説明

発泡材料、及び発泡材料の製造方法

本発明は、特にゼラチンまたはその誘導体の発泡親水性ポリマー溶液を調製し、その発泡親水性ポリマー溶液を、連続気泡構造を有するポリマー発泡体を形成するのに十分なエネルギーで、十分に短い時間処理することを特徴とする、材料の製造方法を提供する。本発明はまた、支持体と、その支持体上に支持されたインク受容層とを含む材料であって、該インク受容層が、多孔質親水性ポリマー、特にゼラチン、を含み、かつ、親水性ポリマー、特にゼラチン、の発泡溶液を支持基材上にコーティングし、そのコーティングされた基材を、連続気泡構造が形成されるように十分短く選ばれた時間乾燥させることにより形成されたものを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡材料の製造方法に関する。特に、本発明は、とりわけインクジェットレシーバーとして使用するのに好適な発泡材料の製造方法に関する。また、本発明は、この方法を用いて製造された材料に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットレシーバーとして使用するのに好適であるためには、好ましくは材料が適用されたインクを迅速に吸収し、一旦乾燥したら、印刷された画像が、好ましくは光及びオゾンにさらされたときに安定なことがあげられる。多孔層を備えたインクジェット媒体は、典型的には高分子バインダーを含有する無機材料から形成されている。インクを媒体に適用すると、インクは、毛管作用により多孔層に迅速に吸収される。しかしながら、この層が開口性であるために、印刷画像が光及びオゾンにさらされたときに安定性を欠くことがある。非多孔層を備えたインクジェット媒体は、典型的には、支持体上に一層以上の高分子層をコーティングすることにより形成される。インクをこのような媒体に適用すると、高分子層が、膨潤し且つ適用されたインクを吸収する。しかしながら、膨潤機構に制限があるので、この種の媒体では、インクの吸収が遅いが、一旦乾燥すると、印刷画像は、光やオゾンにさらされても安定であることが多い。
【0003】
インクジェットレシーバーとして使用するのに好適であるポリマー発泡体が開発された。例えば、同時係属欧州特許出願第03015858.8号に開示されている材料は、適用されたインクを迅速に吸収するとともに、一旦乾燥されると、光及びオゾンに対して安定である画像を形成できる。
【0004】
従来、ポリマー発泡体は、ポリウレタン、PVC及びポリエチレン等のほとんど疎水性の熱可塑性材料を用いて製造されている。最初に、ガス充填ポリマーを、公知の発泡法により作製し、次にガス充填ポリマーを支持基板上にコーティングする。
典型的な発泡方法として、以下のものが挙げられる:
1.加熱をすることによるか、又は重合中の反応の発熱により、化学的発泡剤が熱分解して、N2又はCO2を発生させる。
2.ポリマー溶融物に、ガスを機械的ホイッピングし、触媒作用又は熱により硬化し、気泡をマトリックスにトラッピングする。
3.沸点が低温である低沸点液体を使用することにより、ガスを生成する。
4.系における圧力を減少させることによりポリマーに溶解したガスを膨張させる。
5.加熱すると膨張するガス充填ポリマーからなる微小球をポリマー塊に含有させる。
【0005】
前記方法の一つ以上によりガス充填ポリマーを得た後、典型的に3つの一般的な製造方法のうちの一つにより材料を形成する。
1.圧縮成形
2.反応射出成形、又は
3.発泡体の押し出し成形
【0006】
これらのプロセスにおける温度は、使用ポリマーが溶融状態であるので、極めて高く、例えば150℃を超えてもよい。ポリマーフォーム膜を形成するのに使用される最も一般的な加工方法は、押し出しである。これは、N2又はCO2を注入することによるか、発泡剤を使用することによりガスを溶解したポリマー溶液を形成して単相溶液を調製することからなる三段操作である。次に、圧力降下を迅速におこなうことにより、核形成部位を形成して、多数の均一部位を形成する。次に、ガスを拡散させることによりセルを成長させて、気泡を形成させる。加工条件を制御することにより、セルの成長を制御するのに必要な圧力及び温度の変化を生じさせることができる。
【0007】
米国特許出願公開第2001/0021726号(James F.Brown)は、多孔質表面組成物及びその表面上に生体試料を保持する方法を開示している。この方法では、硬化性ポリマーを使用している。米国特許第3794548号(C.Wirth等)は、多孔質ポリマー膜としてポリウレタンを使用することを開示している。ポリマーを加熱して、ポリマー内の溶媒を揮発させて、多孔質コーティングを得ている。米国特許第6228476号(Bogrett等)は、硬化性ポリマーを用いて作製した発泡断熱シートを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクジェットレシーバーとして使用するのに好適な発泡材料を製造する従来の方法には、ポリマー発泡体を形成するのに使用される方法では、加工温度が高いという問題がある。このことは、エネルギー要件の面で高価であるので、望ましくない。さらに、安全性の面からも、高温を必要としない製造方法が望ましい。
【0009】
従来の発泡体製造システムを使用しない、材料の製造方法が望まれている。また、従来の発泡体製造システムを必要としない方法を用いて製造できる材料も、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、材料の製造方法であって、発泡親水性ポリマー溶液を生成することと、前記発泡親水性ポリマー溶液を、連続気泡構造を有するポリマー発泡体を形成するのに十分なエネルギーで、且つ十分に短い時間処理することとを含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、上記方法により得ることができる材料が提供される。
【0012】
本発明の第三の態様によれば、上記した材料を含むインクジェットレシーバーが提供される。
【0013】
本発明の第四の態様によれば、支持体と、前記支持体上に設けられたインク受容層とを備え、前記インク受容層が、 上記方法により得ることができる親水性ポリマー発泡材料を含むものである、インクジェットレシーバーが提供される。
【0014】
本発明の第五の態様によれば、発泡親水性ポリマー溶液から、連続気泡構造を有する高分子発泡材料を形成するための、マイクロ波放射の使用が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中に気泡を有する親水性ポリマーの溶液を用いて材料を製造する方法が提供される。ポリウレタン、PVC及びポリエチレン等のほとんど疎水性である熱可塑性材料を用いて製造される従来のポリマー発泡体とは異なり、使用される加工温度は、もっと低くてよい。ポリウレタン、PVC及びポリエチレン等の疎水性熱可塑性材料では、ポリマーが溶融状態であるので、加工温度は高くなくてはならない。150℃を超える温度が一般的である。
【0016】
本発明によれば、高い加工温度を使用する必要がない、例えばインクジェットレシーバーとして使用するのに好適なポリマー発泡材料を製造するための、簡単且つ強固な方法が提供される。この方法は、コスト及びエネルギー消費の面でより効率的であり、またより安全である。
【0017】
本発明の方法における処理工程の時間を短くできるようにすることにより、ポリマー発泡体に、連続気泡構造を形成できる。これにより、形成された材料が、例えばインクジェットレシーバーとして使用する場合等の良好な吸収性を必要とする用途に特に好適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明では、発泡親水性ポリマー溶液を、連続気泡構造を備えたポリマー発泡材料を形成するのに十分なエネルギーに、十分に短い時間暴露する。
【0019】
連続気泡構造とは、相互接続ボイド又はキャビティのネットワークを有するポリマー発泡材料が形成されることを意味する。発泡親水性ポリマー溶液は、これらの状況において、典型的には連続気泡構造を有するか、又は例えば、このような溶液をコーティングした支持基板を迅速に乾燥することにより十分なエネルギーで処理することにより、連続気泡構造発泡体を形成できる。
【0020】
好ましくは、相互接続ボイド又はキャビティのネットワークは、表面アクセス可能、すなわち表面アクセス可能連続気泡構造であり、ネットワークを構成しているボイド又はキャビティの一部が、ポリマー発泡材料の表面に露出されている。このことにより、表面に適用した液体が発泡ポリマー材料により迅速に吸収されることができるさらなる利点が得られる。
【0021】
親水性ポリマーは、発泡性親水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)及びゼラチン又はそれらの誘導体の一種以上、好ましくはゼラチン又はその誘導体であることができる。
【0022】
発泡性親水性ポリマーとは、発泡溶液の形成を促進するための添加剤を添加するか、又は添加せずに、一つ以上の発泡方法で処理したときに、水性媒体中で発泡親水性ポリマー溶液を形成できる、親水性ポリマーを意味する。
【0023】
本発明により、発泡親水性ポリマー溶液を、上記したように、ポリマー発泡材料が連続気泡構造を形成するのに十分な大きさのエネルギー源に、十分に短時間暴露する処理は、発泡親水性ポリマー溶液を、連続気泡構造を形成するのに十分なエネルギーに、十分に短い時間暴露するのに好適ないずれかの方法でよい。必要とするエネルギー量及び時間は、一定の発泡親水性ポリマー溶液に必要とするエネルギー量又は適当な最大時間、及び処理される発泡親水性ポリマー溶液の量によって異なることができる。特定の発泡親水性ポリマー溶液へのエネルギーの照射量と時間は、多数の因子、例えば総エネルギー量、特定の発泡親水性ポリマー溶液がその構造の一体性を実質的に維持できる(例えば、ボイド又はキャビティの潰れ又は劣化なしで)のに必要な照射線量率に依存する。
【0024】
この処理には、例えば発泡親水性ポリマー溶液を集中加熱して水を迅速に除去することにより連続気泡ポリマー発泡体を形成すること、減圧環境中で熱を加えること、凍結乾燥すること、又は発泡親水性ポリマー溶液に高エネルギー放射線を照射することなどがあり、マイクロ波放射が好ましい。好ましい処理は、マイクロ波放射によるものである。
【0025】
処理時間は、上記したような多数の因子により決まるが、マイクロ波放射を処理手段として利用する場合、照射時間は、好ましくは8分以下、より好ましくは5分以下、さらに好ましくは2分以下、又は形成された発泡ポリマー材料が実質的にその構造の一体性を維持できるのに必要とする時間である。
【0026】
例えば、発泡ゼラチンをコーティングした支持基板を、マイクロ波放射で、マイクロ波放射パワーに応じて、8分以下、好ましくは5分以下、さらに好ましくは2分以下処理して、支持基板上に内部構造の一体性を実質的に維持できるポリマー発泡材料を形成するか、又は塗布基板が乾燥するまで処理できる。
【0027】
発泡親水性ポリマー溶液は、いずれかの好適な発泡法により生成できる。例えば、発泡溶液は、空気同伴、例えば親水性ポリマー溶液を発泡体に高剪断攪拌、又はガスを溶液に機械的ホイッピングすることによるか、化学発泡剤を溶液に配合して化学的又は熱的分解することによるか、蒸発して気泡を生成する低沸点液体を溶液とともに使用することによるか、系の圧力を減少させることにより、ポリマー溶液に溶解させたガスを膨張させることによるか、又は微小球(加熱すると膨張するガス充填ポリマーを含む)をポリマー溶液に分散配合することにより生成できる。発泡親水性ポリマー溶液を生成する好ましい方法は、高剪断撹拌によるか又は熱又は化学的活性化発泡剤を使用することにより空気同伴することである。
【0028】
好ましくは、ポリマー発泡体を形成する処理は、発泡親水性ポリマー溶液の形成後に直ちに又はできるだけすぐに実施して、ボイド又はキャビティのネットワーク又は潜在的ネットワークが、ポリマー発泡体において概ね一体性を維持する処理が完了する前に分解又は圧潰するのに十分な時間がないようにする。
【0029】
形成される気泡又はボイドの大きさを、所望のポリマー発泡体の性質及び意図する用途に応じてある程度制御できる。例えば、ゼラチン溶液に、例えば10〜100μmの範囲の微泡を形成できる。例えば、溶液に他の添加剤、例えば界面活性剤が存在する場合、どれを選択するかにより、発泡親水性ポリマー溶液を、空気同伴により生成するか、化学的又は熱的応答性発泡剤を活性化することにより生成するかとは無関係に、形成される気泡又はボイドの大きさに影響を及ぼすことができる。
【0030】
親水性ポリマー溶液に添加する界面活性剤を選択することにより、材料に形成される気泡のサイズを制御できる。本出願人による欧州特許出願第03078204.9号(出願人参照番号85004)には、界面活性剤を選択して、形成されるポリマー発泡体における気泡又はボイドの大きさを制御する方法が記載されている。図2は、3種の異なる界面活性剤A、B及びCについて、log(界面活性剤の濃度)による、動的表面張力及び静的表面張力の両方の変化を示すグラフである。ライン2、4及び6は、界面活性剤A、B及びCの各々について、界面活性剤の濃度の対数を変化させることによる動的表面張力の変化を示す。ライン8、10及び12は、界面活性剤A、B及びCの各々について、界面活性剤の濃度の対数を変化させることによる静的表面張力の変化を示す。
【0031】
界面活性剤の各々について、2つの異なるパラメータが、ライン2〜12により示される関係に基づいて求められる。第一に、各界面活性剤の臨界凝集濃度CACに対応する対数が、静的表面張力(SST)曲線8、10及び12の最大勾配の領域に合う直線を適用することにより、及び表面張力が最小値で水平になるか、又は最小値に近くなる場合、SST曲線の領域に合う別の直線を適用することにより同定される。これらの2つのラインが交差する点は、対応濃度の対数値を表す。この濃度は、臨界凝集濃度又はCACとして知られている。上記したように、図2は、3種の異なる界面活性剤についての、log(界面活性剤の濃度)による、動的表面張力及び静的表面張力の両方の変化を示すグラフである。したがって、この例において、CACは、対数値により表される。
【0032】
第二に、表面張力が、溶媒の表面張力、すなわち最大動的表面張力と、CACでの値、すなわち最小静的表面張力での値との間の中間にある場合、動的表面張力(DST)曲線の中点に対応する濃度の対数、logCmid-DSTを、DST曲線2、4及び6上の点から挿入する。
【0033】
図2から、界面活性剤AのCACの対数が、Cmid-DSTに対応する濃度の対数とほとんど一致していることが明らかである。界面活性剤Aも、これらの界面活性剤が一般的に使用される濃度で低静的表面張力を示す(log[濃度(質量%)]=−0.5])。したがって、この界面活性剤は、欧州特許出願第03078204.9号の表1から明らかなように、最小気泡を生じる。
【0034】
界面活性剤Bについて、そのCACの対数が、そのCmid-DSTに対応する濃度の対数よりもはるかに低く、そしてその静的表面張力が界面活性剤Aよりもはるかに高い値で水平となることが明らかである。界面活性剤Bにより生成される平均気泡サイズは、界面活性剤Aで得られるよりも顕著に大きい。界面活性剤Aのように、界面活性剤CのCACの対数が、そのCmid-DSTに対応する濃度の対数とほとんど一致するけれども、その静的表面張力は、界面活性剤Bのように比較的高い値で水平となり、且つ界面活性剤Bのように、はるかに大きな気泡が得られる。
【0035】
このデータから、より小さい気泡を得るには、使用される界面活性剤のCACの対数が、値において、その界面活性剤についてCmid-DSTに対応する濃度の対数に近い必要があること、及び界面活性剤の低静的表面張力も必要であることが明らかである。図2におけるグラフが、対数スケールとは異なり、線形スケールで示すものである場合には、その条件は、CACが、その値がCmid-DSTに近い必要があることである。典型的には、この基準を満足する界面活性剤については、そのCACの対数が、0.5log単位、好ましくはCmid-DSTに対応する濃度の対数の0.25log単位内である必要がある。低静的表面張力は、28mN/m未満、好ましくは24mN/m未満であることを意味する。これらの基準の一つのみが達成される場合には、はるかに大きな気泡が生成する。
【0036】
換言すれば、発泡体及び材料において小さな気泡を形成するには、2つの基準を満たす必要がある。第一に、界面活性剤のCACは、その動的表面張力曲線の中点Cmid-DST(特定のオーバーフローシリンダー法により測定できる)と関連するのと類似の濃度でなければならない。第二に、界面活性剤は、低静的表面張力を有する必要がある。CACとCmid-DSTとの間の差が大きすぎると、すなわち、0.5log単位より大きいか、又は静的表面張力が高すぎる、例えば28mN/mより大きいと、より大きな気泡が形成しやすい。
【0037】
したがって、インクジェットレシーバーのインク受容層における気泡又はボイドの大きさを制御するのに、一種以上の界面活性剤を使用できる。気泡のサイズは、所望の気泡サイズが得られるように、界面活性剤又は界面活性剤の混合物を選択することにより制御できる。理論には縛られないが、界面活性剤の一定の性質を利用することにより、気泡のサイズを制御することができると思われる。特に、界面活性剤のCAC、SST及びDST(上記で定義した)、及びそれらの間の相互関係により、所望の気泡サイズを得るのに界面活性剤を選択する基準を構成できると思われる。好ましくは、したがって、界面活性剤は、界面活性剤の一定の性質及び、特に、上記したCAC、SSC及びDST並びにそれらの相互関係に従って気泡サイズを制御するように選択できる。より好ましくは、界面活性剤は、所望のサイズの気泡がポリマー発泡体に形成されるように、界面活性剤の性質に関する一定の所定の基準を満たすように選択される。
【0038】
界面活性剤は、上記した基準を満たし、所望の気泡サイズにしたがって選択できるいずれかの好適な界面活性剤であることができる。
【0039】
形成される気泡のサイズを制御するこの方法は、発泡親水性ポリマー溶液が、熱又は化学的応答発泡剤、好ましくは熱応答発泡剤、例えば亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムとの組み合わせを活性化することにより生成されるときに、特に有効である。
【0040】
界面活性剤A
【化1】

(ここで、Rfは、一般構造Cn2n+1(ここで、典型的には、nは以下の一連の値、6、8、10、12及び14を有する)に基づくフルオロカーボン鎖長の範囲である)。
【0041】
界面活性剤B
【化2】

(ここで、末端基「T」は、Hである)。
【0042】
界面活性剤C
【化3】

(ここで、m+nは、平均10である)。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、上記したように、発泡親水性ポリマー溶液は、熱又は化学的応答発泡剤を活性化することにより生成される。本発明の方法で使用される一種以上の発泡剤は、ガスを発生させるのに反応する温度で応じて選択される。比較的低温で反応する発泡剤を選択することにより、材料を高温を使用する必要なく形成できる。したがって、比較的低温、例えば、200℃未満、より好ましくは50℃〜120℃の範囲で反応する発泡剤が、好ましい。本発明の方法で使用するのに好適な発泡剤には、亜硝酸ナトリウム及び塩化アンモニウム、金属炭酸塩及び重炭酸塩の混合物などがある。好適な発泡剤のさらなる例が、例えばThe Handbook of Polymeric Foams and Foam Technology(高分子発泡体及び発泡技術ハンドブック)、Daniel Klempner及びKurt C.Frisch編、第17章:Blowing Agents for Polymer Foams(ポリマー発泡体用発泡剤)、セクション3 Chemical Blowing Agents(化学発泡剤)(Dr.Fyodor A.Shutovにより書かれた章)に記載されている。好ましい発泡剤は、亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムとの組み合わせである。
【0044】
発泡ポリマー層を生成するのに使用されるポリマー溶液における発泡剤の量は、例えば発泡剤のポリマーに対する割合として約200質量%以下でよい。好ましい量は、少なくとも5%、例えば約10%〜約60%、より好ましくは約30%〜約50%である。発泡ポリマー材料を生成するためのポリマー溶液からなる複数の層を支持体上にコーティングする場合、各層における発泡剤の割合は、異なることができるが、典型的には上記範囲内である。
【0045】
好ましくは、界面活性剤を、形成された気泡又はボイドの大きさを制御する目的、及び/又は発泡前又は後の溶液のコーティング適正を改善するために、親水性ポリマー溶液に含有させる。発泡ポリマー材料を生成するのに使用されるポリマー溶液に存在する界面活性剤の量は、ポリマーにおける存在割合として、好ましくは約0.01%〜約2.0質量%の範囲、より好ましくは約0.05%〜約1.0%の範囲である。ポリマー溶液の複数の層を支持体に適用する場合、各層における界面活性剤の割合は、異なることができるが、各場合において、好ましくは上記した範囲内である。
【0046】
本発明で使用するのに好適な界面活性剤には、例えば界面活性剤A(Lodyne(商標)S100として入手可能)、界面活性剤B(US−A−2002/0155402に記載されている)(記載されている界面活性剤B、及び本発明に有用である他の界面活性剤の内容は、引用することにより、本明細書の内容とする)、界面活性剤C(Olin(商標)10Gとして入手可能)及び界面活性剤D(Zonyl FSNとして入手可能)、及び下記の構造式で表される界面活性剤D
などがある。
界面活性剤D
f−CH2CH2O(CH2CH2O)y
(ここで、yは0〜25であり、Rfはフルオロカーボン鎖長範囲であり、構造F(CF2CF2x(式中、xは1〜9である)で表される)。
【0047】
上記したように、界面活性剤は、得られるポリマー発泡材料において望ましいボイドサイズに応じて選択できる。
【0048】
本発明の好ましい実施態様によれば、ポリマー発泡材料は、支持基板上に、好ましくはインク受容層としてか、又はインクジェットレシーバーの画像受容層の下の液溜めとして使用できる、塗布材料の層として形成される。
【0049】
本実施態様によれば、本発明の方法は、さらに親水性ポリマー溶液を、支持基板上に、それから発泡親水性ポリマー溶液を生成する前又は後、及びコーティングを施した支持基板を乾燥させる処理工程の前に、コーティングすることを含む。発泡親水性ポリマー溶液を、例えば高剪断攪拌による空気同伴により形成する場合には、支持基板上に発泡親水性ポリマー溶液をコーティングする必要がある。例えば、発泡溶液を、発泡剤を活性化することにより形成する場合には、支持基板には、発泡溶液の形成前若しくは後又は中にコーティングを施すことができる。
【0050】
支持体は、例えば樹脂をコーティングした紙、フィルムベース、アセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、印刷版又は他の好適な支持体、好ましくは樹脂をコーティングした紙であることができる。
【0051】
支持基板は、いずれかの好適なコーティング法、例えばカーテンコーティング、ビードコーティング、エアーナイフコーティング又はいずれかの他の好適な方法を用いてコーティングできる。
【0052】
インクジェット印刷に使用するのに好適である親水性ポリマー溶液を支持基板上にコーティングし、発泡剤の活性化により発泡溶液を生成する、一つの好ましい実施態様によれば、少なくとも一種の発泡剤を、ポリマー溶液に、ポリマー溶液を支持体上にコーティングする前、中又は後に添加できる。標準スライドホッパーを備えたビードコーターを利用して支持体にコーティングを施す場合には、少なくとも一種の発泡剤を、典型的に、ポリマー溶液を支持体上にコーティングする前又はコーティング中にポリマー溶液に添加できる。発泡剤を、支持体にコーティングを施す前にポリマー溶液に添加する場合、発泡剤を活性化してポリマー溶液と相互作用することは、支持体にコーティングを施す工程の前に開始できる。この場合、気泡が形成された発泡ポリマー溶液の層で支持体をコーティングすることにより、レシーバーを形成する。気泡は、例えば親水性ポリマー及び発泡剤の水溶液において形成される。気泡を含有する水溶液を、次に支持体上にコーティングする。発泡ポリマー溶液は、それを支持体に適用する前に溶液を加熱して発泡剤の分解を促進させてガスを発生させることにより得る。
【0053】
しかしながら、好ましくは、本実施態様によれば、発泡剤の活性化は、支持体にコーティングを施した後まで遅らせる。
【0054】
典型的には、コーティングされた溶液との相互作用は、例えば乾燥工程中に、コーティングを施した支持体を加熱することにより生じさせる。加熱により、発泡剤が分解し、気泡を生成することにより、支持体上にポリマー発泡体を形成する。別法として、酸を溶液に添加して、再び発泡剤と反応させて溶液内にガスを発生させることができる。この別法では、加熱すると酸を放出する化合物を溶液に添加することが好ましい。溶液を加熱すると、酸が放出され、それが発泡剤と反応して発泡剤の分解を生じ、その結果ガスが発生する。乾燥すると、材料は、インクジェットレシーバーとして使用するのに好適となる。
【0055】
発泡剤は、コーティングを施した支持体を乾燥するのに供給される熱が、発泡剤の分解を生じ、ガスを発生させるのに十分であるように選択することができる。
【0056】
別の好ましい実施態様によれば、材料の製造方法は、ゼラチン又はその誘導体の発泡溶液を支持基板上にコーティングする工程と、上記した処理を用いて、コーティングを施した基板を乾燥する工程とを含む。この乾燥工程における時間は、連続気泡発泡体が形成されるのに十分に短いものであるように選択される。好ましくは、この方法は、ゼラチン又はその誘導体の発泡ポリマー溶液を支持基板上にコーティングする工程の前に、ゼラチン又はその誘導体の発泡ポリマー溶液を形成する工程を備えている。例えば、発泡ゼラチン溶液を、発泡剤を用いて形成してもよい。
【0057】
好ましくは、コーティングを施した基板を、エネルギー源としてマイクロ波放射を用いて乾燥させる。
【0058】
好ましくは、コーティングを施した基板を乾燥する工程の時間は、8分以下である。より好ましくは、5分以下である。最も好ましくは2分以下である。
【0059】
図1は、本発明のさらなる態様による方法を用いて製造した本発明の一態様の好ましい実施態様による材料14の一部分の走査電子顕微鏡写真である。この材料は、発泡ポリマー層18を配置した、ベース16を備えている。発泡ポリマー層には、層18内に多数の相互接続キャビティ20から構成された連続気泡が配置されている。この層18は、ゼラチンを含む。
【0060】
ボイドスペースを有するゼラチン層は、ガスを発生させるか、又はガスをコーティング溶液に導入することにより生成する。この層は、発泡ゼラチン溶液の層を、樹脂コーティングを施した紙のような基板上にコーティングすることにより形成する。微泡、例えば直径約10マイクロメートル〜約100マイクロメートルの気泡が、ゼラチン溶液に形成される。微泡は、例えば空気同伴によるか、また化学又は物理的発泡剤を使用することにより形成できる。
【0061】
空気同伴では、ゼラチン溶液を高剪断攪拌して空気を同伴させ、微泡を形成させる。発泡剤を使用する際には、発泡剤をゼラチンの溶液に添加後、溶液と相互作用させて発泡剤の分解を促進する。この相互作用では、熱を加えて発泡剤の分解を促進してガスを形成し、及び/又は酸等の化学試薬を添加して発泡剤と反応させて、再び溶液内に微泡を形成させる。
【0062】
コーティング溶液に、界面活性剤を添加して、そのコーティング適性を向上させてもよい。好適な界面活性剤としては、上記したものの他に、例えばOLIN(商標)10G及びTX200Eなどがある。
【0063】
微泡を含有する液状組成物を、次に支持体上にコーティングする。いずれかの好適な方法を使用できる。例えば、ビードコーティング、カーテンコーティング、エアナイフコーティング又はいずれかの他の好適なコーティング法を、使用してもよい。次に、コーティングされた層を、乾燥して連続気泡発泡体の層を形成する。典型的には、乾燥は、熱源としてマイクロ波エネルギーを用いておこなうことができる。連続気泡構造体を確実に形成させるためには、発泡体内のボイドが潰れる機会が減少するように、溶液を適用した直後に乾燥をおこなうことが好ましい。
【0064】
典型的には、乾燥時間は、5分未満である。乾燥を電子レンジでおこなう場合には、乾燥時間は3分未満でよく、より好ましくは2分間未満である。乾燥時間が短いと、発泡体内のボイドが潰れる機会が減少する。
【0065】
コーティングを施した基板を乾燥させるのに要する時間は、基板上のコーティングの厚さによっても影響される。例えば、コーティングが厚いほど、通常同じ材料のより薄いコーティングよりも長い乾燥時間を要する。全ての場合において、発泡体の連続気泡性が最終製品で維持されるように、十分短くなるように、乾燥時間を選択且つ制御する。典型的なインクジェットレシーバーに使用するのに好適であるコーティング厚さを有する材料においては、乾燥時間は、2分未満、3分未満又は5分間未満で十分である。
【0066】
本発明の別の態様によれば、インクジェットプリンターに、上記した方法により得ることができるインクジェットレシーバーを積載することと、前記プリンターを用いてインクジェットレシーバー上に画像を印刷して印刷物を得ることを含む、印刷方法が提供される。
【0067】
上記印刷方法の好ましい実施態様によれば、この方法は、さらに圧力及び/又は熱を、上記の方法により得ることができる発泡ポリマーインク受容層を備えたインクジェットレシーバー上にインクジェットプリンターを用いて得た印刷物に加えることを含む。印刷方法により改善することができる印刷物の表面特性には、表面粗度(すなわち、より平滑な表面の印刷物を得る)及び光沢度などがある。
【0068】
好ましくは、印刷方法は、印刷物に、熱及び圧力を加えることを含む。熱及び圧力は、印刷物に、例えば溶融装置を使用することによりかけることができる。好ましい実施態様によれば、インクジェット印刷物を、ベルトフューザ又はニップローラーを用いて、熱及び/又は圧力をかけることにより処理する。いずれの場合においても、印刷物に熱及び/又は圧力をかける手段、例えば溶融装置は、インクジェットプリンターと一体であるか、又はインクジェットプリンターと関連していることが好ましい。
【0069】
ほぼ25mm/s(0.5インチ/秒(IPS))でベルトフューザを用いて適用される典型的な熱及び圧力条件は、温度150℃(300°F)及びニップ圧力1080kg/m(60ポンド/インチ)である。処理条件は、所望の光沢度、表面粗度等に応じて異なっていてよく、勿論、特定の発泡ポリマー材料の特性に応じて異なっていてもよい。
【0070】
より一般的な用途では、ボイド化ポリマーレシーバー、とりわけ発泡ポリマーレシーバーに熱及び/又は圧力を加えるための条件は、40℃〜200℃の範囲、好ましくは60℃〜160℃の範囲及びニップ圧力2100kg/m(120ポンド/インチ)以下、好ましくは720〜1800kg/m(40〜100ポンド/インチ)であることができる。レシーバーが、例えば溶融装置を通過する速度は、6.25〜500mm/sの範囲、好ましくは10〜250mm/sの範囲でよい。
【0071】
レシーバーにかける熱及び/又は圧力の量に応じて、並びに本発明で利用されるボイド化ポリマー層の特定の性質に応じて、画像濃度、画像の安定性及び耐水性についてのさらなる利点を得ることができる。
【0072】
上記方法を用いて製造したインクジェットレシーバー上で使用されるインクジェットインクは、いずれかの好適なインクでよい。数多くのこのようなインクが当該技術分野において公知である。典型的には、溶媒又はキャリア液体(例えば、水又はアルコール水溶液)、染料及び/又は顔料、保湿剤、有機溶媒、洗浄剤、増粘剤、保存剤等を含有する液状組成物である。選択される発泡ポリマーレシーバー等の発泡ポリマーレシーバーの正確な質は、印刷の種類及びインクの種類の要件によって異なることができ、また逆もあてはまる。
【0073】
以下、本発明を、添付図面を参照しながら、以下の実施例によりさらに説明するが、本発明は、これらの実施例には限定されない。
【実施例】
【0074】
市販の樹脂コーティングを施した紙からなる支持体上に、ゼラチン溶液をコーティングした。コーティングされた層を、次に乾燥して、この材料をインクジェット印刷に使用する場合にインク受容層として使用するのに好適である層を形成した。
【0075】
このコーティング溶液は、ゼラチンに界面活性剤を混合した水溶液であった。この溶液を、電気式高剪断攪拌機を用いて、15,000rpmの速度で5分間ホイッピングした。インク受容層は、ゼラチン11.65g/m2及び界面活性剤TX200E 2.408g/m2から構成されるものであった。これを、グラビアバーを用いて、支持体上にコーティングした。
【0076】
次に、コーティングを施した基板を、この場合マイクロ波放射を用いて迅速に乾燥した。コーティングを施した基板を、家庭用電子レンジに配置して、フルパワーで150秒間処理した。使用したマイクロ波は、700ワットマイクロ波であり、コーティング面積は、0.0375m2であった。したがって、単位面積当たりのパワーは、約1.86ワット/cm2であった。
【0077】
図1に、走査型電子顕微鏡写真を示す。電子顕微鏡写真から明らかなように、本発明による材料のコーティングにおいて、空気同伴法により作製した発泡混合物がコーティング及び乾燥されて表面アクセス可能連続気泡発泡層が得られている。この層内の細孔は、相互に接続している。このような材料は、とりわけインクジェットレシーバーとしての使用等の、吸収材料が必要である用途に使用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の方法を用いて製造した材料の一部分の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】多数の種々の界面活性剤についての、log(界面活性剤の濃度)による、表面張力の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の製造方法であって、発泡親水性ポリマー溶液を調製することと、前記発泡親水性ポリマー溶液を、連続気泡構造を有するポリマー発泡体を形成するのに十分なエネルギーで、且つ十分に短い時間処理することとを含む、方法。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、ゼラチン又はその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発泡親水性ポリマー溶液を処理する工程が、その溶液にマイクロ波放射源を照射することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記発泡親水性ポリマー溶液を処理する工程の時間が、5分間以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記発泡親水性ポリマー溶液を処理する工程の時間が、2分間以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記発泡親水性ポリマー溶液の調製工程が、空気が、中に気泡を形成している前記親水性ポリマーに混入されるように親水性ポリマー溶液を高剪断攪拌することを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記発泡親水性ポリマー溶液を調製する工程が、前記親水性ポリマーの溶液に物理的又は化学的発泡剤を添加し、前記発泡剤を作用させて、それを分解させることにより、ガスを生成させることを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記発泡剤を作用させる工程が、前記溶液を加熱することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記発泡剤を作用させる工程が、前記溶液に酸を添加して前記発泡剤と反応させることにより、ガスを発生させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記発泡親水性ポリマー溶液を処理して前記ポリマー発泡体を形成する工程の前に、前記発泡親水性ポリマー溶液を支持基板上に塗布して塗布支持基板を形成する工程を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記発泡親水性ポリマー溶液を処理する工程により、塗布支持基板を乾燥する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法により得ることができる材料。
【請求項13】
請求項12に記載の材料を含む、インクジェットレシーバー。
【請求項14】
支持体と、前記支持体上に設けられたインク受容層とを備え、前記インク受容層が、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により得ることができる親水性ポリマー発泡材料を含むものである、インクジェットレシーバー。
【請求項15】
発泡親水性ポリマー溶液から、連続気泡構造を有する高分子発泡材料を形成するための、マイクロ波放射の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−523250(P2006−523250A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506088(P2006−506088)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001470
【国際公開番号】WO2004/090027
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】