説明

発電制御システム及びパワーコンディショナ

【課題】太陽光発電システム等の発電装置が飛躍的に普及した場合に、発電システムの過剰な発電電力による系統不安定化を、防止する。
【解決手段】例えば発電装置が太陽電池パネルである場合は、その太陽電池パネル1と、その出力を商用交流の電力線と系統連系可能な電圧に変換するパワーコンディショナ2と、このパワーコンディショナ2に設けられ、電力線から電力線通信用の信号抽出が可能な通信子機23と、変電所5の主幹の電力線に対して、電力線通信用の信号注入が可能な通信親機52とを備えた発電制御システムである。パワーコンディショナ2は、通信親機52から通信子機23に送信される系統連系の許否に関する制御信号に基づいて、系統連系を回避する機能を有しており、太陽光発電により系統に供給される発電電力を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システム等の小規模な発電システムの運用技術及び当該システムに用いられるパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新エネルギーの1つとして太陽光発電が注目されており、一般家庭への太陽光発電システムの導入が徐々に増大している。このような太陽光発電システムでは、発電した電力を、その家屋内で使用することができるほか、余剰電力は電力会社に売電することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−298075号公報(段落[0002])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の太陽光発電システムにおける発電量は日射によって決まり、電力需要に応じて調整されるものではない。現状は、まだ一般家庭への太陽光発電の普及は少なく、その発電(売電)電力の総量が電力会社における電力供給力に占める割合は極めて小さい。しかしながら、近い将来、一般家庭等の小規模な需要家に太陽光発電システムが飛躍的に普及すると予想される。その場合、例えば電力需要が少ない休日等において多数の太陽電池パネルから需要に比して過剰な発電電力が電力系統に提供されると、系統が不安定になることが予想される。系統が不安定な状態が続くと、開閉器が動作して大規模停電を招く場合がある。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、太陽光発電システム等の小規模な発電システムが飛躍的に普及した場合に、発電システムの過剰な発電電力による系統不安定化を、防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の発電制御システムは、複数の電力線に配電する主幹の電力線に対して、電力線通信用の信号注入が可能な通信親機と、需要家に設置された発電装置と、前記発電装置の出力を、接続されるべき電力線と系統連系可能な電圧に変換するパワーコンディショナと、前記パワーコンディショナに対応して設けられ、前記需要家の電力線から電力線通信用の信号抽出が可能な通信子機と、を備え、前記通信親機から前記通信子機に送信される系統連系の許否に関する制御信号に基づいて、前記パワーコンディショナは系統連系を回避する機能を有していることを特徴とするものである。
【0007】
上記のように構成された発電制御システムでは、電力需要が少ない休日等の日中において多数の発電装置(例えば太陽電池パネル)から供給される過剰な発電電力により電力系統が不安定になることが予想される場合(又は不安定になり始めた場合)、制御信号に基づいて、パワーコンディショナは系統連系を回避する。これにより、発電システムの過剰な発電電力による系統不安定化を、防止することができる。
【0008】
(2)また、上記(1)の発電制御システムにおいて、制御信号は、ブロードキャスト方式で通信親機から複数の通信子機に送信されることが好ましい。
この場合、例えば通信親機を上位の変電所に設置して電力線にブロードキャスト方式で制御信号を注入すれば、当該変電所の下位にある全ての通信子機に対して一斉に制御信号を受信させ、多数のパワーコンディショナに対して、それらの系統連系を回避させることで、発電システムによる過剰な発電電力の抑制に大きな効果を得ることができる。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)の発電制御システムにおいて、通信親機は、系統連系を行う制御信号及び中断する制御信号のいずれか一方を、択一的、かつ、継続的に送信するものであってもよい。
この場合、信号が継続的に送信されるので、通信子機は、確実に制御信号を受信することができる。また、継続的な送信によって、系統連系の許否をきめ細かく、臨機応変に行うことができる。
【0010】
(4)また、上記(1)又は(2)の発電制御システムにおいて、通信親機は、系統連系を行う制御信号を一時的に送信し、当該制御信号を通信子機が受信したとき、パワーコンディショナは、所定時間だけ系統連系を実行するようにしてもよい。
この場合、制御信号が送信される時間が短いので、当該制御信号と他の通信の信号との相互干渉を抑制することができる。
【0011】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれかの発電制御システムにおいて、他の目的の電力線通信が行われる可能性がある場合には、当該目的の信号が送信されない時期に、通信親機は制御信号の送信を行うことが好ましい。
この場合、他の電力線通信の信号との相互干渉を確実に防止しつつ、パワーコンディショナに対する系統連系の制御を行うことができる。
【0012】
(6)また、上記(1)〜(5)のいずれかの発電制御システムにおいて、接続されている電力系統での事故を検出した場合は、所定時間、系統連系及び電力線通信を中断することが好ましい。
この場合、事故の復旧のために、例えば開閉制御を行うための信号が電力線通信により送信される場合にも、当該信号と、パワーコンディショナに関する制御信号とが、相互に干渉しない。この所定時間とは、例えば、事故から復旧するに要する経験的・統計的な時間に基づいて定めることができる。
【0013】
(7)また、上記(6)の発電制御システムにおいて、接続されている電力系統での事故を検出し、かつ、事故からの復旧を検出した場合は、復旧から一定時間経過後に、系統連系を開始するようにしてもよい。
この場合、復旧から一定時間経過後に、系統連系を開始するので、より確実に、他の電力線通信の信号との相互干渉を回避しながら、パワーコンディショナに関する系統連系の制御を行うことができる。また、この一定時間を、パワーコンディショナごとにランダムに設定すれば、一斉に系統連系が再開されることによる系統への影響を緩和することができる。
【0014】
(8)一方、本発明は、発電装置の出力を、商用交流の電力線と系統連系可能な電圧に変換するパワーコンディショナであって、通信親機から前記電力線に注入された電力線通信用の信号を抽出する通信子機を備え、前記通信親機から前記通信子機に送信される系統連系の許否に関する制御信号に基づいて、系統連系を回避する機能を有していることを特徴とするものである。
【0015】
上記のように構成されたパワーコンディショナでは、電力需要が少ない休日等の日中において多数の発電システム(例えば太陽光発電システム)から供給される過剰な発電電力により系統が不安定になることが予想される場合(又は不安定になり始めた場合)、制御信号に基づいて、パワーコンディショナは系統連系を回避する。これにより、発電システムの過剰な発電電力による系統不安定化を、防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発電制御システム及びパワーコンディショナによれば、発電システムの過剰な発電電力による系統不安定化を、防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽光発電制御システム及びこれを構成するパワーコンディショナを示すブロック回路図である。
【図2】図1のパワーコンディショナにおける系統連系の制御の一例を示すフローチャートである。
【図3】図1のパワーコンディショナにおける系統連系の制御の他の例を示すフローチャートである。
【図4】パワーコンディショナに対する制御信号を送信するタイミングの例を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る発電制御システム及びこれを構成するパワーコンディショナを示すブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《システム構成の第1例》
図1は、本発明の一実施形態に係る発電制御システムとして太陽光発電制御システム及びこれを構成するパワーコンディショナを示すブロック回路図である。この太陽光発電制御システムは、いわゆるメガソーラー発電所のような本格的な発電制御能力を持つ大規模システムではなく、例えば、一般家庭、店舗、ビル、公共設備等の需要家を対象として設置される比較的小規模なシステムである。ここでは、典型的に、一般家庭に用いられるシステムとして説明する。
【0019】
図1において、太陽電池パネル1は、通常、家屋の屋根に設置される。太陽電池1と接続されるパワーコンディショナ2は、屋内や軒下に設置される。電力量計3は、軒下や、家屋の敷地内のポールに設置される。なお、ここでは、パワーコンディショナ2に着目した回路部分のみを描いているが、実際には電力量計3の下位に分電盤があり、さらに、多くの屋内配線が接続されている。また、実際には電力量計3も買電用と、売電用とに分かれているが、ここでは詳細は省略する。
【0020】
上記パワーコンディショナ2は、太陽電池パネル1が出力する直流電圧を、商用交流の電力系統と連系可能な交流電圧に変換するインバータ装置21と、開閉制御装置22と、通信子機23とを備えている。開閉制御装置22は、インバータ装置21から商用交流の電力系統へ繋がる電路を開閉する開閉器としての機能と、開閉のための一定の判断を行う制御機能とを有している。
【0021】
通信子機23は、後述の通信親機52と電力線通信を行うPLCモデムである。電力線通信の信号重畳方式としては、例えば、商用交流波形のゼロクロス付近に1又は0のデジタル信号を重畳するTWACS(Two-Way Automatic Communications System)を採用することができる。通信子機23は、電力量計3の2次側の電路、すなわち、屋内配線の電力線から、自身の電源電圧を得るとともに、当該電力線を通信線としても使用する。
【0022】
上記のような太陽電池パネル1とパワーコンディショナ2とを含んで構成される太陽光発電制御システムが、多数(図示しているのは2戸のみ)の一般家庭に設置されているとする。一般家庭には、商用交流電圧として、単相3線式の低圧電路L2(簡略化のため2線のみを図示している。)を経て、200V/100Vが供給されている。この電圧は、戸建て住宅の場合は一般に、6.6kVの高圧を200/100Vの低圧に変圧する柱上トランス4から供給されている。柱上トランス4は、地区ごとに複数(図示しているのは2個のみ)設置されており、それぞれが、多数の太陽光発電制御システムを傘下に有している。
【0023】
柱上トランス4よりさらに上位には、変電所5がある。変電所5内には例えば特別高圧の77kVを高圧の6.6kVに変圧する配電トランス51が設置されている。この配電トランス51から、高圧電路L1(通常3相3線又は4線であるが簡略化のため2線を図示している。)を経て、柱上トランス4に電圧が付与されている。すなわち、高圧電路L1は、柱上トランス4を経て複数の低圧の電力線に配電する主幹の電力線である。変電所5内には、PLCモデムである通信親機52が設置されている。この通信親機52は、前述の信号重畳方式で高圧電路L1に電力線通信の信号を注入することにより、柱上トランス4から低圧電路L2を経て、各戸の通信子機23と電力線通信を行うことができる。
【0024】
上記通信親機52は、電力需給の監視・制御を行う監視制御装置6と、通信ケーブルによって接続されている。このような監視制御装置6は、典型的には、電力会社の中央指令室等に設置される。例えば、休日で、平日よりも電力需要が少なく、かつ、日中は晴天で多数の太陽光発電制御システムから大量の発電(売電)が行われるとき、電力の供給が過剰となって電力系統が不安定になり得る。このような事態が予想される場合(又は不安定になり始めた場合でもよい。)に、監視制御装置6は、太陽光発電の発電電力による系統連系を中断させる制御信号を、通信親機52に対して与えることができる。また、監視制御装置6は、中断の必要性が無いとき又は無くなったときには、系統連系を実行する制御信号を、通信親機52に対して与えることができる。
【0025】
通信親機52は、上位から指示された制御信号を通信子機23に送信する。この制御信号に基づいて、パワーコンディショナ2は、系統連系を行うか又は中断する制御を行うことができる。すなわち、太陽電池パネル1及びパワーコンディショナ2に通信親機52を加えた三者は、単なる太陽光発電システムではなく、太陽光発電自体をも制御する太陽光発電制御システムを構成している。
【0026】
《系統連系の制御例1》
次に、上記のような太陽光発電制御システムに関する系統連系の制御について説明する。図2は、かかる系統連系の制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの制御主体は、パワーコンディショナ2(主として開閉制御装置22)である。
パワーコンディショナ2は、日の出により最低限の光量が得られると夜間の待機状態から自動起動する。逆に、日没により最低限の光量が得られなくなると、パワーコンディショナ2は自動的に運転を停止し、待機状態となる。この場合、フローチャートの処理はリセットされ、初期状態に戻る。夜間は、この待機状態のままである。
【0027】
自動起動したパワーコンディショナ2は、まず、通信子機23が、系統連系を実行する制御信号を、通信親機52から受信したか否かの判定を行う(ステップS1)。当該信号を受信しない場合は、受信するまで待つ状態となる(ステップS1の繰り返し)。当該信号を受信すると、パワーコンディショナ2は、系統連系を実行し(ステップS2)、売電が可能であれば商用交流の電力系統へ電力を供給する。
【0028】
系統連系を開始したパワーコンディショナ2は、通信子機23が、系統連系を中断する制御信号を通信親機52から受信したか否かを判定し(ステップS3)、さらに、連系すべき系統に事故(停電等)が発生しているか否かを判定する(ステップS4)。通常は、ステップS3,S4における判定はいずれも「No」であり、ステップS2〜S4の処理が繰り返されている。
【0029】
そして、電力需要に対して必要以上の電力が太陽光発電により供給されると予想される場合(あるいはそのような事態になり始めた場合)、監視制御装置6から通信親機52に対して、系統連系を中断する制御信号が与えられる。これを受けて通信親機52は、系統連系を中断する制御信号を、ブロードキャスト方式で電力線(高圧電路L1)に注入する。注入された制御信号は、変電所5の傘下にある全ての電力線を介して、全ての通信子機23に送信される。通信子機23がこの制御信号を受信すると(ステップS3のYes)、パワーコンディショナ2は、系統連系を中断する(ステップS7)。系統連系の中断により、電力線通信も中断される。
【0030】
以後、パワーコンディショナ2は、再び系統連系を実行する制御信号を通信子機23が受信するのを待つ(ステップS1の繰り返し)。
通信子機23が、再び系統連系を実行する制御信号を受信すると(ステップS1の「Yes」)、パワーコンディショナ2は、前述のように、ステップS2〜S4を実行する。
【0031】
また、系統連系を中断する制御信号を受信しなくても、系統に事故が発生していることを、パワーコンディショナ2自身が検出した場合(ステップS4の「Yes」)には、パワーコンディショナ2は、系統連系を中断する(ステップS5)。以後、パワーコンディショナ2は、系統の状態が事故から復旧し、かつ、復旧から一定時間が経過するのを待って(ステップS5,S6の繰り返し)、経過により、ステップS1に戻り、以下、同様の処理が行われる。
【0032】
以上のように、通信親機52も含めた当該太陽光発電制御システムでは、電力需要が少ない休日等の日中において多数の太陽電池パネルから供給される過剰な発電電力により電力系統が不安定になることが予想される場合(又は不安定になり始めた場合)、制御信号に基づいて、パワーコンディショナ2は系統連系を回避する。従って、太陽光発電の過剰な発電電力による系統不安定化を、防止することができる。
【0033】
また、上記の制御信号は、ブロードキャスト方式で通信親機52から多数の通信子機23に送信される。すなわち、通信親機52を上位の変電所5に設置して電力線にブロードキャスト方式で制御信号を注入すれば、当該変電所5の下位にある全ての通信子機23に対して一斉に制御信号を受信させ、多数のパワーコンディショナ2に対して、それらの系統連系を回避させることで、太陽光発電による過剰な発電電力の抑制に大きな効果を得ることができる。
【0034】
また、通信親機52は、系統連系を行う制御信号及び中断する制御信号のいずれか一方を、択一的、かつ、継続的に送信する。従って、通信子機23は、受信に失敗することなく、確実に制御信号を受信することができる。なお、電力線に他の通信信号が重畳されない場合は、このように継続的に、系統連系の許否を示す制御信号を、常時、例えば前述のTWACSによって、通信親機52から通信子機23へ、提供することができる。また、継続的な送信によって、系統連系の許否をきめ細かく、臨機応変に行うことができる。
【0035】
《系統連系の制御例2》
図3は、系統連系の制御の他の例を示すフローチャートである。図において、自動起動したパワーコンディショナ2は、まず、通信子機23が、系統連系を開始(実行)する制御信号を、通信親機52から受信したか否かの判定を行う(ステップS11)。当該信号を受信しない場合は、受信するまで待つ状態となる(ステップS11の繰り返し)。当該信号を受信すると、パワーコンディショナ2は、系統連系を実行し(ステップS12)、売電が可能であれば商用交流の電力系統へ電力を供給する。
【0036】
系統連系を開始したパワーコンディショナ2は、所定時間が経過したか否かを判定し(ステップS13)、さらに、連系すべき系統に事故(停電等)が発生しているか否かを判定する(ステップS15)。所定時間の範囲内で系統の事故がなければ、所定時間の経過により、パワーコンディショナ2は、系統連系を終了する(ステップS14)。以後、パワーコンディショナ2は、再び系統連系を実行する制御信号を通信子機23が受信するのを待つ(ステップS1の繰り返し)。
【0037】
一方、所定時間が経過する前に、系統に事故が発生していることを、パワーコンディショナ2自身が検出した場合(ステップS15の「Yes」)には、パワーコンディショナ2は、系統連系を中断する(ステップS16)。以後、パワーコンディショナ2は、系統の状態が事故から復旧し、かつ、復旧から一定時間が経過するのを待つ(ステップS17,S13,S15,S16の繰り返し)。ステップS13における所定時間が経過する前に、事故から復旧してステップS17における一定時間が経過した場合は、パワーコンディショナ2は、系統連系を実行(再開)し(ステップS12)、所定時間の経過により、系統連系を終了する。また、事故から復旧してステップS17における一定時間が経過する前にステップS13における所定時間が経過した場合も、系統連系は終了となる(ステップS14)。以下、同様の処理が行われる。
【0038】
図3のフローチャートの処理を行う太陽光発電制御システムによれば、ある時刻に通信親機52から系統連系を開始する信号が送信され、これを通信子機23で受信したパワーコンディショナ2が、所定時間、太陽光発電の発電電力を系統に供給する、という運用が可能となる。さらに具体的には、例えば夏の晴天日であれば、朝6時から夕方6時まで12時間、系統連系させることや、電力需給が逼迫する午後の一定時間だけ系統連系させる、といった種々の運用が可能である。
【0039】
もちろん、系統連系を開始する制御信号が無ければ系統連系は行われない。従って、電力需要が少ない休日等の日中において多数の太陽電池パネルから供給される過剰な発電電力により系統が不安定になることが予想される場合、系統連系を実行する制御信号を通信子機23に与えないことによって、パワーコンディショナ2は系統連系を行わない。従って、太陽光発電の過剰な発電電力による系統不安定化を、防止することができる。
【0040】
また、上記の制御信号は、ブロードキャスト方式で通信親機52から多数の通信子機23に送信される。すなわち、通信親機52を上位の変電所5に設置して電力線にブロードキャスト方式で制御信号を注入すれば、当該変電所5の下位にある全ての通信子機23に対して一斉に制御信号を受信させることができる。制御信号を受信した多数のパワーコンディショナ2は、結果的に、系統連系の時間を制限することになるので、太陽光発電による過剰な発電電力の抑制に大きな効果を得ることができる。
【0041】
また、図3のフローチャートに示す制御信号の送信の仕方によれば、系統連系を実行するか否かの制御信号を継続的に送信しないので、制御信号が送信される時間が短く、通信の負荷が少ない。そのため、制御信号と他の電力線通信の信号との相互干渉を抑制することができる。他の電力線通信の信号とは、例えば、開閉器を遠隔制御で開閉するための開閉信号、系統の電圧を監視する電圧チェック信号等である。これらは、例えば、商用電源の周波数よりも高い周波数の、微小な振幅の正弦波信号として商用交流に重畳される。
【0042】
図4は、パワーコンディショナ2に対する制御信号Spを送信するタイミングの例を示す図である。図4の(a)に示す電圧チェック信号Sx(t1〜t2,t3〜t4)のように定期的に送信されている信号がある場合には、その合間となる時刻t2からt3までの間に、通信親機52は、制御信号Spを送信する。通信親機52は、常に、電力線通信の信号を監視しており、他の目的の電力線通信が行われる可能性がある場合には、当該目的の信号が送信されない時期に、ブロードキャスト方式で、信号の送信を行う。これにより、他の電力線通信の信号との相互干渉を確実に防止しつつ、パワーコンディショナ2に対する系統連系の制御を行うことができる。
【0043】
また、図4の(b)は、電力系統の事故(例えば地絡)が時刻t11に発生した場合、関連する開閉器が一旦開かれ、逐次再投入される。この再投入の過程で事故原因の場所を特定できれば、その場所への通電を回避しつつ、通電可能な系統には別のルートで通電する等の制御が行われる。このような開閉制御の信号Syが電力線通信として送信される可能性がある時間帯Δt(t11〜t12)は、経験的・統計的にわかっている。
【0044】
一方、事故の影響が及ぶ系統に接続されているパワーコンディショナ2は、電圧低下によって事故を検知することができ、系統連系を自動的に中断する。パワーコンディショナ2は、所定時間、この中断を継続する。所定時間とは、少なくともΔt(t11〜t12)である。このような所定時間の中断により、開閉制御の信号Syが電力線通信により送信される場合にも、当該信号Syと、パワーコンディショナ2に関する制御信号とが、相互に干渉しない。
【0045】
また、通信親機52は、例えば時刻t12において、事故からの復旧を検出した場合、復旧からさらに一定時間経過後の時刻t13に、制御信号Spを送信して系統連系を開始する。これにより、復旧から一定時間経過後に、系統連系を開始することになるので、より確実に、他の電力線通信の信号(Sy)との相互干渉を回避しながら、パワーコンディショナ2に関する系統連系の制御を行うことができる。また、この一定時間を、パワーコンディショナ2ごとにランダムに設定すれば、一斉に系統連系が再開されることによる系統への影響を緩和することができる。
【0046】
なお、前述のように、他の電力線通信の信号(Sx,Sy)と、パワーコンディショナ2に対する系統連系の制御信号Spとは、互いに信号重畳の方式が異なるので、通信子機23は、制御信号Spのみを有効に受信することができる。
【0047】
また、上述のような、他の目的の電力線通信との干渉を回避する方策は、パワーコンディショナ2等の発電用設備の制御信号のためだけでなく、電力量計3から電力情報を系統の上位へ電力線通信で伝達する自動検針システムに適用できる。この場合の電力量計3は通信子機23と同様の電力線通信の機能を備えるものとし、通信親機52からの検針指令信号に基づき、検針結果の信号を通信親機52に送信する。
【0048】
《システム構成の第2例》
図5は、本発明の他の実施形態に係る発電制御システム及びこれを構成するパワーコンディショナを示すブロック回路図である。この発電システムは、発電装置として、太陽電池パネル1のほか、例えば、燃料電池7、風力発電機8を備えている。太陽電池パネル1、燃料電池7及び風力発電機8のそれぞれの出力は、パワーコンディショナ2A内の電力変換装置21Aにより、系統連系に適した交流電圧に変換される。
【0049】
このような構成についても図1〜3と同様に、系統連系の制御を行うことができる。また、図5は、3種類の発電装置を併用した例を示したが、燃料電池7の単独使用や、風力発電機8の単独使用も可能である。また、任意の2種類の発電装置を組み合わせることも可能である。なお、発電装置はこれらに限定されるものではなく、例えば、電気自動車のバッテリから系統に余剰電力を供給することも可能である。
【0050】
《その他》
なお、上記各実施形態において、通信子機23はパワーコンディショナ2の内部に設けているが、外部の近傍に設けることも可能である。要するに、通信子機23は、パワーコンディショナ2に対応して設けられていればよいのであって、設置場所は限定されない。但し、機能的な観点からは、系統連系の許否に関する制御信号を受信する通信子機23は、その設置場所に関わらず、系統連系を回避する機能を備えるパワーコンディショナ2の構成要素たり得るものである。
また、通信親機52の設置場所は、複数の電力線に配電する主幹の電力線に対して電力線通信用の信号注入を行う点で変電所5内が好適であるが、必ずしも変電所5内に限定される訳ではない。
【0051】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 太陽電池パネル(発電装置)
2,2A パワーコンディショナ
7 燃料電池(発電装置)
8 風力発電機(発電装置)
22 開閉制御装置
23 通信子機
52 通信親機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力線に配電する主幹の電力線に対して、電力線通信用の信号注入が可能な通信親機と、
需要家に設置された発電装置と、
前記発電装置の出力を、接続されるべき電力線と系統連系可能な電圧に変換するパワーコンディショナと、
前記パワーコンディショナに対応して設けられ、前記需要家の電力線から電力線通信用の信号抽出が可能な通信子機と、を備え、
前記通信親機から前記通信子機に送信される系統連系の許否に関する制御信号に基づいて、前記パワーコンディショナは系統連系を回避する機能を有していることを特徴とする発電制御システム。
【請求項2】
前記制御信号は、ブロードキャスト方式で前記通信親機から複数の前記通信子機に送信される請求項1記載の発電制御システム。
【請求項3】
前記通信親機は、系統連系を行う制御信号及び中断する制御信号のいずれか一方を、択一的、かつ、継続的に送信する請求項1又は2に記載の発電制御システム。
【請求項4】
前記通信親機は、系統連系を行う制御信号を一時的に送信し、当該制御信号を前記通信子機が受信したとき、前記パワーコンディショナは、所定時間だけ系統連系を実行する請求項1又は2に記載の発電制御システム。
【請求項5】
他の目的の電力線通信が行われる可能性がある場合には、当該目的の信号が送信されない時期に、前記通信親機は前記制御信号の送信を行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の発電制御システム。
【請求項6】
接続されている電力系統での事故を検出した場合は、所定時間、系統連系及び電力線通信を中断する請求項1〜5のいずれか1項に記載の発電制御システム。
【請求項7】
接続されている電力系統での事故を検出し、かつ、事故からの復旧を検出した場合は、復旧から一定時間経過後に、系統連系を開始する請求項6記載の発電制御システム。
【請求項8】
発電装置の出力を、商用交流の電力線と系統連系可能な電圧に変換するパワーコンディショナであって、
通信親機から前記電力線に注入された電力線通信用の信号を抽出する通信子機を備え、
前記通信親機から前記通信子機に送信される系統連系の許否に関する制御信号に基づいて、系統連系を回避する機能を有していることを特徴とするパワーコンディショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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