説明

発熱具

【課題】両面離型シートを用いることで離型シートの使用量を片面離型シートの半分にできるとともに、折り目の部分に接着剤による皺が形成され難く、使用前・使用中における外縁域のめくれ上がりが起こり難い発熱具を提供すること。
【解決手段】本発明の発熱具1は、発熱部21aの袋体1a及び発熱部21の袋体1bが折曲部Bを介して連設され二つ折りされている。本発明の発熱具1には二つ折りされた両袋体1a,1b間に両面離型シート5が配されている。各袋体1a,1bの対向面には粘着剤が塗布されて、各袋体1a,1bと両面離型シート5とが剥離可能に粘着している。両面離型シート5は発熱具の折曲部Bに倣って折り曲げられ、延出部6を有している。粘着剤は、形成される折曲部Bを跨いで塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体又は着衣に貼付して適用して温感を付与する発熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる使い捨てカイロを始めとする発熱具には、これを人体又は着衣に貼付する目的で、粘着剤が塗布されているものがある。この場合、発熱具が使用されるまでの間、粘着剤は離型シート等によって保護されている。使用に際しては離型シートを剥がし、露出した粘着剤を下着や肌等に当接させる。剥がされた離型シートは廃棄され、再使用されることはない。しかし、昨今の省資源・エコロジーの観点から、廃棄物が極力生じないようにすることが望まれている。
【0003】
前記の観点から、特許文献1においては、粘着剤及び離型シートを設けた包材と通気性包材とからなり、かつ折目を有するシール部で複数の室に区画されてなる発熱剤収納袋に発熱剤を収納した粘着発熱体を、折目の部分で折り重ねた状態で、非通気性袋に収納することが提案されている。この離型シートは両面離型シートであり、各々の粘着剤塗布部分が、両面離型シートの表裏各面でそれぞれ被覆されるように、折目の部分で折り重ねられている。両面離型シートを用いることで、離型シートの使用量を、片面離型シートの半分にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−36623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、同文献に記載の発熱体においては、両面離型シートを用いることで離型シートの使用量を片面離型シートの半分にできるという利点はあるものの、粘着剤が外縁にまで塗布されていないので、使用前の状態において、外縁域に小さな力がかかっただけでも、両面離型シートと粘着剤とが剥離してしまう傾向がある。加えて、使用中の状態、すなわち、発熱体を着衣や肌に貼付した状態においても、外縁域がめくれ上がりやすく、ひいては発熱体の剥離が起こりやすいという不都合もある。
【0006】
上述のような問題を解消するために、図7(a)に示すように、単に、粘着剤を外縁にまで塗布すると、折曲部で粘着剤同士が重なり合ってしまい、使用する際に、図7(b)に示すように展開すると、該折曲部に皺が形成される傾向がある。このような折曲部に形成される皺は、粘着剤同士が貼り付いて形成されるものであるため、一度形成されてしまうと使用時に皺が元通りに伸びて解消され難く、見栄えが悪い。そればかりでなく、使用中にこの皺が引っ掛かることにより外縁域がめくれ上がりやすいという不都合もある。
【0007】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る発熱具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の発熱部を収容した扁平状の第1の袋体と、第2の発熱部を収容した扁平状の第2の袋体とが、折曲部を介して連設されており、前記折曲部の位置において、前記第1の袋体と前記第2の袋体とが対向するように二つ折りされ、前記第1の袋体と前記第2の袋体は二つ折り状態の対向面に粘着剤が塗布された粘着領域を有し、且つ、前記第1の袋体と前記第2の袋体の対向面の間に1枚の両面離型シートを備え、前記第1の袋体と前記第2の袋体は対向面の粘着領域において前記1枚の両面離型シートの両面と剥離可能に粘着されている発熱具であって、前記粘着領域は、前記折曲部を跨いで存在し、前記両面離型シートは、前記折曲部に倣って折り曲げられた延出部を備える発熱具を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、両面離型シートを用いることで離型シートの使用量を片面離型シート使用時の半分にできるとともに、折曲部に接着剤による皺が形成され難く、使用前・使用中における外縁域のめくれ上がりが起こり難い発熱具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、本発明の発熱具の一実施形態を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるX1−X1線断面図であり、図1(c)は、図1(a)におけるX2−X2線断面図である。
【図2】図2(a)は、図1(a)に示す状態の発熱具を展開して内面側からみた平面図であり、図2(b)は、図2(a)におけるX3−X3線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す発熱具における粘着剤の塗布領域を示す平面図である。
【図4】図4は、図1に示す発熱具を開く状態を示す説明図である。
【図5】図5(a)は、図1に示す発熱具の有する両面離型シートの折り状態を示す要部拡大断面図であり、図5(b)は、本発明の別の実施形態の発熱具の有する両面離型シートの折り状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】図6は、本発明の発熱具に好ましく用いられる発熱体を示す一部破断斜視図である。
【図7】図7は、従来の粘着発熱具の問題点を説明する図であり、図7(a)は、折り曲げられた状態の粘着発熱具の要部拡大断面図であり、図7(b)は、図7(a)の粘着発熱具を展開した際の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1(a)には、本発明の発熱具の一実施形態の平面図が示されている。図1(b)及び(c)は、図1(a)におけるX1−X1線断面図及びX2−X2線断面図である。図2(a)には、図1(a)に示す状態の発熱具を展開して内面側からみた平面図が示されており、図2(b)は、図2(a)におけるX3−X3線断面図である。図中における「Y方向」は、本実施形態の発熱具1の縦方向を示し、図中における「X方向」は、縦方向に垂直に交わる幅方向を示している。本実施形態の発熱具1は、図2に示すように、展開状態において、発熱具1をX方向に二等分する折曲部Bを軸に略左右対称に形成されている。
【0012】
本実施形態の発熱具1は、図1及び図2に示すように、第1の発熱部21aを収容した扁平状の第1の袋体1aと、第2の発熱部21bを収容した扁平状の第2の袋体1bとが、折曲部Bを介して連設されている。なお、折曲部Bは、第1の袋体1aと第2の袋体1bの一部分であり、独立した部位ではない。本実施形態の発熱具1は、図2(a),図2(b)に示すように、展開状態において、扁平状の第1の袋体1a及び扁平状の第2の袋体1bがX方向に並列配置されてなるものである。第1の袋体1aと、第2の袋体1bとは、それらの角部を除き、略矩形状であって、互いに略同形になっている。
【0013】
第1の袋体1aは、図1及び図2に示すように、第1のシート2a及び第2のシート3aを備えている。2枚のシート2a,3aは略同形である。両シート2a,3aの間には、後述する図6に示す第1の発熱部21aを内包する第1の発熱体20aが配置されている。2枚のシート2a,3aは、第1の発熱体20aよりも大きな寸法となっており、第1の発熱体20aの外周縁から外方に延出した領域において互いに接合されている。この接合によって、第1の発熱部21aを内包する第1の発熱体20aを収容する扁平状の第1の袋体1aが、両シート2a,3aによって略矩形状に形成されている。この接合は、例えば、ホットメルト型粘着剤、ヒートシール、超音波シール等の方法を単独または組合せて形成されている。このように形成されることによって、図2(a)に示すように、両シート2a,3aには、第1の発熱部21aの外周縁から外方に延出した外縁延出域4aが形成されている。なお、図3に示すように、略矩形状の第1の袋体1aの四隅のうち、第1の発熱体20aよりX方向外方にある二つの隅部のうちの一方の隅部(本実施形態においてはY方向の上方側の隅部)が略三角形状に切り欠かれていても良い。このように切り欠かれているため、後述のとおり使用前に二つ折りされている発熱具1が使用に際し展開し易い。
【0014】
発熱部21aが、後述するように粉体の形態である場合には、該粉体の性状によっては、粉体の流動により第1の発熱部21aの外周縁が明確にならない場合がある。そのような場合には、第1の発熱体20aを構成する第1のシート23a及び第2のシート24aの外周縁接合領域の内周縁を第1の発熱部21aの外周縁とする。以下に述べる第2の袋体1bについても同様である。
【0015】
第2の袋体1bも、図1及び図2に示すように、第1の袋体1aと同様の構成になっている。
【0016】
本実施形態においては、図2(a),図2(b)に示すように、展開状態において、第1の袋体1aにおける第1のシート2aと、第2の袋体1bにおける第1のシート2bとがX方向に連続する一体の連続シートであるが、別体のものでもよい。両シート2a,2bが別体のものである場合、両シート2a,2bは、同一のものでもよく、あるいは異なるものであってもよい。同様に、本実施形態においては、図2(a),図2(b)に示すように、展開状態において、第1の袋体1aにおける第2のシート3aと、第2の袋体1bにおける第2のシート3bとがX方向に連続する一体の連続シートであるが、別体のものでもよい。両シート3a,3bが別体のものである場合、両シート3a,3bは、同一のものでもよく、あるいは異なるものであってもよい。
【0017】
発熱具1は、その使用前の状態においては、図1(a)〜図1(c)に示すように、折曲部Bの位置において、第1の袋体1aと第2の袋体1bとが対向するように二つ折りされている。好ましくは、図1(a)〜図1(c)に示すように、発熱具1は、第1の袋体1aの第1のシート2a側の面と、第2の袋体1bの第1のシート2b側の面とが対向するように、発熱具1のX方向の長さを二等分する箇所に位置する折曲部Bにおいて二つ折りされている。
【0018】
発熱具1は、その使用前の状態においては、図1(a)〜図1(c)に示すように、二つ折りされた第1の袋体1aと第2の袋体1bの対向面の間に1枚の両面離型シート5を備えている。本実施形態の両面離型シート5は、図2(a),図2(b)に示すように、展開状態において、X方向の長さと、第1の袋体1a及び第2の袋体1bそれぞれの切り欠き部とを除いて、第1の袋体1a又は第2の袋体1bと略同形になっており、略矩形状に形成されている。本実施形態の両面離型シート5はまた、そのY方向の長さが第1の袋体1aのY方向の長さと略一致しており、そのX方向の長さが第1の袋体1aのX方向の長さよりも長いものである。すなわち、本実施形態の両面離型シート5は、図2(a),図2(b)に示すように、展開状態において、そのX方向の外方端部52は第1の袋体1aのX方向の外方端部と一致しているが、そのX方向の内方端部51は第1の袋体1aから折曲部Bを跨いで第2の袋体1bの領域に延出して配され、延出部6を有している。
【0019】
発熱具1は、Y方向の長さが50〜150mmであり、X方向の長さが100〜300mmであり、第1の袋体1a又は第2の袋体1bのX方向の長さが50〜150mmであることが好ましい。両面離型シート5は、図2(a)に示す折曲部Bを跨いで第1の袋体1aから第2の袋体1bの領域に延出して配されている両面離型シート5の延出部6の長さLが、製造のし易さや、使用する際に展開し易さの観点から、第2の袋体1bの発熱部21bに到達しない長さ、すなわち2〜20mmであることが好ましく、5〜10mmであることが更に好ましい。
【0020】
両面離型シート5は、図1(b),図1(c)に示すように、発熱具1の折曲部Bに倣って折り曲げられた延出部6を両面離型シート5の内方端部51に備え、延出部6は、折曲部B近辺、好ましくは発熱部21bに到達しない長さで存在する。具体的には、両面離型シート5は、図1(b),図1(c)に示すように、使用前の二つ折りされた状態において、そのX方向の内方端部51が折曲部Bを越えて延在しており、内方端部51が、折曲部Bに倣って、折り曲げられて延出部6を形成している。本実施形態の両面離型シート5の延出部6は、図1(b),図1(c)に示すように、使用前の二つ折り状態において、両面離型シート5により包囲されて形成される折曲部Bに沿った細長い中空部を形成しても良い。本実施形態の両面離型シート5に包囲されて形成される延出部6による中空部の直径は、厚み方向にかさばらず、一方で十分な皺防止効果が得られるという観点から、8〜0.1mmであることが好ましく、3〜1mmであることが更に好ましい。尚、延出部6による中空形状の直径は、最も広い位置での測定値である。
【0021】
第1の袋体1aと第2の袋体1bは、図1(b),図1(c)に示すように、二つ折り状態の対向面に粘着剤が塗布された粘着領域7を有し、対向面の粘着領域7において1枚の両面離型シート5の両面と剥離可能に粘着されている。この粘着領域7は、前記折曲部Bを跨いで存在している。本実施形態においては、二つ折りされた状態の各袋体1a,1bの対向面の発熱部と重ならない部分全体に、すなわち第1の袋体1aの第1のシート2aにおける第2の袋体1bに対向する表面であって、第1の発熱部と重ならない部分全体に粘着剤が塗布されており、第2の袋体1bの第1のシート2bにおける第1の袋体1aに対向する表面であって、第2の発熱部と重ならない部分全体に粘着剤が塗布されている。図3には、展開状態において、本実施形態の第1のシート2a,2bの表面における粘着剤の塗布領域である粘着領域7a,7bが示されている。図3は、図2(a)において、両面離型シート5を剥離した状態に対応するものである。本実施形態の粘着領域7aは、図3に示すように、二つ折りされた発熱具1を展開し第1の袋体1aを平面視した状態において、袋体1aの第1のシート2aにおける第1の発熱部21aの外周縁から外方に延出した外縁延出域4aの少なくとも一部と一致する。すなわち、粘着領域7aは、第1の発熱部21a上には重ならず粘着領域が存在せず、且つ、折曲部Bを跨いで外縁まで粘着領域が存在する。本実施形態の粘着領域7bも粘着領域7aと同様である。なお、本明細書において「粘着領域が存在せず」とは、一般的に言って、粘着剤の塗布の面積率(一定の面積中における粘着剤の塗布されている面積の割合)が10%以下、特に5%以下であるような粘着剤の塗布態様をいう。例えば、製造条件等の変動に起因して不可避的に粘着剤が塗布されることは許容する趣旨である。
【0022】
本実施形態の発熱具1は、図3に示すように、粘着領域7aが第1の発熱部21a上には重ならず、粘着領域7bも第2の発熱部21b上には重ならない。その為、本実施形態の発熱具1を使用者の肌に直接貼付した場合であっても、発汗に起因する粘着剤の粘着力低下が生じ難い。また、本実施形態の発熱具1を使用者の着衣に固定して貼付した場合であっても、発熱のために必要な酸素供給が妨げられず、熱伝達も妨げられず、粘着剤組成の部分変化や熱による粘着物性変化の影響も低く抑えられる。これらの結果、本実施形態の発熱具1によれば、使用中長時間にわたって発熱具1を、使用者の肌又は着衣に安定的に固定しておくことができる。
【0023】
発熱具1は、図1(b),図1(c)に示すように、二つ折りされた状態の各袋体1a,1bの対向面に粘着領域7を備え、粘着領域7によって、各袋体1a,1bと両面離型シート5とが剥離可能に粘着している。本実施形態の粘着領域7aは、図3に示すように、展開状態において、第1の袋体1aの第1のシート2aの表面に、X方向及びY方向それぞれの両外縁にまで達するように塗布されている。従って、発熱具1の使用前に、両面離型シート5と粘着領域7とが必要以上に容易に剥離してしまうことを効果的に防止し、更に使用時に使用者の肌から容易にめくれ上がることを効果的に防止することができる。本実施形態の粘着領域7bも同様である。
【0024】
第1の袋体1a中に収容される第1の発熱体20aについて説明する。図6には、発熱体20aの斜視図が一部切り欠いた状態で示されている。第1の発熱体20aは、発熱部21a及び発熱部21aを収容する収容体22aを備えている。収容体22aは扁平なものであり、収容体22aの輪郭が発熱体20aの輪郭をなしている。扁平な形状を有する収容体22aは、第1の面23a及びそれと反対側に位置する第2の面24aを有している。収容体22aは、第1の面23a側のシート材と第2の面24a側のシート材が、収容される第1の発熱部21aよりも大きな寸法となっており、第1の発熱部21aの外周縁から外方に延出した領域において互いに接合されることで、発熱部21aが収容される密閉空間が形成されたものである。なお、図示しないが、第2の袋体1b中に収容される第2の発熱体20bも同様の構成である。
【0025】
本実施形態の二つ折りされた状態の発熱具1の好ましい製造方法について、以下説明する。
先ず、図2(b)に示すように、X方向に連続する第1の袋体1aを構成する第1のシート2aと第2の袋体1bを構成する第1のシート2bとの連続シートと、X方向に連続する第1の袋体1aを構成する第2のシート3aと第2の袋体1bを構成する第2のシート3bとの連続シートとの間に、第1の発熱体20a及び第2の発熱体20bをX方向に間隔を空けて並置し、これら二枚の連続シートを、第1の発熱体20a及び第2の発熱体20bそれぞれの外周縁から外方に延出した領域にて接合することによって、第1の発熱部20aを収容した扁平状の第1の袋体1aと、第2の発熱部20bを収容した扁平状の第2の袋体1bとが、X方向に並列配置されてなる袋体の連続体を形成する。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、袋体の連続体である第1の袋体1a及び第2の袋体1bの連設部Bを跨いで外縁まで粘着剤を塗布し、粘着領域7a、7bとする。本実施形態においては、第1の袋体1aの第1のシート2aにおける外縁延出域4a(第1の発熱部21aと重ならない領域)に対応する位置、又は、第2の袋体1bの第1のシート2aにおける外縁延出域4b(第2の発熱部21bと重ならない領域)に対応する位置に粘着剤を塗布し、粘着領域7a、7bとする。
【0027】
次に、図2(b)に示すように、粘着剤の塗布された第1の袋体1aと第1の袋体1bの連続体上に、1枚の両面離型シート5を、折曲部B(連設部)を跨ぐように配置する。次に、配置された両面離型シート5を挟んだまま二つ折りし、折曲部Bに倣って折り曲がる延出部6を備える発熱具1を製造することができる。以上のような発熱具1の製造方法によれば、折り曲げ加工の精度を必要以上に上げること無く、折り目の部分に接着剤による皺が形成され難い二つ折りされた状態の発熱具1を製造することができる。
【0028】
尚、上記発熱具1の製造方法は、第1の袋体1aと第1の袋体1bの連続体上に、粘着剤を塗布した後に両面離型シート5を配置したものを二つ折りしているが、あらかじめ両面離型シート5に粘着剤を塗布したものを第1の袋体1aと第1の袋体1bの連続体上に配置してから二つ折りして発熱具1を製造してもよい。
【0029】
本発明の実施形態の発熱具1の形成材料について説明する。
発熱具1の有する発熱部21は、被酸化性金属粉、反応促進剤、電解質及び水を含んでいる。発熱部21は被酸化性金属が酸素と接触することによる酸化反応で生じた熱を利用して発熱する部位である。被酸化性金属粉、反応促進剤及び電解質の材料としては、当該技術分野において通常用いられている材料と同様のものを用いることができる。発熱部21は、例えば発熱シートの形態又は発熱粉体の形態であり得る。
【0030】
特に発熱部21として、多量の水蒸気の発生を伴って発熱するものを用いることができる。そのような発熱部の構成は、例えば本出願人の先の出願に係る特許第3698715号公報に記載されている。水蒸気の発生量は、例えば0.5〜12mg/3hr・cm2程度である。
【0031】
発熱体20における第1のシート23及び第2のシート24を構成するシート材の材料としては、少なくとも一部に通気性を有し、かつ上述の被酸化性金属粉等の脱落がないものが好適に用いられる。そのような材料としては、例えば微細孔を多数有する透湿性フィルムやスパンボンド不織布(S)とメルトブローン不織布(M)を複合化したSMS不織布やSMMS不織布等の繊維材料等が挙げられる。
【0032】
発熱体20を収容する袋体1を構成する第1のシート2及び第2のシート3としては、少なくとも一部に通気性を有する材料が用いられる。また、発熱具1を使用者の肌に直接貼付する場合には、風合いが良好であることが有利である。これらの観点から、各シートとしては、例えば不織布等を用いることができる。
【0033】
粘着剤としては、当該技術分野において用いられるものを用いることができ、例えば従来公知の天然または合成ゴム系、(メタ)アクリル酸エステル系、シリコーン系ウレタン系などの粘着剤が選定される。さらに、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般の粘着剤に添加されている、粘着付与剤、軟化剤、無機充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料等が添加されても良い。粘着力を変える方法としては、粘着剤の塗布量を変化させたり、粘着剤中の軟化剤の割合を変化させるなどが挙げられる。接着剤7の塗布量は、剥がれ難さと剥がし易さ、ならびに皺になり難さの観点から、30g/m2〜300g/m2であることが好ましい。
【0034】
粘着剤の塗布するパターンとしては、例えば散点状のドットパターンが挙げられる。また、スパイラル状のパターンや、一方向に延びるストライプ状のパターンを用いることもできる。特に散点状のドットパターンやストライプ状のパターンを用いると、袋体1a,1bと使用者の肌との間に、空気の流通チャネルが形成されやすいので、肌から生ずる汗の放散を効果的に行うことができ、粘着力の低下を効果的に防止することができる。このことは、特に、発熱部21が、水蒸気の発生を伴って発熱するものである場合に一層顕著となる。
【0035】
両面離型シート5としては、紙やフィルム等の基材シートの各面に、付加反応型や縮合反応型などの熱硬化性シリコーンの他に、紫外線照射(UV)法や電子線照射(EB)法によるシリコーン処理等の離型処理が施されているものを用いることができる。好ましくは、グラシン紙、クラフト紙、上質紙などの紙や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の合成樹脂フィルム及びその積層フィルムの表面に長鎖アルキル系離型剤、シリコーン系離型剤等の離型剤を塗布したものなどが挙げられる。特に、剥離後の離型シートの扱い易さの観点から、20g/m2〜60g/m2の紙(上質紙)が好ましく、剥離時の音の少なさや剥離の容易性(柔軟な変形性)の観点から、20g/m2〜55g/m2のポリエチレンフィルムを使用することが好ましい。
【0036】
上述したように、二つ折りされた状態の発熱具1は、図1(b),図1(c)に示すように、第1の袋体1a上の粘着領域7aによって両面離型シート5の一面5aと剥離可能に粘着されており、第2の袋体1b上の粘着領域7bによって両面離型シート5の他面5bと剥離可能に粘着されている。第1の袋体1a上の粘着領域7aと両面離型シート5の一面5aとの間の剥離力、又は第2の袋体1b上の粘着領域7bと両面離型シート5の他面5bとの間の剥離力は、1〜170cNであることが好ましく、2〜60cNであることが更に好ましい。また、第1の袋体1a上の粘着領域7aと両面離型シート5の一面5aとの間の剥離力と、第2の袋体1b上の粘着領域7bと両面離型シート5の他面5bとの間の剥離力とを異なるようにすることもできる。
【0037】
剥離力の測定は、エー・アンド・デイ株式会社(オリエンテック(株))のRTC−1210及び汎用試験機用データ処理システムを使用し、T−剥離法にて行う。測定は、ロードセルULZ−5L−A(5kgf)、チャック間10mm、剥離速度300mm/分で行う。1回の測定は、上位5ヶ所のピーク値の平均を算出することで得る。3サンプルの測定を行い、3測定の平均値を剥離力とする。
【0038】
次に上述した本発明の実施形態の発熱具1を使用した際の作用効果について説明する。
本実施形態の発熱具1は、図1(a)に示すように、使用前の二つ折りされた状態において、両面離型シート5に発熱具1の折曲部Bに倣って折り曲がる延出部6が形成されているので、折曲部Bに粘着剤による所謂糊溜まりができ難く、その為、接着剤による皺が形成され難く、使用前・使用中における外縁域のめくれ上がりが起こり難い。また、本実施形態の発熱具1は、図4に示すように、図1(a)に示す使用前の二つ折り状態の発熱具1の角部から、例えば、一方の手で両面離型シート5及び第2の袋体1bを把持し、他方の手で第1の袋体1aを把持して第1の袋体1aを捲ることで、第1の袋体1aから両面離型シート5の一面5aを剥離する。次に、他方の手で第1の袋体1aを把持したまま、一方の手で折曲部Bにある両面離型シート5の延出部6を把持し、両面離型シート5を捲ることで、容易に図3に示す状態となるように開くことができる。また更に、本実施形態の発熱具1は、両面離型シート5を用いることで離型シートの使用量を片面離型シートの略半分とすることができる。
【0039】
特に、本実施形態の発熱具1は、図1(a)に示すように、使用前の二つ折りされた状態において、両面離型シート5の延出部6が発熱具の折曲部Bに倣って細長い中空形状に折り曲げられていると、接着剤による皺が更に形成され難い。
【0040】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は実施形態に制限されない。
例えば、上述した発熱具1においては、図3に示すように、粘着領域7a,7bは、各袋体1a,1bを平面視して、袋体1a,1bそれぞれにおける第1発熱部21a,第2発熱部21bと重なる位置には存在しなかったが、別の実施の形態としては、これに代えて、袋体1a,1bの一方又は両方において、発熱部21a,21bと重なる位置に粘着領域7a,7bが存在してもよい。
【0041】
また、上述した発熱具1においては、図3に示すように、各袋体1a,1bがいずれも略矩形のものであったが、各袋体1a,1bはこの形状に限られない。
【符号の説明】
【0042】
1 発熱具
1a 第1の袋体
1b 第2の袋体
2a,2b 第1のシート
3a,3b 第2のシート
4a,4b 外縁延出域
5 両面離型シート
51 内方端部
52 外方端部
5a 両面離型シートの一面
5b 両面離型シートの他面
6 延出部
7 粘着領域
7a 第1の袋体側の粘着領域
7b 第2の袋体側の粘着領域
20a 第1の発熱体
20b 第2の発熱体
21a 第1の発熱部
21b 第2の発熱部
B 折曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発熱部を収容した扁平状の第1の袋体と、第2の発熱部を収容した扁平状の第2の袋体とが、折曲部を介して連設されており、
前記折曲部の位置において、前記第1の袋体と前記第2の袋体とが対向するように二つ折りされ、
前記第1の袋体と前記第2の袋体は二つ折り状態の対向面に粘着剤が塗布された粘着領域を有し、且つ、前記第1の袋体と前記第2の袋体の対向面の間に1枚の両面離型シートを備え、
前記第1の袋体と前記第2の袋体は対向面の粘着領域において前記1枚の両面離型シートの両面と剥離可能に粘着されている発熱具であって、
前記粘着領域は、前記折曲部を跨いで存在し、
前記両面離型シートは、前記折曲部に倣って折り曲げられた延出部を備える発熱具。
【請求項2】
前記粘着領域が、二つ折りされた前記発熱具を展開して平面視した状態において、前記第1の発熱部及び前記第2の発熱部の外周縁から外方に延出した外縁延出域の少なくとも一部に存在する請求項1記載の発熱具。
【請求項3】
前記延出部が、前記発熱部に到達しない長さである請求項1又は2記載の発熱具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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