説明

発電システム

【課題】発電機への駆動入力が変動する場合にも全体で効率よく発電できる発電システムを提供する。
【解決手段】永久磁石型同期発電機11の回転軸12と巻線型同期発電機13の回転軸14とを同軸に結合した発電システムである。永久磁石型同期発電機11は、固定されて第1の電機子巻線15を備えた第1の電機子16と、第1の電機子16内で回転軸12の周りに回転可能な第1の回転子17と、を有する。巻線型同期発電機13は、固定されて第2の電機子巻線18を備えた第2の電機子19と、回転軸14の周りに第2の電機子19内で回転可能な第2の回転子20と、を有して、さらに、界磁巻線21を有する。第1の電機子巻線15に生じた交流がコンバータによって直流に変換されて界磁巻線21に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電システムに係り、特に、たとえば風車発電システムなどのように駆動力が変動する場合にも効率よく発電できるように二つの形式の発電機を組み合わせた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の風車発電システムなどにおいて、誘導発電機や永久磁石型同期発電機を用いることが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。なお、永久磁石型同期発電機としては表面磁石型や埋め込み磁石型などのものが広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−15198号公報
【特許文献2】特開2002−34300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の永久磁石型同期発電機では、出力相当の容量をもつ体格の発電機が必要であり、容量を超える入力があった場合は停止せざるを得ない。また、永久磁石型同期発電機は、界磁に高価な永久磁石を数多く用いているために高価である。さらに、界磁(永久磁石)の起磁力が一定であるため、力率を発電機側で制御することができない。
【0005】
一方、励磁巻線を持つ交流発電機では、励磁巻線に電流を流すための電源が必要である。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、発電機への駆動入力が変動する場合にも全体で効率よく発電できる発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記目的を達成するものであって、固定されて第1の電機子巻線を備えた第1の電機子と、この第1の電機子に対向して第1の回転軸の周りに回転可能で複数の永久磁石を備えた第1の回転子と、を有する永久磁石型同期発電機と、固定されて第2の電機子巻線を備えた第2の電機子と、前記第1の回転軸に機械的に連結された第2の回転軸の周りに前記第2の電機子内で回転可能な第2の回転子と、を有して、前記第2の電機子または第2の回転子に取り付けられた界磁巻線を備えた巻線型交流発電機と、を有する発電システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発電機への駆動入力が変動する場合にも、発電システム全体で効率よく発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る発電システムの第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る発電システムの第2の実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る発電システムの第3の実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る発電システムの第4の実施形態を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る発電システムの第5の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る発電システムの実施形態について説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態に係る発電システムを示すブロック図である。
【0012】
永久磁石型同期発電機11の回転軸(第1の回転軸)12と、巻線型交流発電機の一種である巻線型同期発電機13の回転軸(第2の回転軸)14とが同軸上で直結されている。これらの回転軸12、14には、たとえば風車などの駆動入力装置50が機械的に結合されている。
【0013】
永久磁石型同期発電機11としては、表面磁石型や埋め込み磁石型などのいずれでもよい。また、巻線型同期発電機13としては、たとえばリラクタンス発電機でもよい。
【0014】
永久磁石型同期発電機11の固定子側には、第1の電機子巻線15が巻かれた第1の電機子16が配置されている。永久磁石型同期発電機11の回転子(第1の回転子)17は、永久磁石(図示せず)が取り付けられていて、回転軸12とともに回転可能に支持されている。
【0015】
巻線型同期発電機13の固定子側には、第2の電機子巻線18が巻かれた第2の電機子19が配置されている。巻線型同期発電機13の回転子(第2の回転子)20は第2の電機子19内で回転軸14とともに回転可能に支持されている。第2の回転子20には界磁巻線21が巻かれている。なお、界磁巻線21は固定子側に巻かれていてもよい。
【0016】
永久磁石型同期発電機11の第1の電機子巻線15からは三相交流(AC)が出力され、その出力側は第1のコンバータ22および第2のコンバータ23に並列に入力されて、それらにより交流から直流(DC)に変換されるように接続されている。第1のコンバータ22の出力側は第1のインバータ24に入力されて、直流から三相交流に変換(逆変換)されるように接続されている。
【0017】
第2のコンバータ23の出力側は巻線型同期発電機13の界磁巻線21に接続されている。
【0018】
巻線型同期発電機13の第2の電機子巻線18からは三相交流が出力されるので、その出力側は第3のコンバータ25に入力されて交流から直流に変換されるように接続されている。第3のコンバータ25の出力側は第2のインバータ26に入力されて、直流から三相交流に変換(逆変換)されるように接続されている。
【0019】
次に、この実施形態の動作について説明する。
【0020】
駆動入力装置50による駆動入力が十分に大きいときは、永久磁石型同期発電機11によって発電された第1の電機子巻線15からの三相交流の一部(大部分)は、第1のコンバータ22によって直流に変換され、さらに、第1のインバータ24によって三相交流に変換される。
【0021】
さらに、第1の電機子巻線15からの三相交流の一部は、第2のコンバータ23によって直流に変換され、巻線型同期発電機13の界磁巻線21に供給される。これにより、巻線型同期発電機13でも発電され、交流出力が第2の電機子巻線18から第3のコンバータ25に入力されて直流に変換され、さらに、第2のインバータ26によって三相交流に変換される。
【0022】
このように、駆動入力装置50による駆動入力が十分に大きいときは、永久磁石型同期発電機11と巻線型同期発電機13の両方で発電されるので大きな交流電力出力を得ることができる。
【0023】
また、このとき、第2のコンバータ23を制御して界磁巻線21に流れる電流を調整することにより、巻線型同期発電機13の出力を変化させることができる。またこの場合、力率を制御することができる。
【0024】
一方、駆動入力装置50による駆動入力が小さいときは、永久磁石型同期発電機11による発電は行なわれるが、第2のコンバータ23からの直流出力が小さいことから、巻線型同期発電機13での発電は行なわれず、巻線型同期発電機13はフライホイールとして作用する。
【0025】
たとえば、第2のコンバータ23に、自動電圧調整機能を持たせて、永久磁石型同期発電機11の第1の電機子巻線15から得られる三相電流出力が低下して第2のコンバータ23の直流出力電圧が所定値未満になるときに第2のコンバータ23の直流出力を停止させるようにしてもよい。
【0026】
以上説明したように、この実施形態によれば、駆動入力装置50による駆動入力が大幅に変動する場合においても、高価な永久磁石を用いた永久磁石型同期発電機11を常に有効に活用して発電を継続し、発電システム全体の効率的な活用が可能である。
【0027】
[第2の実施形態]
図2は第2の実施形態に係る発電システムを示すブロック図である。ここで、第1の実施形態と同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。この第2の実施形態は、第1の実施形態(図1)における第1のコンバータ22と第3のコンバータ25を第4のコンバータ61で置き換え、第1のインバータ24と第2のインバータ26を第3のインバータ62で置き換えたものである。第4のコンバータ61は2種類の交流入力を受け入れて一つの直流に変換するものである。
【0028】
この実施形態によれば、第1の実施形態に比べてコンバータおよびインバータの個数をそれぞれ1個ずつ減らすことができ、機器のコンパクト化とコストダウンを図ることができる。
【0029】
[第3の実施形態]
図3は第3の実施形態に係る発電システムを示すブロック図である。ここで、第1の実施形態と同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。この第3の実施形態は、第1の実施形態(図1)における第1のコンバータ22と第2のコンバータ23を第5のコンバータ63で置き換えたものである。第5のコンバータ63は一つの交流入力を受け入れて2種類の直流に変換するものである。
【0030】
この実施形態によれば、第1の実施形態に比べてコンバータの個数を減らすことができ、機器のコンパクト化とコストダウンを図ることができる。
【0031】
[第4の実施形態]
図4は第4の実施形態に係る発電システムを示すブロック図である。ここで、第1の実施形態と同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。この第4の実施形態は、第1の実施形態(図1)における巻線型同期発電機13を、他の巻線型交流発電機である巻線型誘導発電機70で置き換え、第2のコンバータ23を周波数変換器71で置き換え、さらに、第1の回転軸12と第2の回転軸14の間に歯車72を介在させたものである。歯車72は、第1の回転軸12の回転数が第2の回転軸14の回転数よりも小さくなるように設定されている。なお、この実施形態では、「第2のコンバータ」は存在しない。
【0032】
周波数変換器71は、交流を直流に変換し、さらにその直流を交流に変換するものであって、元の交流と異なる周波数の交流を得ることができるものである。
【0033】
永久磁石型同期発電機11の第1の電機子巻線15からは三相交流が出力され、その出力は第1のコンバータ22および周波数変換器71入力される。第1のコンバータ22の出力は第1のインバータ24に入力されて、直流から三相交流に変換(逆変換)される。
【0034】
周波数変換器71の出力は巻線型誘導発電機70の界磁巻線21に入力される。
【0035】
巻線型誘導発電機70の第2の電機子巻線18からは三相交流が出力され、その出力は第3のコンバータ25に入力されて交流から直流に変換される。第3のコンバータ25の出力は第2のインバータ26に入力されて、直流から三相交流に変換(逆変換)される。
【0036】
駆動入力装置50による駆動入力が十分に大きいときは、永久磁石型同期発電機11によって発電された第1の電機子巻線15からの三相交流の一部(大部分)は、第1のコンバータ22によって直流に変換され、さらに、第1のインバータ24によって三相交流に変換される。
【0037】
さらに、第1の電機子巻線15からの三相交流の一部は、周波数変換器71によって周波数変換され、巻線型誘導発電機70の界磁巻線21に供給される。これにより、巻線型誘導発電機70でも発電され、交流出力が第2の電機子巻線18から第3のコンバータ25に入力されて直流に変換され、さらに、第2のインバータ26によって三相交流に変換される。
【0038】
このように、駆動入力装置50による駆動入力が十分に大きいときは、永久磁石型同期発電機11と巻線型誘導発電機70の両方で発電されるので大きな交流電力出力を得ることができる。
【0039】
また、このとき、周波数変換器71を制御して界磁巻線21に流れる電流を調整することにより、巻線型誘導発電機70の出力を変化させることができる。
【0040】
一方、駆動入力装置50による駆動入力が小さいときは、永久磁石型同期発電機11による発電は行なわれるが、周波数変換器71からの直流出力が小さいことから、巻線型誘導発電機70での発電は行なわれず、巻線型誘導発電機70はフライホイールとして作用する。
【0041】
なお、通常の設計では、永久磁石型同期発電機11よりも巻線型誘導発電機70の回転数を高くした方が効率よく運転できるので、これらの回転軸12、14を、歯車72を介して接続し、異なる回転数で運転できるようにすることが好ましい。
【0042】
以上説明したように、この実施形態によれば上述の他の実施形態と同様に、駆動入力装置50による駆動入力が大幅に変動する場合においても、高価な永久磁石を用いた永久磁石型同期発電機11を常に有効に活用して発電を継続し、発電システム全体の効率的な活用が可能である。
【0043】
[第5の実施形態]
図5は第5の実施形態に係る発電システムを示すブロック図である。ここで、第4の実施形態と同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。この第5の実施形態は、第4の実施形態(図4)における第1のコンバータ22と第3のコンバータ25を第4のコンバータ61で置き換え、第1のインバータ24と第2のインバータ26を第3のインバータ62で置き換えたものである。このような置き換えは、第1の実施形態と第2の実施形態の関係と同様である。
【0044】
この実施形態によれば、第4の実施形態に比べてコンバータおよびインバータの個数をそれぞれ1個ずつ減らすことができ、機器のコンパクト化とコストダウンを図ることができる。
【0045】
[他の実施形態]
以上説明した実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
たとえば、第2の実施形態(図2)の二つのコンバータ23、61をさらに一つのコンバータで置き換えることも可能である。それにより、さらにコンバータの個数を減らすことができ、機器のコンパクト化とコストダウンを図ることができる。
【0047】
また、上記各実施形態において、駆動入力装置50は、風車に限らず、回転駆動力を生じる他の動力機械であってもよい。
【0048】
また、第4および第5の実施形態では、歯車72を介して二つの回転軸12、14を機械的に連結するものであるが、二つの回転軸12、14の回転数を合致させることができる場合は、歯車を用いずに、フランジなどによって二つの回転軸12、14を互いに固定してもよい。逆に、第1ないし第3の実施形態で、歯車72を介して二つの回転軸12、14を機械的に連結するものとしてもよい。
【0049】
また、上記各実施形態では、固定子が外側にあり、回転子が内側にあるものとしたが、逆の配置もありうる。
【0050】
さらに、上記説明の中で、三相交流として説明したものは、単相交流に置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
11 永久磁石型同期発電機
12 第1の回転軸
13 巻線型同期発電機
14 第2の回転軸
15 第1の電機子巻線
16 第1の電機子
17 第1の回転子
18 第2の電機子巻線
19 第2の電機子
20 第2の回転子
21 界磁巻線
22 第1のコンバータ
23 第2のコンバータ
24 第1のインバータ
25 第3のコンバータ
26 第2のインバータ
50 駆動入力装置
61 第4のコンバータ
62 第3のインバータ
63 第5のコンバータ
70 巻線型誘導発電機
71 周波数変換器
72 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定されて第1の電機子巻線を備えた第1の電機子と、この第1の電機子に対向して第1の回転軸の周りに回転可能で複数の永久磁石を備えた第1の回転子と、を有する永久磁石型同期発電機と、
固定されて第2の電機子巻線を備えた第2の電機子と、前記第1の回転軸に機械的に連結された第2の回転軸の周りに前記第2の電機子内で回転可能な第2の回転子と、を有して、前記第2の電機子または第2の回転子に取り付けられた界磁巻線を備えた巻線型交流発電機と、
を有する発電システム。
【請求項2】
前記巻線型交流発電機は巻線型同期発電機であることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記巻線型同期発電機はリラクタンス発電機であることを特徴とする請求項2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記永久磁石型同期発電機は、前記第1の回転子が回転することによって前記第1の電機子巻線に交流が発生するように構成され、
前記巻線型同期発電機は、前記第2の回転子が回転することによって前記第2の電機子巻線に交流が発生するように構成され、
当該発電システムは、
前記第1の電機子巻線に発生した交流を直流に変換する第1のコンバータ手段と、
前記第1の電機子巻線に発生した交流を直流に変換して前記界磁巻線に供給する第2のコンバータ手段と、
前記第2の電機子巻線に発生した交流を直流に変換する第3のコンバータ手段と、
前記第1のコンバータ手段から出力された直流を交流に変換する第1のインバータ手段と、
前記第3のコンバータ手段から出力された直流を交流に変換する第2のインバータ手段と、
を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の発電システム。
【請求項5】
前記第1、第2および第3のコンバータ手段のうちの少なくとも二つが一つのコンバータによって実現されるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の発電システム。
【請求項6】
前記第1および第2のインバータ手段が一つのインバータによって実現されるように構成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の発電システム。
【請求項7】
前記第2のコンバータ手段は自動電圧調整手段を含むこと、を特徴とする請求項4または請求項5に記載の発電システム。
【請求項8】
前記巻線型交流発電機は巻線型誘導発電機であることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項9】
前記永久磁石型同期発電機は、前記第1の回転子が回転することによって前記第1の電機子巻線に交流が発生するように構成され、
前記巻線型誘導発電機は、前記第2の回転子が回転することによって前記第2の電機子巻線に交流が発生するように構成され、
当該発電システムは、
前記第1の電機子巻線に発生した交流を直流に変換する第1のコンバータ手段と、
前記第1の電機子巻線に発生した交流の周波数を変換して前記界磁巻線に交流を供給する周波数変換手段と、
前記第2の電機子巻線に発生した交流を直流に変換する第3のコンバータ手段と、
前記第1のコンバータ手段から出力された直流を交流に変換する第1のインバータ手段と、
前記第3のコンバータ手段から出力された直流を交流に変換する第2のインバータ手段と、
を有することを特徴とする請求項8に記載の発電システム。
【請求項10】
前記第1および第3のコンバータ手段が一つのコンバータによって実現されるように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の発電システム。
【請求項11】
前記第1および第2のインバータ手段が一つのインバータによって実現されるように構成されていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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