発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法
【課題】 火力発電所等の冷却水冷却器に付着したムラサキイガイなどの海生生物を塩素等を使用することなく有効に防除する。
【解決手段】 発電所所内冷却水冷却器1の内部を流れて所内冷却水を冷却する海水を一時的に止めて当該所内冷却水冷却器1内にて滞留させ、その一方で所内冷却水は連続的または断続的に流し続けて当該所内冷却水が保有する熱を所内冷却水冷却器1内にて滞留している水に与え、当該水の温度を上昇させて所内冷却水冷却器1の内部に付着している海生生物を衰弱させる。この場合、所内冷却水冷却器1を流れる海水を一時的に止めた後、当該海水を淡水に置換してから当該淡水に熱を与えて温度上昇させることも好ましい。
【解決手段】 発電所所内冷却水冷却器1の内部を流れて所内冷却水を冷却する海水を一時的に止めて当該所内冷却水冷却器1内にて滞留させ、その一方で所内冷却水は連続的または断続的に流し続けて当該所内冷却水が保有する熱を所内冷却水冷却器1内にて滞留している水に与え、当該水の温度を上昇させて所内冷却水冷却器1の内部に付着している海生生物を衰弱させる。この場合、所内冷却水冷却器1を流れる海水を一時的に止めた後、当該海水を淡水に置換してから当該淡水に熱を与えて温度上昇させることも好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、火力発電所等の所内冷却水冷却器内に付着した場合に悪影響を及ぼすムラサキイガイなどの海生生物の成長抑制および駆除のための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電所における所内冷却水冷却器にこれらにとって有害なムラサキイガイなどの海生生物が付着すると、所内冷却水冷却器の細管を閉塞させて冷却性能を低下させるといったように発電所の安定運転に影響ないしは障害が及ぶことがある。従来、所内冷却水冷却器の付着生物対策としては、塩素を注入し直接的に毒作用を与えて処理するという化学的方法が多くの発電所において実施されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】社団法人電気化学協会 海生生物汚損対策懇談会、「海生生物汚損対策マニュアル」、技報堂出版株式会社、1991年3月8日、pp.106-110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環境への配慮から塩素注入濃度を低く抑えなければならず、所内冷却水冷却器内の付着生物を十分に防除できる残留塩素濃度が維持できないことがある。このような場合、特に夏季の高水温時に所内冷却水冷却器の冷却性能が低下し、結果として発電所の運転に支障が及んでしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、火力発電所等の所内冷却水冷却器に付着したムラサキイガイなどの海生生物を塩素等を使用することなく有効に防除することができる発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明者は種々の検討を行った。発電所所内の所内冷却水冷却器においては、所内冷却水を冷却するために海水との間で熱交換を行わせるものが多い。このとき、海生生物は熱交換に用いる海水用導管を通って所内冷却水冷却器内にまで入り込んで付着している。発明者は、このように海水との間で熱交換を行うが故に海生生物までもが取り込まれているという構造を逆手にとり、この構造を利用して海生生物を効果的に防除しうることに想到した。
【0007】
本発明はかかる知見に基づくものであり、請求項1に記載の発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法は、発電所所内冷却水冷却器の内部を流れて所内冷却水を冷却する海水を一時的に止めて当該所内冷却水冷却器内にて滞留させ、その一方で所内冷却水は連続的または断続的に流し続けて当該所内冷却水が保有する熱を所内冷却水冷却器内にて滞留している水に与え、当該水の温度を上昇させて所内冷却水冷却器の内部に付着している海生生物を衰弱させるというものである。
【0008】
本発明においては、発電所所内冷却水冷却器に入り込んで内部に付着した海生生物を衰弱させうる環境を容易に作り出すこととしている。すなわち、冷却用海水の流れは止めて所内冷却水冷却器内に滞留させる一方で、所内冷却水の方はそのまま流し続けることにより、所内冷却水が保有している熱を海水に与え続ける。この場合に所内冷却水が保有している熱は発電時に所内において生じる熱の一部であり、この熱を利用する限りは別の熱源を用意する必要がない。この状態を例えば1週間ないし2週間といった期間保持した場合、滞留している海水は受熱して水温上昇し、付着している海生生物を衰弱させひいては斃死(へいし)に至らしめる環境をつくり出す。
【0009】
この場合、請求項2に記載のように、所内冷却水冷却器を流れる海水を一時的に止めた後、当該海水を淡水に置換してから当該淡水に熱を与えて温度上昇させることも好ましい。いうまでもなく海生生物にとって淡水は生きるに適した環境ではないため、付着した海生生物をさらに衰弱させるあるいは斃死に至らしめる環境をつくり出すことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、発電所所内冷却水冷却器の内部を流れて所内冷却水を冷却する海水を淡水と置換し、所内冷却水冷却器内に当該淡水を滞留させた状態を所定期間保つことを特徴とする発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法によると、所内冷却水冷却器内の滞留海水の温度を上昇させ、海生生物を衰弱させあるいは斃死に至らしめて所内冷却水冷却器内を清浄な状態に維持することができ、これによって所内冷却水冷却器の細管が閉塞するのを防止できるから、発電所における所内冷却水の冷却性能が低下するのを防止することができる。したがって、発電所の安定運転に影響ないしは障害が及ぶことなく安定した状態で運転し続けることが可能となる。また、所内冷却水冷却器における伝熱性能が低下するのを効果的に防止し、あるいは付着後の低下した状態から回復させることができるから、所内冷却水と海水との間において十分に熱交換がなされる状態を維持することができる。
【0012】
しかも、この場合に利用する熱は発電所における所内冷却水がもともと保有しているものであるから、滞留中の海水を加温するための別の熱源を必要とせず、熱エネルギーの有効活用という観点でも好適である。加えて、所内冷却水が保有する熱を利用して滞留海水の水温を上昇させるという性質上、発電を停止させることなく海生生物の防除が実施できるため、発電自体に大きな影響を及ぼさずに実施可能という点でも有利である。
【0013】
また、本発明にかかる付着生物防除方法は発電所所内冷却水冷却器に適用してきわめて好適な手法であるということもできる。すなわち、この防除方法は所内冷却水を冷却するために海水との間で熱交換を行わせるという構造に着目したものであり、所内冷却水冷却器内にて海水を所定期間滞留させればよいため、既存の発電所所内においてそのまま実施可能であるか、または海水導管にバルブ等を設ければ実施可能になるという点で簡便であり発電所所内の冷却水冷却器における付着生物を防除するのに好適である。
【0014】
加えて、本発明を実施するにあたって従来技術のように塩素を注入する必要は皆無であるから、環境面への配慮という点できわめて好適な付着生物防除方法であるということができる。特に、発電所の周辺海域における魚介類等の海生生物にとって安全性の高い方法であることから、環境保全の観点からも高い価値を有する防除方法ということになる。
【0015】
また、請求項2に記載の付着生物防除方法によると、淡水の環境にしたことと相まって海生生物はさらに衰弱することになり、より短期間にて防除処理を終えることも可能となる。
【0016】
請求項3に記載の付着生物防除方法によると、所内冷却水冷却器内に淡水を滞留させることによってここでもまた海生生物を衰弱させうる環境を容易に作り出している。すなわち、冷却用海水の流れを止め、尚かつ当該海水を淡水へと置換することにより、所内冷却水冷却器内に付着した海生生物を衰弱させてその成長を抑制ないしは防止し、さらには斃死に至らしめることによって駆除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図6等に本発明の一実施形態を示す。本発明にかかる発電所所内冷却水冷却器(図6〜図8において符号1で示す)の付着生物防除方法は、発電所所内冷却水冷却器1の内部を流れて所内冷却水を冷却する海水を一時的に止めて当該所内冷却水冷却器1内にて滞留させ、その一方で所内冷却水は連続的または断続的に流し続けて当該所内冷却水が保有する熱を所内冷却水冷却器1内にて滞留している水に与え、当該水の温度を上昇させて所内冷却水冷却器1の内部に付着している海生生物を衰弱させるというものである。
【0019】
発電所所内の所内冷却水から熱を奪い冷却するために海水が利用されるケースは多く、海水の給水管(海水用の導管である海水管22のうち特に所内冷却水冷却器1に海水を供給する部分の管のことを指し、符号22aで示す)を通じて所内冷却水冷却器1にムラサキイガイなどの海生生物が付着することがあるが、本実施形態ではこの所内冷却水冷却器1における冷却構造に着目した手法によって付着生物を防除することとしている。すなわち、上述した給水管22aおよび排水管(海水管22のうち特に所内冷却水冷却器1から海水を排出する部分の管のことを指し、符号22bで示す)のバルブを閉じ、この海水給排水管内において海水を一時的に滞留させる(図6〜図8参照)。バルブは例えば図6中において符号4で示す手動弁である。その一方で、所内冷却水は連続して流し続けておき、この所内冷却水が有する熱を所内冷却水冷却器1内の熱交換器にて海水に移動させて与える。こうした場合、滞留している海水の水温が上昇することによって当該海水の中で細管に付着するなどして存在している海生生物は斃死し、あるいは少なくとも衰弱してその成長が抑制されるというようないわば温水処理を施すことができる。この場合の所内冷却水は、例えばほぼ一定の流量で連続的に流れていても、あるいは一定ではなく断続的に流れていてもよく、要するに海水に対して熱を与えて水温を少なくともある程度の温度にまで上昇させるものであればよい。いうまでもないが、この場合におけるある程度の温度というのは少なくとも海生生物を衰弱させうる温度のことであり、その具体的数値は海生生物の種別に応じて異なることになる。
【0020】
ここで、発電所所内の概略について説明し、引き続き所内冷却水冷却器1についても説明することとする(図9参照)。まず、発電所所内の冷却水系10について説明すると、この冷却水系10には、所内冷却水管11のほかスタンドパイプ12、冷却水ポンプ13、操作弁14,15が設けられている。冷却後の所内冷却水は、例えば33〜35℃程度の戻り温度でこの冷却水系10へと送られる。スタンドパイプ12は、櫓(やぐら)内に取り付けられた高圧パイプである。スタンドパイプ12は高さが例えば約20mあり、中には大気開放で所内冷却水が入っており、所内冷却水ポンプの入口圧力を一定に保つ働きがある。所内冷却水用の細管8に穴が開き冷却水が漏洩して冷却水量が減少するような場合には、スタンドパイプ12から水が補給され冷却水の不足を補い、低下した水位を上げるようにこのパイプに加水して冷却水量を一定に保つ。
【0021】
冷却水系10へと送られた後、所内冷却水は例えば並列した3機の冷却水ポンプ13によって加圧され、3機ある所内冷却水冷却器1のいずれかへと送られる。なお、図9中においては発電所所内に設けられた3機の所内冷却水冷却器1を便宜的にそれぞれA所冷クーラ、B所冷クーラ、C所冷クーラと表示している(図9参照)。3機の所内冷却水冷却器1のいずれかにて冷却された所内冷却水は、再び所内冷却水管11を通り、操作弁14,15を通過後、発電所所内の装置(例えば水素クーラ、オイルクーラ、各補機軸受など)へと送られる(図9参照)。
【0022】
発電所所内の海水系20は以下のようになっている。すなわち、本実施形態の海水系20には、循環水ポンプ21、海水管22、海水ブースタポンプ23、復水器Aの水室24、復水器Bの水室25、バルブ26、捕集器27が設けられている。循環水ポンプ21によって加圧され海水管22を通じて送られる海水は、大部分が復水器や捕集器27のある系へと送られ、残りの一部は所内冷却水冷却器1のある系へと送られる(図9参照)。復水器や捕集器27のある系へと送られた海水は、復水器A水室24と復水器B水室25のいずれか一方を通過し、捕集器27を通過後、海へと戻される。この場合において、海水がどの復水器の水室を通過するかは海水管22の途中に複数設けられたバルブ26の開閉の組み合わせによる。その一方で、所内冷却水冷却器1のある系へと送られた海水は例えば並列した3機の海水ブースタポンプ23によって加圧され、3機ある所内冷却水冷却器(A所冷クーラ、B所冷クーラ、C所冷クーラ)1のいずれかへと送られる。所内冷却水冷却器1において熱交換を行い所内冷却水を冷却した海水は、捕集器27を過ぎたあたりの海水管22へと送られ、復水器側へと送られた海水と合流する。
【0023】
次に発電所所内の所内冷却水冷却器1について説明すると、本実施形態の所内冷却水冷却器1は例えばタービン回転用の蒸気用の復水器などにおけるものであり、高温状態にある所内冷却水(この例でいえば給水またはその蒸気)と海水との間で熱交換を行わせる機器である。防除処理の一例を挙げれば、例えば主要な付着生物であるムラサキイガイが付着・成長する時期に合わせて所内冷却水冷却器1内の海水を一時的に止めて滞留させ、所内冷却水からの熱をこの滞留海水に与え続けることによって付着生物を衰弱させ、成長を抑制ないしは防止し、ひいては斃死させて所内冷却水冷却器1内を清浄な状態に維持するといったものである。
【0024】
本実施形態の所内冷却水冷却器1は図10に示すように縦長の筒型であり、その内部には上管板3が設けられ、この上管板3と蓋部2との間に海水が通過する空間が形成されている。また、この空間は仕切り板4によってほぼ半分に仕切られ、海水が送り込まれる供給側の室S1と海水を送り出す排出側の室S3とに分けられている。供給側の室S1には上述した給水管22aが接続され、排出側の室S3には排水管22bが接続されている。給水管22aの途中には海水入口弁26aが、排水管22bの途中には海水出口弁26bがそれぞれ設けられている(図11等参照)。上蓋部2には、空気抜き弁(通気用ベントポート)5が供給側の室S1と排出側の室S3のそれぞれについて設けられている(図7、図10参照)。また、所内冷却水冷却器1の下部には上述した上管板3と同様の形をした下管板6が設けられている。上管板3と下管板6には多くの小孔7が設けられており、さらに、これら上下の各小孔7を鉛直に繋ぐ複数の細管8が所内冷却水冷却器1内に設けられている。所内冷却水冷却器1の底部とこの下管板6との間は、細管8を通過する際に海水が折り返す中間室S2となっている。なお、図10においては、この中間室S2内に付着した海生生物の具体例として、下管板6に付着したフジツボと室内の底部に付着したムラサキイガイとを示している(図10参照)。以上のような構成とされた本実施形態の所内冷却水冷却器1においては、海水の通路として、給水管22a→供給側の室S1→細管8→中間室S2→細管8→排出側の室S3→排水管22bという経路が形成されることになる。なお、図10に示すように、所内冷却水冷却器1の底部には、メンテナンス等の際に作業者が手を差し入れることが可能なハンドホール9とこれを塞ぐ着脱可能な蓋とが設けられている。さらに、底部中央にはこの底部から海水を排出するためのブロー弁16が設けられている(図8等参照)。
【0025】
また、所内冷却水冷却器1の側部であって上管板3よりも下の部分には、所内冷却水の給水管(所内冷却水用の導管である所内冷却水管11のうち特に所内冷却水冷却器1に所内冷却水を供給する部分の管のことを指し、符号11aで示す)が接続されている(図10参照)。さらに、所内冷却水冷却器1の側部であって下管板6よりも上の部分には、所内冷却水の排水管(所内冷却水管11のうち特に所内冷却水冷却器1から所内冷却水を排出する部分の管のことを指し、符号11bで示す)が接続されている。給水管11aの途中には所内冷却水入口弁14aが、排水管11bの途中には所内冷却水出口弁14bがそれぞれ設けられている(図11等参照)。以上のようにこの所内冷却水冷却器1においては、給水管11aから流れ込んだ所内冷却水は細管8の周囲の空間内を流れ、排水管11bから排出されるという経路が形成されている。上述したように細管8の内部を海水が流れ、その外部(周囲)を所内冷却水が流れると、これら両流体の間で熱交換が行われて所内冷却水の温度が下がることになる。
【0026】
続いて、所内冷却水冷却器1内に付着した海生生物を衰弱させひいては斃死に至らしめるための防除方法として、海水を一時的に止め、所内冷却水が保有する熱をこの海水の与えて上昇させるという処理の手順(温水処理手順)について説明する(図11、図12参照)。ここではまず、所内冷却水冷却器(図12中では「所冷クーラー」と表示している)1のうちの1台が予備可能などうか(つまり、例えば3台ある所内クーラーのうちの2台以下で十分な冷却能力が確保できるかどうか)を確認し(ステップ1)、確認を終えたら処理に移る。すなわち、まず所内冷却水出口弁14bを閉じ(ステップ2)、海水出口弁26bを閉じ(ステップ3)、さらに海水入口弁26aを閉じる(ステップ4)。なお、冷却水の出口弁14bを閉じた後はこれを僅かに開いて所内冷却水が少しずつ流れるようにし、これにより、所内冷却水冷却器1内の滞留した海水に熱を与えることとする。この場合、所内冷却水を多く流しすぎると所内冷却水の温度が下がらなくなるおそれがあるので流量は少なめとすることが望ましい。また、空気抜き弁5は開けておく(ステップ5)。この状態では、海水は供給側の室S1、中間室S2、排出側の室S3、そして細管8内に滞留しており、このように滞留した状態で、所内冷却水が保有する熱が与えられることによって温度上昇する。例えば本実施形態においてはこの状態のまま5時間以上静置し(ステップ6)、所内冷却水冷却器1の内部に付着している海生生物を衰弱させた後、ブロー弁16を開けて所内冷却水冷却器1の底部から海水を吐き出す(ステップ7)。このようにブロー弁16を開けることにより、衰弱しあるいは斃死した海生生物は海水とともに排水路に排出される。その後ブロー弁16を閉じ(ステップ8)、海水入口弁26aを開いて所内冷却水冷却器1内に再び海水を張り込んで満たした状態とし(ステップ9)、所内冷却水入口弁14aと所内冷却水出口弁14bの両方を開けて所内冷却水を通水する(ステップ10)。
【0027】
なお、衰弱した海生生物あるいは斃死に至った海生生物は、例えば殻が小さいものであれば細管8の管壁や管板3,6から剥がれ落ちた後に細管を通過して外部へと排出される。一方、細管を通過しない程度の大きさの海生生物は、バルブ26を操作し、海水を逆流させて洗い出す(本明細書ではこれを「逆洗」と呼ぶ)ことにより所内冷却水冷却器1の外へと排出することが可能である。すなわち、図10に示しているように海水の流れを逆にして逆洗を行えば、海水は排水管22b→排出側の室S3→細管8→中間室S2→細管8→供給側の室S1→給水管22aというようにこれまでとは逆方向に流れることとなり、細管8を通過しない程度の大きさの海生生物(例えば、細管8を通過できずに供給側の室S1の内部に付着していたムラサキイガイなど)を所内冷却水冷却器1の外部へと排出することができる。
【0028】
なお、所内冷却水冷却器1内に付着した海生生物を衰弱させひいては斃死に至らしめる環境をつくり出すという点からすれば、所内冷却水冷却器1内の海水を止めた後、この海水を淡水へと置換することも有効である。こうした場合には所内冷却水冷却器1内に淡水が滞留することになり、浸透圧が大きく変化する。このようにして海生生物を衰弱させうる環境を作り出してその成長を抑制し、場合によっては斃死に至らしめるといういわば淡水処理を施すことができる。以下では、所内冷却水冷却器1内に付着した海生生物を衰弱させひいては斃死に至らしめるための別の防除方法として、海水を一時的に止めた後に淡水へと置換するという処理の手順(淡水置換手順)について説明する(図13、図14参照)。
【0029】
ここではまず、所内冷却水冷却器(図14中では「所冷クーラー」と表示している)1の所内冷却水出口弁14bを閉じ(ステップ11)、海水出口弁26bを閉じ(ステップ12)、さらに海水入口弁26aを閉じる(ステップ13)。また、空気抜き弁5は開けておく(ステップ14)。続いて、この状態で海水のブロー弁16を開け、所内冷却水冷却器1内の海水を底部から抜く(ステップ15)。約15分程度経って海水を抜いたら(ステップ16)、ブロー弁16を閉じ(ステップ17)、海水側淡水入口弁を開ける(ステップ18)。海水側淡水入口弁は、特に図に示してはいないが例えば海水用の排水管22bの途中に設けられているバルブで、このバルブを開けることによって供給側の室S1、細管8、中間室S2、排出側の室S3などに淡水を導入することができる。例えば本実施形態の場合であれば約65分経過することにより淡水で満たすことができるので(ステップ19)、満水となったら上述の海水側淡水入口弁を閉じる(ステップ20)。あとは、所定時間この状態を保つことによって海生生物を衰弱させひいては斃死に至らしめるという防除処理をすればよい。
【0030】
また、上記の各防除方法を組み合わせればさらに効果的に付着生物の防除が図れることはいうまでもない。すなわち、所内冷却水冷却器1内の海水を淡水に置換してから当該淡水に熱を与えて温度上昇させることとすれば、淡水であることと高い水温であることとが相まって付着生物をさらに効果的に衰弱させあるいは斃死に至らしめることが可能となり、短期間での防除処理が可能となる。
【0031】
以上述べた本実施形態の防除方法は、例えばタービン発電装置に対して複数台の所内冷却水冷却器1が設けられているような場合に好適である。すなわち、発電装置における必要最低限の冷却能力は確保しつつ余裕のある部分の所内冷却水冷却器1において防除処理を実施することが可能であり、こうした場合には発電装置の運転を休止する必要がなく、また運転中に生じる熱を利用し滞留海水の水温を上昇させることもできるから、装置全体として高い効率を実現することが可能となる。
【0032】
以上説明した防除方法によれば、所内冷却水冷却器1に付着した海生生物を死滅させて駆除し、あるいは少なくとも衰弱させてその成長を抑制することができる。こうした場合、所内冷却水冷却器1の細管が閉塞するのを防止できるから、発電所における所内冷却水の冷却性能が低下するのを防止することができる。したがって、発電所の運転に影響ないしは障害が及ぶことがなく、安定して動作することが可能となる。
【0033】
しかも、これまでの説明から明らかなように、滞留水(海水または淡水)を加温する場合には、所内冷却水冷却器1内にある熱、より具体的には所内冷却水が有している熱を利用して滞留水温度を上昇させているにすぎず、他の熱源等が不要である。また、海水給排管2,3で海水を一時的に滞留させるために必要な機構はその途中に設けられた手動弁などで足り、特別な機構を必要としない(図6参照)。したがって熱エネルギーの有効利用を図るという観点、装置の簡素化・小型化を図るという観点で本実施形態にかかる防除方法は好適である。
【0034】
加えて、海生生物を防除するのに従来技術におけるような塩素は一切使わないから環境面でも優しく、尚かつ塩素注入濃度を低く抑えるといった配慮も無用である。
【0035】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態では防除処理を実施する時期の一例として、ムラサキイガイが付着・成長する時期に合わせて防除すると説明したが、この付着生物防除方法の実施時期は特に限られるわけではなく必要あらば随時行うことができる。ただ、春から夏にかけては防除対象となるムラサキイガイなどの海生生物が成長する時期であるため防除する機会が多くなるものと考えられる。また、電力需要が増すとともに、所内冷却水の温度が上がり高い冷却能力が必要となる夏季は冷却能力の余裕がもっとも少なくなる時期でもあるから、早期に海生生物を防除しておき所内冷却水冷却器1への悪影響を排除しておく必要も多くなると考えられる。あるいは、これら海生生物がまだ小さい冬場のうちに防除を実施し早い段階で駆除しておくのも有効だといえる。いずれにしても、防除処理は、清浄状態の維持という観点から定期的に実施することも可能だし、発電所や所内冷却水冷却器1などの構造や発電能力、設備規模等の各要素に応じて必要時に実施することも可能である。
【実施例1】
【0036】
本発明者は、発電所所内冷却水冷却器1への付着生物を種々の条件の下で実際に防除処理した。以下にその内容を実施例として説明する。ここでは、発電所の所内冷却水冷却器1内に生息する海生生物の成長を抑制するため、温水処理などの対策について検討しつつ防除処理を行った。防除処理を行った当該発電所は所内冷却水冷却器1を3台有する構造であり、これら冷却水冷却器1にて定期的に観察を行った。
【0037】
1.温水処理の検討
WSS(週末に発電を停止し、週初めに発電を再開する運用の仕方を意味する)の週末休転時に所内冷却水冷却器1を冷却する海水の流入を停止すると、所内冷却水の熱により所内冷却水冷却器1内の海水温度が上昇する。この水温上昇を利用して付着生物を処理する温水処理について検討した。
【0038】
(1)ムラサキイガイの温度耐性に関する室内実験
実験には殻長6±1mmのムラサキイガイの稚貝を用いた。100mL容のビーカーに海水100mLを入れ、3台の恒温水槽でビーカー内の水温を30℃、32℃、35℃の3段階の温度に保った。水温の変動幅は±0.5℃以内とした。各ビーカーに10個体のムラサキイガイを入れて、所定の時間、上記水温に暴露した後に、室温(22℃)の2L容のビーカーの海水中にムラサキイガイを移し、毎日生死を観察し、死亡個体を取り除いた。1実験区で2個のビーカーを用い、合計20個体のムラサキイガイの生死から死亡率を算出した。2L容ビーカーの海水中に通気を行うとともに、観察後毎日換水した。
【0039】
ムラサキイガイの温度耐性に関する実験結果を以下の表1に示す。海水温度が35℃の場合、4.25時間(4時間15分)で死亡率が100%になるという結果が得られた。海水温度が32℃の場合、17時間で死亡率が100%となった。一方、30℃の場合には、24時間経っても死亡率は44%と低い値を示した。以上のことから、温水処理の際の温度は30℃を超えていることが好ましく、さらに好ましくは35℃以上であれば結果として高い数値の死亡率が得られることが分かった。
【0040】
【表1】
【0041】
(2)発電所の所内冷却水冷却器1の温度
発電所の所内冷却水の温度データによると、所内冷却水冷却器1の付着生物対策として温水を用いる場合の処理に好適な水温は30℃以上であり、夏季であれば所内冷却水冷却系統において30℃以上の冷却用海水が得られるが、主要な付着生物であるムラサキイガイが付着・成長する4〜6月の時期にはこれが得られないことが分かった(図1〜図3参照)。
【0042】
2.淡水処理の検討
所内冷却水冷却器1内の海水を淡水と置換する方法、もしくは所内冷却水冷却器1の海水を抜いて干出する方法であれば、4〜6月の時期に毎月1回処理することにより、付着生物の成長を抑制することが可能と考えた(図5参照)。そこで、以下に示す実験および観察を行った。
【0043】
(1)淡水処理の方法と結果
まず方法であるが、発電所1号機の所内冷却水冷却器1(3台)のうちの1台(A所冷クーラ)を淡水処理して所内冷却水冷却器1内の付着状況を定期的に観察した。また、C所冷クーラを通常の海水通水を行う所内冷却水冷却器1として比較対象に選定した。淡水処理は、2003年の4〜6月の時期に毎月1回、7〜15日間実施した。淡水処理と点検観察のスケジュールを図4に示す。また、所内冷却水冷却器1の外観を図6〜図8に示す。所内冷却水冷却器1内の観察、写真撮影と所内冷却水冷却器1から採集したムラサキイガイの計測を行った。なお、ここでの淡水置換の処理要領は、A所冷クーラを海水通水と淡水置換を交互に繰り返し内部点検を実施すること、C所冷クーラは通常の海水通水として比較対象とすること、を主眼とした。また、点検は所内冷却水冷却器(クーラ)1の下部のハンドホール9を開放し、目視して行うこととした。
【0044】
以上の実験と定期観察(以下に示すとおり4月18日、5月29日、6月30日の各点検日における観察)の結果は以下のとおりであった。
(i)4月18日の点検
4月3日〜18日の淡水置換後の内部点検時に撮影を行った。所内冷却水冷却器1内の付着状況を図15〜図18に示す。実験区域のうち、淡水にて処理したもの(以下、「淡水処理区」という)では、所内冷却水冷却器1の細管、管板面に付着したスライムが黒く変色し、硫化水素が発生していた(図15、図16参照)。一方、実験区域のうち、海水を淡水に置換しなかったもの(以下、「無処理区」という)では、マンホール蓋上に脱落したムラサキイガイが観察され、管板面には厚いスライム、ヒドロ虫、フジツボ類が観察された(図17、図18参照)。
【0045】
(ii)5月29日の点検
4月18日から約1ヶ月海水を通水し、その後9日間淡水処理を行った5月29日に内部点検を実施した(図19〜図22参照)。淡水処理区では、少数のフジツボが所内冷却水冷却器1の細管に付着していたのみで、細管、管板の表面には付着生物は少なかった(図19、図20参照)。一方、無処理区にはムラサキイガイ、フジツボ類、スライムが多く付着し、管が付着生物で覆われている部分も見られた(図21、図22参照)。
【0046】
(iii)6月30日の点検
5月29日から25日間海水を通水し、その後7日間淡水処理を行った6月30日に内部点検を実施した(図23〜図26参照)。淡水処理区では、細管に付着した生物は少なく清浄に保たれていた(図23、図24参照)。一方、無処理区ではフジツボ類やスライムが多数付着し、所内冷却水冷却器1の細管を閉塞している部分が認められた(図25、図26参照)。
【0047】
以上の観察結果から、淡水処理区は、無処理区と比較して所内冷却水冷却器1の細管が清浄に保たれており、淡水処理は所内冷却水冷却器1内の海生生物の成長防止対策として有効であるとの結論が得られた。
【0048】
(2)ムラサキイガイの殻長組成、死亡率の測定結果
5月29日と6月23日にムラサキイガイを所内冷却水冷却器1から採集し、殻長組成と死亡率を測定した。死亡率は、死亡個体(殻のみの個体も含む)を総個体数で割って求めた。以下に、ムラサキイガイの殻長組成と死亡率の測定結果について示す。
【0049】
まず、5月29日に採集したムラサキイガイの死亡率は、淡水処理区が100%、無処理区が約50%であった。6月23日に採集したムラサキイガイの死亡率は、淡水処理区が94%と高い値を示した(図27参照)。なお、ここでは6月23日の無処理区でのデータは図示していない。
【0050】
7月14日に発電所3号機所内冷却水冷却器1から採集したムラサキイガイは房状に付着しており、その一部の生死と殻長を測定した(図28〜図30参照)。死亡率は0%であった。
【0051】
5月29日に採集した淡水処理区の死亡個体の殻長は5〜56mmの範囲にあり、平均殻長は34mmであった(図31参照)。一方、無処理区の死亡個体の殻長は4〜62mmの範囲にあり、平均36mmであった(図32参照)。また、無処理区の生存個体は、15〜63mmの範囲にあり、平均41mmであり、無処理区の死亡個体と比較するとやや殻長が大きい個体が多かった(図33参照)。
【0052】
6月23日に採集した淡水処理区の死亡個体の殻長は6〜56mmの範囲にあり、平均26mmであった(図34参照)。無処理区の死亡個体は2〜53mmの範囲にあり、平均17mmであった(図35参照)。
【0053】
7月14日に3号機所内冷却水冷却器1から採集したムラサキイガイの殻長組成を図36に示す。生存個体の殻長は2〜20mmの範囲にあり、平均殻長は11mmと小さい個体が多かった(図36参照)。
【0054】
これらの結果から以下の二点が考えられた。第一に、淡水処理区ではムラサキイガイの死亡率が非常に高く、ムラサキイガイの成長抑制に効果があることが分かった。つまり、無処理区の死亡率は例えば5月29日採集分においてせいぜい約50%であり、淡水処理区とは大きな差があった。7月14日に3号機から採集したムラサキイガイの死亡率は0%と非常に低かった。このことから、海水を常時流している所内冷却水冷却器1内のムラサキイガイの死亡率は少なくとも7月においては低く、所内冷却水冷却器1の性能を低下させる大きな原因になっていると考えられた。
【0055】
第二に、無処理区の殻長組成を見ると、5月29日採集分では大きな個体が比較的多かったのに対し(図33参照)、6月23日採集分では当年産の稚貝がほとんどを占めていた(図35参照)。さらに、7月14日に採集したムラサキイガイ群集では、20mm以下の当年産の稚貝が固まって付着しており(図28等参照)、夏季に所内冷却水冷却器1の性能が低下する原因のひとつとしてこのように密集して付着するムラサキイガイの存在が考えられた。
【0056】
さらに、本実施例の結果、淡水処理を4〜6月に毎月1回、1〜2週間実施することにより所内冷却水冷却器1内を清浄に維持することが可能になるとの結論が得られた。
【0057】
なお、上述の実施例においては項目1として温水処理、項目2として淡水処理についてそれぞれ処理内容とその結果を説明したが、両者を組み合わせた処理を行えばさらに効果的に海生生物の防除が行えることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】所内冷却水冷却器内の水温の変化(2003年5月)を示すグラフである。
【図2】所内冷却水冷却器内の水温の変化(2003年6月)を示すグラフである。
【図3】所内冷却水冷却器内の水温の変化(2003年7月)を示すグラフである。
【図4】2003年(平成15年)の4〜6月の時期に実施した淡水処理と点検観察のスケジュールを示す図である。
【図5】ムラサキイガイの淡水への耐性と干出耐性の比較結果を示すグラフであり、図中の線と数字は半数致死時間を表している。
【図6】所内冷却水冷却器の外観(側面)を示す画像である。
【図7】所内冷却水冷却器の外観(上部)を示す画像である。
【図8】所内冷却水冷却器の外観(下部)を示す画像である。
【図9】本実施形態における発電所所内の概略を示す図である。
【図10】本実施形態における所内冷却水冷却器の構造の概略を示す図である。
【図11】防除処理として温水処理を実施する際の所内冷却水冷却器について示す図である。
【図12】本実施形態における温水処理の手順を示すフロー図である。
【図13】防除処理として淡水置換を実施する際の所内冷却水冷却器について示す図である。
【図14】本実施形態における淡水置換の処理手順を示すフロー図である。
【図15】淡水処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年4月18日)を示す画像である。
【図16】図15に示した画像の一部を拡大したものである。
【図17】無処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年4月18日)を示す画像である。
【図18】図17に示した画像の一部を拡大したものである。
【図19】淡水処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年5月29日)を示す画像である。
【図20】図19に示した画像の一部を拡大したものである。
【図21】無処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年5月29日)を示す画像である。
【図22】図21に示した画像の一部を拡大したものである。
【図23】淡水処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年6月30日)を示す画像である。
【図24】図23に示した画像の一部を拡大したものである。
【図25】無処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年6月30日)を示す画像である。
【図26】図25に示した画像の一部を拡大したものである。
【図27】ムラサキイガイの死亡率を示すグラフである。
【図28】2003年7月14日に所内冷却水冷却器から採集したムラサキイガイを示す画像である。
【図29】図28に示したムラサキイガイの接近画像である。
【図30】図28に示したムラサキイガイの更なる接近画像である。
【図31】2003年5月29日に淡水処理区にて採集したムラサキイガイの殻長組成を示すグラフである。
【図32】2003年5月29日に無処理区にて採集したムラサキイガイのうち、殻または死亡個体の殻長組成を示すグラフである。
【図33】2003年5月29日に無処理区にて採集したムラサキイガイのうち、生存個体の殻長組成を示すグラフである。
【図34】2003年6月23日に淡水処理区にて採集したムラサキイガイのうち、殻と死亡個体の殻長組成を示すグラフである。
【図35】2003年6月23日に無処理区にて採集したムラサキイガイのうち、殻と死亡個体の殻長組成を示すグラフである。
【図36】2003年7月14日に所内冷却水冷却器から採集したムラサキイガイの生存個体の殻長組成を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 冷却水冷却器
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、火力発電所等の所内冷却水冷却器内に付着した場合に悪影響を及ぼすムラサキイガイなどの海生生物の成長抑制および駆除のための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電所における所内冷却水冷却器にこれらにとって有害なムラサキイガイなどの海生生物が付着すると、所内冷却水冷却器の細管を閉塞させて冷却性能を低下させるといったように発電所の安定運転に影響ないしは障害が及ぶことがある。従来、所内冷却水冷却器の付着生物対策としては、塩素を注入し直接的に毒作用を与えて処理するという化学的方法が多くの発電所において実施されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】社団法人電気化学協会 海生生物汚損対策懇談会、「海生生物汚損対策マニュアル」、技報堂出版株式会社、1991年3月8日、pp.106-110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環境への配慮から塩素注入濃度を低く抑えなければならず、所内冷却水冷却器内の付着生物を十分に防除できる残留塩素濃度が維持できないことがある。このような場合、特に夏季の高水温時に所内冷却水冷却器の冷却性能が低下し、結果として発電所の運転に支障が及んでしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、火力発電所等の所内冷却水冷却器に付着したムラサキイガイなどの海生生物を塩素等を使用することなく有効に防除することができる発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明者は種々の検討を行った。発電所所内の所内冷却水冷却器においては、所内冷却水を冷却するために海水との間で熱交換を行わせるものが多い。このとき、海生生物は熱交換に用いる海水用導管を通って所内冷却水冷却器内にまで入り込んで付着している。発明者は、このように海水との間で熱交換を行うが故に海生生物までもが取り込まれているという構造を逆手にとり、この構造を利用して海生生物を効果的に防除しうることに想到した。
【0007】
本発明はかかる知見に基づくものであり、請求項1に記載の発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法は、発電所所内冷却水冷却器の内部を流れて所内冷却水を冷却する海水を一時的に止めて当該所内冷却水冷却器内にて滞留させ、その一方で所内冷却水は連続的または断続的に流し続けて当該所内冷却水が保有する熱を所内冷却水冷却器内にて滞留している水に与え、当該水の温度を上昇させて所内冷却水冷却器の内部に付着している海生生物を衰弱させるというものである。
【0008】
本発明においては、発電所所内冷却水冷却器に入り込んで内部に付着した海生生物を衰弱させうる環境を容易に作り出すこととしている。すなわち、冷却用海水の流れは止めて所内冷却水冷却器内に滞留させる一方で、所内冷却水の方はそのまま流し続けることにより、所内冷却水が保有している熱を海水に与え続ける。この場合に所内冷却水が保有している熱は発電時に所内において生じる熱の一部であり、この熱を利用する限りは別の熱源を用意する必要がない。この状態を例えば1週間ないし2週間といった期間保持した場合、滞留している海水は受熱して水温上昇し、付着している海生生物を衰弱させひいては斃死(へいし)に至らしめる環境をつくり出す。
【0009】
この場合、請求項2に記載のように、所内冷却水冷却器を流れる海水を一時的に止めた後、当該海水を淡水に置換してから当該淡水に熱を与えて温度上昇させることも好ましい。いうまでもなく海生生物にとって淡水は生きるに適した環境ではないため、付着した海生生物をさらに衰弱させるあるいは斃死に至らしめる環境をつくり出すことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、発電所所内冷却水冷却器の内部を流れて所内冷却水を冷却する海水を淡水と置換し、所内冷却水冷却器内に当該淡水を滞留させた状態を所定期間保つことを特徴とする発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法によると、所内冷却水冷却器内の滞留海水の温度を上昇させ、海生生物を衰弱させあるいは斃死に至らしめて所内冷却水冷却器内を清浄な状態に維持することができ、これによって所内冷却水冷却器の細管が閉塞するのを防止できるから、発電所における所内冷却水の冷却性能が低下するのを防止することができる。したがって、発電所の安定運転に影響ないしは障害が及ぶことなく安定した状態で運転し続けることが可能となる。また、所内冷却水冷却器における伝熱性能が低下するのを効果的に防止し、あるいは付着後の低下した状態から回復させることができるから、所内冷却水と海水との間において十分に熱交換がなされる状態を維持することができる。
【0012】
しかも、この場合に利用する熱は発電所における所内冷却水がもともと保有しているものであるから、滞留中の海水を加温するための別の熱源を必要とせず、熱エネルギーの有効活用という観点でも好適である。加えて、所内冷却水が保有する熱を利用して滞留海水の水温を上昇させるという性質上、発電を停止させることなく海生生物の防除が実施できるため、発電自体に大きな影響を及ぼさずに実施可能という点でも有利である。
【0013】
また、本発明にかかる付着生物防除方法は発電所所内冷却水冷却器に適用してきわめて好適な手法であるということもできる。すなわち、この防除方法は所内冷却水を冷却するために海水との間で熱交換を行わせるという構造に着目したものであり、所内冷却水冷却器内にて海水を所定期間滞留させればよいため、既存の発電所所内においてそのまま実施可能であるか、または海水導管にバルブ等を設ければ実施可能になるという点で簡便であり発電所所内の冷却水冷却器における付着生物を防除するのに好適である。
【0014】
加えて、本発明を実施するにあたって従来技術のように塩素を注入する必要は皆無であるから、環境面への配慮という点できわめて好適な付着生物防除方法であるということができる。特に、発電所の周辺海域における魚介類等の海生生物にとって安全性の高い方法であることから、環境保全の観点からも高い価値を有する防除方法ということになる。
【0015】
また、請求項2に記載の付着生物防除方法によると、淡水の環境にしたことと相まって海生生物はさらに衰弱することになり、より短期間にて防除処理を終えることも可能となる。
【0016】
請求項3に記載の付着生物防除方法によると、所内冷却水冷却器内に淡水を滞留させることによってここでもまた海生生物を衰弱させうる環境を容易に作り出している。すなわち、冷却用海水の流れを止め、尚かつ当該海水を淡水へと置換することにより、所内冷却水冷却器内に付着した海生生物を衰弱させてその成長を抑制ないしは防止し、さらには斃死に至らしめることによって駆除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図6等に本発明の一実施形態を示す。本発明にかかる発電所所内冷却水冷却器(図6〜図8において符号1で示す)の付着生物防除方法は、発電所所内冷却水冷却器1の内部を流れて所内冷却水を冷却する海水を一時的に止めて当該所内冷却水冷却器1内にて滞留させ、その一方で所内冷却水は連続的または断続的に流し続けて当該所内冷却水が保有する熱を所内冷却水冷却器1内にて滞留している水に与え、当該水の温度を上昇させて所内冷却水冷却器1の内部に付着している海生生物を衰弱させるというものである。
【0019】
発電所所内の所内冷却水から熱を奪い冷却するために海水が利用されるケースは多く、海水の給水管(海水用の導管である海水管22のうち特に所内冷却水冷却器1に海水を供給する部分の管のことを指し、符号22aで示す)を通じて所内冷却水冷却器1にムラサキイガイなどの海生生物が付着することがあるが、本実施形態ではこの所内冷却水冷却器1における冷却構造に着目した手法によって付着生物を防除することとしている。すなわち、上述した給水管22aおよび排水管(海水管22のうち特に所内冷却水冷却器1から海水を排出する部分の管のことを指し、符号22bで示す)のバルブを閉じ、この海水給排水管内において海水を一時的に滞留させる(図6〜図8参照)。バルブは例えば図6中において符号4で示す手動弁である。その一方で、所内冷却水は連続して流し続けておき、この所内冷却水が有する熱を所内冷却水冷却器1内の熱交換器にて海水に移動させて与える。こうした場合、滞留している海水の水温が上昇することによって当該海水の中で細管に付着するなどして存在している海生生物は斃死し、あるいは少なくとも衰弱してその成長が抑制されるというようないわば温水処理を施すことができる。この場合の所内冷却水は、例えばほぼ一定の流量で連続的に流れていても、あるいは一定ではなく断続的に流れていてもよく、要するに海水に対して熱を与えて水温を少なくともある程度の温度にまで上昇させるものであればよい。いうまでもないが、この場合におけるある程度の温度というのは少なくとも海生生物を衰弱させうる温度のことであり、その具体的数値は海生生物の種別に応じて異なることになる。
【0020】
ここで、発電所所内の概略について説明し、引き続き所内冷却水冷却器1についても説明することとする(図9参照)。まず、発電所所内の冷却水系10について説明すると、この冷却水系10には、所内冷却水管11のほかスタンドパイプ12、冷却水ポンプ13、操作弁14,15が設けられている。冷却後の所内冷却水は、例えば33〜35℃程度の戻り温度でこの冷却水系10へと送られる。スタンドパイプ12は、櫓(やぐら)内に取り付けられた高圧パイプである。スタンドパイプ12は高さが例えば約20mあり、中には大気開放で所内冷却水が入っており、所内冷却水ポンプの入口圧力を一定に保つ働きがある。所内冷却水用の細管8に穴が開き冷却水が漏洩して冷却水量が減少するような場合には、スタンドパイプ12から水が補給され冷却水の不足を補い、低下した水位を上げるようにこのパイプに加水して冷却水量を一定に保つ。
【0021】
冷却水系10へと送られた後、所内冷却水は例えば並列した3機の冷却水ポンプ13によって加圧され、3機ある所内冷却水冷却器1のいずれかへと送られる。なお、図9中においては発電所所内に設けられた3機の所内冷却水冷却器1を便宜的にそれぞれA所冷クーラ、B所冷クーラ、C所冷クーラと表示している(図9参照)。3機の所内冷却水冷却器1のいずれかにて冷却された所内冷却水は、再び所内冷却水管11を通り、操作弁14,15を通過後、発電所所内の装置(例えば水素クーラ、オイルクーラ、各補機軸受など)へと送られる(図9参照)。
【0022】
発電所所内の海水系20は以下のようになっている。すなわち、本実施形態の海水系20には、循環水ポンプ21、海水管22、海水ブースタポンプ23、復水器Aの水室24、復水器Bの水室25、バルブ26、捕集器27が設けられている。循環水ポンプ21によって加圧され海水管22を通じて送られる海水は、大部分が復水器や捕集器27のある系へと送られ、残りの一部は所内冷却水冷却器1のある系へと送られる(図9参照)。復水器や捕集器27のある系へと送られた海水は、復水器A水室24と復水器B水室25のいずれか一方を通過し、捕集器27を通過後、海へと戻される。この場合において、海水がどの復水器の水室を通過するかは海水管22の途中に複数設けられたバルブ26の開閉の組み合わせによる。その一方で、所内冷却水冷却器1のある系へと送られた海水は例えば並列した3機の海水ブースタポンプ23によって加圧され、3機ある所内冷却水冷却器(A所冷クーラ、B所冷クーラ、C所冷クーラ)1のいずれかへと送られる。所内冷却水冷却器1において熱交換を行い所内冷却水を冷却した海水は、捕集器27を過ぎたあたりの海水管22へと送られ、復水器側へと送られた海水と合流する。
【0023】
次に発電所所内の所内冷却水冷却器1について説明すると、本実施形態の所内冷却水冷却器1は例えばタービン回転用の蒸気用の復水器などにおけるものであり、高温状態にある所内冷却水(この例でいえば給水またはその蒸気)と海水との間で熱交換を行わせる機器である。防除処理の一例を挙げれば、例えば主要な付着生物であるムラサキイガイが付着・成長する時期に合わせて所内冷却水冷却器1内の海水を一時的に止めて滞留させ、所内冷却水からの熱をこの滞留海水に与え続けることによって付着生物を衰弱させ、成長を抑制ないしは防止し、ひいては斃死させて所内冷却水冷却器1内を清浄な状態に維持するといったものである。
【0024】
本実施形態の所内冷却水冷却器1は図10に示すように縦長の筒型であり、その内部には上管板3が設けられ、この上管板3と蓋部2との間に海水が通過する空間が形成されている。また、この空間は仕切り板4によってほぼ半分に仕切られ、海水が送り込まれる供給側の室S1と海水を送り出す排出側の室S3とに分けられている。供給側の室S1には上述した給水管22aが接続され、排出側の室S3には排水管22bが接続されている。給水管22aの途中には海水入口弁26aが、排水管22bの途中には海水出口弁26bがそれぞれ設けられている(図11等参照)。上蓋部2には、空気抜き弁(通気用ベントポート)5が供給側の室S1と排出側の室S3のそれぞれについて設けられている(図7、図10参照)。また、所内冷却水冷却器1の下部には上述した上管板3と同様の形をした下管板6が設けられている。上管板3と下管板6には多くの小孔7が設けられており、さらに、これら上下の各小孔7を鉛直に繋ぐ複数の細管8が所内冷却水冷却器1内に設けられている。所内冷却水冷却器1の底部とこの下管板6との間は、細管8を通過する際に海水が折り返す中間室S2となっている。なお、図10においては、この中間室S2内に付着した海生生物の具体例として、下管板6に付着したフジツボと室内の底部に付着したムラサキイガイとを示している(図10参照)。以上のような構成とされた本実施形態の所内冷却水冷却器1においては、海水の通路として、給水管22a→供給側の室S1→細管8→中間室S2→細管8→排出側の室S3→排水管22bという経路が形成されることになる。なお、図10に示すように、所内冷却水冷却器1の底部には、メンテナンス等の際に作業者が手を差し入れることが可能なハンドホール9とこれを塞ぐ着脱可能な蓋とが設けられている。さらに、底部中央にはこの底部から海水を排出するためのブロー弁16が設けられている(図8等参照)。
【0025】
また、所内冷却水冷却器1の側部であって上管板3よりも下の部分には、所内冷却水の給水管(所内冷却水用の導管である所内冷却水管11のうち特に所内冷却水冷却器1に所内冷却水を供給する部分の管のことを指し、符号11aで示す)が接続されている(図10参照)。さらに、所内冷却水冷却器1の側部であって下管板6よりも上の部分には、所内冷却水の排水管(所内冷却水管11のうち特に所内冷却水冷却器1から所内冷却水を排出する部分の管のことを指し、符号11bで示す)が接続されている。給水管11aの途中には所内冷却水入口弁14aが、排水管11bの途中には所内冷却水出口弁14bがそれぞれ設けられている(図11等参照)。以上のようにこの所内冷却水冷却器1においては、給水管11aから流れ込んだ所内冷却水は細管8の周囲の空間内を流れ、排水管11bから排出されるという経路が形成されている。上述したように細管8の内部を海水が流れ、その外部(周囲)を所内冷却水が流れると、これら両流体の間で熱交換が行われて所内冷却水の温度が下がることになる。
【0026】
続いて、所内冷却水冷却器1内に付着した海生生物を衰弱させひいては斃死に至らしめるための防除方法として、海水を一時的に止め、所内冷却水が保有する熱をこの海水の与えて上昇させるという処理の手順(温水処理手順)について説明する(図11、図12参照)。ここではまず、所内冷却水冷却器(図12中では「所冷クーラー」と表示している)1のうちの1台が予備可能などうか(つまり、例えば3台ある所内クーラーのうちの2台以下で十分な冷却能力が確保できるかどうか)を確認し(ステップ1)、確認を終えたら処理に移る。すなわち、まず所内冷却水出口弁14bを閉じ(ステップ2)、海水出口弁26bを閉じ(ステップ3)、さらに海水入口弁26aを閉じる(ステップ4)。なお、冷却水の出口弁14bを閉じた後はこれを僅かに開いて所内冷却水が少しずつ流れるようにし、これにより、所内冷却水冷却器1内の滞留した海水に熱を与えることとする。この場合、所内冷却水を多く流しすぎると所内冷却水の温度が下がらなくなるおそれがあるので流量は少なめとすることが望ましい。また、空気抜き弁5は開けておく(ステップ5)。この状態では、海水は供給側の室S1、中間室S2、排出側の室S3、そして細管8内に滞留しており、このように滞留した状態で、所内冷却水が保有する熱が与えられることによって温度上昇する。例えば本実施形態においてはこの状態のまま5時間以上静置し(ステップ6)、所内冷却水冷却器1の内部に付着している海生生物を衰弱させた後、ブロー弁16を開けて所内冷却水冷却器1の底部から海水を吐き出す(ステップ7)。このようにブロー弁16を開けることにより、衰弱しあるいは斃死した海生生物は海水とともに排水路に排出される。その後ブロー弁16を閉じ(ステップ8)、海水入口弁26aを開いて所内冷却水冷却器1内に再び海水を張り込んで満たした状態とし(ステップ9)、所内冷却水入口弁14aと所内冷却水出口弁14bの両方を開けて所内冷却水を通水する(ステップ10)。
【0027】
なお、衰弱した海生生物あるいは斃死に至った海生生物は、例えば殻が小さいものであれば細管8の管壁や管板3,6から剥がれ落ちた後に細管を通過して外部へと排出される。一方、細管を通過しない程度の大きさの海生生物は、バルブ26を操作し、海水を逆流させて洗い出す(本明細書ではこれを「逆洗」と呼ぶ)ことにより所内冷却水冷却器1の外へと排出することが可能である。すなわち、図10に示しているように海水の流れを逆にして逆洗を行えば、海水は排水管22b→排出側の室S3→細管8→中間室S2→細管8→供給側の室S1→給水管22aというようにこれまでとは逆方向に流れることとなり、細管8を通過しない程度の大きさの海生生物(例えば、細管8を通過できずに供給側の室S1の内部に付着していたムラサキイガイなど)を所内冷却水冷却器1の外部へと排出することができる。
【0028】
なお、所内冷却水冷却器1内に付着した海生生物を衰弱させひいては斃死に至らしめる環境をつくり出すという点からすれば、所内冷却水冷却器1内の海水を止めた後、この海水を淡水へと置換することも有効である。こうした場合には所内冷却水冷却器1内に淡水が滞留することになり、浸透圧が大きく変化する。このようにして海生生物を衰弱させうる環境を作り出してその成長を抑制し、場合によっては斃死に至らしめるといういわば淡水処理を施すことができる。以下では、所内冷却水冷却器1内に付着した海生生物を衰弱させひいては斃死に至らしめるための別の防除方法として、海水を一時的に止めた後に淡水へと置換するという処理の手順(淡水置換手順)について説明する(図13、図14参照)。
【0029】
ここではまず、所内冷却水冷却器(図14中では「所冷クーラー」と表示している)1の所内冷却水出口弁14bを閉じ(ステップ11)、海水出口弁26bを閉じ(ステップ12)、さらに海水入口弁26aを閉じる(ステップ13)。また、空気抜き弁5は開けておく(ステップ14)。続いて、この状態で海水のブロー弁16を開け、所内冷却水冷却器1内の海水を底部から抜く(ステップ15)。約15分程度経って海水を抜いたら(ステップ16)、ブロー弁16を閉じ(ステップ17)、海水側淡水入口弁を開ける(ステップ18)。海水側淡水入口弁は、特に図に示してはいないが例えば海水用の排水管22bの途中に設けられているバルブで、このバルブを開けることによって供給側の室S1、細管8、中間室S2、排出側の室S3などに淡水を導入することができる。例えば本実施形態の場合であれば約65分経過することにより淡水で満たすことができるので(ステップ19)、満水となったら上述の海水側淡水入口弁を閉じる(ステップ20)。あとは、所定時間この状態を保つことによって海生生物を衰弱させひいては斃死に至らしめるという防除処理をすればよい。
【0030】
また、上記の各防除方法を組み合わせればさらに効果的に付着生物の防除が図れることはいうまでもない。すなわち、所内冷却水冷却器1内の海水を淡水に置換してから当該淡水に熱を与えて温度上昇させることとすれば、淡水であることと高い水温であることとが相まって付着生物をさらに効果的に衰弱させあるいは斃死に至らしめることが可能となり、短期間での防除処理が可能となる。
【0031】
以上述べた本実施形態の防除方法は、例えばタービン発電装置に対して複数台の所内冷却水冷却器1が設けられているような場合に好適である。すなわち、発電装置における必要最低限の冷却能力は確保しつつ余裕のある部分の所内冷却水冷却器1において防除処理を実施することが可能であり、こうした場合には発電装置の運転を休止する必要がなく、また運転中に生じる熱を利用し滞留海水の水温を上昇させることもできるから、装置全体として高い効率を実現することが可能となる。
【0032】
以上説明した防除方法によれば、所内冷却水冷却器1に付着した海生生物を死滅させて駆除し、あるいは少なくとも衰弱させてその成長を抑制することができる。こうした場合、所内冷却水冷却器1の細管が閉塞するのを防止できるから、発電所における所内冷却水の冷却性能が低下するのを防止することができる。したがって、発電所の運転に影響ないしは障害が及ぶことがなく、安定して動作することが可能となる。
【0033】
しかも、これまでの説明から明らかなように、滞留水(海水または淡水)を加温する場合には、所内冷却水冷却器1内にある熱、より具体的には所内冷却水が有している熱を利用して滞留水温度を上昇させているにすぎず、他の熱源等が不要である。また、海水給排管2,3で海水を一時的に滞留させるために必要な機構はその途中に設けられた手動弁などで足り、特別な機構を必要としない(図6参照)。したがって熱エネルギーの有効利用を図るという観点、装置の簡素化・小型化を図るという観点で本実施形態にかかる防除方法は好適である。
【0034】
加えて、海生生物を防除するのに従来技術におけるような塩素は一切使わないから環境面でも優しく、尚かつ塩素注入濃度を低く抑えるといった配慮も無用である。
【0035】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態では防除処理を実施する時期の一例として、ムラサキイガイが付着・成長する時期に合わせて防除すると説明したが、この付着生物防除方法の実施時期は特に限られるわけではなく必要あらば随時行うことができる。ただ、春から夏にかけては防除対象となるムラサキイガイなどの海生生物が成長する時期であるため防除する機会が多くなるものと考えられる。また、電力需要が増すとともに、所内冷却水の温度が上がり高い冷却能力が必要となる夏季は冷却能力の余裕がもっとも少なくなる時期でもあるから、早期に海生生物を防除しておき所内冷却水冷却器1への悪影響を排除しておく必要も多くなると考えられる。あるいは、これら海生生物がまだ小さい冬場のうちに防除を実施し早い段階で駆除しておくのも有効だといえる。いずれにしても、防除処理は、清浄状態の維持という観点から定期的に実施することも可能だし、発電所や所内冷却水冷却器1などの構造や発電能力、設備規模等の各要素に応じて必要時に実施することも可能である。
【実施例1】
【0036】
本発明者は、発電所所内冷却水冷却器1への付着生物を種々の条件の下で実際に防除処理した。以下にその内容を実施例として説明する。ここでは、発電所の所内冷却水冷却器1内に生息する海生生物の成長を抑制するため、温水処理などの対策について検討しつつ防除処理を行った。防除処理を行った当該発電所は所内冷却水冷却器1を3台有する構造であり、これら冷却水冷却器1にて定期的に観察を行った。
【0037】
1.温水処理の検討
WSS(週末に発電を停止し、週初めに発電を再開する運用の仕方を意味する)の週末休転時に所内冷却水冷却器1を冷却する海水の流入を停止すると、所内冷却水の熱により所内冷却水冷却器1内の海水温度が上昇する。この水温上昇を利用して付着生物を処理する温水処理について検討した。
【0038】
(1)ムラサキイガイの温度耐性に関する室内実験
実験には殻長6±1mmのムラサキイガイの稚貝を用いた。100mL容のビーカーに海水100mLを入れ、3台の恒温水槽でビーカー内の水温を30℃、32℃、35℃の3段階の温度に保った。水温の変動幅は±0.5℃以内とした。各ビーカーに10個体のムラサキイガイを入れて、所定の時間、上記水温に暴露した後に、室温(22℃)の2L容のビーカーの海水中にムラサキイガイを移し、毎日生死を観察し、死亡個体を取り除いた。1実験区で2個のビーカーを用い、合計20個体のムラサキイガイの生死から死亡率を算出した。2L容ビーカーの海水中に通気を行うとともに、観察後毎日換水した。
【0039】
ムラサキイガイの温度耐性に関する実験結果を以下の表1に示す。海水温度が35℃の場合、4.25時間(4時間15分)で死亡率が100%になるという結果が得られた。海水温度が32℃の場合、17時間で死亡率が100%となった。一方、30℃の場合には、24時間経っても死亡率は44%と低い値を示した。以上のことから、温水処理の際の温度は30℃を超えていることが好ましく、さらに好ましくは35℃以上であれば結果として高い数値の死亡率が得られることが分かった。
【0040】
【表1】
【0041】
(2)発電所の所内冷却水冷却器1の温度
発電所の所内冷却水の温度データによると、所内冷却水冷却器1の付着生物対策として温水を用いる場合の処理に好適な水温は30℃以上であり、夏季であれば所内冷却水冷却系統において30℃以上の冷却用海水が得られるが、主要な付着生物であるムラサキイガイが付着・成長する4〜6月の時期にはこれが得られないことが分かった(図1〜図3参照)。
【0042】
2.淡水処理の検討
所内冷却水冷却器1内の海水を淡水と置換する方法、もしくは所内冷却水冷却器1の海水を抜いて干出する方法であれば、4〜6月の時期に毎月1回処理することにより、付着生物の成長を抑制することが可能と考えた(図5参照)。そこで、以下に示す実験および観察を行った。
【0043】
(1)淡水処理の方法と結果
まず方法であるが、発電所1号機の所内冷却水冷却器1(3台)のうちの1台(A所冷クーラ)を淡水処理して所内冷却水冷却器1内の付着状況を定期的に観察した。また、C所冷クーラを通常の海水通水を行う所内冷却水冷却器1として比較対象に選定した。淡水処理は、2003年の4〜6月の時期に毎月1回、7〜15日間実施した。淡水処理と点検観察のスケジュールを図4に示す。また、所内冷却水冷却器1の外観を図6〜図8に示す。所内冷却水冷却器1内の観察、写真撮影と所内冷却水冷却器1から採集したムラサキイガイの計測を行った。なお、ここでの淡水置換の処理要領は、A所冷クーラを海水通水と淡水置換を交互に繰り返し内部点検を実施すること、C所冷クーラは通常の海水通水として比較対象とすること、を主眼とした。また、点検は所内冷却水冷却器(クーラ)1の下部のハンドホール9を開放し、目視して行うこととした。
【0044】
以上の実験と定期観察(以下に示すとおり4月18日、5月29日、6月30日の各点検日における観察)の結果は以下のとおりであった。
(i)4月18日の点検
4月3日〜18日の淡水置換後の内部点検時に撮影を行った。所内冷却水冷却器1内の付着状況を図15〜図18に示す。実験区域のうち、淡水にて処理したもの(以下、「淡水処理区」という)では、所内冷却水冷却器1の細管、管板面に付着したスライムが黒く変色し、硫化水素が発生していた(図15、図16参照)。一方、実験区域のうち、海水を淡水に置換しなかったもの(以下、「無処理区」という)では、マンホール蓋上に脱落したムラサキイガイが観察され、管板面には厚いスライム、ヒドロ虫、フジツボ類が観察された(図17、図18参照)。
【0045】
(ii)5月29日の点検
4月18日から約1ヶ月海水を通水し、その後9日間淡水処理を行った5月29日に内部点検を実施した(図19〜図22参照)。淡水処理区では、少数のフジツボが所内冷却水冷却器1の細管に付着していたのみで、細管、管板の表面には付着生物は少なかった(図19、図20参照)。一方、無処理区にはムラサキイガイ、フジツボ類、スライムが多く付着し、管が付着生物で覆われている部分も見られた(図21、図22参照)。
【0046】
(iii)6月30日の点検
5月29日から25日間海水を通水し、その後7日間淡水処理を行った6月30日に内部点検を実施した(図23〜図26参照)。淡水処理区では、細管に付着した生物は少なく清浄に保たれていた(図23、図24参照)。一方、無処理区ではフジツボ類やスライムが多数付着し、所内冷却水冷却器1の細管を閉塞している部分が認められた(図25、図26参照)。
【0047】
以上の観察結果から、淡水処理区は、無処理区と比較して所内冷却水冷却器1の細管が清浄に保たれており、淡水処理は所内冷却水冷却器1内の海生生物の成長防止対策として有効であるとの結論が得られた。
【0048】
(2)ムラサキイガイの殻長組成、死亡率の測定結果
5月29日と6月23日にムラサキイガイを所内冷却水冷却器1から採集し、殻長組成と死亡率を測定した。死亡率は、死亡個体(殻のみの個体も含む)を総個体数で割って求めた。以下に、ムラサキイガイの殻長組成と死亡率の測定結果について示す。
【0049】
まず、5月29日に採集したムラサキイガイの死亡率は、淡水処理区が100%、無処理区が約50%であった。6月23日に採集したムラサキイガイの死亡率は、淡水処理区が94%と高い値を示した(図27参照)。なお、ここでは6月23日の無処理区でのデータは図示していない。
【0050】
7月14日に発電所3号機所内冷却水冷却器1から採集したムラサキイガイは房状に付着しており、その一部の生死と殻長を測定した(図28〜図30参照)。死亡率は0%であった。
【0051】
5月29日に採集した淡水処理区の死亡個体の殻長は5〜56mmの範囲にあり、平均殻長は34mmであった(図31参照)。一方、無処理区の死亡個体の殻長は4〜62mmの範囲にあり、平均36mmであった(図32参照)。また、無処理区の生存個体は、15〜63mmの範囲にあり、平均41mmであり、無処理区の死亡個体と比較するとやや殻長が大きい個体が多かった(図33参照)。
【0052】
6月23日に採集した淡水処理区の死亡個体の殻長は6〜56mmの範囲にあり、平均26mmであった(図34参照)。無処理区の死亡個体は2〜53mmの範囲にあり、平均17mmであった(図35参照)。
【0053】
7月14日に3号機所内冷却水冷却器1から採集したムラサキイガイの殻長組成を図36に示す。生存個体の殻長は2〜20mmの範囲にあり、平均殻長は11mmと小さい個体が多かった(図36参照)。
【0054】
これらの結果から以下の二点が考えられた。第一に、淡水処理区ではムラサキイガイの死亡率が非常に高く、ムラサキイガイの成長抑制に効果があることが分かった。つまり、無処理区の死亡率は例えば5月29日採集分においてせいぜい約50%であり、淡水処理区とは大きな差があった。7月14日に3号機から採集したムラサキイガイの死亡率は0%と非常に低かった。このことから、海水を常時流している所内冷却水冷却器1内のムラサキイガイの死亡率は少なくとも7月においては低く、所内冷却水冷却器1の性能を低下させる大きな原因になっていると考えられた。
【0055】
第二に、無処理区の殻長組成を見ると、5月29日採集分では大きな個体が比較的多かったのに対し(図33参照)、6月23日採集分では当年産の稚貝がほとんどを占めていた(図35参照)。さらに、7月14日に採集したムラサキイガイ群集では、20mm以下の当年産の稚貝が固まって付着しており(図28等参照)、夏季に所内冷却水冷却器1の性能が低下する原因のひとつとしてこのように密集して付着するムラサキイガイの存在が考えられた。
【0056】
さらに、本実施例の結果、淡水処理を4〜6月に毎月1回、1〜2週間実施することにより所内冷却水冷却器1内を清浄に維持することが可能になるとの結論が得られた。
【0057】
なお、上述の実施例においては項目1として温水処理、項目2として淡水処理についてそれぞれ処理内容とその結果を説明したが、両者を組み合わせた処理を行えばさらに効果的に海生生物の防除が行えることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】所内冷却水冷却器内の水温の変化(2003年5月)を示すグラフである。
【図2】所内冷却水冷却器内の水温の変化(2003年6月)を示すグラフである。
【図3】所内冷却水冷却器内の水温の変化(2003年7月)を示すグラフである。
【図4】2003年(平成15年)の4〜6月の時期に実施した淡水処理と点検観察のスケジュールを示す図である。
【図5】ムラサキイガイの淡水への耐性と干出耐性の比較結果を示すグラフであり、図中の線と数字は半数致死時間を表している。
【図6】所内冷却水冷却器の外観(側面)を示す画像である。
【図7】所内冷却水冷却器の外観(上部)を示す画像である。
【図8】所内冷却水冷却器の外観(下部)を示す画像である。
【図9】本実施形態における発電所所内の概略を示す図である。
【図10】本実施形態における所内冷却水冷却器の構造の概略を示す図である。
【図11】防除処理として温水処理を実施する際の所内冷却水冷却器について示す図である。
【図12】本実施形態における温水処理の手順を示すフロー図である。
【図13】防除処理として淡水置換を実施する際の所内冷却水冷却器について示す図である。
【図14】本実施形態における淡水置換の処理手順を示すフロー図である。
【図15】淡水処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年4月18日)を示す画像である。
【図16】図15に示した画像の一部を拡大したものである。
【図17】無処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年4月18日)を示す画像である。
【図18】図17に示した画像の一部を拡大したものである。
【図19】淡水処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年5月29日)を示す画像である。
【図20】図19に示した画像の一部を拡大したものである。
【図21】無処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年5月29日)を示す画像である。
【図22】図21に示した画像の一部を拡大したものである。
【図23】淡水処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年6月30日)を示す画像である。
【図24】図23に示した画像の一部を拡大したものである。
【図25】無処理区における所内冷却水冷却器内での海生生物の実際の付着状況(2003年6月30日)を示す画像である。
【図26】図25に示した画像の一部を拡大したものである。
【図27】ムラサキイガイの死亡率を示すグラフである。
【図28】2003年7月14日に所内冷却水冷却器から採集したムラサキイガイを示す画像である。
【図29】図28に示したムラサキイガイの接近画像である。
【図30】図28に示したムラサキイガイの更なる接近画像である。
【図31】2003年5月29日に淡水処理区にて採集したムラサキイガイの殻長組成を示すグラフである。
【図32】2003年5月29日に無処理区にて採集したムラサキイガイのうち、殻または死亡個体の殻長組成を示すグラフである。
【図33】2003年5月29日に無処理区にて採集したムラサキイガイのうち、生存個体の殻長組成を示すグラフである。
【図34】2003年6月23日に淡水処理区にて採集したムラサキイガイのうち、殻と死亡個体の殻長組成を示すグラフである。
【図35】2003年6月23日に無処理区にて採集したムラサキイガイのうち、殻と死亡個体の殻長組成を示すグラフである。
【図36】2003年7月14日に所内冷却水冷却器から採集したムラサキイガイの生存個体の殻長組成を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 冷却水冷却器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電所所内冷却水冷却器の内部を流れて前記所内冷却水を冷却する海水を一時的に止めて当該所内冷却水冷却器内にて滞留させ、その一方で前記所内冷却水は連続的または断続的に流し続けて当該所内冷却水が保有する熱を前記所内冷却水冷却器内にて滞留している水に与え、当該水の温度を上昇させて前記所内冷却水冷却器の内部に付着している海生生物を衰弱させることを特徴とする発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法。
【請求項2】
前記所内冷却水冷却器を流れる海水を一時的に止めた後、当該海水を淡水に置換してから当該淡水に熱を与えて温度上昇させることを特徴とする請求項1に記載の発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法。
【請求項3】
発電所所内冷却水冷却器の内部を流れて前記所内冷却水を冷却する海水を淡水と置換し、前記所内冷却水冷却器内に当該淡水を滞留させた状態を所定期間保つことを特徴とする発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法。
【請求項1】
発電所所内冷却水冷却器の内部を流れて前記所内冷却水を冷却する海水を一時的に止めて当該所内冷却水冷却器内にて滞留させ、その一方で前記所内冷却水は連続的または断続的に流し続けて当該所内冷却水が保有する熱を前記所内冷却水冷却器内にて滞留している水に与え、当該水の温度を上昇させて前記所内冷却水冷却器の内部に付着している海生生物を衰弱させることを特徴とする発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法。
【請求項2】
前記所内冷却水冷却器を流れる海水を一時的に止めた後、当該海水を淡水に置換してから当該淡水に熱を与えて温度上昇させることを特徴とする請求項1に記載の発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法。
【請求項3】
発電所所内冷却水冷却器の内部を流れて前記所内冷却水を冷却する海水を淡水と置換し、前記所内冷却水冷却器内に当該淡水を滞留させた状態を所定期間保つことを特徴とする発電所所内冷却水冷却器の付着生物防除方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図27】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図6】
【図7】
【図8】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図27】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図6】
【図7】
【図8】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2006−142144(P2006−142144A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332709(P2004−332709)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
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