説明

発酵ブロス中のブタノール濃度を制御する方法

本発明は、発酵ブロスからのブタノール濃度を制御する二段法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年12月14日に出願された米国仮特許出願第61/007665号明細書の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、発酵ブロスからブタノールを除去するためのストリッピングおよび吸収を伴う二段法に関する。
【背景技術】
【0003】
発酵性再生可能な炭素原料を、燃料または燃料添加剤または特殊または汎用化学物質などであるが、これに限定されるものではない、別の有用な化学物質に変換することに多大な関心が寄せられている。
【0004】
目下、ほとんどの工業発酵は、化学または燃料用途どちらかのためのエタノールの製造に関与する。しかし、発酵によってブタノールを生産することに利点がある。燃料中で使用するためには、ブタノールはエタノールよりも優れており、すなわちブタノールは蒸気圧がより低く、水への溶解度がより低い。したがって、ブタノールを得ることができる経済的な発酵方法を有することが、望ましいであろう。
【0005】
有利なブタノール発酵法は、望ましくない所定速度(「許容レベル」、通常経済的考察によって影響される)未満へのブタノール生産速度低下を引き起こすブタノール力価に達することなく、糖からブタノールへの完全なまたは実質的に完全な変換を達成する。この目標を達成する一方法は、バッチ発酵がブタノール生成速度の所定速度未満への低下を引き起こすブタノール力価をもたらさないレベルに、糖装入量を制限することである。しかし、制限された糖装入量は、工程にとって経済的に望ましくない低濃度溶液をもたらすのでこのアプローチは望ましくない。したがって、糖装入量に対する制限を必要としないやり方で、前述の目標を達成する方法に対する必要性がある。
【0006】
ブタノール生産発酵工程をより効率的にできるかもしれない一手段は、ブタノール産生微生物の許容レベルに達しないように、ブタノールを発酵媒体(ブロス)から連続的に除去することである。これは発酵容器に装入される糖の高添加量を可能にし、好ましい経済性を達成できるようにする。このような除去工程は、発酵と関係がある場合、一般に「原位置生成物除去」工程、または略して「ISPR」工程と称される。ISPR工程が有用であるためには、それは発酵工程それ自体と一体化され、それに適合し、または容易にそれから分離される必要がある。例えば大気圧における発酵ブロスの単純な蒸留は、発酵微生物が蒸留カラム基部の温度によって損傷される可能性が高いことから、ISPR技術として有用ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、原位置生成物除去法(ISPR)を成功裏に実施して、発酵ブロス中のブタノール濃度を発酵微生物の許容レベル以下に制御できる手段である。したがって、本発明は、好ましい経済性をもたらす、微生物、糖とその他の栄養素の濃度を使用して、ブタノール発酵を実施できるようにすると考えられる。
【0008】
本発明は、発酵ブロス中のブタノール濃度を発酵微生物の許容レベル未満に維持できることを確実にし、発酵微生物を引き続いて再循環して発酵容器に戻し、結果的に工程の効率を高めることで、発酵工程中に微生物を破壊できる有毒なブタノールレベルの問題を解決するISPR工程を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(a)発酵ブロスの少なくとも1つの一部をその各発酵容器から連続的に取り出して、取出発酵ブロスを形成するステップと、
(b)取出発酵ブロスを、関連吸収セクションを備えた少なくとも1つのストリッピング(stripping)セクションを有する装置の、関連吸収セクションと気体連通するが液体連通しないストリッピングセクション内に供給するステップと、
(c)同時に不活性ガスをストリッピングセクション内に供給し、それによってブタノールの一部を発酵ブロスから離して、(i)ブタノールと不活性ガスとを含むガス混合物、および(ii)ブタノール減少発酵ブロスを形成するステップと、
(d)ブタノール減少発酵ブロスをその各発酵容器に戻し、そしてガス混合物をステップ(b)のストリッピングセクションに関連する装置の吸収セクションに入れさせるステップと、
(e)ブタノールよりも低い蒸気圧とブタノール吸収能力とを有する有機液体吸収剤をステップ(d)の吸収セクション内に連続的に供給し、それによって液体吸収剤とガス混合物からのブタノールの少なくとも一部とを含む液体混合物を形成し、それによってガス混合物中のブタノール含量を減少させて、ブタノール減少ガス混合物を形成するステップと、
(f)ブタノール減少ガス混合物を装置のストリッピングセクションに戻すステップと、
(g)ブタノールを液体混合物から回収し、液体吸収剤を装置の吸収セクションに戻すステップとを含み、
それによって、方法の結果として発酵ブロス中のブタノール濃度を制御する、
ブタノールと水を含み、1つ以上の各発酵容器内に収容される、1つ以上の発酵ブロス中の、ブタノール濃度を所定のレベル以下に制御する方法。
【0010】
別の実施態様は、同一発酵容器からの取り出しが、2つ以上の発酵ブロス流について同時である方法を提供する。
【0011】
別の実施態様は、2つ以上の発酵ブロス流の取り出しが同時でない方法を提供する。
【0012】
さらに別の実施態様では、異なる発酵容器からの取り出しが2つ以上の発酵ブロス流について同時である方法。
【0013】
さらに別の実施態様では、異なる発酵容器からの取り出しが2つ以上の発酵ブロス流について同時でない方法。
【0014】
別の実施態様は、異なる発酵容器からの取り出しが2つ以上の発酵ブロス流について別々である方法を提供する。
【0015】
別の実施態様は、不活性ガスが窒素である方法を提供する。
【0016】
さらに別の実施態様では、不活性ガスが空気である方法。
【0017】
さらに別の実施態様では、不活性ガスがCOである方法。
【0018】
さらに別の実施態様では、ストリッピング装置が発酵容器の内部に位置する方法。
【0019】
別の実施態様は、ストリッピング装置が発酵容器の外部に位置する方法を提供する。
【0020】
別の実施態様は、有機液体吸収剤がC以上の高級アルコールである方法を提供する。
【0021】
さらに別の実施態様では、アルコールがオクタノール、ノナノール、およびデカノール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される方法。
【0022】
さらに別の実施態様では、アルコールがデカノールである方法。
【0023】
別の実施態様は、ブタノールが蒸留によって回収される方法を提供する。
【0024】
さらに別の実施態様では、ブタノールの回収が、吸収、液−液抽出、および結晶化からなる群から選択される方法。
【0025】
一実施態様は、
(a)ブタノールがその各発酵容器から生産される、発酵微生物を含む発酵ブロスの一部を取り出して、発酵微生物を含む取出発酵ブロスを形成するステップと、
(b)発酵微生物を含む取出発酵ブロスを、関連吸収セクションがある少なくとも1つのストリッピングセクションを有する装置の、関連吸収セクションと気体連通するが液体連通しないストリッピングセクション内に供給するステップと、
(c)同時に不活性ガスをストリッピングセクション内に供給し、それによってブタノールの一部を、発酵微生物を含む取出発酵ブロスから離して、(i)ブタノールと不活性ガスとを含むガス混合物、および(ii)発酵微生物を含むブタノール減少発酵ブロスを形成するステップと、
(d)発酵微生物を含むブタノール減少発酵ブロスをその各発酵容器に戻すステップとを含む、前記ブタノールが少なくとも1つの発酵容器内で生産される、発酵方法からの発酵微生物を含む少なくとも1つの発酵ブロスを再循環させる方法を提供する。
【0026】
さらに別の実施態様では、発酵ブロス微生物および糖の物理的損失は1%未満である。
【0027】
別の実施態様は、不活性ガスが窒素である方法を提供する。
【0028】
さらに別の実施態様では、不活性ガスがCOである方法。
【0029】
一実施態様は、約5%〜約15%のブタノールとブタノールより低い蒸気圧を有する有機液体吸収剤とを含む、ブタノールに富む吸収剤相を含む中間体組成物を提供する。
【0030】
さらに別の実施態様では、液体吸収剤がC以上の高級アルコールである組成物。
【0031】
さらに別の実施態様では、アルコールが、オクタノール、ノナノール、デカノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される組成物。
【0032】
さらに別の実施態様では、アルコールがデカノールである組成物。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】発酵ブロスがストリッピングガスと向流的に接触する、発酵ブロスからブタノールを除去するためのストリッピングおよび吸収セクションを有する装置を示す。
【図2】発酵ブロスがストリッピングガスと並流的に接触する、発酵ブロスからブタノールを除去するためのストリッピングおよび吸収セクションを有する装置を示す。
【図3】ストリッピングセクションを有するカラムと、吸収セクションを有するカラムとを有する、発酵ブロスからブタノールを除去するための装置を示す。
【図4】一連のストリッピングおよび吸収セクション関連ペアを有するカラムを有する、発酵ブロスからブタノールを除去するための装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
上記および本発明の説明全体を通じての用法で、以下の用語は特に断りのない限り次のように定義される。
【0035】
「原位置生成物取り出し」とは、ここでの用法では生物学的過程において生成物濃度を制御するために、発酵などの生物学的過程から特定発酵産物を選択的に取り出すことを意味する。
【0036】
「向流的に」とは、ここでの用法では、それによって工程流が互いに反対方向に流れる、いくつかの下位セクションに分割できるユニット操作内の工程流の内部配置を指す。特に本出願では、コンタクター内のストリッピングおよび吸収セクションは、セクション上部に載せられて重力によって下に流れる液体と、セクション底部に導入されて圧力勾配によって上に流れる蒸気を有する。
【0037】
「並流的に」とは、ここでの用法では、それによって工程流が互いに同一方向に流れる、いくつかの下位セクションに分割できるユニット操作内の工程流の内部配置を指す。特に本出願では、コンタクター内のストリッピングおよび吸収セクションは、セクション上部に載せられて重力によって下に流れる液体を有し、蒸気もまたセクション上部に導入されて圧力勾配によって下に流れる。これは通常の配置の逆である。
【0038】
「ブタノール」とはここでの用法では、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、およびそれらの混合物を意味する。
【0039】
「不活性ガス」とはここでの用法では、発酵工程と反応せず、発酵ブロスおよび吸収剤のどちらの中でも低溶解度を有するガスを意味する。不活性ガスは、NおよびCOをはじめとするが、これに限定されるものではない化合物の混合物であってもよい。
【0040】
「発酵ブロス」とはここでの用法では、水、糖、溶解固形分、懸濁固形分、ブタノール生成微生物、生成物ブタノール、および発酵容器内に保持される材料のその他の全ての構成物の混合物を意味し、その中で、生成物ブタノールは、存在する微生物による、糖からブタノール、水、およびCOへの反応によって作られる。
【0041】
「発酵容器」とはここでの用法では、それによって糖から生成物ブタノールが作られる発酵反応が実施される、容器を意味する。
【0042】
「ストリッピング」とはここでの用法では、揮発性構成要素の全部または一部を液体ストリームから気体ストリームに変換する作用を意味する。
【0043】
「ストリッピングセクション」とはここでの用法では、ストリッピング操作が行われる接触装置の部分を意味する。
【0044】
「気体連通」とはここでの用法では、1台の装置または操作からの生成物である気相が、次にそれが連通する2台目の装置または操作に送られることを意味する。
【0045】
「液体連通」とはここでの用法では、1台の装置または操作からの生成物である液相が、次にそれが連通する2台目の装置または操作に送られることを意味する。
【0046】
「吸収」とはここでの用法では、気体ストリームからの構成要素の全部または一部を液体ストリームに変換する作用を意味する。
【0047】
「吸収セクション」とはここでの用法では、吸収操作が行われる接触装置の部分を意味する。
【0048】
「ブタノール減少発酵ブロス」とはここでの用法では、発酵ブロスと同様の組成を有するが、材料中のブタノール組成を優先的に減少させるように作用された材料を意味する。
【0049】
「ブタノール濃度」とはここでの用法では、全ストリーム量と比較したストリーム中に含有されるブタノールの量を意味する。
【0050】
「吸収剤」とはここでの用法では、気相から別の化学種を吸収できる液体を意味する。例えばこれは重アルコールなどであってもよく、次にそれは気相からブタノールを吸収できる。
【0051】
糖からブタノールへの発酵は、糖1モルあたり1モルの水と2モルのCOの2つのその他の生成物を生成する。典型的にバッチ発酵では、できた水が発酵容器内に残留する一方、COはガスとして排気される。少量のブタノールはまたCOと共に排気されるが、発酵温度では、ブタノール除去速度はその生成速度に比べて遅い。
【0052】
本発明を図1〜図4に言及して下で概説する。
【0053】
本発明は、発酵ブロスからブタノールを取り出すためのストリッピングおよび吸収の二段ISPR工程からなる。ストリッピング操作の温度および圧力をはじめとするISPR工程の操作条件は、発酵容器内で使用されるのと同様であり、発酵微生物の生存を可能にする。第1段階では、不活性キャリアガスを含む気体ストリームによって、ブタノールがストリッピングユニット内の発酵ブロスからストリッピングされる。不活性キャリアガスは、窒素、CO、空気、またはそれらの混合物を含むことができる。不活性キャリアガスは、追加的ガスの存在が方法に有害でなければ、少なくとも1つの追加的ガスをさらに含むことができる。不活性キャリアガスの選択は、例えば入手可能性および経費に基づくことができる。
【0054】
これらの条件下のブタノールの揮発性は水よりもはるかに大きく、したがって水と比較して、気体ストリーム中のブタノール濃度の増大が起きる。ストリッピング速度は、発酵容器内のブタノールレベルが許容レベル以下に保たれるようでなくてはならない。発酵温度で必要なキャリアガスの量は、発酵工程から放出されるCO量よりもはるかに大きく、このためキャリアガス源が必要になる。このストリッピング工程は発酵容器それ自体の中で行うことができるが、この容器外の外部ストリッピングユニット内で実施されることが多い。ストリッピング工程に起因する液体は発酵容器に戻され、微生物が未使用糖をブタノール、CO、および水に転換し続けることができる。ストリッピング工程の結果としての発酵ブロスからの微生物および糖の物理的損失は、それらの低揮発性のために、例えば約1%未満など最小のはずである。ストリッピング工程は、発酵ブロス中の微生物および糖に有害でない様式で操作される。
【0055】
その間にブタノール含有キャリア気体ストリームは吸収ユニットに送られて、そこでそれはエーテル、アルデヒド、エステル、ケトン、またはアルコール、好ましくは例えばオクタノール、ノナノール、またはデカノール、およびそれらの混合物などの8個以上の炭素原子を有するアルコールなどのブタノールよりも低い蒸気圧を有する低揮発性有機吸収剤と接触し、キャリアガスからブタノールが優先的に吸収されて、ブタノールに富む吸収剤相が形成される。ブタノールに富んだ吸収剤相は、ブタノール含量が約5%〜15%であるものである。
【0056】
次にブタノールに富む吸収剤相は、例えば蒸留、吸収、液体−液体抽出、結晶化などの当該技術分野で知られている手段によって処理されて、吸収ユニット内で再利用するための実質的にブタノールを含まない吸収剤が再生され、生成物ブタノール流が生成する。得られる吸収工程から得られるキャリア気体ストリームはブタノール含量が低く、ファン、送風機、または圧縮機などの適切な機械的圧縮装置の使用によって、工程前面(ストリッピングユニット)に再循環でき、それによってガスループが形成される。COが好ましいキャリアガスである場合、反応装置から発生するCOをガスループ内に導入でき、適切なガス洗浄システムを通じてループ内の過剰なCOが工程の残りからパージされる。
【0057】
図1は、本発明の実施態様を実施するための装置を描写する。このような装置は商業ベンダーから購入でき、または当業者によって組み立てることができる。装置は、吸収セクション20およびストリッピングセクション22を含むカラム10を含む。典型的にセクション20および22は、当該技術分野で良く知られているように、トレーまたはパッキングを含む。さらにガスは、ライン16を通じてカラム10上部またはその近くから出て行き、ファン、送風機、または圧縮機などの機械的圧縮装置14によって圧力が上昇し、ライン18を通じてカラム10底部またはその近くに戻る。システム内の十分なガスの維持は、従来の様式でパージまたは補給によって制御される(図示せず)。
【0058】
工程は、ライン36を通じて、発酵容器(図示せず)からの発酵ブロスをストリッピングセクション22上部またはその近くに送ることで稼働し、そこでブロスは、次にライン18を通じてカラム10に入ってくるガスと向流的に接触する。発酵ブロスに含有されるブタノール画分はガス中に移され、ストリッピングセクション22上部から吸収セクション20底部に送られ、セクション22内で形成されるストリッピングされた発酵ブロスがもたらされる。ストリッピングされた発酵ブロスは、ライン38を通じて発酵容器に戻される。セクション22からセクション20に送られるガスに含有されるブタノールは、ライン32を通じて吸収セクション上部に導入される、エーテル、アルデヒド、エステル、ケトン、またはアルコール、好ましくは例えばオクタノール、ノナノール、またはデカノール、およびそれらの混合物などの8個以上の炭素原子を有するアルコールなどのブタノールよりも低い蒸気圧を有する低揮発性有機吸収剤によってセクション20で吸収され、そこでキャリアガスからブタノールが優先的に吸収されて、ブタノールに富む吸収剤相が形成される。ブタノールに富んだ吸収剤相は、ブタノール含量が約5%〜15%であるものである。
【0059】
ブタノールは、ライン34を通じて低揮発性吸収剤と共に吸収セクション20から取り出され、次に蒸留、デカンテーション、吸収、液体−液体抽出、結晶化などの従来の分離技術を使用して低揮発性吸収剤から分離される(図示せず)。
【0060】
図1に示す装置の代案の実施態様は、カラム10の吸収およびストリッピングセクションの垂直関係が逆転したものであり、すなわちストリッピングセクション22が吸収セクション20の上にある。
【0061】
図2は、本発明のさらなる実施態様を実行する装置を描写する。装置は、吸収セクション20およびストリッピングセクション22を含むカラム10を含む。典型的にセクション20および22は、当該技術分野で良く知られているようにトレーまたはパッキングを含む。さらにガスは、ライン16を通じてカラム10底部またはその近くから出て行き、ファン、送風機、または圧縮機などの機械的圧縮装置14によって圧力が上昇し、ライン18を通じてカラム10上部またはその近くに戻る。システム内の十分なガスの維持は、従来の様式でパージまたは補給によって制御される(図示せず)。
【0062】
工程は、ライン36を通じて、発酵容器(図示せず)からの発酵ブロスをストリッピングセクション22上部またはその近くに送ることで稼働し、そこでブロスは、次にライン18を通じてカラム10に入ってくるガスと並流的に接触する。発酵ブロスに含有されるブタノール画分はガス中に移され、ストリッピングセクション22底部から吸収セクション20上部に送られ、セクション22内で形成されるストリッピングされた発酵ブロスがもたらされる。ストリッピングされた発酵ブロスは、ライン38を通じて発酵容器に戻される。セクション22からセクション20に送られるガスに含有されるブタノールは、ライン32を通じて吸収セクション上部に導入される、エーテル、アルデヒド、エステル、ケトン、またはアルコール、好ましくは例えばオクタノール、ノナノール、またはデカノール、およびそれらの混合物などの8個以上の炭素原子を有するアルコールなどのブタノールよりも低い蒸気圧を有する低揮発性有機吸収剤によってセクション20で吸収され、そこでキャリアガスからブタノールが優先的に吸収されて、ブタノールに富む吸収剤相が形成される。ブタノールに富んだ吸収剤相は、ブタノール含量が約5%〜15%であるものである。ブタノールは、ライン34を通じて低揮発性吸収剤と共に吸収セクション20から取り出され、次に蒸留、デカンテーション、吸収、液体−液体抽出、結晶化などの従来の分離技術を使用して低揮発性吸収剤から分離される(図示せず)。
【0063】
図2に示す装置の別の実施態様は、カラム10の吸収およびストリッピングセクションの垂直関係が逆転したものであり、すなわち吸収セクション20がストリッピングセクション22の上にある。
【0064】
図3は、本発明のさらなる実施態様を実行する装置を描写する。装置は、吸収セクション20を含むカラム10と、ストリッピングセクション22を含むカラム12とを含む。典型的にセクション20および22は、当該技術分野で良く知られているようにトレーまたはパッキングを含む。カラムはライン13を通じて接続し、それによってガスをカラム12上部または上部近くから、カラム10底部または底部近くに送ることができる。さらにガスは、ライン16を通じてカラム10上部またはその近くから出て行き、ファン、送風機、または圧縮機などの機械的圧縮装置14によって圧力が上昇し、ライン18を通じてカラム12底部またはその近くに戻る。システム内の十分なガスの維持は、従来の様式でパージまたは補給によって制御される(図示せず)。
【0065】
工程は、ライン36を通じて、発酵容器(図示せず)からの発酵ブロスをストリッピングセクション22上部またはその近くに送ることで稼働し、そこでブロスは、次にライン18を通じてカラム12に入ってくるガスと向流的に接触する。発酵ブロスに含有されるブタノール画分はガス中に移され、ライン13を通じてストリッピングセクション22上部から吸収セクション20底部に送られ、セクション22内で形成されるストリッピングされた発酵ブロスがもたらされる。ストリッピングされた発酵ブロスは、ライン38を通じて発酵容器に戻される。セクション22からセクション20に送られるガスに含有されるブタノールは、ライン32を通じて吸収セクション上部に導入される、エーテル、アルデヒド、エステル、ケトン、またはアルコール、好ましくは例えばオクタノール、ノナノール、またはデカノール、およびそれらの混合物などの8個以上の炭素原子を有するアルコールなどのブタノールよりも低い蒸気圧を有する有機吸収剤によってセクション20で吸収され、そこでキャリアガスからブタノールが優先的に吸収されて、ブタノールに富む吸収剤相が形成される。ブタノールに富んだ吸収剤相は、ブタノール含量が約5%〜15%であるものである。ブタノールは、ライン34を通じて低揮発性吸収剤と共に吸収セクション20から取り出され、次に蒸留、デカンテーション、吸収、液体−液体抽出、結晶化などの従来の分離技術を使用して低揮発性吸収剤から分離される。
【0066】
図3に示す装置の別の実施態様は、ガス流に対する操作順序が逆転しているものであり、すなわち(1)ストリッピング、次に吸収、次に機械的圧縮から、(2)吸収、次にストリッピング、次に機械的圧縮の順である。
【0067】
ここで図4について述べると、本発明のさらなる実施態様を実施するための装置が示される。装置は、一連の吸収およびストリッピングセクションの関連ペアを含むカラム10を含む。図4では、3対の吸収およびストリッピングセクションが示されるが、より多くまたはより少なくあることも可能である。セクション20および22はそれぞれ吸収およびストリッピングセクションの上部ペアを形成し、セクション40および42は吸収およびストリッピングセクションの中間ペアを形成し、セクション60および62は吸収およびストリッピングセクションの下部ペアを形成する。さらにガスは、ライン16を通じてカラム10上部またはその近くから出て行き、ファン、送風機、または圧縮機などの機械的圧縮装置14によって圧力が上昇し、ライン18を通じてカラム10底部またはその近くに戻る。ガスは、セクション62からセクション60、セクション60からセクション42、セクション42からセクション40、セクション40からセクション22、そしてセクション22からセクション20に送られて、カラム10を上向きに通過する。システム内の十分なガスの維持は、従来の様式でパージまたは補給によって制御される(図示せず)。
【0068】
工程は、ライン76を通じて、発酵容器(図示せず)からの発酵ブロスを下部ストリッピングセクション62上部またはその近くに送ることで稼働し、それは次にライン18を通じてカラム10に入ってくるガスと向流的に接触する。発酵ブロスに含有されるブタノール画分はガス中に移され、ストリッピングセクション62上部から吸収セクション60底部に送られ、セクション62内で形成されるストリッピングされた発酵ブロスがもたらされる。ストリッピングされた発酵ブロスは、ライン78を通じて発酵容器に戻される。セクション62からセクション60に送られるガスに含有されるブタノールは、ライン72を通じて吸収セクション上部に導入される、エーテル、アルデヒド、エステル、ケトン、またはアルコール、好ましくは例えばオクタノール、ノナノール、またはデカノール、およびそれらの混合物などの8個以上の炭素原子を有するアルコールなどのブタノールよりも低い蒸気圧を有する低揮発性有機吸収剤によってセクション60で吸収され、そこでキャリアガスからブタノールが優先的に吸収されて、ブタノールに富む吸収剤相が形成される。ブタノールに富んだ吸収剤相は、ブタノール含量が約5%〜15%であるものである。ブタノールは、ライン74を通じて低揮発性吸収剤と共に吸収セクション60から取り出され、次に蒸留、デカンテーション、吸収、液体−液体抽出、結晶化などの従来の分離技術を使用して低揮発性溶剤から分離される。
【0069】
同様にして、工程は、発酵ブロスを同一容器または異なる発酵容器(図示せず)から、中間および上部ストリッピングセクション/吸収セクションペアに同時に送ることで稼働できる。
【0070】
ストリッピングセクション/吸収セクションペアを積み重ねて順次に稼働させることで、高さは増大するがカラム径を縮小できる。より高い圧力比での圧縮という犠牲はあるものの、循環するCOまたはその他の不活性ガスの容積は減少する。複数の発酵容器が稼働する工程では、発酵ブロス流を別々に保つことが有利である可能性が高く、それは複数のストリッピングセクション/吸収セクションペアを有することで容易にできる。
【0071】
前述の説明中で本発明の特定の実施態様について述べたが、本発明は、本発明の趣旨と本質的特性を逸脱することなく、多数の修正、置き換え、および再編成できることが当業者によって理解される。本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書よりもむしろ添付の特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)発酵ブロスの少なくとも1つの一部をその各発酵容器から連続的に取り出して、取出発酵ブロスを形成するステップと、
(b)取出発酵ブロスを、関連随伴吸収セクションを備えた少なくとも1つのストリッピングセクションを有する装置の、関連吸収セクションと気体連通するが液体連通しないストリッピングセクション内に供給するステップと、
(c)同時に不活性ガスをストリッピングセクション内に供給し、それによってブタノールの一部を発酵ブロスから離して、(i)ブタノールと不活性ガスとを含むガス混合物、および(ii)ブタノール減少発酵ブロスを形成するステップと、
(d)ブタノール減少発酵ブロスをその各発酵容器に戻し、そしてガス混合物をステップ(b)のストリッピングセクションに関連する装置の吸収セクションに入れさせるステップと、
(e)ブタノールよりも低い蒸気圧とブタノール吸収能力とを有する有機液体吸収剤をステップ(d)の吸収セクション内に連続的に供給し、それによって液体吸収剤とガス混合物からのブタノールの少なくとも一部とを含む液体混合物を形成し、それによってガス混合物中のブタノール含量を減少させて、ブタノール減少ガス混合物を形成するステップと、
(f)ブタノール減少ガス混合物を装置のストリッピングセクションに戻すステップと、
(g)ブタノールを液体混合物から回収し、液体吸収剤を装置の吸収セクションに戻すステップと
を含み、
それによって、方法の結果として発酵ブロス中のブタノール濃度を制御する、
ブタノールと水を含み、1つ以上の各発酵容器内に収容される、1つ以上の発酵ブロス中の、ブタノール濃度を所定のレベル以下に制御する方法。
【請求項2】
同一発酵容器からの取り出しが、2つ以上の発酵ブロス流について同時である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つ以上の発酵ブロス流の取り出しが同時でない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
異なる発酵容器からの取り出しが、2つ以上の発酵ブロス流について同時である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
異なる発酵容器からの取り出しが、2つ以上の発酵ブロス流について同時でない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
異なる発酵容器からの取り出しが、2つ以上の発酵ブロス流について別々である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
不活性ガスが窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
不活性ガスがCOである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ストリッピング装置が発酵容器の内部に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ストリッピング装置が発酵容器の外部に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
有機液体吸収剤がC以上のアルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
アルコールがオクタノール、ノナノール、およびデカノール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アルコールがデカノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ブタノールが蒸留によって回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ブタノールの回収が、吸収、液−液抽出、および結晶化からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ブタノールが少なくとも1つの発酵容器内で生産される、発酵方法からの発酵微生物を含む少なくとも1つの発酵ブロスを再循環させる方法であって、
(a)該ブタノールがその各発酵容器から生産される、発酵微生物を含む発酵ブロスの一部を取り出して、発酵微生物を含む取出発酵ブロスを形成するステップと、
(b)発酵微生物を含む取出発酵ブロスを、関連吸収セクションを備えた少なくとも1つのストリッピングセクションを有する装置の、関連吸収セクションと気体連通するが液体連通しないストリッピングセクション内に供給するステップと、
(c)同時に、不活性ガスをストリッピングセクション内に供給し、それによってブタノールの一部を、発酵微生物を含む取出発酵ブロスから離して、(i)ブタノールと不活性ガスとを含むガス混合物、および(ii)発酵微生物を含むブタノール減少発酵ブロスを形成するステップと、
(d)発酵微生物を含むブタノール減少発酵ブロスをその各発酵容器に戻すステップとを含む、上記方法。
【請求項17】
不活性ガスが窒素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
不活性ガスがCOである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
約5%〜約15%のブタノールを含むブタノールに富む吸収剤相と、ブタノールよりも低い蒸気圧を有する有機液体吸収剤とを含む中間組成物。
【請求項20】
液体吸収剤がC以上のアルコールである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
アルコールがオクタノール、ノナノール、デカノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
アルコールがデカノールである、請求項20または21に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−505839(P2011−505839A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538184(P2010−538184)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/086568
【国際公開番号】WO2009/079362
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(310011310)ビュータマックス・アドバンスド・バイオフューエルズ・エルエルシー (24)
【Fターム(参考)】