説明

発音容器

【課題】容器の操作部を操作中であることを、簡易な構成によって音を発することによりリアルタイムで容易に認知させることのできる発音容器を提供する。
【解決手段】トリガー16を操作する際の回動移動に追随して、空気孔17から空気の出し入れを行うことにより中空内部の容積を増減させながら弾性変形する中空弾性部材18がトリガースプレーヤー付き容器10の本体部11に固定されたトリガースプレーヤー13に設けられており、且つ中空弾性部材18の空気孔17には、空気の流通によって発音する笛部材19が取り付けられている。トリガー16は、ピン結合部を介してトリガースプレーヤー13のスプレヤー本体15に回動可能に連結されている。中空弾性部材18は、トリガー16の下部における背面部と、本体部11の口首部12に固定されるキャップ部20との間に介在して着脱可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発音容器に関し、例えば箱容器や吐出容器に設けられた操作部の移動又は変形を伴なう操作の際に音を発する発音容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばウェットテッシュ等のシート材料や粉粒物を収容した合成樹脂製の箱容器においては、本体部にヒンジ結合部又はピン結合部を介して連結された開閉蓋を回動操作することにより、取出し口を開閉するタイプのものがある。また、吐出容器として、例えばトリガースプレーヤーの付いた吐出容器は、容器の本体部に一体固定される部分であるトリガースプレーヤーにヒンジ結合部又はピン結合部を介してトリガーが連結されており、このトリガーを本体部に対して回動操作することにより、吐出ノズルから内容液を吐出させる。さらに、吐出容器として、例えばポンプ装置付きの容器は、ポンプ部の上下の移動によって吐出ノズルから内容液を吐出させるようになっており、例えばスクイズ容器は、押圧変形可能な本体部自体を操作部として変形操作することにより、先端の吐出口から内容物を吐出させるようになっている。
【0003】
これらの操作部を有する容器は、その操作によって本来の機能を効果的に発揮させることが重要であることから、操作を行う際の操作部の移動や変形に追随させて、例えばある特定の音を発生させて操作中であることを認知させるといった付加的な機能をあえて組み込む必要はないものと考えられていた。
【0004】
一方、音を発する容器として、例えば飲料用の容器を傾けた時に、音声やメロディを発音させるようにしたもの(例えば、特許文献1参照)や、包装を解く時にメロディーやメッセージを発音させるようにした包装容器(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【特許文献1】特開2003−246328号公報
【特許文献2】特開平5−319437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの容器は、ビールビン等の容器を傾けたり、包装容器の蓋を開放することをきっかけとして、その後数秒〜数十秒間、容器に組み込まれたスピーカーや各種の回路からなる電子発音器によって人の声やメロディーを流すものであり、大量に生産される容器に各々設ける場合には、構造が複雑になると共にコスト高になる。また、容器の操作に追随して音を発するものではなく、操作後も音声やメロディーが引き続き流れることになるため、操作中であることをリアルタイムで認知させることは困難である。さらに、例えばバリアフリーや子供のいたずら防止の観点から、視覚によることなく容器の操作をリアルタイムで判別できるようにしておくことが望ましい。
【0006】
本発明は、容器の操作部を操作中であることを、簡易な構成によって音を発することによりリアルタイムで容易に認知させることのできる発音容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、操作部の移動又は変形に追随して空気孔から空気の出し入れを行うことにより中空内部の容積を増減させながら弾性変形する中空弾性部材が、容器の本体部(本体部に固定された部分を含む本体部全体を意味する。)に設けられており、且つ該中空弾性部材の前記空気孔には、空気の流通によって発音する笛部材が取り付けられている発音容器を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発音容器によれば、容器の操作部を操作中であることを、簡易な構成によって音を発することによりリアルタイムで容易に認知させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示す本発明の好ましい第1実施形態に係る発音容器10は、本体部11の口首部12にトリガースプレーヤー13が装着固定されたトリガースプレーヤー付き容器であって、トリガースプレーヤー13の先端ノズル14から本体部11に収容された収容液を対象物に向けて吐出する吐出容器として用いられるものである。ここで、トリガースプレーヤー13は、例えば液体洗剤等を霧状又は泡状にして吐出させるスプレヤーとして公知のものであり、スプレヤー本体15に回動可能にピン結合された操作部としてのトリガー16を、スプレヤー本体15の内部に設けたシリンダー部の付勢力に抗して、口首部12側に繰り返し引き寄せる操作を行うことにより、本体部11から吸引パイプを介して収容液をスプレヤー本体15に汲み上げると共に、汲み上げた収容液を霧状又は泡状にして先端ノズル14から吐出させる機能を備えるものである。
【0010】
そして、第1実施形態に係る発音容器(トリガースプレーヤー付き容器)10では、トリガー16を操作する際の回動移動に追随して、空気孔17から空気の出し入れを行うことにより中空内部の容積を増減させながら弾性変形する中空弾性部材18が、容器10の本体部11に固定された部分であるトリガースプレーヤー13に設けられており、且つ中空弾性部材18の空気孔17には、空気の流通によって発音する笛部材19が取り付けられている。
【0011】
本第1実施形態では、トリガー16は、本体部11の口首部12に一体固定されるトリガースプレーヤー13のスプレヤー本体15に、ピン結合部(図4の符号21参照)を介して、当該ピン結合部を回動中心として回動自在に連結されている。またトリガー16は、ピン結合部と離れた位置における、本体部11の口首部12に螺着されるトリガースプレーヤー13のキャップ部20との間隔を拡大縮小させつつ、キャップ部20側に引き寄せるようにして回動するようになっている。そして、中空弾性部材18は、ピン結合部と離れた位置であって、トリガー16の下部における背面部と、本体部11の口首部12に固定されるキャップ部20との間に介在して設けられている。さらに、本第1実施形態では、図2に示すように、中空弾性部材18は、トリガー16の背面部と、トリガースプレーヤー13のキャップ部20との間に着脱可能に取り付けられている。
【0012】
また、本第1実施形態では、中空弾性部材18は、合成樹脂成形品であって、波形円筒形状の蛇腹部18aと、円筒形状のトリガー装着部18bと、円弧形状のキャップ装着部18cとからなる。蛇腹部18aには、周面の適宜の位置に空気孔17が開口形成されており、この空気孔17から内部の空気を出し入れしつつ、蛇腹部18aを軸方向に伸縮させて、中空内部の容積を増減させながら軸方向に弾性変形するようになっている。トリガー装着部18bは、トリガー16の背面部において両側の一対の側壁リブ16a及び上下一対の位置決めリブ16bによって四方を区画された、嵌込み凹部16cに内接して装着される大きさの外周形状を備えており、中空弾性部材18の一端部をトリガー16の背面部に着脱可能に位置決め固定する。またキャップ装着部18cは、例えば180度を僅かに超える中心角で円弧状に湾曲する帯状部分を含んでおり、蛇腹部18aとは反対側の切欠き部分18dの間隔を拡幅しつつ弾性変形すると共に、内周面をトリガースプレーヤー13のキャップ部20の外周面に沿わせるように装着されて、中空弾性部材18の他端部をキャップ部20に着脱可能に位置決め固定する。
【0013】
本第1実施形態では、中空弾性部材18の蛇腹部18aに形成された空気孔17には、空気の流通によって発音する笛部材19が取り付けられている。笛部材19は、図3(a)〜(c)に示すように、例えば中空円筒形状の笛本体19aに各種の振動片19bを取り付けた公知のもので、空気が笛本体19aを通過する際の空気の流れによって振動片19bを振動させることにより、種々の音を発生するようになっている。笛部材19は、蛇腹部18aの中間部に設ける必要は必ずしもなく、蛇腹部18aの端部に設けることが好ましい。外観上からは、例えば円筒形状のトリガー装着部18bの内側において蛇腹部18aの端部に空気孔17を形成して笛部材19を取り付け、トリガー装着部18bによって笛部材19を覆い隠すようにすることが好ましい。
【0014】
そして、本第1実施形態の発音容器10によれば、本体部11に収容された収容液を吐出させるためにトリガー16を回動してキャップ部20側に引き寄せる操作を行う毎に、中空弾性部材18の蛇腹部18aが伸縮し、空気が空気孔17を通過して笛本体19aを発音させるので、トリガー16による吐出操作の操作中であることを、笛部材19を備える中空弾性部材18を設けただけの簡易な構成によって音を発することにより、リアルタイムで容易に認知させることが可能になる。また笛本体19aからの発音によって、操作中であることを認知できるので、例えばバリアフリー対応の容器として用いることが可能になると共に、子供のいたずらなどを視覚によることなく音によって察知することが可能になる。さらにまた、トリガー16の操作に伴なって音が発音されるので、浴室の清掃や窓拭き等の家事を楽しく行うことが可能になると共に、音の発音によって遊び心や驚きが付加されるので、例えば贈答用として好ましく使用することが可能になる。
【0015】
また、本第1実施形態では、中空弾性部材18として、蛇腹部18aからなるものを用いるので、蛇腹部18aが圧縮された状態から元の状態に戻ろうとする弾性力を利用して、トリガー16を押し戻すシリンダー部の付勢力を補助することが可能になり、トリガー16の繰返し操作をさらにスムーズに行えるようにすることが可能になる。
【0016】
なお、本第1実施形態では、中空弾性部材18を、トリガースプレーヤー13のトリガー16の背面部とキャップ部20との間に着脱可能に取り付けて用いたが、中空弾性部材18を着脱可能に取り付ける必要は必ずしもなく、例えば図4に示すように、トリガースプレーヤー13のスプレヤー本体15に内蔵させて、ピン結合部21と離れた位置においてトリガー16の背面部とスプレヤー本体15との間に設けることもできる。
【0017】
図5(a),(b)は、本発明の好ましい第2実施形態に係る発音容器である箱容器22を示すものである。本第2実施形態の発音容器22は、例えばウェットシートを折り畳んで層状にした状態で複数枚収容する箱容器として用いられるものであり、本体部25の上端開口を覆って固定された蓋板23の中央部分に取出し口24が開口形成され、この取出し開口24を介して収容されたウェットシートを一枚一枚本体部25から取り出すことができるようになっている。また、本体部25に固定された蓋板23には、ヒンジ結合部26を介して開閉蓋27が回動可能に連結されており、この開閉蓋27を操作部として回動操作することにより、例えば閉塞時には開口側係止凹部28に蓋側係止凸部29を係合すると共に、開放時にはヒンジ結合部26に設けた開放付勢手段によって、又は後述する中空弾性部材30の弾性力によって開閉蓋27を開く方向に付勢しつつ、取出し口24をを開閉することができるようになっている。
【0018】
また、本第2実施形態の発音容器22では、開閉蓋27は取出し開口24とヒンジ結合部26との間の中間部分と開閉蓋27との間隔を拡大縮小させつつ回動するようになっている。即ち、中空弾性部材30は、このピン結合部26と離れた取出し開口24とヒンジ結合部26との間の中間部分において、一端部30bを蓋板23に設けた収容凹部31の底部に接合する共に、他端部を接合リブ30cを介して開閉蓋27の裏面に接合することにより、操作部としての開閉蓋27と蓋板23との間に介在して設けられている。
【0019】
さらに、本第2実施形態では、中空弾性部材30は、上記第1実施形態の中空弾性部材18と同様の蛇腹部30aを備えており、蛇腹部30aを伸縮させつつ空気孔32を介して内部の空気を出し入れできるようになっている。また空気孔32に取り付けた上記第1実施形態のものと同様の構成の笛部材19を、空気の流通によって発音させることができるようになっている。
【0020】
そして、本第2実施形態の発音容器(箱容器)22によっても、開閉蓋27の開閉操作に伴なって、中空内部の容積を増減させながら中空弾性部材30を弾性変形させて笛部材19を発音させることにより、上記第1実施形態の発音容器10と同様の作用効果を奏することになる。
【0021】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、発音容器は、トリガースプレーヤー付き容器や箱容器である必要は必ずしも無く、ポンプ部を本体部に対して上下に移動操作して収容物を吐出させるポンプ装置付き容器や、押圧変形可能な本体部自体を操作部として変形操作により先端の吐出口から内容物を吐出させるスクイズ容器等の吐出容器に中空弾性部材を設けて、本発明の発音容器とすることもできる。また、吐出容器以外のその他の容器の操作部に笛部材を取り付けた中空弾性部材を設けて、本発明の発音容器とすることもできる。さらに、空気孔部から空気の出し入れを行うことにより中空内部の容積を増減させながら弾性変形する中空弾性部材は、蛇腹部を含む中空弾性部材である必要は必ずしも無く、例えばゴムや合成樹脂からなる弾性変形可能な中空ボール形状やその他の種々の中空形状のものを、中空弾性部材として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい第1実施形態に係る発音容器であるトリガースプレーヤー付き容器の要部を示す側面図である。
【図2】中空弾性部材を着脱可能に取り付ける構成を説明する斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は笛部材の形態を例示する略示断面図及び略示斜視図である。
【図4】本発明の好ましい第1実施形態に係る発音容器であるトリガースプレーヤー付き容器の他の形態を例示する要部断面図である。
【図5】(a)は本発明の好ましい第2実施形態に係る発音容器である箱容器を示す斜視図、(b)は(a)の箱容器に用いた中空弾性部材の正面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 トリガースプレーヤー付き容器(発音容器)
11 本体部
12 口首部
13 トリガースプレーヤー
14 先端ノズル
15 スプレヤー本体
16 トリガー(操作部)
16a 側壁リブ
16b 位置決めリブ
16c 嵌込み凹部
17 空気孔
18 中空弾性部材
18a 蛇腹部
18b トリガー装着部
18c キャップ装着部
19 笛部材
19a 笛本体
19b 振動片
20 キャップ部
21 ピン結合部
22 箱容器(発音容器)
23 蓋板
24 取出し口
25 本体部
26 ヒンジ結合部
27 開閉蓋(操作部)
28 開口側係止凹部
29 蓋側係止凸部
30 中空弾性部材
30a 蛇腹部
30c 接合リブ
31 収容凹部
32 空気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部の移動又は変形に追随して空気孔から空気の出し入れを行うことにより中空内部の容積を増減させながら弾性変形する中空弾性部材が、容器の本体部に設けられており、且つ該中空弾性部材の前記空気孔には、空気の流通によって発音する笛部材が取り付けられている発音容器。
【請求項2】
前記操作部は、前記本体部との結合部を回動中心として回動自在に連結され、
前記操作部を回動させることにより前記結合部と離れた位置における前記操作部と前記本体部との間隔を拡大縮小させ、前記中空弾性部材は、前記結合部と離れた位置において前記本体部と前記操作部との間に介在して設けられている請求項1記載の発音容器。
【請求項3】
前記操作部は、箱容器の本体部にヒンジ結合により連結され、回動操作することにより取出し口を開閉する開閉蓋である請求項2記載の発音容器。
【請求項4】
前記操作部は、吐出容器の本体部に収容された収容物を吐出させる吐出操作部である請求項1又は2に記載の発音容器。
【請求項5】
前記吐出容器はトリガースプレーヤー付き容器であり、前記操作部はトリガーである請求項4記載の発音容器。
【請求項6】
前記中空弾性部材は、前記トリガーの背面と、前記本体部の口首部に固定されるキャップとの間に介在して着脱可能に取り付けられる請求項5に記載の発音容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−131314(P2007−131314A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325054(P2005−325054)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】