説明

発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法

【課題】ボイラに送給する給水中の鉄濃度を基準値以下にすることができる、発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法を提供すること。
【解決手段】ヒータドレンタンク116から排出されるヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値よりも高い場合には、前記ヒータドレン水117が系外に排出されるようにし、前記ヒータドレンタンク116から排出される前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合には、前記ヒータドレン水117がろ過装置15に供給されるようにしたこと、あるいは、予め設定された所定時間が経過していない場合には、前記ヒータドレン水117が系外に排出されるようにし、予め設定された所定時間が経過した場合には、前記ヒータドレン水117が前記ろ過装置15に供給されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水ヒータから送給されるヒータドレン水中の鉄成分をろ過し、前記ヒータドレン水を常時給水管に回収可能な水質とする、発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電プラントでは、発生させた高温・高圧の蒸気をタービンに供給し、この蒸気によりタービンを駆動して発電を行っている。タービンを駆動した後の蒸気は、復水器により冷却されて水の状態に戻された後、再び加熱されてボイラに供給され、再使用される。
【0003】
ところで、ボイラへの給水中には、酸化鉄を主体とする不純物が含まれており、この不純物がボイラの伝熱管内面に徐々に付着し、この付着物によってボイラの差圧力が上昇する場合があり、ひいてはボイラや配管等の破損を招くおそれもある。そのため、給水系統の給水が流れる流路に除鉄ろ過器を設置することにより、酸化鉄を主体とする不純物を除去することが行われている(特許文献1)。
【0004】
また、カートリッジ、中空糸、電磁フィルタ等の各種フィルタが鉄成分の除去方法として提案されているが、鉄酸化物の粒子は極めて微細であるため、これらのフィルタによる不純物除去性能は不安定であり、実用には至っていない(特許文献2)。
さらに、ボイラ入口の給水中における鉄濃度は、5μg/l(ppb)以下、望ましくは2μg/l(ppb)以下とすることが、JIS規格に規定されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−17983号公報
【特許文献2】特開平11−57416号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JIS B 8223(ボイラの給水及びボイラ水の水質)、2006年10月20日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基準値以上の多量の鉄分等を含有するヒータドレン水は系外に排出しなければならず、給水系統に戻して再利用することができない。そのため、ボイラに新たに給水を供給するために発電出力を60〜80%程度で運転する結果、多量の水(純水)を必要とするとともに、タービン設備の発電出力を100%に上昇させるまでに3日も要する、といった問題点がある。
また、系外に排出された多量の排水を処理する排水処理設備、および多量の水(純水)を製造する純水製造設備が必要になり、設備費が高騰してしまうといった問題点もあった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ボイラに送給する給水中の鉄濃度を基準値以下にすることができる、発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法は、熱源からの熱によって蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラの蒸気により作動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンからの排気を復水する復水器と、前記復水器で凝縮された復水を給水として前記ボイラ側に送給する給水系統と、前記給水系統の給水管に介装され、前記蒸気タービンから再熱器に送給する排気の一部を抽気し、これを用いて前記給水を加熱する給水ヒータと、前記給水ヒータから排出されるヒータドレン水を貯蔵するヒータドレンタンクと、前記ヒータドレン水中の鉄粒子をろ過するろ過装置と、を有するとともに、前記給水中に酸素を注入して酸素処理を行う、発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法であって、前記ヒータドレンタンクから排出される前記ヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値よりも高い場合には、前記ヒータドレン水が系外に排出されるようにし、前記ヒータドレンタンクから排出される前記ヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置に供給されるようにした、あるいは、予め設定された所定時間が経過していない場合には、前記ヒータドレン水が系外に排出されるようにし、予め設定された所定時間が経過した場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置に供給されるようにした。
【0010】
また、本発明に係る発電プラントは、熱源からの熱によって蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラの蒸気により作動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンからの排気を復水する復水器と、前記復水器で凝縮された復水を給水として前記ボイラ側に送給する給水系統と、前記給水系統の給水管に介装され、前記蒸気タービンから再熱器に送給する排気の一部を抽気し、これを用いて前記給水を加熱する給水ヒータと、前記給水ヒータから排出されるヒータドレン水を貯蔵するヒータドレンタンクと、前記ヒータドレン水中の鉄粒子をろ過するろ過装置と、を有するとともに、前記給水中に酸素を注入して酸素処理を行う、発電プラントであって、前記ヒータドレンタンクから排出される前記ヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値よりも高い場合には、前記ヒータドレン水が系外に排出され、前記ヒータドレンタンクから排出される前記ヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置に供給される、あるいは、予め設定された所定時間が経過していない場合には、前記ヒータドレン水が系外に排出され、予め設定された所定時間が経過した場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置に供給される。
【0011】
本発明に係る発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法および本発明に係る発電プラントによれば、ヒータドレンタンクから排出されるヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値よりも高い場合には、ヒータドレン水が系外に排出され、ヒータドレンタンクから排出されるヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合には、ヒータドレン水がろ過装置に供給される、あるいは、予め設定された所定時間が経過していない場合には、ヒータドレン水が系外に排出され、予め設定された所定時間が経過した場合には、ヒータドレン水がろ過装置に供給されることになる。
ここで「所定値」は、発電プラントのボイラ回収率(ボイラに流入する給水のうち、ヒータドレン水が占める割合)が10%であり、ボイラ入口の給水中における鉄濃度を、上述したJIS規格に規定された最も厳しい基準値(2μg/l)以下とする場合、20(=2÷0.1)μg/lとなる。
また、「所定の時間」は、当該発電プラントにおいて実測された、ヒータドレンタンクから排出されるヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値以下となるのに要する時間(例えば、4時間)のことである。
これにより、ボイラに送給する給水中の鉄濃度を、JIS規格に規定された基準値以下にすることができる。
【0012】
上記発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法において、前記ろ過装置の入口における圧力と、前記ろ過装置の出口における圧力との差が、所定の圧力以上になったら、前記ろ過装置をバイパスするバイパス管を介して前記ヒータドレン水を前記給水ヒータに導くようにするとさらに好適である。
【0013】
このような発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法によれば、ろ過装置の差圧が所定の圧力(例えば、110kPa)以上になったら、ろ過装置をバイパスするバイパス管を介してヒータドレン水が給水ヒータに導かれることになる。
これにより、ボイラに供給される給水量を確保することができる。
【0014】
上記発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法において、前記ろ過装置をバイパスするバイパス管を介して前記ヒータドレン水を前記給水ヒータに導く際、前記ヒータドレン水を前記ろ過装置に最小流量流すようにするとさらに好適である。
【0015】
このような発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法によれば、ろ過装置の差圧が所定の圧力(例えば、110kPa)以上になった場合、最小流量のヒータドレン水がろ過装置に流されることになる。
これにより、ろ過装置により捕集された鉄粒子の固着を防止することができる。
【0016】
上記発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法において、前記ヒータドレン水を、前記ろ過装置を構成するフィルタエレメントの表層部のみに通水して、当該フィルタエレメントを収容する容器の内部の水を置換するようにするとさらに好適である。
【0017】
このような発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法によれば、フィルタエレメントへは通水されず、鉄の捕集は行われなくなるので、最小流量を流すのに必要なフィルタエレメント(例えば、5t/H×Fe:20ppb(mg/t)×24H×365day=876g−Feを捕集するのに必要なフィルタエレメント)を不要とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法によれば、ボイラに送給する給水中の鉄濃度を基準値以下にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る発電プラントの概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る発電プラントの要部を詳細に示す系統図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るろ過装置の概略を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)はフィルタエレメントの斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るろ過装置の概略を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)はフィルタエレメントの平面図である。
【図5】本発明の別の実施形態に係るろ過装置の概略を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)はフィルタエレメントの平面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態に係るろ過装置の概略を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)はフィルタエレメントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法について、図1および図2を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る発電プラントの概略構成図、図2は本実施形態に係る発電プラントの要部を詳細に示す系統図である。
なお、本実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る発電プラント10は、熱源からの熱によって蒸気11を発生させるボイラ118と、該ボイラ118の蒸気11により作動する蒸気タービン12と、該蒸気タービン12からの排気を復水する復水器106と、該復水器106で凝縮された復水を給水107として前記ボイラ118側に送給する給水系統Aと、前記給水系統Aの給水管13に介装され、前記蒸気タービン12から再熱器115に送給する排気の一部を抽気14として抜出し、これを用いて前記給水107を加熱する低圧給水ヒータ109と、を備えるとともに、前記低圧給水ヒータ109から排出されるヒータドレン水117を貯蔵する低圧ヒータドレンタンク116と、前記ヒータドレン水117中の鉄分をろ過するろ過装置15と、前記低圧ヒータドレンタンク116と前記ろ過装置15との間に設けられ、前記低圧ヒータドレンタンク116から排出される前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値(本実施形態では、20μg/l)よりも高い場合には、前記ヒータドレン水117を系外に排出し、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合には、前記ろ過装置15に供給するために流路を切替える(第2の)流路切替え部16Bと、を備えている。
【0022】
なお、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度の所定値を20μg/lとしているのは、本実施形態に係る発電プラント10のボイラ回収率(前記ボイラ118に流入する前記給水107のうち、前記ヒータドレン水117が占める割合)が10%であるからである。すなわち、ボイラ入口の給水中における鉄濃度を、上述したJIS規格に規定された最も厳しい基準値(2μg/l)以下とするには、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度の所定値を20(=2÷0.1)μg/lとすればよいからである。したがって、発電プラント10のボイラ回収率が5%である場合には、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度の所定値は40μg/lとなる。
【0023】
また、本実施形態において、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度は、以下のようにして算出される。ここで、鉄イオンとは、ろ過装置15で捕集できない微粒な鉄を指し、例えば、0.1μm以下の粒径のものとする。
まず、前記低圧ヒータドレンタンク116から、全鉄(鉄粒子+鉄イオン)分析用のサンプル水I、鉄粒子分析用のサンプル水IIを同量採取する。
つぎに、吸光光度法等を用いて全鉄分析用のサンプル水Iに含まれる全鉄量を計測する。
つづいて、鉄粒子分析用のサンプル水IIを細孔径0.1μmのフィルタに通水し、吸光光度法等を用いてフィルタに捕集された鉄粒子量を計測する。
そして、全鉄量から鉄粒子量を引いて、鉄イオンの質量を得る。
鉄イオンの質量をサンプル水の容量で割って、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度を算出する。
【0024】
ここで、本実施形態に係る発電プラント10においては、前記蒸気タービン12の下流側に配置された前記復水器106で復水を得るとともに、外部に設けた補給水タンク104からの補給水105を必要に応じて前記復水と混合して給水107として給水系統Aに供給し、循環している。
【0025】
なお、本実施形態に係る給水系統Aでは、前記復水器106と前記低圧給水ヒータ109との間に、復水ポンプ18、電磁フィルタ19、純水装置20、および復水ブースタポンプ21が前記給水管13に介装されており、前記低圧給水ヒータ109と前記高圧給水ヒータ112との間に、脱気器110、貯槽111、およびボイラ給水ポンプ22が前記給水管13に介装されている。
【0026】
また、前記低圧給水ヒータ109において加熱された給水107は、高圧給水ヒータ112において図示しない高温・高圧の抽気を用いてさらに加熱される。そして、前記高圧給水ヒータ112を経て加熱された前記給水107は、前記ボイラ118に送給される。
【0027】
ここで、本実施形態では、前記給水107を加熱する前記低圧給水ヒータ109から排出された前記ヒータドレン水117は、前記低圧ヒータドレンタンク116に貯蔵され、低圧ヒータドレンポンプ23により該低圧ヒータドレンタンク116から前記ろ過装置15に排出される。
【0028】
そして、前記サンプル水I・IIから算出された前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度の測定結果に基づいて、鉄イオン濃度が所定値以下であるか否かが判断される。そして、判断の結果、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値よりも高い場合には、前記流路切替え部16Bにより流路を切替え、前記ヒータドレン水117を系外に排出し、所定値以下の場合には、前記ろ過装置15に供給して、前記ヒータドレン水117中の鉄粒子を除去するようにしている。
【0029】
また、本実施形態では、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合には、流路切替え部16Aにより流路を切替え、前記ヒータドレン水117を前記復水器106に供給して給水系統A内を循環させるようにしてもよい。
【0030】
ここで、本実施形態では、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合に前記ろ過装置15によって鉄粒子をろ過し、前記給水系統Aの前記給水管13側に送給して混合する前記ヒータドレン水117をドレンろ過水117Aとし、前記復水器106側に再利用水として供給される前記ヒータドレン水117をドレン給水117Bとする。
【0031】
また、本実施形態では、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度の所定値として、20μg/l以下の場合に、前記復水器106に前記ドレン給水117Bを供給して給水系統A内を循環させるようにしている。これは、例えば、前記ドレン給水117Bが前記復水器106に再利用水として供給される際に前記給水系統A内に設けている装置が前記ヒータドレン水117中の鉄粒子等によって汚染されないようにするためである。
また、前記ドレン給水117Bを復水器106に供給すると、その下流側に設置している復水処理装置(ろ過器及び復水脱塩装置)(図示せず)によって鉄分をさらに除去し系統へ回収するので、水の節約も図ることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度の所定値を20μg/lとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述したJIS規格に規定された最も緩い基準値(5μg/l)以下とする場合には、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度の所定値を50μg/lとしてもよい。
また、図1中の符号114は、過熱器である。
【0033】
図1および図2に示すように、前記低圧給水ヒータ109から排出された前記ヒータドレン水117は、(低圧給水ヒータ)ドレン本管31を介して前記低圧ヒータドレンタンク116に導かれる。
前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合、前記低圧ヒータドレンタンク116から排出された前記ヒータドレン水117は、ドレン本管31を介して前記ろ過装置15に導かれ、前記ろ過装置15によって鉄粒子がろ過されたドレンろ過水117Aは、前記ドレン本管31を介して前記給水系統Aの前記給水管13側に送給され、前記給水管13を流れる前記給水107に混合する。
【0034】
また、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合、前記低圧ヒータドレンタンク116から排出された前記ヒータドレン水117を、前記流路切替え部16Aのところで枝分かれした(低圧給水ヒータ)ドレン枝管32を介して前記復水器106に導き、前記復水器106側に再利用水として供給されるドレン給水117Bとすることもできる。
一方、前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が所定値よりも高い場合、前記低圧ヒータドレンタンク116から排出された前記ヒータドレン水117は、系外ブロー管33を介して系外に排出される。
【0035】
さて、図2に示すように、本実施形態に係る発電プラント10では、前記流路切替え部16Bと前記ろ過装置15との間に位置するドレン本管31と、前記ろ過装置15と前記低圧給水ヒータ109との間に位置するドレン本管31とを連通するバイパス管34が設けられている。
また、前記流路切替え部16Bと前記ろ過装置15との間に位置するドレン本管31には、ミニマムフロー供給管35が設けられており、前記ろ過装置15と前記低圧給水ヒータ109との間に位置するドレン本管31と、前記低圧ヒータドレンタンク116と前記流路切替え部16Aとの間に位置するドレン本管31とを連通するミニマムフロー戻り管36が設けられている。
【0036】
なお、バイパス管34の一端(上流端)は、ミニマムフロー供給管35の一端(上流端)よりも上流側に位置するドレン本管31に接続されている。
また、前記低圧ヒータドレンタンク116から排出された前記ヒータドレン水117を、前記ドレン本管31を介して前記ろ過装置15に導く場合、前記流路切替え部16Aと前記流路切替え部16Bとの間に設けられたバルブ41、前記流路切替え部16Bと前記ろ過装置15との間に設けられたバルブ42、および前記ろ過装置15よりも下流側で、かつ、バイパス管34の他端(下流端)が接続されている合流部(箇所)よりも上流側に位置する前記ドレン本管31の途中に設けられたバルブ43はそれぞれ全開とされ、前記ドレン枝管32の途中に設けられたバルブ44、前記系外ブロー管33の途中に設けられたバルブ45、バイパス管34の途中に設けられたバルブ46、ミニマムフロー供給管35の途中に設けられたバルブ47、およびミニマムフロー戻り管36の途中に設けられたバルブ48はそれぞれ全閉とされる。
【0037】
前記低圧ヒータドレンタンク116から排出された前記ヒータドレン水117を、前記ドレン本管31を介して前記ろ過装置15に導いているときに、前記ろ過装置15の入口における圧力と、前記ろ過装置15の出口における圧力との差(前記ろ過装置15の差圧)が、所定の圧力(例えば、110kPa)以上になったら、あるいは前記ヒータドレン水117中の鉄イオン濃度が20μg/l以下で、かつ、前記ろ過装置15の出口における鉄粒子量が0μg/lになったら、前記バルブ43は全開から全閉に切り換えられ、前記バルブ46は全閉から全開に切り換えられるとともに、前記バルブ47,48が開かれて、前記ボイラ118に供給される給水量が確保されるとともに、前記ろ過装置15に前記ヒータドレン水117が最小流量流されることになる。ここで、最小流量とは流量計で計測できる最小の値を目安とし、例えばフィルタへの通水流量の2%程度である。
【0038】
ここで、本実施形態で用いるろ過装置15は、低圧給水ヒータ109の通常の運転時の水条件に使用可能なものである必要がある。そのため、本実施形態で用いるろ過装置15としては、例えば、ポリスルホン酸、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ケブラー(登録商標)、金属ポーラスフィルタ等からなる、細孔径0.1μmのプリーツ型ろ過エレメントを使用するのが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
本実施形態に係る発電プラント10におけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法によれば、ヒータドレンタンク116から排出されるヒータドレン水中の鉄イオン濃度が20μg/lよりも高い場合には、ヒータドレン水が系外に排出され、ヒータドレンタンク116から排出されるヒータドレン水中の鉄イオン濃度が20μg/l以下の場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置15に供給されることになる。
ここで「所定値」は、発電プラントのボイラ回収率(ボイラに流入する給水のうち、ヒータドレン水が占める割合)が10%であり、ボイラ入口の給水中における鉄濃度を、上述したJIS規格に規定された最も厳しい基準値(2μg/l)以下とする場合、20(=2÷0.1)μg/lとなる。
これにより、ボイラ118に送給する給水中の鉄濃度を、JIS規格に規定された最も厳しい基準値以下にすることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る発電プラント10におけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法によれば、ろ過装置15の差圧が所定の圧力(例えば、110kPa)以上になったら、ろ過装置15をバイパスするバイパス管34を介してヒータドレン水117が低圧給水ヒータ109に導かれることになる。
これにより、ボイラ118に供給される給水量を確保することができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る発電プラント10におけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法によれば、ろ過装置15の差圧が所定の圧力(例えば、110kPa)以上になった場合、最小流量のヒータドレン水117がろ過装置15に流されることになる。
これにより、ろ過装置15により捕集された鉄粒子の固着を防止することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変形・変更して実施することもできる。
例えば、上述した実施形態では、ヒータドレンタンク116から排出されるヒータドレン水中の鉄イオン濃度が20μg/l(所定値)以下になってからヒータドレン水をろ過装置15に通水するようにしている。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、予め設定された所定時間が経過してからヒータドレン水をろ過装置15に通水するようにしてもよい。
ここで「所定の時間」は、当該発電プラントにおいて実測された、ヒータドレンタンクから排出されるヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値以下となるのに要する時間のことである。例えば、出力1000MWのプラントの場合、ドレンが発生してから鉄イオン濃度が20μg/l(所定値)以下となるまで約2時間かかる。よって、2時間経過後、ろ過装置15への通水を開始する。このように、予めプラント出力に応じた実績値から、ろ過装置15への通水開始時期を決定することで、作業効率の向上を図ることができる。
【0043】
また、上述した実施形態では、最小流量のヒータドレン水117がろ過装置15に流される際、図3(a)および図3(b)に示すように、フィルタエレメント15aへの通水を継続させるようにしている。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、図4(a)および図4(b)に示すように、フィルタエレメント15aの表層部のみに通水して、フィルタエレメント15aへの通水を中断させ、ろ過装置15の容器15bの内部の水を置換するようにしてもよい。
この場合、フィルタエレメント15aへは通水されず、鉄の捕集は行われなくなるので、最小流量を流すのに必要なフィルタエレメント15a(例えば、5t/H×Fe:20ppb(mg/t)×24H×365day=876g−Feを捕集するのに必要なフィルタエレメント15a)を不要とすることができる。
なお、この場合、容器15bの内部に導かれて、フィルタエレメント15aの表層部のみを通過したヒータドレン水117を容器15bの外部に導く排出用の配管15cが必要になる。
【0044】
さらに、図4(a)および図4(b)に示す実施形態において、フィルタエレメント15aの表層部のみに通水して、フィルタエレメント15aへの通水を中断させ、ろ過装置15の容器15bの内部の水を置換する際、図5(a)および図5(b)に示すように、鉄洗浄用の液(クエン酸、EDTA等)を容器15bの内部に通水して、ろ過装置15の容器15bの内部の水を置換するようにするとさらに好適である。
この場合、鉄洗浄用の液によりフィルタエレメント15aの表層部に付着した鉄酸化物の一部が溶解し、フィルタエレメント15aの表層部から除去されることになるので、フィルタエレメント15aの寿命を延伸させることができる。
【0045】
さらにまた、図1および図2に示す実施形態において、図6(a)および図6(b)に示すように、発電プラント10が待機状態にある時に、最小流量の純水がフィルタエレメント15aへ逆方向から通水され、フィルタエレメント15aを逆洗することができるように構成されているとさらに好適である。
この場合、フィルタエレメント15aを再生させることができ、フィルタエレメント15aの寿命を延伸させることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 発電プラント
12 蒸気タービン
13 給水管
15 ろ過装置
15a フィルタエレメント
15b 容器
34 バイパス管
106 復水器
109 (低圧)給水ヒータ
115 再熱器
116 ヒータドレンタンク
117 ヒータドレン水
118 ボイラ
A 給水系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源からの熱によって蒸気を発生させるボイラと、
前記ボイラの蒸気により作動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンからの排気を復水する復水器と、
前記復水器で凝縮された復水を給水として前記ボイラ側に送給する給水系統と、
前記給水系統の給水管に介装され、前記蒸気タービンから再熱器に送給する排気の一部を抽気し、これを用いて前記給水を加熱する給水ヒータと、
前記給水ヒータから排出されるヒータドレン水を貯蔵するヒータドレンタンクと、
前記ヒータドレン水中の鉄粒子をろ過するろ過装置と、
を有するとともに、
前記給水中に酸素を注入して酸素処理を行う、発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法であって、
前記ヒータドレンタンクから排出される前記ヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値よりも高い場合には、前記ヒータドレン水が系外に排出されるようにし、前記ヒータドレンタンクから排出される前記ヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置に供給されるようにしたこと、
あるいは、予め設定された所定時間が経過していない場合には、前記ヒータドレン水が系外に排出されるようにし、予め設定された所定時間が経過した場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置に供給されるようにしたことを特徴とする、発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法。
【請求項2】
前記ろ過装置の入口における圧力と、前記ろ過装置の出口における圧力との差が、所定の圧力以上になったら、前記ろ過装置をバイパスするバイパス管を介して前記ヒータドレン水を前記給水ヒータに導くようにしたことを特徴とする請求項1に記載の発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法。
【請求項3】
前記ろ過装置をバイパスするバイパス管を介して前記ヒータドレン水を前記給水ヒータに導く際、前記ヒータドレン水を前記ろ過装置に最小流量流すようにしたことを特徴とする請求項2に記載の発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法。
【請求項4】
前記ヒータドレン水を、前記ろ過装置を構成するフィルタエレメントの表層部のみに通水して、当該フィルタエレメントを収容する容器の内部の水を置換するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の発電プラントにおけるヒータドレン水中の鉄成分の除去方法。
【請求項5】
熱源からの熱によって蒸気を発生させるボイラと、
前記ボイラの蒸気により作動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンからの排気を復水する復水器と、
前記復水器で凝縮された復水を給水として前記ボイラ側に送給する給水系統と、
前記給水系統の給水管に介装され、前記蒸気タービンから再熱器に送給する排気の一部を抽気し、これを用いて前記給水を加熱する給水ヒータと、
前記給水ヒータから排出されるヒータドレン水を貯蔵するヒータドレンタンクと、
前記ヒータドレン水中の鉄粒子をろ過するろ過装置と、
を有するとともに、
前記給水中に酸素を注入して酸素処理を行う、発電プラントであって、
前記ヒータドレンタンクから排出される前記ヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値よりも高い場合には、前記ヒータドレン水が系外に排出されるようにし、前記ヒータドレンタンクから排出される前記ヒータドレン水中の鉄イオン濃度が所定値以下の場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置に供給されるようにしたこと、
あるいは、予め設定された所定時間が経過していない場合には、前記ヒータドレン水が系外に排出されるようにし、予め設定された所定時間が経過した場合には、前記ヒータドレン水が前記ろ過装置に供給されるようにしたことを特徴とする発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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