説明

発泡成形用ポリアミド樹脂組成物、およびこれより得られる発泡成形体

【課題】低比重で曲げ特性に優れ、発泡成形性および表面平滑性に優れた発泡成形用ポリアミド樹脂組成物、および成形体を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)、繊維状粘土鉱物(B)からなるポリアミド樹脂組成物であり、繊維状粘土鉱物(B)がポリアミド樹脂(A)中に下記(I)および(II)の状態で分散していることを特徴とする発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。(I)単分散した一本の繊維状結晶の繊維長が0.01〜40μm、かつ単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸が0.01〜40μmである。(II)単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離がいずれも1〜100nmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形性におよび表面平滑性に優れたポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械特性、耐薬品性、耐熱性、成形加工性など優れた特性を有しており、従来から自動車分品、電子電機部品などに広く利用されている。これらの特性を活かして軽量化を図る手段として、ポリアミド樹脂に発泡剤を添加して成形した、ポリアミド樹脂発泡体が提案されている。たとえば、特許文献1〜3にはポリアミドなどの樹脂に繊維状強化材と発泡剤を配合されてなる樹脂組成物およびそれらからなる発泡体が記載されている。しかしながら、実用化レベルの強度、剛性を得るためには強化材の配合量が多くなり、したがって軽量化効果に乏しく表面平滑性に優れるものではなった。
また、軽量化を高める手法として、たとえば特許文献4には膨潤性フッ素雲母および発泡剤をからなるポリアミド樹脂が開示されているが、発泡倍率を高めることができず軽量化としては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−214141号公報
【特許文献2】特開平7−216126号公報
【特許文献3】特開昭58−76431号公報
【特許文献4】特許3535919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低比重で曲げ特性に優れ、発泡成形性および表面平滑性に優れた発泡成形用ポリアミド樹脂組成物、および成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂に繊維状粘土鉱物が特定の状態で分散したポリアミド樹脂組成物は、発泡成形に適した溶融粘性を有することを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0007】
(1)ポリアミド樹脂(A)、繊維状粘土鉱物(B)からなるポリアミド樹脂組成物であり、繊維状粘土鉱物(B)がポリアミド樹脂(A)中に下記(I)および(II)の状態で分散していることを特徴とする発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。
(I)単分散した一本の繊維状結晶の繊維長が0.01〜40μm、かつ単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸が0.01〜40μmである。
(II)単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離がいずれも1〜100nmである。
(2)275℃×5kg条件下で測定される溶融粘度が5〜150g/10分であることを特徴とする(1)の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。
(3)ポリアミド樹脂(A)と繊維状粘土鉱物(B)の配合割合が質量比で(A)/(B)=99/1〜70/30であることを特徴とする(1)または(2)の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。
(4)繊維状粘土鉱物(B)がセピオライトおよび/またはパリゴルスカイトであることを特徴とする(1)〜(3)の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物と発泡剤(C)とからなる発泡性ポリアミド樹脂組成物。
(6)(5)の発泡性ポリアミド樹脂組成物より得られる発泡成形体。
(7)射出コアバック式の射出成形方法を用いて成形することを特徴とする(6)の発泡成形体。
(8)発泡セルを有するコア部が発泡セルを有さないスキン部で包含されてなり、発泡の実倍率が1.15〜3.00であることを特徴とする(6)または(7)の発泡成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低比重で曲げ特性に優れ、発泡成形性および表面平滑性に優れた発泡成形用ポリアミド樹脂組成物、および発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に用いられる繊維状粘土鉱物(B)の分散状態を示す概略図である。
【図2】分散状態における繊維状粘土鉱物(B)の繊維長または最大外寸を示す概略図である。
【図3】分散状態における繊維状粘土鉱物(B)の最短距離を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸とから形成されるアミド結合を有する重合体を意味する。このようなポリアミド樹脂を形成するモノマーの例を挙げると、次のようなものがある。
【0012】
アミノ酸としては 6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などがある。
【0013】
ラクタムとしてはε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどがある。
【0014】
ジアミンとしてはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどがある。
【0015】
ジカルボン酸としてはアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、 2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸などがある。
【0016】
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)として好ましいものとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ナイロン6T/6I)、ポリビス(1−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドなどがある。中でも特に好ましいものはナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドである。上記の中でも、耐熱性に優れ、成形加工が容易と言う観点から、ナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
【0017】
ここで用いるポリアミド樹脂(A)は、通常公知の溶融重合法で、あるいはさらに固相重合法を併用して製造される。
【0018】
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の相対粘度としては特に制限はないが、溶媒として96%硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/100mlの条件で求めた相対粘度で1.5〜5.0の範囲であることが好ましく、2.0〜4.0の範囲であることがより好ましい。相対粘度が1.5未満では発泡成形を行う場合、均一な発泡セルが生成しにくく発泡性が低下し、また、機械的特性も低下するので好ましくない。5.0を超えると得られる発泡成形用ポリアミド樹脂組成物の流動性が低下するため、発泡成形性が低下するので好ましくない。
【0019】
本発明で用いる繊維状粘土鉱物(B)は、繊維状の含水マグネシウム珪酸塩鉱物であることが好ましい。なかでも、ポリアミド樹脂中への分散の容易性、得られたポリアミド樹脂組成物の溶融粘土の上昇を抑制しやすい観点から、特に、セピオライト、パリゴルスカイトが好ましく用いられる。
【0020】
セピオライトはMg(SiO11)・3HOを主成分として含有する天然鉱物であり、パリゴルスカイトはMgAlSi0(OH)・8HOを主成分として含有する天然鉱物である。なお、パリゴルスカイトにおいては、マグネシウムが鉄やアルミニウムによって置換されていてもよい。
【0021】
繊維状粘土鉱物(B)の基本的な構造を以下に説明する。
繊維状粘土鉱物は、八面体の酸化マグネシウム層を中心層として、その両側に正四面体の珪酸塩層が配された三層構造を有するものである。この三層構造はX軸方向(繊維長方向)に沿って伸びているため、繊維状粘土鉱物の結晶は繊維状(繊維状結晶)となる。また複数の繊維状結晶が繊維方向に沿って凝集することもある。
【0022】
また、正四面体の珪酸塩層は数単位ごとにZ軸上で反転して結合しているため、八面体の酸化マグネシウム層は不連続層となり、繊維断面にゼオライト孔を形成する。また、成分(B)は、X軸方向に沿って、多数のシラノール基(Si−OH基)を有しているため、前記ゼオライト孔と粒子間の空隙には水などの極性の高い物質が浸入しやすいという性質を有する。
【0023】
上記のように、本発明における繊維状粘土鉱物(B)は、他の粘土鉱物と比較して繊維状でありながらも、多孔性であるため、嵩高い反面、ポリアミド樹脂との親和性に優れ、高比重となることなく樹脂組成物中に配合することができ、効果的に曲げ特性を向上させることができ、さらに、発泡セルの核となるため、発泡セルの生成が促進されて均一な発泡セルを分布させることができる。すなわち、繊維状粘土鉱物は、ポリアミド樹脂中に十分に分散することが必要であり、ポリアミド樹脂中において繊維状粘土鉱物が単分散した繊維状結晶や、複数の繊維状結晶が束になった凝集物の状態で分散している。それにより、本発明の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物は、低比重で、かつ曲げ特性に優れるものとなる。
【0024】
本発明において、十分に分散している状態とは、図1に示されたように、ポリアミド樹脂中の繊維状粘土鉱物が、単分散した繊維状結晶、または単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の状態であり、かつ下記(I)および(II)を同時に満足する場合をいうものである。
【0025】
(I)単分散した一本の繊維状結晶の繊維長が0.01〜40μmであり、好ましくは0.1〜20μmである。かつ単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸が0.01〜40μmであり、好ましくは0.1〜20μmである。
(II)単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離がいずれも1〜100nmであり、好ましくは10〜50nmである。
【0026】
図2に、単分散した一本の繊維状結晶の繊維長、および単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸を示す。図2において、(a)は、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸を示し、(b)は単分散した一本の繊維状結晶の繊維長を示す。
【0027】
図3に、本発明における単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した一本の繊維状結晶の凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離を示す。図3において、(c)は単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離を示し、(d)は単分散した繊維状結晶同士間の最短距離を示し、(e)は単分散した一本の繊維状結晶の凝集物同士間の最短距離を示す。
【0028】
前記(I)において、繊維長が0.01μm未満であると、ポリアミド樹脂の強化効果が不十分になるという問題がある。一方、40μmを超えると発泡成形時に、応力がかかる場合にクラックが生じやすくなり、また、発泡セルの生成が不均一になり、機械強度が低下するため好ましくない。
【0029】
凝集物の最大外寸が0.01μm未満であると、ポリアミド樹脂(A)の強化効果が不十分になるという問題がある。一方、40μmを超えると発泡成形時に、応力がかかる場合にクラックが生じやすくなりまた、発泡セルの生成が不均一になり、機械強度が低下するため好ましくない。
【0030】
単分散した一本の繊維状結晶の繊維長、および単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸は、透過型電子顕微鏡で樹脂組成物の内部を観察し測定した値をいい、詳しい測定方法については後述する。
【0031】
前記(II)において、単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離が1nm未満であると、発泡成形用ポリアミド樹脂組成物の流動性が極端に低下し、成形加工が困難となるという問題がある。一方、100nmを超えると、繊維状粘土鉱物によるポリアミド樹脂の強化効果が低下し、十分な曲げ特性を付与することができない。
【0032】
なお、本発明における単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した一本の繊維状結晶の凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離とは、透過型電子顕微鏡でポリアミド樹脂組成物の内部を観察し、単分散した繊維状結晶同士、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物同士、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物において最短距離のものをいい、詳しい測定方法については後述する。
【0033】
本発明の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物において、繊維状粘土鉱物(B)はポリアミド樹脂(A)との質量比率で、(A)/(B)=99/1〜70/30であることが好ましく、(A)/(B)=97/3〜80/20であることがより好ましい。繊維状粘土鉱物(B)の配合量が1質量部未満であると、得られる発泡成形用ポリアミド樹脂組成物の強化効果が不十分なばかりか、均一で小さい発泡セルが生成しない、表面平滑性が劣るなど発泡性に問題となる場合がある。一方、30質量%を超えると、得られた発泡成形体が脆くなる場合がある。
【0034】
本発明の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度は、275℃、5kgf荷重条件下で測定される溶融粘度が、5〜150g/10分であることが好ましく、30〜125g/10分であることがより好ましく、55〜100g/10分であることが特に好ましい。発泡成形用ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度を上記範囲とすることで、前記繊維状粘土鉱物(B)の発泡セルの核となる効果との相乗効果により、均一でしかも独立した大きな気泡径を有する発泡成形体を得ることができる。このような発泡成形体は、低比重であっても、機械的強度に優れ、しかも、表面平滑性にも優れる。
【0035】
本発明で用いられる発泡剤(C)とは、繊維状粘土鉱物が分散したポリアミド樹脂に配合させ、実質的にその発泡成形用ポリアミド樹脂組成物を発泡させることができる成分である。
【0036】
発泡剤としては熱分解型の、例えば、アゾ、N−ニトロソ、複素環式窒素含有及びスルホニルヒドラジド基のような分解しうる基を含有する有機化合物、炭酸アンモニウムや炭酸水素ナトリウムなどの無機化合物を挙げることができる。その具体例としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、4−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニル)セミカルバジド、4−トルエンスルホニルセミカルバジド、バリウムアゾジカルボキシレート、5−フェニルテトラゾール、トリヒドラジノトリアジン、4−トルエンスルフォニルアザイド、4,4’−ジフェニルジスルフォニルアザイドなどである。
【0037】
また、発泡剤としては、ガス状フルオロカーボン、窒素、二酸化炭素、空気、ヘリウム、アルゴンなど常温で気体のものや、液状フルオロカーボン、ペンタンなどの常温で液体のものも使用できる。
【0038】
発泡剤(C)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)と繊維状粘度鉱物(B)の合計100質量部に対して0.05〜2質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましい。配合量が0.05質量部未満では発泡させるガスの量が少なく、発泡成形用ポリアミド樹脂組成物を発泡させる際の発泡倍率が上がらず質量減少効果が得られない場合があり、また、2質量部を超えると、得られた発泡成形体の強度低下、シルバーストリークなどの外観不良などを起こす場合があるため好ましくない。
【0039】
前述の分解型の発泡剤を用いる場合は、発泡剤と熱可塑性樹脂と混合した発泡剤マスターペレット形態とすることがより好ましい。マスターペレットを用いることで、発泡成形用ポリアミド樹脂組成物とマスターペレットが一緒に溶融され発泡剤が分散しやすく、溶融した発泡成形用ポリアミド樹脂組成物中で効率よく発泡ガスが発生するため、発泡性が向上する。
【0040】
マスターペレットの具体例としては、発泡剤の分解開始温度よりも低い融点の熱可塑性樹脂に溶融混錬したペレット状にしたもの、熱可塑性樹脂の粉粒体と発泡剤の粉体を混合しペレット状に圧縮造粒したもの、熱可塑性樹脂ペレットの表面に発泡剤を混合添着したものが挙げられる。
【0041】
マスターペレットに用いる熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレン(AS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、スチレン―エチレンーブタジエンースチレン(SEBS)、エチレンーαオレフィンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
【0042】
前述したマスターペレットには、発泡剤が3〜50質量%配合されていることが好ましく、5〜30質量%がより好ましい。発泡剤が3質量%未満では、マスターペレットの配合量が多なるため、得られる発泡成形体の強度が低くなる場合があり、一方、50質量%を超えると、マスターペレットの配合量が少なくなるため、発泡剤の分散にむらができ、発泡性が低下する場合があるため好ましくない。
【0043】
発泡剤を含有する発泡成形用ポリアミド樹脂組成物については、以下発泡性ポリアミド樹脂組成物と称する。
【0044】
発泡性ポリアミド樹脂組成物は、常法により成形して発泡成形体とすることができる。例えば、繊維状粘土鉱物(B)を含有したポリアミド樹脂(A)を、ペレット状もしくは粉末状にした後、発泡剤(C)と、あるいは発泡剤(C)を含有するマスターペレットと混合し、次いでこの混合物を成形機中に供給、溶融し、射出成形して発泡成形体を得ることができる。
【0045】
発泡成形体の強度、表面の平滑性、外観性を向上させるためには、発泡セルが存在するコア部を発泡セルが存在しないスキン部で包括した形態とすることが好ましい。このような発泡成形体は、例えば、射出成形機において、溶融した発泡性ポリアミド樹脂組成物を金型キャビティに射出し、溶融樹脂が流動末端付近に到達した時点で、金型キャビティに隣接した金型コア部(ダイプレート)を、中型キャビティの厚みが拡張する方向へ後退させる射出コアバック式の射出成形方法で得ることができる。ここで、ダイプレートの後退距離と金型キャビティの初期深さより次式を用いて求められる値を設定発泡倍率(X)と定義する。
設定発泡倍率(X)=(初期深さ+ダイプレートの後退距離)/(初期深さ)
【0046】
また、このときの発泡の実倍率(Y)は、未発泡体の密度(ρ)と発泡成形体の密度(ρ)の比(ρ/ρ)として算出することができる。発泡の実倍率は1.15〜3.00であることが好ましく、1.25〜2.60であることがより好ましい。発泡の実倍率が1.15未満であると、発泡成形体の軽量化効果が不十分であり、3.00を超えると、発泡成形体中でコア部の発泡セルが粗大化する場合や、スキン部が薄くなる場合があり、発泡成形体の強度が低下する。
【0047】
設定発泡倍率(X)、発泡の実倍率(Y)より算出される発泡効率(Y/X)は、表面平滑性の指標となるものであり、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。発泡効率(Y/X)が85%以上であることにより、金型内で発泡する発泡成形体が、金型との密着性を増し、発泡成形体の表面平滑性が向上する。
【0048】
コア部の発泡セルの平均気泡径は表面平滑性を高める上で、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。平均気泡径が300μmを超えると、発泡成形体の表面平滑性が低下し、また、発泡成形体の強度が低下する場合がある。また、スキン部の厚みは50μm以上であることが好ましく、100μmであることがさらに好ましい。スキン部の厚みが50μm未満であると、発泡成形体の強度が低下する場合がある。
【0049】
本発明の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、他の重合体を添加してもよい。このような重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリルゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレンなどのエラストマー、およびこれらの無水マレイン酸などによる酸変性物、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−フェニルマレイミド共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。さらに、本発明の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの強化材、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、着色防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、離型安定剤等を添加してもよい。
【0050】
本発明の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物は、従来の強化されたポリアミド樹脂と比較して低比重で、かつ曲げ特性に優れ、発泡成形性および表面平滑性に優れたため、電気・電子機器分野や、自動車分野、あるいは機械分野などに好適に用いられる。
中でも、低比重でありながら曲げ特性に優れることを生かして、耐久消費材用途で用いることが可能であり、自動車部品、電気電子部品に好適に用いることができる。
自動車部品用途においては、エンジンカバー、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエタータンク、ラジエターサポート、ラジエターホース、ラジエターグリル、タイミングベルトカバー、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、クーリングファン、ファンシュラウド等のエンジン周辺部品、ワイヤーハーネス、リレーブロック、センサーハウジング、エンキャプシュレーション、イグニッションコイル、ディストリビューター、サーモスタットハウジング、クイックコネクター、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケット等の電装系部品、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベントグリル、エアアウトレットルーバー、エアスクープ、フードバルジ、フェンダー、バックドア、シフトレバーハウジング、ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイドドアミラーステー等の各種内外装部品等で好適に用いることができる。
電気電子部品用途においては、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、IC、LEDのハウジング等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた原料を示す。
【0052】
1.原料
(1)ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分
・ε−カプロラクタム(宇部興産社製)
【0053】
(2)ポリアミド樹脂
・ポリアミド6樹脂(ユニチカ社製A1030BRL)、相対粘度2.5、比重1.13
・ポリアミド66樹脂(ユニチカ社製E2000)、相対粘度2.7、比重1.14
・非晶性ポリアミド樹脂(DSM社製X21−F07)、相対粘度2.0、比重1.18
【0054】
(3)繊維状粘土鉱物
・セピオライト(TOLSA社製PANGEL HV)、熱重量減少率12質量%、
長さ:0.2〜2μm、幅:0.1〜0.3μm,厚さ:0.05〜0.1μm
・パリゴルスカイト(昭和KDE社製POLEISY)、熱重量減少率6質量%、粒径45〜150μm
【0055】
(3)層状粘土鉱物
・合成フッ素雲母(コープケミカル社製ME−100)、平均粒径6.0μm、陽イオン交換容量110ミリ当量/100g
【0056】
(4)繊維補強材
・ガラス繊維(オーウェンスコーニング社製MAFT692)、繊維径13μm
【0057】
(5)発泡剤
・c−1:アゾジカルボンアミド(永和化成工業社製ビニホールAC#3)
【0058】
(6)発泡剤マスターペレット
・c−2:炭酸水素ナトリウム含有マスターペレット(ポリスチレン樹脂に永和化成工業社製ビニホール405を40%含有させたもの)
・c−3:アゾジカルボンアミド含有マスターペレット、直鎖状低密度ポリエチレン/ア
ゾジカルボンアミド/無水マレイン酸変性エチレンーαオレフィンコポリマー=40/20/40(質量部)混合品である。以下の手順にて作製を行った。
[発泡剤マスターペレットc−3の作製]
直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製SP0540)40質量部、発泡剤
(c−1)20質量部をドライブレンドし混合物を得た後、前記2軸押出機の基部より混合物を投入し、次いでサイドフィーダーより無水マレイン酸変性エチレンーαオレフィンコポリマー(三井化学社製MH7010)40質量部を投入、溶融混錬を行い、発泡剤マスターペレット(c−3)を得た。溶融混練は、シリンダー温度150℃、スクリュー回転数150rpm、吐出20kgで行った。
・c−4:アゾジカルボンアミド含有マスターペレット、ポリアミド6樹脂/アゾジカル
ボンアミド/パラフィンワックス=70/20/10(質量部)混合品である。以下の手順にて作製を行った。
[発泡剤マスターペレットc−4の作製]
平均粒子径450μmのナイロンパウダー(ポリアミド6樹脂)をボールミルで粉砕したもの)70質量部、発泡剤(c−1)20質量部およびパラフィンワックス(日本精蝋社製LUVAX1266)10質量部をドライブレンドし、100mm×100mm×3mmのステンレス鋳型に投入し、90℃に加熱した熱プレス機にて圧力0.3MPaで2分間加圧し、発泡剤含有のプレートを得た。このプレートを3mm×3mmに切断し、発泡剤マスターペレット(c−4)を得た。
【0059】
2.試験方法
以下に各種試験方法を示す。得られたポリアミド樹脂組成物につき、「樹脂ペレット」、必要に応じ「未発泡の成形体」(ソリッド成形体という)、「発泡成形体」のいずれかを作製して物性評価を行った。
【0060】
[樹脂ペレットによる評価]
【0061】
(1)ポリアミド樹脂組成物中の灰分量
乾燥したポリアミド樹脂組成物の樹脂ペレットを磁性ルツボに精秤し、500℃で3時間加熱し、加熱後の残渣を無機灰分として、次式にしたがって無機灰分率を求めた。
[無機灰分率]=(残渣質量)/(加熱前のポリアミド樹脂組成物の質量)×100
【0062】
(2)未発泡状態(ソリッド)でのポリアミド樹脂組成物の密度(ρ
ポリアミド樹脂組成物の樹脂ペレットを1g準備し、乾式自動密度計(島津製作所社製アキュピックII 134型)を用い、気体置換型ピノメータ法により測定した。
【0063】
(3)相対粘度
乾燥したポリアミド樹脂組成物の樹脂ペレットを、96質量%硫酸中に濃度が1g/dlになるように溶解させ、G−3ガラスフィルターによりポリアミド成分以外を濾別した後測定に供した。測定はウベローデ型粘度計を用い25℃雰囲気下で行った。ガラス繊維を含有するポリアミド樹脂組成物についてはガラス繊維分を補正した後、同様に測定した。
【0064】
(4)溶融粘度
乾燥したポリアミド樹脂組成物の樹脂ペレットを10g準備した。オリフィス径が1mmであるフローテスター(島津製作所社製CFT−500型)を用い、JIS K7199に従って測定を行った。275℃に加熱したシリンダーに、成形体の切片を入れ、3分間予熱した後、5kgf荷重下で測定を行った。なお、測定は一水準あたり3回行い、その平均値を算出した。
【0065】
[ソリッド成形体による評価]
ソリッド成形体は、上記ポリアミド樹脂組成物の樹脂ペレットを用い、射出成形機(FANUC社製S−2000i型)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で射出成形し成形体を得た後、下記評価を行った。長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mmのキャビティを有する金型を用いた。
【0066】
(5)繊維状粘土鉱物の単分散した一本の繊維状結晶の繊維長、および単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸(μm)
前記ソリッド成形体を、流動方向に平行な面に沿ってウルトラミクロトーム(LEICA社製EMUC6型)を用いて切断し、該切断面の繊維状粘土鉱物の単分散した繊維状結晶か、または単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物を透過型電子顕微鏡(JEOL社製LEM−1230型)により、800倍で観察した。観察された繊維状粘土鉱物の単分散した繊維状結晶の繊維長、かつ単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸をすべて測定した。それらの中で最大の数値を採用した。
【0067】
(6)繊維状粘土鉱物の単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離(nm)
前記ソリッド成形体を、流動方向に平行な面に沿ってウルトラミクロトーム(LEICA社製EMUC6型)を用いて切断し、該切断面の繊維状粘土鉱物の単分散した繊維状結晶か、または単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物を透過型電子顕微鏡(JEOL社製LEM−1230型)により10万倍で観察した。単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離(最も接近する隣接するもの同士)を測定し、任意の500個のデータの平均値を採用した。
【0068】
(7)ソリッド成形体の密度(ρ
前記ソリッド成形体より約10×10mmの切片を切り出し、乾式自動密度計(島津製作所社製アキュピックII 134型)を用い、気体置換型ピノメータ法により測定した。
【0069】
[発泡成形体の作製]
発泡成形体は、上記ポリアミド樹脂組成物の樹脂ペレット、発泡剤または発泡剤マスターペレットを用い、射出成形機(FANUC社製S−2000i型)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で射出成形して得た。長さ127mm、幅12.7mm、深さ1.6mmのキャビティを有する金型を用いた。ここで、発泡成形体の初期厚みは、1.6mmであり、ダイプレートの後退距離を0.32〜3.04mmの範囲で調整して設定発泡倍率を変更しながら、各種発泡成形体を得た。
【0070】
(8)曲げ強度(MPa)
前記発泡成形体を用いて、ASTM D−790に準拠して測定した。
【0071】
(9)曲げ弾性率(GPa)
前記発泡成形体を用いて、ASTM D−790に準拠して測定した。
【0072】
(10)Izod衝撃強度(J/m)
前記発泡成形体を用いて、ASTM D−256に準拠して測定した。
【0073】
(11)発泡体の密度(ρ
前記発泡成形体から約10×10mmの切片を切り出し、乾式自動密度計(島津製作所社製アキュピックII 134型)を用い、気体置換型ピノメータ法により測定した。
【0074】
(12)発泡の実倍率(Y)
前述の密度測定結果から、下記の計算式により求めた。
発泡の実倍率(Y)=(ソリッド成形体の密度ρ)/(発泡成形体の密度ρ
【0075】
(13)発泡効率
発泡効率(%)={発泡の実倍率(Y)/設定発泡倍率(X)}×100で示す。
【0076】
(14)発泡成形体コア部の平均気泡径
ASTM D 2842−69の方法に準拠して測定した。前記発泡成形体の押出方向(MD方向)及びそれと直交する方向(TD方向)、ならびにMD及びTD方向と直交する方向(VD方向)の断面の顕微鏡写真を撮影し、その写真において一直線上(直線長さL)にかかる気泡数Nから平均弦長Tを次式によって算出する。
T=L/N
次いでこのTの値を用いて、平均気泡径Dは次式により算出した。
D=T/0.616
【0077】
(15)発泡成形体の表面平滑性
前記発泡成形体の表面を観察し、発泡による膨張で表面が均一な厚みになっているかを目視で判定した。発泡性が悪い場合、表面が波打った状態で厚みが均一ではない。厚みが均一で表面平滑性が高い場合は◎、厚みが均一でやや凹凸感のある場合は○、厚みが不均一な場合は×とした。
【0078】
[ポリアミド樹脂組成物の作製]
製造例1
ε−カプロラクタム10質量部、セピオライト1.14質量部、亜リン酸0.02質量部を同一容器に入れ、80℃にて加熱しながら均一な溶液になるまで、ホモミキサー(プライミクス社製T.K.ホモミクサーMARKII20型)を用いて、4000rpmの回転数で攪拌混合して、混合物を作製した。次いで、上記混合工程により得られた混合物を重合工程に付するため、オートクレーブに投入し、内温260℃で攪拌しながら、1時間重合させた。
重合終了後、オートクレーブの底排弁よりストランド状に引き取った重合体を温浴槽にて冷却固化し、ペレタイザーでペレット状に切断した。得られたペレットを95℃の熱水で24時間精錬処理をして、未反応のモノマーおよびオリゴマーを除去した。その後、80℃で24時間乾燥させ、さらに、80℃で48時間真空乾燥してポリアミド樹脂組成物(PA−1)の樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットにて比重、灰分、相対粘度を測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
製造例2〜6
表1に記載の配合にしたがい、繊維状粘土鉱物の種類、繊維状粘土鉱物の配合量を変更した以外は、製造例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物(PA−2)〜(PA−6)の樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットにて比重、灰分、相対粘度を測定した。その結果を表1に示す。
【0081】
製造例7〜12
サイドフィーダーを有し、L/D=52.5である2軸押出機(東芝機械社製TEM26SS型)を用い、表2記載の配合にしたがい、ポリアミド樹脂、繊維状粘土鉱物または補強材の溶融混合を行い、ポリアミド樹脂組成物(PA−7)〜(PA−12)の樹脂ペレットを得た。製造例9〜12では、製造例1で得たポリアミド樹脂組成物(PA−1)に対し、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、非晶性ポリアミド樹脂のいずれかを混合して用いた。なお、ポリアミド樹脂は基部より投入、繊維状粘土鉱物または補強材はサイドフィーダーから投入を行い、シリンダー温度280℃、回転数300rpm、吐出25kg/hの条件で溶融混練を行い、樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットにて比重、灰分、相対粘度を測定した。その結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例1
製造例1で得られたポリアミド樹脂組成物(PA−1)と発泡剤(c−1)を表1に示すは比率でドライブレンドし、シャットオフノズルを搭載した射出成形機(FANUC社製S−2000i型)に投入し、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で射出成型した。このとき、0.28sで試験片の流動末端まで充填し、直後に60mm/sで射出成型機のダイプレートを設定発泡倍率になるように後退させた。得られた試験片を各性能評価に供した。結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
実施例2〜15、比較例1〜7
実施例1で用いた発泡剤(c−1)に代えて、発泡剤マスターペレット(c−2)〜(c−4)を用い、表3および4に記載の配合比に従う以外は、実施例1と同様にして、試験片を作成し、各性能評価を行った。結果を表3および4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
実施例1〜15は、比重が低くかつ強度に優れ、発泡成形性におよび表面平滑性に優れたものとなった。特に実施例2〜6、8、9、15については、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が十分に高く、平均気泡径が150μmであったため、表面平滑性に優れるものであった。また発泡効率も高いものであった。
【0088】
比較例1および2は繊維状粘土鉱物の代わりに膨潤性フッ素雲母を用いたため、発泡性に劣り、設定の発泡倍率が達成できず、発泡セルサイズが大きく、平滑性に劣るものとなった。
【0089】
比較例3〜5は繊維状粘土鉱物の代わりにガラス繊維を用いたため、発泡性に劣り、発泡セルサイズが大きく、平滑性に劣るものとなった。
【0090】
比較例6は繊維状粘土鉱物の分散性に劣るため、発泡セルサイズが大きく、平滑性に劣るものとなった。
【0091】
比較例7は繊維状粘土鉱物を配合しなかったため、ほとんど発泡せず、発泡体が得られなかった。物性および気泡径の測定はできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)、繊維状粘土鉱物(B)からなるポリアミド樹脂組成物であり、繊維状粘土鉱物(B)がポリアミド樹脂(A)中に下記(I)および(II)の状態で分散していることを特徴とする発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。
(I)単分散した一本の繊維状結晶の繊維長が0.01〜40μm、かつ単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物の最大外寸が0.01〜40μmである。
(II)単分散した繊維状結晶同士間の最短距離、単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物同士間の最短距離、および単分散した一本の繊維状結晶と単分散した繊維状結晶が凝集した凝集物との間の最短距離がいずれも1〜100nmである。
【請求項2】
275℃×5kg条件下で測定される溶融粘度が5〜150g/10分であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミド樹脂(A)と繊維状粘土鉱物(B)の配合割合が質量比で(A)/(B)=99/1〜70/30であることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
繊維状粘土鉱物(B)がセピオライトおよび/またはパリゴルスカイトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡成形用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの発泡成形用ポリアミド樹脂組成物と発泡剤(C)とからなる発泡性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5記載の発泡性ポリアミド樹脂組成物より得られる発泡成形体。
【請求項7】
射出コアバック式の射出成形方法を用いて成形することを特徴とする請求項6記載の発泡成形体。
【請求項8】
発泡セルを有するコア部が発泡セルを有さないスキン部で包含されてなり、発泡の実倍率が1.15〜3.00であることを特徴とする請求項6または7記載の発泡成形体。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−43895(P2013−43895A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180527(P2011−180527)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】