説明

発泡粘着シート

【課題】 接着力、追従性や柔軟性を維持しつつ、リサイクル性など環境負荷を考慮
しての再剥離性や粘着シートの剥がし易さをも付与した発泡粘着シートを提供する。
【解決手段】 平均気泡径が0.02〜0.2mm、見掛け密度が30〜100kg/m、かつ、50%圧縮時の圧縮応力が10〜90KPaの範囲であるポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも片面に粘着剤組成物からなる層が設けられ、発泡粘着シートの粘着力が90度剥離試験で5.0N/20mm幅未満であり、
上記粘着剤組成物の室温での貯蔵弾性率(G´)が20N/cm未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体の少なくとも片面に粘着剤層を有した発泡粘着シートに関し、分別回収やリサイクル等の際に容易に剥がすことが必要とされ、さらにシール性も要求される分野、例えば、電子機器、家電、住宅、自動車分野などの用途に好適に用いることができる発泡粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や家電、住宅、自動車等の分野において、作業性に優れることから部材どうしの接合に粘着テープが多用されてきている。そして、接合部のシール性や緩衝性に優れることから発泡体を基材として用いたものが好適に用いられている(特許文献1)。
【0003】
携帯電話やパソコンなどの精密部品の組み立てなどでは、接合部のシール性(密閉性)や寸法精度の要求がますます厳しくなってきている。
【0004】
一方で、近年、環境意識の高まりから、商品における省資源化、リサイクル性が注目されており、廃棄物削減などの観点からも分離回収し易いことが望まれている。
特許文献1のシール材は、ある程度シール性には優れるものの、分別という面では、再剥離性がなお十分とはいえず、分別時に剥がしにくく、剥がす際に発泡体が破れて部材に粘着剤や発泡体が残存しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4125875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より追従性や密閉性などのシール性能や柔軟性に優れ、適度な接着力を維持しつつ、リサイクル性など環境負荷を考慮しての再剥離性や粘着シートの剥がし易さをも付与した発泡粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した。その結果、特定のポリオレフィン系樹脂発泡体に特定の粘着剤組成物からなる層を設けた発泡粘着シートによれば、上記課題を達成し得ることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の発泡粘着シートを提供するものである。
1 平均気泡径が0.02〜0.2mm、見掛け密度が30〜100kg/m、かつ、50%圧縮時の圧縮応力が10〜90KPaの範囲であるポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも片面に粘着剤組成物からなる層が設けられ、その粘着力が90度剥離試験で5.0N/20mm幅未満であることを特徴とする発泡粘着シート。
2 上記粘着剤組成物の室温での貯蔵弾性率(G´)が20N/cm未満であることを特徴とする発泡粘着シート。
3 上記ポリオレフィン系樹脂発泡体の引裂強度が5〜70N/cmの範囲であることを特徴とする発泡粘着シート。
4 上記ポリオレフィン系樹脂発泡体がポリプロピレン系樹脂発泡体であることを特徴とする発泡粘着シート。
5 粘着剤組成物からなる層の厚さが5〜100μmであることを特徴とする発泡粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下記の如き格別顕著な効果が得られる。
(1)本発明の発泡粘着シートは、平均気泡径が0.02〜0.2mm、見掛け密度が30〜100kg/m、かつ、50%圧縮時の圧縮応力が10〜90KPaの範囲であるポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも片面に粘着剤組成物からなる層が設けられ、その粘着力が90度剥離試験で5.0N/20mm幅未満であることを特徴とする発泡粘着シートであるため、優れた柔軟性、クッション性を有し、被着体表面への追従性に優れることからシール性に優れており、また、容易に、きれいに剥がすことができ再剥離性やリサイクル性に優れている。
(2)上記粘着剤組成物の室温での貯蔵弾性率(G´)が20N/cm未満である粘着剤組成物からなる場合には、さらに適度な初期接着性を有し再剥離性に優れている。
(3)ポリオレフィン系樹脂発泡体の引裂強度が5〜70N/cmの範囲である場合には、再剥離時に粘着シートが破れにくく、よりきれいに剥がすことができる。
(4)ポリオレフィン系樹脂発泡体がポリプロピレン系樹脂発泡体である場合には、発泡体の強度に優れ再剥離時に粘着シートが破れにくく、よりきれいに剥がすことができる。
(5)粘着剤組成物からなる層の厚さが5〜100μmである場合には、さらに適度な接着力を有し再剥離性に優れている。
従って、本発明により得られる発泡粘着シートは、電子機器、家電、住宅、自動車分野などに用いるシール材、パッキン材、防塵材、緩衝材等の用途にも好適に使用することができる。
【0010】
本発明の発泡粘着シートに用いる発泡体は、所定のメルトフローレートを有するポリオレフィン系樹脂に、熱可塑性エラストマーを所定割合にて含有させているため、結晶性の低い熱可塑性エラストマーによって、ポリオレフィン系樹脂における溶融粘度の温度依存性を緩和し、発泡適正温度を広げて発泡性の改善を図っており、発泡剤に二酸化炭素を用い、更に気泡生成部と発泡体成形部を有する円環ダイを用いて、なお且つ所定の吐出速度、圧力にて押出発泡することにより気泡の微細化、気泡膜強度の向上及び発泡倍率を向上させた、表面平滑性の良い発泡体を用い、その発泡体の少なくとも片面に粘着剤層を塗工することで、優れた柔軟性、クッション性を有した発泡粘着シートを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す円環ダイの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ポリオレフィン系樹脂発泡体)
本発明の発泡粘着シートには耐薬品性や柔軟性に優れるポリオレフィン系樹脂発泡体が用いられ、より具体的には、平均気泡径が0.02〜0.3mm、見掛け密度が30〜100kg/m、かつ、50%圧縮時の圧縮応力が10〜90KPaの範囲であるポリオレフィン系樹脂発泡体が用いられる。
ポリオレフィン系樹脂発泡体の発泡体の気泡構造としては、独立気泡構造、半独立半連続気泡構造、連続気泡構造のいずれの構造のものも使用できるが、被着体表面への追従性に優れることから半独立半連続気泡構造、連続気泡構造が好ましく、連続気泡構造がより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡体の平均気泡径は、小さいと強度が不十分となり、大きいと柔軟性、加工性、追従性が悪化するので、0.02〜0.3mmに限定される。0.03〜0.2mmが好ましく、0.03〜0.18mmがより好ましい。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂発泡体の見かけ密度は、小さいと、ポリオレフィン系樹脂発泡体の機械的強度が低下することがある一方、大きいと、ポリオレフィン系樹脂発泡体のクッション性又は柔軟性が低下することがあるので、30〜100kg/mに限定される。30〜90kg/mであることが好ましく、35〜70kg/mであることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡体の50%圧縮時の圧縮応力は、小さいと被着体表面への追従性が劣るため、防塵性やパッキン性を維持できない一方、大きいと柔軟性が劣り、防塵性やパッキン性が維持できないだけでなく、クッション性や緩衝性なども劣るため、10〜90Kpaに限定される。15〜80Kpaが好ましく、15〜75Kpaがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡体の引裂強度は、弱いと必要な強度が維持されず、使用の際に破れなどの原因になる一方、強すぎると柔軟性や追従性が劣り、ゴミや埃の侵入を防ぐ防塵性やパッキン性が維持できなくなることがあるので、ポリオレフィン系樹脂発泡体の引裂強度は、MD方向(押出方向)とTD方向(押出方向に直交する方向)のうち最小値と最大値を併せて5〜70N/cmであることが好ましく、8〜65N/cmであることがより好ましく、10〜60N/cmであることが特に好ましい。
【0014】
(ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法)
図1は本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いられる一実施形態の円環ダイの概略断面図である。
本発明の一実施形態であるポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、以下の通りである。
メルトフローレート0.2〜6g/10minのポリオレフィン系樹脂100重量部と、熱可塑性エラストマー10〜300重量部から成る配合樹脂組成物に気泡核剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給し、二酸化炭素を発泡剤として押出機内へ圧入して溶融樹脂組成物と混練した後、押出機先端に取り付けた図1に示した円環ダイDより押出発泡させる製造方法である。
この実施形態では特に、該円環ダイDは、樹脂流路3に形成された気泡生成部2と、気泡生成部2に連続し、この生成した気泡の成長及び発泡体表面の平滑化を行う発泡体成形部1とを有しており、該円環ダイDの気泡生成部2における樹脂の吐出速度Vが、50〜300kg/cm・hrかつ、円環ダイD手前での樹脂圧力が7MPa以上となる条件下で押出発泡させることが好ましい。4は円環ダイイン側金型、5は円環ダイアウト側金型である。
【0015】
本明細書において、樹脂の吐出速度V(kg/cm・hr)は、下記式によって、定
義される。
V=押出樹脂重量/金型気泡生成部断面積・時間
ここで、押出樹脂重量は、金型から押し出された総重量をいう。従って、押出樹脂重量は、ポリオレフィン系樹脂組成物と発泡剤との合計量となる。また、押出樹脂重量は、1時間当りの吐出量(kg/hr)で表すことができる。
【0016】
円環ダイ手前での樹脂圧力は、押出機先端から円環ダイまでの流路において、ストレインゲージなどによって測定される圧力であって、特に本明細書においては、押出機先端フランジ、両サイドにフランジのある直管金型、円環ダイと順に接続した直管金型部に取り付けた、ストレインゲージにて測定される値を言う。
【0017】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂としては、メルトフローレートが0.2〜6g/10min程度であるものが好ましく用いられる。耐熱性や機械強度に優れることからポリプロピレン系樹脂が好ましい。具体的には、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。
プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体の何れであってもよいが、耐熱性に優れていることから、ブロック共重合体が好ましい。
プロピレンと共重合する他のオレフィンとしては、例えば、エチレンの他に、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどの炭素数が4〜10であるα−オレフィンが挙げられる。
これらの内、発泡性や耐熱性が優れるホモポリプロピレンや、ブロック共重合体ポリプロピレンが好ましく、さらに耐熱性に優れるホモポリプロピレンがより好ましい。
【0018】
また、本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、発泡性に優れることから、高溶融張力ポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。高溶融張力ポリプロピレン系樹脂としては、電子線架橋などにより分子構造中に自由末端長鎖分岐を有している高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)や、高分子量成分を含むことで溶融張力を上げたもの等がある。この高溶融張力ポリプロピレンとしては、市販品を使用でき、市販品の具体例としては、日本ポリプロ社製の商品名「ニューストレンSH9000」や、Borealis社製の商品名「DaployWB135HMS」などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を適宜組み合わせ混合して用いてもよい。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は低いと、押出機の負荷が大きくなって生産性が低下し、又は、発泡剤を含む溶融したポリオレフィン系樹脂組成物が金型内を円滑に流れることができなくなって、得られるポリオレフィン系樹脂発泡体の表面にムラが発生して外観が低下する一方、高いと、金型円環ダイ手前での樹脂圧力が低下し、円環ダイ気泡生成部における樹脂圧力も低下することから、気泡生成部手前で気泡が生成してしまい発泡体成形部で破泡が急激に生じることにより発泡性が低下し、得られる発泡体の外観が低下もしくは、発泡体が得られなくなるので、0.2〜6g/10min程度が好ましく、0.2〜5g/10minがより好ましく、0.3〜4g/10minが特に好ましい。
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210:1999のB法に準拠して、試験温度230℃、試験荷重21.18Nにて測定されたものをいう。
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートは、ポリオレフィン系樹脂を一種単独で用いた場合には、その樹脂のメルトフローレートを上記方法で測定されたものをいう。
また、ポリオレフィン系樹脂二種以上を混合して用いた場合には、それぞれ個々のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートを上記測定方法で測定し、それぞれのメルトフローレートの値から、下記の様にして、算出したものをいう。
即ち、ポリオレフィン系樹脂が、n種類のポリオレフィン系樹脂の混合物であるとした場合、ポリオレフィン系樹脂1のメルトフローレートをMFR、ポリオレフィン系樹脂2のメルトフローレートをMFR、・・・ポリオレフィン系樹脂nのメルトフローレートをMFRとすると共に、ポリオレフィン系樹脂1の含有量をC1、ポリオレフィン系樹脂2の含有量をC2、・・・ポリオレフィン系樹脂nの含有量をCnとする。なお、ポリオレフィン系樹脂nの含有量は、ポリオレフィン系樹脂nの重量をポリオレフィン系樹脂全体の重量で除したものとする。そして、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートは、下記式によって算出される。
メルトフローレート (g/10min)=(MFR1)C1×(MFR2)C2×・・・×(MFRn)Cn
【0020】
(熱可塑性エラストマー)
ポリオレフィン系樹脂には、熱可塑性エラストマーを混合することが好ましい。
熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを組み合わせた構造を有するもので、常温でゴム弾性を示し、高温では熱可塑性樹脂と同様に可塑化され成形できるという性質を有する。一般的には、ハードセグメントがポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂であり、ソフトセグメントがエチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのゴム成分または非結晶性ポリエチレンである。
熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとなるモノマーとソフトセグメントとなるモノマーの重合を多段階で行い、重合反応容器内において直接製造される重合タイプのエラストマー;バンバリーミキサーや二軸押出機などの混練機を用いてハードセグメントとなるポリオレフィン系樹脂と、ソフトセグメントとなるゴム成分とを物理的に分散させて製造されたブレンドタイプのエラストマー;バンバリーミキサーや二軸押出機などの混練機を用いてハードセグメントとなるポリオレフィン系樹脂と、ソフトセグメントとなるゴム成分とを物理的に分散させる際に架橋剤を加えることによって、ポリオレフィン系樹脂マトリックス中に、ゴム成分を完全架橋又は部分架橋させミクロ分散させて得られる、動的架橋されたエラストマーが挙げられる。
【0021】
本発明では、非架橋エラストマー及び架橋エラストマー共に利用することが可能であり、ソフトセグメントとなるゴム成分とを物理的に分散させて製造された非架橋エラストマーを用いた場合、製造された製品のリサイクル性を考慮すると好ましく、通常のポリオレフィン系樹脂を押出発泡成形する場合と同様の押出機での製造が容易に可能となり、更に発泡成形品をリサイクルし再び押出機へ供給して同じ発泡成形をする場合でも、架橋ゴムによる発泡不良等が抑えられる。一方、ソフトセグメントとなるゴム成分とを物理的に分散させると同時に、ゴム成分を部分架橋または動的架橋された架橋エラストマーを用いた場合、ポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れることや、得られる発泡体の耐熱性を高めることなどから好ましい。
なお、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーを構成するジエン成分としては、例えばエチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
ここで、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーは一種或いは二種以上を混合して用いられてもよく、このようなエチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーを使用することにより、通常のポリオレフィン系樹脂を押出発泡成形する場合と同様の押出機での製造が容易となる。
【0022】
熱可塑性エラストマーの硬度は、JIS K6253で規定されるデュロA硬度で90以下であることが、優れた柔軟性を有するポリオレフィン系樹脂発泡体が得られる点から好ましい。デュロA硬度は、80〜20程度であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂に含ませる熱可塑性エラストマーの含有量は、少ないと、得られるポリオレフィン系樹脂発泡体の緩衝性や柔軟性が乏しくなる一方、多いと、ポリオレフィン系樹脂組成物のゴム弾性が強くなりすぎて発泡性が低下したり、得られたポリオレフィン系樹脂発泡体の収縮が大きくなるために、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して10〜300重量部が好ましく、20〜150重量部がより好ましく、30〜100重量部が特に好ましい。
【0023】
(気泡核剤)
ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造には気泡核剤を用いることが好ましい。気泡核剤はポリオレフィン系樹脂組成物が気泡を形成する際に気泡核の生成を促すものであり、気泡の微細化と均一性に効果を示す。気泡核剤としては、例えばタルク、マイカ、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、ガラスビーズなどの無機化合物;ポリテトラフルオロエチレン、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などの有機化合物、窒素などの不活性ガスなどが挙げられる。その中でも、無機化合物ではタルク、有機化合物ではポリテトラフルオロエチレンが気泡微細化に効果が高いため好ましい。また、ポリテトラフルオロエチレンは分散させた際にフィブリル状になることで樹脂の溶融張力が上がるようになるものが特に好ましい。
【0024】
気泡核剤の量は、少ないと得られるポリオレフィン系樹脂発泡体の気泡数を増加させることが困難となり、得られるポリオレフィン系樹脂発泡体の表面平滑性が低下することがある。一方、多いと二次凝集を起こしやすくなり押出発泡不良による発泡体の表面平滑性が低下することがあるので、配合樹脂組成物100重量部に対して0.01〜15重量部であることが好ましく、0.1〜12重量部であることがより好ましい。
【0025】
本発明で使用される気泡核剤は、そのものの形態で配合樹脂組成物と混合しポリオレフィン系樹脂組成物として、又は個別に押出機内へ供給しても良く、更にマスターバッチとして配合樹脂組成物と混合しポリオレフィン系樹脂組成物として、又は個別に押出機内へ供給しても良い。
マスターバッチの基材樹脂としては、配合樹脂組成物に対する相溶性に優れるものであれば、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を好適に使用することができる。
【0026】
(添加剤)
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー及び気泡核剤以外に、任意成分として、発泡成形に通常用いられる各種添加剤を配合することができる。該添加剤としては、例えば、耐候性安定剤、光安定剤、顔料、染料、難燃剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの内、界面活性剤は、すべり性及びアンチブロッキング性を付与するものである。また、分散剤は、無機充填剤の分散性を向上させるもので、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
添加剤の添加量は、気泡の形成、得られる発泡体の物性等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常の熱可塑性樹脂の成形に用いられる添加量を採用できる。
前記気泡核剤及び上記添加剤は、取扱いの容易性や粉体飛散による製造環境汚染の防止のため、又熱可塑性樹脂中への分散性を向上させるため、マスターバッチとして、使用することもできる。
マスターバッチは、通常、熱可塑性の基材樹脂に、添加剤等を高濃度で練り込み、ペレット状とすることにより、行うことができる。基材樹脂としては、配合樹脂組成物に対する相溶性に優れるものであれば、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を好適に使用することができる。
【0027】
(発泡剤)
発泡剤は、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させるために、押出機内に圧入させて供給されるものであり、本発明においては、二酸化炭素を用いることが好ましい。二酸化炭素は、超臨界状態、亜臨界状態、又は液化された二酸化炭素を用いることで、従来の発泡体以上に微細な気泡を形成させることが出来、得られる発泡体の表面平滑性や柔軟性を向上させることが出来る。
押出機内に圧入される発泡剤の量は、ポリオレフィン系樹脂発泡体の発泡倍率に応じて適宜、調整されればよいが、少ないと、ポリオレフィン系樹脂発泡体の発泡倍率が低くなり、軽量性及び断熱性が低下することがある一方、多いと、金型内において発泡を生じ、破泡を生じたり、或いは、ポリオレフィン系樹脂発泡体中に大きな空隙が生じることがあるので、ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に対して1〜10重量部程度であるのが好ましく、2〜8重量部程度であるのがより好ましく、3〜6重量部程度であるのが特に好ましい。
【0028】
(押出機、金型及び樹脂の吐出速度)
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法において、押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、およびタンデム型押出機のいずれの押出機をも用いることができる。本発明では、これらの内、押出条件を調整しやすいことから、タンデム型押出機が好ましい。
【0029】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法において用いられる金型の一例は、図1及び既述のとおり、樹脂流路3の絞り31により形成された気泡生成部2と、生成した気泡の成長及び発泡体表面の平滑化を行う発泡体成形部1とを有している円環ダイDである。本発明によるポリオレフィン系樹脂発泡体は、従来よりも微細な気泡を有しているため、従来の円環ダイを用いて発泡させた場合、発泡体表面には多数のコルゲートが発生し、得られる発泡体の表面平滑性が悪くなる。しかしながら、発泡体形成部の有する円環ダイは、発泡体成形部における適度なすべり抵抗によって、気泡生成部でのコルゲートの発生を抑制でき、表面平滑な発泡体を得ることができる。ここで言うコルゲートとは、円環ダイから出た発泡体が体積膨張による円周方向の線膨張分を吸収するために波打ちしてできる、多数の山谷状のヒダのことである。
【0030】
本発明の製造方法では、気泡生成部での樹脂の吐出速度Vは、50〜300kg/cm・hrかつ、円環ダイ手前での樹脂圧力が7MPa以上とすることが好ましい。
吐出速度Vは70〜250kg/cm・hr程度であることがより好ましく、100〜200cm・hr程度であることが特に好ましい。かつ円環ダイ手前での樹脂圧力は7MPa以上であることが好ましく、8MPa以上20MPa以下であることがより好ましい。上記条件による押出発泡で、ポリオレフィン系樹脂の発泡性を向上させることができることに加え、気泡を微細化することができるとともに気泡膜の強度がより高まる。これら条件により、得られた発泡体は二次加工する場合の加工性が向上し、スライス加工して得られるシート状の発泡体は、表面平滑性に優れたものが得られる。吐出速度Vが50kg/cm・hr程度より小さい場合、気泡の微細化や高発泡倍率の発泡体を得ることが困難となる。一方で300kg/cm・hr程度より大きい場合、金型気泡生成部で樹脂が発熱して気泡破れをきたし、発泡倍率が低下しやすくなることに加え、皺状のコルゲートが発生しやすくなり気泡径が不均一となって発泡体の表面平滑性が低下するため好ましくない。吐出速度Vは、円環ダイ気泡生成部の断面積、押出吐出量により適宜調節される。
【0031】
気泡生成部の断面積の調整方法としては、金型の気泡生成部の長さ(フラット金型の場合)や口径(円環ダイの場合)を変える方法と、金型の気泡生成部の間隔(フラット金型又は円環ダイの場合)を変える方法との2通りの方法が挙げられる。
【0032】
円環ダイ手前での樹脂圧力は、7MPaよりも低いと円環ダイ気泡生成部より手前で気泡生成が始まり、良好な発泡体が得られなくなるため好ましくない。また、20MPaより高くなると、押出機の負荷が高くなりすぎたり、発泡剤の注入圧力が高くなりすぎて圧入出来なくなる恐れがあるため、好ましくない。
円環ダイ手前での樹脂圧力は、溶融樹脂粘度と押出吐出量、円環ダイ気泡生成部断面積によって適宜調節される。更に溶融樹脂粘度は配合樹脂組成物の粘度と発泡剤の添加量、及び溶融樹脂温度によって適宜調節される。なお、本明細書での溶融樹脂温度とは、円環ダイ手前での樹脂圧力を測定する直管金型において、溶融樹脂に直接接触させる形で取り付けられた熱電対にて測定された温度を言う。
【0033】
本発明における樹脂温度は、概ねポリオレフィン系樹脂の融点より10℃〜20℃の範囲とすることが、発泡性を高める上で好ましい。樹脂温度が融点に近づくと、ポリオレフィン系樹脂の結晶化が始まり、急激に粘度が上昇し押出条件が不安定になったり、押出機の負荷が上昇したりするので好ましくない。逆に高すぎると発泡後の樹脂固化が発泡スピードに追い着かず、破泡をきたして発泡倍率が上がらないなどの問題が出るので好ましくない。
【0034】
(発泡粘着シート)
本発明の発泡粘着シートは、このようなポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも片面に粘着剤組成物からなる層が設けられており、その粘着力が90度剥離試験で5.0N/20mm幅未満である。
発泡粘着シートの粘着力は、強すぎると剥離した時に糊残りやリサイクル時に煩雑な作業が必要となり、弱すぎると部材との粘着力が維持できないので、90度剥離試験で5.0N/20mm幅未満に限定され、90度剥離試験で1.0N/20mm幅以上5.0N/20mm幅未満であることが好ましい。
また、180度剥離試験での粘着力も5.0N/20mm幅未満であることが好ましい。180度剥離試験での粘着力も5.0N/20mm幅未満であることで、リサイクル時により容易にきれいに発泡粘着シートを剥がすことができる。180度剥離試験での粘着力の下限は、1N/20mm幅程度であることが好ましい。
また、粘着剤組成物は室温での貯蔵弾性率(G´)が20N/cm未満であることが好ましい。これは、粘着剤組成物の貯蔵弾性率が、高すぎると再利用時やリサイクル時に糊残りが多くなることがあるためである。18N/cm未満であることがより好ましく、15N/cm未満であることがさらに好ましく、10N/cm未満であることが特に好ましい。
一方、低すぎると素材への接着が弱く、扱い難くなるため、0.5N/cm以上が好ましい。
【0035】
(粘着剤組成物)
本発明に用いる粘着剤組成物(粘着剤ともいう)としては、上記粘着力および貯蔵弾性率を満足するものであれば特に限定されない。このような粘着剤は一般的に用いられているものから選択できる。例えば、アクリル系樹脂粘着剤、天然ゴムや合成ゴムなどのゴム系粘着剤、シリコーン系などの粘着性ポリマーを主成分とする有機溶剤系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などを主成分とするエマルジョン系粘着剤などが挙げられる。中でも耐久性に優れ、取り扱いに際し、汚れが少ないなどの点で、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。これらの粘着剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用して用いても良い。また、上記発泡体の両面に粘着剤を塗工する場合、片方の面に塗工される粘着剤と他方の面に塗工されている粘着剤は、同一の粘着剤であっても良いし、異なる粘着剤であってもよい。
【0036】
これらの粘着剤には、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属錯化合物などの架橋剤、粘着性付与剤、カップリング剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、難燃剤、帯電防止剤などの各種添加剤の一種又は二種以上が添加されていても良い。
【0037】
これら粘着剤組成物からなる層の厚みは、厚すぎると糊残りや位置調整が難しくなる一方、薄すぎると十分な粘着力を維持できないため、5〜100μmであることが好ましい。8〜50μmであることがより好ましく、10〜40μmであることが特に好ましい。
[本発明における物性測定方法]
【0038】
(平均気泡径)
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂発泡体の平均気泡径は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して、下記の様にして、測定されたものをいう。
具体的には、発泡シートをMD方向(押出方向)及びTD方向(押出方向に直交する方向)に沿って切断し、それぞれの切断面の中央部を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−3000N)で拡大して撮影した。
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、画像上に長さ60mmの直線を一本、描く。なお、MD方向に切断した切断面についてはMD方向に平行に、TD方向に切断した切断面についてはTD方向に平行に、VD方向(厚み方向)はMD方向及びTD方向に対して垂直(シートに対して垂直)に直線を描く。このとき、60mmの直線上に気泡が10〜20個程度となる様に、上記の電子顕微鏡での拡大倍率を調整した。
上記直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出し、この平均弦長を各方向(MD方向、TD方向及びVD方向)の平均気泡径とした。
平均弦長 t=60/(気泡数×写真の倍率)
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにする。又、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。
前記式で算出された平均弦長tに基づいて次式により気泡径を算出する。
気泡径(mm)D=t/0.616
そして、得られたMD方向の気泡径(DMD)、TD方向の気泡径(DTD)とVD方向の気泡径(DVD)の相加平均値をポリオレフィン系樹脂発泡体の平均気泡径とする。
平均気泡径(mm)=(DMD+DTD+DVD)/3
【0039】
(見掛け密度)
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂発泡体の見かけ密度はJIS K 7222−1999記載の方法に準拠した方法により測定される。具体的には、試料から10cm以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を試料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出する。
密度(kg/m)=試験片質量(g)/試験片体積(cm)×10
【0040】
(剥離試験)(粘着力)
本明細書において、発泡粘着シートの剥離試験は、得られた発泡粘着シートを幅20mm、長さ150mmに裁断し、アクリル板に重さ2kg重のゴムローラーにて1往復させて貼り合せ、温度23℃、湿度50%の条件下に30分静置後、オリエンテック社製テンシロン万能試験機UCT−10Tで試験速度300mm/分、剥離距離120mmで90度剥離試験及び180度剥離試験をした。
【0041】
(引裂試験)
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂発泡体の引裂試験は、JIS K6767 1999発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法に準拠した方法で測定される。具体的には、JIS K6767記載の試験片を温度23℃、湿度50%の条件下に24時間静置後、試験速度500mm/分で引裂いた。測定装置としては、オリエンテック社より市販されているテンシロン万能試験機UCT−10Tを用いることができる。
MD方向(押出方向)及びTD方向(押出方向に直交する方向)の強度を測定した。
【0042】
(再剥離試験)
本明細書において、発泡粘着シートの再剥離試験は、得られた発泡粘着シートを幅20mm、長さ100mmに裁断し、アクリル板に重さ2kg重のゴムローラーにて1往復させて貼り合せ、温度60℃、湿度90%の恒温槽中に48時間静置し、温度23℃、湿度50%の条件下に24時間静置後、発泡粘着シートを引き剥がした際の糊残りの具合を目視にて5段階評価した。
評価基準は、○:糊残り0%以上〜5%未満、○△:糊残り5%以上〜10%未満、△:糊残り10%以上〜20%未満、△×:糊残り20%以上〜40%未満、×:糊残り40%以上。
再剥離時の糊残りは、再利用やリサイクル性を考慮した場合、20%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましく、5%未満であることが特に好ましい。
【0043】
(圧縮試験)
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂発泡体の圧縮試験は、JIS K6767 発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法に準拠した方法で測定される。具体的には、50mm角に裁断した試験片を温度23℃、湿度50%の環境下に24時間静置した後、試験速度1mm/分の速度で厚みの50%まで圧縮した。測定装置としては、オリエンテック社より市販されているテンシロン万能試験機UCT−10Tを用いることができる。
【0044】
(貯蔵弾性率)
本明細書において、粘着剤組成物の貯蔵弾性率は、TA
Instruments社製の粘弾性計測装置AR2000exを用いて測定し、試験片厚み約1mm、測定温度は室温(25℃)、昇温速度3℃/分、周波数1Hzで測定した。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、各例において、部及び%は、原則として、重量基準である。
【0046】
(実施例1)
口径が65mmの第一押出機の先端に、口径が75mmの第二押出機を接続してなるタンデム型押出機を用意した。
このタンデム型押出機の第一押出機に、ポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10min)100重量部に、非架橋エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーであるJSR社製エクセリンク3300B(MFR:0.9g/10min)を67重量部加えた配合樹脂組成物100重量部に、気泡核剤として平均粒子径12μmのタルクを70重量%含有したマスターバッチ(日本タルク社製 タルペット70P)10重量部を混合させた熱可塑性樹脂組成物を第一押出機に供給して溶融混練した。第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を4.2重量部圧入して、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、この発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の気泡生成部口径φ35mm、金型の気泡生成部間隔0.25mm(気泡生成部の断面積:0.275cm)、発泡体成形部の間隔3.4mm、発泡体成形部の出口口径φ70の円環ダイから吐出量30kg/hr(吐出速度V=109kg/cm・hr)、樹脂温度175℃、円環ダイ手前での樹脂圧力9.8MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状のポリプロピレン系樹脂発泡体を得た。発泡体の平均気泡径は170μm、密度は47.3kg/mであった。得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の両面をスプリッティングマシン(フォーチュナ社製「AB−320D」)によりスライス加工して表皮を除去し、厚み1.0mmの両面がスライス面とされたシート状発泡体の片面にアクリル系粘着剤917×3A(岡畑産業(株)製、貯蔵弾性率1.2N/cm)を16μmの厚み塗工し発泡粘着シートを得た。
【0047】
(実施例2)
口径が65mmの第一押出機の先端に、口径が75mmの第二押出機を接続してなるタンデム型押出機を用意した。
このタンデム型押出機の第一押出機に、ポリプロピレン樹脂(MFR:0.3g/10min)100重量部に、非架橋エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーである熱可塑性エラストマー(三菱化学社製 サーモランZ101N MFR:14g/10min)を67重量部加えた配合樹脂組成物100重量部に、気泡核剤として平均粒子径12μmのタルクを70重量%含有したマスターバッチ(日本タルク社製 タルペット70P)10重量部を混合させた、熱可塑性樹脂組成物を第一押出機に供給して溶融混練した。第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を4.8重量部圧入して、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、この発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の気泡生成部口径φ35mm、金型の気泡生成部間隔0.25mm(気泡生成部の断面積:0.275cm)、発泡体成形部の間隔3.4mm、発泡体成形部の出口口径φ70の円環ダイから吐出量30kg/hr(吐出速度V=109kg/cm・hr)、樹脂温度172℃、円環ダイ手前での樹脂圧力10.8MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状のポリプロピレン系樹脂発泡体を得た。発泡体の平均気泡径は140μm、密度は45.7kg/mであった。得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の両面をスプリッティングマシン(フォーチュナ社製「AB−320D」)によりスライス加工して表皮を除去し、厚み1.0mmの両面がスライス面とされたシート状発泡体の片面にアクリル系粘着剤RA420(協和産業(株)製、貯蔵弾性率5.8N/cm)を30μmの厚み塗工し発泡粘着シートを得た。
【0048】
(実施例3)
実施例2で得られた発泡体で、両面をスプリッティングマシン(フォーチュナ社製「AB−320D」)によりスライス加工して表皮を除去し、厚み1.0mmの両面がスライス面とされたシート状発泡体の片面にアクリル系粘着剤RA460(協和産業(株)製、貯蔵弾性率7.5N/cm)を30μmの厚み塗工し発泡粘着シートを得た。
【0049】
(実施例4)
口径が65mmの第一押出機の先端に、口径が75mmの第二押出機を接続してなるタンデム型押出機を用意した。
このタンデム型押出機の第一押出機に、ポリプロピレン樹脂(MFR:0.5g/10min)100重量部に、非架橋エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマーである熱可塑性エラストマー(三菱化学社製 サーモランZ101N MFR:14g/10min)を67重量部加えた配合樹脂組成物100重量部に、気泡核剤として平均粒子径12μmのタルクを70重量%含有したマスターバッチ(日本タルク社製 タルペット70P)10重量部を混合させた、熱可塑性樹脂組成物を第一押出機に供給して溶融混練した。第一押出機の途中から発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を4.8重量部圧入して、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物と二酸化炭素を均一に混合混練した上で、この発泡剤を含む溶融樹脂組成物を第二押出機に連続的に供給して溶融混練しつつ発泡に適した樹脂温度に冷却した。その後、第二押出機の先端に取り付けた金型の気泡生成部口径φ35mm、金型の気泡生成部間隔0.25mm(気泡生成部の断面積:0.275cm)、発泡体成形部の間隔3.4mm、発泡体成形部の出口口径φ70の円環ダイから吐出量30kg/hr(吐出速度V=109kg/cm・hr)、樹脂温度174℃、円環ダイ手前での樹脂圧力7.8MPaの条件で押出発泡させ、円環ダイの発泡体成形部において成形された円筒状の発泡体を冷却されているマンドレル上に添わせるとともに、その外面をエアリングからエアーを吹き付けて冷却成形し、マンドレル上の一点で、カッターにより円筒状の発泡体を切開して、シート状のポリオレフィン系樹脂発泡体を得た。発泡体の平均気泡径は103μm、密度は42.5kg/mであった。得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の片面にアクリル系粘着剤RA460(協和産業(株)製、貯蔵弾性率7.5N/cm)を30μmの厚み塗工し発泡粘着シートを得た。
【0050】
(実施例5)
実施例4で得られた発泡体で、得られたポリプロピレン系樹脂発泡体の両面をスプリッティングマシン(フォーチュナ社製「AB−320D」)によりスライス加工して表皮を除去し、厚み1.0mmの両面がスライス面とされたシート状発泡体の片面にアクリル系粘着剤RA460(協和産業(株)製、貯蔵弾性率7.5N/cm)を30μmの厚み塗工した発泡粘着シートを得た。
【0051】
(比較例1)
実施例2で得られた発泡体で、両面をスプリッティングマシン(フォーチュナ社製「A
B−320D」)によりスライス加工して表皮を除去し、厚み1.0mmの両面がスライ
ス面とされたシート状発泡体の片面にアクリル系粘着剤917×3B(岡畑産業(株)製、貯蔵弾性率13.5N/cm)を27μmの厚み塗工した発泡粘着シートを得た。
【0052】
(比較例2)
実施例1で得られた発泡体で、両面をスプリッティングマシン(フォーチュナ社製「A
B−320D」)によりスライス加工して表皮を除去し、厚み1.0mmの両面がスライ
ス面とされたシート状発泡体の片面にアクリル系粘着剤917×3C(岡畑産業(株)製、貯蔵弾性率16.3N/cm)を32μmの厚み塗工した発泡粘着シートを得た。
【0053】
(比較例3)
実施例2で得られた発泡体で、両面をスプリッティングマシン(フォーチュナ社製「AB−320D」)によりスライス加工して表皮を除去し、厚み1.0mmの両面がスライス面とされたシート状発泡体の片面にアクリル系粘着剤G401(協和産業(株)製、貯蔵弾性率11.0N/cm)を30μmの厚み塗工した発泡粘着シートを得た。
【0054】
(物性試験)
各実施例及び比較例について、発泡粘着シートの90度剥離試験、発泡粘着シートの180度剥離試験、ポリオレフィン系樹脂発泡体の引裂試験、発泡粘着シートの再剥離試験及びポリオレフィン系樹脂発泡体の50%圧縮応力の測定を行い、比較を行なった。比較結果を下記に示す。
【0055】
表1に、各実施例、比較例について、ポリオレフィン系樹脂発泡体の平均気泡径、ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度、ポリオレフィン系樹脂発泡体の厚み、及び粘着剤組成物からなる層の貯蔵弾性率の結果を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
本実施例は、微細気泡を有し、発泡体密度、シート厚みが良好で表面美麗なポリオレフィン系樹脂発泡体が得られており、得られた発泡体の少なくとも片面に粘着剤層を塗工することで、接着性及びクッション性、緩衝性に特徴を有する発泡粘着シートが得られている。また本実施例では表に示されるように、50%圧縮応力が10〜90KPaの範囲であり、且つ、90度における剥離試験が5.0N/20mm未満であることが好ましいことを示している。
また、90度における剥離試験が5.0N/20mm未満で貯蔵弾性率が20N/cm未満であることが、再剥離時の糊残りが10%未満と少なく、再剥離性に優れることで、リサイクル時の作業が容易になることを示している。比較例1では、接着力が強過ぎるため、再剥離時の糊残りが40%以上と大きい結果となった。比較例2及び3では、接着力が強いため、材料破壊が起こり、リサイクル時の作業が煩雑になる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は優れた接着性を維持しながら、柔軟性や被着体表面への追従性を有し、且つ、分別回収やリサイクル等の際に容易に剥がすことができることを特徴とする。これらの特徴は、分別回収やリサイクル等の際に容易に剥がすことが必要とされ、さらに接着性も要求される分野等に好適に使用することができる。具体的には、電子機器や家電などのシール材、防塵材又は緩衝材として、住宅や自動車などのクッション材等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1:発泡体成形部
2:気泡生成部
3:発泡剤含有混練溶融樹脂流路部
4:円環ダイイン側金型
5:円環ダイアウト側金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均気泡径が0.02〜0.2mm、見掛け密度が30〜100kg/m、かつ、50%圧縮時の圧縮応力が10〜90KPaの範囲であるポリオレフィン系樹脂発泡体の少なくとも片面に粘着剤組成物からなる層が設けられ、その粘着力が90度剥離試験で5.0N/20mm幅未満であることを特徴とする発泡粘着シート。
【請求項2】
上記粘着剤組成物の室温での貯蔵弾性率(G´)が20N/cm未満であることを特徴とする請求項1に記載の発泡粘着シート。
【請求項3】
上記ポリオレフィン系樹脂発泡体の引裂強度が5〜70N/cmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡粘着シート。
【請求項4】
上記ポリオレフィン系樹脂発泡体がポリプロピレン系樹脂発泡体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡粘着シート。
【請求項5】
粘着剤組成物からなる層の厚さが5〜100μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡粘着シート。

【図1】
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