説明

発熱定着ベルト及び画像定着装置

【課題】極めて均一な発熱領域を有し、抵抗発熱体層と絶縁層とが強固に一体化された発熱定着ベルトであって、耐久性が高く電力を安定して供給できる導電性塗料薄膜電極を備え、並びに電源投入からの待機時間が非常に短くクイックスタートができ、消費電力を低く抑えることができると共に、高速な定着を行うことができる安全性の高い画像定着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】発熱定着ベルトは抵抗発熱体層に給電するための一対の電極を備え、前記電極は、導電性粒子と金属補足剤とポリイミド前駆体溶液とを含有する導電性塗料をイミド転化した導電性塗料薄膜より成る電極である発熱定着ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンター等の画像形成装置の画像定着装置並びにその画像定着装置に組み込まれている定着ベルトに関し、詳しくは内周側に形成される抵抗発熱体層に給電されると、発熱して未定着トナー像を定着させることができる発熱定着ベルト及びその発熱定着ベルトを利用した画像定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置では、画像成形部において複写紙やOHP等のシート状転写材上に形成された未定着トナー像を熱定着する方法として熱ローラ方式が多く用いられてきた。しかし、省エネルギーなどの観点から近年は、図8に示されるフイルム定着方式が主流になってきている。
【0003】
このフイルム定着方式の画像形成装置70では、ポリイミド等の耐熱性フイルムの外面にフッ素樹脂等の離型性層が積層されたシームレスの定着ベルトが用いられている。その一例を図8に基づき説明する。
【0004】
フイルム定着方式の画像形成装置70では、定着ベルト71の内側にベルトガイド72及びセラミックヒーター73が配置されており、定着ベルト71を介してセラミックヒーター73に圧接される加圧ロール74との間に、未定着トナー像78が形成された複写紙77が順次送り込まれ、トナーが加熱溶融させられて複写紙上に熱定着される。このような画像形成装置70ではトナーが極めて薄いフイルム状の定着ベルト71を介してセラミックヒーターにより実質的に直接加熱されるため、定着ベルト71と加圧ロール74の接触面N(ニップ面)が瞬時に所定の定着温度に達する。したがって、このような画像形成装置70は、電源の投入から定着可能状態に達するまでの待ち時間が短く、消費電力も小さい。このため、このような画像形成装置70は、家庭用から産業用まで広く使用されている。なお、図8中、符号75はサーミスタであり、符号79は定着されたトナー像であり、符号76は加圧ロール74の芯金部である。
【0005】
ところで、このような従来のフイルム定着方式の画像形成装置70では、上述したように、セラミックヒーターを介して定着フイルム71が加熱され、その表面でトナー像が定着されるため、定着フイルムの熱伝導性が重要なポイントとなる。しかし、定着フイルムを薄膜化して熱伝導性を改善しようとすると機械的特性が低下し高速化が難しくなる問題と、セラミックヒーターが破損しやすいという問題があった。このような問題を解決するために、近年、定着ベルトそのものに発熱体を設け、この発熱体に給電することにより定着ベルトを直接発熱し、トナー像を定着させる方式が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。この方式の画像形成装置は、電源の投入から定着可能状態に達するまでの待ち時間がさらに短く、消費電力もさらに小さく、熱定着の高速化などの面からも優れている。
【特許文献1】特開2000−066539号公報
【特許文献2】特開2004−281123号公報
【特許文献3】特開平06−202513号公報
【特許文献4】特開平10−142972号公報
【特許文献5】特開2000−058228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような新方式の画像形成装置にはまだ多くの問題が山積されており、このような新方式の画像形成装置は実用化に至っていない。
【0007】
例えば、上記特許文献に記載されたベルトヒーター方式では、以下のような問題点を有する。なお、本願では電子写真画像形成プロセスの定着方式に関して記述するにあたり、図8に示す定着方式を「フイルム定着方式」、上記特許文献に記載される定着方式を「ベルトヒーター方式」、本願の方式を「発熱定着ベルト方式」と記して説明する。
【0008】
ベルトヒーター方式の定着ベルトヒーターでは、カーボン粉末や金属粉末等の導電性材料をポリイミド又はシリコーンゴム等の耐熱絶縁基材に混合して発熱層が形成される。このため、均一な発熱領域を有する発熱体を得ることが難しい。また、特許文献5には、発熱体材料として主にカーボンナノチューブとカーボンマイクコイルとから形成された薄膜抵抗発熱体と、この薄膜抵抗発熱体を用いたトナーの加熱定着用部材とが開示されている。しかしながら、発熱体材料がカーボンナノチューブやカーボンマイクロコイルのみから形成されている場合、体積抵抗率を下げるためにカーボンナノチューブ等の混合量を増加させると、発熱体の機械的特性が急激に低下するという問題があり、体積抵抗率の低い発熱抵抗体を作製することが非常に難しい。
【0009】
また、特許文献1及び3には遠心成形方法で定着ベルトヒーターを成形することが記載されている。しかし、このような成形方法では、内径の小さい(10〜20mm)定着ベルトを大量生産することが難しく、レーザービームプリンター等の低価格化に対応できないという問題がある。
【0010】
さらに、発熱層を有する管状の「ベルトヒーター方式」に電力を供給する方法は特許文献1、2、4では、発熱層に直接給電ロールやバー状電極あるいはブラシ電極などを接触させて給電する方法が記載されている。しかしながら、発熱層に直接給電部材を接触させる方法では、抵抗発熱体層の磨耗が激しく耐久性、給電の安定性について大きな問題がある。
【0011】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、極めて均一な発熱領域を有し抵抗発熱体層と絶縁層とが強固に一体化された発熱定着ベルトであって耐久性が高く電力を安定して供給できる電極を備え、並びに電源投入からの待機時間が非常に短くクイックスタートができ、消費電力を低く抑えることができると共に高速な定着を行うことができる安全性の高い画像定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る発熱定着ベルトは、少なくとも抵抗発熱体層と絶縁層と離型層とが積層された発熱定着ベルトであって、前記発熱定着ベルトは抵抗発熱体層に給電するための一対の電極を備え、前記電極は、導電性粒子と金属補足剤とポリイミド前駆体溶液とを含有する導電性塗料をイミド転化した導電性塗料薄膜より成る電極であることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明に係る発熱定着ベルトであって 前記導電性粒子は、コア粒子と、前記コア粒子を被覆する金属シェルとから形成される。
【0014】
第3発明に係る発熱定着ベルトは、第2発明に係る発熱定着ベルトであって、前記コア粒子はカーボン、ガラス、セラミックスより成る群れから選ばれる少なくとも1つであり、前記金属シェルは銀より形成される。
【0015】
第4発明に係る発熱定着ベルトは、第1〜3の発明に係る発熱定着ベルトであって、 前記金属補足剤は下記化学式(1)で表されるピリミジンチオール化合物、下記化学式(2)で表されるトリアジンジチオール化合物及びメルカプト基を有するイミダゾール化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物である。
【化1】



(式(1)中、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つはS−H又はS−Mであり、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである)
【化2】


(式(2)中、R5、R6及びR7のうち少なくとも1つはS−H又はS−Mであり、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである)
【0016】
第5発明に係る発熱定着ベルトは、第4発明に係る発熱定着ベルトであって、前記メルカプト基を有するイミダゾール化合物は、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンズイミダゾール及び2−メルカプトベンズイミダゾール−5−カルボン酸より成る群れから選ばれる少なくとも1つである。
【0017】
第6発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第5発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、前記金属補足剤は前記ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.01重量%以上10重量%以下添加されている。
【0018】
第7発明に係る発熱定着ベルトは第1発明から第6発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、前記ポリイミド前駆体溶液は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体溶液である。
【0019】
第8発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第7発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって、前記抵抗発熱体層は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質と、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子が分散されているポリイミド樹脂からなる抵抗発熱体層である。前記フィラメント状金属微粒子は、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子である。なお、フィラメント状ニッケル微粒子は図6に示される形状を呈するのが好ましい。フィラメント状ニッケル微粒子がカーボンナノファイバー等と絡まり合い、抵抗発熱体層の低抵抗化が実現されるからである。
【0020】
第9発明に係る発熱定着ベルトは、第1発明から第8発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって前記離型層は、フッ素樹脂、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つの樹脂又はゴムからなる。
【0021】
第10発明に係る発熱ベルトは、第1発明から第9発明のいずれかに係る発熱定着ベルトであって シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つのゴムから成る弾性層をさらに備え、前記離型層は、前記弾性層の外面に接するように設けられる。
【0022】
第11発明に係る画像定着装置は、第1発明から第10発明のいずれかに係る発熱定着ベルトと、前記発熱定着ベルトの電極を通じて給電するための給電手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る発熱定着ベルトは、給電するための電極が導電性塗料薄膜から成る電極であり上記構成からなるため、メルカプト基を含むイミダゾール化合物が金属捕捉剤として、また同時にイミド化剤として働くため、耐熱性が高く、かつ厚膜としても、具体的には50μm〜125μmの厚膜としても可撓性の高い導電性塗料薄膜が得られる。また、バインダー樹脂としてポリイミド前駆体溶液を用いているため、耐熱性、機械的特性及び基材との接着性に優れ、平滑で強靭な電気抵抗値の低い導電性塗料薄膜を得ることがで、接触抵抗が小さく安定した給電ができる。同時に給電部材と接触させても耐摩耗性、耐久性に優れる。さらに、表面を金属で被覆された無機微粒子を導電性微粒子として用いた場合、製造コストを大幅に低減できる。
【0024】
また、電極の厚みが薄膜であるため柔軟性に優れ発熱定着ベルトの両端部に電極を設けた場合であっても発熱定着ベルトの高速回転に追従できる。また、発熱定着ベルトの両端部に導電性塗料薄膜の電極を備えているため、発熱定着ベルトの両端部の補強層としても効果があり発熱定着ベルトの端部からの破壊をなくすことができる。
【0025】
また、電極を形成する導電性塗料薄膜のマトリックス材料はポリイミド樹脂であるため耐熱性が高く、且つ柔軟性に優れ定着ベルトとしての高速回転による繰り返し使用においても十分な耐久性を有する。
【0026】
また、本発明に係る発熱定着ベルトも抵抗発熱体層のマトリックス樹脂および絶縁層が全てポリイミド樹脂である。このため、この発熱定着ベルトは、定着温度範囲である180〜250度Cの高温領域でも連続使用が可能である。また、カーボンナノ材料とフィラメント状ニッケル微粒子との混合比を変えることによって幅広い領域で精度の高い体積抵抗率を有する発熱定着ベルトを設計することができる。さらに、本発明に係る画像定着装置では、従来のように特別なセラミックヒーター等を必要とすることなく、発熱定着ベルトの発熱層に直接給電することによって定着ベルト自体が発熱する。このため、この画像定着装置は、熱効率が高く、また、電源を投入してから待機時間がなく、クイックスタートができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は電極をベルトの外側両端部に形成した本発明の発熱定着ベルトの概略断面図である。本発明の発熱定着ベルト10は、図1に示されるように、第1絶縁層1、抵抗発熱体層2、第2絶縁層3、離型層4及びベルト両端部の外側に形成した電極5から構成される発熱定着ベルトである。
【0029】
また、図2は電極をベルトの内側に形成した本発明の別の発熱定着ベルトの概略断面図である。本発明の発熱定着ベルト20は、図2に示されるように、第1絶縁層21、抵抗発熱体層22、第2絶縁層23、離型層24及びベルト両端部の内側に形成した電極25から構成される発熱定着ベルトである。
【0030】
図1、図2において3、23の第2絶縁層と4、24の離型層の境界面にはプライマー層を設け絶縁層と離型層の接着性を安定させることが好ましい。本発明の発熱定着ベルトは抵抗発熱体層及び導電性塗料薄膜電極のマトリックス樹脂及び絶縁層はすべてポリイミド樹脂である。このような構成を採用すると、ポリイミド樹脂の耐熱性、機械的特性及び電気特性などの優れた特性を有する安全で耐久性の高い発熱定着ベルトを得ることができる。
【0031】
また、図1、図2において電極5および25は発熱定着ベルトの両端部に導電性塗料薄膜を直接形成させ電極として用いることができる。このような電極を設けることによって発熱定着ベルトの内側または外側のいずれからも個々の電極に給電部材を接触させることができ、安定して抵抗発熱体層に給電することができ、抵抗発熱体層を発熱させることができる。
【0032】
本発明の発熱定着ベルトの電極5及び25に給電する方法は、給電ロール、金属ブラシ、あるいは金属バーなどの給電部材が接触しこの電極5あるいは25に給電が行われると、この発熱定着ベルトは発熱する。なお、図1、図2に示す発熱定着ベルトの構造において第1絶縁層の熱伝導性は定着条件に関係がなくなり、発熱定着ベルトの十分な機械的特性を満たすためのみの目的で絶縁層の厚みを決定することができる。また、第2絶縁層には窒化ホウ素などの熱伝導性フィラーを混合したポリイミド樹脂絶縁層を用いることが発熱層の熱量を効率よく発熱定着ベルトの外表面まで伝導させクイックスタートあるいは省エネルギーの面からも好ましい。
【0033】
本発明の発熱定着ベルトは、レーザービームプリンターの用途では10mm〜100mmの内径のものが、また、複写機など高速定着の用途では40mm〜150mmのサイズの内径のものが好適に用いられる。
【0034】
本発明の実施の形態において、発熱定着ベルトに給電するための電極は、導電性粒子と金属補足剤とポリイミド前駆体溶液とを含有する導電性塗料をイミド転化した導電性塗料薄膜から成る一対の電極を備えている。
【0035】
本発明の導電性塗料は導電性微粒子と、金属捕捉剤と、ポリイミド前駆体溶液を含む導電性塗料であり、その製造方法はあらかじめポリイミド前駆体溶液を製作した後、導電性微粒子を混合し、次いで溶媒に溶解させた金属捕捉剤を添加して調製する一般的な方法で製造することができる。また、前記ポリイミド前駆体溶液はジアミン又はその誘導体とテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を極性溶媒中で反応させたものが好ましい。
【0036】
本発明において、前記導電性微粒子は、白金、金、銀、ニッケル、パラジウム等の導電性の高い金属微粒子であることが好ましく、コア粒子に金属シェルが被覆されている導電性粒子(以下「コア−シェル型導電性微粒子」と称する)であるのがより好ましい。
なお、コア−シェル型導電性微粒子である場合、導電性塗料材料のコスト低減、あるいは軽量化を図ることができる。また、コア−シェル型導電性微粒子においてコア粒子は特に限定されるものではないが、コスト面及び耐熱性等の特性の面からカーボン、ガラス、セラミックスなどの無機粒子であることが好ましい。また、無機微粒子としては、鱗片状、針状、樹脂状など任意の形状のものを用いることができる。また、ポリイミド前駆体溶液に混合したときの分散性、安定性及び軽量化の面からは中空状、発泡状微粒子であるのがより好ましい。
【0037】
また、金属シェルはコア粒子である無機微粒子の表面積の80%以上を銀で被覆しているのが好ましい。また金属シェルはコア粒子である無機粒子の90%以上を被覆していることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。金属シェルのコア粒子被覆率が80%未満であると、導電性が低くなるからである。金属シェルは1層であっても、2層以上であってもよい。また、本発明の性質を損なわない範囲内で、コア粒子の残りの表面が他の導電性金属で被覆されていてもよい。他の導電性金属としては、例えば、白金、金、パラジウムなどの貴金属、モリブデン、ニッケル、コバルト、鉄、銅、亜鉛、錫、アンチモン、タングステン、マンガン、チタン、バナジウム、クロムなどの卑金属が挙げられる。
【0038】
次に、コア−シェル型導電性微粒子の平均粒子径は、1μm以上50μm以下であることが好ましい。コア−シェル型導電性微粒子の平均粒子径が1μm以上であると、コア−シェル型導電性微粒子が凝集しにくく好ましい。また、コア−シェル型導電性微粒子50μm以下であると、得られる塗膜又はフイルムの表面粗度がそれほど大きくならず好ましい。
【0039】
無機微粒子の表面を金属で被覆する方法は、特に限定されず、例えば、電解めっき、無電解めっき、真空蒸着、スパッタリングなどを挙げることができる。
【0040】
本発明に用いることのできる金属捕捉剤は、下記の化学式(1)で表されるピリミジンチオール化合物及び下記の化学式(2)で表されるトリアジンチオール化合物である。
【化1】


(式(1)中、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも1つが、SH又はSMを表し、Mは、金属又は、置換若しくは無置換のアンモニウムを表す。)
【0041】
【化2】



(式(2)中、R5、R6、R7のうち少なくとも1つが、SH又はSMを表し、Mは、金属又は、置換若しくは無置換のアンモニウムを表す。)
【0042】
ピリミジンチオール化合物は、特に限定されるものではなくピリミジン骨格を有し、少なくとも1つのS−H(チオール)又は、S−M(チオールの金属塩又は、置換若しくは無置換のアンモニウム塩)を有する化合物であればよい。また、前記金属も特に限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銅などが例示される。例えば、2−メルカプトピリミジン(2MP)、2−ヒドロキシ−4−メルカプトピリミジン、4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2、4−ジアミノ−6−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−チオバルビツール酸、4−ヒドロキシ−2−メルカプト−6−メチルピリミジン、4,6−ジメチル−2−ピリミジンチオール(DMPT)、4,5−ジアミノ−2,6−ジメルカプトピリミジン、4,5−ジアミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0043】
トリアジンチオール化合物は、特に限定されるものではなくトリアジン骨格を有し、少なくとも1つのS−H(チオール)又は、S−M(チオールの金属塩又は、置換若しくは無置換のアンモニウム塩)を有する化合物であればよい。金属原子は特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銅などが例示される。例えば、2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)、2−アリルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジアリルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン(DBDMT)、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、トリチオシアヌル酸(TTCA)、トリチオシアヌル酸モノナトリウム塩、トリチオシアヌル酸トリナトリウム塩(TTCA−3Na)などが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0044】
メルカプト基を有するイミダゾール化合物として、具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール−5−カルボン酸などが挙げられる。これらのメルカプト基を有するイミダゾール化合物を単独で用いてもよいし併用してもよい。
【0045】
次に、本発明に用いることのできるポリイミド前駆体溶液は、粘度が1,000ポイズ未満であることが好ましい。1,000ポイズ以上であると、上記導電性微粒子を均一に分散させることが難しく、好ましくない。
【0046】
ポリイミド前駆体溶液の製造方法は、特に限定されず、ジアミン又はその誘導体とテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を極性溶媒中で反応させる方法が簡便でよい。
【0047】
本発明に用いることのできるジアミンは、例えば、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミンが挙げられる。また、これらを1種以上混合して反応させても何ら差し支えない。中でも好ましいジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)である。
【0048】
本発明に好適に用いることのできるテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9−ビス[4−(3,4’−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物が挙げられる。また、これらをメタノール、エタノールなどアルコール類と反応させてエステル化合物としてもよい。また、これらを1種以上混合して反応させても何ら差し支えない。中でも好ましいテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)が挙げられる。
【0049】
本発明に好適に用いることのできる極性溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライムなどが挙げられる。好ましい溶媒はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)である。これらの溶媒を単独で又は混合物としてあるいはトルエン、キシレン、すなわち芳香族炭化水素などの他の溶媒と混合して用いることができる。
【0050】
本発明の導電性塗料を製造する際に、本発明の性質を損なわない範囲内で、ポリアミドイミドやポリエーテルスルホンなどの樹脂が添加されてもかまわない。
【0051】
本発明の導電性塗料の製造において、導電性微粒子の添加方法及び金属捕捉剤の添加方法は、特に限定されない。ポリイミド前駆体溶液に添加する方法はもちろん、ポリイミド前駆体溶液を製造する際に予め添加してもよい。
【0052】
金属捕捉剤の添加量は、ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して、0.01重量%以上10重量%以下であるのが好ましい。0.01重量%未満であると、金属を捕捉することができない。また、金属補足剤の添加量がポリイミド前駆体の固形分に対して10重量%より多いと、導電性微粒子がまれに凝集することがあり、好ましくない。
【0053】
本発明の導電性塗料の製造において、本発明の性質を損なわない範囲内で、充填材、顔料、顔料分散剤、固体潤滑剤、沈降防止剤、レベリング剤、表面調節剤、水分吸収剤、ゲル化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、色分かれ防止剤、皮張り防止剤、界面活性剤、帯電防止剤、消泡剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐剤、増粘剤など公知の添加剤が添加されてもよい。
【0054】
本発明の導電性塗料薄膜は、本発明の導電性塗料から形成され、熱処理されてなることを特徴とする。
【0055】
導電性塗料から導電性塗料薄膜を成形する方法は、当業者公知の一般的方法でよく必要に応じて導電性塗料を脱泡、ろ過などの処理を行った後、前記導電性塗料をドクターブレード、スクリーン印刷、流延、所定の厚みで塗布するためにダイスを移動させて成形する方法などでその導電性塗料を塗布する。そしてその導電性塗膜を加熱乾燥し、徐々に又は段階的に300度C〜450度Cまで加熱してイミド化を進行させる。なお、このとき導電性塗料に化学量論以上の脱水剤及びイミド化触媒を加えてイミド化を進行させる化学的イミド化法を併用してもよい。本発明の導電性塗料は、基材との接着性にも優れ、基材に塗布後イミド化を完結することによって強固に一体化した導電性塗料薄膜を成形することができる。
【0056】
本発明の導電性塗料薄膜の膜厚は、任意に決定する事ができるが通常1μm〜125μm程度である。本発明の導電性塗料を用いると、厚膜が50μm〜125μmの厚膜としても可撓性の高い導電性塗料薄膜が得られる。なお、本発明において「可撓性の高い」とは、直径5mmの円柱に、導電性フイルム、又はカプトン(登録商標)フイルムやユーピレックス(登録商標)フイルムなどのフレキシブルな基板に形成した導電性塗料薄膜を巻きつけても、割れたり、クラックが生じたりするなどの不具合のないことを意味する。
【0057】
本発明の導電性塗料薄膜の体積抵抗率は、2×10−6Ωcm以上1×10Ωcm以下であるのが好ましい。導電性塗料薄膜の体積抵抗率がこの範囲であるとスクリーン印刷などで導電路を形成した場合、あるいは電気回路の給電端子接続部に塗膜として成形させ、積極的に電気を流す通電媒体、いわゆる電線あるいは電気回路として用いた場合にも優れた導電性を維持できるからである。
【0058】
次に本発明の実施の形態において、発熱定着ベルトの抵抗発熱体層では、ポリイミドからなるマトリックス樹脂中にカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子とが実質的に均一に分散されて存在している。カーボンナノ材料はカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質であることが好ましい。これらのカーボンナノ材料は、その繊維径が数nm〜数百nmであり、繊維長さが数μm〜数十μmであり、嵩密度が0.01〜0.3g/cm3であり、比表面積が10〜100m2/gである。この中でも、カーボンナノファイバーは特に好ましい導電性物質であり、特に、繊維径が20〜200nmであり、繊維長が0.1〜10μmであるものが好ましい。ポリイミド前駆体溶液に均一に分散させやすいからである。
【0059】
また、本発明の実施の形態では、上述したように、抵抗発熱体層にはカーボンナノ材料と共にフィラメント状金属微粒子を含むことが必須条件である。レーザービームプリンターなどの画像定着装置では、A4サイズ用紙上の未定着トナー像を、1分間に30〜40枚の速度で熱定着させる能力が要求されるため、定着部では500〜1500Wの発熱量が必要であり、かつ、均一な発熱面が要求されるからである。なお、このような発熱特性をカーボンナノ材料のみでコントロールすることは困難である。なぜならば、カーボンナノ材料のみを混合して数オームレベルの低い電気抵抗を得るためには、ポリイミド前駆体の固形分に対して多量のカーボンナノ材料を混合させる必要があり、このような混合量では抵抗発熱体層の機械的特性を著しく低下させることになるからである。したがって、このような特性に必要な発熱量と十分な機械的特性とを両立させるためには、カーボンナノ材料とともに、カーボンナノ材料よりも導電性の高いフィラメント状金属微粒子を含むことが必須条件である。
【0060】
フィラメント状金属微粒子としては、針状結晶状の銀、アルミニウム及びニッケルなどが挙げられる。より好ましくはストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子である。このニッケル微粒子は、平均粒子径が0.1〜5.0μmであり、比表面積が1.0〜100m2/gであり、図6の写真のようにストランドが三次元的に連なった形状を有し、カーボンナノ材料と線状に絡み合うことによって、低い発熱抵抗体層を形成でき、均一な体積抵抗率を有する抵抗発熱体層を成形できるからである。
【0061】
また、本発明の実施の形態において、抵抗発熱体層中の導電性物質は一定方向に配向して存在していることが好ましい。本発明で用いられるカーボンナノ材料は、繊維径が20〜200nmであり、繊維長さが0.1〜10μm形状である。これらのカーボンナノ材料は、ポリイミド前駆体溶液に混合されて単純にガラス板上に流延されると、縦横の方向がまちまちになる。そして、この状態でポリイミド前駆体がイミド転化されると、形成されるフイルムの抵抗値のばらつきが大きくなるという問題がある。また、カーボンナノ材料を配向させる場合に比べてカーボンナノ材料をより多く混合する必要があり、必然的に抵抗発熱体層の機械的特性の低下を招くことになる。
【0062】
したがって、これらのカーボンナノ材料は略一方向、すなわちカーボンナノ材料の個々の繊維がその長さ方向に束ねられたように配向していることが好ましい。このようにすれば、少ないカーボンナノ材料混合量で電気抵抗値を下げることができ、かつ、均一な発熱特性が得られるからである。
【0063】
なお、導電性組成物を円筒形金型の外面に塗布し、図7のようにリング状ダイスを塗布物の表面に走らせて組成物の塗布被膜を形成させると、カーボンナノ材料やストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子はリング状ダイスが走行した方向に向かって略一方向に並び、配向された状態となる。その後、導電性組成物を乾燥し、イミド化を完結することによって、カーボンナノ材料やニッケル微粒子が配向したままの状態で固形化した最も好ましい抵抗発熱体層を成形することができる。
【0064】
このように、カーボンナノ材料を均一に配向させ、且つ、カーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子を混在させることによって、導電性物質の混合量は少ない量で体積抵抗率の微調整が可能になり、抵抗発熱体層の機械的特性を低下させることなく、均一な体積抵抗率と、優れた耐久性を有する発熱定着ベルトを得ることができる。
【0065】
また、本発明の実施の形態において、導電特性等の改善を目的として、各種形状粒径の黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、ニッケル粉や銀粉などの金属粒子、ステンレス粉などの金属合金粒子、炭化タングステンや炭化タンタル、硼化タングステン等の金属間化合物、銀コートカーボンなどの金属被覆粉等の導電性粒子、熱伝導向上等を目的として、アルミナ、窒化硼素、窒化アルミニウム、炭化珪素、酸化チタン、シリカ等の非導電性粒子、機械的特性向上等を目的としてチタン酸カリウム繊維、針状酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカ、テトラポット状酸化亜鉛ウィスカ、セピオライト、ガラス繊維等の繊維状粒子、モンモリロナイト、タルク等の粘度鉱物を本来の目的を損なわない程度に加えても差し支えない。
【0066】
本発明の好ましい実施の形態においては、抵抗発熱体層中のカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子との存在量は、ポリイミド固形分に対して5〜50vol%であることが好ましい。より好ましくは10〜40vol%の範囲である。存在量が5vol%未満であると体積抵抗率のバラつきが大きく、均一な発熱領域を得ることが難しい。一方、存在量が50vol%以上になると、抵抗発熱体層の機械的特性及び耐久性が低下し好ましくない。また、カーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子との混合比率は、抵抗発熱体層の体積抵抗率及び所望する発熱量等によって任意に選定できる。発熱定着ベルトでの発熱量はおよそ500〜1500Wの範囲であるため、発熱定着ベルトの内径、厚み、長さ(複写紙サイズA4またはA3)などの仕様によって調節することができる。
【0067】
また、本発明の実施の形態において、抵抗発熱体層のマトリックス樹脂及び絶縁層は、少なくとも一種の芳香族ジアミンと少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物が有機極性溶媒中で重合させられて得られるポリイミド前駆体を、イミド転化してなるポリイミド樹脂から成ることが好ましい。
【0068】
また、本発明の実施の形態において、芳香族ジアミンは、パラフェニレンジアミンであり、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることが特に好ましい。これらのモノマーから得られるポリイミド樹脂は機械的特性に優れ強靭であり、抵抗発熱体層の温度が上昇しても熱可塑性樹脂のように軟化、あるいは溶融することが無く、優れた耐熱性を有するからである。
【0069】
これらのポリイミド前駆体溶液は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機極性溶媒中で通常は、90℃以下で反応させることによって得られ、溶媒中の固形分濃度は、導電性物質の混合割合や、あるいは塗布の条件によって所望の濃度を得ることができる。その好ましい範囲は10〜30質量%である。
【0070】
また、有機極性溶媒中で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させると、その重合状況によって溶液の粘度が上昇するが、使用に際しては溶媒で希釈して所望の粘度にしてから使用することができる。製造条件や作業条件によって通常1〜5000ポイズの粘度で使用される。
【0071】
なお、金型の表面にキャスティング方法で塗布するためには、導電性組成物の粘度が10〜1500ポイズの範囲であることが好ましい。より好ましくは50〜1000ポイズの範囲である。また、本発明の発熱定着ベルトにおいて抵抗発熱体層の外側に絶縁層が設けられる場合、その絶縁層には窒化硼素、チタン酸カリウム、酸化チタン、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素等の電気絶縁性を有する熱伝導性物質を混合することが好ましい。熱伝導性を付与したり均一な発熱面を得たりすることがきるからである。また、絶縁層を成形するための絶縁ポリイミド前駆体溶液の粘度も50〜1000ポイズであることが好ましい。
【0072】
また、本発明の実施の形態において、発熱定着ベルトの離型層は、フッ素樹脂、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つの樹脂又はゴムから成ることが好ましい。モノクロプリンターに用いられる発熱定着ベルトにおいては、フッ素樹脂から成る離型層が好ましい。また、フッ素樹脂の中ではポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を単体で又は混合して用いることがより好ましい。
【0073】
フッ素樹脂からなる離型層は、5〜30μmの厚みであることが好ましく、10〜20μmの厚みであることがより好ましい。また、絶縁層とフッ素樹脂との層間には接着性を安定させるためにプライマーを用いることが好ましい。また、そのプライマー層の厚みは2〜5μmであることが好ましい。
【0074】
所望する電気発熱量を得るために必要な発熱定着ベルトの抵抗発熱体層の厚みは、導電性物質の混合量、発熱ベルトの内径などの要素から設定することができる。また、絶縁層は定着ベルトの機械的特性を維持する層であり20μm〜80μmの厚みであることが好ましい。絶縁層の機械的特性と熱伝導特性とは一般的に相反する特性であるが、絶縁層に窒化硼素などの熱伝導性物質を混合し厚みを最適化すれば両特性を満たすことができる。
【0075】
また、フルカラー画像を熱定着する場合には、赤、青、黄、黒の4色のトナーを十分に熱溶融させ混色し、中間色や濃淡を鮮明に定着する必要がある。このため、定着ベルトの表面に近いところに弾性層が形成されるのが好ましい。具体的には、図1に示される発熱定着ベルトでは、絶縁層3の外面または、抵抗発熱体層の表面に直接シリコーンゴム等の弾性層を設け、さらにその弾性層の外面にフッ素樹脂等の離型層を設けることが好ましい。
【0076】
また、この弾性層は、ゴム硬度の低く柔らかいものが好ましい。具体的には、例えばJIS−A硬度で3〜50度のシリコーンゴムなどが好適である。弾性層の厚さは100〜500μmの範囲が好ましい。また、本発明においては、定着ベルトそのものが給電によって発熱するため、絶縁層、弾性層及び離型層が積層された構造であっても発熱効率が高く、定着ムラや光沢ムラのない、高い画像品質を得ることができる。
【0077】
さらにまた、絶縁層、抵抗発熱体層、フッ素樹脂離型層を成形する場合において、抵抗発熱体層、絶縁層をそれぞれ半硬化の状態で積層させ、その外面にフッ素樹脂ディスパージョン等を塗布し、乾燥後、抵抗発熱体層、絶縁層の2層のイミド化の完結とフッ素樹脂の焼成とを同時に行うことが好ましい。各層の接着力を高めるこができるからである。ポリイミドのイミド化温度及びフッ素樹脂の焼成温度は、いずれも350度C〜400度Cの高温下での処理になるため、これらを同時に処理することで各熱処理工程を短縮でき、製造時の熱効率を高めることができるからである。なお、絶縁層の外面にフッ素樹脂離型層を成形させる場合、その接着強度を安定させるために、プライマー層を介在させることが好ましい。
【0078】
なお、半硬化の状態とは、導電性組成物あるいは絶縁ポリイミド前駆体溶液が80〜120度Cの温度で乾燥された後、200〜250度Cまでの温度で加熱された状態をいう。なお、かかる場合、導電性組成物中のポリイミド前駆体は、イミド化が完結する前の状態にある。また、この状態になるまでにかかる処理時間は30分〜2時間の範囲である。
【0079】
次に、本発明の発熱定着ベルトを用いた画像定着装置の一実施形態を図4に基づき説明する。この定着装置は、発熱定着ベルト31の両端部に設けた一対に電極34、発熱定着ベルト31の内側に配置される耐熱絶縁性樹脂からなるベルト支持体32と、加圧ロール36とから構成される。発熱定着ベルトに給電するための一対の電極34は、ロール給電端子33と接触し発熱定着ベルトの内層の抵抗発熱体層に給電がなされる。なお、図3中、符号37は加圧ロールのシャフトであり、その加圧ロールのシャフト37は駆動モーター(図示せず)に連結されている。また、符号38は電源であり、符号39はリード線である。また、符号35は耐熱絶縁性樹脂からなるベルトガイド板であり、そのベルトガイド板35は発熱定着ベルトが蛇行した場合のストッパーの役割を担う。ベルト支持体32及びベルトガイド板35の材料としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂が用いられることが好ましい。なお、(b)図は(a)図のI−I間の概略断面図である。
【0080】
本願の画像定着装置では、駆動源を持つ加圧ロールによって、加圧ロールと圧接された発熱定着ベルトが従動し、加圧ロールと定着ベルトとのニップ部Nに、未定着のトナー像41が形成された複写紙40が順次送り込まれ熱定着がなされる。
【0081】
以下に実施例により、さらに具体的に説明する。本発明の評価は下記に示される測定器を用い下記に示される条件下で行った。
【0082】
(1)体積抵抗率の測定
デジタルマルチメーターModel7562(横河電気製)を用い、4線式プローブにより発熱体の体積抵抗率を測定した。
【0083】
(2)温度分布の測定
サーモトレーサTH1101(日本電気三栄製)を用いて測定した。
【0084】
本発明で用いた導電性塗料は以下の実施例に基づき作成した。なお導電性の評価は、別途記載が無ければ、ガラス板上にキャストした後、乾燥炉で120度C30分、200度C30分乾燥後離型し、次いで金枠に固定し250度C30分、300度C30分、350度C30分順次加熱してイミド化して導電性フイルムを作成し評価した。
(1)体積抵抗率は三菱化学製ロレスタ−GP MCP−T610を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。
(2)可撓性
直径5mmの円柱に、導電性フイルム、又はカプトンフィルムやユーピレックスフィルムなどのフレキシブルな基板に形成した該導電性塗膜を巻きつけたとき、割れたり、クラックが生じたりするなどの不具合のない場合、○とした。割れたり、クラックが生じたりした場合、△とした。また、そもそも導電性塗膜が形成できない場合、×とした。なお、各実施例の評価結果は表1、表2、表3に示す。
【実施例1】
【0085】
ポリイミド前駆体溶液RC5063((株)アイ.エス.テイ製、組成BPDA/PPD、固形分17.5重量%)、40gに銀被覆カーボン粉8.77g(AG/GCM−10、三菱マテリアル製、平均粒子径10μm)を加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学製)に2−メルカプトピリミジン(2MP)(和光純薬製)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え、8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0086】
ポリイミド前駆体溶液RC5019((株)アイ.エス.テイ製、組成PMDA/ODA、固形分15.5重量%))、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプトピリミジン(2MP)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0087】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉8.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに4,6−ジメチルピリミジン−2−チオール(DMPT)(和光純薬製)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0088】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに4,6−ジメチルピリミジン−2−チオール(DMPT)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0089】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉8.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)(Alfa Aesar製)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例6】
【0090】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例7】
【0091】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉8.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン(DBDMT)(和光純薬製)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例8】
【0092】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン(DBDMT)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例9】
【0093】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉8.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンにトリチオシアヌル酸(TTCA)(和光純薬製)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例10】
【0094】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンにトリチオシアヌル酸(TTCA)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例11】
【0095】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉13.15gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例12】
【0096】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉11.65gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例13】
【0097】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉5.64gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例14】
【0098】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉4.99gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表1に示す。
【実施例15】
【0099】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉8.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.0035g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.05重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表2に示す。
【実施例16】
【0100】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.0031g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.05重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表2に示す。
【実施例17】
【0101】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン(DBDMT)0.37gポリイミド前駆体溶液の固形分に対して6.0重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表2に示す。
【実施例18】
【0102】
500mlセパラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン326.96gと4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA;和光純薬製)27.99gを投入し、全て溶解するまで攪拌し、次いで3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA;ダイセル化学工業製)45.05gを投入し24時間攪拌して固形分が17重量%であるポリイミド前駆体溶液を作製した。このポリイミド前駆体溶液40gに実施例1の銀被覆カーボン粉8.52gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.017g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表2に示す。
【実施例19】
【0103】
500mlセパラブルフラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬製)31.03g、エタノール(和光純薬製)8.82gと3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物30.84gを投入し、80度Cで2時間撹拌して全て溶解させた。次いで4,4’−ジアミノジフェニルエーテル19.16gを投入し80度Cで2時間撹拌して固形分が46.7重量%であるポリイミド前駆体溶液を作製した。このポリイミド前駆体溶液5gに実施例1の銀被覆カーボン粉2.92gを加え15分間攪拌した。次いで0.5gのN,N−ジメチルアセトアミドに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.0023g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.1重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性ペーストを得た。該導電性塗料をユーピレックスフィルム(宇部興産製、厚さ50μm)上に流延して、120度C30分、200度C30分乾燥後、250度C30分、300度C30分、350度C30分順次焼成し、ユーピレックスフィルム上に導電性塗膜を形成した。結果を表2に示す。
【実施例20】
【0104】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに銀被覆中空ガラス粉(AG/GB、三菱マテリアル製、平均粒子径30μm)2.5gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表2に示す。
【実施例21】
【0105】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例20の銀被覆中空ガラス粉2.22gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表2に示す。
【実施例22】
【0106】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、5gに銀粉(AgC―A、福田金属箔紛製、
平均粒子径3.1μm)4.07gを加え15分間攪拌した。次いで2.5gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.0019g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して、導電性塗料を得た。該導電性塗料をカプトンフィルム(デュポン製,厚さ2mil)上に流延して、120度C30分、200度C30分乾燥後、250度C30分、300度C30分、350度C30分、400度C60分順次焼成し、カプトンフィルム上に導電性塗膜を形成した。結果を表2に示す。
【実施例23】
【0107】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、5gに銀粉(AgC―A、福田金属箔紛製、平均粒子径3.1μm)4.71gを加え15分間攪拌した。次いで2.5gのN−メチル−2−ピロリドンに2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)0.0022g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して、導電性塗料を得た。該導電性塗料を実施例22と同様に成膜、熱処理し、カプトンフィルム上に導電性塗膜を形成した。結果を表2に示す。
【実施例24】
【0108】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、5gに銀粉(AgC―A、福田金属箔製、
平均粒子径3.1μm)4.07gを加え15分間攪拌した。次いで2.5gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプトピリミジン(2MP)0.0019g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して、導電性塗料を得た。該導電性塗料を実施例22と同様に成膜、熱処理し、カプトンフィルム上に導電性塗膜を形成した。結果を表2に示す。
【実施例25】
【0109】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、5gに銀粉(AgC―A、福田金属箔製、
平均粒子径3.1μm)4.71gを加え15分間攪拌した。次いで2.5gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプトピリミジン(2MP)0.0022g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して、導電性塗料を得た。該導電性塗料を実施例22と同様に成膜、熱処理し、カプトンフィルム上に導電性塗膜を形成した。結果を表2に示す。
【実施例26】
【0110】
ポリイミド前駆体溶液RC5063、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉8.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンにトリチオシアヌル酸トリナトリウム塩(TTCA−3Na)の15重量%水溶液(Fluka製)0.114g(トリチオシアヌル酸トリナトリウム塩が、ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表2に示す。
【実施例27】
【0111】
ポリイミド前駆体溶液RC5019、40gに実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで10gのN−メチル−2−ピロリドンにトリチオシアヌル酸トリナトリウム塩(TTCA−3Na)の15重量%水溶液0.128g(トリチオシアヌル酸トリナトリウム塩が、ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性塗料を作成し、そしてこの導電性塗料を熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表2に示す。
【実施例28】
【0112】
40gのポリイミド前駆体溶液RC5063に実施例1の銀被覆カーボン粉8.77gを加え15分間攪拌した。次いで、この銀被覆カーボン粉含有ポリイミド前駆体溶液に、10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプトベンズイミダゾール(2MBZ)(和光純薬製)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性ペーストを得た。そして、この導電性ペーストを熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表3に示す。
【実施例29】
【0113】
40gのポリイミド前駆体溶液RC5019に実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで、この銀被覆カーボン粉含有ポリイミド前駆体溶液に、10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプトベンズイミグゾール(2NBZ)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性ペーストを得た。そして、この導電性ペーストを熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表3に示す。
【実施例30】
【0114】
40gのポリイミド前駆体溶液RC5063に実施例1の銀被覆カーボン粉8,77gを加え15分間攪拌した。次いで、この銀被覆カーボン粉含有ポリイミド前駆体溶液に、10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプト−1−メチルイミダゾール(2MMZ)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性ペーストを得た。そして、この導電性ペーストを熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表3に示す。
【実施例31】
【0115】
40gのポリイミド前駆体溶液RC5019に実施例1の銀被覆カーボン粉7.77gを加え15分間攪拌した。次いで、この銀被覆カーボン粉含有ポリイミド前駆体溶液に、10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプト−1一メチルイミダゾール(2MMZ)0.016g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加8時間攪拌して導電性ペーストを得た。そして、この導電性ペーストを熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表3に示す。
【実施例32】
【0116】
40gのポリイミド前駆体溶液RC5063に実施例20の銀被覆中空ガラス粉2.5gを加え15分間攪拌した。次いで、この銀被覆中空ガラス粉含有ポリイミド前駆体溶液に、10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプトベンズイミダゾール(2MBZ)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性ペーストを得た。そして、この導電性ペーストを熱処理して可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表3に示す。
【実施例33】
【0117】
40gのポリイミド前駆体溶液RC5019に実施例20の銀被覆中空ガラス粉2.22gを加え15分間攪拌した。次いで、この銀被覆中空ガラス粉含有ポリイミド前駆体溶液に、10gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプトベンズイミダゾール(2MBZ)0.018g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性ペーストを得た。そして、この導電性ペーストを熱処理して、可撓性の高い導電性フイルムを得た。結果を表3に示す。
【実施例34】
【0118】
500mlセパラブルフラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬製)31.03g、エタノール(和光純薬製)8.82g及び3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物30.84gを投入し、80度Cで2時間攪拌して全て溶解させた。次いで、このテトラカルボン酸エステル化合物溶液に、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル19.16gを投入し80度Cで2時間撹拝して固形分が46.7重量%であるポリイミド前駆体溶液を作製した。そして、このポリイミド前駆体溶液5gに実施例1の銀被覆カーボン粉2.92gを加え15分間攪拌した。次いで、この銀被覆カーボン粉含有ポリイミド前駆体溶液に、0.5gのN,N−ジメチルアセトアミドに2−メルカプトベンズイミダゾール(2MBZ)0.0023g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.1重量%)を溶解させた溶液を加え8時間攪拌して導電性ペーストを得た。そして、この導電性ペーストをユーピレックスフィルム(宇部興産製、厚さ50μ)上に流延して、1200度C30分、200度C30分乾燥後、250度C30分、300度C30分、350度C30分順次焼成し、ユーピレックス(登録商標)フイルム上に導電性塗膜を形成した。結果を表3に示す。
【実施例35】
【0119】
5gのポリイミド前駆体溶液RC5019に実施例22の銀粉4.07gを加え15分間攪拌した。次いで、この銀粉含有ポリイミド前駆体溶液に、2.5gのN−メチル−2−ピロリドンに2−メルカプトベンズイミダゾール(2MBZ)0.0019g(ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.25重量%)を溶解させた溶液を加え8時間撹絆して、導電性ペーストを得た。そして、この導電性ペーストをカブトン(登録商標)フイルム(デュポン製,厚さ50μm)上に流延して、120度C30分、200度C30分乾燥後、250度C30分、300度C30分、350度C30分、400度C60分順次焼成し、カブトンフイルム上に導電性塗膜を形成した。結果を表3に示す。
【表1】













【表2】













【表3】

【実施例36】
【0120】
本実施例では、以下に示すようにして図1に示される発熱定着ベルトを製作した後、その発熱定着ベルトの定着テストを行った。
【0121】
(1)抵抗発熱体層用導電性組成物の作製
ポリイミド前駆体溶液(ポリイミドワニス「Pyre−ML RC5063」,I.S.T社製)を用意した。このポリイミド前駆体溶液はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物「BPDA」とパラフェニレンジアミン「PPD」とを重合したものであり、固形分濃度は17.5wt%であった。そして、このポリイミド前駆体溶液の固形分に対してカーボンナノファイバー(VGCF−H、昭和電工製)を20vol%、フィラメント状ニッケル微粒子(TYPE210、インコ社製)を13vol%、容器に投入し1時間攪拌した後、その内容物を150番のSUSメッシュで濾過して粘度(23度C、B型粘度計による)800ポイズの抵抗発熱体層組成物を調製した。なお、カーボンナノファイバー(VGCF−H)の真密度は2.0g/cm3であり、フィラメント状ニッケル微粒子(TYPE210)の真密度は8.9g/cm3である。
【0122】
(2)第1絶縁層用ポリイミド前駆体溶液の作製
第1絶縁層のためのポリイミド前駆体溶液としてポリイミドワニス「Pyre−ML RC5063」(I.S.T社製)固形分濃度は17.5wt%、粘度(23度C、B型粘度計による)850ポイズを用意した。
【0123】
(3)第2絶縁層用ポリイミド前駆体溶液の作製
第2絶縁層のためのポリイミド前駆体溶液としてポリイミドワニス「Pyre−ML RC5063」(I.S.T社製)を用意した。そして、そのポリイミド前駆体溶液に、窒化硼素粉末(三井化学「MBN−010T」)を、ポリイミド前駆体溶液の固形分濃度に対して20wt%混合して絶縁層用ポリイミド前駆体溶液を調製した。23度C、B型粘度計による粘度は880ポイズに調製した。
【0124】
(4)第1絶縁層の成形
外径が30mmであり長さが500mmであるアルミニウム製円筒状金型の表面に、酸化珪素コーティング剤をディッピング法によりコーティングして焼付けてアルミニウム製円筒状金型を酸化珪素膜で被覆した。なお、この円筒状金型の平均表面粗度はRz0.2μmであった。次いで、図7に示す浸漬キャスティング方法により、(2)項で調製した第1絶縁層用ポリイミド前駆体溶液64に金型61を下部から400mm部分まで浸漬して金型61に発熱層用導電組成物64を塗布した後、その後リング状ダイス62を金型61の上部から挿入して走行させ、イミド転化後の厚みが70μmになるように金型61の外側に第1絶縁層キャスト膜63を形成した。
【0125】
その後、第1絶縁層キャスト膜63が形成された金型を120度Cのオーブンに入れ60分間乾燥させた後、200度Cの温度まで30分間で昇温させ、同温度で15分間保持してオーブンから取り出し、室温(25度C)まで冷却し半硬化第1絶縁層ベルトを得た。
(5)抵抗発熱体層の成形
次に、(4)項の半硬化第1絶縁層ベルトが成形された金型を(1)項で調製した発熱層用導電組成物中に浸漬し、図7の浸漬キャスティング方法でイミド転化後の厚みが35μmになるようにリング状ダイスでキャスティング成形した。次いで、第1絶縁層の熱処理と同じようにこの金型を120度Cのオーブンに入れ60分間乾燥させた後、200度Cの温度まで30分間で昇温させ、同温度で15分間保持し、絶縁層の外面に半硬化状態導電性層が積層された半硬化導電性層積層ベルトを得た。
【0126】
(6)第2絶縁層の成形
次に、(5)項の半硬化導電性層積層ベルトの両端部をマスキングして(3)項で調製した第2絶縁層用ポリイミド前駆体溶液中に浸漬し、図7の浸漬キャスティング方法でイミド化後の厚みが15μmになるように半硬化第2絶縁層キャステト膜を成形した。次いで、抵抗発熱体層の熱処理と同じようにこの金型を120度Cのオーブンに入れ60分間乾燥させた後、200度Cの温度まで30分間で昇温させ、同温度で15分間保持し、半硬化導電性層積層の外面に半硬化状態の第2絶縁層が積層された半硬化第2絶縁層積層ベルトを得た。
【0127】
(7)導電性塗料薄膜電極の成形
(6)項で作製した半硬化第2絶縁層積層ベルトの両端部の導電性層が露出されている部分に実施例1で作成した導電性塗料を30μmの厚みに成形し乾燥炉で120度C30分、200度C30分乾燥、次いで250度C30分加熱して半硬化導電性塗料薄膜電極成形ベルトを得た。
【0128】
(8)フッ素樹脂プライマー層の成形
(7)項で作製した半硬化導電性塗料薄膜成形ベルトの電極露出部をマスキングしてフッ素樹脂プライマー液に浸漬し所定の速度で引上げることによりフッ素樹脂プライマー液を約4μmの厚みにコーティングした後、150度Cの温度で20分間乾燥して再び常温まで冷却しプライマー成形ベルトを得た。
【0129】
(9)離型層の成形
次に、発熱定着ベルトの離型層材料としてのPTFEディスパーション(デュポン社製:「テフロン(登録商標)」855−510)に、(8)項においてフッ素樹脂プライマー液を塗布されたプライマー成形ベルトの下部のみマスキングし、上部はプライマー層が塗布されている位置まで浸漬し、その後所定の速度で引き上げ、PTFEディスパーションを15μmの厚みにコーティングしフッ素樹脂塗布ベルトを得た。その後、このフッ素樹脂塗布ベルトのマスキングを外し200度Cで10分間乾燥した後、400度Cまで30分間で昇温し、同温度で20分間加熱してPTFE樹脂の焼成と、半硬化状態の抵抗発熱体層、第1、第2絶縁層及び導電性塗料薄膜電極のイミド化を同時に完結し、離型層積層ベルトを得た。
【0130】
この離型層積層ベルトを図1に示す、この発熱定着ベルトの内径は30mmであり、ベルト内側の第1絶縁層の厚みは約70μmであり、発熱層2の厚みは約35μmであり、第2絶縁層3は約15μmであり、最外層の離型層は約15μmであり、総厚みは140μmであった。
【0131】
(10)発熱定着ベルトの評価
(10−1)体積抵抗率の測定
発熱定着ベルトを両端の電極部長さ各25mmを含む全長285mmの長さに切断し、デジタルマルチメーターModel7562を用いて体積抵抗率を測定した。発熱定着ベルトの長さ方向の体積抵抗率は36×10-4Ωcmであった。
【0132】
(10−2)発熱温度分布の測定
発熱定着ベルト両端に給電端子を取り付け図5に示される方法で発熱テストを行った。給電端子は、発熱定着ベルトの両端の導電性塗料薄膜電極にクリップ固定した。図5に示されるように、電源51には可変電圧調整器52を接続し、その電源から電圧を設定しながら導電性塗料薄膜電極5に給電した。まず、始めにサーモトレーサを標準モードにして、発熱定着ベルトの表面温度を観測しながらベルトの表面(離型層表面)が220度Cとなる様に可変電圧調整器の出力電圧を調整し、その表面が220度Cとなった以降はこの状態で給電を続け、そのときの温度分布を測定した。この時の出力電圧は45Vであった。その後、給電を停止し、発熱定着ベルトが室温になるまで自然冷却した。
【0133】
次に、サーモトレーサをタイムトレースモードに切り替えて通電開始から10秒間の発熱定着ベルトの温度上昇変化を観測し記録した。記録データから通電開始10秒後の長さ方向の発熱体表面温度を読み取ると最高温度210.8度Cであり、最低温度は208度Cであり、温度分布は3度C以内であった。すなわち、均一な発熱上昇特性を確認することができた。特に、発熱定着ベルトの給電端子間の温度差はほとんど無く、非常に均一な発熱特性が得られた。
【0134】
(10−4)画像定着装置に組み込み評価
発熱定着ベルトを図4に示す画像定着装置に組み込み、トナー像の定着テストを行った。定着温度はサーミスタで200度Cに設定し、通紙テストをおこなったところ、電源投入から瞬時に定着ができ鮮明な定着画像が得られた。また、電極部でも磨耗や接触不良もなく安定した給電ができた。
【実施例37】
【0135】
本実施例では、シリコーン弾性層が成形された発熱ベルトを説明する。
(1)発熱ベルト中間体の作製
実施例36の(7)項で作製した半硬化導電性塗料薄膜電極成形ベルトをさらに400度Cまで加熱することによりイミド化を完結した発熱定着ベルト中間体の導電性塗料薄膜電極成形ベルトを得た。但し、導電性塗料は実施例23で作製した塗料を用いた。
【0136】
(2)シリコーンゴム弾性層の成形
発熱定着ベルト中間体の導電性塗料薄膜電極成形ベルトの抵抗発熱体の露出部分をマスキングし第2絶縁層の表面にプライマーを塗布した。具体的には、プライマーとしてGE東芝シリコーン社製商品名「XP−81−405」のA及びB2液を予め1:1の割合で混合したものを、発熱定着ベルト中間体の絶縁層の外面に刷毛で均一に塗布した後、その発熱定着ベルト中間体を室温で20分乾燥した後、150度Cのオーブンに入れ、20分間乾燥した。その後、リング状ダイスを用いその発熱定着ベルト中間体のプライマーを塗布した面の外側に液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製商品名「XE15−B7354」A及びB2液を予め1:1の割合で混合した液状ゴム)を300μmの厚みで塗布した。その後、150度Cの温度で10分間一次加硫を行い、マスキングを外し、さらに200度Cの温度で4時間、その液状シリコーンゴムの二次加硫を行った。その結果、発熱定着ベルト中間体の外面に300μmの厚みでシリコーンゴムを成形した弾性層積層ベルトが作製された。同加硫条件で作製したテストピースのゴム硬度は30度であった。
【0137】
(3)弾性層積層ベルト外面の離型層成形
弾性層積層ベルトのシリコーンゴム表面を#500のサンドペーパーで軽く粗らし、表面をアルコールで洗浄した。次いで、そのシリコーンゴム表面に液状プライマー(三井デュポンフロロケミカル社製PR−990CL)を塗布し、室温で10分乾燥した。次いで、その弾性層積層ベルトを、粘度200センチポイズに調整したPFAディスパーション(デュポン社製商品名PFA920HPプラス「ENA−162−8」)の中に浸漬した後、その弾性層積層ベルトを所定の速度で引上げ、離型層の最終の厚さが15μmになるように弾性層積層ベルトにPFAディスパーションをコーティングし、その弾性層積層ベルトを常温で30分乾燥した後、330度Cのオーブンに入れ、15分間焼成することにより目的とする弾性層が積層された発熱定着ベルトを作製した。
【0138】
この発熱定着ベルトは内径が30mmであり総厚みが440μmであった。この発熱定着ベルトを本発明の画像定着装置に組み込み、フルカラー画像の熱定着を行ったところ良好な画像が得られた。すなわち、この発熱定着ベルトがフルカラー画像の定着ベルトとして好適に用いることができることが確認された。
【実施例38】
【0139】
本実施例では図2に示す導電性塗料薄膜電極が発熱定着ベルトの内側に形成された発熱定着ベルトについて説明する。
(1)第1絶縁層の成形
実施例36の(4)項と同じ条件で半硬化第1絶縁層ベルトを得た。
【0140】
(2)発熱層の成形
次に、本実施例(1)項で作製した半硬化第1絶縁層ベルトの金型の下部から30mm部分の第1絶縁層を切り取り実施例36(5)項と同じ条件で半硬化導電性層積層ベルトを作製した。但し、半硬化第1絶縁層ベルト上部は金型に成形されている第1絶縁層の上端部よりも30mm長く抵抗発熱体層を成形した。すなわち第1絶縁層の両端部で各30mm長く成形した。
【0141】
(3)第2絶縁層の成形
続いて、前記半硬化抵抗発熱体層積層ベルトの前面に実施例36の(6)項と同じ条件で塗布し半硬化第2絶縁層積層ベルトを得た。
【0142】
(4)フッ素樹脂プライマー層の成形及び離型層の成形
前(3)項の半硬化抵抗発熱体層積層ベルトの表面全体に実施例36(8)項及び(9)項と同じ条件でこの順番でフッ素樹脂プライマー成形及び離型層の成形を行い、200度Cで10分間乾燥した後、400度Cまで30分間で昇温し、同温度で20分間加熱してPTFE樹脂の焼成と、半硬化状態の発熱層及び絶縁層のイミド化を同時に完結し、冷却後金型から脱型して離型層積層ベルトを得た。
【0143】
(5)導電性塗料薄膜電極の成形
前(4)項で作製した離型層積層ベルトの内側の両端部で抵抗発熱体層が露出されている部分に実施例2で作成した導電性塗料を25μmの厚みに塗布成形し乾燥炉で120度C30分、200度C30分乾燥後、次いで金型に挿入し250度C30分、300度C30分、350度C30分順次加熱してイミド転化して発熱定着ベルトを得た。
【0144】
上記したように導電性塗料薄膜電極を発熱定着ベルトの内側両端部に設けた発熱ベルトは、その内側に給電ロールを配置し前記電極から抵抗発熱体層に給電することによって安定した発熱量が得られ、鮮明な定着画像が得られた。このようにベルトの内側に電極を設けた発熱定着ベルトは電極と給電ロールの接触がベルトの内部に収納できるため電気的に安全である。また、ベルトの製造方法もマスキング等の工程が不要であるため低いコストで発熱定着ベルトを提供できる。
【0145】
上記したように本発明の発熱定着ベルトは、表1〜3で明らかなように優れた導電性、可撓性を保持し柔軟であり、ポリイミドの持つ耐熱性、機械的特性を有する導電性塗料薄膜電極を備え、また、本発明の定着ベルトの抵抗発熱体層は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルなどの導電性物質と、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子が分散されているポリイミド樹脂からなる抵抗発熱体層を備える発熱定着ベルトであるため、電気的、機械的、および化学的に安定で耐久性の高い発熱定着ベルト及び画像定着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明に係る発熱定着ベルト(ベルトの外面に電極を設けたベルト)の断面図である。
【図2】図1の外観概略図である
【図3】本発明に係る発熱定着ベルト(ベルトの内面に電極を設けたベルト)の断面図である。
【図4】本発明の画像定着装置の概略断面図である。
【図5】本発明に係る発熱定着ベルトの発熱温度分布測定方法を説明するための図である。
【図6】ストランドが三次元的に連なったニッケル微粒子の顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施例において用いられた浸漬キャスティング方法を説明するための概略図である。
【図8】本発明に係るフイルム定着装置の概略図である。
【符号の説明】
【0147】
1,21 第1絶縁層
2、22、34 抵抗発熱体層
3,23 第2絶縁層
4 離型層
5 25 導電性塗料薄膜電極
10,20、31 発熱定着ベルト
32 ベルト支持体
33 ロール給電端子
36 加圧ロール
35 ベルトガイド板
38、51電源
40 複写紙
41 未定着トナー像
N ニップ部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも抵抗発熱体層と絶縁層と離型層とが積層された発熱定着ベルトであって、前記発熱定着ベルトは抵抗発熱体層に給電するための一対の電極を備え、前記電極は、導電性粒子と金属補足剤とポリイミド前駆体溶液とを含有する導電性塗料をイミド転化した導電性塗料薄膜より成る電極であることを特徴とする発熱定着ベルト。
【請求項2】
前記導電性粒子は、コア粒子と、前記コア粒子を被覆する金属シェルとから形成される請求項1に記載の発熱定着ベルト。
【請求項3】
前記コア粒子はカーボン、ガラス、セラミックスより成る群れから選ばれる少なくとも1つであり、前記金属シェルは銀より形成される請求項2に記載の発熱定着ベルト。
【請求項4】
前記金属補足剤は下記化学式(1)で表されるピリミジンチオール化合物、下記化学式(2)で表されるトリアジンジチオール化合物及びメルカプト基を有するイミダゾール化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物である請求項1〜3に記載の発熱定着ベルト。
【化1】


(式(1)中、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つはS−H又はS−Mであり、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである)
【化2】


(式(2)中、R5、R6及びR7のうち少なくとも1つはS−H又はS−Mであり、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである)
【請求項5】
前記メルカプト基を有するイミダゾール化合物は、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンズイミダゾール及び2−メルカプトベンズイミダゾール−5−カルボン酸より成る群れから選ばれる少なくとも1つである請求項4に記載の発熱定着ベルト。
【請求項6】
前記金属補足剤は前記ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して0.01重量%以上10重量%以下添加されている請求項1〜5に記載の発熱定着ベルト。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体溶液は、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体溶液である請求項1〜6のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項8】
前記抵抗発熱体層は、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルより成る群から選択される少なくとも1つの導電性物質と、ストランドが三次元的に連なった形状を有するニッケル微粒子が分散されているポリイミド樹脂からなる抵抗発熱体層である請求項1〜7のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項9】
前記離型層は、フッ素樹脂、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つの樹脂又は、ゴムからなる請求項1〜8のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項10】
シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも一つのゴムから成る弾性層をさらに備え、前記離型層は、前記弾性層の外面に接するように設けられる請求項1〜9のいずれかに記載の発熱定着ベルト。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の発熱定着ベルトと、前記発熱定着ベルトの電極に給電するための給電手段とを備える画像定着装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate