説明

発芽落花生

【課題】
根を切って取り除く手間をなくすことができ、なおかつ落花生の食味と発芽部分(茎の部分)のシャキシャキとした食感も備えるようにした新規な食品である発芽落花生を提供する。
【解決手段】
発芽落花生Rは、根2の表面から根毛20が出る寸前かまたはわずかに出ている状態のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発芽落花生に関する。更に詳しくは、根を切って取り除く手間をなくすことができ、なおかつ落花生の食味と発芽部分(茎の部分)のシャキシャキとした食感も備えるようにした新規な食品である発芽落花生に関する。
【背景技術】
【0002】
モヤシは種子を水に浸して暗所にて発芽・軟白させたものであり、小豆や緑豆等を原料としたものが一般的である。このようなモヤシは目新しさがなく差別化を図ることが困難であり、価格も安価に設定されていた。そこで近年では、付加価値の高いものをつくるべく、原料として落花生を用いてなるモヤシが開発されている。落花生を発芽させたモヤシは発芽部分が太く歯触りが良いので食べ応えがあり、また、物珍しさも相まって次第に普及しつつある。
【0003】
【特許文献1】特開平5−76245号公報
【特許文献2】特開平9−248065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、落花生を原料とするモヤシには、次のような課題があった。
落花生のモヤシは上記したように発芽部分が太いので、小豆や緑豆等を原料としたものと比べると根も随分と太い。従って、そのままの状態で食べるともさもさとして口当たりがあまり良くなく、そのため落花生のモヤシは根を切って取り除いた状態で出荷していた。つまり、根を切る作業に多大な手間と時間を要していた。
【0005】
また、このように根を切っているので、そこから酸化して切り口近傍が黒ずんでしまい易いという課題もあった。切り口が黒ずんだものは見た目が悪くなるので商品価値が著しく低下する。更に、根を切ることにより劣化も早く、日持ちしないという課題もあった。
【0006】
本発明者は落花生のモヤシ製造に携わっており、上記した理由から根を切らないでも口当たりを損なわないものができないか研究を重ねていた。そしてあるとき種蒔きから約3〜4日ほど経った未だ生育しきっていない状態(通常のモヤシは種を蒔いてから出荷までに7日程度かかる)のものを試しに食してみた。そうしたところ根は未だそれほど太くなっておらず、長さも伸びきっていなかったことが理由だと思われるが、口当たりがそれほど悪いとは感じなかった。
【0007】
また、この状態ではまだ胚乳の部分がだいぶ残っていたので、食べたときに落花生の食味がして旨味を感じるという意外な発見もあった。更には、僅かながら発芽部分もあるのでモヤシのようなシャキシャキとした歯ごたえもあった。なお、モヤシは胚乳が残っていないので、食べたときに落花生の食味はしない。
【0008】
本発明者は、このくらいの状態であれば根を取り除かなくとも食べられるし、なりより落花生の食味と発芽部分のシャキシャキとした食感を備えているので、これは今までにない新規な食品として販売できるのではないかとの着想を得た。
【0009】
本発明者は更に詳しく、どの程度の生育時点が最も落花生の食味と発芽部分のシャキシャキ感の両方を備えているか研究を重ねた。そうして遂に、根の表面から生える根毛が出る寸前かまたはわずかに出ているといった状態のときが、最も食味もシャキシャキ感も良好であり上記要件を満たしているのではないかという結論に至った。
【0010】
本発明の目的は、出荷時に根を切って取り除く手間をなくすことができ、なおかつ落花生の食味と発芽部分のシャキシャキとした食感も備えるようにした、新規な食品である発芽落花生を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
即ち、本発明は、
根の表面から根毛が出る寸前かまたはわずかに出ていることを特徴とする、
発芽落花生である。
【0012】
本明細書において「根毛」という用語は、根の表面から生える糸状の突起物を示す概念として使用している。
【0013】
(作 用)
本発明に係る発芽落花生は、根の表面から根毛が出る寸前かまたはわずかに出ている状態のものであり、この段階では根が未だそれほど太くなっておらず、長さも伸びきっていないので、食した場合でもそれほど口当たりや歯触りが悪いとは感じ難い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。
(a)本発明に係る発芽落花生は、根の表面から根毛が出る寸前かまたはわずかに出ている状態のものであり、この生育段階では根が未だそれほど太くなっておらず、長さも伸びきっていないので、食した場合でもそれほど口当たりや歯触りが悪いとは感じ難い。従って、本発明に係る発芽落花生は、根を切って取り除く手間をなくすことができる。
【0015】
(b)本発明に係る発芽落花生は根を切らなくて済むので、切ったものより劣化し難く、日持ちがする。
【0016】
(c)本発明に係る発芽落花生は、根の表面から根毛が出る寸前かまたはわずかに出ている状態であり、この生育段階では未だ胚乳の部分が残っているので落花生の食味を備えており、また、僅かながら発芽部分もあるのでモヤシのようなシャキシャキとした食感も備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る発芽落花生は、バージニアタイプのものを使うこともできるし、非バージニアタイプ(スパニッシュタイプ、バレンシアタイプ、サウスイーストランナータイプ等)のものを使うこともできる。
【0018】
本発明に係る発芽落花生は、生の状態のまま取り扱うこともできるし、加熱処理して取り扱うこともできる。また、真空包装された状態での取り扱いが好ましいが、特に限定するものではない。
【実施例】
【0019】
本発明を実施例により説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は本発明に係る発芽落花生を示している。符号Rは発芽落花生を示している。図2は根を切る前の落花生モヤシを示している。
【0020】
発芽落花生Rは、モヤシと同じように種子を水に浸して暗所にて静置した。生育時における温度や湿度等の環境設定は落花生モヤシに準じた。
発芽落花生Rは、種蒔きから約3〜4日ほど経ち、図1に示すようにやや茎1が伸びて、根2の表面から根毛20・・・が出る寸前かまたはわずかに出ている状態になったところで収穫した。なお、符号3は胚乳を示している。
【0021】
(官能試験)
発芽落花生Rと、根を切った落花生モヤシ(図2は根を切る前の状態を示している)を食する官能試験を行い、口当たり、食味、シャキシャキ感といった感覚的な評価にどのような違いが生じるか検討した。発芽落花生Rと落花生モヤシは、双方とも二分程度茹でた状態のもので試験した。また、官能試験は30〜50歳代の男女合わせて6人(A〜F)で行った。
結果は表1及び表2に示す通りであった。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
この結果から概ね発芽落花生Rは、落花生モヤシと比べて根2を切らなくても口当たりが悪いとはそれほど感じず、また、落花生の食味も残っており、更に、落花生モヤシと同じようなシャキシャキとした食感も備えていることが確認できた。
【0025】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る発芽落花生を示す説明図。
【図2】根を切る前の落花生モヤシを示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
根の表面から根毛が出る寸前かまたはわずかに出ていることを特徴とする、
発芽落花生。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−99(P2007−99A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185443(P2005−185443)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(503210821)
【出願人】(505240798)
【Fターム(参考)】