説明

発熱装置

【課題】簡易な構成で高精度に温度制御可能で早期に劣化検出可能な発熱装置を提供する。
【解決手段】通電により発熱する発熱体10と、その抵抗値RGPが目標抵抗値RTRGに一致するように通電制御する通電制御モジュール20とを有する発熱装置1であって、通電制御モジュール20とを略筒状のハウジング30内に一体的に収容すると共に、通電制御モジュール20が、所定の目標温度TTRGにおける抵抗値を基準抵抗値Rとして記憶する基準抵抗値記憶手段232と、通電時における発熱体10の抵抗値RGPが基準抵抗値Rを下回るときは通電を維持し、基準抵抗値Rを超えるときには通電を停止して発熱体10の温度変化に伴う抵抗値変化を通電制御に反映させる抵抗値変化反映手段233と、初期電力値PINTに対して所定の比率を掛けて算出される劣化時電力値PWRNを閾値PREFとして劣化判定する劣化判定手段234とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電により発熱すると共にその抵抗値が自己の発熱温度に応じて正の相関をもって変化する発熱体と電源からその発熱体への通電を制御する通電制御モジュールとを有する発熱装置に関し、簡易な構成により安定した通電制御と速やかな劣化異常検出とを実現し、特に、ディーゼル燃焼機関の気筒毎に設けたグロープラグを発熱体とし、発熱体と通電制御モジュールとが略筒状のハウジング内に一体的に収容された制御部一体型グロープラグに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼル燃焼機関の着火を補助するグロープラグの断線異常や過電流異常等を検出する異常検出装置として、グロープラグとグロープラグへの通電を制御するスイッチ手段との間に電流センサやシャント抵抗等の電流検出手段を設けてグロープラグに流れる電流とグロープラグに印加される電圧とから、グロープラグの抵抗値を算出し、グロープラグの劣化や断線異常を検出する装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、 内燃機関を予熱するグロープラグへの通電により、前記グロープラグの抵抗に応じた検出値を検出する検出手段と、前記内燃機関の運転停止直後に、前記グロープラグに通電し、前記検出手段により検出した前記検出値に基づいて前記グロープラグの劣化を判定する判定手段とを備えたグロープラグ劣化判定装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ヒータに流れる電流を電圧に変換して第一電圧値を出力する第一電圧出力手段と、電源に接続されて、前記電源の電圧に対応する第二電圧値を出力する第二電圧出力手段と、前記第一電圧出力手段および前記第二電圧出力手段からそれぞれ出力される第一電圧値と第二電圧値とを比較することで、前記ヒータの劣化の有無を判別する比較判別手段とを備えたヒータ劣化検出装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、通電によって発熱すると共に、自己の温度変化に応じて自己の抵抗値が正の相関をもって変化する発熱抵抗体を有するヒータについて、前記発熱抵抗体の抵抗値が目標抵抗値に一致するように通電を制御する抵抗値制御方式によって前記発熱抵抗体に対する通電を制御するヒータの通電制御装置であって、前記ヒータが取り付けられる内燃機関の駆動が停止されているときに、前記発熱抵抗体に通電して前記発熱抵抗体の第1抵抗値を取得する第1取得手段と、前記第1抵抗値を取得する際に、前記ヒータが使用される環境に応じた環境温度の情報を取得する環境情報取得手段と、前記第1抵抗値および前記環境温度の情報に基づいて、前記目標抵抗値を算出する算出手段と、前記内燃機関の駆動時に、前記算出手段によって算出された前記目標抵抗値に一致するように、前記発熱抵抗体への通電を制御する通電制御手段とを備えたことを特徴とするヒータの通電制御装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2にあるような従来の劣化判定装置では、グロープラグに流れる電流を検出するための電流検出手段、及び、劣化を判定するための閾値を与える基準として、シャント抵抗等が用いられている。
また、グロープラグの抵抗値には不可避的に個体差が存在する。このため、一定の抵抗値を有するシャント抵抗を用いて検出したグロープラグに流れるプラグ電流と、グロープラグに印加された電圧とから算出された抵抗値と、一定の抵抗値を有する基準抵抗との比較によって劣化状態を閾値判定したのでは、個体差が無視されることになる。
例えば、初期抵抗が高いグロープラグの場合、使用に伴い僅かに抵抗値が上昇したときに、目標温度に到達させることが可能な状態で、実際には劣化していないにも拘わらず、検出される抵抗値が一定の閾値を超えた場合には、劣化していると誤って判定される虞があり、それとは逆に、初期抵抗値が低いグロープラグの場合、目標温度に到達できないほどに劣化しているにも拘わらず、元々の初期抵抗が低いために、使用に伴い抵抗値が上昇しても、一定の閾値を超えていない場合には、正常と誤って判定されたりする虞があった。
【0007】
さらに、従来のグロープラグ通電制御装置においては、内燃機関の気筒毎に設けた複数のグロープラグへの通電を一つの通電制御装置によって制御している。このような構成において、それぞれのグロープラグの抵抗値には個体差があるので、過昇温を回避するためには、定格内で最も低い抵抗値のグロープラグを基準としてPWM制御により供給する平均電圧VAVGを決定し、VAVG/RGPで決まる電力が供給されることになる。
このため、複数のグロープラグの内、抵抗値の低いグロープラグの過昇温を回避できても、抵抗値の高いグロープラグの到達温度及び昇温速度の低下を招く虞もある。
【0008】
さらに、特許文献3にあるようなグロープラグ通電制御装置では、エンジン水温等の環境情報を利用しているので制御方法が複雑で、高い演算処理能力のCPUや割り込みタイマ等を必要とし、回路規模が大きくなり、装置の大型化が避けられず、様々な電子制御装置が高度に集約されたエンジンルーム内への搭載が困難となる虞がある。
加えて、従来のグロープラグ通電制御装置では、より精度良くグロープラグの発熱温度を制御したり、グロープラグの異常を検出したりするために、フロープラグ流れるプラグ電流やグロープラグに印加されるプラグ電圧をA/D変換してECU側に送信し、ECU側で演算処理を行ってグロープラグ通電制御装置の停止や温度補正に利用しており、グロープラグ通電制御装置とECUとの間で授受するデータ量が膨大となるため、高性能のCPUが必要となったり、CAN等の高速のデータ通信手段が必要となったりして、製造コストの増加が避けられなかった。
また、特許文献3にあるような方式により、一定の目標電力を印加したのでは、スワールの影響を受け、実際の発熱温度が目標温度より低下してしまうという大きな問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、構成が極めて簡易で搭載性に優れ、しかも、同時に複数の発熱体が用いられる場合に、不可避的に存在する個々の発熱体の個体差に応じて精度良くそれぞれの劣化の有無を判定すると共に、各発熱体をそれぞれ独立して精度良く温度制御可能な制御部一体型発熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明では、通電により発熱すると共に、その抵抗値が自己の温度変化に応じて正の相関をもって変化する発熱体と、該発熱体の抵抗値が目標抵抗値に一致するように電源から上記発熱体への通電を制御する通電制御モジュールとを有する発熱装置であって、上記発熱体と上記制御モジュールとをハウジング内に一体的に収容すると共に、上記通電制御モジュールが、予め計測した所定の目標温度における上記発熱体の抵抗値を基準抵抗値として記憶する基準抵抗値記憶手段と、上記基準抵抗値を閾値として、通電時における上記発熱体の抵抗値が上記基準抵抗値を下回るときは通電を維持し、上記発熱体の抵抗値が上記基準抵抗値を超えるときには通電を停止して上記発熱体の温度変化に伴う抵抗値変化を通電制御に反映させる抵抗値変化反映手段と、を具備する。
【0011】
請求項2の発明では、通電により発熱すると共に、その抵抗値が自己の温度変化に応じて正の相関をもって変化する発熱体と、該発熱体の抵抗値が目標抵抗値に一致するように電源から上記発熱体への通電を制御する通電制御モジュールとを有する発熱装置であって、上記発熱体と上記制御モジュールとをハウジング内に一体的に収容すると共に、上記通電制御モジュールが、予め計測した所定の目標温度における上記発熱体の抵抗値を基準抵抗値として記憶する基準抵抗値記憶手段と、上記基準抵抗値を閾値として、通電時における上記発熱体の抵抗値が上記基準抵抗値を下回るときは通電を維持し、上記発熱体の抵抗値が上記基準抵抗値を超えるときには通電を停止して上記発熱体の温度変化に伴う抵抗値変化を通電制御に反映させる抵抗値変化反映手段と、予め計測した所定の温度における定常状態での上記発熱体に印加される初期電力値に対して所定の比率を掛けて算出され、所定の劣化限界温度において上記発熱体に印加されると想定される劣化時電力値を閾値として劣化判定する劣化判定手段とを具備する。
【0012】
請求項3の発明では、上記基準抵抗値を電気的トリミングによって調整可能な抵抗として設ける。
【0013】
請求項4の発明では、上記電気的トリミングがツェナーザップ又はポリシリコンヒューズによるデジタルトリミングによって行われる。
【0014】
請求項5の発明では、上記発熱体が内燃機関の気筒毎に設けたグロープラグである。
【0015】
請求項6の発明では、上記劣化判定が内燃機関のクランキング前、内燃機関の停止直後、あるいはアイドルストップ時のいずれかで行われる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、発熱体と通電制御モジュールとが一体となっており、製造段階で発熱体の抵抗値に個体差が生じていても、その個体差に応じて発熱装置毎に上記基準抵抗値を設定することができ、上記抵抗値変化反映手段によって温度変化に伴う抵抗値変化を通電制御に反映する際に他の発熱装置の状態に左右されることなく、独立して精度の高い温度制御が可能となる。
また、従来のように、エンジン水温などの外部からの情報を利用することなく、自己完結的に温度制御が可能であるため、構造を極めて簡素化することが可能で、製造コストの低減を図ることができる上に、搭載性にも優れている。
【0017】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果に加え、上記温度変化反映手段によって、発熱体の抵抗値を上記基準抵抗値に一致させるように温度制御が図られた場合に、長期の使用によって、発熱体の抵抗値が上昇すると、実効電力が小さくなり、実際の発熱温度が低くなったとしても、上記劣化判定手段によって、実効電力値が上記劣化時電力値以下となり、発熱温度が使用可能な限界温度以下となる虞があるときに劣化と判定することができ、従来のように外部環境情報等を利用したり、外部の演算処理装置等との間で多くの情報を交換したり、外部の演算処理装置によって劣化判定をしたりする必要がなく、簡易な構成により、自己完結的に劣化の有無を検出し、速やかに劣化異常に対する処置を図ることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、通電制御モジュールを構成する素子の一部を利用して所望の基準抵抗値を形成することが可能となり、上記通電制御モジュールの体格を大きくすることがなく、高精度に温度制御が可能で、簡易な構成で劣化異常の有無を判定可能な制御部一体型発熱装置が実現できる。
【0019】
請求項4の発明によれば、上記発熱体の個体差に応じた上記基準抵抗値をデジタルトリミングにより容易に精度良く調整することが可能となる。
【0020】
請求項5の発明によれば、複数のグロープラグの間で個体差があっても、互いに影響されることなく、それぞれ独立して精度良く温度制御が可能で、しかも、速やかに劣化の有無を判定できるので極めて簡易な構成により、信頼性の高い制御部一体型グロープラグが実現できる。
【0021】
請求項6の発明によれば、内燃機関の運転状態の影響を受けることなく、グロープラグの劣化判定を高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態における発熱装置の概要を示す構成図、(b)は、内燃機関の気筒毎に設けられた複数のグロープラグへの通電をそれぞれ独立して制御する制御部一体型グロープラグの全体概要を示す構成図。
【図2】図1に示した制御部一体型グロープラグの構造を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った横断面図、(c)は、本発明を適用し得るグロープラグとして用いられる、いわゆるメタルヒータの概要を示す縦断面図、(d)は、本発明を適用し得るグロープラグとして用いられる、いわゆるセラミックヒータの概要を示す縦断面図。
【図3】本発明の適用されるグロープラグの温度とプラグ抵抗値との相関を示す特性図であって、RINTは、初期状態における抵抗温度特性を示し、RACTは、一定時間使用後の状態における抵抗温度特性を示し、RWRNは、劣化状態の抵抗温度特性を示す。
【図4】本発明の発熱装置に用いられる初期昇温制御方法を示すフローチャート。
【図5】本発明の発熱装置に用いられる定常制御方法を示すフローチャート。
【図6】本発明の適用される発熱装置のタイムチャートであって、(a)は、駆動信号を示し、(b)は、プラグ抵抗の変化を示し、(c)は、温度変化反映手段の判定結果を示し、(d)は、温度変化をフィードバックした時の半導体開閉素子の作動状態を示し、(e)は、通電電流の変化を示し、(f)は、平均電力の変化を示し、(g)は、発熱温度の変化を示す。
【図7】本発明の適用される発熱装置の定常制御モードにおいて、初期状態から劣化状態に至るまでを時系列に並べたタイムチャートであって、(a)は、駆動信号を示し、(b)は、プラグ抵抗の変化を示し、(c)は、温度変化反映手段の判定結果を示し、(d)は、温度変化をフィードバックした時の半導体開閉素子の作動状態を示し、(e)は、通電電流の変化を示し、(f)は、平均電力の変化を示し、(g)は、発熱温度の変化を示す。
【図8】本発明の発熱装置に用いられるアフターグロー制御方法を示すフローチャート。
【図9】本発明の効果を示し、(a)は、定常制御モードにおける温度制御状態を示す特性図、(b)は、予熱制御モードにおける温度制御状態を示す特性図、(c)は、アフターグロー制御モードにおける温度制御状態を示す特性図。
【図10】劣化判定の要否を決定するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施形態における発熱装置として、図略の内燃機関の気筒毎に設けた発熱体10を発熱体とし、電源6から発熱体10へ通電を制御する通電制御モジュール20とをハウジング30内に一体的に収容した制御部一体型グロープラグ1について説明する。
本実施形態における制御部一体型グロープラグ1では、通電により発熱すると共に、その抵抗値が自己の温度変化に応じて正の相関をもって変化する発熱体10と、その抵抗値RGPが目標抵抗値RTRGに一致するように電源7から発熱体10への通電を制御する通電制御モジュール20と、発熱体10とを略筒状のハウジング30内に一体的に収容すると共に、通電制御モジュール20が、予め計測した所定の目標温度TTRGにおける発熱体10の抵抗値を基準抵抗値Rとして記憶する基準抵抗値記憶手段232と、基準抵抗値Rを閾値として、通電時における発熱体10の抵抗値RGPが基準抵抗値Rを下回るときは通電を維持し、基準抵抗値Rを超えるときには通電を停止して発熱体10の温度変化に伴う抵抗値変化を通電制御に反映させる抵抗値変化反映手段233を具備している。
さらに、通電制御モジュール20は、予め計測した所定の温度において定常状態で発熱体に印加される初期電力値PINTに対して所定の比率を掛けて算出され、所定の劣化限界温度TWRNにおいて発熱体10に印加されると想定される劣化時電力値PWRNを閾値PREFとして劣化判定する劣化判定手段234とを具備している。
【0024】
本実施形態における劣化判定手段234は、発熱体10の抵抗値RGPを基準抵抗値Rに一致させるようにフィードバック制御した場合において、標温度TTRGの基準となる目標電力PTRGに対して、実際に発熱体10に流れるプラグ電流IGP及び発熱体10に印加されるプラグ電圧VGPの値から算出した実効電力値PACが所定の劣化時電力値PWRN以下となった場合を劣化と判定し、自己診断信号DIを出力する自己診断手段とが設けられている
具体的な劣化時電力値PWRNとして、製造時の目標温度TTRGを実現するのに必要とされる初期電力値PINTに対して、一定の割合(例えば、90%)を掛けた値を用いることができる。
【0025】
図1を参照して本発明の第1の実施形態における発熱装置として、図略の内燃機関8の気筒毎に設けられ通電により発熱する発熱体10(1〜n)と、エンジン制御装置(ECU)7から、機関8の運転状況に応じた目標温度TTRGを決定するための駆動信号SIが出力され、駆動信号SIに同期して、電源6から発熱体10(1〜n)への通電を基準抵抗Rと実際に検出されたプラグ抵抗RGPとの比較によって制御するための通電制御モジュール20(1〜n)とが一体的ハウジング部30(1〜n)内に収容されて構成され、コネクタ部40(1〜n)内に収容されたコネクタ端子(41、42、43)を介してECU7に接続された制御部一体型グロープラグ1について説明する。
制御部モジュール20(1〜n)は、少なくとも、半導体開閉素子21と、駆動回路部22と、発熱体制御IC23とがモールドパッケージ200内に収容され、電源入力端子201、駆動信号入力端子202、自己診断信号出力端子203、出力端子204、接地端子205の各端子が引き出されている。
【0026】
本実施形態においては、半導体開閉素子21には、NチャンネルパワーMOSFETが用いられている(以下、適宜、MOS21と称す。)。
MOS21は、発熱体10に流れる大電流を開閉制御するため複数の制御用MOS210(以下、メインMOS210と称す。)を有しており、その一部を発熱体10に流れる電流を検出するための電流検出用MOS211(以下、センスMOS211と称す。)として用いており、メインMOS210とセンスMOS211とでカレントミラー回路を構成しており、センスMOS211に接続して電流検出用抵抗212が形成されている。
電流検出用抵抗212は、センス端子SENを介して本発明の要部である劣化判定手段23に接続されている。
【0027】
駆動回路部(DRV)22は、本実施形態においては、例えばチャージポンプ等の昇圧手段を具備し、例えば、ECU7から機関8の運転状況に応じた目標温度TTRGを発熱させるためのデューティ比TON/Tを決定すべく出力された駆動信号SIの立ち下がりに同期して、MOS21を駆動すべく、所定の駆動電圧VGGに昇圧した電圧を出力する。
なお、後述するタイムチャートでは、図6、図7に示すように、駆動信号SIの立ち下がりに同期して通電を開始する例を示しているが、本発明において、駆動信号SIのHi、Loいずれの側でMOS21を駆動するかは適宜変更可能である。
【0028】
チャージポンプは、例えば、オペアンプ220、チャージコンデンサ222、出力コンデンサ224、ダイオード223、225によって構成され、オペアンプ220のスイッチングにより、チャージコンデンサ222への電源電圧Vの充電と放電とを繰り返し、出力コンデンサ224に蓄えたエネルギを重畳して放電することにより、駆動電圧VGGとして電源電圧Vの2倍の電圧等に昇圧したゲート電圧VGGを通電制御用半導体素子21のゲート・ソース間に印加する。
さらに、図1には、昇圧手段として、オペアンプ220と、ダイオード221、223と、コンデンサ222、224とによって構成されたチャージポンプを示したが、本発明において、昇圧方式を限定するものではなく、チョークコイル、コンデンサ、ダイオード等を組み合わせた、いわゆるチョッパ型のDC−DCコンバータや、昇圧トランス等を含むフライバック型のDC−DCコンバータ等を用いても良い。
【0029】
本発明の要部である、発熱体制御IC23は、抵抗値演算手段230と、基準抵抗記憶部(基準抵抗形成部)231と、基準抵抗調整手段(ツェナーザップ回路)232と、抵抗値変化反映手段(F/B手段)233と、初期電力基準抵抗RCINTと、初期電力基準抵抗調整手段(ツェナーザップ回路)235と劣化判定手段234とによって構成されている。
抵抗値演算手段230は、上述の電流検出用抵抗212によって検出されたプラグ電流IGPと、半導体開閉素子21から発熱体10に印加されるプラグ電圧VGP(半導体開閉素子21のソース電圧VSSに等しい。)とから、発熱体10のプラグ抵抗値RGPを算出する。
【0030】
また、本実施形態においては、抵抗値RGPを算出の際の電流IGPをセンスMOS211により検出する例を示しているが、本発明において電流検出方法を限定するものではない。
例えば、MOS21がオフとなっている状態で、発熱体制御IC23側から発熱体10に数10mA〜数100mAの比較的低い値で定電流を印加したときに発生するプラグ電圧VGPを検出することによって、より高い精度で発熱体10の抵抗値RGPを検出することができる。
【0031】
発熱体10のプラグ抵抗値RGPは、発熱体10の固有の抵抗温度特性によって決まり、発熱体10の発熱温度とプラグ抵抗RGPとの間には一定の相関がある。
そこで、制御部一体型グロープラグ1の製造時、すなわち発熱体10と制御部モジュール20とを接続後に、発熱体10へ通電を行い、所定の目標温度(T)に昇温させたときの抵抗値を外部の計測器により計測し、これを基準抵抗値Rとして基準抵抗記憶部(基準抵抗形成部)231(以下、MEM231と称す。)に外部からの信号により記憶させる。
なお、発熱体10の製造時に単体で抵抗値を測定し、その値を制御モジュール20のMEM231に記憶させるようにしても良い。
【0032】
抵抗値変化反映手段(F/B手段)233は、MEM231に記憶した基準抵抗値Rと、実際に使用されているときに検出されたプラグ抵抗RGPとを比較し、その結果を駆動回路部22にフィードバックする。
発熱体10の発熱温度を個々の抵抗温度特性に応じた基準抵抗値Rに基づいて、基準抵抗値Rを維持するように、半導体開閉素子21を開閉して通電制御しているので、複数のグロープラグを一律の条件で通電制御する場合に比べて、より高い精度で所望の発熱温度に制御できる。
【0033】
ところが、発熱体10は、長期にわたって使用を続けると、電極に使用している金属が絶縁体内へ拡散したり、発熱体と絶縁体との間で導電性成分が移動したりするマイグレーション等の現象を引き起こしたり、電極の剥離・酸化等により接触抵抗が増加したりしてプラグ抵抗RGPが上昇する。
【0034】
そこで、目標温度TTRG(例えば、1250℃)から一定値ΔT(例えば、100℃)以上低下した劣化限界温度TWRN(例えば、1150℃)まで発熱温度が低下したときに劣化と判定する。
しかし、本発明の制御部一体型グロープラグ1では、実際の発熱温度を測定することなく、プラグ抵抗値RGPを基準抵抗値Rに一致させるように通電制御することにより温度制御するものであるから、実際の発熱温度によって劣化の有無を検出することができない。
【0035】
また、電流値IGPはバッテリ電圧(電源電圧)+Bによって変化するので平均電流によって劣化判定することは精度を確保することができない。
そこで、目標温度TTRGとなるようにプラグ抵抗RGPが基準抵抗値Rと一致するように制御されているときの実効電力PACTの変化を、例えば、初期の目標温度TTRGにおける電力PINTを電気的トリミングによって初期電力基準抵抗値RPINTとして記憶し、その値から一定以上変化し、所定の閾値PREF以下となったことを以って劣化と判断する。
【0036】
本発明の特徴は、従来のように、発熱体10の抵抗値RGPを算出してこれを閾値判定して劣化判定を行なうのではなく、発熱体10の抵抗値RGPが一定の基準抵抗値Rと一致するように通電制御を行うことにより、発熱温度を一定に維持しようとしたときに、発熱体10の劣化に伴い、所定の温度に対する抵抗値RGPが上昇し、実効電力PACが低下することを検出することによって劣化検出を行っている点にある。
この際の劣化判定の基準となる初期電力値PINTを記憶するためにトリミング可能な抵抗あるいはメモリ等の記憶素子を用いることにより個体差に応じて高精度に劣化判定をすることが可能となっている。
【0037】
具体的には、初期基準抵抗値RPINTを基準抵抗調整手段232を用いて電気的トリミングによって調整可能な抵抗として設ける。
さらに具体的には、電気的トリミングとしてツェナーザップ又はポリシリコンヒューズによるデジタルトリミングによって行う。
また、メモリを使って基準抵抗値Rを与えても良い。ただし、この場合にはマイコンが必要となり、回路規模が大幅に増大する点に留意すべきである。
【0038】
図2を参照して、本発明の発熱装置の第1の実施形態における制御部一体型グロープラグ1の構造的な特徴について説明する。
制御部一体型グロープラグ1は、略筒状に形成したハウジング30と、その先端側に設けた発熱体10と、ハウジング内に収容された通電制御モジュール20と、外部との接続を図るコネクタ部40とが一体的に組み付けられた構造となっている。
本発明において、発熱体10は、本図(d)に示すようないわゆる、メタルヒータ10を用いても良いし、本図(e)に示すような、いわゆるセラミックヒータ10aを用いても良い。
【0039】
メタルヒータ10は、基端側が開口し先端側が閉塞する略有底筒状の金属製保護管103の内側に、金属抵抗線コイルからなる発熱コイル102と制御コイル104とが直列に接続され、マグネシア粉末等の絶縁材料100と共に収容され、発熱コイル102の先端側に設けた接地部101において、金属製保護管103に電気的に接続され、制御コイル103の基端側で、通電制御モジュール20との導通を図る入力端子106が接続されている。 発熱コイル102及び制御コイル103には、例えば、Fe−Cr−Al合金、Fe−Cr合金、Ni−Cr合金等の公知の抵抗材料が用いられ所定の比抵抗となるように形成されている。
【0040】
セラミックヒータ10aは、略U字形に形成されたセラミック抵抗体102aと、セラミック抵抗体102aと外部との導通を図る一対のリード部103a、104aと、これらを覆い略柱状に形成された絶縁体100aとによって構成され、セラミック抵抗体102aの一方の端部に接続されたリード部103aの一端が絶縁体100aの側面方向に引き出され、接地端子101aが形成され、セラミック抵抗体102aの他方の端部に接続されたリード部104aの先端が、絶縁体100aの基端部に引き出され、入力端子105aが形成され、入力端子105aは、入力端子金具106aを介して通電制御モジュール20との導通が図られている。
セラミック抵抗体102aには、例えば、窒化珪素と、炭化タングステンの混合焼結体からなる導電性セラミック材料が用いられている。
また、リード部103a、104aには、タングステンなどの耐熱性金属材料が用いられている。
絶縁体100aには、窒化珪素等の絶縁性セラミック材料が用いられている。
【0041】
メタルヒータ10又はセラミックヒータ10aは、略筒状の発熱体保持部材31によって保持・固定されている。
発熱体保持部材31は、例えば、SUS等の金属材料からなり、略筒状に形成され、その内側にメタルヒータ10又はセラミックヒータ10aを保持、固定すると共に、金属製保護管103、又は、接地端子101aと電気的に接続され、発熱体10の一端がハウジング30を介してエンジンに接地状態となっている。
メタルヒータ10の場合、金属保護管103と発熱体保持部材31とは、レーザ溶接、ロウ付け、ネジ締め等の公知の方法によって、互いに固定されている。
セラミックヒータ10aの場合、絶縁体100aと発熱体保持部材31とは、嵌め合い、及び、ロウ付け等公知の方法によって固定されている。
【0042】
ハウジング30は、略筒状に形成されたハウジング基体300からなる。
ハウジング30の先端側には、発熱体保持部材31を保持するための先端側筒状部302が形成され、発熱体保持部材31の基端側筒上部311が挿嵌され、溶接等により固定されている。
ハウジング30の外周には、機関の燃焼室に螺結固定するためのネジ部303が形成されている。
ハウジング30の基端部301には、内側に通電制御モジュール20を収容すると共に外部への接続を図るコネクタ部30が固定されている。
ハウジング30の基端側外周には、ネジ部303を螺結するための六角部304が形成されている。
【0043】
コネクタ部40は、略筒状のカラー320に覆われるようにしてハウジング30の基端側に固定されている。
コネクタ部40は、熱可塑性樹脂等を用いて略筒状に形成された樹脂成形部400とその内側に固定され外部との接続を図るためのコネクタ端子41、42、43とによって構成されている。
コネクタ部40の基端側には、略筒状に形成され、外部との接続を図る相手側コネクタと嵌合する嵌合部401が形成されている。
コネクタ部40の中腹には、外部との接続を図るコネクタ端子41、42、43がインサート成型された端子固定部402が形成されている。
なお、外部との接続を図るコネクタ端子41、42、43は、それぞれ、電源入力端子41、駆動信号入力端子42、自己診断信号出力端子43であるが、必要に応じてコネクタ端子の数を増減できる。
例えば、基準抵抗値Rをツェナーザップトリミングによって抵抗値調整する場合のツェナーザップ用入力端子TZP1、TZP2と外部との接続を図るためのツェナーザップ用コネクタ端子を設けても良い。
なお、端子数を低減するため、これらのツェナーザップ用コネクタ端子は、駆動信号入力端子42、自己診断信号出力端子43あるいは電源入力端子41と共通化しても良い。
コネクタ部40の先端側には、通電制御モジュール20を収容するための制御モジュール収容空間404を区画する先端側隔壁部402が形成されている。 され、
【0044】
本図(a)に示すように、電源入力用コネクタ端子41、駆動信号入力用コネクタ端子42、自己診断信号出力用コネクタ端子43は、それぞれ、通電制御モジュール20の電源入力端子201、駆動信号入力端子202、自己診断信号出力端子203と接続されている。
さらに、通電制御モジュール20の出力端子204(ソース端子VSS)は、通電用中軸24を介して発熱体10、10aに接続され、GND端子205は、接地用ターミナル250を介してハウジング30に接続され、さらにハウジング30を介してエンジンに接地状態となっている。
【0045】
本実施形態において、図1に示したように回路構成された通電制御モジュール20のMOS21、DRV22、JDG23等を、エポキシ樹脂等により、一体的に樹脂成形部200内に収容し、パッケージの外部にリードフレームを引き出して、電源入力端子41(BAT)、駆動信号入力端子42(SI)、自己診断信号出力端子43(DI)、出力端子204(VSS)、接地端子205(GND)が形成してある。
なお、本図においては、通電制御モジュール20を、いわゆるDIP型のパッケージで表しているが、本発明において、通電制御モジュール20のパッケージ構造を限定するものではなく、いわゆるSIP型その他の公知のICパッケージに用いられる構造を適宜採用し得るものである。
なお、具体的には、グロープラグハウジング30内に実装するためには、パワーMOSFETと制御ICとを共に実装できる小型のディスクリート半導体素子用パッケージ、例えば、10mm×17mm×4.5mm程度の薄い樹脂モールドのパッケージの片方から、入力端子、グランド、出力端子の順に並んだ端子が引き出された、いわゆるTO−220型パッケージが望ましい。
【0046】
ここで、図3を参照して本発明の制御部一体型グロープラグ1に用いられる発熱体10の温度特性について説明する。
本図は、定常状態、すなわち、発熱体にある電力を印加して、ある時間経過後にヒータ温度と抵抗値が飽和した状態におけるヒータ温度と発熱体の抵抗値との関係を示し、製造段階で確認される初期状態抵抗温度特性RINTを一点鎖線で示し、一定時間使用後の抵抗温度特性RACTを破線で示し、長期使用後の劣化状態における劣化時抵抗温度特性RWRNを実線で示している。
本図に示すように、初期状態と劣化状態とでは、抵抗温度特性の傾きは変化せず、同一温度に対する抵抗値が高くなるように平行移動している。
このため、初期状態における目標温度TTRGに対する抵抗値を基準抵抗値Rとしたとき、基準抵抗値Rを維持しようと通電制御されると、発熱温度が低下することになり、許容限界温度TWRNまで低下した状態を劣化状態と判断し、異常警告等の処理を施す必要がある。
【0047】
図4、図5を参照して、本発明の制御部一体型グロープラグ1の通電制御方法並びに劣化判定方法について説明する。
図4に初期昇温モード(MINT)におけるフローチャートを示す。
キースイッチSWが入れられると、ステップS100の初期昇温モード(MINT)が開始され、ステップS110の駆動信号入力確認行程において、ECU30から出力された駆動信号SIの入力が検出されると、ステップS120の発熱体通電行程に進み、発熱体10への通電が開始される。
次いでステップS130の電流・電圧検出行程においては、発熱体10に流れるプラグ電流IGP、プラグ電圧VGPが検出される。
次いでステップS140のプラグ抵抗値算出行程では、プラグ電流IGPとプラグ電圧VGPとからプラグ抵抗値RGPが算出される。
【0048】
次いでステップS150のモード切換判定行程では、プラグ抵抗値RGPと初期状態における目標温度に対する基準抵抗値Rとを比較し、基準抵抗Rに到達しているか否か、即ち、発熱体10の発熱温度が目標温度に到達しているか否かが判定される。
プラグ抵抗値RGPが基準抵抗値R以下の場合には判定Noとなり、ステップS110に戻り初期昇温モード(MINT)が維持される。
【0049】
プラグ抵抗値RGPが基準抵抗値Rより大きくなった場合には判定Yesとなり、初期昇温モード(MINT)を終了し、ステップS200の定常制御モードに進む。
なお、ステップS120の発熱体通電行程において、過昇温を防止するため、S121、S122、S123による予熱制御モード(MPRE)を実施しても良い。
具体的には、基準抵抗値Rよりも僅かに低い抵抗値(予熱目標温度、例えば1000℃に相当する値)を予熱制御モード切換基準抵抗値RCHとし、ステップS121の予熱制御モード切換判定行程において、プラグ抵抗RGPと予熱制御モード切換基準抵抗値RCHとを比較し、プラグ抵抗RGPが予熱制御モード切換基準抵抗値RCH以下である場合には、判定Noとなり、早期に発熱体10を予熱目標温度に昇温すべく、ステップS123の初期昇温モード維持行程に進み、略100%のデューティで定格を超える電力を印加する。
【0050】
ステップS121の予熱制御モード切換判定行程において、プラグ抵抗RGPが予熱制御モード切換基準抵抗値RCHを超える場合には、判定Yesとなり、ステップS122の予熱制御モード(MPRE)に進み、予熱制御モード切換基準抵抗値RCHを閾値として、オンオフ制御により、例えば1秒程度の時間だけ、目標温度よりも低い定温度となるように予熱制御モード(MPRE)制御が行われる。
具体的には、例えばステップS1221〜ステップS1225のフローに従った処理を実施することにより、予熱制御モードMPREを実施できる。
ステップS1221のタイムアップ判定行程において、予熱制御モード開始から一定時間tref経過したか否かが判定される。
一定時間経過前(t<tref)なら判定Yesとなり、ステップS1222の通電要否判定行程に進み、RGPとRCHとの比較により、通電の要否が判定される。
ステップS1222でRGP>RCHなら判定Yesとなり、ステップS1223に進み、通電オフとなり、RGP≦RCHなら、判定Noとなり、ステップS1224に進み、通電オンとなる。さらに、ステップS1225の抵抗値算出行程に進み、再度RGPが算出され、ステップS1221に戻りループが繰り返される。
予熱制御モード開始から一定時間経過すると予熱モードを終了し、メインルーチンに移動する。
ステップS122の予熱制御モード(MPRE)では、目標温度、例えば1250℃よりも250℃程度低い温度にある時間保持されることでその後の定常制御モード(MCST)への昇温過程(遷移昇温モード)(MTRN)での過昇温が抑制される。
また、初期昇温モード(MINT)においては、プラグ抵抗値RGPが温度上昇と共に刻々と変化するため、劣化判定は行わない。
【0051】
なお、予熱制御モード(MPRE)は一つの温度だけでなく、例えば第1の予熱目標温度を1000℃、第2の予熱目標温度を1100℃というようにして複数の予熱制御モードを設けても良い。
この場合において、駆動信号SIのデューティ比を変えることによって、第1の予熱目標温度と第2の予熱目標温度とを切り換えることも可能であるが、そのような構成としたのでは、ECU7側にプラグ抵抗RGPの情報を送信することを要し、情報量が増大化し、従来と同様の問題を生じてしまうことになる。
そこで、本発明においては、このような複数の予熱制御モードを設けた場合においても、制御モジュール20内で独立して処理できるよう、それぞれの目標温度に応じた第1の予熱基準抵抗と第2の予熱基準抵抗とを制御モジュール20内に用意する。
予熱モードにおいて予熱目標温度が一つの場合と同様に、プラグ抵抗RGPとこれらの基準抵抗値との比較によって上述のステップS121又はステップS150と同様に通電の要否を判定し、プラグ抵抗RGPがそれぞれの基準抵抗値に一致するようにMOS21を開閉して通電制御を行うようにすれば、ECU7側の処理に頼ることなく制御モジュール20側で自己完結的に処理を行うことができる。
【0052】
さらに、本発明において、電源に十分な容量が確保できる場合には必要ないが、複数の発熱体10(1〜n)への通電が同時期に開始されると大きな突入電流が重なって電源6の負担が大きくなり、昇温速度が遅くなる虞がある。
そこで、本発明の発熱装置のように、気筒毎に設けた制御部一体型グロープラグ1(1〜n)が、それぞれ独立の通電制御モジュール20を具備し、各グロープラグ1(1〜n)の発熱体10(1〜n)が独立して通電制御される場合においては、自己の気筒位置を検出する自己気筒位置判定手段及び、気筒位置に応じて通電開始のタイミングをずらす駆動遅延手段を設けるのが望ましい。
【0053】
図5に定常制御モードにおけるフローチャートを示す。
ステップS200の定常制御モードでは、駆動信号SIにしたがって通電制御が行われると共に個々の発熱体10の基準抵抗値Rに応じた通電制御が行われると共に、劣化状態を判定して異常を警告することができる。
ステップS200の定常制御モードが開始されると、ステップS210の駆動信号入力確認行程で駆動信号SIの入力が検出され、ステップS220の発熱体通電行程に進み、発熱体10への通電が行われる。
【0054】
ステップS220の電流・電圧検出行程においては、発熱体10に流れるプラグ電流IGP、プラグ電圧VGPが検出される。
次いでステップS230の実効電力・プラグ抵抗値算出行程では、プラグ電流IGPとプラグ電圧VGPとから実効電力値PACT及びプラグ抵抗値RGPが算出される。
【0055】
次いでステップ240の劣化行程では、実効電力値PACTと電力閾値PREFとの比較によって劣化の有無が閾値判定される。
なお、電力閾値PREFは、初期状態における基準電力PINTに対して一定以上、例えば、90%に低下した劣化時電力値PWRNを用いる。
ステップS240の劣化判定行程において、実効電力値PACTが、電力閾値PREFよりも高い場合には、劣化していないものと判定され、判定Yesとなり、ステップS250の抵抗値変化反映手段(F/B行程)に進む。
【0056】
ステップS240の劣化判定行程において、実効電力値PACが電力閾値PREFよりも低い場合(例えば、初期電力値PINTの90%以下となった場合)には、劣化しているものと判定され、判定Noとなり、ステップS260の異常診断信号出力行程に進む。
ステップS250の抵抗値変化反映手段(F/B行程)では、プラグ抵抗値の変化をフィードバックするためプラグ抵抗値RGPと基準抵抗値Rとが比較され、プラグ抵抗値RGPが基準抵抗値Rを超える場合には判定Yesとなり、ステップ270の通電停止行程に進み、プラグ抵抗値RGPが基準抵抗値R以下の場合には判定Noとなり、ステップ280の通電維持行程に進む。
【0057】
ステップS270の通電停止行程では、発熱体10の発熱温度が目標値に到達しているものとして通電を停止し、ステップS210に戻る。
ステップS280の通電維持行程では、発熱体10の発熱温度が、目標値に到達していないものとして通電が維持される。
ステップS210からステップS280が繰り返されることにより、通電が制御され、各グロープラグ1(1〜n)の個別の基準抵抗値Rに近いプラグ抵抗値RGPに維持される。
【0058】
ステップS260の異常診断信号出力行程では、劣化異常を示す自己診断信号DIが出力され、例えば、警告灯を点灯して運転者に劣化異常を知らせ、交換を促したり、発熱体10への通電を停止したりする等の必要に応じた処置がなされる。
【0059】
ここで、図6を参照して本発明の制御部一体型グロープラグ1の作動について説明する。なお、本図においては、予熱モードを実施しない場合の制御結果を示している。
駆動信号SIは、運転状況に応じた目標温度TTRGを決定するためのデューティ比を決定すると共に、上述の如く、抵抗値変化反映手段233によって検出された通電要否の判定結果にしたがって、立ち上がりエッジ、又は、立ち下がりエッジに同期してMOS21の開閉を切り換える
本図(a)に示すようにECUから駆動信号SIが入力されると、駆動信号SIの立ち下がりに同期して、本図(b)に示すように、発熱体10への通電が開始され、発熱温度が上昇する。
【0060】
上述の如く、プラグ抵抗がRcを超えたときに、ステップS250の判定結果はYesとなり、このとき、図6(c)に示すように抵抗値変化反映手段233の出力を0とし、発熱体10への通電を行わないようにする。
しかし、発熱体10への通電を直ちに遮断するのではなく、1パルスの通電が終わるまでは、SIに従ったデューティ(例えば90%デューティ)で通電を行い、次の駆動信号SIの立ち上がりで、MOS21を開いて発熱体10への通電を遮断し、プラグ抵抗が低下してRc以下となったら、ステップ7S250の判定結果はNoとまり、発熱体10への通電を再開させるよう、抵抗値変化反映手段233の出力を1とし、次の駆動信号SIの立ち下がりに同期してMOS21を閉じて発熱体10への通電を行う。
【0061】
このように、本発明においては、本図(b)に示すように基準抵抗Rを発熱体10への通電の停止と実行とを切り替える基準に利用しているが、実際にMOS21が開閉されるのは、本図(c)に示す判定結果(JDG)がオフの状態の時に、駆動信号SIの立ち上がりがあると、これに同期してMOS21がオフとなり、判定結果(JDG)がオンの状態の時に駆動信号SIの立ち下がりがあると、これに同期してMOS21がオンとなる。
したがって、本図(d)に示すように、駆動信号SIの立ち上がり又は立ち下がりのエッジに同期して行われるので、その時の温度変化は、本図(e)に示すように、プラグ抵抗RGPの変化から僅かに遅れて追従することになるが、制御モジュール20内で自己完結的にプラグ抵抗RGPを基準抵抗Rに一致させるようにF/B制御することで、従来のように、エンジン水温や他の温度情報を利用しなくても発熱体10の温度を目標温度TTRGに一致させることができる。
【0062】
ここで、図7を参照して、本発明の発熱装置に用いられる劣化判定方向について説明する。
図7は、本発明の適用される発熱装置の定常制御モードにおいて、初期状態から劣化状態に至るまでを時系列に並べたタイムチャートを示している。
本図(a)に示すように、発熱体10の劣化状態に拘わらず、ECU7からは、目標温度TTRGに応じた設定された駆動信号SIが出力されている。
図3に示したように、発熱体10は長期の使用により、徐々に劣化し、一定の発熱温度に対する抵抗値RGPが徐々に上昇する。
劣化の進行と共に発熱体10の抵抗値RGPが上昇すると、本図(b)、(c)に示すように、駆動信号SIの立ち下がりに同期して通電を開始してから基準抵抗Rを超えるタイミングが徐々に早くなり、また、一定のデューティ比で通電したときに、一周期の間に上昇する抵抗値RGPの最大値も高くなる。
このため、劣化状態においては、プラグ抵抗RGPが基準抵抗Rよりも高くなる時間が長くなり、本図(d)に示すようにMOS21がオフとなる回数が多くなる。
したがって、本図(e)に示すようにプラグ電流IGPは低くなり、本図(f)に示すように、実行電力PACTも徐々に低下することになる。
このとき、実効電力PACTが、予め計測した、初期状態における所定温度に対する初期基準電力値PINTに対して一定以上変化し、劣化閾値電力PREF以下となった場合に劣化と判定される。
本図(e)に示すように、初期状態においては、発熱温度Tが目標温度TTRGに維持され、劣化の進行と共に、発熱温度TがΔT以上低下し、やがて劣化限界温度TWRN以下となり、上述の如く劣化異常を示す自己診断信号DIが出力される。
製造時において個々の発熱体10の基準抵抗値R及び基準電力PINTがMEM232に記憶され、これらに基づいて、通電制御並びに劣化異常判定がなされるため、他のグロープラグの劣化状態に影響されることなく正確に温度維持が図られ、適切な時期に劣化異常が警告されることになる。
【0063】
図8を参照して、アフターグロー制御モードにおける通電制御方法について説明する。
上記実施形態においては、内燃機関の着火を補助するために制御部一体型グロープラグ1への通電を行う、いわゆるプレグロー制御を行う際に定常制御モードにおいて劣化判定を行ったが、失火防止やエミッション低減を目的としたアフターグロー制御モードにおいても本発明の制御部一体型グロープラグの劣化判定を行うこともできる。
この場合において、定常制御モードとほぼ同様のフローに従って劣化判定することができるが、ステップS340の劣化判定行程において、プラグ電流IGPの比較対照とする閾値として、第2の劣化時電流IWRN2を用い、ステップS350の抵抗値変化反映手段(F/B行程)では、プラグ抵抗値RGPと基準抵抗値Rから算出した第2の基準抵抗値RC2と比較して閾値判定を行う。
アフターグロー制御モードにおいては、定常制御モードよりも目標温度が低くなるため、これに比例して第2の劣化時電力PWRN2及び第2の基準抵抗値RC2も低い値が用いられる。
従来の劣化判定装置では、グロープラグの劣化判定は、通電停止直後の極限られた時間内に行われていたが、本発明の制御部一体型グロープラグ1では、定常制御モード及びアフターグロー制御モードの間常時実施されているので速やかに劣化異常を検出して対応することができる。
【0064】
図9(a)は、本発明の制御部一体型グロープラグ1の予熱制御モードを実施しない場合の温度制御状態を示す特性図であり、図9(b)は、予熱制御モードを実施する場合の温度制御状態を示す特性図であり、図9(c)は、アフターグロー制御モードにおける温度制御状態を示す特性図である。
本図(a)に示すように、初期昇温モード(MINT)においては、略100%デューティ又は過電力供給によって早期に昇温を図り、さらに、第1の目標温度Tよりも低いモード切換温度TCHにおいて、早期昇温制御から昇温抑制制御に切換られるため、グロープラグの過昇温が抑制され、第1の目標温度に到達した後は、定常制御モードにおいて、個々のグロープラグの抵抗温度特性に応じた基準抵抗Rを閾値として、駆動信号にフィードバックした通電制御が行われるため正確に温度維持がなされ、定常制御モード期間中常時劣化判定が実施され早期に劣化異常が検出でき、アフターグロー制御モードにおいても第2の目標温度に正確に温度維持を図ることができる上に、アフターグロー制御期間中常時劣化異常判定を行うことで早期に劣化異常の検出を行うことができる。
なお、上述の如く、予熱制御モードMPREを実施する場合には、本図(b)に示すように、目標温度よりも低い温度で一定時間保持されることにより確実に過昇温が防止され、その後、遷移モードMTRNを経て、定常制御モードMCSTに移行し、目標温度に維持される。また、この場合において、劣化判定は、予熱制御モードMPRE及び定常制御モードMCSTのいずれかの温度が安定した状態で実施される。
【0065】
図10を参照して、劣化検出を行うのにより望ましい時期とその判定方法について説明する。
上記実施形態においては、定常制御モード及びアフターグロー制御モードにおいて通電制御と同時に劣化判定を行う方法を示したが、本実施例においては、運転状況による外乱を排除し、より精度良く劣化の有無を検出するための劣化判定方法として、劣化判定をクランキング前、又は、内燃機関の停止直後、あるいはアイドルストップ時のいずれかにおいて実施する方法を示す。
例えば、クランキング時においては、スタータモータに大きな突入電流が流れ、バッテリ電圧の変動を伴う。このため発熱体10に流れる電流IGPがバッテリ電圧+Bの変動によって大きく変化するため、精度良くプラグ抵抗RGPを検出することが困難となる。また、エンジン運転時等においても、バッテリ電圧の変動を伴う虞があり、精度良くプラグ抵抗RGPを検出することが困難となる。
したがって、本発明の劣化判定は、内燃機関8のクランキング前、又は、内燃機関の停止直後、あるいはアイドルストップ時のいずれかで行うのが望ましい。
図10に示すように、ステップS400の運転状況確認行程において、例えば、エンジン回転数NE等の運転状況を示す情報が読み込まれ、ステップS410の劣化判定可否判定行程では、スッテップS400で読み込まれた運転状況を示す情報に基づいて、クランキング前、又は、内燃機関の停止直後、あるいはアイドルストップ時のいずれかであるかが判断される。
クランキング前、又は、内燃機関の停止直後、あるいはアイドルストップ時のいずれかである場合には判定Yesとなり、ステップS430の劣化判定行程に進み、クランキング前、又は、内燃機関の停止直後、あるいはアイドルストップ時のいずれでもない場合には、判定Noとなり、劣化判定を行うことなくステップS400に戻る。
ステップS430の劣化判定行程では、上記実施形態と同様、発熱体10に流れるプラグ電流IGPと、発熱体10に印加されるプラグ電圧VGPとから、実効電力値PACTが算出され、これを所定の電力閾値PREFと比較判定する。
なお上記劣化判定はグロープラグ側では常時実施し、ECU側でエンジンの運転状態を判定して選択的に使用してもよい。
【0066】
なお、本実施形態においては、NチャンネルパワーMOSFETを負荷の上流側に配設し、ハイサイドドライバによって開閉駆動される例を示したが、本発明において、半導体開閉素子21は、NチャンネルパワーMOSFETに限定されるものではなく、PチャンネルパワーMOSFETをハイサイドに設けた構成でも良い。
一般に、PチャンネルパワーMOSFETは、NチャンネルMOSFETに比べて、オン抵抗が大きいことが知られているが、駆動回路22にチャージポンプ等のゲート電圧昇圧手段が不要となる。
また、NチャンネルパワーMOSFETを負荷の下流側に設けて、ローサイドドライバによって開閉駆動するようにしても良い。この場合は、グロープラグには動作中以外にも電圧が印加される問題があるが、駆動回路部22にチャージポンプ等の昇圧手段を設ける必要がなく、回路を簡素化できる。
【符号の説明】
【0067】
1 制御部一体型グロープラグ(発熱装置)
10 グロープラグ(発熱体)
20 制御部モジュール
200 モールドパッケージ
201 電源入力端子
202 駆動信号入力端子
203 自己診断信号出力端子
204 出力端子
205 接地端子
21 半導体開閉素子
210 制御用セル
211 電流検出用セル(ミラー回路部)
212 電流検出用抵抗(ツェナーザップ抵抗)
22 駆動回路部
220 オペアンプ
221、223 ダイオード
222、224 コンデンサ
23 発熱体制御IC
230 抵抗値演算手段(電流・電圧検出部)
231 基準抵抗記憶部(基準抵抗形成部)
232 基準抵抗調整手段(ツェナーザップ回路)
233 抵抗値変化反映手段(F/B手段)
234 劣化判定手段
30 ハウジング部
40 コネクタ部
41 電源入力コネクタ端子
42 駆動信号入力コネクタ端子
43 自己診断信号出力コネクタ端子
6 電源
7 エンジン制御装置
8 内燃機関
SI 駆動信号
ACT 実効電力
INT 初期基準電力
WRN 劣化時電力閾値
基準抵抗値
CH モード切換抵抗閾値
ZP1、TZP2 基準抵抗トリミング用端子
INT 初期昇温モード
PRE 予熱制御モード
TRN 遷移モード
CST 定常制御モード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2009−36092号公報
【特許文献2】特開2009−191842号公報
【特許文献3】特開2010−127487号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱すると共に、その抵抗値が自己の温度変化に応じて正の相関をもって変化する発熱体と、該発熱体の抵抗値が目標抵抗値に一致するように電源から上記発熱体への通電を制御する通電制御モジュールとを有する発熱装置であって、
上記発熱体と上記制御モジュールとをハウジング内に一体的に収容すると共に、
上記通電制御モジュールが、
予め計測した所定の目標温度における上記発熱体の抵抗値を基準抵抗値として記憶する基準抵抗値記憶手段と、
上記基準抵抗値を閾値として、通電時における上記発熱体の抵抗値が上記基準抵抗値を下回るときは通電を維持し、上記発熱体の抵抗値が上記基準抵抗値を超えるときには通電を停止して上記発熱体の温度変化に伴う抵抗値変化を通電制御に反映させる抵抗値変化反映手段と、を具備することを特徴とする発熱装置。
【請求項2】
通電により発熱すると共に、その抵抗値が自己の温度変化に応じて正の相関をもって変化する発熱体と、該発熱体の抵抗値が目標抵抗値に一致するように電源から上記発熱体への通電を制御する通電制御モジュールとを有する発熱装置であって、
上記発熱体と上記制御モジュールとをハウジング内に一体的に収容すると共に、
上記通電制御モジュールが、
予め計測した所定の目標温度における上記発熱体の抵抗値を基準抵抗値として記憶する基準抵抗値記憶手段と、
上記基準抵抗値を閾値として、通電時における上記発熱体の抵抗値が上記基準抵抗値を下回るときは通電を維持し、上記発熱体の抵抗値が上記基準抵抗値を超えるときには通電を停止して上記発熱体の温度変化に伴う抵抗値変化を通電制御に反映させる抵抗値変化反映手段と、
予め計測した所定の温度における定常状態での上記発熱体に印加される初期電力値に対して所定の比率を掛けて算出され、所定の劣化限界温度において上記発熱体に印加されると想定される劣化時電力値を閾値として劣化判定する劣化判定手段とを具備することを特徴とする発熱装置。
【請求項3】
上記基準抵抗値を電気的トリミングによって調整可能な抵抗として設けた請求項1又は2に記載の発熱装置。
【請求項4】
上記電気的トリミングがツェナーザップ又はポリシリコンヒューズによるデジタルトリミングによって行われる請求項3に記載の発熱装置。
【請求項5】
上記発熱体が内燃機関の気筒毎に設けたグロープラグである請求項1ないし4のいずれかに記載の発熱装置。
【請求項6】
上記劣化判定が内燃機関のクランキング前、内燃機関の停止直後、あるいはアイドルストップ時のいずれかで行われる請求項2に記載の発熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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