説明

発電システム

【課題】光エネルギーから電気エネルギーへの変換を高効率かつ低コストにて行うことができる発電システムを提供すること。
【解決手段】太陽電池と、導水管と、熱電変換素子とを備え、導水管は、加圧水を流通させる送水管と接続される接続端部と、接続端部よりも下流側で太陽電池に接触する第1接触部と、第1接触部よりも下流側で熱電変換素子と接触する第2接触部とを有し、熱電変換素子は、第2接触部内を流れる水から熱を第2接触部を介して吸収して外部に放熱することにより発電するよう構成された発電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池および熱電変換素子を備えた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、エネルギー源が無尽蔵であること、および発電時に有害物質や温暖効果ガスを排出しないことから、低環境負荷の発電技術として注目を浴びている。
また、太陽電池を用いた発電システムは、建造物の屋根または屋上の余剰スペースを利用した発電が可能であり、一般家屋にも普及が進んでいる。
【0003】
太陽電池としては、製造コストが安価であることから、主にシリコンからなる半導体膜を有する太陽電池が広く用いられている。
太陽電池に光が入射すると、半導体膜の荷電子帯から伝導帯へ電子が励起し、電子−正孔対が生成されることにより起電力が発生し、光のエネルギーが電気エネルギーへと変換される。この変換効率はより高いことが望まれるが、従来の太陽電池には次のような課題があり、光エネルギーの一部しか変換できていない。
【0004】
光エネルギーの変換によって出力される電圧は主に半導体膜のバンドギャップ値に依存するため、紫外光のようにエネルギーの高い光が入射されても、バンドギャップ値に依存する出力電圧しか得られず、残りの光エネルギーはほとんど熱に変わってしまい、電気エネルギーとして有効利用できない。
また、この熱により半導体膜の温度が上がると、バンドギャップが影響を受けて、変換効率が低下してしまう問題もある。
一方、バンドギャップのエネルギーに満たない長波長の赤外光は、半導体膜によって吸収されて電気エネルギーに変換されないため、有効利用できていない。それに加え、赤外光は、太陽電池の温度を上昇させる原因となり、太陽電池の変換効率を低下させてしまう。
【0005】
このように、太陽電池に入射する光のエネルギーは、一部が電気エネルギーに変換されるに過ぎず、大部分が熱に変換されてしまっている。
これに対し、太陽電池の受光面とは反対側の非受光面(裏面)に熱電変換素子を接触して設け、太陽電池によって光を電気エネルギーに変換すると共に、太陽電池で生じた熱エネルギーを熱電変換素子によって電気エネルギーへ変換することにより、エネルギー回収効率を向上させる技術(以下、第1技術という)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、太陽電池の受光面とは反対側の非受光面と、流動冷却媒体を流通させる冷却部との間に、熱電変換素子を挟み込むように設けることにより、太陽電池と冷却部との温度差によって熱電変換素子にて発電し、熱エネルギーを電気エネルギーとして回収する技術(以下、第2技術という)も知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、ポンプによって循環流路内の液状熱媒体を循環させる熱輸送手段を用いて、太陽電池の熱を蓄熱部に輸送するとともに、この蓄熱部に熱電変換素子を接触させて設けることにより、熱エネルギーを電気エネルギーとして回収する技術(以下、第3技術という)も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7―142750号公報
【特許文献2】特開2003−113771号公報
【特許文献3】特開2003−70273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの従来技術には、以下の課題があった。
第1技術の場合、熱電変換素子の一方の面を他方の面よりも高温にすることで、高温側から低温側へ移動する熱エネルギーを電気エネルギーに変換するが、高い発電効率が得られる熱電変換素子は、熱伝導性が低い傾向にある。このため、太陽電池の裏面に熱電変換素子を設置すると、太陽電池に発生した熱が電池内部にこもり、太陽電池の温度が上昇しやすくなる。この結果、太陽電池の発電効率が低下してしまい、コストをかけて熱電変換素子を設置したメリットが小さくなってしまう。
【0009】
また、第2技術の場合、太陽電池の裏面に熱電変換素子を介して冷却部が設けられているが、熱電変換素子の熱伝導性が低いと太陽電池の温度を十分に下げられず、太陽電池の発電効率が低下する問題がある。また、太陽電池の裏面全面に熱電変換素子を配置すると製造コストの増大を招き、裏面の一部のみに配置すると熱エネルギーを有効活用することができない。
【0010】
また、第3技術の場合、循環流路内の液状熱媒体を循環させるためにポンプが必要であると共に、ポンプを駆動するための電気エネルギーが必要であり、その電気エネルギーを太陽電池による発電で賄っているため、使用可能な電気エネルギー量が目減りしてしまう。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、光エネルギーから電気エネルギーへの変換を高効率かつ低コストにて行うことができる発電システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かくして、本発明によれば、太陽電池と、導水管と、熱電変換素子とを備え、導水管は、加圧水を流通させる送水管と接続される接続端部と、接続端部よりも下流側で太陽電池に接触する第1接触部と、第1接触部よりも下流側で熱電変換素子と接触する第2接触部とを有し、熱電変換素子は、第2接触部内を流れる水から熱を第2接触部を介して吸収して外部に放熱することにより発電するよう構成された発電システムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発電システムによれば、導水管内に水を流すことにより、水によって第1接触部を介して太陽電池を冷却することができるため、太陽電池内で発生する熱による過度の温度上昇を抑えることができ、温度上昇による光電変換効率の低下を抑制することができる。
また、太陽電池の熱を吸収した水は、導水管を通って熱電変換素子へ伝達され、熱電変換素子によって熱エネルギーが電気エネルギーに変換される。
したがって、太陽電池が太陽光を受光し、それによって発電時に生じる熱および赤外光から受ける熱によって太陽電池が温度上昇しても、温度上昇による光電変換効率の低下を抑制することができ、その上、太陽電池の熱をも熱電変換素子による発電に利用することができるため、太陽エネルギーを利用した高効率な発電が可能となる。
【0014】
さらに、この発電システムによれば、次のことから製造コストおよび発電コストを低く抑えることができる。
第一に、太陽電池の冷却と、太陽電池から熱電変換素子への熱の輸送を、特殊な冷媒を用いることなく、既設のポンプ装置によって送水管に送り込まれる安価な加圧水(例えば、水道水、飲料水または工業用水として汲み上げられる地下、池、沼、湖、海等の水)を利用することができる。特に、水道水であれば、人の生活領域には多くの水道管が地下に敷設されているため、この発電システムの利用可能な場所が広範囲となる。
第二に、太陽電池が建造物の屋根または屋上に設置される場合、この発電システムでは、既設のポンプ装置によって送水管に送り込まれる加圧水を利用することにより、高い位置に設置された太陽電池まで水を供給することができるため、水を送り出すための新たなポンプ装置が不要である。また、水道水を利用する場合、水道管内の水圧のみでは水道水を供給困難な高い建造物には、高層階まで水道水を供給するためのポンプ装置が既設されているため、そのポンプ装置をこの発電システムのために利用すればよい。また、例えば、この発電システムを備えた発電高層ビルを新たに建設する場合でも、人の生活には水道水が必要不可欠であり、高層階に水道水を供給するために必然的にポンプ装置が備えられるため、発電システム専用のポンプ装置は必要とはならない。
【0015】
第三に、太陽電池と熱電変換素子を離れた位置に設けることができるため、発電システムの設計の自由度が高く、例えば、太陽電池を大規模面積で設置しても、熱電変換素子は小規模なものとすることができる。
第四に、水道管の多くは地下に埋設されており、気温が高くても地中の温度上昇は比較的小さいため、水道管内の水道水も比較的低温に保たれている。つまり、水道水は、人為的にエネルギーを使って冷却しなくても低温に保たれているため、水道水を利用することによって安価で効率的な太陽電池の冷却が可能となり、発電コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明に係る発電システムの実施形態1を示す概略構成図である。
【図2】図2は実施形態1における熱電変換モジュールに備えられた熱電変換素子の基本構造を示す概略図である。
【図3】図3は実施形態1における熱電変換モジュールを示す概略図である。
【図4】図4は本発明の発電システムの実施形態1における第1接触部の具体的な構成例を示す斜視図である。
【図5】図5は本発明の発電システムの実施形態2における導水管の第1接触部を示す平面図である。
【図6】図6は本発明の発電システムの実施形態3における導水管の第1接触部を示す平面図である。
【図7】図7は本発明の発電システムの実施形態3における導水管の第1接触部を示す斜視図である。
【図8】図8は図7の第1接触部の線Xの位置での垂直方向断面図である。
【図9】図9は本発明の発電システムを備えた発電建造物を示す概略構成図である。
【図10】図10は本発明の発電システムを備えた別の発電建造物を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発電システムは、太陽電池と、導水管と、熱電変換素子とを備え、導水管は、加圧水を流通させる送水管と接続される接続端部と、接続端部よりも下流側で太陽電池に接触する第1接触部と、第1接触部よりも下流側で熱電変換素子と接触する第2接触部とを有し、熱電変換素子は、第2接触部内を流れる水から熱を第2接触部を介して吸収して外部に放熱することにより発電するよう構成されたことを特徴とする。
ここで、「太陽電池」とは、太陽電池セルを1個以上有するものを意味し、太陽電池セルを複数個有してなる太陽電池モジュールも含まれる。
また、「加圧水」とは、浄水場からポンプ装置にて加圧されて水道管に導入される水(飲料水、工業用水等の水道水)、および、地下(地下の貯水槽を含む)、池、沼、湖、海等からポンプ装置にて汲み上げられて所定の送水管に導入される水を意味する。
【0018】
この発電システムは、太陽電池が受ける光エネルギー(主に太陽光エネルギー)を電気エネルギーとして高効率に回収するよう構成されたものであり、太陽電池による光発電と、太陽電池の熱を水道水にて回収し熱電変換素子へ伝達して発電させる熱発電の両方で電気エネルギーを回収する。
この発電システムは、次の(1)〜(9)のように構成されてもよく、それらを組み合わせてもよい。
【0019】
(1)送水管が水道管である。つまり、水道管から供給される水道水を本発電システムに利用する。
このようにすれば、水道管は人の生活領域に広く設けられているため、発電システムを設置して使用可能な適用場所が広範囲となる。また、前記のように水道管の多くは地下に埋設されているため、水道管内の水道水は比較的低温に保たれており、人為的にエネルギーを使って冷却しなくても低温に保たれた水道水によって、安価で効率的な太陽電池の冷却が可能となり、発電コストを低減することができる。
【0020】
(2)導水管の第2接触部を通過した水を貯留する貯水槽をさらに備えている。
このようにすれば、熱輸送に用いた水を一旦貯水槽に貯め、貯水槽内の水を本来の用途に使用することができる。
例えば、水道管を通って家屋に供給される水道水を本発電システムに利用すれば、家屋内で断続的に使用される水道水の利用に対して、熱輸送のための水流量を平滑化することができる。つまり、発電に適した流量で水を導水管内に流しつつ、熱輸送に使用した後の水道水を貯水槽から生活用水として無駄なく使用することができる。
また、別の場合、ポンプ装置にて汲み上げられた地下水も、本発電システムの太陽電池の冷却および熱電変換素子への熱輸送に効率的に利用された後、貯水槽にて貯水され、貯水槽から本来の用途(飲料水あるいは工業用水)で使用することができる。
【0021】
(3)前記(2)の場合、第1接触部内を流れる水の流量を調整するよう導水管に配置された電動バルブと、貯水槽の貯水量を検出する水量センサと、水量センサからの電気信号に基いて電動バルブの開閉動作を制御するバルブ制御部とをさらに備え、バルブ制御部は、貯水量が所定量より少ないと流量を増加させ、貯水量が所定量以上となると流量を低下させるよう電動バルブを制御する。
このようにすれば、貯水槽内の水の使用量が増加して貯水量の減少速度が速くなった場合でも、貯水槽を空にすることなく常に一定量以上の水を貯水することができるため、断水状態に陥ることがなく、水の本来の使用に不具合を生じさせることがない。
【0022】
(4)第1接触部が、太陽電池の受光面とは反対側の裏面に接触している。
このようにすれば、太陽電池の効率的な冷却が可能となる。特に、太陽電池が積層構造による多接合型の場合、裏面に近い位置に、よりバンドギャップが狭く、より温度上昇による発電効率低下の影響を受けやすい層があるため、裏面から冷却するこの構成は発電効率低下の抑制に効果的である。
この場合、第1接触部は導水管の一部を構成する管であり、その材質としては、太陽電池から熱が伝わり易く、高強度であり耐候性に優れた材質が好ましく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属が好ましい。
第1接触部の形状は特に限定されないが、効率よく太陽電池を冷却するために、太陽電池裏面との接触面積が大きい形状が好ましい。このような形状としては、例えば、複数の流路を並列させたストライプ形、1本以上の流路による蛇行形、太陽電池裏面の略全面と接触する面積を有する扁平プレート形等が挙げられる。
【0023】
ストライプ形および蛇行形の第1接触部の場合、太陽電池裏面の全領域に亘って流路が等間隔で配置されること、および太陽電池裏面と密着して接触面積が大きくなるように流路形成用のパイプの接触面を平坦にすることが好ましい。またこの場合、パイプを所定形状に保持するフレーム部が第1接触部の構成部材として備えられても良い。
扁平形の第1接触部の場合、広い内部空間が押し潰されないよう、内部の適当な箇所にリブを設けてもよい。この場合、リブによって内部空間にストライプ形または蛇行形の流路を形成してもよい。
なお、これらの形状の第1接触部は、水が供給される供給口と、内部を流通した水を第2接触部側へ送り出す排出口とを有する。
【0024】
第1接触部は、太陽電池の裏面に直接的または間接的に接触するが、前記ストライプ形あるいは蛇行形の場合は、より接触面積を増やすために、熱伝達板(例えば、熱伝導率および耐候性のよいステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属板)を介して間接的に第1接触部を太陽電池裏面に接触させることが好ましい。
第1接触部を太陽電池の裏面に接触させた状態で取り付ける方法としては、例えば、太陽電池の外周縁に取り付けられたフレームと同じ形状および大きさのフレーム部(前記フレーム部と同じものが好ましい)を第1接触部の構成部材として設け、第1接触部のフレーム部と太陽電池のフレームとをボルト・ナット結合して一体化する方法が挙げられる。あるいは、太陽電池のフレームを省略し、第1接触部のフレーム部が太陽電池の外周縁を直接的に保持するように構成してもよい。
さらに、第1接触部のフレーム部は、太陽電池を設置場所に設置する際の支持部材に固定できるよう構成されるか、あるいはフレーム部自体に支持部材が一体化されていることが好ましい。
【0025】
(5)第1接触部が、透光性材料によって形成されて太陽電池の受光面に接触している。
このようにすれば、第1接触部内において、下部の水は太陽電池からの熱を吸収して上昇し、それに伴い温度の低い上部の水は下降するため水の対流が生じ、太陽電池から熱を第1接触部内の水全体に効率よく伝える。したがって、熱電変換素子への熱輸送もスムーズに行われて、太陽電池に対する高い冷却効果を得ることができる。
透光性材料としては、強度、耐候性、透明性および液体、蒸気、気体に対する非透過性等に優れた透光性材料が好ましく、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等の透明樹脂、これらの透明樹脂フィルムが表面に積層された複合ガラス等が挙げられる。さらには、太陽電池による光発電で主に用いられる波長の光に対し透過率が高い、アクリル樹脂や石英ガラスが特に好ましい。
【0026】
この場合も、第1接触部の形状は特に限定されないが、効率よく太陽電池を冷却するために、太陽電池裏面との接触面積が大きい形状が好ましい。さらには、第1接触部が透光性材料から形成されていても、光の角度によって部分的に影が生じる場合があるため、影が太陽電池の受光面に映り難い形状が望ましい。このような形状としては、太陽電池の受光面の全面を覆う面積を有する扁平形が挙げられ、扁平形の第1接触部を太陽電池の受光面に直接接触させることが望ましい。
扁平形の第1接触部の場合、広い内部空間が押し潰されないよう、内部の適当な箇所に同じ透光性材料からなるリブを設けてもよい。この場合、リブの影ができるだけ生じないように、リブの形状、大きさ、数、配置箇所等を考慮することが望ましい。
扁平形の第1接触部を太陽電池の受光面に接触させた状態で取り付ける方法としては、前記と同様に、太陽電池の外周縁に取り付けられたフレームと同じ形状および大きさのフレーム部を第1接触部の構成部材として設け、第1接触部のフレーム部と太陽電池のフレームとをボルト・ナット結合して一体化する方法が挙げられる。
【0027】
(6)熱電変換素子の放熱面に接触する放熱器をさらに備え、放熱器は、大気中、地面および地中のうちの少なくとも1つに放熱するための放熱板部を有している。
このようにすれば、熱電変換素子の放熱性が向上するため、熱電変換素子による熱発電効率を高めることができる。
特に、日陰において、地中は、夏の日中でも比較的温度が上がり難く、熱容量が極めて大きいことから、放熱器から地中へと放熱することにより、良好な熱発電効率を得ることができる。
放熱板部の形状は、特に限定されないが、放熱効率が高められるよう表面積が大きい形状が好ましい。
【0028】
(7)第2接触部が、熱電変換素子の吸熱面と密着する平坦面を有する。
このようにすれば、導水管の第2接触部と熱電変換素子の吸熱面との接触面積が増加するため、太陽電池にて温められた水の熱を効率よく熱電変換素子の吸熱面に伝達することができる。
【0029】
(8)前記(7)の場合、熱電変換素子が2個以上備えられ、第2接触部は、一対の平坦面を対向して有する扁平形に形成されており、一対の平坦面に一対の熱電変換素子の吸熱面が対向状に密着している。
このようにすれば、扁平形の第2接触部を一対の熱電変換素子にて挟み込んだ状態となるため、太陽電池にて温められた水からの熱回収率が高まり、熱電変換素子によるトータル発電量を増加させることができる。また、導水管の平坦面に熱電変換素子を設置できるため、熱電変換素子の構造を平坦かつ耐久性に優れた生産し易い単純構造とすることができる。
なお、複数の熱電変換素子を電気的に直列接続して高電圧を得る熱電変換モジュールを用いてもよく、第2接触部を細長い扁平形に形成し、一対の熱電変換モジュールを第2接触部の対向する細長い平坦面に接触させてもよい。
【0030】
(9)発電システムが、太陽電池と熱電変換素子とに配線を介して電気的に接続されたパワーコンディショナーをさらに備える。
このようにすれば、パワーコンディショナーを外部の商用電力線と接続することができるため、この発電システムを建造物に設置した場合に、建造物で使用される電力が不足する場合は外部から補い、太陽電池および熱電変換素子で発電した電力が余った場合は余剰分を電力会社へ売電することができる。なおこの場合、発電システムが、余剰電力を蓄電する蓄電池をさらに備えていてもよい。
【0031】
また、本発明の別の観点によれば、屋根または屋上を有する建造物と、前記発電システムとを備え、発電システムにおいて、太陽電池が前記屋根または屋上に傾斜状に設置されると共に、導水管の第1接触部は供給された水が下から上へ向かって流れるように構成された発電建造物が提供される。
この発電建造物によれば、太陽エネルギーから効率的に電気エネルギーを作り出すことができる前記発電システムを備えているため、建造物内で消費される電力をまかなうことができ、外部から供給される電力の電気代を抑えることができる。
また、一般に人が利用する建造物には水道管が備えられており、安価で夏場でも比較的温度の低い水道水が供給されているため、この水道水を導水管に導入して利用することができて好都合である。
【0032】
また、発電システムにおける太陽電池は、建造物の屋根または屋上に設置されるためスペースの有効活用ができる。一方、熱電変換素子も、例えば、夏でも比較的温度が低い家屋の床下といった余剰スペースに設置することができるため、スペースを有効に活用しつつ放熱面からの放熱が容易となって好都合となる。
また、導水管の第1接触部は供給された水が下から上へ向かって流れるように構成されているため、第1接触部内が常に水で満たされている状態とすることができ、水による太陽電池の冷却作用を最大限発揮させかつ維持することができる。
また、太陽電池から熱を受けた第1接触部内の水は、温度上昇して比重が軽くなるため上方へスムーズに送られ、その下流側にある熱電変換素子へ送られる。このため、効率的な太陽電池の冷却と熱輸送が行われる。
【0033】
ここで、「建造物」とは、前記のように屋根または屋上を有する建造物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、一般住宅、集合住宅、飲食店、銭湯、病院、学校、官公庁の建造物、商業ビル、オフィスビル、複合ビル、宿泊施設、レジャー施設、スポーツ施設、競技場、駅、空港、港、倉庫、工場、研究所、観測所等の建造物が挙げられる。
なお、この発電システムは、地面に太陽電池が設置される大規模太陽光発電にも利用可能である。この場合、給水場所(例えば、最も近い水道管)から発電場所までの間と、発電場所から水の最終的な利用場所(例えば、近隣の工場や住宅等)までの間の地中に送水管を敷設する必要がある。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳説するが、本発明は実施形態に限定されるものではない。
【0034】
(実施形態1)
図1は本発明に係る発電システムの実施形態1を示す概略構成図である。
この発電システムは、太陽電池110と、複数の熱電変換素子を有する熱電変換モジュール120Aと、太陽電池110から熱を熱電変換モジュール120Aに伝達する熱輸送機構としての導水管130とを備えている。
【0035】
<太陽電池>
太陽電池110は、四角形の基板上に形成された複数の太陽電池セルが電気的に直列接続された太陽電池モジュールである。
太陽電池セルとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコン、ガリウム砒素や銅インジウムセレンなどの化合物、あるいは有機化合物を用いたものが知られており、これらを用いることができる。また、これらを積層した変換効率の高い太陽電池セルを用いてもよい。
一般家屋の屋根に太陽電池110を設置する場合には、限られたスペースを有効利用するために高い変換効率を有することが好ましく、さらに、比較的低いコストで導入できることが好ましく、このような太陽電池セルとしては、例えば、多結晶シリコン型、多結晶シリコンとアモルファスシリコンの積層型等が挙げられる。
【0036】
さらに、複数の半導体膜を接合したタンデム型、トリプル型等と呼ばれる多接合型太陽電池の場合、特に高い光発電効率が得られる。
このような多接合型太陽電池の場合、上層にアモルファスシリコンといったバンドギャップが広い層、下層に結晶シリコンといったバンドギャップの狭い層が用いられる。このような積層構造により、上方から入射した光のうち波長が短くエネルギーの高い光をバンドギャップの広い上層で吸収して高い出力電圧の電力へ変換し、上層で吸収されなかった波長の長い光をバンドギャップの狭い下層で吸収して電力へ変換することで、高効率な発電が可能である。
なお、太陽電池110の裏面にはステンレス鋼製の熱伝達板102が設けられている。
【0037】
<熱電変換素子>
図2は実施形態1における熱電変換モジュール120Aに備えられた熱電変換素子120の基本構造を示す概略図である。
熱電変換素子120は、いわゆるゼーベック効果を利用して、温度差から電気エネルギーを取り出すことが可能な素子である。
熱電変換素子120は、p型半導体121と、n型半導体122と、p型半導体121の一面とn型半導体122の一面とを電気的に接続する導電膜123と、p型半導体121の他面に電気的に接続された正電極124と、n型半導体122の他面に電気的に接続された負電極125と、導電膜123と接合する吸熱板材126と、正電極124および負電極125と接合する放熱板材127とを備え、吸熱板材126の外面が吸熱面126aとなり、放熱板材127の外面が放熱面127aとなる。
吸熱板材126は、熱伝導率のよい金属板(例えば銅板、アルミニウム合金板)の一面に、絶縁膜(例えば窒化アルミニウム等からなるセラミックス)が積層されたものであり、絶縁膜が導電膜123と接合している。
放熱板材127も吸熱板材126と同様に構成されている。
【0038】
熱電変換素子120は、吸熱面126aを放熱面127aよりも高温にすると、p型半導体121およびn型半導体122のそれぞれのキャリア分布が変化して、多数キャリアが低温側(放熱板材127側)に移動する。その結果、p型半導体121側の電極(正電極124)は正の電位となり、n型半導体122側の電極(負電極125)は負の電位となって、正負電極124、125間に電位差が生じ、これを電力として取り出すことができる。すなわち、熱エネルギーの一部を電気エネルギーに変換することができる。
【0039】
実施形態1で用いられる熱電変換モジュール120Aは、図3に示すように、吸熱板材126と放熱板材127の間に、p型半導体121とn型半導体122の対からなる熱電変換素子120が複数配置されて導電体123にて直列接続されてなり、この構成によって両端の正負電極124、125間の出力電圧を上げることができる。なお、図3において、図2中の要素と同様の要素には、同一の符号を付している。また、正電極124および負電極125には、熱電変換モジュール120Aによって熱発電した電力が取り出される図示しない配線が電気的に接続されている。
【0040】
熱電変換素子120のp型およびn型半導体121、122として用いることができる材料としては、熱電変換効率の高いものが好ましく、例えば、ビスマスーテルル化合物、鉛―テルル化合物、亜鉛―アンチモン化合物、ナトリウムーコバルト酸化物、マンガンシリサイド、マグネシウムシリサイド等が挙げられる。
なお、熱電変換モジュール120Aにおける各半導体121、122の周囲には、例えば絶縁性樹脂にて封止されている。
【0041】
この発電システムは、熱電変換モジュール120Aの放熱板材127の放熱面に接触する放熱器128をさらに備えている(図1参照)。放熱器128は、実施形態1ではL字形に折り曲げられた金属板(例えばステンレス鋼製、銅製等)からなり、曲げ部を挟む一方側の平坦部が放熱板材127に、例えばボルト・ナット結合にて取り付けられ、曲げ部を挟む他方側の平坦部が放熱板部128aとされている。
放熱板部128aは、大気中、地面および地中のうち少なくとも1つに放熱するよう、選択された放熱形態に応じた形に形成される。実施形態1では、放熱板部128aを地面に接触させて地面および大気中に放熱するよう構成された場合を例示している。なお、放熱板部128aには、大気中への放熱効率を高めるための複数の放熱フィン、地中へ差し込まれて放熱するための板状もしくは櫛歯状の差込片、あるいはこれらの両方が設けられていてもよい。
【0042】
<熱輸送機構>
図1に示すように、熱輸送機構は、太陽電池110と接触する第1接触131と、熱電変換モジュール120Aと接触する第2接触部132と、第1接触部131と第2接触部132とを連結する連結管部133と、送水管(例えば、水道管)に接続される上流側接続端部134と、連結管部133に接続される下流側接続端部131Cを有する導水管130を備える。
図4は本発明の発電システムの実施形態1における第1接触部の具体的な構成例を示す斜視図である。
【0043】
図1と図4に示すように、第1接触部131は、熱伝達板102を介して太陽電池110を支持するフレーム部131Aと、フレーム部131Aと一体化したパイプ部131Bとを有してなり、全体的にステンレス鋼にて形成されている。
フレーム部131Aは、4本の金属帯材が太陽電池110よりも僅かに大きい四角形に溶接してなるフレーム本体131Aaと、フレーム本体131Aaの内周面に沿って形成された受片131Abとを有する。
また、対向した一対の金属帯材には、後述する複数の冷却パイプ131Baの各両端が取り付けられており、その取付位置には、冷却パイプ131Baの内部流路と連通する連通口13aが形成されている。さらに、その取付位置には、前記受片131Abが設けられていない。
【0044】
パイプ部131Bは、フレーム本体131Aaの枠内にストライプ形に配置された前記複数(実施形態1では4本)の冷却パイプ131Baと、冷却パイプ131Baの一端側にあるフレーム本体131Aaの金属帯材の外面に一体化された上流側パイプ131Bbと、冷却パイプ131Baの他端側にあるフレーム本体131Aaの金属帯材の外面に沿って一体化された下流側パイプ131Bcとを有してなる。
冷却パイプ131Baは、四角い扁平形に形成されており、その両端は、前記のようにフレーム本体131Aaの金属帯材の連通口13aの周囲に溶接されている。冷却パイプ131Bbの数、幅、配置等は特に限定されないが、太陽電池110全体をできるだけ均等にかつ効率よく冷却することができるよう設計することが望ましい。
また、各冷却パイプ131Baは、それらの上面が、前記受片131Abの上面と同一面状に配置されている。
【0045】
上流側パイプ131Bbは、連通口13aの方に開口部を有する細長い箱状体からなり、箱状体の開口端縁が金属帯材に溶接されている。また、上流側パイプ131Bbの一面(例えば、前面の中央部)には流通孔が形成されており、この流通孔の周囲に上流側接続端部134が溶接されている。
なお、実施形態1では、送水管に接続される導水管130の上流側接続端部134が第1接触部131に直接接続された場合を例示しているが、上流側接続端部134は導水管130の送水管と接続される部分であるため、第1接触部131と送水管の間に長い管部が設けられた場合は、その管部の送水管との接続部分が上流側接続端部134となる。
下流側パイプ131Bcも上流側パイプ131Bbと同様の細長い箱状体からなり、箱状体の開口端縁が金属帯材に溶接されている。また、下流側パイプ131Bcの一面(例えば、後面の中央部)には流通孔が形成されており、この流通孔の周囲に下流側接続端部131Cが溶接されている。
【0046】
このように構成された第1接触部131の受片131Abおよび複数の冷却パイプ131Baの上に平坦な熱伝達板102が設置され、熱伝達板102の上に太陽電池110が設置される。このとき、各冷却パイプ131Baの上面と受片131Abの上面とが同一面状に配置されているため、熱伝達板102の下面は反ることなく各冷却パイプ131Baの上面と接触する。また、太陽電池110の下面は反ることなく熱伝達板102の上面と接触する。
【0047】
フレーム本体131Aaの上端縁よりも受片131Abおよび複数の冷却パイプ131Baは下がっていることにより熱伝達板102および太陽電池110を収納するスペースとなる凹所が形成されている。この凹所の深さは、特に限定されるものではないが、太陽電池110の上面とフレーム本体131Aaの上端面が略同じ高さとなる深さとすれば、第1接触部131と太陽電池110とが一体的に見えるため外観の見栄えがよくなる。
また、太陽電池110の外周縁には、通常クッション材を介してフレームが取り付けられ、フレームが取り付けられた太陽電池110を収納できる大きさに凹所を形成してもよい。あるいは、太陽電池110のフレームをフレーム本体131Aaで代用してもよい。この場合、太陽電池110の外周縁とフレーム本体131Aaとの間にクッション材を設けてもよい。
【0048】
なお、太陽電池110は、発電した電気を取り出す電気配線が裏面側に設けられているため、電気配線を外部に引き回すための孔部が熱伝達板102に形成されており、熱伝達板102の孔部に通された電気配線は2本の冷却パイプ131Bbの間に出される。
また、言うまでもないが、第1接触部131において、水が通るパイプ同士およびパイプとフレーム本体との溶接は漏水しないように行われる。
【0049】
第2接触部132は、外面に対向する一対の平坦面を有する扁平形のステンレス鋼製パイプであり、一対の平坦面に一対の熱電変換モジュール120Aの吸熱板材126(図3参照)の吸熱面が接触している。
熱電変換モジュール120Aの第2接触部132への取り付けは、例えば、第2接触部132と吸熱板材126の両方に孔付き突片を設け、2つの突片を重ね合わせてボルト・ナット結合することにより行うことができる。
なお、第2接触部132の上流側端部および下流側端部には、連結管部133および他の配管と連結が容易となるように、円形のパイプ部が設けられていてもよい。
【0050】
連結管部133は、第1接触部131の下流側接続端部131Cと第2接触部132の上流側端部とを接続するパイプである。
連結管部133としては、金属よりも熱伝導率の低い樹脂製のパイプを用いることが好ましく、例えば、通常住宅で使用される硬質塩化ビニル管を用いることができる。
【0051】
<発電システムの動作>
この発電システムを使用する際は、図1に示すように、熱伝達板102を介して太陽電池110が設置された第1接触部131を、太陽電池110が受光可能な場所に設置し、第1接触部131に設けられた上流側接続端部134を図示しない送水管に接続し、第2接触部132の下流側端部を図示しない別の配管と接続する。なお、別の配管とは、水の本来の利用場所へ導くための配管である。
【0052】
このようにセットされた発電システムにおいて、導水管130に矢印方向に水が導入されており、太陽電池110に太陽光が入射されると、太陽電池110にて発電が行われると共に熱が発生する。この熱は、熱伝達板102および第1接触部131の各冷却パイプ131Baを介して水に伝えられるため、太陽電池110は冷却されて過度の温度上昇による光発電効率の低下が抑制される。
また、第1接触部131内の水は、太陽電池110から受けた熱によって温められた後、連結管部133を通って第2接触部132へ送られるため、温められた水の熱が熱電変換モジュール120Aの吸熱板材126(図3参照)に伝達される。
熱電変換モジュール120Aでは、熱を受けた吸熱板材126と放熱器128を介して地面と接触している放熱板材127との間に温度差が生じるため、発電が開始される。
【0053】
この発電システムによれば、熱輸送の媒体として加圧水を用い、かつ既設の送水管から直接に加圧水を導入することにより、加圧水の水圧を利用して熱輸送媒体を導水管130内に送り込むことができる。すなわち、熱輸送媒体を安価に入手できるばかりではなく、その供給時の圧力を利用することができる。このため、システム内にポンプ装置を新たに設置する必要がないため設置コストを抑えられると同時に、ポンプ装置を動かすためのエネルギーおよびメンテナンスも不要であり、ポンプ装置の故障の心配もない耐久性に優れた発電システムが得られる。もちろん、既設のポンプ装置により送水管に導入された加圧水も利用可能である。
【0054】
また、太陽電池110の熱を別途設けた熱電変換モジュール120Aにて発電に用いるため、光エネルギーから電気エネルギーを回収する回収効率が高くなると共に、熱電変換モジュール120Aは第2接触部132に面して設ければよいため設置自由度が高い。さらに、太陽電池110の裏面に熱電変換素子を敷き詰める場合に比べて、コンパクトな熱電変換素子を用いることができ、低コストにて設置できる。
【0055】
また、扁平形の第2接触部132を熱電変換モジュール120Aにて挟み込む構造によって、導水管130内の温められた水の熱が熱電変換モジュール120Aへ効率よく伝えられ、効率的な熱発電を行うことができる。例えば、第2接触部132の断面の長辺方向の寸法を短辺方向の寸法の5〜20倍に設定することで、特に効率的な熱発電が行われる。さらに、熱電変換モジュール120Aを第2接触部132の平坦面に設置することができるので、熱電変換モジュール120Aを製造しやすく、衝撃にも強い簡素な構造とすることができる。
【0056】
また、太陽電池110は、バンドギャップの狭い下層の方が、温度上昇によるバンドギャップ変化によって変換効率の低下が起こりやすい。そのため、実施形態1のように、太陽電池110の裏面側に導水管130の第1接触部131を設けて、裏面側から太陽電池110を冷却することにより、太陽電池110の下層側の温度上昇を効果的に抑制して発電効率の低下を極力抑えることができる。
【0057】
(実施形態2)
図5は本発明の発電システムの実施形態2における導水管の第1接触部を示す平面図である。
この第1接触部231は、フレーム部231Aと、フレーム部231Aと一体化したパイプ部231Bとを有してなり、パイプ部231Bが蛇行形の1本の冷却パイプからなる点が実施形態1と異なり、その他の構成は概ね実施形態1と同様である。なお、図5において、符号231Aaはフレーム本体、231Abは受片を示している。
【0058】
この場合、例えば、パイプ部231Bの一端は、フレーム本体231Aaの隅部近傍を貫通して前面側へ突出して送水管(図示省略)と接続される上流側接続端部234とされ、パイプ部231Bの他端は、フレーム本体231Aaの他の隅部近傍を貫通して後面側へ突出して連結管部(図示省略)と接続される下流側接続端部231Cとされている。
さらに、フレーム部231Aは、蛇行形のパイプ部231Bの幅方向中間付近の下面を支持する支持材231Acを有している。この支持材231Acは、撓み難いように、例えばH字形またはT字形の断面形状に形成されており、その両端がフレーム本体231Aaに溶接されると共に、パイプ部231Bと接触箇所が溶接されている。
【0059】
(実施形態3)
図6は本発明の発電システムの実施形態3における導水管の第1接触部を示す平面図である。
この第1接触部331は、フレーム部331Aと、フレーム部331Aと一体化したパイプ部331Bとを有してなり、パイプ部331Bが扁平箱形である点が実施形態1と異なり、その他の構成は概ね実施形態1と同様である。なお、図5において、符号331Aaはフレーム本体、331Abは受片を示している。
【0060】
この場合、受片331Abは、扁平箱形のパイプ部331Bの外周部下面を支持する役割を担っている。また、送水管(図示省略)と接続される上流側接続端部334は、フレーム本体331Aaの前面を貫通してパイプ部331Bの前壁に形成された流通口の周囲に溶接されており、連結管部(図示省略)と接続される下流側接続端部331Cは、フレーム本体331Aaの後面を貫通してパイプ部331Bの後壁に形成された流通口の周囲に溶接されている。
また、パイプ部331Bの一部(この場合は中央部)には、図示しない太陽電池の裏面側の電気配線を引き出すための孔部331Baが形成されている。
なお、パイプ部331Bは、例えばステンレス鋼にて中空の扁平箱形に形成されるため、面積が大きくなると撓みが生じ易くなるため、内部に補強用のリブを設けてもよく、リブによって流路をストライプ形または蛇行形に形成してもよい。
【0061】
(実施形態4)
図7は本発明の発電システムの実施形態3における導水管の第1接触部を示す斜視図であり、図8は図6の第1接触部の線Xの位置での垂直方向断面図である。
この第1接触部431は、フレーム部431Aと、太陽電池110の受光面に接触する透光性材料によって扁平箱形に形成されたパイプ部431Bとを有してなる。
【0062】
フレーム部431Aは、4本の金属帯材が太陽電池110よりも僅かに大きい四角形に溶接してなるフレーム本体431Aaと、フレーム本体431Aaの内周面に沿って形成された受片431Abと、両端がフレーム本体431Aaの内周面に溶接された支持板材431Acとを有する。
受片431Abは、例えばフレーム本体431Aaの下端縁の位置に設けられており、支持板材431Acは、その上面が受片431Abの上面と同一面状となるように設けられている。これら受片431Abおよび支持板材431Acの上に太陽電池110が設置される。
さらに、フレーム本体431Aaの前後壁の左右中間位置には、後述の接続端部434、431Cが当たらないようパイプ部431Bを太陽電池110上に設置させるための切欠き部43aが形成されている。
なお、実施形態4では、支持板材431Acは、太陽電池110の下面中央にある電気配線(図示省略)の位置を避けて2本設けられている。
【0063】
パイプ部431Bは、透明樹脂にて成形された中空の扁平箱体であり、その前面側には、図示しない送水管と接続される上流側接続端部434が一体成形されており、その後面側には、図示しない連結管部と接続される下流側接続端部431Cが一体成形されており、各接続端部434、431Cはパイプ部431Bの内部と連通している。なお、この扁平箱形のパイプ部431Bは、内部に補強のリブが設けられていてもよい。
このパイプ部431Bは、各接続端部434、431Cを切欠き部43aの位置にセットした状態でフレーム部431A内の太陽電池110の上に設置されることにより、パイプ部431Bの下面が太陽電池110の受光面に接触する。
なお、パイプ部431Bをフレーム部431Aに固定するために、例えば、二点鎖線で示した留め金43bをフレーム部431Aにボルト・ナット結合にて取り付けてもよい。
【0064】
このような第1接触部431を有する実施形態4の発電システムは、前記構成以外は実施形態1と同様である。
この発電システムによれば、光が、パイプ部431Bおよびその内部に流入した水を透過して太陽電池110の受光面に照射される。太陽電池110の熱を受けて温められたパイプ部431B内の下部の水は、図8中の矢印が示す対流の動きのように上昇し、上部の温度の低い水が下降する。これにより、太陽電池110の熱が効率的にパイプ部431B内の水に伝えられ、太陽電池110に対する高い冷却効果が得られる。
パイプ部431Bは、太陽電池110の温度上昇を抑制するために、太陽電池110の受光面を完全に覆う大きさおよび形状で形成することが好ましく、内部空間の高さとしては5mm〜10cm程度が好ましい。
【0065】
(実施形態5)
図9は本発明の発電システムを備えた発電建造物を示す概略構成図である。
この発電建造物は、建造物に実施形態1〜4のいずれか1つの発電システムが設置されたものである。
さらに、この発電建造物の場合、発電システムには、太陽電池と熱電変換モジュールとに電気配線143を介して電気的に接続されたパワーコンディショナー142と、太陽電池と熱電変換モジュールにて発電した電力を蓄電する蓄電池144と、導水管130の第2接触部(熱発電部20)を通過した水を連結管部135を通して貯留する密閉型の貯水槽146と、導水管130に設けられた流量調整バルブ147とが備えられてもよい。
なお、図9において、符号140は屋根141を有する家屋(一般住宅)、100は太陽電池と第1接触部を有する光発電部、120は熱電変換モジュールと第2接触部を有する熱発電部、Wは水道管を示している。
【0066】
実施形態5の場合、パワーコンディショナー142および蓄電池144は家屋140内に設けられ、貯水槽146は例えば家屋140の外壁上部に沿ってあるいは家屋140内の屋根付近に設けられている。
また、光発電部10は家屋140の屋根141の上に図示しない支持部材を介して設置され、熱発電部20も屋根141上に設置されている。また、熱発電部20の熱電変換モジュールの放熱板部(図3参照)による放熱が妨げられないよう、熱発電部20を覆う日よけ板145を屋根141に設けている。
このとき、光発電部10は屋根141の日当たりのよい傾斜面に設置され、熱発電部20は屋根141の日当たりの悪い傾斜面に設置されてもよい。さらに、熱発電部20が設置される屋根141の傾斜面が、光発電部10が設置される屋根141の傾斜面と異なる場合、光発電部10および屋根141の頂部を通過した水道水が、熱発電部20の第2接触部内に満たされた状態でゆっくり通過できるように、熱発電部20の傾斜角度をできるだけ水平に近づけることが好ましい。このようにすれば、温められた水道水の熱を熱電変換モジュールに効果的に伝えることができ、熱発電部20での発電効率を低下させないようにすることができる。
【0067】
この発電建造物において、導水管130によって地中の水道管Wから水道水が光発電部10に供給されるため、日光照射時に光発電する太陽電池が冷却されると共に、太陽電池の熱によって水道水が温められ、その温水が連結管部133を通じて熱発電部20に送られ、熱電変換モジュールが熱発電する。
光発電部10および熱発電部20にて発電された電力は、電気配線143を介してパワーコンディショナー142へ送られて電圧変換、直流電流から交流電流への変換等が適宜行われ、家屋140内の各電気製品へと供給される。また、発電システムにて発電された電力の余剰分は、パワーコンディショナー142を介して蓄電池144に蓄電される。
さらに、パワーコンディショナー142を外部の商用電力線と接続することにより、家屋140にて消費される電力の不足分を補ったり、発電した電力の余剰分を電力会社に売電したりすることが可能となる。
【0068】
実施形態5では、熱発電部20を屋根141の上に配置しており、熱電変換モジュールに伝えられた熱は放熱器(図1参照)から主に大気中に放熱される。このとき、放熱器は、日よけ板145による日陰に配置されているため、直射日光によって温度上昇して熱発電効率が低下することが防止されている。
また、図9に示すように、傾斜した屋根141上に光発電部10を設置する場合、光発電部10まで水道水を導く導水管130の導入管部130aを、光発電部10(第1接触部)の傾斜下側部分に接続し、光発電部10の傾斜上側部分に連結管部133を接続することにより、光発電部10に下方から上方に水が流れるようにすることが好ましい。これにより、光発電部10にて温められ比重の軽い水道水がスムーズに光発電部10から熱発電部20へと送られ、熱輸送効率が高くなる。
【0069】
また、熱発電部20を通過した水道水は、連結管部135を通じて、適宜設けられる貯水槽146に一旦蓄えられ、家屋140内のキッチン、風呂、洗面、トイレ等の通常の上水用途に用いられる。
水道水は、多くを地下の水道管Wを通じて供給される。気温が上昇する夏の日中でも、大気温より地中の温度の方が低い場合が多い。このため、地下を通って供給される比較的温度の低い水道水を光発電部10に導入することで、効果的な冷却を行うことができるメリットが得られる。さらに、地下から光発電部10に至るまでの導入管部130aの表面を断熱材で覆えば、低温を維持しながら水道水を光発電部10に供給することができ、さらに冷却効果を高めることができる。
それに加え、光発電部10で受けた熱をできるだけ外部に放熱せずに熱発電部20へ輸送した方が、エネルギーロスが少なくなるため、光発電部10と熱発電部20の間の連結管部133の表面も断熱材で覆うことが好ましい。
【0070】
家屋140内に人がいる場合、炊事、洗濯、手洗い等で断続的に水道が利用される。その度に、導水管130内に水道水の流れが起こり、太陽電池の冷却と熱電変換素子への熱輸送が自動的に行われる。すなわち、昼間、家屋140内に人がいて電力消費量が上がりやすいときに、無意識のうちに発電量を上げる措置が行われる。
さらに好ましい形態として、光発電部10に至るまでの導入管部130aの途中に、流量調整用バルブ147を設けることによって、常に僅かずつの水道水を流してもよく、あるいはタイマーと連動させて定期的に水道水を供給してもよい。家屋140内での水道水消費とは別に、適当な流量やタイミングで水道水を流すことにより、太陽電池の温度上昇をより効果的に抑制することができ、かつ冬季に導水管130内の水道水が凍結して導水管130が損傷することを防止できる。この場合、家屋140内にて利用される水道水の供給を滞りなく行うため、貯水槽146を設けておくことがとりわけ好ましい。家屋140内の水道水の利用が断続的に行われるのに対して、貯水槽146を経由して水道水を上水用途として供給することで、導水管130内の流水量を平滑化することができる。
【0071】
導水管130内の水道水流量を平滑化するために設ける貯水槽146のサイズは、通常生活における水道利用によって貯水槽146が空になったり、逆に満水になったりすることが生じない大きめのサイズが好ましい。このことから、導水管130を通じて貯水槽146に流れ込む水道水量と、家屋140内で利用される水道水量を踏まえて、適宜、貯水槽146のサイズを設定すればよい。
【0072】
もし、急な水道水消費量の上昇が発生した場合、これに対応するためには、光発電部10の第1接触部内を流れる水道水の流量を調整するよう流量調整用バルブ147の代わりに導水管130に配置された電動バルブ150と、貯水槽146の貯水量を検出する水量センサ151と、水量センサ151からの電気信号に基いて電動バルブ150の開閉動作を制御するバルブ制御部152とを発電システムに設けてもよい。
【0073】
このようにすれば、バルブ制御部152によって、貯水量が所定量より少ないと流量を増加させ、貯水量が所定量以上となると流量を低下させるよう電動バルブ150を制御することが可能となるため、貯水槽146内の水の使用量が増加して貯水量の減少速度が速くなった場合でも、貯水槽146を空にすることなく常に一定量以上の水を貯水することができるため、断水状態に陥ることがなく、水道水としての通常利用に不具合を生じることがない。
なお、光発電部10に温度センサを設け、太陽電池の温度が一定範囲を超えるとその信号がバルブ制御部152に送られ、流量を上げるように電動バルブ150を制御してもよい。
【0074】
また、家屋140内での水道水使用量が少なく、その結果、貯水槽146が満水に近づいてしまった場合、バルブ制御部152は水量センサ151からの電気信号に基いて流量を下げるあるいは0にするよう、電動バルブ150を制御する。この場合、光発電効率が低下しやすくなるため、このような事態を避けるように、十分な容量をもった貯水槽146を設置しておくことが好ましい。
【0075】
(実施形態6)
図10は本発明の発電システムを備えた別の発電建造物を示す概略構成図である。
この発電建造物も、建造物に実施形態1〜4のいずれか1つの発電システムが設置されたものである。
この実施形態6も、発電システムを家屋140に設置した場合の例であるが、熱発電部20を家屋140の床下148に設置したことが実施形態5とは異なり、他の構成は概ね実施形態5と同様である。なお、図10において、図9中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
【0076】
この場合、熱発電部20の放熱器(図1参照)が、床下148の地面に接した状態および地中に埋め込まれた状態の少なくとも一方の状態で設置されている。
家屋140の床下148は、広い領域にわたって常に直射日光が当らない領域であり、床下148の地面は夏の日中でも比較的温度が上がりにくい。このため、放熱器から床下148の地面乃至地中に放熱することで高い放熱効果が得られ、効率的な熱発電を行うことができる。
【0077】
(他の実施形態)
1.実施形態1〜3のいずれか1つと実施形態4とを組み合わせて、裏面側と受光面側から太陽電池の冷却(熱吸収)を行ってもよい。
2.例えば、水道管からの水道水をポンプ装置にて屋上に設置された貯水槽へ供給する設備を備えた高層住宅の場合、そのポンプ装置および貯水槽を本発電システムに利用することができる。
3.実施形態4における透光性材料(例えば透明樹脂材料)からなる第1接触部の扁平箱形パイプ部には、その上面に同じ材料からなる複数のレンズ部がマトリックス状に形成されていてもよい。この場合、レンズ部を通過した集束光の焦点位置に太陽電池セルが配置されるように設計することが望ましい。
【符号の説明】
【0078】
10 光発電部
20 熱発電部
102 熱伝達板
110 太陽電池
120 熱電変換素子
120A 熱電変換モジュール
128 放熱器
121 p型半導体(熱電材)
122 n型半導体(熱電材)
123 導電膜
124 正電極
125 負電極
126 吸熱板材
126a 吸熱面
127 放熱板材
127a 放熱面
130 導水管
131、231、331、431 第1接触部
131A、231A、331A、431A フレーム部
131B、231B、331B、431B パイプ部
132 第2接触部
133 連結管部
143 接続端部
140 建造物(家屋)
141 屋根
142 パワーコンディショナー
143 電気配線
144 蓄電池
145 日よけ板
146 貯水槽
147 流量調整バルブ
148 床下
150 電動バルブ
151 水量センサ
152 バルブ制御部
W 水道管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、導水管と、熱電変換素子とを備え、
導水管は、加圧水を流通させる送水管と接続される接続端部と、接続端部よりも下流側で太陽電池に接触する第1接触部と、第1接触部よりも下流側で熱電変換素子と接触する第2接触部とを有し、
熱電変換素子は、第2接触部内を流れる水から熱を第2接触部を介して吸収して外部に放熱することにより発電するよう構成されたことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記送水管が水道管である請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記導水管の第2接触部を通過した水を貯留する貯水槽をさらに備えた請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記第1接触部内を流れる水の流量を調整するよう導水管に配置された電動バルブと、前記貯水槽の貯水量を検出する水量センサと、水量センサからの電気信号に基いて電動バルブの開閉動作を制御するバルブ制御部とをさらに備え、
前記バルブ制御部は、前記貯水量が所定量より少ないと流量を増加させ、貯水量が所定量以上となると流量を低下させるよう電動バルブを制御する請求項3に記載の発電システム。
【請求項5】
前記第1接触部が、太陽電池の受光面とは反対側の裏面に接触している請求項1〜4のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項6】
前記第1接触部が、透光性材料によって形成されて太陽電池の受光面に接触している請求項1〜5のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項7】
前記熱電変換素子の放熱面に接触する放熱器をさらに備え、
前記放熱器は、大気中、地面および地中のうちの少なくとも1つに放熱するための放熱板部を有している請求項1〜6のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項8】
前記第2接触部が、熱電変換素子の吸熱面と密着する平坦面を有する請求項1〜7のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項9】
前記熱電変換素子が2個以上備えられ、
前記第2接触部は、一対の前記平坦面を対向して有する扁平形に形成されており、一対の平坦面に一対の熱電変換素子の吸熱面が対向状に密着している請求項8に記載の発電システム。
【請求項10】
前記太陽電池と熱電変換素子とに配線を介して電気的に接続されたパワーコンディショナーをさらに備えた請求項1〜9のいずれか1つに記載の発電システム。
【請求項11】
屋根または屋上を有する建造物と、請求項1〜10のいずれか1つに記載の発電システムとを備え、
発電システムにおいて、太陽電池が前記屋根または屋上に傾斜状に設置されると共に、前記導水管の第1接触部は供給された水が下から上へ向かって流れるように構成された発電建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−258031(P2010−258031A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103082(P2009−103082)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】