説明

発泡樹脂成形材切断用のノコ刃

【課題】すのこの天板などに用いられる発泡樹脂成形材を切断した場合に、その切断と同時に切断面にスキン層を形成するノコ刃を提供する。
【解決手段】ノコ刃1の刃先2の厚み幅Tが台金部4の厚み幅Tより狭く、刃先2から台金部4へ向かって厚み幅が広がるテーパー形状3に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、すのこの天板などに用いられる発泡樹脂成形材を切断した場合に、その切断と同時に切断面にスキン層を形成するノコ刃の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来のノコ刃は、例えば下記特許文献1及び特許文献2に開示されたように、ノコ刃で切断する際にノコ刃と発泡樹脂成形材との間に発生する過度の摩擦熱を抑制するため、刃先の厚み幅が台金部の厚み幅より大きい形状に形成された構成が一般的である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−22416号公報
【特許文献2】特開2004−17275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に開示されたノコ刃は、過度の摩擦熱の発生を抑制して、ノコ刃や切断した発泡樹脂成形材を痛めない構成ではある。しかし、前記構成のノコ刃で軽量で剛性の高い発泡樹脂成形材を切断すると、ノコ刃及び台金部の側面で発泡樹脂成形材の切断面をこすらないので、その切断面は削りっぱなしとなり、気泡による空隙の跡が凹凸として現れる。このような発泡樹脂成形材を加工して製造したすのこの天板を水周りで使用すると、前記凹凸状の切断面に水が付着し、いつまでも乾きにくく、カビ類が発生し易いといった問題が起こる。しかも、凹凸部に入り込んだカビ類は除去しずらく、除去しきれずに残ったカビ類をそのまま放置するとなると衛生的に非常に問題がある。切断面の凹凸を平滑にするため、切断面を二次加工としてグラインダーで研磨し、スキン層に仕上げる方法があるが、その作業に手間が掛かり、不経済であるので、切断と同時に切断面を滑らかにできることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、軽量で剛性の高い発泡樹脂成形材を切断した場合に、ノコ刃のテーパー形状及び台金部の側面で発泡樹脂成形材の切断面をこすって適度な摩擦熱を発生させ、切断と同時に切断面を程良い深さまで溶解して、切断面にスキン層を形成する発泡樹脂成形材切断用のノコ刃を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る発泡樹脂成形材切断用のノコ刃は、
発泡樹脂成形材7を切断するノコ刃1において、
同ノコ刃1の刃先2の厚み幅Tが台金部4の厚み幅Tより狭く、刃先2から台金部4へ向かって厚み幅が広がるテーパー形状3に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発泡樹脂成形材切断用のノコ刃1は、同ノコ刃1の刃先2の厚み幅Tが台金部4の厚み幅Tより狭く、刃先2から台金部4に向かって台金部4の厚み幅へ広がるテーパー形状3に形成されているので、切断時にノコ刃1の側面と発泡樹脂成形材7の切断面とに生じる適度な摩擦熱で発泡樹脂成形材7の切断面を程良い深さまで溶解し、且つ台金部4の側面がその表面をならして冷却するので、切断と同時に切断面にスキン層を形成することができる。したがって、切断面を平滑で光沢のある表面とすることができ、切断された発泡樹脂成形材7の美観を高めて、発泡樹脂成形材7自体のみならず、発泡樹脂成形材7で作られた商品の品質を上げることができる。よって、水周り等に利用される発泡樹脂成形材7においては、切断面が平滑でつるつるなので、掃除を容易・確実にでき、切断面のカビ類の発生を抑えることができ衛生的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、発泡樹脂成形材7を切断するノコ刃1である。前記ノコ刃1の刃先2の厚み幅Tが台金部4の厚み幅Tより狭く、刃先2から台金部4へ向かって厚み幅が広がるテーパー形状3に形成されている。
【実施例1】
【0009】
以下に、本発明に係る発泡樹脂成形材切断用のノコ刃を図示した実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1は、発泡樹脂成形材切断用のノコ刃1を丸鋸5に形成した場合の実施例を示している。本実施例のノコ刃1は、図2に拡大して示すように、刃先2の厚み幅Tが台金部4の厚み幅Tより狭く、刃先2から台金部4に向かって台金部4の厚み幅Tへ広がるテーパー形状3に形成されている。具体的には、丸鋸5の直径が300mmである場合に、刃先2の厚み幅Tは2.3mm、台金部4の厚み幅Tは2.5mm、テーパー形状3の長さLは6mmに形成される。因みに、発泡樹脂成形材7は、内部に細かな泡を無数に含み、軽量で剛性の高い特徴を有する成形材であり、発泡ポリスチレン、発泡ポリオレフィン等の発泡樹脂材を発泡させて押出し成形されたものである。
【0011】
図3は、一例として、前記構成から成るノコ刃1を形成した丸鋸5を公知技術の切断機6に取付けた実施例を示している。切断機6のベース60の上面に載置された前記発泡樹脂成形材7は、ベース60の上面に設けられたフェンス61に一方の側面が当接され、他方の側面が固定部材62で固定されている。そして、適度な回転速度で回転させた丸鋸5を、レバー63でゆっくりと下ろし、前記発泡樹脂成形材7を所望の大きさに切断する。図中の符号64は、前記レバー63で下ろされた丸鋸5が進入する溝部である。
【0012】
上記構成の切断機6に取付けられた丸鋸5を、例えば回転速度1500rpmで回転させて、長尺の発泡樹脂成形材7(例えば100mm×2400mm×20mm程度)を1〜3回程度切断し、所望のすのこの天板(例えば長さが600mm〜1200mm程度)を形成する。
【0013】
図4は、前記発泡樹脂成形材7の切断状況を示している。即ち、ノコ刃1の刃先2が発泡樹脂成形材7の表面にあたり前進すると、テーパー形状3が切断面を押し切りながら摩擦を起こし、そこに適度な摩擦熱が発生し、発泡樹脂成形材7の切断面を少量ずつ程良い深さまで溶解する(図4(A)を参照)。前記摩擦熱で溶解し軟化状態にある発泡樹脂成形材7の切断面は、ニッケル−カドミウムメッキの表面処理された台金部4の側面で平滑にならしつつ、同台金部4により放熱されて冷やされる(図4(B)を参照)。従って、切断と同時に前記発泡樹脂成形材7の切断面にスキン層を形成し、その表面がつるつるになるので、例えば同発泡樹脂成形材7を加工して製造したすのこの天板を水周りで使用しても、表面は大変乾きやすく、カビ類が発生し難くく、衛生的に優れた製品を製造することができる。勿論、切断した発泡樹脂成形材7の切断面はグラインダーなどの二次加工をする必要はなく、作業工数が省略できるので、経済的に安価に製造することができる。
【0014】
なお、本発明のノコ刃1は、上記図示した実施例のように、前記ノコ刃1を形成した丸鋸5を切断機6に設置する他に、例えば公知技術の引きノコや帯ノコ等のノコ刃としても同様に実施することができ、同ノコ刃を形成した引きノコや帯ノコを用いて発泡樹脂成形材7を切断しても、上記効果と同様の効果を奏することができる。
【0015】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、勿論、図示した実施例の限りではない。本発明の要旨及び技術的思想を逸脱しないかぎり、当業者の変形、応用にしたがい様々な実施例が成立することを、敢えてここに、言及する次第です。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の係るノコ刃を形成した丸鋸を示す正面図である。
【図2】本発明に係るノコ刃の形状のみを拡大して示す正面図である。
【図3】本発明に係るノコ刃を形成した丸鋸を取付けた従来公知の切断機を示す斜視図である。
【図4】(A)、(B)は本発明に係るノコ刃で発泡樹脂成形材を切断した場合の切断状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ノコ刃
2 刃先
3 テーパー形状
4 台金部
7 発泡樹脂成形材
刃先の厚み幅
台金部の厚み幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂成形材を切断するノコ刃において、
同ノコ刃の刃先の厚み幅が台金部の厚み幅より狭く、刃先から台金部へ向かって厚み幅が広がるテーパー形状に形成されていることを特徴とする、発泡樹脂成形材切断用のノコ刃。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−168002(P2007−168002A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367808(P2005−367808)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000245830)矢崎化工株式会社 (47)
【Fターム(参考)】