説明

発電システムのブロー操作方法

【課題】作業員の安全性を確保した上で、作業性の良い点検作業を行うことである。
【解決手段】復水系統、給水系統、ボイラー系統、海水系統等の種々の系統ブロックに分割し、各系統ブロックの電源や給水等を各系統ブロック毎にブローさせる縁切り手段を各系統ブロックの上流及び下流における分解点に配設し、いずれかの系統ブロックを縁切り手段によりブローした状態で各作業箇所毎の前後弁の開閉を伴うことなく点検操作を行い、全ての作業箇所の点検を終了後に縁切り手段によるブロー状態を解除するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きわめて多数の作業部位を連結することによりシステム化した発電システムにおいて、作業箇所の点検のためにブロー操作を行うようにした発電システムのブロー操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発電システムにおいて、各作業部位及び全体の点検が定期的に行なわれている。この場合、各作業部位毎に点検操作を行うものであるが、点検すべき作業部位に水・蒸気等の流入がないように水・蒸気等の流入経路の前後に弁を配設し、これらの前後弁を閉止して目的の作業部位の運転を止めるブロー操作を行っている。このブロー操作は、作業部位毎に個々に行われるものであり、一つの作業部位、すなわち、作業箇所に少なくとも二つの弁の開閉を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の発電システムの点検作業において、きわめて多数の作業部位毎に前後弁を閉止するブロー操作を行うことは、前後弁の操作量が多くて作業量の負担が増加し、一定期間内に定期点検をしようとすると大勢の作業員を必要とする。また、発電システムは、きわめて複雑な経路を組み合わせたものであり、作業部位の特定もその範囲の把握が困難であり、どの前後弁を操作すべきかの認定も難しいものである。具体的には、発電システムの個々の作業部位の点検を順次個別に行うものであるが、作業票に従って、作業部位毎に操作禁止札を取り付けてからモータ等の可動部が回らないように電源を切り、水・蒸気等の流入がないように前後弁を閉止し、かつ、その箇所の点検が終了すると、電源を入れて前後弁を開放し、場合によっては逆流防止のための弁を閉止するという作業をきわめて多数の作業部位毎に繰り返さなければならないものである。例えば、ある発電所においては、一台の発電機を備えた発電システムにおける点検作業が、12〜13名の作業員で5日かかるという状態である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発電システムにおいて、復水系統、給水系統、ボイラー系統、海水系統等の種々の系統ブロックに分割し、前記各系統ブロックの電源や給水等を各系統ブロック毎にブローさせる縁切り手段を各系統ブロックの上流及び下流における分解点に配設し、いずれかの前記系統ブロックを前記縁切り手段によりブローした状態で各作業箇所毎の前後弁の開閉を伴うことなく点検操作を行い、全ての作業箇所の点検を終了後に前記縁切り手段によるブロー状態を解除するようにした。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、復水系統、給水系統、ボイラー系統、海水系統等に分割された各系統ブロック毎に縁切り手段によりブローされるので、ブロー操作された系統ブロックの中では、各作業部位の前後弁の開閉操作を伴うことなく、作業員による点検作業を自由に行うことができ、これにより、作業員の安全を確保した上で操作量の低減を図ることができて迅速な点検作業を行なうことができるという効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。図1に示すものは、1号機及び2号機を備えた発電システムの一例であり、1号機は石炭を燃料として、2号機は重油・原油を燃料としてボイラーで発生させた高温・高圧の蒸気(熱エネルギー)を用いてタービンを高速回転させ(運動エネルギー)、さらに、タービンと回転軸を同一とする発電機で発電(電気エネルギー)を行なっている。また、電気を発生させる過程においては、できるだけ環境への影響を少なくするため、大気汚染防止対策として脱硝装置や電気式集塵機、及び脱硫装置などを設備し、水質汚濁防止対策として廃水処理装置、脱窒装置等を設置し、騒音・振動対策として回転機器の屋内配置、安全弁へのサイレンサー設置などが行われている。
【0007】
このように構成された発電システムにおいて、点検作業のために必要なブロー範囲を、ボイラー系統・給水系統・復水系統・海水系統の四つの大きな系統に分離し、作業系統内を完全にブローすることにより作業者の安全を確保した上で、各作業箇所毎の前後弁の開閉操作を不要なものとして操作量の少ない状態での点検作業を可能にしている。
【0008】
すなわち、まず、各系統内で作業管理するために、多系統からの水・蒸気等の流入がないように、原則として各系統間は、縁切り手段として機能する系統分離弁による分離操作を行う。この場合、該当する系統分離弁にはその系統を明記した操作禁止札を取り付け、作業が全て完了するまではその系統分離弁を開放しない。また、系統分離弁自体の点検等により、系統分離ができない場合には、代替の弁を閉止し操作禁止札の掛け替えを行う。さらに、系統分離弁が2箇所の系統を同時に分離してしまうものであるときには、両系統の操作禁止札を取り付け、一方の系統の作業が完了した場合には、作業中の系統の操作禁止札を残し、完了した系統の操作禁止札のみを回収する。
【0009】
このようなブロー作業に先立って、縁切り手段によりブローした状態の系統ブロックの点検部位を予め定めた系統図一覧が作業員に渡されている。また、例えば、ボイラー系統に用いられている各種の弁は、表1〜3に示されているように非常に数の多いものであり、これらの表1〜3には、弁名称、弁番号が明記されていると共に、それぞれの弁の通常時の開閉状態、系統ブロー時の開閉状態、水張り時の開閉状態が表示されている。ここで、縁切り手段として機能する系統分離弁は、「分解点」と表記された弁であり、具体的には、加熱器右側スプレイ止弁3V−33A(給水系統ブロー分解点)、加熱器左側スプレイ止弁3V−33B(給水系統ブロー分解点)、#7給水加熱器給水出口弁3V−118(給水系統ブロー分解点)、#7給水加熱器給水バイパス弁3V−119(給水系統ブロー分解点)、再熱器スプレイ止弁2V−19(給水系統ブロー分解点)、A−BCP封水入口元弁4V−102A(Eロック、給水系統分解点)、A−BCP封水出口弁4V−113A(Eロック、復水系統分解点)、B−BCP封水入口元弁4V−102B(Eロック、給水系統分解点)、B−BCP封水出口弁4V−113B(Eロック、復水系統分解点)、C−BCP封水入口元弁4V−102C(Eロック、給水系統分解点)、C−BCP封水出口弁4V−113C(Eロック、復水系統分解点)等である。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
【表3】

【0013】
また、具体的な配管図としては、その一部しか図示しないが、例えば、ボイラー系統のブロー系統図は、図2〜図7に示す。この図示の状態は、ボイラー系統の一部のみを図示しているものであり、また、図示を省略するが、給水系統・復水系統・海水系統についても同様なブロー系統図が存するものである。
【0014】
つぎに、系統ブロー弁・空気抜き弁の開操作を行う。すなわち、縁切り手段としての系統分離弁による系統の分離を行ったのち、作業系統内を完全にブローするため、各空気抜き弁・ブロー弁の開操作を行う。原則として、開放された弁には、その系統を明記した操作禁止札を取り付け、系統内の作業が完了するまでは開放状態を維持する。ただし、次のような場合には、閉止するものとする。
(1)ブロー弁において、系統ブロー後、ドレン管からの逆流があり、作業又は設備の保管に支障をきたす場合。
(2)系統内の配管ブローが完了されており、作業上の都合で開閉操作が必要なもの。この場合、該当作業の補助票を弁に取り付ける。
(3)系統内の装置が完全にブローされており、装置内での作業で弁が開になった場合に、落下・墜落の危険がある場合(例えば、復水器出口弁)。
【0015】
さらに、ブローした状態の系統ブロックの系統ブロー操作を行った手動弁に関しては、系統復旧までは原則として操作禁止札を取り付ける。操作禁止札を取り付ける弁は、次の通りである。
(a)常時「開」の弁であっても系統の分離弁については、操作禁止札を取り付けるものとする。
(b)配管に対して直列に複数個取り付けてあるもので、常時「開」となっているものについては、配管ブロー時の「開」確認のみとし、開操作した弁についてのみ操作禁止札を取り付けるものとする。
(c)逆止弁等により系統内で完全にブローすることができず、その弁が「開」となったとき系統側へ流入の可能性がある場合、その弁を閉止し操作禁止札を取り付ける。
【0016】
ついで、系統ブロー操作に関連する電動弁・補機の電源ロックについて説明する。電源ロックは、系統分離弁に対して行われ、また、逆止弁等により系統内で完全にブローすることができず、その弁が「開」となったとき系統側へ流入の可能性がある場合等に行われる。これらの電源ロック箇所にはその系統を明記した操作禁止札を取り付けるものとする。さらに、ポンプ等の補機の電源ロックは、系統ブローにより運転した場合、空引き又は締め切り運転となるものについては、系統ブロー操作を行う前に電源ロックをしておく。
【0017】
系統ブロー操作に関連する電動弁・空気作動弁の札掛け操作(CRT札掛け操作)は、電動弁・空気作動弁が系統分離弁に該当せず、系統ブローにより系統が完全にブローできており、仮に弁が開閉したとしても作業の安全に支障をきたさないものであるので、札掛けした場合には、その理由を明確にする。
【0018】
つぎに、作業票の取り扱い・作業の進め方について説明する。作業票には、これまで通り作業範囲ごとのアイソレート・ブローの操作内容で記入してあるため、各作業票について系統ブロー操作で対応できるか検討しなければならない。また、原則として系統ブローの復旧段階ではその系統内の作業がすべて完了していないと系統ブローの復旧ができないため、系統内のすべての作業を把握しておく必要がある。
1.系統ブロー範囲の設定・準備
あらかじめ定期点検作業開始前に下記の準備を行い、系統ブロー開始から作業表の受け渡しがスムーズに行われるようにしておく。
【0019】
a.系統ブロー範囲の設定
工事担当者から提出された弁の点検リスト・作業内容を参考に設定し、系統分離弁及びブロー弁を決定する。
【0020】
b.バルブチェックリスト・系統図の作成
系統分離弁及びブロー弁を決定した後、系統分離・ブロー操作箇所を記入したバルブチェックリスト・系統図を作成する。
【0021】
c.操作内容の検討
作業票一覧表を参考に系統ブロー操作で対応できる操作を検討しておく。
2.系統ブロー操作の実施
定期点検が開始され、給水ヒータの水圧テスト等が完了し、その系統のブロー操作が可能となった段階で、あらかじめ準備されたバルブチェックリスト・系統図を用い系統ブロー操作を行う。
3.作業票の操作内容の検討について
a.補助票(作業操作標識)の発行基準について
(1)作業票の記載内容により系統ブローで対応できる弁操作及び電源ロックについては、補助票の発行は行わないものとし、作業票に系統ブローを記入する。ただし、ポンプ・電動弁の点検と作業の安全上、電源ロックが必要なものや作業操作標識が必要なものについては、系統ブローで電源ロックしている機器であっても補助票(作業操作標識)を発行し、電源ロック箇所に取り付ける。
【0022】
(2)作業票の記載内容で、系統ブローで対応できない箇所の弁操作及び電源ロックについては、補助票を発行し個別に操作を行う。
4.作業受け渡し時の取り扱いについて
a.作業票を受け渡し時の注意点
(1)作業票を工事担当者へ受け渡す場合、系統ブローの捜査範囲内で対応できるもので作業票の記載内容と異なる場合は、工事担当者へ操作内容を説明し了解を得る。
【0023】
(2)作業票を工事担当者へ受け渡す場合、系統ブロー操作を行った後、完全にブローができていることを確認しておく。
【0024】
b.系統ブロー範囲内での作業箇所の把握
作業票を受付時に、系統ブロー内の作業票は全て系統ブロー操作関連作業一覧表に記入し、各系統ブロー範囲内での作業箇所・内容を把握しておく。
5.作業中及び作業完了後の取り扱いについて
a.系統ブロー範囲内での残作業の把握
(1)作業票の返却時に、系統ブロー内の作業は全て系統ブロー操作関連作業一覧表に完了日を記入し、各系統ブロー範囲内での残作業を把握しておく。
【0025】
b.試運転時の取り扱いについて
(1)系統ブローにより、補機の電源ロックを行った箇所がモータ単体試運転を行う場合は、試運転時のみ電源の復旧を可能とし、系統ブローの操作禁止札を取り外せるものとする。ただし、試運転完了後は、電源をロックし操作禁止札を取り付ける。
【0026】
(2)系統ブローにより、補機の電源ロックを行った箇所が実機での試運転を行う場合は、系統の復旧(試運転機器の水張りまで)が完全に完了していないものについては、電源の復旧はできないものとする。
【0027】
c.系統復旧前の注意点
(1)系統復旧を行うためには、その系統内の全ての作業が完了していなくてはならないため、系統の復旧予定日をあらかじめ、工事担当者に連絡し復旧予定日までに、作業票を返却してもらう。やむを得ず、作業が完了できない場合は、系統の復旧に支障がないものであれば、個別の操作に切り換え、補助票の発行・弁操作を行い系統の復旧が可能な状態にしておく。
【0028】
d.系統復旧時の注意点
(1)系統復旧を行うためには、その系統内の全ての作業が完了していなくてはならないため、系統ブロー操作関連作業一覧表及び現場確認により作業の完了を確認し、問題がなければ系統の復旧を行う。
【0029】
このように、復水系統、給水系統、ボイラー系統、海水系統等の種々の系統ブロックに分割し、各系統ブロックの電源や給水等を各系統ブロック毎にブローさせる縁切り手段を各系統ブロックの上流及び下流における分解点に配設し、いずれかの系統ブロックを縁切り手段によりブローした状態で各作業箇所毎の前後弁の開閉を伴うことなく点検操作を行い、全ての作業箇所の点検を終了後に縁切り手段によるブロー状態を解除するようにした本実施の態様によれば、従来、12〜13名の作業員で5日かかっていた点検作業を、7〜8名の作業員で2日で完了することができたものである。この点は、個々の作業箇所の前後弁を開閉して点検作業をする従来の方法に比べて飛躍的に開閉すべき弁の数が少なくなったことに起因する。しかも、大まかな系統毎に操作ブローを行うことができるため、操作ブローした系統ブロック内においては作業員に対する安全性がきわめて高く、作業時における事故の発生もなくなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の態様を示すもので、発電システムの一例を示す概略系統図である。
【図2】ボイラー系統ブロー系統図である。
【図3】図2に続くボイラー系統ブロー系統図である。
【図4】図3に続くボイラー系統ブロー系統図である。
【図5】図4に続くボイラー系統ブロー系統図である。
【図6】図5に続くボイラー系統ブロー系統図である。
【図7】図6に続くボイラー系統ブロー系統図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電システムにおいて、復水系統、給水系統、ボイラー系統、海水系統等の種々の系統ブロックに分割し、前記各系統ブロックの電源や給水等を各系統ブロック毎にブローさせる縁切り手段を各系統ブロックの上流及び下流における分解点に配設し、いずれかの前記系統ブロックを前記縁切り手段によりブローした状態で各作業箇所毎の前後弁の開閉を伴うことなく点検操作を行い、全ての作業箇所の点検を終了後に前記縁切り手段によるブロー状態を解除するようにしたことを特徴とする発電システムのブロー操作方法。
【請求項2】
操作した縁切り手段には、操作禁止札を取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1記載の発電システムのブロー操作方法。
【請求項3】
点検操作の開始前に縁切り手段によりブローした状態の系統ブロックの点検部位を予め定めた系統図一覧を作業員に渡すようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の発電システムのブロー操作方法。
【請求項4】
縁切り手段自体の点検により系統分離ができない場合には、当該縁切り手段の代替の弁を閉止して操作禁止札を取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の発電システムのブロー操作方法。
【請求項5】
一つの縁切り手段により二つの系統ブロックがブローされる場合には、両系統の操作禁止札を取り付け、一方の系統ブロックの作業が完了した場合には、作業中の系統ブロックの操作禁止札を残して完了した系統ブロックの操作禁止札のみを回収するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の発電システムのブロー操作方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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