説明

発電部材およびこれを用いた発電装置ならびに発電システム

【課題】 発電力の高い発電部材およびこれを用いた発電装置ならびに発電システムを提供する。
【解決手段】 板状の圧電セラミックス2bの両主面に電極2a,2cが形成された圧電素子2と、圧電素子2を一方主面側から押圧する押圧部材3と、圧電素子2を他方主面側で支持する支持部材4とを備えてなる発電部材1であって、支持部材4は圧電素子2の周辺部を支持し、押圧部材3は圧電素子2を支持部材4の内側で平面状の押圧面により押圧する発電部材1である。人が歩行する際に生じる圧力のエネルギーや車等が走行する際に生じる振動エネルギーによって、圧電セラミックス2bが十分に撓み、大きなひずみを得ることができるとともに、発生する電荷の相殺を少なくすることができるので、高い電力を効率よく得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーまたは車や電車の走行の際に生じる振動エネルギーを利用して発電する機能を有する発電部材およびこれを用いた発電装置ならびに発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、COの排出を伴わないクリーンエネルギーとして、駅,空港などの公共施設やデパートなどの床,階段を人が歩行する際に生じる圧力のエネルギーまたは道路,橋,駐車場もしくは線路を車や電車等が走行する際に生じる振動エネルギーを利用して、圧電セラミックスをひずませることにより発生した電圧を取り出して発電する発電システムが注目されている。
【0003】
この発電システムは、圧電セラミックスを備える発電部材を用いた発電装置から構成されており、このような発電部材,発電装置および発電システムについて、いくつかの例が特許文献1〜3に提案されている。
【0004】
特許文献1では、人,車両,または列車を含む移動物体が通過する通路に設置された圧電部材を備え、この圧電部材上を移動物体が通過することにより圧電部材にかかる圧力によって生じた電力を取り出す発電システムが提案されている。これによれば、駅構内等の既存の設備中に発電システムを構成することができ、電力の供給源は、人や車両の移動そのものであり、極めて効率的に電力を発生させることができるというものである。
【0005】
また、特許文献2では、階段の踏み板および昇降口周辺の床に押圧発電素子を配置し、該押圧発電素子を充電装置と接続した発電装置が提案されている。これによれば、階段の上り下りの際に押圧発電素子を足で踏みつけることにより発電することができるとともに、長時間使用しても故障がほとんど発生しないため、実用上メンテナンスフリーの発電装置とすることができるというものである。
【0006】
また、特許文献3では、建築用床板素材において圧電セラミックスを電極で挟んだ構造を有し、外部の加重圧力による発電機能を有する床板素材が提案されている。図16は、特許文献3に記載されている圧電セラミックス材料の両端に金属電極を取り付けた圧電素子の斜視図である。また、図17は、特許文献3に記載されている圧電素子を備えた床板素材を示す、(a)は基本構造の分解図であり、(b)は床板素材の断面図である。
【0007】
図16に示す圧電素子23は、円柱状に加工された圧電セラミックス21の両端に蒸着等により金属電極22が形成されている。そして、床板素材20は、図17(a)に床板素材20の基本構造を示すように、電気的特性の高い支持材料24の複数の孔に圧電素子23を嵌め込み、金属電極22と電気的に導通があるように上下を金属板25で挟み、さらに、その上下を通常使用される床板材料26で挟んでこれらが密着されている。そして、図17(b)の床板素材20の断面図に示すように、この床板素材20に人の体重等により圧力が加わると、圧電素子23に圧力が伝わり、その両端に電圧が発生し、発生した電圧は上下の金属板25を通して外部に取り出される。この床板素材20を階段や廊下に敷設することにより、廊下の照明やエレベーターやエスカレーターの補助電力を供給することができるので、省エネルギーに寄与する建築材料となるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−197704号公報
【特許文献2】特開平11−353913号公報
【特許文献3】特開平5−39661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の発電システムは、圧電部材を発電に用いることができるという性質に基づき、専用の施設の建設を必要としない画期的な発電システムではあるものの、高い電圧を取り出すための圧電部材の構成や効率的な発電方法について十分に開示されたものではなかった。
【0010】
また、特許文献2に記載の発電装置も、押圧発電素子を足で踏みつけることにより発電することができるので、エネルギーを有効に利用することができる発電装置ではあるものの、押圧発電素子の押圧方法が充分に検討されたものではなく、必ずしも高い電力を得られるものではなかった。
【0011】
また、特許文献3に記載の床板素材20は、電圧を取り出して発電する方法が具体的に示されてはいるものの、圧電セラミックス21が円柱状であるため、人の体重等により加わる圧力が床板材料26および金属板25を介して圧電素子23に伝わったとしても、圧電セラミックス21が十分にひずむことができず、高い電力を得られるものではなかった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、発電力の高い発電部材およびこれを用いた発電装置ならびに発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発電部材は、板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、該圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、前記圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、前記支持部材は前記圧電素子の周辺部を支持し、前記押圧部材は前記圧電素子を前記支持部材の内側で平面状の押圧面により押圧することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の発電部材は、板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、該圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、前記圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、前記支持部材は前記圧電素子の周辺部を支持し、前記押圧部材は前記圧電素子を前記支持部材の内側で環状の押圧面により押圧することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の発電部材は、板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、該圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、前記圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、平面視した形状が三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の発電部材は、上記構成において、前記押圧部材は、前記支持部材より硬度が低い材料からなることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の発電部材は、上記いずれかの構成において、前記圧電セラミックスは、チタン酸ジルコン酸鉛からなることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の発電部材は、上記いずれかの構成において、前記圧電セラミックスは、ニオブ酸カリウム・ナトリウム・リチウムを主成分とし、チタン酸カルシウムおよび鉄酸ビスマスを含むことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の発電装置は、上記いずれかの構成の本発明の発電部材が複数個面状に並べて配置されて、それぞれの前記押圧部材が板状の第1のカバー部材により保持され、それぞれの前記支持部材が板状の第2のカバー部材により保持されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の発電装置は、上記構成において、前記押圧部材が前記第1のカバー部材と一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の発電装置は、上記構成において、前記支持部材が前記第2のカバー部材と一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の発電システムは、上記いずれかの構成の本発明の発電装置と、ダイオードおよびコンデンサを含む回路を介して接続された直流交流変換装置とを備えていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の発電システムは、上記いずれかの構成の本発明の発電装置が床,階段,道路,橋,駐車場または線路の下側に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の発電部材によれば、板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、支持部材は圧電素子の周辺部を支持し、押圧部材は圧電素子を支持部材の内側で平面状の押圧面により押圧することから、圧電セラミックスが十分に撓み、大きなひずみを得ることができるとともに発生する電荷の相殺を少なくすることができるので、高い電力を効率よく得ることができる。
【0025】
また、本発明の発電部材によれば、板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、支持部材は圧電素子の周辺部を支持し、押圧部材は圧電素子を支持部材の内側で環状の押圧面により押圧することから、圧電セラミックスが十分に撓み、大きなひずみを得ることができるとともに発生する電荷の相殺を少なくすることができるので、高い電力を効率よく得ることができる。また、押圧部材の押圧面が環状であることにより、押圧面が平面状の押圧部材よりも重量を低減でき、押圧部材自体を環状の部材とすることもできることから1個の発電部材の重量を低減できるので、複数個の発電部材を面状に並べて配置される発電装置の軽量化を図ることができる。さらに、発電装置を軽量化できることによって、運搬作業の負担を軽減することができる。
【0026】
また、本発明の発電部材によれば、板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、平面視した形状が三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であることから、発電部材同士の間に無駄な空間がほとんどない状態で発電部材を複数個面状に密に並べて配置することができるので、高い電力を効率よく得ることができる。
【0027】
また、本発明の発電部材によれば、押圧部材が支持部材より硬度が低い材料からなるときには、人の歩行の際に生じる大きな圧力エネルギーや車等の走行の際に生じる大きな振動エネルギーが発電部材にかかっても、押圧部材は大きな圧力や振動によるエネルギーを吸収して緩和し、支持部材は圧電素子の過度の変形を抑制して支持することができるので、圧電素子を構成する圧電セラミックスが割れるのを抑制することができる。
【0028】
また、本発明の発電部材によれば、圧電セラミックスがチタン酸ジルコン酸鉛からなるときには、発電量に影響する特性の一つである強誘電性が高いので、より高い電力を得ることができる。
【0029】
また、本発明の発電部材によれば、圧電セラミックスがニオブ酸カリウム・ナトリウム・リチウムを主成分とし、チタン酸カルシウムおよび鉄酸ビスマスを含むときには、−40〜+150℃の温度範囲における共振周波数,反共振周波数および圧電定数g33の温度変化率に起因する、低温側の強誘電相から高温側の強誘電相に相変態する第2次相転移といわれる不連続部が発生しにくくなるため、圧電特性を安定させることができる。併せて、鉛を含まない組成とすることができるため、環境に優しい発電部材とすることができる。
【0030】
また、本発明の発電装置によれば、本発明の発電部材が複数個面状に並べて配置されて、それぞれの押圧部材が板状の第1のカバー部材により保持され、それぞれの支持部材が板状の第2のカバー部材により保持されているときには、人の歩行の際に生じる圧力エネルギーや車等の走行の際に生じる振動エネルギーを効率よく利用して発電することができる。また、押圧部材および支持部材は、それぞれ第1のカバー部材および第2のカバー部材により保持されて、圧力や振動によるエネルギーが特定の発電部材に伝わるのではなく複数の発電部材に分散して伝わるので、発電部材は損傷しにくくなり、長期間にわたって使用することができる。
【0031】
また、本発明の発電装置によれば、押圧部材が第1のカバー部材と一体に形成されているときには、押圧部材と第1のカバー部材とが単に接しているのではなく一体に形成されているので、圧電素子と押圧部材との相対的な位置関係が変わることはない。また、押圧部材と第1のカバー部材とが接合あるいは結合されているときと比べて、人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーまたは車等の走行の際に生じる振動エネルギーを利用した発電を繰り返しても、接着が剥がれたりネジ等の結合部材が緩んだりすることがないので、高い電力を効率よく長期間にわたって得ることができる。
【0032】
また、本発明の発電装置によれば、支持部材が前記第2のカバー部材と一体に形成されているときには、圧電素子と支持部材との相対的な位置関係が変わることはないので、高い電力を効率よく長期間にわたって得ることができる。また、支持部材と第2のカバー部材とが一体に形成されていることにより、接合または結合工程を削減することができる。
【0033】
また、本発明の発電システムによれば、本発明の発電装置と、ダイオードおよびコンデンサを含む回路を介して接続された直流交流変換装置とを備えているときには、人の歩行の際に生じる圧力エネルギーや車等の走行の際に生じる振動エネルギーによって、第1のカバー部材により保持された平面状の押圧面を有する押圧部材や環状の押圧面を有する押圧部材、ひいては環状の押圧部材で圧電素子が押圧され、第2のカバー部材により保持された支持部材は圧電素子の周辺部を支持しているので、圧電セラミックスが十分に撓んでひずみ、このひずみにより発生した電圧は、ダイオードを通ってコンデンサに電荷として蓄積され、この蓄積された電荷を取り出し、直流交流変換装置によって交流電流に変換することによって、電力として用いることができる。また、本発明の発電システムに備えられる発電装置において、発電装置の平面視した形状が三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であれば、その形状の発電装置同士の間に無駄な空間がほとんどない状態で発電装置を複数個面状に密に並べて配置することができるので、高い電力を効率よく得ることができる。なお、このときの複数個の発電装置は、平面視した形状が全て同じ形状である必要はなく、組み合わせて面状に密に並べて配置することができれば、異なる形状の発電装置であってもよいものである。
【0034】
また、本発明の発電システムによれば、本発明の発電装置が床,階段,道路,橋,駐車場または線路の下側に配置されているときには、人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーまたは車等の走行の際に生じる振動エネルギーを利用して発電することができるので、省エネルギー対策として有効であるとともに、CO排出を伴わないクリーンな発電システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の発電部材の実施の形態の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【図2】本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるB−B’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【図3】本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるC−C’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【図4】本発明の発電部材の実施の形態の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるD−D’線での断面図である。また、(c)は環状の押圧面を有する環状の押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【図5】本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるE−E’線での断面図である。また、(c)は環状の押圧面を有する環状の押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【図6】本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるF−F’線での断面図である。また、(c)は環状の押圧面を有する環状の押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【図7】本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるG−G’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【図8】本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるH−H’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【図9】本発明の発電部材の配置の一例を示す、(a)は三角形状の組み合わせ,(b)は四角形状の組み合わせ,(c)は六角形状と三角形状との組み合わせ,(d)は八角形状と四角形状との組み合わせの模式図である。
【図10】本発明の発電部材を用いた発電装置の実施の形態の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるV部の拡大図であり、(c)は(b)におけるJ−J’線での断面図である。
【図11】本発明の発電部材を用いた発電装置の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるW部の拡大図であり、(c)は(b)におけるK−K’線での断面図である。
【図12】本発明の発電部材を用いた発電装置の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるX部の拡大図であり、(c)は(b)におけるL−L’線での断面図である。
【図13】本発明の発電部材を用いた発電装置の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるY部の拡大図であり、(c)は(b)におけるM−M’線での断面図である。
【図14】本発明の発電装置を用いた発電システムの実施の形態の一例を示す概略構成図である。
【図15】本発明の発電装置を用いた発電システムの実施の形態の他の例を示す概略構成図である。
【図16】従来の圧電セラミック材料の両端に金属電極を取り付けた圧電素子の斜視図である。
【図17】従来の圧電素子を備えた床板素材を示す、(a)は基本構造の分解図であり、(b)は床板素材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の発電部材およびこれを用いた発電装置ならびに発電システムの実施の形態の例について説明する。
図1は、本発明の発電部材の実施の形態の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるA−A’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【0037】
図1に示す例の発電部材1は、板状の圧電セラミックス2bの両主面に電極2a,2cが形成された圧電素子2と、圧電素子2を一方主面側から押圧する押圧部材3と、圧電素子2を他方主面側で支持する支持部材4とを備えてなる発電部材1である。
【0038】
この圧電素子2を構成する圧電セラミックス2bは、円形で板状の圧電性を示すセラミックスであり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT),チタン酸鉛(PT),チタン酸バリウム(BT),ビスマス(Bi)層状化合物,タングステンブロンズ化合物またはニオブ(Nb)酸アルカリ化合物等のペロブスカイト構造を示す化合物のいずれかで形成すればよい。
【0039】
また、電極2aは、圧電セラミックス2bの一方主面に形成された円形の層状電極であり、電極2cは、圧電セラミックス2bの他方主面に形成された円形の板状電極である。このように、電極2cが円形の板状電極であることにより、電極2aが形成された圧電セラミックス2bを保持する機能を有することもできる。この電極2a,2cの材料としては、電気伝導性の高い金,銀,銅,黄銅およびパラジウムから選ばれる少なくとも1種から形成することが好適である。
【0040】
また、押圧部材3は、圧電素子2が壊れないように圧電素子2を押圧し、支持部材4は、圧電素子2が壊れないように圧電素子2を支持しなければならないため、可撓性を有する材料、例えば、SUS303,SUS304,SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、3000系,5000系等のアルミニウム合金、ゴム、樹脂、カーボンナノチューブおよび炭素繊維系材料から選ばれる少なくとも1種から形成すればよい。
【0041】
なお、押圧部材3の押圧面の形状は、平面状であることが重要である。押圧部材3の押圧面の形状が半球状や曲面状であれば、押圧された圧電セラミックス2bの中心では負のひずみが生じ、中心から外周へと向かう径方向に進むにつれて、ひずみの符号が反転し、圧電セラミックス2bの外周では正のひずみが生じることとなり、正負のひずみの存在によって発生する電荷の相殺が生じて、取り出せる電圧が小さくなる。これに対し、押圧部材3の押圧面の形状が平面状であれば、ひずみの符号の反転する位置が外周側へとずれて、発生する電荷の相殺を少なくすることができる。
【0042】
また、支持部材4は、圧電素子2の周辺部を支持していることが重要であり、支持部材4が圧電素子2の周辺部を支持することにより、圧電セラミックス2bを十分に撓ませることができるので、大きなひずみを得ることができる。このように、支持部材4は圧電素子2の周辺部を支持し、押圧部材3は圧電素子2を支持部材4の内側で平面状の押圧面により押圧する発電部材1であることにより、人が歩行する際に生じる圧力のエネルギーや車等が走行する際に生じる振動エネルギーによって、図1(c)に示すように、圧電セラミックス2bが十分に撓み、大きなひずみを得ることができるとともに発生する電荷の相殺を少なくすることができるので、高い電力を効率よく得ることができる。
【0043】
図2は、本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるB−B’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【0044】
図2に示す例の発電部材1は、圧電素子2の主面が段差なく平面となるように電極2aを形成してあるので、押圧部材3の押圧面を広げることができる。このように、圧電素子2の主面を平面とし、押圧部材3の押圧面を広げた構成の発電部材1であることによって、図1に示す例の発電部材1よりも、ひずみの符号の反転する位置が外周側へとずれて、発生する電荷の相殺を少なくすることができる。
【0045】
図3は、本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるC−C’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【0046】
図3に示す例の発電部材1は、板状の圧電セラミックス2bの両主面に層状の電極2a,2cが形成された圧電素子2と、圧電素子2を保持する保持部材5と、圧電素子2を一方主面側から押圧する押圧部材3と、圧電素子2を他方主面側で支持する支持部材4とを備えている。このような構成として、電圧を取り出して発電させることも可能である。
【0047】
保持部材5は、電気伝導性の高い金,銀,銅,黄銅,パラジウム,SUS(ステンレス鋼),りん青銅,チタン銅,無酸素銅,タフピッチ銅およびりん脱酸銅から選ばれる1種で形成することが好適である。
【0048】
図4は、本発明の発電部材の実施の形態の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるD−D’線での断面図である。また、(c)は環状の押圧面を有する環状の押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【0049】
図4に示す例の発電部材1は、押圧部材3の押圧面が環状であり、ひいては押圧部材3自体が環状であること以外の発電部材1の構成等については図1を用いて説明した内容と同じであるため、重複する説明は省略する。図4(a)および(b)に示す例のように、支持部材4は圧電素子2の周辺部を支持し、押圧部材3が圧電素子2を支持部材4の内側で環状の押圧面により押圧する発電部材1であることにより、人が歩行する際に生じる圧力のエネルギーや車等が走行する際に生じる振動エネルギーによって、図4(c)に示すように、圧電セラミックス2bが十分に撓み、大きなひずみを得ることができるとともに、発生する電荷の相殺を少なくすることができるので、高い電力を効率よく得ることができる。
【0050】
ところで、押圧面の形状が半球状や曲面状である押圧部材3を用いて圧電素子2の中心近傍を押圧すれば、押圧された圧電セラミックス2bの中心では負のひずみが生じ、中心から外周へと向かう径方向に進むにつれて、ひずみの符号が反転し、圧電セラミックス2bの外周では正のひずみが生じることとなり、正負のひずみの存在によって発生する電荷の相殺が生じて、取り出せる電圧が小さくなる。これに対し、押圧部材3の押圧面が環状であれば、圧電素子2の中心近傍が押圧されることはなく、圧電素子2の外周側が押圧されることとなり、ひずみの符号の反転する位置が圧電素子2の外周側へとずれて、発生する電荷の相殺を少なくすることができる。なお、押圧部材3の環状の押圧面については、圧電素子2の中心近傍を押圧せず、圧電素子2を支持部材4の内側で押圧するものであればよい。
【0051】
また、発電部材1を構成する押圧部材3の押圧面が環状であれば押圧面が平面状のものに比べて重量を低減でき、ひいては押圧部材3が環状であることにより、1個の発電部材1の重量を低減できるので、発電部材1を複数個面状に並べて配置される発電装置の軽量化を図ることができる。さらに、発電装置を軽量化できることによって、発電装置の運搬作業の負担を軽減することができる。環状の押圧面を有する押圧部材3としては、本例のように押圧部材3の全体が環状となっているものに限られるものではなく、押圧面側の中央部に凹部を有して押圧面が環状となっているものであってもよいものであり、その場合にも少なくとも凹部の分について軽量化を図ることができる。
【0052】
図5は、本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるE−E’線での断面図である。また、(c)は環状の押圧面を有する環状の押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【0053】
図5に示す例の発電部材1は、圧電素子2の主面が段差なく平面となるように電極2aを形成してあるので、環状の押圧面を有する押圧部材3である環状の押圧部材3の径を大きくして押圧する位置をより圧電素子2の外周側へとずらすことができる。このように、圧電素子2の主面を平面とし、環状の押圧面を有する環状の押圧部材3について押圧面の径を大きくして押圧する位置を圧電素子2の外周側へとずらすことによって、図4に示す例の発電部材1よりも、ひずみの符号の反転する位置が外周側へとずれて、発生する電荷の相殺を少なくすることができる。
【0054】
図6は、本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるF−F’線での断面図である。また、(c)は環状の押圧面を有する環状の押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【0055】
図6に示す例の発電部材1は、板状の圧電セラミックス2bの両主面に層状の電極2a,2cが形成された圧電素子2と、圧電素子2を保持する保持部材5と、圧電素子2を一方主面側から押圧する環状の押圧面を有する押圧部材3である環状の押圧部材3と、圧電素子2を他方主面側で支持する支持部材4とを備えている。このような構成として、電圧を取り出して発電させることも可能である。保持部材5は、電気伝導性の高い金,銀,銅,黄銅,パラジウム,SUS(ステンレス鋼),リン青銅,チタン銅,無酸素銅,タフピッチ銅およびりん脱酸銅から選ばれる1種から形成することが好適である。
【0056】
なお、本発明の実施の形態の例である図1〜図6に示す例においては、押圧部材3,圧電素子2,保持部材5および支持部材4を平面視したときの外形の形状が円形状のものを組み合わせた例を示したが、以下の形状の組み合わせであってもよい。
【0057】
図7は、本発明の発電部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるG−G’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【0058】
図7に示す例の発電部材1は、押圧部材3の形状が平面視して円形状であり、圧電素子2および保持部材5の形状が平面視してそれぞれ四角形状である。
【0059】
なお、圧電素子2の平面視した形状を四角形状などの多角形状としたときには、特に圧電素子2を構成する圧電セラミックス2bの図7(a)中に破線の円で示した各角部の形状が平面視して円弧状となっている、すなわち角部が丸められていることが好ましい。これにより、発電部材1の上を人が歩行する際に生じる圧力のエネルギーや車等が走行する際に生じる振動エネルギーによる応力の局部的な集中を緩和させて、圧電セラミックス2bや保持部材5の破損を抑制することができる。
【0060】
図8は、本発明の発電部材の実施の形態のさらに他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるH−H’線での断面図である。また、(c)は押圧部材によって圧電素子が押圧されている状態の断面図である。
【0061】
図8に示す例の発電部材1は、押圧部材3,圧電素子2および保持部材5の形状が平面視して四角形状のものを組み合わせた例である。
【0062】
このように、押圧部材3,圧電素子2および保持部材5を平面視したときの形状が同じであれば、それぞれの部材の位置合わせが容易となり、製造コストの低減を図ることができる。また、加わる圧力や生じる応力を平面視して対称な分布としやすく、発電の偏りを抑制して効率を向上させることができ、部分的な破壊の発生を抑制して耐久性を向上させることもできる。なお、この他にも、これらの部材の形状が、三角形状,六角形状または八角形状であったり、これらの形状のものの組み合わせであったりしてもよいことはいうまでもない。
【0063】
図9は、本発明の発電部材の配置の一例を示す、(a)は形状が三角形状のものの組み合わせ,(b)は形状が四角形状のものの組み合わせ,(c)は形状が六角形状のものと三角形状のものとの組み合わせ,(d)は形状が八角形状のものと四角形状のものとの組み合わせの模式図である。
【0064】
なお、図9においては、(a)〜(d)の各模式図の左上の発電部材1にのみ、保持部材5,圧電素子2および押圧部材3を示し、他については、記載を省略している。そして、図9(a)〜(d)の模式図に示すように、本発明の発電部材1の形状は平面視して三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であることが好ましい。
【0065】
ここで、本発明における発電部材1の平面視した形状とは、図9に示す例においては平面視したときの外形の形状が最も大きい部位となる保持部材5の形状が該当し、保持部材5を有していない図1や図2に示す発電部材1のように、電極2cが板状電極であり、電極2cが電極2aの形成された圧電セラミックス2bを保持する機能を有しているときには、電極2cの形状が該当する。
【0066】
そして、図9(a),(b)の模式図に示すように、発電部材1の形状が平面視して三角形状の組み合わせや四角形状の組み合わせであったり、図9(c),(d)の模式図に示すように、発電部材1の形状が平面視して六角形状と三角形状との組み合わせや八角形状と四角形状との組み合わせであったりすれば、発電部材1同士の間に無駄な空間がほとんどない状態で発電部材1を複数個面状に密に並べて配置することができるので、高い電力を効率よく得ることができる。
【0067】
また、本発明の発電部材1によれば、押圧部材3は、支持部材4より硬度が低い材料であることが望ましい。押圧部材3が支持部材4より硬度が低い材料であれば、人の歩行の際に生じる大きな圧力のエネルギーや車等の走行の際に生じる大きな振動エネルギーによって大きな圧力または振動エネルギーが発電部材1にかかったとしても、押圧部材3は大きな圧力または振動エネルギーを吸収して緩和し、支持部材4は圧電素子2の過度の変形を抑制して支持することができるので、圧電素子2を構成する圧電セラミックス2bが割れるのを抑制することができる。
【0068】
具体的には、押圧部材3がゴム,樹脂,カーボンナノチューブおよび炭素繊維系材料から選ばれる少なくとも1種からなり、支持部材4がSUS303,SUS304,SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼や3000系,5000系等のアルミニウム合金等の金属から選ばれる少なくとも1種からなる組み合わせが好適である。また、押圧部材3および支持部材4がともにゴムからなる場合には、押圧部材3および支持部材4間のISO 7619−2004に準拠する硬度の差は、A5/15/S以上であることが好適である。
【0069】
また、本発明の発電部材1によれば、圧電セラミックス2bはチタン酸ジルコン酸鉛からなることが好適である。チタン酸ジルコン酸鉛は、発電量に影響する特性の一つである強誘電性が高く、圧電セラミックス2bがチタン酸ジルコン酸鉛からなるときには、より高い電力を得ることができるからである。
【0070】
強誘電特性の高いチタン酸ジルコン酸鉛としては、特に、圧電定数d31が大きい材料、一例として、組成式がPbZrO−PbTiO −Pb(Zn1/3Sb2/3)Oで表される成分を主成分とし、ビスマス(Bi)および鉄(Fe)をBiFeOに換算して5質量%以上15質量%以下の範囲で含むセラミックス、他の例として組成式がPb1−x−ySrBa(Zn1/3Sb2/3(Ni1/2Te1/2ZrTi1−a−b−cで表され、x,y,a,b,cのモル比が、0≦x≦0.12,0≦y≦0.12,0<x+y,0.05≦a≦0.12,0≦b≦0.015および0.43≦c≦0.52を満足する成分100質量部に、等モル比からなるPbOおよびNbを合計で0.2〜1.2質量部含有してなる主成分に対し、マグネシウム(Mg)を0.6モル%未満の範囲で含むセラミックス、さらに他の例として組成式が(Pb(1−x)A(Zr(1−y)Ti)Oで表され、AはBa、Sr、Caから選ばれる少なくとも1種からなり、x,y,zのモル比が0.01≦x≦0.10,0.43≦y≦0.50,0.98≦z≦1.07を満足する成分100質量部に、NbをNbとして0.05〜2質量部およびZnをZnOとして0.01〜0.5質量部含むセラミックスであることが好適である。
【0071】
また、圧電定数d33が大きい材料であってもよく、一例として、組成式がPb1―x−ySrBa(Zn1/3Sb2/3ZrTi1−a−bで表され、x,y,a,bで示すモル比が0≦x≦0.14,0≦y≦0.14,0.04≦x+y,0.01≦a≦0.12および0.43≦b≦0.58を満足するセラミックスであることが好適である。x,y,a,bで示すモル比がこの範囲にあると、荷重を繰り返して与えても圧電定数d33の減衰率を極めて小さくすることができるからである。
【0072】
また、本発明の発電部材1によれば、圧電セラミックス2bは、ニオブ酸カリウム・ナトリウム・リチウムを主成分とし、チタン酸カルシウムおよび鉄酸ビスマスを含む組成とすることが好適である。圧電セラミックス2bが、ニオブ酸カリウム・ナトリウム・リチウムを主成分とし、チタン酸カルシウムおよび鉄酸ビスマスを含むときには、−40〜+150℃の温度範囲における共振周波数,反共振周波数および圧電定数g33の温度変化率に起因する、低温側の強誘電相から高温側の強誘電相に相変態する第2次相転移といわれる不連続部が発生しにくくなるため、圧電特性を安定させることができる。併せて、鉛を含まない組成とすることができるため、環境に優しい発電部材1とすることができる。
なお、圧電セラミックス2bにおける主成分とは、圧電セラミックス2bを構成する全成分100質量%のうち、50質量%以上を占める成分である。
【0073】
図10は、本発明の発電部材を用いた発電装置の実施の形態の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるV部の拡大図であり、(c)は(b)におけるJ−J’線での断面図である。
【0074】
図10に示す例の発電装置6は、発電部材1が複数個面状に並べて配置されて、それぞれの押圧部材3が板状の第1のカバー部材7により保持され、それぞれ支持部材4が板状の第2のカバー部材8により保持されている。なお、押圧部材3および支持部材4の保持は、それぞれ第1のカバー部材7,第2のカバー部材8に接着剤またはネジ等の結合部材を用いて、接合または結合されていることが好ましい。
【0075】
図10に示す例の発電装置6は、第1のカバー部材7および第2のカバー部材8により押圧部材3および支持部材4が保持され、発電力の高い本発明の発電部材1が複数個面状に並べて配置されていることにより、人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーや車等の走行の際に生じる圧力のエネルギーや振動エネルギーを効率よく利用して発電することができる。また、押圧部材3および支持部材4は、それぞれ第1のカバー部材7および第2のカバー部材8により保持されて、振動エネルギーが特定の発電部材1に伝わるのではなく複数の発電部材1に分散して伝わるので、発電部材1は損傷しにくくなり、長期間にわたって使用することができる。
【0076】
また、本発明の発電装置6を構成する本発明の発電部材1が、平面視した形状が三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であるときには、それらを組み合わせて発電部材1を複数個面状に密に並べて配置することができるので、発電装置6の上を通行する人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーや車等の走行の際に生じる圧力のエネルギーや振動エネルギーを効率よく利用して発電することができる。また、複数個の発電部材1からなる発電装置6についても、平面視した形状を三角形状,四角形状,六角形状または八角形状など様々な形状とすることができ、同様にそれらを組み合わせて複数個面状に密に並べて配置することができる。
【0077】
図11は、本発明の発電部材を用いた発電装置の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるW部の拡大図であり、(c)は(b)におけるK−K’線での断面図である。
【0078】
図11に示す例の発電装置6は、発電部材1を構成する押圧部材3,圧電素子2などの平面視した形状が四角形状であり、それら発電部材1が複数個面状に密に並べて配置されて、それぞれの押圧部材3が板状の第1のカバー部材7により保持され、それぞれ支持部材4が板状の第2のカバー部材8により保持されている。なお、第1および第2のカバー部材7,8は平面視した形状が四角形状であるが、発電部材1の平面視した形状を三角形状,四角形状,六角形状もしくは八角形状、またはこれらの組み合わせとすることによって、発電部材1同士の間に無駄な空間がほとんどない状態で複数個面状に密に並べて発電部材1を配置することができるので、高い電力を効率よく得ることができるとともに、発電装置6を様々な形状とすることができる。
【0079】
図12は、本発明の発電部材を用いた発電装置の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるX部の拡大図であり、(c)は(b)におけるL−L’線での断面図である。
【0080】
図12に示す例の発電装置6では、押圧部材3が第1のカバー部材7と一体に形成されており、押圧部材3と第1のカバー部材7とが単に接しているのではなく一体に形成されているので、圧電素子2と押圧部材3との相対的な位置関係が変わることはない。また、押圧部材3と第1のカバー部材7とが接合あるいは結合されているときと比べて、人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーや車等の走行の際に生じる振動エネルギーを利用した発電を繰り返しても、接着が剥がれたりネジ等の結合部材が緩んだりすることがないので、高い電力を効率よく長期間にわたって得ることができる。
【0081】
図13は、本発明の発電部材を用いた発電装置の実施の形態の他の例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるY部の拡大図であり、(c)は(b)におけるM−M’線での断面図である。
【0082】
図13に示す例の発電装置6では、支持部材4が第2のカバー部材8と一体に形成されており、支持部材4と第2のカバー部材8とが単に接しているのではなく一体に形成されているので、圧電素子2と支持部材4との相対的な位置関係が変わることはない。また、支持部材4と第1のカバー部材7とが接合あるいは結合されているときと比べて、人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーや車等の走行の際に生じる振動エネルギーを利用した発電を繰り返しても、接着が剥がれたりネジ等の結合部材が緩んだりすることがないので、高い電力を効率よく長期間にわたって得ることができる。さらに、支持部材4と第2のカバー部材8とが一体に形成されていることにより、接合または結合工程を削減することができる。
【0083】
また、第1のカバー部材7と一体に形成された押圧部材3と、第2のカバー部材8と一体に形成された支持部材4と、圧電素子2とからなる発電装置6であれば、上記同様の効果を得ることができて好適である。さらに、図12,13に示す例においては、個々の押圧部材3および支持部材4と一体に形成された第1のカバー部材7および第2のカバー部材8を示したが、複数の押圧部材3および支持部材4と一体に形成しても好適である。
【0084】
図14および図15は、本発明の発電装置を用いた発電システムの実施の形態の一例を示す概略構成図である。
【0085】
図14および図15に示す例の発電システム9は、本発明の発電装置6と、ダイオード10a,10bおよびコンデンサ11を含む回路を介して接続された直流交流変換装置12とを備えた発電システムである。なお、図14には、本発明の発電装置6を構成する発電部材1の押圧部材3が平面状の押圧面を有しているものを示し、図15には、環状の押圧面を有している押圧部材3を示している。
【0086】
この発電システム9では、人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーや車等の走行の際に生じる振動エネルギーによって、第1のカバー部材7により保持された平面状の押圧面を有する押圧部材3や環状の押圧面を有する押圧部材3が圧電素子2を押圧し、第2のカバー部材8により保持された支持部材4は圧電素子2の周辺部を支持していることによって、圧電セラミックス2bがひずみ、このひずみにより発生した電圧は、ダイオード10aを通ってコンデンサ11に電荷として蓄積される。そして、ダイオード10bを通してコンデンサ11に蓄積された電荷を取り出して、直流交流変換装置12によって交流電流に変換し、電力として取り出すことができる。
【0087】
そして、本発明の発電装置6が床,階段,道路,橋,駐車場または線路の下側に配置されている本発明の発電システム9であれば、人の歩行の際に生じる圧力のエネルギーまたは車等の走行の際に生じる振動エネルギーを利用して発電することができるので、省エネルギー対策として有効であるとともに、CO排出を伴わないクリーンな発電システムとすることができる。
【0088】
また、本発明の発電システム9に備えられる本発明の発電装置6は、発電装置6の平面視した形状が三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であれば、発電装置6同士の間に無駄な空間がほとんどない状態で発電装置6を複数個面状に密に並べて配置することができるので、高い電力を効率よく得ることができる。さらに、第1のカバー部材7の色を異ならせたり、様々な形状の発電装置6を組み合わせたりすることによって、装飾性の優れた発電システム9とすることもできる。
【0089】
次に、本発明の発電部材の製造方法の一例を説明する。
まず、圧電セラミックス2bがチタン酸ジルコン酸鉛からなる場合の例について説明する。出発原料として酸化鉛(Pb),酸化ジルコニウム(ZrO),酸化チタン(TiO),炭酸ストロンチウム(SrCO),炭酸バリウム(BaCO),酸化亜鉛(ZnO),酸化アンチモン(Sb),酸化ニッケル(NiO)および酸化テルル(TeO)の各粉末を秤量混合して調合原料とし、この調合原料を溶媒である水とともにボールミルに入れて、混合粉砕を20時間以上30時間以下行なってスラリーを得る。なお、ボールミルの混合粉砕では、ジルコニアを主成分とするボールを用いればよい。また、出発原料には、必要に応じて上記出発原料に加え、酸化鉛(PbO)および酸化ニオブ(Nb2)を秤量混合して用いてもよい。
【0090】
そして、得られたスラリーを脱水し乾燥させた後に、大気雰囲気中で温度を850℃以上900℃以下とし、保持時間を1時間以上3時間以下として仮焼することにより仮焼粉体を得る。次に、得られた仮焼粉体に対してマグネシウム(Mg)の含有量が0.6モル%以下となるように、炭酸マグネシウム(MgCO)の粉末を所定量加えて粉砕混合して混合粉体を得る。この混合粉体からスラリーを作製してテープ成形法もしくは押出成形法にて円板状,三角形状,四角形状,六角形状または八角形状などの所定形状の成形体を得るか、または混合粉体から作製したスラリーを噴霧乾燥法により顆粒を作製し、乾式加圧成形法にて所定形状の成形体を形成すればよい。この成形体を大気雰囲気中または酸素雰囲気中にて1100℃以上1300℃以下で焼成することによって、焼結体である圧電セラミックス2bを得ることができる。
【0091】
そして、得られたスラリーを脱水し乾燥させた後に、大気雰囲気中で温度を850℃以上900℃以下とし、保持時間を1時間以上3時間以下として仮焼することにより、組成式がPbZrO−PbTiO −Pb(Zn1/3Sb2/3)Oで表される成分を主成分とする仮焼粉体を得る。次に、得られた仮焼粉体に酸化ビスマス(Bi)および酸化鉄(Fe)の各粉末を所定量加えて混合して混合粉体とし、この混合粉体からスラリーを作製してテープ成形法もしくは押出成形法にて所定形状の成形体を得るか、または混合粉体から作製したスラリーを噴霧乾燥法により顆粒を作製し、乾式加圧成形法にて所定形状の成形体を形成すればよい。この成形体を大気雰囲気中または酸素雰囲気中にて1000℃以上1100℃以下で焼成することによって、圧電セラミックス2bを得ることができる。
【0092】
さらに、圧電セラミックス2bがニオブ酸カリウム・ナトリウム・リチウムを主成分とし、チタン酸カルシウムおよび鉄酸ビスマスを含む場合について説明する。出発原料として、炭酸カリウム(KCO),炭酸ナトリウム(NaCO),炭酸リチウム(LiCO),炭酸カルシウム(CaCO),酸化ニオブ(Nb),酸化チタン(TiO)および酸化鉄(Fe)の各粉末を秤量混合して調合原料とする。ここで、圧電セラミックス2bは、例えば、組成式が(1−a−b)(KNaLi1−x−y)NbO+aCaTiO+bBiFeOであって、x,y,a,b,cのモル比が、0<a≦0.16,0<b≦0.1,0≦x≦0.19,および0.79<y<1を満足するように秤量すればよい。
【0093】
次に、この調合原料を溶媒である2−プロパノール(イソプロパノール)とともにボールミルに入れて、混合粉砕を15時間以上25時間以下行なってスラリーを得る。なお、ボールミルの混合粉砕では、ジルコニアを主成分とするボールを用いればよい。
【0094】
そして、得られたスラリーを脱水し乾燥させた後に、大気雰囲気中にて900℃以上1000℃以下で3時間仮焼し、仮焼粉体とする。その後、この仮焼粉体を再度ボールミルで粉砕し、この仮焼粉体にポリビニルアルコール(PVA)等のバインダを添加してスラリーとし、噴霧乾燥法により乾燥させて顆粒とする。
【0095】
次に、得られた顆粒を乾式加圧成形法により200MPaの圧力で、所定形状の成形体を作製し、得られた成形体を必要に応じて脱脂した後、大気雰囲気中にて例えば1000℃以上1250℃以下で焼成することによって、圧電セラミックス2bを得ることができる。
【0096】
そして、上述のいずれかの製造方法で得られた圧電セラミックス2bの一方主面に電気伝導性の高い、例えば金,銀,銅およびパラジウムから選ばれる少なくとも1種からなるペーストをスクリーン印刷法,ディッピング法などの周知の方法により塗布し、加熱処理を施して電極2aを形成する。次に、圧電セラミックス2bの他方主面に黄銅からなる板状体を例えばエポキシ系接着剤等の接着剤により接着して電極2cを形成した後、温度が70℃以上90℃以下のシリコンオイル中にて10分以上30分以下で3kV/mm以上7kV/mm以下の直流電界を印加して、電極2cがマイナス、電極2aがプラスとなるように分極処理を施すことにより、図1,図2,図4または図5に示す例の圧電素子2を得ることができる。
【0097】
あるいは、上述のいずれかの製造方法で得られた圧電セラミックス2bの両主面に電気伝導性の高い、例えば金,銀,銅およびパラジウムから選ばれる少なくとも1種からなるペーストをスクリーン印刷法,ディッピング法などの周知の方法により塗布し、加熱処理を施して電極2a,2cを形成した後、温度が70℃以上90℃以下のシリコンオイル中にて10分以上30分以下で3kV/mm以上7kV/mm以下の直流電界を印加して、電極2cがマイナス、電極2aがプラスとなるように分極処理を施してもよい。分極処理を施した後、高い電気伝導性を有する黄銅からなる保持部材5にアクリル樹脂系接着剤で接着することにより、図3,図6,図7または図8に示す例の圧電素子2を得ることができる。
【0098】
そして、上述のいずれかの方法で得られた圧電素子2と、圧電素子2の周辺部を支持する支持部材4と、支持部材4の内側で平面状の押圧面により押圧する押圧部材3または環状の押圧面により押圧する押圧部材3とを所定の位置に配置することで、本発明の発電部材1を得ることができる。
【0099】
また、本発明の発電部材1を複数個面状に並べて配置し、それぞれの押圧部材3を板状の第1のカバー部材7により保持し、それぞれの支持部材4を板状の第2のカバー部材8により保持することで、本発明の発電装置6を得ることができる。
【0100】
なお、第1および第2のカバー部材7,8を平面視した形状が、三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であるときには、平面視した形状が三角形状,四角形状,六角形状または八角形状の発電部材1を作製して組み合わせることによって対応することができる。
【0101】
また、本発明の発電装置6に、ダイオード10a,10bおよびコンデンサ11を含む回路を介して直流交流変換装置12を接続することで、本発明の発電システム9を得ることができる。
【0102】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0103】
まず、直径が25mmで厚さが0.25mmの円板状のチタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電セラミックス2bの両主面に、主成分が銀からなる層状の電極2aを形成した。次に、90℃のシリコンオイル中で5kV/mmの直流電界を30分間印加して、電極2cがマイナスとなり、電極2aがプラスとなるように分極処理を施し、直径が35mmで厚さが0.3mmの黄銅からなる円形の板状電極である電極2cにアクリル樹脂系接着剤を用いて接着し、図1に示す圧電素子2を形成した。
【0104】
次に、圧電素子2の一方主面側を押圧する押圧部材として、押圧面が球面状の押圧部材と、押圧面が平面状および環状の押圧部材3とを用意した。また、圧電素子2の他方主面側で支持する支持部材として、圧電素子2の全面を支持する支持部材と圧電素子2の周辺部を支持する支持部材4とを用意した。次に、圧電素子2と、用意した押圧部材および支持部材とにより、表1に示す組み合わせの発電部材を作製し、この発電部材に1MΩの抵抗を並列に繋いで回路を形成した。
【0105】
そして、押圧部材を精密万能試験機(島津製作所製 オートグラフ(登録商標)AGS−J)に取り付け、100mm/分の速度で圧電素子2を押圧し、0.05秒毎に圧電素子2にかかる荷重をこの精密万能試験機で測定した。また、同時に抵抗間の電圧および抵抗値を、0.05秒毎にデジタルエレクトロメータ(アドバンテスト製 R8252)にて検出した。そして、荷重がかかってから40Nになるまでに検出された電圧と抵抗値とにより各時間における電力量を計算し、その値を合計した値を総電力量とし、押圧面が平面状であり、圧電素子2の他方主面側で支持する支持部材が圧電素子2の全面を支持する支持部材の組み合わせの発電部材である試料No.1の総電力量を1としたときの相対値で示した。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1に示す結果からわかるように、押圧部材の押圧面が平面状であり、支持部材が圧電素子2の全面を支持している試料No.1の発電部材は、支持部材が圧電素子2の全面を支持しているため圧電セラミックス2bを十分に撓ませることができず、ひずみが小さく得られた総電力量が少なかった。
【0108】
また、押圧部材の押圧面が球面状であり、支持部材4が圧電素子2の周辺部を支持している試料No.2の発電部材は、支持部材4が圧電素子2の周辺部を支持しているので、試料No.1よりも撓ませることができたものの、押圧された圧電セラミックス2bの中心では負のひずみが生じているのに対し、中心から外周へと向かう径方向に進むにつれてひずみの符号が反転し、圧電セラミックス2bの外周では正のひずみが生じており、正負のひずみの存在によって発生する電荷の相殺が生じたため、試料No.1の10倍の総電力量に止まった。
【0109】
これに対し、押圧部材3の押圧面が平面状であり、支持部材4が圧電素子2の周辺部を支持している本発明の実施例である試料No.3は、支持部材4が圧電素子2の周辺部を支持し、押圧部材3が圧電素子2を支持部材4の内側で平面状の押圧面により押圧しているので、圧電セラミックス2bは十分に撓んで大きくひずむとともに、ひずみの符号の反転する位置が外周側へとずれて発生する電荷の相殺を少なくすることができるので、試料No.1の100倍の総電力量を得ることができた。
【0110】
また、本発明の実施例である試料No.4は、支持部材4が圧電素子2の周辺部を支持し、圧電素子2を支持部材4の内側で押圧する押圧部材3の押圧面が環状であることにより、圧電セラミックス2bは十分に撓んで大きくひずむとともに、ひずみの符号の反転する位置が外周側へとずれて発生する電荷の相殺を少なくすることができるので、試料No.1の100倍の総電力量を得ることができた。
【実施例2】
【0111】
まず、実施例1と同様の方法で、図1および図4に示す圧電素子2を作製した。次に、図1に示す圧電素子2の周辺部を支持する支持部材4および圧電素子2を支持部材4の内側で平面状の押圧面により押圧する押圧部材3を、異なる硬度の材料を用いて作製した。また、図4に示す圧電素子2の周辺部を環状に支持する支持部材4および圧電素子2を支持部材4の内側で押圧する環状の押圧面を有する押圧部材3を、異なる硬度の材料を用いて作製した。次に、支持部材4および押圧部材3の硬度をそれぞれHs,Hpとして、その大小関係を表2に示す組み合わせの発電部材1を作製し、図1に示す電極2aから電極2cまでの厚みtをダイヤルゲージで測定した。その後、発電部材1に1MΩの抵抗を並列に繋いで回路を形成した。
【0112】
そして、押圧部材3を精密万能試験機(島津製作所製 オートグラフ(登録商標)AGS−J)に取り付け、急激な負荷がかかった状態にするため、200mm/分の速度で圧電素子2を押圧し、0.05秒毎に圧電素子2にかかる荷重をこの精密万能試験機で測定した。また、同時に抵抗間の電圧および抵抗値を、0.05秒毎にデジタルエレクトロメータ(アドバンテスト製 R8252)にて検出した。そして、荷重がかかってから40Nになるまでを1サイクルとし、この1サイクル中に検出された電圧と抵抗値とにより各時間における電力量を計算し、その値を合計した値を総電力量Pとした。荷重が40Nになった後、荷重を取り除き、再度荷重をかけて40Nになるまでというサイクルを50サイクル実施し、50サイクル目に検出された電圧と抵抗値とにより各時間における電力量を計算し、その値を合計した値を総電力量P50とした。そして、1サイクル目の総電力量Pに対する50サイクル目の総電力量P50の減少率ΔP(=(P−P50)/P×100)(%)を算出し、その値を表2に示した。
【0113】
また、荷重をかける前にダイヤルゲージを用いて測定した電極2aから電極2cまでの厚みtの測定値をtとし、50サイクル終了後の電極2aから電極2cまでの厚みtの測定値をt50とした。そして、荷重をかける前と50サイクル終了後との厚みtの増加率Δt(=(t50−t)/t×100)(%)を算出し、その値を表2に示した。この増加率Δtが大きければ、圧電素子2の塑性変形が大きく、厚みの増加率Δtが小さければ、圧電素子2の塑性変形が小さいことを意味する。
【0114】
【表2】

【0115】
表2に示す結果からわかるように、押圧部材3の硬度Hpが支持部材4の硬度Hsより低い試料No.6,9は、厚みの増加率Δtおよび総電力量の減少率ΔPが非常に小さかったことから、押圧部材3が支持部材4より硬度が低いことにより、圧電素子2に急激な負荷がかかっても、この負荷に伴う衝撃を押圧部材3が吸収して緩和し、支持部材4が過度の変形を抑制して支持できることがわかった。
【実施例3】
【0116】
まず、実施例1と同様の方法で、図1および図4に示す圧電素子2を作製した。次に、圧電素子2を支持部材4の内側で平面状の押圧面により押圧する押圧部材3と、圧電素子2を支持部材4の内側で押圧する環状の押圧面により押圧する押圧部材3と、押圧部材3を保持する第1のカバー部材7と、第1のカバー部材7と一体に形成された押圧部材3とを用意した。また、圧電素子2の周辺部を支持する支持部材4と、支持部材4を保持する第2のカバー部材8と、第2のカバー部材8と一体に形成された支持部材4とを用意した。そして、これらの部材を用いて、表3に示す組み合わせの発電装置6を作製し、各々の発電部材1に10MΩの抵抗を並列に繋いで回路を形成した。
【0117】
なお、押圧部材3が第1のカバー部材7に、支持部材4が第2のカバー部材8に接着により接合されて保持されているものは、「別々」と表3に示した。また、第1のカバー部材7と一体に形成された押圧部材3、第2のカバー部材8と一体に形成された支持部材4は、「一体」と表3に示した。
【0118】
そして、精密万能試験機(島津製作所製 オートグラフ(登録商標)AGS−J)を用いて、第1のカバー部材7および押圧部材3を介して100mm/分の速度で圧電素子2を押圧し、0.05秒毎に圧電素子2にかかる荷重を測定した。また、同時に抵抗間の電圧および抵抗値を、0.05秒毎にデジタルエレクトロメータ(アドバンテスト製 R8252)にて検出した。そして、荷重がかかってから80Nになるまでを1サイクルとし、この1サイクル中に検出された電圧と抵抗値とにより各時間における電力量を計算し、その値を合計した値を総電力量Pとした。荷重が80Nになった後、荷重を取り除き、再度荷重をかけて80Nになるまでのサイクルを50サイクル実施し、50サイクル目に検出された電圧と抵抗値とにより各時間における電力量を計算し、その値を合計した値を総電力量P50とした。そして、1サイクル目の総電力量Pに対する50サイクル目の総電力量P50の減少率ΔP(=(P−P50)/P×100)(%)を算出し、その値を表3に示した。
【0119】
【表3】

【0120】
表3に示す結果からわかるように、押圧部材3が第1のカバー部材7に、支持部材4が第2のカバー部材8に接着により接合されて保持されている試料No.11,15に比べて、押圧部材3もしくは支持部材4のいずれかが一体に形成されている試料No.12,13,16,17は、総電力量の減少率ΔPが小さかった。また、試料No.12と試料No.13とを比べると、押圧部材3が第1のカバー部材7と一体に形成されている試料No.12の方が、位置ずれすることなく圧電素子2を押圧したので、総電力量の減少率ΔPが小さかった。同様にして、試料No.16と試料No.17とを比べると、押圧部材3が第1のカバー部材7と一体に形成されている試料No.16の方が、位置ずれすることなく圧電素子2を押圧したので、総電力量の減少率ΔPが小さかった。
【0121】
さらに、押圧部材3および支持部材4が第1のカバー部材7および第2のカバー部材8と一体に形成されている試料No.14,18は、総電力量の減少率ΔPが非常に小さく、これらの結果から、位置ずれすることなく押圧部材3が圧電素子2を押圧し、支持部材4が圧電素子2を支持して効率よく電力を得るには、押圧部材3および支持部材4がそれぞれ第1のカバー部材7および第2のカバー部材8と一体に形成することが好適であることがわかった。
【実施例4】
【0122】
まず、平面視した形状が円形状,三角形状,四角形状,六角形状および八角形状である圧電素子2を複数作製した。次に、圧電素子2を支持部材4の内側で圧電素子2と同一形状で平面状の押圧面により押圧する押圧部材3が一体に形成された第1のカバー部材7と、圧電素子2の周辺部を支持する支持部材4が一体に形成された第2のカバー部材8とを用意した。次に、これらの部材を用いて、平面視した形状が円形状,三角形状,四角形状,六角形状および八角形状の発電部材1を作製し、図13および図9(a)〜(d)に示す配置として発電装置6を作製した。なお、発電装置6の面積については等しくなるように作製し、各々の発電部材1に10MΩの抵抗を並列に繋いで回路を形成した。
【0123】
そして、体重が65kgの人が112歩/分の速度で歩いて、発電装置6を1歩踏むことによって、押圧部材3が一体に形成された第1のカバー部材7を介して圧電素子2を押圧したときの抵抗間の電圧および抵抗値を、0.05秒毎にデジタルエレクトロメータ(アドバンテスト製 R8252)にて検出した。そして、1歩中に検出された電圧と抵抗値とにより各時間における電力量を計算し、その値を合計した値を総電力量とし、平面視したときの圧電素子2および押圧部材3の形状が円形状である試料No.19の図13に示す発電装置6の総電力量を1としたときの相対値で示した。結果を表4に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
表4に示す結果からわかるように、平面視したときの発電部材1の形状が円形状である試料No.19に比べて、平面視したときの形状が三角形状である発電部材1を図9(a)に示すように配置した試料No.20,平面視したときの形状が四角形状である発電部材1を図9(b)に示すように配置した試料No.21,平面視したときの形状が六角形状および三角形状の発電部材1を図9(c)に示すように配置した試料No.22,平面視したときの形状が八角形状および四角形状である発電部材1を図9(d)に示すように配置した試料No.23の総電力量は、いずれも大きかった。これらの結果から、発電部材1の平面視した形状が三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であれば、発電部材1同士の間に無駄な空間がほとんどない状態で発電部材1を複数個面状に密に並べて配置することができ、発電量が大きくなるため、好適であることがわかった。
【符号の説明】
【0126】
1:発電部材
2:圧電素子
2a:電極
2b:圧電セラミックス
2c:電極
3:押圧部材
4:支持部材
5:保持部材
6:発電装置
7:第1のカバー部材
8:第2のカバー部材
9:発電システム
10a,10b:ダイオード
11:コンデンサ
12:直流交流変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、該圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、前記圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、前記支持部材は前記圧電素子の周辺部を支持し、前記押圧部材は前記圧電素子を前記支持部材の内側で平面状の押圧面により押圧することを特徴とする発電部材。
【請求項2】
板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、該圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、前記圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、前記支持部材は前記圧電素子の周辺部を支持し、前記押圧部材は前記圧電素子を前記支持部材の内側で環状の押圧面により押圧することを特徴とする発電部材。
【請求項3】
板状の圧電セラミックスの両主面に電極が形成された圧電素子と、該圧電素子を一方主面側から押圧する押圧部材と、前記圧電素子を他方主面側で支持する支持部材とを備えてなる発電部材であって、平面視した形状が三角形状,四角形状,六角形状または八角形状であることを特徴とする発電部材。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記支持部材より硬度が低い材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発電部材。
【請求項5】
前記圧電セラミックスは、チタン酸ジルコン酸鉛からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発電部材。
【請求項6】
前記圧電セラミックスは、ニオブ酸カリウム・ナトリウム・リチウムを主成分とし、チタン酸カルシウムおよび鉄酸ビスマスを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発電部材。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の前記発電部材が複数個面状に並べて配置されて、それぞれの前記押圧部材が板状の第1のカバー部材により保持され、それぞれの前記支持部材が板状の第2のカバー部材により保持されていることを特徴とする発電装置。
【請求項8】
前記押圧部材が前記第1のカバー部材と一体に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の発電装置。
【請求項9】
前記支持部材が前記第2のカバー部材と一体に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の発電装置。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の発電装置と、ダイオードおよびコンデンサを含む回路を介して接続された直流交流変換装置とを備えていることを特徴とする発電システム。
【請求項11】
請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の発電装置が床,階段,道路,橋,駐車場または線路の下側に配置されていることを特徴とする発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−153777(P2010−153777A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186532(P2009−186532)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構エネルギー使用合理化技術戦略的開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(592145268)ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社 (53)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)