説明

発泡成形機及びその運転方法

【課題】簡単な移動機構により移動ダイプレートを型閉めすることができる発泡成形機及びその運転方法を提供する。
【解決手段】移動ダイプレート2の金型4を挟んで相対峙する位置に、移動ダイプレート2移動用のボールネジ5、6が2本装着された発泡成形機において、一方のボールネジ5の端部に、移動ダイプレート2の高速移動機構8を配設し、他方のボールネジ6の端部に、移動ダイプレート2の低速移動機構9を配設するとともに、これらのボールネジ5、6の間に、動力伝達部材11を介装した。高速移動機構8は、モータ軸12がボールネジ5に直結されたモータ13を備え、低速移動機構9は、モータ21と、モータ21に接続された減速機22とを備えている。及び、自動的に型締め力を調整する運転方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動ダイプレートをボールネジの回転によって移動して、型閉め、型開きを行う発泡成形機及びその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発泡成形機として、例えば特許文献1に開示されたようなボールネジ式のものがある。このものは、移動ダイプレートをボールネジの回転によって移動して、金型の型閉め、型開きを行うことができる。即ち、移動ダイプレートの金型を挟んで相対峙する位置に2本のボールネジが配設され、それぞれのボールネジは独立して制御される移動機構に接続されている。移動機構は、駆動用モータ、減速機、高速移動時に接続されるクラッチ(以下、高速クラッチという)、低速移動時に接続されるクラッチ(以下、低速クラッチという)等からなる。
【0003】
上記したものにおいて型閉め開始時においては低速クラッチをオフにして、高速クラッチを入れ、駆動用モーターを駆動することによって、ボ−ルネジを高速で回転させて、移動ダイプレートを高速で固定ダイプレートの方向ヘ移動させることができる。金型が保護開始位置に達すると駆動用モーターの速度を落とし、保護速度で移動させる。そして、金型が閉じる位置に達すると高速クラッチをオフにして低速クラッチを入れることによって、減速機を介して金型を低速高締め付け力で締め付けることができる。
【0004】
以上のように、従来のボールネジ式の発泡成形機は、一つの移動機構により移動ダイプレートの高速移動と低速移動とを行うので、制御が複雑であるうえに、低速移動と高速移動の切替機構も、駆動モーター、高速クラッチ、低速クラッチ、減速機、これらをつなぐ複数本のタイミングベルト、並びにこれらを支持する部材等からなる複雑なものになってしまうという問題があった。また、移動機構は重量であるので、これを保持するために頑丈な固定板12に装着されていたので、結果として3枚のダイプレートが必要になるという問題があった。
【特許文献1】特開平5−193014号公報 (図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、簡単な移動機構により移動ダイプレートを移動させて型閉め、型開きを確実に行うことができる発泡成形機及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の発泡成形機は、固定ダイプレートに対向配置された移動ダイプレートの金型を挟んで相対峙する位置に、移動ダイプレート移動用のボールネジが2本装着された発泡成形機において、
一方のボールネジの端部に、移動ダイプレートの高速移動機構を配設し、
他方のボールネジの端部に、移動ダイプレートの低速移動機構を配設するとともに、
これらのボールネジの間に、一方のボールネジの回転を他方のボールネジに伝える動力伝達部材を介装したことを特徴とするものである。
【0007】
上記した発明において、高速移動機構は、モータ軸がボールネジに直結されたモータを備え、
低速移動機構は、モータと、モータの回転をボールネジに伝える減速機とを備えるものとすることができる。
【0008】
また、ボールネジと減速機とを、ウォームギア又はクラッチ機構を介して接続することができるし、移動ダイプレートの下部に、移動ダイプレートの摺動を容易とするための直進ガイドを配設することができる。
【0009】
また、高速移動機構と低速移動機構とを支持板に取り付けて、ダイプレートを3枚から2枚に低減しするとともに、タイバーを全て省略することができる。
【0010】
また、本発明の発泡成形機の運転方法は、請求項1〜5の何れかに記載の発泡成形機を用いて成型品を製造する発泡成形機の運転方法であって、型締め限にて金型内に蒸気を注入した際に金型の膨張により増加する型締め力を、低速移動機構のモータの自動回転により緩和させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、2本のボールネジのそれぞれに高速移動機構と低速移動機構とを配設して、これらのボールネジの間に動力伝達部材を介在させたので、型締め開始時は高速移動機構を作動させて2本のボールネジを高速で回転させて移動ダイプレートを高速移動することができる。型締め限手前で高速移動機構を停止し低速移動機構を作動させることによって、2本のボールネジを低速で回転させて移動ダイプレートを低速高締め付け力にて移動させることができる。したがって、移動機構の駆動切替によって、移動ダイプレートの型閉めを確実に行うことができるという大きな利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明は、高速移動機構及び低速移動機構を簡単な構造のものとすることができる。
請求項3に係る発明は、高速移動時にはウォームとウォームホイールの係合、又はクラッチの係合を解除するので、減速機が高速回転されて破損などの損傷を受けることがない。
請求項4に係る発明は、小さい駆動力で移動ダイプレートを容易に摺動させることができる。
請求項5に係る発明は、発泡成形機を簡単な構造のものとすることができる。
請求項6に係る発明は、金型膨張により生じた応力を自動的に開放するので、ボールネジに過負荷が係ることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1〜3は本発明の発泡成形機を示す図である。図1において、固定ダイプレート1に対向して移動ダイプレート2が配置されている。それぞれのダイプレート1、2は、固定型である金型3と、移動型である金型4を有している。移動ダイプレート2の左右の両端部、即ち金型4を挟んで相対峙する位置には、2本のボールネジ5、6がナット部7(一方のナット部は図示していない)を介して装着されている。ボールネジ5、6は上下方向位置が移動ダイプレート2の中央の高さにして、左右方向には移動ダイプレート2の中央から等間隔に離間させてあって、型閉め力が金型3に対して不均一にならないようにしてある。ボールネジ5、6の先端は軸受け20に支持されている。
【0014】
一方のボールネジ5の端部には、移動ダイプレート2の高速移動機構8が配設され、他方のボールネジ6の端部には、移動ダイプレート2の低速移動機構9が配設されている。
これら移動機構8、9は支持板10に取付られている。そして、これらのボールネジ5、6の間には、一方のボールネジ5又は6の回転を他方に伝える動力伝達部材11、例えばベルトやチェーンなどが介装されている。なお、移動機構8、9は固定ダイプレート1に取り付けることもできる。
【0015】
高速移動機構8は、モータ軸12がボールネジ5に直結されたモータ13を備えている。ボールネジ5は図示していないベアリングに回転自在に支持されている。モータ軸12の回転は直接ボールネジ5に伝達されるので、モータ軸12を高速回転させることによってボールネジ5は高速回転される。このとき、ボールネジ6も動力伝達部材11を介してボールネジ5と同じ速度で回転される。よって、移動ダイプレート2を2本のボールネジ5、6にて高速で型閉め方向に移動させることができる。
【0016】
低速移動機構9の拡大図を、図4に示す。低速移動機構9は、モータ21と、モータ21に接続された減速機22と、減速機22の回転をボールネジ6の基端シャフト部23に伝達するウォームギア24とを備えている。ウォームギア24は、減速機22側のウォーム25と基端シャフト部23側のウォームホイール26とからなる。即ち、モータ21の回転は減速機22により減速されてウォーム25を回転させる。ウォーム25は、これに噛合されているウォームホイール26を回転させるので、これによってボールネジ6を低速で回転させることができる。
【0017】
減速機22はエアシリンダ31にて昇降可能にガイド部32に支持されている。即ち、エアシリンダ31がガイド部32に摺動可能に差し込まれている。したがって、低速移動機構9を使用しない場合には、ウォーム25を降下させてウォームホイール26との噛合を解除して、モータ21などの損傷を防止することができる。また、図8に示すように、ウォームギア24に替えて、クラッチ機構26を用いても、ボールネジ6の回転を減速機22やモータ21へ非伝達とすることができる。
【0018】
低速移動機構8は、図7に示すように、ロータリエンコーダなどの移動型4の位置検出手段15と、モータ21に駆動、停止指令を発するコントローラ16とからなるボールネジ回転制御手段17に接続されている。このボールネジ回転制御手段17により、型締め、型開き時に移動型4を所定のクラッキング位置に正しく停止させることができる。また、モータ21は、負荷トルクによって型締め力を検出することができる。
【0019】
高速移動機構8と低速移動機構9を別体として簡素化したので、従来のような固定板などのダイプレートを一枚省略することができる。よって、装置全体を、固定ダイプレート1と移動ダイプレート2との2枚のダイプレートからなる簡素なものとすることができる。
【0020】
移動プレート2の下部には、図5、6に示すように直進ガイド41を配設したので、移動ダイプレート2の移動を容易に行うことができる。直進ガイド41は、台40上に敷設されたレール42と、移動ダイプレート2の裏側に所要間隔をおいて取り付けられたガイド部材43とからなる。レール42は側部にくびれを有し、ガイド部材43はこれに対応する凹状に形成してあるので、移動ダイプレート2は脱線を起こしたりすることなくレール42上を左右に移動することができる。
【0021】
以上のように構成されたものにおいて、移動ダイプレート2を型閉めするときにはエアシリンダ31を後退させて、ウォーム25とウォームホイール26の係合を解除する。モータ13を駆動しボールネジ5、6を高速で回転させる。ボールネジ5、6が回転されるとボールネジ5、6に螺合されているナット部7が固定ダイプレート1の方に移動するので金型4を高速で金型3の方向に移動させることができる。
【0022】
金型保護開始位置に達するとモータ13の速度を落とし、移動ダイプレート2を低速で移動させる。そして、金型4が閉じる位置に達するとエアシリンダ31を上方に突出させてウォーム25とウォームホイール26とを噛合させたうえで、モータ21を駆動し、減速機22を介して金型4を金型3に低速且つ高締め付け力にて締め付ける。なお、モータの制御はインバータ制御により行われるので、発泡成形機の運転を効率良く省エネルギーにて行うことができる。
【0023】
金型4を所定のクラッキング位置に停止させた後には、キャビティに原料を注入するとともに、蒸気を金型3,4の蒸気室32,42内に注入して発泡成形する。この成形において移動型4を型締め限まで締め付けたときには、その蒸気圧と金型3,4の膨張により型締め力が増加していく。これをそのまま放置しておくとボールネジ5,6が引っ張り力で切断する可能性が生ずる。これを防ぐために、型締め力が増加してきたら、モータ22のトルク制御により型締め力を緩める方向にモータを自動的に微少回転させる。これによって、ボールネジ5,6を微少回転させて発生した応力を弛緩させて、型締め力の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る発泡成形機の平面図である。
【図2】図1の発泡成形機の正面図である。
【図3】図1の発泡成形機の側面図である。
【図4】低速移動機構の正面図である。
【図5】移動ダイプレート下部の拡大正面図である。
【図6】移動ダイプレート下部の拡大側面図である。
【図7】ボールネジ回転制御手段の説明図である。
【図8】クラッチ機構を備えた低速移動機構の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
2 移動ダイプレート、4 金型、5、6 ボールネジ、8 高速移動機構、9 低速移動機構、11 動力伝達部材、12 モータ軸、13 モータ、21 モータ、22 減速機、24 ウォームギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ダイプレートに対向配置された移動ダイプレートの金型を挟んで相対峙する位置に、移動ダイプレート移動用のボールネジが2本装着された発泡成形機において、
一方のボールネジの端部に、移動ダイプレートの高速移動機構を配設し、
他方のボールネジの端部に、移動ダイプレートの低速移動機構を配設するとともに、
これらのボールネジの間に、一方のボールネジの回転を他方のボールネジに伝える動力伝達部材を介装したことを特徴とする発泡成形機。
【請求項2】
高速移動機構は、モータ軸がボールネジに直結されたモータを備え、
低速移動機構は、モータと、モータの回転をボールネジに伝える減速機とを備えることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形機。
【請求項3】
ボールネジと減速機とを、ウォームギア又はクラッチ機構を介して接続したことを特徴とする請求項2に記載の発泡成形機。
【請求項4】
移動ダイプレートの下部に、移動ダイプレートの摺動を容易とするための直進ガイドを配設したことを特徴とする請求項3に記載の発泡成形機。
【請求項5】
高速移動機構と低速移動機構とを支持板に取り付けて、ダイプレートを3枚から2枚に低減しするとともに、タイバーを全て省略したことを特徴とする請求項3に記載の発泡成形機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の発泡成形機を用いて成型品を製造する発泡成形機の運転方法であって、型締め限にて金型内に蒸気を注入した際に金型の膨張により増加する型締め力を、低速移動機構のモータの自動回転により緩和させるようにしたことを特徴とする発泡成形機の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−55863(P2008−55863A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238743(P2006−238743)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(391023057)株式会社ダイセン工業 (14)
【Fターム(参考)】