説明

発酵コーヒー飲料

本発明は、実質的にノンアルコールであり、コーヒー芳香を含んでいる発酵コーヒー成分を含み、その発酵コーヒー成分は当該コーヒー芳香の発酵によるフルーティおよび/またはフローラルノートを伴う調整されたコーヒーの芳香を有する、コーヒー飲料ベースに関する。更に本発明は、消費する際に調製すると泡を伴うビール様飲料を形成するレディツードリンク飲料に関する。本発明は更に当該産物を作成する工程に関する。当該実施例は焙煎コーヒー抽出物の発酵を開示している。1つの実施形態では、メチルブタノールのメチルブタナールに対する、およびチオアセタート類のチオール類に対する特定な比率が必要とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は清涼飲料または飲料、飲料ベースおよびそのような飲料または飲料ベースの製造方法に関する。特に本発明は発酵させたコーヒー成分を有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
レディツードリンク(そのまま飲める飲料)コーヒーに基づく飲料群はますます一般的になっている。しばしば、これらの飲料群は乳固形分または粉末クリームを含有する。粉末コーヒー、乳固形分または粉末クリームと同じ外観および味を有している飲料を提供するのでなければ、当該乳固形分または粉末クリームはレディツードリンクコーヒー飲料に生じるであろう不快な匂いの幾らかをマスクする役割を果たしている。しかしながら、乳固形分または粉末クリームを含有するコーヒー飲料群はブラックコーヒー飲料よりさわやかな感じがしないと受け止められている。加えて、コーヒーの芳香は急速に失われる。これは芳香の化合物群のお互い同士だけではなく、科学文献に現象が記載されている抽出物中のコーヒー固形分との反応にもよる。
【0003】
食品の発酵において酵母、乳酸菌または酢酸菌のような微生物を使用して食物中に芳香を発生させることはよく知られている。発酵は一般的にアルコール飲料群の製造および当該飲料の風味を現すために使用される。発酵はまず風味を付けるためにも使用されるが、通常は幾らかのアルコール発生が生じる。
【0004】
発酵させたコーヒー飲料は欧州特許出願EP0791296に記載されている。これは茶またはコーヒーの発酵させた糖分含有水溶性抽出物に基づいた飲料に関する。開示されたのは簡単な条件下で発酵飲料を調製するための工程で、比較的短い調製時間で大量の発酵飲料の製造を可能とする。当該発酵工程は酵母と細菌の組合せを利用している。当該飲料工程は少量のアルコールを発現するために見出された。少ないが、例えば好まれていない清涼飲料水の製造など、ある種の応用には向いている。
【0005】
米国特許第4,867,992号はコーヒー基質を酵母または細菌の菌株により発酵して天然バター様風味およびワイン様風味を製造する工程を開示している。米国特許第4,867,992号の目的は発酵によりバター様芳香を作成して例えばコーヒーのような飲料群の乳様ノートを増すことである。本発明にとってはこのタイプの芳香は、飲料に爽やかなノートを与える事が無いので望ましくない。
【0006】
日本特許第04278072号は糖質を含有している酵母発酵の液体コーヒー抽出物に関する。最終製品は約0.2%のアルコールを含有する。ノンアルコール発酵コーヒー飲料群は、酵母による発酵を行っている間、工程で通気を採用すれば得ることができるはずである。しかしながら、これでは当該芳香を取り去ることになるだろうから、コーヒーの芳香の弱い最終製品を生じることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
清涼飲料水およびそのまま飲める飲料のコーヒーベースに基づく飲料群の範疇において新しい製品コンセプトが必要とされる。特に不快な風味と芳香を抑えた新しい爽やかで刺激性飲料群について必要性がある。本発明はそのような製品を提供するのを目的とする。本発明は同じように、刺激性があり爽やかな芳香を有し、保存中での芳香変化を抑えた飲料を提供することを目的とする。更に本発明はコーヒーの芳香を高レベルに有した発酵コーヒー飲料を提供することを目的とする。
【0008】
飲料工業における伝統的な発酵製品群はアルコール飲料群である。本発明はアルコール飲料群に代わる飲料を提供することが目的である。
【0009】
本発明は新しい形態の飲料を提示するのも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明の概要)
従って、1つの態様では本発明は実質的にノンアルコールで、コーヒーの芳香を含む発酵コーヒー成分を含んでいて、発酵コーヒー成分は当該コーヒーの芳香の発酵によるフルーティおよび/またはフローラルノートを持つ調整されたコーヒー芳香を有するコーヒー飲料ベースを提供する。この飲料ベースはある種ビール群の外観を有する炭酸飲料を調製するのに使用することができる。
【0011】
本発明は天然のコーヒーのみに基づく新しい刺激的で爽やかさのある飲料を提供することができる。本発明の製品は魅力的なノンアルコール飲料である。
【0012】
当該フルーティおよび/またはフローラルノートを発生させることができ、それにより不快なコーヒーの香りを当該フルーティおよび/またはフローラルノートでバランスをとる独特な芳香の特性を有する飲料を提供することは驚くべき発見である。更に、ノンアルコール飲料である一方で同時にコーヒー成分のコーヒー特性を保持している調整されたコーヒー芳香を有する発酵コーヒー成分を含んでいる飲料ベースを提供できることは驚くべき発見であった。当該飲料はその独特な芳香プロフィルによる爽やかさがあり、当該飲料中のカフェイン含量による刺激性がある。
【0013】
更なる利点は、発酵しても当該コーヒーベース中に存在するのより多い量の酢酸を含まない飲料が提供できることである。そこで、当該飲料は幾つかの発酵飲料で時たま見出される不快な酸味を有さない。
【0014】
本文では実質的にノンアルコールコーヒーベースは0.05%未満、好ましくは0.01%のアルコールを含むかアルコールが全然ないコーヒーベースを意味する。アルコールとはエタノールまたはエチルアルコールを称する。
【0015】
更に、本文でのコーヒー飲料“ベース”は飲料を製造するのに用いることができる成分である。例えば、当該コーヒー飲料ベースは典型的には、例えば冷水あるいは熱水を加えて最終飲料とするのに戻すことができる。
【0016】
本発明記載の発酵は当該コーヒー芳香にフルーティおよび/またはフローラルノートを与える。当該フルーティおよび/またはフローラルノートは調製した飲料の上部の空間で感知することができる。当該フルーティおよび/またはフローラルの芳香は新しい芳香プロフィルにて反映され、その中の幾つかの化合物が変化してその飲料の芳香全体の感じに変化を与える。当該発酵により2と3‐メチルブタナールのようなアルデヒド類が実質的に完全にその相当するアルコール類に、メタンチオールおよびフルフリルチオールのようなチオール化合物はそれらに相当するチオアセタート類に、そしてジケトン類は殆どそれらの相当するアセトイン類に転換されることが判明した。これらの新しい化合物類の出現は従来のSolid Phase Microextraction(SPME)採取法で簡単に測定できる。これらの化合物類のレベルは好ましくは変換された化合物のレベルの50%より多く、より好ましくは80%より多い。
【0017】
当該コーヒー成分は、好ましくはコーヒー抽出物、コーヒーの芳香、コーヒーの芳香の一部が取除かれたコーヒー抽出物からなる群より選択される。コーヒーの芳香はコーヒー粉末またはコーヒー抽出物の揮発性化合物である。当該コーヒーの芳香は好ましくは水溶性のコーヒーの芳香である。当該水溶性のコーヒーの芳香はコーヒー粉末またはコーヒー抽出物の蒸留分、または天然原料から芳香を回収することに関する技術の当事者であれば知っている他の工程のいずれかで得て水溶性媒体に加えたものでもよい。例えば当該コーヒーの芳香はコーヒー圧搾で得てもよい。
【0018】
本発明のコーヒー飲料ベースは非発酵製品と比べて芳香の安定性で改善されたのは驚くべき発見ことである。非常に反応しやすいことで知られているコーヒーの芳香性化合物または不安定な化合物は、より反応性の低いまたは非反応性化学種或いは保存条件下で安定な物質へと発酵工程により転換されると考えられている。
【0019】
本発明の飲料ベースは例えばシロップのような液状飲料濃縮物、または粉末か錠剤の形状の溶解性飲料濃縮物であってもよい。本発明はまたこの特許出願に記載されているような飲料ベースを含んでいるレディツードリンク飲料に関する。
【0020】
本発明記載の飲料は爽やかさと刺激性の両方であり、保存での安定性が改善されているという利点を有している。その独特な芳香調節で新鮮であり、飲料中にあるカフェイン含量により刺激性である。しかしながら、脱カフェインである飲料が望ましいのであればそれも選択肢にある。従来の脱カフェイン手法はこの目的のために利用することができる。
【0021】
所望ならば、当該コーヒー飲料ベースは当該飲料の調製において泡立ちを供する泡特性を有することができる。例えば、当該コーヒー飲料ベースは空気、窒素または二酸化炭素などのガスを注入することでガス入れをしてもよい。それの代わりに当該飲料は再構成する際にガス入れをしてもよい。従来の手法が両方の目的に使用できる。当該発明はこのようにビールに代わる魅力的なノンアルコールを提供する。同時に当該発明は爽やかで刺激的な飲料を提供する。特に好ましい本発明の実施形態では、消費する際の調製時に当該飲料ベースは泡を上表面に含む。好ましくは、当該飲料ベースまたはそれから製造した飲料はガス入れまたは炭酸ガス化する。泡は当該飲料で見た目にビールと似ている飲料を供するためにグラスへ注ぐときに生成される。これはビールのように注ぐことができ;ビールのように見えるのであるが、コーヒーの刺激性効果も有している。
【0022】
他の態様では、本発明はコーヒー飲料ベース提供するための工程を提供し、当該プロセスは以下を含んでいる。
コーヒーの芳香を含んでいるコーヒー成分を供し、
発酵の能力を備えた微生物を供し、
微生物を当該コーヒー成分に植菌し、
当該培養コーヒー成分を22℃未満の温度で発酵させて、当該コーヒー芳香の発酵によるフルーティおよび/またはフローラルノートを持つ発酵コーヒー成分を生成させる一方で、アルコールの生成を実質的に防止させ、実質的にノンアルコールコーヒー飲料ベースを提供するように発酵条件を調節する。
【0023】
当該発酵に用いる微生物は、フルーティおよび/またはフローラルノートを産生できる乳酸生産細菌または酵母の菌株のどちらかである。当該コーヒー成分は好ましくは前に検討したコーヒー成分の群より選択する。発酵の温度は22℃未満でなければならない。22℃より高いと微生物は、特に酵母菌株は培養する期間において検出できるのに十分な程度アルコールを生産し始める。本発明の生成物のためにはこれは特に望ましくないことである。更に本発明の工程の詳細を以下に述べる。
【0024】
更なる実施形態においては、本発明は当該コーヒー芳香の発酵によるフルーティおよび/またはフローラルノートを有する発酵コーヒー芳香に関し、芳香は2‐および3‐メチルブタノールの2‐および3‐メチルブタナールに対する比率が1より大きいことで特徴付けられる。好ましくは、当該発酵コーヒー芳香は更にチオアセタート類のチオール類に対する比率が0.5より大きい。このタイプのコーヒー芳香はコーヒー飲料群および、例えば茶のような他の飲料の芳香化のために使用することができる。
【0025】
(本発明の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の実施形態はこれから実施例のみでこれから説明する。
【0026】
当該発酵に使用した微生物はフルーティおよび/またはフローラル芳香ノートを産生できる乳酸生産細菌または酵母の菌株のいずれかである。
【0027】
酵母が本出願には特に適していることが見出された。当該好ましい酵母は食品評価で望ましいフルーティな匂いを発生する酵母である。当該酵母は好ましくは、Saccharomyces cerevisiae,S.bayanus,S.carlsbergensis,S.exiguus,S.uvarum,Kluyveromyces marxianus,K.lactis,Brettanomyces spp,Aureobasidium pullulans,Candida stellata,C.krusei,Cryptococcus,Hanseniaspora uvarum,H.osmophilia,Issatchenkia orientalis,Kloeckera spp,Kloeckera apiculata,Kloeckera javanica,Metschnikowia spp,Metschnikowia pulcherrima,Pichia spp.,Pichia anomala,Saccharomycodes ludwigii,Zygosaccharomyces bailiiまたはそれらの組合せからなる群より選択される。
【0028】
当該微生物が発酵の間に付与できるフルーティおよび/またはフローラル芳香ノートの強さとタイプは選んだ微生物および発酵条件に依存する。そこで、当該コーヒー芳香を大きく変更したいのであれば、ある種の微生物を発酵に選ぶのがよい。
【0029】
上記したように、当該コーヒー成分は好ましくはコーヒー抽出物、コーヒー芳香、コーヒー芳香の一部を除いたコーヒー抽出物からなる群より選ばれる。
【0030】
コーヒー抽出物は焙煎したコーヒー豆を抽出させる従来の方法で製造できる。当該抽出手順の選択および設計は好みの問題で、本発明の提供には重要な影響を及ぼさないので、いずれの適した抽出手順を用いてもよい。適している抽出手順は欧州特許出願0826308および0916267に記載されており、それについての検討は参照で組み込まれている。同様に、濃縮手順の選択およびデザインは好みの問題で、本発明の提供には影響がないので、いずれの適した濃縮手順を用いてもよい。勿論、当該コーヒー液体は溶解性コーヒー粉末を望む濃度で水に溶かして調製することもできる。
【0031】
溶解性コーヒーの製造において、単に焙煎コーヒー豆を上記のようにコーヒーベース濃縮物へ処理をすると全てのコーヒー芳香を実質的に失う結果を招く。そこで、処理の間に当該コーヒー芳香を特に取り去り、そして収集するのが好ましい。こうすれば当該コーヒー芳香は失われない。本発明の目的であるコーヒー芳香はそのような収集から生じるコーヒー芳香留出分でよい。
【0032】
当該コーヒー芳香の除去および収集の工程はよく知られている。通常コーヒー芳香は一段以上の段階、例えば当該コーヒー豆を挽く間または挽いた直後に不活性ガスまたは蒸気を用いたり、抽出の間に当該コーヒー抽出物からコーヒー芳香を除去するのに蒸気を用いたりする。
【0033】
それに代わるものとしては、当該新鮮なコーヒー粉末を水中またはコーヒー抽出物中でスラリー状とし、当該コーヒー芳香を当該スラリーから取り出してもよい。適した手順は国際特許出願PCT/EP99/00747に記載されており、その開示は参照として本明細書に組み込まれている。
【0034】
当該コーヒー芳香は適した手順であればいずれを用いても捕集できる。通常は当該コーヒー芳香を1つ以上の凝縮器においてキャリヤーガスから凝縮して捕集する。好ましくは、1つ以上の凝縮器が用いられ;各連続している凝縮器は前の凝縮器より低い温度で運転される。必要であるか望むのであれば、当該凝縮器の1つは極低温芳香凝縮器である。適した極低温芳香凝縮器は米国第5,182,926号に記載されており;この開示については本明細書に参照として組み込まれている。当該捕集したコーヒー芳香は、望むのであれば部分凝縮または精留のような適した手法をもちいて凝縮される。当該捕集したコーヒー芳香は、コーヒー油または他の脂肪分を含有しているコーヒー油または乳化物のような適したキャリヤー基材と混合できる。水溶性コーヒー芳香成分および有機コーヒー芳香成分をその後に分離する。
【0035】
本発明記載の飲料ベースは、コーヒー固形分が当該飲料ベースの重量の少なくとも0.2%、発酵コーヒー芳香成分は当該飲料ベース重量の少なくとも5ppmを含んでいる。当該飲料ベースは、当該飲料ベース中にコーヒー固形物の重量の0.01%と2%の間のコーヒー芳香、より好ましくは0.05%と0.4%の間のコーヒー芳香を含むのが好ましい。飲料ベースにおけるこの結果は、再構成するとフルーティおよび/またはフローラル芳香ノートを伴った強い調整コーヒー芳香のある飲料を提供する。当該飲料ベースのコーヒー芳香はその独特な芳香特性で特徴付けられ、芳香の化合物群の濃度は発酵工程にて当初のコーヒー芳香プロフィルと比べて相当変化している。このことは異なる2種の酵母菌株に関して以下の表1に示してある。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明の好ましい実施形態では、当該コーヒー芳香成分はコーヒー芳香留出分である。
【0038】
本発明の好ましい実施形態は、2‐と3‐メチルブタノールの2‐と3‐メチルブタナールに対する比率が1より大きく、好ましくは50より大きいことが特徴である芳香を含んでいる当該飲料ベースである。更に当該芳香はチオアセタート類のチオール類に対する比率が0.5より大きく、好ましくは5より大きいことを特徴とする。これは当該コーヒー飲料に独特な芳香プロフィルを与える。
【0039】
更なる当該飲料ベースの芳香化に関し、人工的な芳香を付け加えるのが好ましいかもしれない。当該飲料ベースを補う芳香群の例としてフルーティ、ベリー類、蜂蜜、ビール、発酵果物または“オードヴィー”の香りのような芳香であることが見出されている。
【0040】
本発明の飲料ベースが人工的に発酵したコーヒー芳香群を使用するだけで与えられることも高く評価されるであろう。
【0041】
当該最終的な飲料を形成する液体に加えて、他の成分群を当該飲料ベースに加えてもよい。そのような成分群は、例えば味覚を変化させる糖質および糖質置換体類、有機酸類およびリン酸塩やその類縁物のような緩衝用塩類である。
【0042】
本発明のある種の実施形態では、当該飲料ベースは、調製されるときに飲料の上表面に泡を生じるような泡特性を有する。本発明記載の飲料は炭酸化、ガス入れの両方およびプレイン飲料でもよい。本発明の特に好ましい実施形態では、当該飲料は“ビール様”の外観、色、容量、キメおよび安定性のような泡を含む。当該泡は炭酸化、ガス入りまたは当該飲料に起泡剤を加えてもよく、サポニンのような界面活性剤を添加して補助することができる。
【0043】
当該飲料ベースの発酵は不透明な飲料となるかもしれない。これが望ましくなければ遠心分離にかければ透明な飲料となる。
【0044】
当該発明の発酵工程はストレッカーアルデハイド類を相当するアルコール類ヘの、そしてチオール類(フルフリルチオール、メチルチオール)をチオアセタート類への変換を生じる。37℃での保存試験では、これらの化合物は数週間安定であったが、当該アルデヒド類およびチオール類は素早く消失してしまう。ストレッカーアルコール類およびチオアセタート類は、それらが由来したアルデヒド類およびチオール類とは異なる匂いの特徴を有するが、コーヒーの独自性は維持されていた。
【0045】
上記のように当該コーヒー成分の発酵はアルコールの発生が避けられる22℃未満で行う。更に当該発酵温度を8℃よりは高くするのが好ましい。8℃未満であると多くの微生物、例えば酵母は代謝活性を有しているが温度が低すぎるので新しい化合物の合成には長い培養時間が必要となることが分かっている。
【0046】
本発明によれば、当該発酵の間におけるアルコールの発生は、適切な酵母または細菌の菌種を選択し、特に発酵の温度と時間を調節することで防止することができ、これにより実質的にアルコールを含まない飲料ベースの生産が可能となる。驚くことに、当該発酵飲料はこれらの工程条件下である種の望ましい芳香を手に入れる。例えば、好ましいフルーティおよび/またはフローラルの芳香が好ましい形で当該コーヒー芳香を補う。
【0047】
本発明の工程における他の利点は、比較的短い発酵工程で発酵飲料を生じさせることである。発酵工程は、例えば発酵工程がかかる長い時間、例えば15から27時間の範囲のように一般的に長くかかることが知られている。当該発明の発酵工程はエタノール生成を避ける一方でフルーティな芳香の発生とある程度コーヒー芳香の化合物群の変換を行わせるために8時間未満、好ましくは6時間未満であるが4時間より長い時間がかかる。
【0048】
本発明の発酵工程は好ましくは通気を行わずに実施する。通気は当該芳香の化合物を取除いてしまう。従来のものとは反対に当該発酵は通気なしで満足に行えることが見出された。
【0049】
当該コーヒー成分は有利なようには当該発酵を進めるとき効果的な炭水化物で補う。例えば、糖質は発酵前に当該コーヒー飲料ベースに添加するのが有利である。糖質を、例えばコーヒー抽出物に加えると当該芳香生産に実質的に影響を及ぼすことが見出されている。糖質がなければ弱い酵母芳香が生成するだけである。好ましくは発酵する生成物の重量に基づいて少なくとも0.5%の糖質を添加する。より好ましくは、0.5から20%の糖質を添加する。本内容における糖質は、例えばグルコース、蔗糖または果糖或いはそれらの組合せ、または選択した酵母菌株が代謝できるいずれかの糖質である。
【0050】
本発明記載の飲料ベースの匂いおよび芳香の特性は、どの発酵コーヒー成分を選ぶかにより異なるであろう。コーヒー芳香を有するコーヒー抽出物およびコーヒー芳香の一部を取除いたコーヒー抽出物は当該抽出物中のコーヒー芳香の相対量によって、明白なフルーティおよびフローラルノートがより強く、またはより弱くなる。更に、当該飲料ベースが炭化水素、例えば上で検討した糖類で補われていれば当該産物の甘さは異なるであろう。加えた炭水化物の量は好ましくは発酵される容量による。そこで、当該最終飲料の甘さは発酵に供せられた飲料ベースの量によるであろう。例えば、当該コーヒー芳香留出分のみを発酵したとすれば、それは甘さを加えられた最終飲料の相対的少量を構成し、当該最終産物の甘さはより弱くなるであろう。他方、コーヒー抽出物である飲料ベースから調製された最終飲料にはより多い糖質が存在することになるであろう。
【0051】
本発明のコーヒー飲料ベースの好ましい実施形態では、当該コーヒー芳香留出分のみを発酵する。この飲料ベースはコーヒー抽出物に基づく飲料と比較して甘味の弱い最終飲料を与えるであろう。更に、当該飲料ベースはフルーティおよび/またはフレーバーノートが強いであろう。これらの成分の望ましい強さを与えるには、当該最終産物中により多いまたはより少ない飲料ベースを使用することができる。更に、当該産物の甘さは当該発酵の後に当該飲料ベースに単により多いまたはより少ない甘味料を加えることで調節することができる。これで当該最終コーヒー飲料産物への要望に応じることができる。
【0052】
特定の実施例が更に本発明を例示する。
【実施例1】
【0053】
(実施例1−コーヒー飲料ベースの調製)
焙煎したコーヒー抽出物を従来の方法で調製した。当該焙煎コーヒー抽出物を6〜8時間生きている酵母細胞と培養する培養で心地よいコーヒーフルーティ芳香の生成を導く。エタノールも酢酸も形成しなかった。培養器は泡立ちおよびコーヒーや発酵の芳香が取除かれるのを避けるために通気はしなかった。
【0054】
数種のSaccharomyces cerevisiaeおよびS.bayanus菌株群を検討し、S.cerevisiae Castelli Ceppo 20を以後の試験用に選んだ。当該発酵はE1コーヒー抽出物を伴うPTC/Orbeを5%蔗糖で補って、200L規模で成功裡に実施された。発酵の間の温度は20℃に維持した。
【0055】
生体内変換、遠心分離、炭酸化および殺菌の後、コーヒーの匂い、濃密な泡および独特の芳香特性の望ましい特性を有している飲料が得られた。酵母がもたらした数種の芳香化合物を同定し、炭素代謝および細胞の酸化還元バランスに関連づけることができた。コーヒー留出分の発酵は芳香を発生させることになり、それはコーヒー再構成後に感じられた。比較するとコーヒーベースの発酵はより弱い芳香の発生を導いた。発酵コーヒー抽出物は芳香除去後に粉体として乾燥に成功した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にノンアルコールで、コーヒーの芳香を含んでいる発酵させたコーヒー成分を含み、発酵させたコーヒー成分は当該コーヒーの芳香の発酵によりフルーティーノートおよび/またはフローラルノートを伴う調整されたコーヒーの芳香を有する、コーヒー飲料ベース。
【請求項2】
当該コーヒー成分は、コーヒー抽出物、コーヒーの芳香、コーヒーの芳香の一部を取除いたコーヒー抽出物からなる群より選択する、請求項1記載の飲料ベース。
【請求項3】
当該コーヒ−の芳香はコーヒーの粉末またはコーヒー抽出物から得られるコーヒーの芳香の留出物である、請求項2記載の飲料ベース。
【請求項4】
当該飲料ベースの重量に基づいて少なくとも0.2%のコーヒー固形分を含む、先行請求項のいずれかに記載の飲料ベース。
【請求項5】
当該飲料ベース中にコーヒー固形分の重量に基づいて0.01%と2%の間のコーヒー芳香を含む、先行請求項のいずれかに記載の飲料ベース。
【請求項6】
当該飲料ベースは発酵させたものである、先行請求項のいずれかに記載の飲料ベース。
【請求項7】
当該飲料は発酵から生じる増加したレベルの酢酸を有さない、請求項7記載の飲料ベース。
【請求項8】
当該飲料ベースは人為的に発酵させたコーヒー芳香成分を含む、先行請求項のいずれかに記載の飲料ベース。
【請求項9】
当該飲料ベースは2‐および3‐メチルブタノールの2‐および3‐メチルブタナールに対する比率が1より大きいことを特徴とするコーヒーの芳香を含んでいる、先行請求項のいずれかに記載の飲料ベース。
【請求項10】
当該飲料ベースはチオアセタート類のチオール類に対する比率が0.5より多いことを特徴とするコーヒーの芳香を含んでいる、先行請求項のいずれかに記載の飲料ベース。
【請求項11】
調製するときに当該飲料上の表面に泡を作り出せる泡特性を有する、先行請求項のいずれかに記載の飲料ベース。
【請求項12】
当該飲料ベースが液体飲料濃縮物または溶解性飲料濃縮物である、先行請求項のいずれかに記載の飲料ベース。
【請求項13】
請求項1から12の何れかに記載の飲料ベースを含んでいるレディツードリンク飲料。
【請求項14】
コーヒー飲料ベースを提供する方法であって、当該工程は、
コーヒーの芳香を含んでいるコーヒー成分を用意する、
発酵する能力を備えた微生物を準備する、
当該微生物を当該コーヒー成分に植菌する、
当該培養したコーヒー成分を22℃未満の温度で発酵させて当該コーヒー芳香の発酵によるフルーティおよび/またはフローラルノートを有する発酵コーヒー成分を発生させる一方で、アルコールの発生を実質的に防ぐように発酵条件を調節し、実質的なノンアルコールコーヒー飲料ベースを提供することを含んでいる、コーヒー飲料ベースを提供するための方法。
【請求項15】
当該発酵工程を増進するために効果的な炭水化物をコーヒー成分に補うことを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
当該発酵温度が5℃と22℃、好ましくは8から22℃である、請求項14または15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
当該発酵の時間が4から8時間、好ましくは4から6時間である、請求項14から16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
コーヒーの芳香の発酵によるフルーティおよび/またはフローラルノートを有し、当該芳香はその2‐および3‐メチルブタノールの2‐および3‐メチルブタナールに対する比率が1より大きいことを特徴とする、発酵させたコーヒーの芳香。
【請求項19】
当該コーヒーが0.5より大きいチオアセタート類のチオール類に対する比率を有する、請求項18記載の発酵させたコーヒーの芳香。

【公表番号】特表2007−508850(P2007−508850A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537078(P2006−537078)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009529
【国際公開番号】WO2005/048727
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】