説明

発熱体の保持構造

【課題】発熱体の取付け作業性およびコストも安価にできる発熱体の保持構造を提供する。
【解決手段】発熱体と、発熱体を挿入保持するための保持溝を端縁に有する支持基板と、前記保持溝に対向して発熱体を挿入可能な挿入溝を有するスライド用基板とを備え、スライド用基板を支持基板に重ね合うように設け、これらをその板面方向で相対的にスライド可能とし、両基板の保持溝と挿入溝とを重ね合わせて前記発熱体の径よりも広い挿入口を形成して前記発熱体を両溝に挿入可能とする発熱体挿入姿勢と、前記保持溝と挿入溝とを板面方向で相対的にずらして両溝の挿入口を前記発熱体の径よりも狭くした発熱体保持姿勢との間で切換え可能とする。これにより、挿入口が発熱体の径よりも狭くなり、発熱体の脱落あるいは外れを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体の保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発熱体をマイカなどの基板に保持する構造として、特許文献1のように、基板の端縁に形成された保持溝に発熱体を係合し、発熱体が基板から外れるのを防ぐようにしている。
【0003】
図7はコイル状の発熱体101を支持基板102に保持する構造を示す正面図である。このような発熱体保持構造においては、発熱体101を保持する保持溝103の挿入口の幅(a)が発熱体101の線幅またはコイル径(d)よりも大きく形成されている。そのため、発熱体101への通電時に、発熱体の膨張により発熱体101が保持溝103から脱落あるいは外れるといった不具合が発生していた。
【0004】
このような不具合を解決するために、図8に示すように、基板102の保持溝103の挿入口(a)を狭く形成したり、あるいは、図9に示すように、耐熱ガラスヤーン104を基板102に巻き付けて、発熱体101の脱落を防止するといった手法が採用されていた。
【特許文献1】実開平07−11795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図8に示すように、発熱体のコイル径よりも保持溝の挿入口を狭くする方法では、発熱体を基板の保持溝に挿入する作業が煩雑となる難点がある。また、図9に示すように、耐熱ガラスヤーンを基板に巻き付ける方法では、その巻き付け作業が余分に必要で作業が煩雑化すると共に、高価な耐熱ガラスヤーンを使用しなければならないといった難点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、発熱体の取付け作業性およびコストも安価にできる発熱体の保持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、線状または帯状の発熱体と、該発熱体を挿入保持するための保持溝を端縁に有する支持基板とを備えた発熱体の保持構造であって、前記保持溝に対向して発熱体を挿入可能な挿入溝を有するスライド用基板が前記支持基板に重ね合うように設けられ、前記スライド用基板と支持基板とは、その板面方向に相対的にスライド可能に設けられ、前記保持溝と挿入溝とを重ね合わせて前記発熱体の径よりも広い挿入口を形成して前記発熱体を両溝に挿入可能とする発熱体挿入姿勢と、前記保持溝と挿入溝とを板面方向で相対的にずらして両溝の挿入口を前記発熱体の径よりも狭くした発熱体保持姿勢との間で切換え可能とされたことを特徴とする。
【0008】
上記構成の発熱体の保持構造によると、スライド用基板をスライドさせ、挿入口を発熱体の径よりも狭くすることにより発熱体の脱落あるいは外れを防止することができる。また、スライド用基板の追加を伴うが、スライド用基板は、図9に示すような耐熱ガラスヤーンを使用する場合に比べて、取付作業性のみならずコスト的に安価に製造することができる。
【0009】
特に、支持基板やスライド用基板をマイカ製とすれば、そのコストパフォーマンスも大きくなる。
【0010】
また、スライド用基板および支持基板に、両基板の発熱体保持姿勢で互いに重なり合う位置決め溝を各基板の端縁から切欠き形成し、該位置決め溝に位置決め手段を挿入して位置決めすることができる。
【0011】
このような位置決め手段を採用することにより、両基板は発熱体保持姿勢を維持することができる。
【0012】
位置決め手段としては、位置決めピンなど、種々の方法を採用することができるが、発熱体の端部に連繋する添線を位置決め溝を通して基板に巻回することにより、該添線を位置決め手段として利用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によると、スライド用基板をスライドさせ、挿入口を発熱体の径よりも狭くすることにより発熱体の脱落あるいは外れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の発熱体の保持構造を示す正面図、図2は図1に対応する平面図、図3は図1に対応する要部拡大正面図である。また、図4は本実施形態における発熱体保持構造を示す平面図、図5は図4の要部拡大平面図、図6(A)〜(H)は図4の構成部材を示す正面図である。
【0015】
図4に示すように、本実施形態における発熱体1は、例えば、除湿装置の吸湿体(図示せず)の前側に配置し、送風方向の軸周りに回転する円盤状の吸湿体の一部分を加温させて吸湿体を乾燥させるときに使用される。したがって、本実施形態の発熱体1として、平面視で扇状のものを例示した。しかし、発熱体の形状は図4に示すものに限定されるものではない。
【0016】
発熱体1は、コイル状のニクロム線もしくはコイル状の鉄クロム線が使用され、その端部は添線17で連繋され、電流を流すことにより、所望の発熱を行うものである。この発熱体としては、線状のものを例示したが、これに限らず、帯状の発熱体をジグザグ形状に折り曲げたものであってよい。要するには、通電時に支持基板2の保持溝11から脱落する可能性のあるすべての発熱体を対象としている。
【0017】
また、本実施形態では、2枚の支持基板2がその一端が要となるように接近した状態とされ、他端が扇状に開いた状態で配置されている。そして、両支持基板2の間には等角度で3枚の基板4,5,5が放射状に配置され、夫々の基板2,4,5,5と直交する方向に配置された3枚の差渡し基板6,7,8が扇形状を保持するように取り付けられ、これにより、扇形状の保持ブロック9を構成している。この保持ブロック9の上下両側に、一対のコイル状の発熱体1がブロック中心部側から外周側に向かって蛇行して配置されている。
【0018】
また、基板2、4、5、5には、発熱体1を挿入保持するための保持溝11が端辺(端縁)から切欠き形成されている。
【0019】
さらに、支持基板2の内側には、保持溝11に対向して発熱体1を挿入可能な挿入溝13を有するスライド用基板30が前記支持基板2に重なり合うように設けられている。このスライド用基板30には、発熱体1を挿入するための挿入溝13が端辺(端縁)から切欠き形成されている。
【0020】
これらの基板2,2,4,5、30は、マイカ(雲母)製である。マイカは、層状ケイ酸塩鉱物の一種で、主成分はSiO2、Al2O3、K2O及び結晶水からなっている。マイカは、電気絶縁性、耐熱性に優れており、へき開性を持ち薄片状にできる。さらに、マイカは、天然産物としては比較的安価である。したがって、スライド用基板30として部品点数が増えたとしても、コスト的な影響は少ない。
【0021】
スライド用基板30と支持基板2とは、その板面方向に相対的にスライド可能に設けられる。そして、支持基板2とスライド用基板30とは、その保持溝11と挿入溝13とを重ね合わせて前記発熱体1の径よりも広い挿入口12,14を形成して発熱体1を両溝11,13に挿入可能とする発熱体挿入姿勢(図1左側の図参照)と、前記保持溝11と挿入溝13とを板面方向で相対的にずらして両溝11,13の挿入口12,14を前記発熱体1の径よりも狭くした発熱体保持姿勢(図1右側の図参照)との間で切換え可能とされている。
【0022】
支持基板2の保持溝11とスライド用基板13の挿入溝13の関係をさらに詳述すると、図6に示すように、支持基板2には、その端縁から長方形状に切欠き形成された挿入口12を有し、その内端に連通するように円形の保持溝11が形成されている。挿入口12および保持溝11は支持基板2の長さ方向で間隔をおいて複数個形成されている。保持溝11の径は発熱体1の径よりも大径に形成されており、挿入口12の幅は発熱体1の径よりも大きく形成されている。そして、円形の保持溝11は、挿入口12に対して左右方向(基板の長さ方向)で一側にわずかに偏った状態で形成される。
【0023】
一方、スライド用基板30には、その端縁から長方形状に切欠き形成された挿入口14を有し、その内端に連通するように円形の挿入溝13が形成されている。挿入口12および挿入溝13はスライド用基板30の長さ方向で間隔をおいて複数個形成されている。挿入溝13の径は発熱体1の径よりも大径に形成されており、挿入口14の幅は発熱体1の径よりも大きく形成されている。そして、円形の挿入溝13は、挿入口14に対して左右方向(基板の長さ方向)で、保持溝11と反対側である他側にわずかに偏った状態で形成される。
【0024】
そして、挿入口12,14の幅は同寸に形成されており、図3に示すように、発熱体挿入姿勢(図3左側の図参照)では、挿入口12,14同士が重なり合い、このときに発熱体1を挿入可能となる。また、発熱体保持姿勢(図3右側の図参照)では挿入口12,14同士が互いにずれた状態となり、両挿入口12,14で形成される左右方向の幅(b)は、発熱体1の径よりも小さくなるように設定される。
【0025】
このとき、保持溝11および挿入溝13で形成される溝形状は、図3に示すように、発熱体1を保持可能な円形の形状とされる。
【0026】
また、スライド用基板30と支持基板2には、両基板2,30の発熱体保持姿勢で互いに重なり合う位置決め溝15,16が各基板の端縁から切欠き形成されている。この位置決め溝15,16には、発熱体1の端部に連繋する添線17が位置決め溝15,16を通してスライド用基板30と支持基板2とに巻回されることにより、該添線17が位置決め手段として利用される。
【0027】
上記構成においては、スライド用基板30の挿入口14と支持基板2の挿入口11とを合わせた発熱体挿入姿勢にした後、発熱体1を挿入口12,14から保持溝11および挿入溝13に挿入する。その後、治具などを用いて、スライド用基板30を支持基板2に対して相対的にスライドさせ、挿入口12,14を発熱体1の径よりも狭くすることにより、発熱体1の脱落あるいは外れを防止することができる。
【0028】
この発熱体の脱落防止には、スライド用基板30を追加を伴うが、スライド用基板30は、マイカ製のものであって比較的安価に入手できるので、図9に示すような耐熱ガラスヤーンを使用する場合に比べて、取付作業性のみならずコスト的に安価に製造することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、基板の位置決め方法として添線を利用したが、添線に代わりリード線を用いて固定したり、あるいは、ハトメなどの他の方法によってスライド用基板と支持基板とを位置決め固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の発熱体の保持構造を示す正面図
【図2】図1に対応する平面図
【図3】図1に対応する要部拡大正面図
【図4】本実施形態における発熱体保持構造を示す平面図
【図5】図4の要部拡大平面図
【図6】図4の構成部材を示す正面図
【図7】従来の発熱体の保持構造を示す正面図
【図8】図7の一つの改良構造を示す正面図
【図9】図7の他の改良構造を示す正面図
【符号の説明】
【0031】
1 発熱体
2 支持基板
4〜8 基板
11 保持溝
12 挿入口
13 挿入溝
14 挿入口
15,16 位置決め溝
17 添線
30 スライド用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状または帯状の発熱体と、該発熱体を挿入保持するための保持溝を端縁に有する支持基板とを備えた発熱体の保持構造であって、前記保持溝に対向して発熱体を挿入可能な挿入溝を有するスライド用基板が前記支持基板に重ね合うように設けられ、前記スライド用基板と支持基板とは、その板面方向に相対的にスライド可能に設けられ、前記保持溝と挿入溝とを重ね合わせて前記発熱体の径よりも広い挿入口を形成して前記発熱体を両溝に挿入可能とする発熱体挿入姿勢と、前記保持溝と挿入溝とを板面方向で相対的にずらして両溝の挿入口を前記発熱体の径よりも狭くした発熱体保持姿勢との間で切換え可能とされたことを特徴とする発熱体の保持構造。
【請求項2】
前記支持基板及びスライド用基板がマイカ製であることを特徴とする請求項1に記載の発熱体の保持構造。
【請求項3】
前記スライド用基板および支持基板に、両基板の発熱体保持姿勢で互いに重なり合う位置決め溝が各基板の端縁から切欠き形成され、該位置決め溝に位置決め手段が挿入されたことを特徴とする請求項1または2に記載の発熱体の保持構造。
【請求項4】
前記発熱体の端部に連繋する添線を位置決め溝を通して基板に巻回することにより、該添線を位置決め手段として利用することを特徴とする請求項3に記載の発熱体の保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−252515(P2009−252515A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98609(P2008−98609)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(390000572)ワデン工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】