。
【0058】
〔製造例4〕
製造例2において、製造例1で得られたポリマー(A)100重量部のかわりに製造例3で得られたポリマー(C)100重量部を使用すると共に、過酸化物であるパーヘキサ25B−40(日本油脂製;純度40%)の配合量を0.02重量部にかえた他は製造例2と同様にして、ポリマー(D)を得た。得られたポリマー(D)のMFRは2.0g/
10分であった。
【0059】
〔製造例5〕
製造例2において、製造例1で得られたポリマー(A)100重量部のかわりに製造例1で得られたポリマー(A)60重量部と製造例3で得られたポリマー(C)40重量部とを使用すると共に、過酸化物であるパーヘキサ25B−40(日本油脂製;純度40%)の配合量を0.25重量部にかえた他は製造例2と同様にして、ポリマー(E)を得た。得られたポリマー(E)のMFRは10g/10分であった。
製造例1〜5で得られたポリマー(A)〜(E)の組成などを表1に示す。
【0060】
【表1】

[実施例1]
ポリマー(A)30重量部、ポリマー(B)50重量部、およびポリマー(D)20重量部と、酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.1重量部、イルガフォス168(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.1
重量部、およびステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.1重量部とをヘンシェルミキサーで攪拌混合した。次に、KZW31二軸押出機(テクノベル製、スクリュー径31mm、L/D=30)を用い、シリンダー温度190℃、ダイス温度190℃、スクリュー回転数150rpm、押出量15kg/hで混練してプロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が152.7℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが5.3mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の11.3重量%、MFRが1.9g/10分であった。
【0061】
次に、タンデム式短軸押出機(一段目押出機 スクリュー径:35mm、シリンダー設定温度:240℃、二段目押出機 スクリュー径:50mm、シリンダー設定温度:150℃)の原料供給ホッパーより上記プロピレン系樹脂組成物を12kg/hで供給して溶融させた後、一段目押出機途中より超臨界状態の二酸化炭素を、該プロピレン系樹脂組成物100重量部に対して4.2重量部の割合で圧入した。続いて、二段目押出機の先端に取り付けられた、直径0.8mmの孔が27個配置された多孔ダイ(設定温度:150℃)から前記発泡性のプロピレン系樹脂組成物を押出すことにより、発泡ストランドが集合した角柱形状の押出発泡成形体を得た。
【0062】
上記押出発泡成形体の比重を水中置換法により測定し、発泡倍率を算出した。また、上記押出発泡成形体から縦10mm×横10mm×厚さ10mmの試験片を切り出して、圧縮硬さと25%圧縮歪とを測定した。結果を表2に示す。
【0063】
[実施例2]
樹脂成分をポリマー(A)30重量部、ポリマー(B)20重量部、ポリマー(D)20重量部、およびMFRが60g/10分であるホモポリプロピレン(X)(プライムポリプロ J139)30重量部にかえた他は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が161.9℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが36.2mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の36.5重量%、MFRが1.7g/10分であった。
次に、実施例1と同様にして上記プロピレン系樹脂組成物から押出発泡成形体を得た。
上記押出発泡成形体の発泡倍率、圧縮硬さ、25%圧縮歪を表2に示す。
【0064】
[実施例3]
樹脂成分をポリマー(A)100重量部にかえた他は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が150.3℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが5.4mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の16.4重量%、MFRが0.35g/10分であった。
次に、実施例1と同様にして上記プロピレン系樹脂組成物から押出発泡成形体を得た。
上記押出発泡成形体の発泡倍率、圧縮硬さ、25%圧縮歪を表2に示す。
【0065】
[比較例1]
樹脂成分をポリマー(A)30重量部、ポリマー(D)20重量部、およびホモポリプロピレン(X)50重量部にかえた他は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が163.3℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが55.7mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の51.7重量%、MFRが2.8g/10分であった。
次に、実施例1と同様にして上記プロピレン系樹脂組成物から押出発泡成形体を得た。
上記押出発泡成形体の発泡倍率、圧縮硬さ、25%圧縮歪を表2に示す。
【0066】
[比較例2]
プロピレン系樹脂組成物として、融解ピーク温度が156.9℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが85.8mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の85.9重量%、MFRが3.3g/10分のホモポリプロピレン(Y)(プライムポリプロ E−105PW)を用いて、実施例1と同様にして押出発泡成形体を得た。
上記押出発泡成形体の発泡倍率、圧縮硬さ、25%圧縮歪を表2に示す。
【0067】
【表2】

表2からわかるように、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物から得られる発泡成形体(実施例1〜3)は、140℃以上の融解エネルギーが50mJ/mg以上で、TREFの溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の50重量%を超えているプロピレン系樹脂組成物(比較例1〜2)から得られる発泡成形体と比較して、25%圧縮歪が小さいので、変形後の回復性に優れている。
【0068】
[実施例4]
樹脂成分をポリマー(A)18重量部、ポリマー(B)30重量部、ポリマー(D)1
2重量部、およびポリマー(E)40重量部にかえた他は実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が156.6℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが7.9mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の14.1重量%、MFRが3.4g/10分であった。
【0069】
次に、上記プロピレン系樹脂組成物100重量部と化学発泡剤マスターバッチ ポリスレンEE205(重曹/クエン酸系、永和化成工業製)0.5重量部とをドライブレンドして原料組成物を得た。ギアポンプ(設定温度:180℃)を介してリングダイ(ダイ口径:65mm、ダイリップ間隔:0.8mm、設定温度:180℃)を接続した二軸押出機(スクリュー径:41mm、L/D=28、シリンダー設定温度:C1〜C3=210℃、C4〜C6=180℃)の原料供給ホッパーより、前記原料組成物を30kg/hで供給すると共に、押出機のC4部分より、液化二酸化炭素を原料組成物100重量部に対して0.4重量部の割合で圧入した。リングダイから押出された筒状の樹脂を外径207mmの冷却マンドレル上で二分割して、引き取り機で巻き取り、厚み1.3mm、幅740mmの発泡シートを得た。
【0070】
上記発泡シートの比重を水中置換法により測定し、発泡倍率を算出した。また、縦10mm×横10mmの発泡シートを8枚重ね合わせて厚さ約10mmに調整して、圧縮硬さと25%圧縮歪とを測定した。引張試験の結果を合わせて表3に示す。
【0071】
[実施例5]
樹脂成分をポリマー(A)14重量部、ポリマー(B)24重量部、ポリマー(D)10重量部、ポリマー(E)32重量部、およびMFRが4.8g/10分である発泡用ポリプロピレン(FB3312;日本ポリプロ製)20重量部にかえた他は実施例4と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が161.5℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが27.5mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の28.6重量%、MFRが3.6g/10分であった。
次に、実施例4と同様にして上記プロピレン系樹脂組成物から発泡シートを得た。
上記発泡シートの発泡倍率、引張試験の結果、圧縮硬さ、25%圧縮歪を表3に示す。
【0072】
[実施例6]
樹脂成分をポリマー(A)30重量部、ポリマー(B)40重量部、およびポリマー(E)30重量部にかえた他は実施例4と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が153.8℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが6.5mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の10.0重量%、MFRが2.0g/10分であった。
次に、実施例4と同様にして上記プロピレン系樹脂組成物から発泡シートを得た。
上記発泡シートの発泡倍率、引張試験の結果、圧縮硬さ、25%圧縮歪を表3に示す。
【0073】
[実施例7]
樹脂成分をポリマー(D)60重量部、および発泡用ポリプロピレン(FB3312)40重量部にかえた他は実施例4と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が161.8℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが43.2mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の48.6重量%、MFRが3.1g/10分であった。
次に、実施例4と同様にして上記プロピレン系樹脂組成物から発泡シートを得た。
上記発泡シートの発泡倍率、引張試験の結果、圧縮硬さ、25%圧縮歪を表3に示す。
【0074】
[比較例3]
樹脂成分を発泡用ポリプロピレン(FB3312)20重量部、およびMFRが7g/10分であるホモポリプロピレン(Z)(プライムポリプロ F−704NT)80重量部にかえた他は実施例4と同様にして、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物は、融解ピーク温度が162.1℃、融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが90.3mJ/mg、TREFによって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の87.3重量%、MFRが7.2g/10分であった。
【0075】
次に、実施例4と同様にして上記プロピレン系樹脂組成物から発泡シートを得た。
上記発泡シートの発泡倍率、引張試験の結果、圧縮硬さ、25%圧縮歪を表3に示す。
【0076】
【表3】

表3からわかるように、本発明の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物から得られる発泡シート(実施例4〜7)は、140℃以上の融解エネルギーが50mJ/mg以上で、TREFの溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の50重量%を超えているプロピレン系樹脂組成物(比較例3)から得られる発泡シートと比較して、引張破断伸び(%)が大きく、25%圧縮歪が小さいので、柔軟で変形後の回復性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のプロピレン系樹脂組成部を発泡させて得られる発泡成形体は、耐熱性、機械的
強度、伸び性、柔軟性、および変形後の回復性のバランスに優れると共に、ポリウレタン発泡成形体で問題になるリサイクル性にも優れるので、内装材、断熱材、目地材、吸音材、緩衝材などの用途において極めて有利に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単独重合体およびプロピレン・α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むプロピレン系樹脂組成物であって、
示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピーク温度(Tm)が140〜165℃の範囲にあり、かつ融解ピーク面積から得られる140℃以上の融解エネルギーが50mJ/mg未満であり、
温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、溶出温度80℃以上における溶出成分量が全溶出成分量の50重量%以下である
ことを特徴とする発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
メルトフローレート(MFR;JIS K7210、230℃、荷重2.16kg)が0.01〜30g/10分の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記α−オレフィンが、エチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物を発泡させて得られることを特徴とする発泡成形体。

【公開番号】特開2009−221356(P2009−221356A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67545(P2008−67545)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】