説明

発泡成形品補強用不織布

【課題】発泡品用補強材として、取扱性を維持して、金型追随性に優れ、成形品は、破れや滲み出しがなく、仕上がり形状が良好で、擦過、屈曲、屈折音などの制音機能や耐磨耗性更には不織布強度を向上させて保形耐久性にも優れた発泡ウレタン成形体を得ることができるバネ受け用補強材として特に適した発泡成形品補強材を提供する
【解決手段】短繊維不織布層と部分的に緻密圧着部を形成した長繊維不織布層が積層、短繊維不織布層と長繊維不織布層は部分的に交絡絡合されて、短繊維不織布を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成しており、縦方向の5%伸張時応力が10〜30N/5cmであり、横方向の5%伸張時応力が5〜25N/5cmであり、縦方向の5%伸張時応力と縦方向の30%伸張時応力との差、及び、縦方向の30%伸張時応力と40%伸張時応力との差が、共にに25(N/5cm)以下の値を満足することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、取扱性と発泡成形性に優れた発泡成形品補強用不織布に関する。更には、発泡成形時の耐滲み出し性に特に優れ、成形品は機能性に優れ、軽量化も可能な発泡成形品補強用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、座席等のクッション材として、発泡ウレタン成形体が広く用いられており、一般的に、発泡ウレタン成形体の成形時に補強材が一体化されたものが用いられている。かかる補強材は、発泡ウレタン成形体と金属スプリング(以後、「バネ」と記載する場合もある)の間に位置して、金属スプリングのクッション作用を均等に分散すると共に、金属スプリングから受ける摩擦から発泡ウレタン成形体を保護するという役割を担うものである。そして、消費者が求める品質が高度になるにつれ、座席等の使用時に、補強材に滲み出したウレタンと金属スプリングの摩擦により発する擦過音を解消する制音性の要望が高まっている。そこで、これに応える補強材として、嵩高層と緻密層とを有し、嵩高層側にウレタンを含浸させ、緻密層でウレタンの滲み出しを防止する補強材が特許文献1で提案されている。この方法では、発泡層が緻密層面にまで達して、緻密層が薄いため滲み出し防止効果が不十分で滲み出しによる擦過音の増大や緻密層の強度不足による耐久性が劣る問題がある。
【0003】
特許文献1の改良法として、嵩高層(基材層)の目付を大きくした提案が特許文献2及び特許文献3で提案されている。この方法でも、特許文献1と同様に、発泡層が緻密層面にまで達して、緻密層からの滲み出し防止効果が不十分で滲み出しにより、擦過音が増大する問題がある。
【0004】
高目付単層不織布の片面を熱圧着し、圧着面をバネ受け面として使用する方法が特許文献4及び特許文献5で提案されている。かかる方法では、発泡層が緻密層面にまで達して、緻密層が薄いため滲み出し防止効果が不十分で滲み出しによる擦過音の増大や緻密層の強度不足による耐久性が劣る問題がある。また、片面を充分熱圧着させて剛直化する必要から、複雑で凹凸が大きい深絞り形状の発泡ウレタン成形において、成形型への追従性が不充分となり、欠肉や皺の発生を充分防止することができない問題が残っている。
【0005】
低モジュラス素材として、捲縮ポリプロピレン繊維不織布にエンボス加工して発泡成形用補強材とする提案が特許文献6に提案されている。この方法は、捲縮発現した嵩高な層にエンボス加工で部分圧着部を形成する方法で、単層では、圧着部は滲み出し性が改良されるが、非圧着部は滲み出し易い問題がある。また、発泡成形体と補強材の一体化が不十分になり、剥離の発生や柔軟素材のため強度が低くなり耐久性にも問題がある。
【0006】
熱圧着加工した長繊維不織布からなる緻密層と嵩高層を積層してニードルパンチ交絡処理した、緻密層を発泡層側に用いる方法が特許文献7で提案されている。この方法では、発泡剤の滲み出しは抑制されるが、剛直性の増加により金型追随性が低下して欠肉や皺の発生を充分防止することができない問題及び発泡体との接合が不充分で剥離しやすい問題が残っている。
【0007】
同様の方法ではあるが、緻密層を中間層に用いる方法が特許文献8及び特許文献9で提案されているが、特許文献7と同様の問題がある。
【0008】
圧着長繊維不織布を緻密層とし、長繊維ウエッブを嵩高層として積層交絡して柔軟性を改良する方法が特許文献10で提案されている。この方法は、柔軟性付与により金型追随性は改良されるが、長繊維ウエッブの交絡度が不充分で、耐摩耗性が劣り、不織布強度も低いため発泡成形品補強材としての耐久性に問題がある。
【0009】
長繊維不織布と短繊維ウエッブを積層し、水流交絡により一体化して破裂強度を高めた不織布を用いる方法が特許文献11に提案されている。この方法は、水流交絡による柔軟性の付与で金型への型添性は向上するが、短繊維に熱接着成分を使用した場合、剛性は上がるが脆くなり耐久性が劣る。また、短繊維ウエッブを長繊維不織布に積層交絡させているため、短繊維ウエッブ層の耐磨耗性が劣り、不織布強力も低いため、発泡成形品補強材としての耐久性が悪くなる問題がある。補強材にネット状物を併用すると、金型追随性も低下して仕上がり形状が劣る問題も出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公昭62−26193号公報
【特許文献2】特許2976394号公報
【特許文献3】特許3048435号公報
【特許文献4】特開平2−258332号公報
【特許文献5】特許2611422号公報
【特許文献6】特開2009−167570号公報
【特許文献7】特許2990207号公報
【特許文献8】特許2990208号公報
【特許文献9】特開2007−331259号公報
【特許文献10】特許3883008号公報
【特許文献11】特開2005−212204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術としては、成形性、補強材機能及び取扱性を同時に満たす提案はなされていない。
本発明は従来技術を背景になされたもので、発泡成形品補強用として、取扱性を維持して、金型追随性に優れ、成形品は、破れや滲み出しがなく、仕上がり形状が良好で、擦過、屈曲、屈折音などの制音機能や耐磨耗性に優れ、更には不織布強度を向上させて保形耐久性にも優れた発泡成形品を得ることができる発泡成形品補強用不織布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、バネ受け面となる被覆層を制音機能と耐磨耗機能の優れた嵩高な短繊維不織布層とし、発泡体と接する基材層は発泡剤遮断機能をもつ緻密圧着部を有する長繊維不織布層で構成し、該被覆層と該基材層を交絡接合して、基材層面に突出繊維構造を形成した結果、構造体全体が柔軟化することが可能となることを知見した。また、30〜40%の低伸度域での伸張応力を特定範囲に設定することで、取扱性を維持して、優れた金型追随性を付与することが可能となることを知見した。さらには、突出繊維構造のアンカー効果で発泡体と補強材の接合を強固にし、補強材の強力も高めることで、成形品の耐久性を向上させ得ることも知見し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)短繊維不織布層と、部分的に緻密圧着部を形成した長繊維不織布層が積層され、短繊維不織布層と長繊維不織布層は部分的に交絡絡合されており、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成しており、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)が10〜30N/5cmであり、横方向の5%伸張時応力(ST5c)が5〜25N/5cmであり、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)と縦方向の30%伸張時応力(ST30m)との差(ΔST5m−ST30m)及び、縦方向の30%伸張時応力(ST30m)と縦方向の40%伸張時応力(ST40m)との差(ΔST30m−ST40m)が下記式を満足する発泡成形品補強用不織布。
ΔST5m−ST30m≦25(N/5cm) ・・・式1
ΔST30m−ST40m≦25(N/5cm) ・・・式2
(2)ポリエステル繊維からなり、目付当りの縦方向の強度(DTm)及び横方向の強度(DTc)が1.6N/5cm以上で、目付当りの縦方向と横方向の強度の和(DTm+DTc=DTt)が3.5N/5cm以上である(1)に記載の発泡成形品補強用不織布。
(3)短繊維不織布を構成する繊維は、少なくとも2種類の短繊維を含有し、繊度が1.2〜3dtexの繊度の低い繊維(繊維A)と繊度が2〜4dtexの繊度の高い繊維(繊維B)を含有し、繊維Aと繊維Bの繊度差(ΔD)と繊維Aと繊維Bの質量混率(A/B)が下記式を満足する(1)または(2)に記載の発泡成形品補強用不織布。
繊度差(ΔD):0.5≦ΔD≦2(dtex) ・・・式3
混率(A/B):80/20〜30/70(質量%) ・・・式4
【発明の効果】
【0014】
本発明は、取扱性を維持して、成形性とバネ受け機能を同時に満足する発泡成形品補強用不織布である。即ち、バネ受け面となる層(被覆層)を制音機能と耐磨耗機能及び易変形機能の優れた嵩高で緻密な短繊維不織布層とし、発泡体と接する層(基材層)は発泡剤遮断機能と発泡ガス抜け機能を有する緻密部を形成した長繊維不織布層で構成し、該被覆層と該基材層を交絡接合して、基材層面に突出繊維構造を形成することで、構造体全体を柔軟化させると共に、局部的な応力集中が掛かると伸張変形が容易化して、優れた金型追随性と突出繊維構造のアンカー効果で発泡体構造全体が一体化して耐久性も向上した、成形性、制音性、耐久性とも優れた発泡成形クッション材を得られる発泡成形品補強用不織布である。
【0015】
特に、不織布を引出す応力範囲は伸張を抑制し、伸度40%未満の低伸度域での応力を低くして成形加工時の金型追随性を著しく向上させ、破断強度を高くして、成形品としたときの耐久性を向上させた発泡成形品補強用不織布を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、短繊維不織布層と、部分的に緻密圧着部を形成した長繊維不織布層が積層され、短繊維不織布層と長繊維不織布層は部分的に交絡絡合されており、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成しており、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)が10〜30N/5cmであり、横方向の5%伸張時応力(ST5c)が5〜25N/5cmであり、縦方向の5%伸張時応力と縦方向の30%伸張時応力(ST30m)との差(ΔST5m−ST30m)、及び縦方向の30%伸張時応力(ST30m)と40%伸張時応力(ST40m)との差(ΔST30m−ST40m)が下記式を満足する発泡成形品補強用不織布である。
ΔST5m−ST30m≦25(N/5cm) ・・・式1
ΔST30m−ST40m≦25(N/5cm) ・・・式2
なお、本発明では、長繊維不織布のMD方向を縦方向、CD方向を横方向とする。本発明では、長繊維不織布は、縦方向に繊維が配列されているので、繊維の配列方向が縦方向となる。繊維配列方向と直交する方向が横方向となる。
【0017】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、被覆層を短繊維不織布層で構成することで、繊維の自由度大きくしてバネ形状に変形追随して密着し易くなり、バネ材との摩擦による擦れ音の発生を抑制する効果を付与する。そして、基材層である緻密圧着部を形成した長繊維不織布層に部分的な交絡絡合により、積層することで、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通し、長い突出繊維構造を多く形成するのを容易にしている。多くの長い突出繊維構造を形成することで、発泡体へのアンカー効果が高められ、発泡体と補強材との強固な一体化が可能となり、発泡成形品の変形や磨耗に対する耐久性を高めている。
【0018】
被覆層に長繊維不織布層を用いた場合、嵩高性の低下で制音効果の低減と、交絡処理による突出繊維構造の形成が著しく少なくなり、発泡体との一体化が不充分になり、耐久性が低下して剥離を生じる場合があり好ましくない。
【0019】
本発明の被覆層である短繊維不織布層は、少なくとも基材層である長繊維不織布層と部分的に交絡絡合一体化され、長繊維不織布層を貫通した突出繊維構造を形成している。
【0020】
長繊維不織布層と交絡絡合一体化していない場合、被覆層である短繊維不織布層と基材層である長繊維不織布層が剥離しやすく、被覆機能の耐久性が劣り好ましくない。また、短繊維不織布層が交絡処理されていない場合は短繊維不織布層が崩壊するので好ましくない。長繊維不織布層が発泡剤と接合性が不良な素材の場合は、突出繊維構造を形成していないと発泡体との一体化も困難になり好ましくない。
【0021】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、基材層に部分的に緻密圧着部を形成した長繊維不織布層を用いている。長繊維不織布層は基材層として、発泡成形時に補強材表面への発泡剤の漏れを遮断する遮断層として機能させる必要、及び、成形加工時の金型追随性の確保と発泡時のガス抜け性を維持して成形品の浮きを防止のため、独立したドット状圧着部を形成し、短繊維不織布層と積層一体化するための交絡処理により取扱性を維持して成形性を損なわないよう柔軟化させている。
【0022】
基材層に短繊維不織布層を用いた場合は、発泡時の遮断層機能が失われ、基材層を通過した発泡剤は被覆層表面にまで達して、発泡剤の滲み出しを生じて、成形品の品位の低下に止まらず、発泡成形品補強用不織布との擦れによる摩擦音発生による制音性の低下、磨耗による成形品の損傷発生による耐久性の低下を生じるので好ましくない。
【0023】
基材層に長繊維不織布層を用いた場合でも、部分的に緻密圧着部分を形成していない場合、例えばニードルパンチ交絡や水流交絡などによる緻密圧着部分を形成していない場合は、上述と同様に、発泡剤の滲み出し等による品位の低下や制音性の低下、耐久性の低下を生じ好ましくない。また、長繊維不織布層が全面に緻密圧着されている場合、及びそれに近い緻密圧着領域が形成されている場合、積層交絡処理による開孔だけでは通気性が不充分となり、発泡時のガス抜け不良による成形品の浮きを発生、剛直性の増加により変形し難くなり金型追随性が悪くなり成形性が損なわれるので好ましくない。
【0024】
本発明の発泡成形品補強用不織布の基材層に用いる長繊維不織布層の部分的に形成された緻密圧着部は、発泡剤の遮蔽機能と金型追随性を満たせば特には限定されないが、好ましくは、金型追随性が阻害されない独立したドット状圧着部を形成しており、圧着部の面積比率は8〜25%、より好ましくは10〜20%とすることで、遮蔽機能と金型追随性を同時に満足する性能を付与できる。
【0025】
連続した圧着部が形成されている場合、不織布剛性が高くなり金型追随性が阻害される場合があり、好ましくない。
【0026】
独立したドット状圧着部の面積比が5%未満では、基材層としての力学特性が低下して、取扱性が劣り好ましくない。また、発泡剤の遮断機能も不足して発泡剤の滲みだしを生じる場合があり、面積比が40%を越えると伸張荷重への変形応答性が悪くなり、金型追随性が劣る場合があるので好ましくない。
【0027】
長繊維不織布層の部分圧着部の独立したドット状圧着部の単位面積は、小さ過ぎると接合点の強度低下により力学特性が低下して、縦方向の5%伸張時応力が10N/5cm未満となり、目付当りの強度も1.6N/5cmを下回り、取扱性と耐久性に問題が出る場合があるので好ましくない。ドット状圧着部の単位面積が大き過ぎると接合点は強固となるが、局所的な遮蔽カバー率の差が大きくなり滲みだしを生じる場合があり、また、変形時の金型追随性にも斑を生じて滲み出し、割れ、引き攣りなどを生じて形状の品位が劣る場合があり好ましくない。
【0028】
本発明における長繊維不織布の部分圧着部の独立したドット状圧着部の単位面積は、好ましくは0.01〜2.5mm、より好ましくは0.02〜1.0mmである。
【0029】
本発明の独立した部分圧着部を形成する方法は、特には限定されない。本発明では公知の方法、例えば、エンボスローラー加工などが使用できる。
部分的に圧着繊維集合部の形状についても、独立したドットであれば特には限定されないが、好ましくは織目柄、ダイヤ柄、四角柄、亀甲柄、楕円柄、格子柄、水玉柄、丸柄などが例示できる。
独立したドット状圧着部を形成することで、独立した圧着繊維集合部が構成長繊維を強固に固定して力学特性を保持する接合点として働き、他の表面は、表面のみフラット化されていて、遮断層効果と構造固定効果及び適度な通気性を有しており、発泡成形による変形に、容易に追随できる機能と脱気機能が付与されている。
【0030】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、被覆層の短繊維不織布層と基材層の長繊維不織布層が部分的に交絡絡合されており、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成している。
【0031】
短繊維不織布層と長繊維不織布層は、一体化して補強材として機能させるため交絡絡合されており、さらに、短繊維不織布を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成して、短繊維不織布層をも保持した状態で、突出繊維構造が発泡層中に埋没されることで、発泡成形体が発泡層と補強材が強固に一体化して、変形や外圧にも構造全体が連動した変形で相互の機能を補足しあい、成形体の耐久性を向上させている。
【0032】
被覆層を構成する繊維が基材層を貫通して突出繊維構造を形成していないと、アンカー効果による発泡層と補強層の強固な一体化が阻害され、補強層の剥離を生じる場合があり好ましくない。また、被覆層を構成する繊維が突出繊維構造を形成していない場合は、発泡層と基材層が強固に接合されていても、被覆層と基材層が強固に接合されていないと、被覆層が剥離する場合があり、構造全体が連動した変形で相互の機能を補足できなくなり、成形体の耐久性が劣るので好ましくない。
強固に接合されていても、熱接着成分を含む不織布を用いて一体化している場合は熱接着成分が伸縮性を持てないと構造体が脆くなり構造破壊を生じ耐久性が劣る問題があり好ましくない。
【0033】
本発明の発泡成形品補強用不織布では、発泡体と接する長繊維不織布層面に突出繊維構造を形成していれば特には限定されないが、好ましくは、突出繊維構造の突出個数は、50〜250個/cmが好ましい。50個/cm未満では、交絡処理効果による柔軟化効果とポリウレタン等の発泡体との接着点及びポリウレタン中へのアンカー効果が不充分になり接合不良で剥離する場合もあり、300個/cmを越える場合、ウレタンとの接合性からは無数に有るのが望ましいが、長繊維不織布層が多孔化及び柔軟化し過ぎて、発泡剤遮蔽層効果が低下する場合や基材層が損傷や柔軟化して力学特性に問題が出る場合がある。なお、本発明における突出繊維構造の突出個数とは、1回の交絡処理により生じた1孔から複数本の繊維が突出した形態も1個として数える。
本発明のより好ましい突出繊維構造の突出個数は80〜200個/cm、最も好ましくは90〜150個/cmである。
【0034】
本発明における突出繊維構造で形成された好ましいループを含む繊維長は2〜10mmである。繊維長が2mm未満ではアンカー効果が不足する場合があり、10mmを越える場合は、引っ掛かりによる型枠へのセット時作業性に問題が出る場合がある。
本発明のより好ましい繊維長は3〜8mmであり、最も好ましい繊維長は4〜7mmである。
【0035】
本発明での部分的交絡絡合処理は、交絡絡合処理により、長繊維不織布層と短繊維不織布層が柔軟一体化され、長繊維不織布層を貫通した短繊維不織布層を構成する繊維が突出繊維構造を形成されていれば、公知の水流交絡法、ニードルパンチ交絡法などが適用できるが、好ましくは、突出繊維構造の形成が容易なニードルパンチ法が推奨できる。
【0036】
ニードルパンチ条件は特には限定されないが、製法として、長繊維不織布層上に開繊ウエッブを積層して交絡処理する場合、積層されている短繊維不織布層では単繊維の繊度、カット長、断面形状等の特性や混繊状態、目付、不織布の拘束状態、及び、長繊維不織布層では目付、緻密度、構成繊維配列や単繊維特性等に影響されるので、バーブの種類やニードルパンチ条件の調整は必要だが、ペネ数50〜250本/cmの範囲で選択するのがよい。
ペネ数50本/cm未満では、短繊維不織布層と長繊維不織布層の一体化が不十分となり、被覆層が剥離して一体構造を維持できなくなる場合があり、ペネ数250本/cm以上では、長繊維不織布層の発泡剤遮断機能が低下して、成形時発泡剤漏れを生じる場合がある。交絡処理による揉み効果と損傷による不織布強力の低下を生じる場合がある。
好ましいペネ数は、80〜150本/cm、より好ましくは100〜130本/cmである。
【0037】
また、ニードルパンチの突出繊維構造形成効果は、針深度に依存しており、必要な突出繊維長を形成できる条件で、できるだけ浅くするのが好ましい。針深度が深いと開口径が大きくなり発泡剤の滲み出しを生じる場合があるので、最適条件を設定するのが望ましい。例えば、突出繊維長を3〜10mmとするには、積層した不織布厚みが荷重20g/cmで測定したとき約3mmでは、針深度は10〜16mmに設定するのが好ましい。
【0038】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)が10〜30N/5cmである。
縦方向の5%伸張時応力(ST5m)が10N/5cm以上とすることで、引出時の伸張応力での伸び、及び取付時の変形を抑制して取扱性を維持している。
10N/5cm未満では、引出時の伸張応力での伸びにより安定した裁断ができなくなり、また取付時に変形を生じてセットのやり直し等で取扱性が劣り、セット後変形に気付かない場合は製品不良になるので好ましくない。
縦方向の5%伸張時応力(ST5m)が30N/5cm以下とすることで、発泡成形時の金型追随性を良好に保つことができる。30N/5cmを越えると、発泡成形時の金型追随性が悪くなり、発泡成形品の仕上がり形状が劣るものとなる場合があり好ましくない。本発明での好ましい縦方向の5%伸張時応力(ST5m)は、10〜25N/5cmである。
【0039】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、横方向の5%伸張時応力(ST5c)が5〜25N/5cmである。
横方向の5%伸張時応力(ST5c)を5N/5cm以上とすることで、取扱時の伸張変形を抑制して、セット性等の取扱性を維持している。5N/5cm未満では、取付時に変形を生じてセットのやり直し等で取扱性が劣り、セット後変形に気付かない場合は製品不良になるので好ましくない。
横方向の5%伸張応力(ST5c)を25N/5cm以下とすることで、発泡成形時の金型追随性を良好に保つことができる。25N/5cmを越えると、発泡成形時の金型追随性が悪くなり、発泡成形品の仕上がり形状が劣るものとなる場合があり好ましくない。本発明での好ましい横方向の5%伸張時応力(ST5c)は、10〜15N/5cmである。
【0040】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)と縦方向の30%伸張時応力(ST30m)との差(ΔST5−ST30m)、及び縦方向の30%伸張時応力(ST30m)と40%伸張時応力(ST40m)との差(ΔST30m−ST40m)が式1及び式2を満足する発泡成形品補強用不織布である。
ΔST5m−ST30m≦25(N/5cm) ・・・式1
ΔST30m−ST40m≦25(N/5cm) ・・・式2
【0041】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、発泡成形時の初期段階では、30%伸張変形までは塑性変形に近い低応力で均一な変形を容易にして、更に40%伸張変形までは低発泡応力で金型の大変形部分にまで型に添った均一な変形を可能とするため、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)と縦方向の30%伸張時応力(ST30m)との差(ΔST5m−ST30m)は上記式1を満たす25N/5cm以下、縦方向の30%伸張時応力(ST30m)と40%伸張時応力(ST40m)との差(ΔST30m−ST40m)は上記式2を満たす25N/5cm以下とし、上記式1と式2を同時に満たすことで均質で良好な発泡成形性を付与している。
【0042】
上記式1(ΔST5m−ST30m)が25N/5cmを越えると、発泡成形での補強材の初期変形が不均一となり、均質な補強材の成形体への被覆が阻害され、皺の発生や破れの原因となる場合がある。また、上記式2(ΔST30m−ST40m)が25N/5cmを越えると、補強材の金型の大変形部分への型添いが不均一になり、局所部分が無理な変形による破れを生じて発泡剤の滲み出しや変形不足による金型形状に仕上がらない問題を生じる場合があり好ましくない。
本発明の発泡成形品補強用不織布の好ましい(ΔST5m−ST30m)は20N/5cm以下、(ΔST30m−ST40m)は20N/5cm以下である。
【0043】
本発明の発泡成形品補強用不織布の素材は、特には限定されないが、長繊維不織布層にモジュラスの低いポリプロピレンやポリエチレンを用いた場合、ST5mを10〜30N/5cm、及び、上記式1と式2を満たすことができない場合があり、また、後述する成形品の耐久性をより高く保つための、発泡成形品補強用不織布の目付当りの縦方向の強度(DTm)及び横方向の強度(DTc)が1.6N/5cm/(g/m)以上で、目付当りの縦方向と横方向の強度の和(DTm+DTc=DTt)が3.5N/5cm(g/m)以上を同時に満足することは不可能となるので、発泡成形品補強用不織布の素材は、ポリエステル繊維で構成される不織布が積層されたものが好ましい。
【0044】
本発明でのポリエステルとは、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルをいい、好ましくは、耐熱性と力学特性がすぐれる芳香族ポリエステルが例示できる。
芳香族ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)などのホモポリエステル及びそれらの共重合ポリエステルなどが例示できる。
本発明でのより好ましいポリエステルとしては、融点が220℃以上のポリエステルで、ガラス転移点温度が80℃以下のポリエステルが好ましく、ガラス転移点温度が70℃以下のポリエステルがより好ましい。好ましいポリエステルとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)及びそれらの共重合物や混合物などが例示でき、最も好ましいポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びそれらの共重合ポリエステルが挙げられる。
なお、本発明では、特性を低下させない範囲で、必要に応じて、抗酸化剤、耐光剤、着色剤、抗菌剤、難燃剤、親水化剤などの改質剤も添加できる。
【0045】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、以下に記載の高い強力を保持させるため、ポリエステルからなる繊維で構成されるのが好ましい。
本発明の発泡成形品補強用不織布は、発泡成形時には、金型追随性を維持して成形でき、成形品となった後は、外力に対して不織布形態を保持して補強機能を発揮するために、目付当りの縦方向の強度(DTm)及び横方向の強度(DTc)が1.6N/5cm(g/m)以上を満足させる。
目付当りの縦方向の強度(DTm)及び横方向の強度(DTc)が1.6N/5cm(g/m)未満では、発泡成形時の金型追随性は良くなるが、成形品の外力に対する不織布形態を保持する機能が低下して形態破壊を生じ耐久性が劣る成形品となる場合があり好ましくない。この機能は、縦方向及び横方向共に満足しない場合は、力学特性が劣る方向から形態が破壊されていき耐久性が劣るものとなるので縦方向及び横方向共に満足しない場合は好ましくない。
【0046】
本発明の発泡成形品補強用不織布のより好ましい目付当りの縦方向の強度(DTm)は1.7N/5cm(g/m)以上、横方向の強度(DTc)は1.9N/5cm(g/m)以上である。
好ましい目付当りの縦方向と横方向の強度の和(DTm+DTc=DTt)は3.5N/5cm(g/m)以上、より好ましくは3.6N/5cm(g/m)以上である。
【0047】
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層である短繊維不織布層を構成する繊維は、特には限定されないが、好ましくは、少なくとも2種類の短繊維を含有し、繊度が1.2〜3dtexの繊度の低い繊維(繊維A)と繊度が2〜4dtexの繊度の高い繊維(繊維B)を含有し、繊維Aと繊維Bの繊度差(ΔD)と繊維Aと繊維Bの質量混率(A/B)が式3と式4を同時に満たす発泡成形品補強用不織布である。
繊度差(ΔD):0.5≦ΔD≦2(dtex) ・・・式3
混率(A/B):80/20〜30/70(質量%) ・・・式4
【0048】
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層である短繊維不織布層を構成する好ましい繊維は、繊維Aとして緻密な組織を形成でき、変形し易い1.2〜3dtexの短繊維と、繊維Bとして緻密さと変形のし易さを維持しながら、嵩高性を付与するために2〜4dtexの短繊維の2種類が少なくとも混繊されていることが好ましい。
繊維Aが1.2dtex未満では、成形品のバネ受け面での耐摩耗性が劣るので耐久性が悪くなる問題があり、3dtexを超えると変形し難くなり、不織布の伸張時応力が高くなる問題がある。繊維Bが2dtex未満では、繊維Aとの繊度差が少なくなり、嵩高さの付与できなくなり、繊維の組織内での自由度が低下して伸びにくくなる問題があり、4dtexを超えると、嵩高さは増加するが緻密な組織としての変形による伸び斑を発生して、低応力での伸びやすさが阻害される。
本発明でのより好ましい繊維Aの繊度は1.5〜2dtex、繊維Bの繊度は2.5〜3.5dtexである。
【0049】
繊維Aと繊維Bの繊度差(ΔD)は、上述の理由及び繊維同士のマイグレーションからは、式3を満足するのが好ましい。
繊度差(ΔD):0.5≦ΔD≦2(dtex) ・・・式3
繊度差(ΔD)が0.5dtex未満では、上述の嵩高性を付与できなくなるので、好ましくない。2dtexを超えると嵩高さは増加するが緻密な組織としての変形による伸び斑を発生して、低応力での伸びやすさが阻害される。
本発明でのより好ましい繊度差(ΔD)は0.5〜1.5dtexである。
【0050】
本発明では、繊維Aと繊維Bの質量混率(A/B)は、低応力下での発泡成形品補強用不織布とした時、低応力で変形の易やすさを維持するために、式4を満足するのが好ましい。
混率(A/B):80/20〜30/70(質量%) ・・・式4
繊維Aの質量混率が80質量%を超えると嵩高性が低下して、不織布組織の緻密化が進むので伸張時の低応力での伸び易さが阻害される場合があり、30質量%未満では嵩高性が増加し過ぎて、変形による伸び斑を発生して、低応力での伸びやすさが阻害され場合があり、好ましくない。
本発明でのより好ましい質量混率(A/B)は60/40〜40/60(質量%)である。
【0051】
本発明における短繊維不織布層は上述の好ましい短繊維を混繊してウエッブ化し、常法により所望の目付に積層後、交絡絡合処理して短繊維不織布層を形成する。交絡絡合処理して短繊維不織布層とすることで、積層加工時の作業性が向上する以外に、長繊維不織布層と積層交絡して作成した発泡成形品補強用不織布を用い、発泡成形した成形品は、バネ受け面の短繊維からなる被覆層の耐摩耗性が向上して構造破壊し難くいため耐久性も向上する。
短繊維不織布層とする場合の交絡絡合処理は、特には限定されないが、好ましくは、不織布構造を保持できて、長繊維不織布層と積層後、交絡絡合処理による突出繊維構造形成が容易な程度の交絡絡合処理が好ましい。交絡絡合処理し過ぎると、好ましい突出繊維構造の形成が困難となる場合があり好ましくない。
より好ましい交絡絡合処理法としては、ニードルパンチによる交絡絡合処理を予備交絡と本交絡処理して不織布化する方法がある。予備交絡処理は、ぺネ数20個/cm前後、本交絡処理はペネ数100〜150個/cm程度がより好ましい。
【0052】
ポリエステルからなる繊維で構成され、繊維Aと繊維Bが上述の好ましい条件を満たす短繊維不織布層で構成されると、理由は明確ではないが、本発明の発泡成形品補強用不織布が、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)と縦方向の30%伸張時応力(ST30m)との差(ΔST5m−ST30m)及び、縦方向の30%伸張時応力(ST30m)と40%伸張時応力(ST40m)との差(ΔST30m−ST40m)が式1及び式2を満足することができる。
ΔST5m−ST30m≦25(N/5cm) ・・・式1
ΔST30m−ST40m≦25(N/5cm) ・・・式2
【0053】
本発明の発泡成形品補強用不織布の目付は、規定する好ましい形態で力学特性を満たせば特には限定されないが、50〜180g/mが好ましい。目付が50g/m未満では、発泡剤の被覆機能も低下して滲み出しを発生する場合があり、また、力学特性が低くなり補強材機能も不充分になり成型品の耐久性が劣る場合がある。目付が180g/mを越えると、本発明に規定する縦方向の5%伸張時応力(ST5m)と縦方向の30%伸張時応力(ST30m)との差(ΔST5m−ST30m)及び、縦方向の30%伸張時応力(ST30m)と40%伸張時応力(ST40m)との差(ΔST30m−ST40m)が式1及び式2を満足することができなくなり、金型追随性が悪くなり、かつ、目付を大きくするとシート重量も増加して車両の軽量化を阻害する問題があり好ましくない。本発明の発泡成形品補強用不織布のより好ましい目付は60〜160g/m、さらに好ましくは80〜140g/mである。
【0054】
なお、本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層である短繊維不織布層の目付は、短繊維不織布からなり、被覆機能と突出繊維構造が形成されていれば特には限定されないが、50〜120g/mが好ましい。50g/m未満では、被覆機能が低下する問題がある。120g/mを越えると発泡成形品補強用不織布の目付も増加して成型シートの軽量化を阻害する問題が生じる場合がある。より好ましい目付は60〜100g/mである。
【0055】
本発明の発泡成形品補強用不織布の基材層である長繊維不織布層の目付は、発泡剤の遮蔽機能を満たして、突出繊維構造を把持し、積層体とした時の力学特性が規定の範囲を満たせば特には限定されないが、20〜60g/mが好ましい。20g/m未満では発泡剤の遮蔽機能が満たせなくなり、力学特性も劣る場合があり、60g/mを越えると、伸張荷重への伸張変形依存性が悪くなり成形時に金型追随性が悪くなる場合があるので、適切な条件を設定するのが望ましい。本発明では、25〜45g/mがより好ましい。
【0056】
本発明では、被覆層と基材層の2層構造とするのがより好ましいが、被覆層と基材層の間に中間層を積層一体化することもでき、中間層は、特には限定されないが、中間層を遮断層として用いることも可能である。
中間層を積層する場合、最上層となる被覆層の目付は、最下層の基材層面に突出繊維構造を形成でき、最上層となる被覆層でのバネ受け機能を満たせる目付であれば特には限定されないが、不織布目付を150g/m未満とする場合は、被覆層を50g/m、基材層と中間層を含めて100g/m未満となるよう設定するのが望ましい。
【0057】
本発明の発泡成形品補強用不織布の見掛密度は本発明要件を満たせば特には限定されないが、好ましい見掛密度が0.05〜0.15g/cmである。見掛密度が0.05g/cm未満では、嵩高過ぎて、耐摩耗性が劣り耐久性が悪くなる場合があり好ましくない。見掛密度が0.15g/cmを越えると被覆層の嵩高さが無くなり、制音効果が悪くなる場合があり好ましくない。
本発明の発泡成形品補強用不織布のより好ましい見掛密度は0.06〜0.12g/cmである。
【0058】
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層となる短繊維不織布層の見掛密度は、本発明要件を満たせば特には限定されないが、0.02〜0.07g/cmが好ましく、0.02〜0.06g/cmがより好ましい。
【0059】
本発明の発泡成形品補強用不織布の基材層となる長繊維不織布層の見掛密度は本発明要件を満たせば特には限定されないが、0.09〜0.20g/cmが好ましく、0.12〜0.18g/cmがより好ましい。
【0060】
本発明の発泡成形品補強用不織布を構成する繊維の断面は本発明要件を満たせば特には限定されない。
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層となる短繊維不織布層は、汎用の短繊維として丸断面を用いるのが好ましいが、異形断面との混繊なども採用できる。嵩高性を向上させる場合、中空断面や異形断面を混繊することができる。
本発明の発泡成形品補強用不織布の被覆層となる短繊維不織布層を構成する繊維の繊維長は特には限定されないが、好ましくは20〜150mmである。繊維長が20mm未満では、梁構造形成での梁機能が発揮できなくなる場合があり、150mmを越えると、混綿開繊時のマイグレーションが不充分になる場合がある。本発明でのより好ましい短繊維の繊維長は40〜110mmである。
【0061】
本発明の発泡成形品補強用不織布の基材層となる長繊維不織布層を構成する繊維の繊度は本発明要件を満たせば特には限定されないが、遮断機能と補強機能が発現できる1.0〜6dtexが好ましく、1.5〜4dtexがより好ましい。基材層となる長繊維不織布層は、公知のスパンボンド不織布では、生産性から丸断面が好ましいが必要に応じて、扁平断面等の異形断面や中空断面、異繊度混繊なども選択できる。
【0062】
なお、本発明では、短繊維不織布層及び長繊維不織布層に熱接着繊維成分を含有または混繊させて熱接着不織布構造を形成すると、不織布構造が脆くなり構造破壊を生じて耐久性が劣る場合があり、好ましくない。
【0063】
本発明の発泡成形品補強用不織布の通気度は特には限定されないが、通気度が50cc/cm/秒未満では、発泡成形時の膨張空気抜けが不均一となり、欠肉、樹脂抜けの発生を生じる場合があり、350cc/cm/秒を越えると発泡剤の漏れによる滲み出しを生じる場合がある。
本発明では、発泡成形時のガス抜け不良や発泡剤の滲み出しを生じない範囲として、好ましくは50〜350cc/cm/秒であり、より好ましくは80〜160cc/cm/秒である。
【0064】
本発明の要件を満たした発泡成形品補強用不織布は、所定の形状に切断して発泡成形品用補強材としてクッション用金型に突出繊維構造形成面を発泡剤側となるようにセットして発泡剤を注入発泡し、ウレタン発泡フォームからなる発泡成形体が得られる。発泡成形法としては、コールド発泡法、又はホット発泡法で発泡成形される。成形した発泡成形体は良好な形状に仕上り、発泡剤の滲み出しもなく、バネ受け材としては、擦過、屈曲、屈折音を抑制し、保形耐久性、耐摩耗性にも優れた発泡成形品が得られた。
また、所定形状への切断工程及び金型へのセッティングの操作性は、不織布の変形もなく、きわめて良好であった。
【0065】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、取扱性と金型追随性が特に優れており、加工工程でのコスト負荷を極力抑えたコストダウンに寄与することができる。
【0066】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、発泡シート用途に限定されるものではなく、発泡成形品の補強材として、車両用の各種内装材や、建築資材、電化製品の表面発泡成形品などの用途にも有用である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例および比較例で用いた評価方法は下記の方法でおこなった。
【0068】
(1)繊度[dtex]
試料の最上層及び最下層の各層の任意の場所5点を選び、光学顕微鏡を用いて、単繊維径をn=20で測定して、全平均値(D)を求めた。同場所5点の繊維を取り出し、密度勾配管を用いて、繊維の比重をn=5で測定し、全平均値(ρ)を求めた。
ついで、平均単繊維断面積と平均比重から1万mの重量に換算して繊度をdtexで示す。なお、繊維径測定時中空繊維の判別が難しい場合は下記の(5)SEM写真で繊維断面から求めた。
【0069】
(2)目付[g/m
JIS L 1913『単位面積当たりの質量』に準拠して測定した。
【0070】
(3)厚さ[mm]及び低荷重下での嵩変化
JIS L 1913『厚さ』に準拠し、荷重7gf/cmで測定した厚み(t7:mm)及び荷重20gf/cmで測定した厚み(t20:mm)及びその比(t7/t20)を低荷重下での嵩変化として求めた。
【0071】
(4)見掛密度[g/cm
上記(2)での荷重20gf/cmでの測定厚みと(3)で測定した目付から下記式を用いて算出した。
見かけ密度=目付÷(厚さmm×1000)
【0072】
(5)力学特性
JIS L 1913 6.3 『引張強さ及び伸び率』に準拠して、標準雰囲気(22℃)にて、任意の場所5点の試料を切り出し、縦方向と横方向の両方を切断までの伸張荷重曲線を各点n=5で測定し、各値の総平均で算出した。
(5−1)5%伸張時応力(ST5):N/5cm
22℃での5%伸張時応力:N/5cmを求め、5%伸張応力(N/5cm)の値とする。
(5−2)30%伸張時応力(ST30):N/5cm
22℃での30%伸張時応力:N/5cmを求め、30%伸張応力(N/5cm)の値とする。
(5−3)40%伸張時応力(ST40):N/5cm
22℃での40%伸張時応力:N/5cmを求め、40%伸張応力(N/5cm)の値とする。
(5−4)目付当りの強度(DT):N/5cm/(g/m
22℃雰囲気下の伸張変形での最大荷重点の引張強度:N/5cmを不織布の目付当りに換算した値として示す。
(5−5)縦方向の5%伸張時応力と縦方向の30%伸張時応力(ST30m)との差(ΔST5m−ST30m):N/5cm
上記記載の方法で求めた5%伸張時応力と30%伸張時応力の差の絶対値とする。
(5−6)縦方向の30%伸張時応力(ST30m)と40%伸張時応力(ST40m)との差(ΔST30m−ST40m);N/5cm
上記記載の方法で求めた縦方向の30%伸張時応力と40%伸張時応力の差の絶対値とする。
(5−7)目付当りの縦方向と横方向の強度の和(DTm+DTc=DTt):N/5cm/(g/m
上記記載の方法で求めた目付当りの縦方向の強度(DTm)と横方向の強度(DTc)の和として求めた値で示す。
【0073】
(6)通気度(cc/cm/sec)
JIS L 1096 8.27.1に準じたフラジール通気度測定機によって行った。
【0074】
(7)不織布の判別
被覆層が短繊維不織布層か否かは、構成している繊維を引出して、短繊維形態を確認する。基材層が長繊維不織布層か否かは、交絡している他の繊維不織布層(突出繊維構造部を含む)を剥離して、長繊維で構成されていることを目視で識別する。
【0075】
(8)長繊維不織布層の圧着部面積及び面積率
最下層不織布層を他の繊維不織布層(突出繊維構造部を含む)と剥離して試料とし、任意の20箇所で30mm角に裁断し、SEMにて50倍の写真を撮る。撮影写真をA3サイズに印刷してドット状圧着単位面積を切り抜き、面積(S0)を求める。次いで圧着単位面積内においてドット状圧着部のみを切り抜き個々のドット状圧着部面積(Si:mm)を求め、圧着部面積積算値(ΣSi=Sp)より圧着面積比率(P)を算出する。各ドット状圧着面積及び圧着面積比率P20点の平均値を求めた。
P=Sp/S0 (n=20)
【0076】
(9)突出繊維構造
不織布のニードルパンチ打ち込み面の反対面に突出した繊維の有無を目視判定で行い、必要に応じ、代表される部分の突出繊維の1cm当りの突出繊維長をスケールでn=20にて測定し(mm以下は4捨五入)、平均値で示す。
【0077】
(10)引出し変形評価
JIS L 1913 6.3 『引張強さ及び伸び率』に準拠した幅5cmの不織布試料を用いて、縦方向に対して10N/5cmの伸張応力で伸張回復処理を10回行い、試料を1時間放置した後、縦方向の不織布の伸び変形と目視による形態変化を求めた。
伸び変形5%未満、形態変化なし:○、伸び変形5%以上20%以下、形態変化微小:△、伸び変形20%以上、形態変化あり:×として評価した。
【0078】
(11)発泡評価
クッションパッド金型に所定の形状に切断した不織布を発泡成形品用補強材として、形状に馴染ませるようにセットして、セット状態をセット性として官能評価し、次いで、2液ウレタン樹脂にて65℃のコールド発泡を行い、成形品の評価を目視判定で行った。
(11−1)セット性
金型に馴染み易くセット容易:○、馴染み易いがセットし難い:△、馴染み難くセットし難い:×で官能評価した。
(11−2)滲み出し
成型品の補強材面にウレタンの滲み出しがなし:○、滲み出し微小:△、滲み出し明確にあり:×で目視判定した。
(11−3)皺
成型品の補強材面に皺発生なし:○、微小な皺発生:△、皺が発生:×で目視判定した。
(11−4)浮き
成型品の補強材面に浮きが発生なし:○、微小な浮きあり:△、浮きあり:×で目視と触感で判定した。
(11−5)破れ
成型品の補強材面に破れなし:○、破れ直前:△、破れあり:×で目視判定した。
(11−6)剥離
成型品の補強材面と発泡体との境界剥離のし易さを、成型品の補強材端部を1cm剥離して、手で補強材を発泡体から引裂くときに、境界が剥離しない:○、境界剥離に近い剥離を生じる:△、境界で剥離する:×で官能目視判定した。
(11−7)金型追随性
成型品の補強材面が金型形状どうりに成型されている:○、わずかに形状が一致しない:△、形状に一致しない部分がある:×で目視評価した。
【0079】
(12)成型品の性能評価
(12−1)制音性
実車にパッドをセットして、時速60kmでの平地走行試験1時間での振動音、擦れ音を聞き、搭載座席に比べ静か:○、搭載座席と同等の静けさ:△、搭載座席と同等以下で煩い:×で官能評価した。
(12−2)耐磨耗性
成型品の補強材面側を発泡体を含めて厚み5mmにスライスした試料を用いて、JIS L 0849に定義される方法により、摩擦試験機II型(学振型)を用いて、補強材面を摩擦面としてセットし、10分間磨耗させて、損傷の程度を目視判定で級別して評価した。損傷なし:5、微小な損傷:4、損傷少しあり:3級、損傷中程度:2級、損傷大:1級とした。
(12−3)保形性
パッドを55cm角10ミリ鉄板上に置き、テンシロン(ボールドウィン社製UCT25T)で、同じ鉄板をロードセルに接合して接触する高さをHcmとすると、半分の高さまで圧縮回復(50%繰返し圧縮)を100回繰返し、補強材面の損傷状態を目視判定して以下の評価をした。○:損傷、剥離なし、△:剥離小、損傷なし、×:剥離あり、損傷あり。
【0080】
<実施例1>
繊維Aとして丸断面で2dtexの機械捲縮を有するカット長51mmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル短繊維と繊維Bとして丸断面で3dtexの機械捲縮を有するカット長51mmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル短繊維とを40/60質量比で混打綿にて混綿してカードウエッブ化し、クロスレイヤーにて60g/mとなるよう積層し、ついで、予備交絡処理としてペネ数20個/cmの交絡絡合処理を行い、連続して、ペネ数120個/cmにて交絡絡合処理して、目付60g/mの短繊維不織布を得た。
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(以下PETと記載する)を用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量0.85g/分にて紡糸、振落して、繊度1.7dtexの長繊維からなる目付40g/mのウエッブを得た。ついで、圧着面積率18%の凸格子柄のエンボスローラーを用いて250℃、線圧40kN/mにてエンボス加工を行い、ドット状圧着部面積0.34mm、圧着部の面積比率17%、見掛密度0.16g/mの基材層用ポリエステル長繊維不織布を得た。
ついで、長繊維不織布上面に短繊維不織布を積層して、短繊維不織布面より、ペネ数120個/cmにて針深度10mmにてニードルパンチによる交絡絡合処理を行い、発泡成形品補強用不織布を得た。
【0081】
得られた発泡成形品補強用不織布は、目付100g/m、見掛密度0.08g/cm、5%伸張時応力は縦方向17N/5cm、横方向7N/5cm、30%伸張時応力は縦方向30N/5cm、横方向20N/5cm、ΔST5m−ST30mは15N/5cm、40%伸張時応力は縦方向45N/5cm、横方向35N/5cmで、ΔST30m−ST40mは13N/5cm、強度は縦方向174N/5cm(目付当り1.7N/5cm/(g/m))、横方向210N/5cm(目付当り2.1N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り3.8N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長7mm、突出繊維構造の形成個数は115個/cm、通気性125cc/cm/秒であった。
【0082】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を満たす実施例1は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも良好で、発泡成形での滲み出し、皺、浮き、破れ、剥離も無く、型添い性も良好であった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも良好で、発泡成形用補強材としての優れた性能を持つ発泡成形品補強用不織布であった。
【0083】
<実施例2>
短繊維不織布の目付を80g/mとなるようクロスレイヤーにて80g/mに積層した以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、目付120g/m、見掛密度0.09g/cm、5%伸張時応力は縦方向15N/5cm、横方向9N/5cm、30%伸張時応力は縦方向36N/5cm、横方向22N/5cm、ΔST5m−ST30mは11N/5cm、40%伸張時応力は縦方向60N/5cm、横方向38N/5cm、ΔST30m−ST40mは25N/5cmで、強度は縦方向208N/5cm(目付当り1.7N/5cm(g/m))、横方向252N/5cm(目付当り2.1N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り3.8N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長6mm、突出繊維構造の形成個数は115個/cm、通気性115cc/cm/秒であった。
【0084】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を満たす実施例2は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも良好で、発泡成形での滲み出し、皺、浮き、破れ、剥離も無く、型添い性も良好であった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも良好で、発泡成形用補強材としての優れた性能を持つ発泡成形品補強用不織布であった。
【0085】
<実施例3>
短繊維不織布の目付を100g/mとなるようクロスレイヤーにて100g/mに積層した以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、目付140g/m、見掛密度0.09g/cm、5%伸張時応力は縦方向20N/5cm、横方向10N/5cm、30%伸張時応力は縦方向40N/5cm、横方向30N/5cm、ΔST5m−ST30mは20N/5cmで、40%伸張時応力は縦方向65N/5cm、横方向50N/5cmで、ΔST30m−ST40mは25N/5cmで、強度は縦方向226N/5cm(目付当り1.6N/5cm(g/m))、横方向324N/5cm(目付当り2.3N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り3.9N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長6mm、突出繊維構造の形成個数は115個/cm、通気性102cc/cm/秒であった。
【0086】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を満たす実施例3は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも良好で、発泡成形での滲み出し、皺、浮き、破れ、剥離も無く、型添い性も良好であった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも良好で、発泡成形用補強材としての優れた性能を持つ発泡成形品補強用不織布であった。
【0087】
<比較例1>
2dtex丸断面の機械捲縮を付与した繊維長51mmの短繊維を用いて開繊したウエッブを目付80g/mに積層してニードルパンチにてペネ数100個/cmにて交絡絡合させた目付80g/mの被覆層となる短繊維不織布を作成した。
メルトインデックス60g/10分のポリプロピレン(以下PPと記述する)を用いて、紡糸温度250℃にて丸断面ノズル孔より単孔吐出量0.8g/分で紡糸して、繊度2dtexの長繊維からなる目付40g/mのウエッブを得た。ついで、連続して、圧着面積率18%の楕円文様エンボスローラーを用いて、エンボス温度130℃、線圧20kN/mにてエンボス加工して、2dtexの連続繊維からなる目付40g/m、ドット状圧着部面積0.05mm、圧着部の面積比率16%の基材層となる長繊維不織布を得た。
ついで、長繊維不織布上面に短繊維不織布を積層して、短繊維不織布面より、ペネ100個/cmにて針深度10mmにてニードルパンチによる交絡絡合処理を行い、発泡成形品補強用不織布を得た。
【0088】
得られた発泡成形品補強用不織布は、目付120g/m、見掛密度0.09g/cm、5%伸張時応力は縦方向24N/5cm、横方向6N/5cm、30%伸張時応力は縦方向52N/5cm、横方向22N/5cm、ΔST5m−ST30mは28N/5cm、40%伸張時応力は縦方向78N/5cm、横方向41N/5cmで、ΔST30m−ST40mは26N/5cm、強度は縦方向130N/5cm(目付当り1.1N/5cm(g/m))、横方向140N/5cm(目付当り1.2N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り2.3N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長8mm、突出繊維構造の形成個数は94個/cm、通気性118cc/cm/秒であった。
【0089】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を外れる比較例1は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも良好だったが、発泡成形時のΔST5m−ST30mとΔST30m−ST40mが高くなるため発泡成形での金型追随性にやや難点があり、滲み出し、破れ、剥離も無いものの、皺の発生があり、成型品の形状はやや不良であった。性能評価では、制音性は良好だが、皺部から磨耗が生じて耐磨耗性と保形性がやや劣る、発泡成形用補強材としては難点のある発泡成形品補強用不織布であった。
【0090】
<比較例2>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量1.0g/分にて溶融紡糸し、繊度2.0dtexの長繊維からなる目付80g/mのウエッブを得た。ついで、カレンダーローラーを用いて250℃で線圧20kN/mで圧着加工を行い、やや弱い全面圧着部を形成したポリエステル長繊維不織布を得て、被覆層とした以外、実施例1と同様にして発泡成形品補強用不織布を得た。
得られた発泡成形品補強用不織布は、目付120g/m、見掛密度0.14g/cm、5%伸張時応力は縦方向56N/5cm、横方向26N/5cm、30%伸張時応力は縦方向87N/5cm、横方向36N/5cm、ΔST5m−ST30mは31N/5cm、40%伸張時応力は縦方向96N/5cm、横方向44N/5cmで、ΔST30m−ST40mは9N/5cm、強度は縦方向325N/5cm(目付当り2.7N/5cm(g/m))、横方向177N/5cm(目付当り1.5N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り4.2N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長3mm、突出繊維構造の形成個数は41個/cm、通気性48cc/cm/秒であった。
【0091】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を外れる比較例2は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも良好だったが、5%伸張時応力が高く、ΔST5m−ST30mも高くなるため発泡成形での金型追随性に難点があり、皺の発生が大で、浮きも発生し、破れも少し発生して滲み出しが認められ、成形品の形状は不良であった。性能評価では、制音性も劣り、皺部や浮き部から磨耗が生じて耐磨耗性が劣り、突出繊維構造の形成が悪いためか、発泡層との剥離も発生して保形性が劣る、発泡成形用補強材としては問題のある発泡成形品補強用不織布であった。
【0092】
<比較例3>
実施例2で得た発泡成形品補強用不織布の突出繊維構造面を185℃の熱ローラー面に添わせて毛羽伏せ処理により突出繊維構造をなくしたものを発泡成形品補強用不織布として評価した。なお、不織布特性は突出繊維構造が失われた以外特性に変化はなかった。
【0093】
比較例3の発泡成形品補強用不織布は、本発明要件の突出繊維構造が失われているため、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも良好で、発泡成形での滲み出し、皺、浮き、破れも無く、型添い性も良好であったが、成形品の発泡層と補強層間に若干の剥離を生じ、性能評価では、制音性は良好だが、耐磨耗性、保形性とも剥離による耐久性が劣り、発泡成形用補強材としては問題のある発泡成形品補強用不織布であった。
【0094】
<比較例4>
比較例1の短繊維不織布を目付を40g/mとした以外、同一の方法で作成した短繊維不織布を長繊維不織布に変えて基材層として用いた以外、実施例2と同様にして得られた短繊維不織布の積層構造となる発泡成形品補強用不織布は、目付120g/m、見掛密度0.06g/cm、5%伸張時応力は縦方向1.1N/5cm、横方向1.3N/5cm、30%伸張時応力は縦方向9N/5cm、横方向16N/5cm、ΔST5m−ST30mは7.8N/5cm、40%伸張時応力は縦方向13N/5cm、横方向24N/5cm、ΔST30m−ST40mは4N/5cmで、強度は縦方向151N/5cm(目付当り1.26N/5cm(g/m))、横方向182N/5cm(目付当り1.52N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り2.78N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を基材層の短繊維不織布面に形成しており、通気性250cc/cm/秒以上であった。
【0095】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、基材層に短繊維不織布を用いた本発明要件から外れる比較例4は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも不良で、発泡成形での滲み出しは顕著で、皺、破れも少し発生、剥離は無く、型添い性は伸張斑によるのかやや不良であった。性能評価でも、制音性は発泡剤の滲み出しで悪くなり、耐磨耗性、保形性とも形態保持が不良で問題がある発泡成形用補強材であった。
【0096】
<比較例5>
短繊維不織布の目付を20g/mとし、長繊維不織布の目付を30g/mとした以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、目付50g/m、見掛密度0.12g/cm、5%伸張時応力は縦方向8N/5cm、横方向4N/5cm、30%伸張時応力は縦方向17N/5cm、横方向11N/5cm、ΔST5m−ST30mは9N/5cmで、40%伸張時応力は縦方向28N/5cm、横方向22N/5cmで、ΔST30m−ST40mは11N/5cmで、強度は縦方向110N/5cm(目付当り1.8N/5cm(g/m))、横方向138N/5cm(目付当り2.3N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り4.1N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長6mm、突出繊維構造の形成個数は98個/cm、通気性190cc/cm/秒であった。
【0097】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を満たさない比較例5は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性悪く、取扱性に劣り、発泡成形での滲み出しは微少発生しているが、皺、浮き、破れ、剥離は無く、型添い性も許容される状況であった。性能評価でも、制音性、耐磨耗性、保形性とも不良で、発泡成形用補強材としては不良な発泡成形品補強用不織布であった。
【0098】
<比較例6>
短繊維不織布の目付を160g/mとなるようクロスレイヤーにて160g/mに積層した以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、目付200g/m、見掛密度0.06g/cm、5%伸張時応力は縦方向35N/5cm、横方向20N/5cm、30%伸張時応力は縦方向64N/5cm、横方向50N/5cm、ΔST5m−ST30mは29N/5cmで、40%伸張時応力は縦方向93N/5cm、横方向76N/5cmで、ΔST30m−ST40mは29N/5cmで、強度は縦方向325N/5cm(目付当り1.6N/5cm(g/m))、横方向405N/5cm(目付当り2.0N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り3.6N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長4mm、突出繊維構造の形成個数は116個/cm、通気性70cc/cm/秒であった。
【0099】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を満たさない比較例6は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性は問題なく取扱性は良好だが、発泡成形での滲み出し、破れ、剥離は無かったが、型添い性が悪く、皺、浮きを発生していた。性能評価では、制音性は良好だが、耐磨耗性がやや劣り、被覆層が磨耗により崩れて保形性が劣る、発泡成形用補強材としては問題の残る発泡成形品補強用不織布であった。
【0100】
<比較例7>
繊維Aとして丸断面で1.4dtexの機械捲縮を有するカット長38mmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル短繊維と繊維Bとして中空丸断面で15dtexの立体捲縮を有するカット長64mmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル短繊維とを40/60質量比で混打綿にて混綿してカードウエッブ化し、クロスレイヤーにて60g/mとなるよう積層、ついで、予備交絡処理としてペネ数20個/cmの交絡絡合処理を行い、連続して、ペネ数120個/cmにて交絡絡合処理して目付60g/mの短繊維不織布を用いた以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、目付100g/m、見掛密度0.05g/cm、5%伸張時応力は縦方向6N/5cm、横方向4N/5cm、30%伸張時応力は縦方向32N/5cm、横方向26N/5cm、ΔST5m−ST30mは26N/5cmで、40%伸張時応力は縦方向74N/5cm、横方向50N/5cmで、ΔST30m−ST40mは42N/5cmで、強度は縦方向127N/5cm(目付当り1.3N/5cm(g/m))、横方向182N/5cm(目付当り1.8N/5cm(g/m))で強度の和は目付当り3.1N/5cm(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長8mm、突出繊維構造の形成個数は101個/cm、通気性128cc/cm/秒であった。
【0101】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を満たさない比較例7は、やや嵩高なため、引出し変形、打ち抜き性にやや問題があり、金型セット性は許容できるので、取扱性は許容範囲だが、発泡成形での浮き、破れ、剥離は無かったが、型添い性がやや悪く、横漏れによる滲み出しや皺を発生していた。性能評価では、制音性、耐磨耗性がやや劣り、被覆層が磨耗により剥離するので保形性にも難点が残る発泡成形品補強用不織布であった。
【0102】
<比較例8>
繊維Aとして丸断面で1dtexの機械捲縮を有するカット長38mmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル短繊維と繊維Bとして丸断面で1.2dtexの機械捲縮を有するカット長51mmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル短繊維とを40/60質量比で混打綿にて混綿してカードウエッブ化し、クロスレイヤーにて60g/mとなるよう積層、ついで、予備交絡処理としてペネ数20個/cmの交絡絡合処理を行い、連続して、ペネ数120個/cmにて交絡絡合処理して得られた目付60g/mの短繊維不織布を被覆層に用いた以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、目付100g/m、見掛密度0.09g/cm、5%伸張時応力は縦方向23N/5cm、横方向11N/5cm、30%伸張時応力は縦方向54N/5cm、横方向23N/5cm、ΔST5m−ST30mは31N/5cmで、40%伸張時応力は縦方向86N/5cm、横方向32N/5cmで、ΔST30m−ST40mは31N/5cmで、強度は縦方向236N/5cm(目付当り2.3N/5cm/(g/m))、横方向302N/5cm(目付当り3.0N/5cm/(g/m))で強度の和は目付当り5.3N/5cm/(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長7mm、突出繊維構造の形成個数は110個/cm、通気性108cc/cm/秒であった。
【0103】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を満たさない比較例8は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性は問題なく取扱性は優れている。発泡成形での滲み出し、浮き、破れ、剥離は無かったが、型添い性が悪く、皺も発生した。性能評価では、制音性は良好だが、耐磨耗性がやや劣り、被覆層が磨耗により剥離するので保形性に難点が残る発泡成形品補強用不織布であった。
【0104】
<比較例9>
繊維Aとして丸断面で2dtexの機械捲縮を有するカット長51mmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル短繊維と繊維Bとして丸断面で4.0dtexの機械捲縮を有するカット長51mmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル短繊維とを92/8質量比で混打綿にて混綿してカードウエッブ化し、クロスレイヤーにて80g/mとなるよう積層、ついで、予備交絡処理としてペネ20個/cmの交絡絡合処理を行い、連続して、ペネ数120個/cmにて交絡絡合処理して得られた目付60g/mの短繊維不織布を被覆層に用いた以外、実施例2と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、目付120g/m、見掛密度0.09g/cm、5%伸張時応力は縦方向22N/5cm、横方向6N/5cm、30%伸張時応力は縦方向48N/5cm、横方向21N/5cm、ΔST5m−ST30mは26N/5cmで、40%伸張時応力は縦方向74N/5cm、横方向40N/5cmで、ΔST30m−ST40mは26N/5cmで、強度は縦方向129N/5cm(目付当り1.1N/5cm/(g/m))、横方向141N/5cm(目付当り1.2N/5cm/(g/m))で強度の和は目付当り2.3N/5cm/(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長7mm、突出繊維構造の形成個数は100個/cm、通気性120cc/cm/秒であった。
【0105】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を外れる比較例9は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも良好だったが、発泡成形時のΔST5m−ST30mとΔST30m−ST40mが高くなるため発泡成形での金型追随性にやや難点があり、滲み出し、破れ、剥離も無いものの、皺の発生があり、成型品の形状はやや不良であった。性能評価では、制音性は良好だが、皺部から磨耗が生じて耐磨耗性と保形性がやや劣る、発泡成形用補強材としては難点のある発泡成形品補強用不織布であった。
【0106】
<比較例10>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量1.0g/分にて紡糸、振落して、繊度2.0dtexの長繊維からなる目付60g/mのウエッブを得た。ついで、圧着面積率42%の凹織目柄のエンボスローラーを用いて260℃、線圧40kN/mにてエンボス加工を行い、圧着部の面積比率38%で圧着部が独立していない、見掛密度0.16g/mのポリエステル長繊維不織布を得た。
得られた長繊維不織布を基材層に用いた以外、実施例1と同様にして得られた発泡成形品補強用不織布は、目付120g/m、見掛密度0.10g/cm、5%伸張時応力は縦方向43N/5cm、横方向26N/5cm、30%伸張時応力は縦方向146N/5cm、横方向58N/5cm、ΔST5m−ST30mは103N/5cmで、40%伸張時応力は縦方向204N/5cm、横方向76N/5cmで、ΔST30m−ST40mは31N/5cmで、強度は縦方向298N/5cm(目付当り2.5N/5cm/(g/m))、横方向170N/5cm(目付当り1.4N/5cm/(g/m))で強度の和は目付当り3.9N/5cm/(g/m)であり、突出繊維構造を長繊維不織布面に形成しており、突出繊維長7mm、突出繊維構造の形成個数は100個/cm、通気性98cc/cm/秒であった。
【0107】
得られた発泡成形品補強用不織布を評価した結果、本発明要件を外れる比較例1は、引出し変形、打ち抜き性、金型セット性とも良好だったが、発泡成形時のST5、ΔST5m−ST30m及びΔST30m−ST40mが高くなるため発泡成形での金型追随性に難点があり、破れ、剥離も無いものの、皺、浮きの発生があり、補強材の外側からの滲み出しを生じ、成形品の形状は不良であった。性能評価では、制音性は許容されるが、皺部から磨耗が生じて耐磨耗性及び保形性にやや難点がある発泡成形品補強用不織布であった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の発泡成形品補強用不織布は、柔軟で且つ遮蔽機能が高い基材層と嵩高で制音性に優れる被覆層からなり、突出繊維構造によるアンカー効果で発泡成形部と補強材の一体化が良好で、且つ、初期伸張時の伸びを抑制して取扱性を維持し、成形時の局部的剪断応力負荷時は伸張変形し易くして均一な金型追随性を向上せしめた発泡成形用補強材用途に最適な発泡成形品補強用不織布である。発泡成形時の金型への追従性に優れ、発泡剤の滲み出しもなく、高品位な発泡成形体が得られ、発泡成形体とバネ材間の摩擦によって発生する擦過音防止性に優れ、一体化した補強材の強力が高いので優れた補強効果と耐久性も得られ、製造コストを低く抑えた高機能な発泡成形品を得るための発泡成形品補強用不織布を安価に提供できる。
本発明の発泡成形品補強用不織布は比較的軽量なため、軽量で高品位な発泡成形体を安価に製造でき、その発泡成形体を用いた車両も安価に軽量化でき、車両運用上での省エネルギー化にも寄与できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維不織布層と、部分的に緻密圧着部を形成した長繊維不織布層が積層され、短繊維不織布層と長繊維不織布層は部分的に交絡絡合されており、短繊維不織布層を形成する繊維が長繊維不織布層を貫通して突出繊維構造を形成しており、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)が10〜30N/5cmであり、横方向の5%伸張時応力(ST5c)が5〜25N/5cmであり、縦方向の5%伸張時応力(ST5m)と縦方向の30%伸張時応力(ST30m)との差(ΔST5m−ST30m)及び、縦方向の30%伸張時応力(ST30m)と縦方向の40%伸張時応力(ST40m)との差(ΔST30m−ST40m)が下記式を満足する発泡成形品補強用不織布。
ΔST5m−ST30m≦25(N/5cm) ・・・式1
ΔST30m−ST40m≦25(N/5cm) ・・・式2
【請求項2】
ポリエステル繊維からなり、目付当りの縦方向の強度(DTm)及び横方向の強度(DTc)が1.6N/5cm以上で、目付当りの縦方向と横方向の強度の和(DTm+DTc=DTt)が3.5N/5cm以上である請求項1に記載の発泡成形品補強用不織布。
【請求項3】
短繊維不織布を構成する繊維は、少なくとも2種類の短繊維を含有し、繊度が1.2〜3dtexの繊度の低い繊維(繊維A)と繊度が2〜4dtexの繊度の高い繊維(繊維B)を含有し、繊維Aと繊維Bの繊度差(ΔD)と繊維Aと繊維Bの質量混率(A/B)が下記式を満足する請求項1または2に記載の発泡成形品補強用不織布。
繊度差(ΔD):0.5≦ΔD≦2(dtex) ・・・式3
混率(A/B):80/20〜30/70(質量%) ・・・式4

【公開番号】特開2013−76179(P2013−76179A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215960(P2011−215960)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】