説明

発音構造体および発電構造体

【課題】材料コストの低減および製造工程の短縮化を図ることができる発音構造体および発電構造体を提供する。
【解決手段】本発明の一の態様によれば、導電性高分子膜3と、音声信号が付与される第1電極4および第2の電極5とを備え、第1の電極4と第2の電極5とが導電性高分子膜3の同一面に接触するように設置され、かつ第1の電極4と第2の電極5との少なくとも一方が導電性高分子膜3に接触しながら導電性高分子膜3に対し相対的に移動可能であることを特徴とする、発音構造体1が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子膜を用いた発音構造体および発電構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性高分子に関する研究が進み、各分野へ応用されつつある。例えば、導電性高分子は、その高導電性によりアルミニウム電解コンデンサやタンタル電解コンデンサなどの固体電解質として使用されている(例えば特許文献1参照)。また、導電性高分子は、光の透過性、高導電性および成膜後もフレキシブルであることから透明導電膜コーティング剤としてプラスチックフィルム上に塗布され、帯電防止フィルムまたタッチパネル用フィルムとして実用化されている(例えば特許文献2参照)。さらに、有機ELディスプレイの正孔注入層としても研究されている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
これらの導電性高分子は、ピロール、アニリン、チオフェンおよびそれらの誘導体などをモノマーとして用いて、化学酸化重合によって製造することができる(例えば特許文献4参照)。
【0004】
また、最近では、導電性高分子はフィルムスピーカの電極材料としても使用されている(例えば、特許文献5参照)。このようなフィルムスピーカは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電材料からなるフィルムの両面に導電性高分子膜を形成した構成となっている。
【0005】
しかしながら、圧電フィルムとしてPVDFフィルムを用いた場合、PVDFフィルムは、フッ素樹脂を誘電分極し、一軸延伸等を施すという複雑な工程で製造されるので、材料コストが上昇してしまう。
【0006】
また、導電性高分子を圧電フィルムに密着させるために圧電フィルムの両面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面改質処理を行う必要があり、工程が複雑化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3040113号公報
【特許文献2】特許第2916098号公報
【特許文献3】特表平10−511718号公報
【特許文献4】特許第2721700号公報
【特許文献5】特開平7−46697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、材料コストの低減および製造工程の短縮化を図ることができる発音構造体および発電構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様によれば、導電性高分子膜と、音声信号が付与される第1および第2の電極とを備え、前記第1の電極と前記第2の電極とが前記導電性高分子膜の同一面に接触するように設置され、かつ前記第1の電極と前記第2の電極との少なくとも一方が前記導電性高分子膜に接触しながら前記導電性高分子膜に対し相対的に移動可能であることを特徴とする、発音構造体が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、導電性高分子膜と、第1および第2の電極とを備え、前記第1の電極と前記第2の電極とが前記導電性高分子膜の同一面に接触するように設置され、かつ前記第1の電極と前記第2の電極との少なくとも一方が前記導電性高分子膜に接触しながら前記導電性高分子膜に対し相対的に移動可能であることを特徴とする、発電構造体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一の態様による発音構造体および他の態様による発電構造体によれば、安価な材料を用いて製造することができるとともに複雑な工程を必要とせずに製造することができるので、材料コストの低減および製造工程の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係る発音構造体の概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る他の発音構造体の概略構成図である。
【図3】第2の実施の形態に係る発電構造体の概略構成図である。
【図4】第2の実施の形態に係る他の発電構造体の概略構成図である。
【図5】実施例2で使用した発音実験装置の概略構成図である。
【図6】実施例2に係る発音構造体から発せられた音の波形図である。
【図7】実施例2に係る発音構造体から発せられた音の波形図である。
【図8】実施例2に係る発音構造体から発せられた音の波形図である。
【図9】実施例2に係る発音構造体から発せられた音の波形図である。
【図10】実施例3で使用した発電実験装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態に係る発音構造体の概略構成図であり、図2は本実施の形態に係る他の発音構造体の概略構成図である。
【0014】
図1に示されるように、本実施の形態における発音構造体1は、基材2、基材2の片面に形成された導電性高分子膜3、音声信号が付与される第1の電極4および第2の電極5等から構成されている。なお、本実施の形態では、基材2の片面に導電性高分子膜3を形成しているが、図2に示されるように基材2を設けなくともよい。
【0015】
基材2は、用途に応じて適宜選択することができる。基材2としては、例えば、ガラス、石英、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレン等)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリレート、メタクリレート、紙、金属(例えばアルミニウムおよび銅等)、ゴム(天然ゴム、クロロプレンゴム(CRゴム)、ニトリルゴム(NBR)ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBRゴム)等)等が挙げられる。
【0016】
導電性高分子膜3を構成する導電性高分子はπ電子が移動して導電性を示す。このような導電性高分子は多数報告されている。導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリビチオフェン、ポリイソチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリイソチアナフテン、ポリイソナフトチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチアジル、ポリエチレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリドデシルチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等やこれらの誘導体が挙げられる。
【0017】
ピロールのモノマーとしては、例えば、3−アルキルピロール(例えば3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−ドデシルピロール等)、3,4−ジアルキルピロール(例えば3,4−ジメチルピロール、3−メチル−4−ドデシルピロール等)、N−アルキルピロール(例えばN−メチルピロール、N−ドデシルピロール等)、N−アルキル−3−アルキルピロール(例えばN−メチル−3−メチルピロール、N−エチル−3−ドデシルピロール等)、3−カルボキシピロール等が挙げられる。これらのうち、ポリチオフェン類、ポリアニリン類が好ましく、ポリチオフェン類がより好ましく、電気伝導度、空気中での安定性及び耐熱性に優れたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が最も好ましい。
【0018】
導電性高分子を用いる際により高い電気伝導度を発現する目的で、ドーパントと呼ばれるドーピング剤を併用することができる。このドーパントとしては、公知のドーパントを用いることができ、導電性高分子の種類に応じ、例えば、ハロゲン類(例えば臭素、ヨウ素、塩素等)、ルイス酸(例えばBF3、PF5等)、プロトン酸(例えばHNO3、H2SO4等)、遷移金属ハライド(例えばFeCl3、MoCl5等)、アルカリ金属(例えばLi、Na等)、有機物質等を使用することができる。有機物質としては、例えばアミノ酸、核酸、界面活性剤、色素、アルキルアンモニウムイオン、クロラニル、テトラシアノエチレン(TCNE)、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等が挙げられる。また、その他、ドーパントして、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、六フッ化ヒ酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、六フッ化ケイ酸イオン、燐酸イオン、フェニル燐酸イオン、六フッ化燐酸イオンなどの燐酸系イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオンなどのアルキルベンゼンスルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオンなどのアルキルスルホン酸イオン、ポリアクリル酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)イオンなどの高分子イオンのうち、少なくとも一種のイオンを使用することもできる。これらのイオンのなかでも、高い導電性を容易に調整できることから、ポリスチレンスルホン酸イオンが好ましい。ドーパントの添加量は、導電性に効果を与える量であれば特に制限されないが、通常、導電性高分子100質量部に対し、3〜50質量部、好ましくは10〜30質量部の範囲である。
【0019】
導電性高分子としてポリチオフェン類を用いる場合、ドーパントとしてはポリスチレンスルホン酸を用いることが好ましい。また、導電性高分子として、導電性高分子自体にドーピング効果を持つ自己ドープ型導電性高分子を使用することも可能である。
【0020】
ドーパントを用いた導電性高分子としては、特にチオフェン系高分子のポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリ4−スチレンサルフォネート(PSS)をドープしたPEDOT/PSS(H.C.Starck社製、Clevios HC V4やPH 500(登録商標))が好ましい。
【0021】
導電性高分子膜3は、導電性高分子の他、界面活性剤、溶剤等を含有する溶液を用いて、基材2上に形成される。このような溶液としては、例えば、界面活性剤とPEDOT単体+IPAが挙げられる。これは、Clevios P(登録商標)42.92重量%、N−メチル−2ピロリドン2.58重量%、Silquest A 187(登録商標)0.86重量%、イソプロピルアルコール53.34重量%、Dynol 604(登録商標)0.30重量%を混合したものである。なお、本実施の形態では、界面活性剤と溶剤を併用しているが、界面活性剤および溶剤を単独で使用することも可能である。
【0022】
界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、これらの2種以上の混合物から選択された少なくとも1つの界面活性剤を用いることができる。
【0023】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第4級アルキルアンモニウム塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム等が挙げられる。
【0024】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸またはそのエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アルキルベンゼンスルホン酸またはその塩、アルキルナフタレンスルホン酸またはその塩、アルキルスルホコハク酸またはその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸またはその塩、脂肪酸またはその塩、ナフタレンスルホン酸またはそのホルマリン縮合物等が挙げられる。なかでも、化学的安定性から、アルキルベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0025】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アミンオキサイド、加水分解コラ−ゲン等が挙げられる。
【0026】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、あるいはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0027】
溶剤としては、アルコール等が挙げられる。アルコールは、特に限定されるものではなく、公知の1価アルコールおよび多価アルコールを用いることができる。アルコールは、単独であるいはこれらの2種以上の混合物として用いることができる。
【0028】
1価アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの分枝状あるいは直鎖状アルコール、環状アルコール、ポリマー状アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0029】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビト−ルなどの鎖状多価アルコール、グルコース、スクロール等の環状多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等のポリマー状多価アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0030】
これらのアルコールの中でも、特に炭素数2以上の1価アルコールもしくは、多価アルコールであることが好ましく、さらに、1価のアルコールとしては、炭素数2〜5のものが望ましく、多価アルコールとしては、価数が2〜3の範囲のものが望ましい。その具体例としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましく、なかでも、エチレングリコールは、低濃度でも、導電性高分子の3次元的なネットワークを形成させる効果があり、また揮発し難いので、特に好ましい。また、ポリエチレングリコールの分子量は特に限定されないが、分子量400のものより分子量1000のものの方が、添加量が少なくても3次元的なネットワークを形成する能力が高いので好ましい。なお、ポリエチレングリコールは、モノマーの価数として2価にあたり、ポリエチレングリコール自体は、さらに多数になるが効果は発現するものである。
【0031】
界面活性剤と溶剤の比率は、特に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤および/または溶剤は、混合溶液中の組成で、導電性高分子に対し質量比で、60:1〜1:60であることが好ましい。混合溶液の組成をこの範囲とすることで、抵抗を下げるため他の導電材などを加えたり、圧電類似性能を飛躍的に向上させたりすることができる。
【0032】
第1の電極4および第2の電極5は、導電性高分子膜3の同一面に接触するように設置されている。本実施の形態では、導電性高分子膜3は、基材2の片面に形成されているので、第1の電極4および第2の電極5は、それぞれ導電性高分子膜3の基材2側の面とは反対側の面3aに接触するように設置されている。
【0033】
第1の電極4および第2の電極5の少なくとも一方は、導電性高分子膜3に接触しながら導電性高分子膜3に対し相対的に移動可能となっている。図1および図2においては、導電性高分子膜3および第1の電極4が固定されており、第2の電極5のみが導電性高分子膜3に対し移動可能となっている構成が示されているが、これに限定されない。すなわち、第1の電極4のみ、第2の電極5のみ、または第1の電極4と第2の電極5の両方が移動可能であってよい。また、第1の電極4および第2の電極5の少なくとも一方が、導電性高分子膜3に対し相対的に移動可能となっていればよいので、導電性高分子膜3が移動可能となっていてもよい。
【0034】
以下、本実施の形態に係る発音構造体1による発音について説明する。第1の電極4と第2の電極5が導電性高分子膜3の同一面に接触している状態で、第1の電極4および第2の電極5に音声信号を付与し、かつ第1の電極4および第2の電極5の少なくとも一方を導電性高分子膜3に対し相対的に移動させる。これにより、導電性高分子膜3から音声信号に基づく音を発生させることができる。
【0035】
本実施の形態によれば、PVDFのような高価な材料を使用せず、また基材2の種類、材質によらずに、発音構造体を作製することができるので、材料コストの低減を図ることができる。さらに、導電性高分子膜3を基材2の片面に形成するのみでよく、また導電性高分子含有溶液を塗布するのみで形成することができるので、製造工程の短縮化を図ることができる。
【0036】
(第2の実施の形態)
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態においては、発電構造体について説明する。なお、第1の実施の形態と重複する内容については、省略するものとする。図3は本実施の形態に係る発電構造体の概略構成図であり、図4は本実施の形態に係る他の発電構造体の概略構成図である。
【0037】
図3に示されるように、本実施の形態における発電構造体11は、基材12、基材12の片面に形成された導電性高分子膜13、第1の電極14および第2の電極15等から構成されている。なお、本実施の形態では、基材12の片面に導電性高分子膜13を形成しているが、図4に示されるように基材12を設けなくともよい。
【0038】
基材12は基材2と同様のものであり、導電性高分子膜13は導電性高分子膜3と同様のものである。第1の電極14および第2の電極15は、第1の電極4および第2の電極5と同様に、導電性高分子膜13の同一面に接触するように設置されている。また、第1の電極14および第2の電極15の少なくとも一方は、導電性高分子膜13に接触しながら導電性高分子膜13に対して相対的に移動可能となっているが、音声信号は付与されない。
【0039】
以下、本実施の形態に係る発電構造体11による発電について説明する。第1の電極14と第2の電極15が導電性高分子膜13の同一面に接触している状態で、第1の電極14および第2の電極15の少なくとも一方を導電性高分子膜13に対し相対的に移動させる。これにより、導電性高分子膜13から発電される。
【0040】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、材料コストの低減および製造工程の短縮化を図ることができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例では、基材上に導電性高分子膜を形成するとともに導電性高分子膜の膜厚および表面抵抗値を測定した。
【0042】
導電性高分子膜の形成
まず、導電性高分子としてのPEDOT/PSS(H.C.Starck社製 Clevios P(登録商標) 固形分1.3%、残りは溶媒で98.7%の水)および溶媒としてのイソプロピルアルコール(IPA)等を含有する導電性の異なるコーティング溶液を複数用意した。PEDOT/PSSとしては、下記の表1に挙げられているものをそれぞれ使用した。PEDOT/PSSの1つであるPEDOT単体+IPAは、Clevios P(登録商標)42.92重量%、N−メチル−2ピロリドン2.58重量%、Silquest A 187(登録商標)0.86重量%、イソプロピルアルコール53.34重量%、Dynol 604(登録商標)0.30重量%から構成されていた。Dynol 604(登録商標)は非イオン性界面活性剤である。
【0043】
次いで、アプリケ―ターで基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の片面に各コーティング溶液を塗布し、その後ドライヤーで3分間乾燥し、PEDOT/PSSからなる導電性高分子膜を形成した。
【0044】
膜厚および表面抵抗値の測定
このような導電性高分子膜を乾燥させる前に、導電性高分子膜の膜厚をウエット状態で測定したところ、表1に示されるように膜厚は1〜24μmであった。また、表面抵抗値はシルテック社製表面抵抗計の測定で10〜10Ω/sqであった。
【表1】

【0045】
(実施例2)
本実施例では、発音実験装置を用いて発音構造体において発音現象が生じるか否か調べた。図5は本実施例に係る発音実験装置の概略構成図である。図5に示されるように、発音実験装置は、オシレータ21(発信回路)、アンプ22(増幅回路)、オシロスコープ23等から構成されている。この発音実験装置においては、オシレータ21から発せられた音声信号は、アンプ22により増幅されて、発音構造体1に入力される。そして、発音構造体1から発せられた音の波形がオシロスコープ23に表示され、記録される。
【0046】
発音構造体1は、第1の実施の形態と同様のものであるが、基材2が異なる2種類の発音構造体1を用意した。一方の発音構造体1は、基材2にポリエチレンテレフタレートフィルムを使用したものであり、他方の発音構造体1は、基材2に極性のないポリエチレンフィルムを使用したものであった。また、導電性高分子膜3は、PEDOT/PSSを用いて実施例1と同様の方法により基材2上に形成した。
【0047】
このような発音構造体1と発音実験装置を使用して、第1の電極4および第2の電極5を導電性高分子膜3に接触させた状態で、低電圧の60V(p−p)および高電圧の200V(p−p)を第1の電極4および第2の電極5を印加し、かつ第2の電極5を移動させたときに発音構造体1から音が発せられるか実験した。なお、発音構造体1から発せられる音の波形(発音時波形)と比較するために発音構造体1に入力された音の波形(入力時波形)もオシロスコープに表示した。
【0048】
図6は本実施例に係る基材2としてポリエチレンテレフタレートを使用し、印加電圧が60V(p−p)である場合の発音構造体1から発せられた音の波形図であり、図7は本実施例に係る基材2としてポリエチレンテレフタレートを使用し、印加電圧が200V(p−p)である場合の発音構造体1から発せられた音の波形図であり、図8は本実施例に係る基材2としてポリエチレンフィルムを使用し、印加電圧が60V(p−p)である場合の発音構造体1から発せられた音の波形図であり、図9は本実施例に係る基材2としてポリエチレンフィルムを使用し、印加電圧が200V(p−p)である場合の発音構造体1から発せられた音の波形図である。
【0049】
図6〜9に示されるように、発音構造体1からはいずれも正常な正弦波が得られた。この結果から、発音構造体1において発音現象が生じることが確認された。なお、発音構造体1からの距離が300〜800mmで、音圧レベルは普通の人間が聞き分けることのできるレベルであった。
【0050】
(実施例3)
本実施例では、電圧測定器を用いて発電構造体において発電現象が生じるか否かを調べた。図10は本実施例に係る発電実験装置の概略構成図である。図10に示されるように、発電実験装置は、電圧測定器(テスタ)25等から構成されている。
【0051】
発電構造体11は、上記第2の実施の形態で説明したものと同様のものを使用した。ここで、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を基材12として使用した。また、導電性高分子膜13は、PEDOT/PSSを用いて実施例1と同様の方法によりポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成した。
【0052】
この様な発電構造体11と発電実験装置を使用して、第1の電極14および第2の電極15を導電性高分子膜13に接触させた状態で、第1の電極14を固定し、第2の電極15を移動させたときの発電構造体1から生じる電圧を電圧測定器により測定した。
【0053】
以下、表2に基づいて測定結果について述べる。
【表2】

表2からいずれの試料においても、電圧が生じることが確認された。この結果から発電構造体において発電現象が生じることが確認された。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…発音構造体、2…基材、3…導電性高分子膜、4…第1の電極、5…第2の電極、11…発電構造体、12…基材、13…導電性高分子膜、14…第1の電極、15…第2の電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子膜と、
音声信号が付与される第1および第2の電極とを備え、
前記第1の電極と前記第2の電極とが前記導電性高分子膜の同一面に接触するように設置され、かつ前記第1の電極と前記第2の電極との少なくとも一方が前記導電性高分子膜に接触しながら前記導電性高分子膜に対し相対的に移動可能であることを特徴とする、発音構造体。
【請求項2】
導電性高分子膜と、
第1および第2の電極とを備え、
前記第1の電極と前記第2の電極とが前記導電性高分子膜の同一面に接触するように設置され、かつ前記第1の電極と前記第2の電極との少なくとも一方が前記導電性高分子膜に接触しながら前記導電性高分子膜に対し相対的に移動可能であることを特徴とする、発電構造体。
【請求項3】
基材をさらに備え、前記導電性高分子膜が前記基材の片面に形成されている、請求項1に記載の発音構造体または請求項2に記載の発電構造体。
【請求項4】
前記導電性高分子膜が、導電性高分子、界面活性剤および溶剤を含む溶液を用いて形成される、請求項1に記載の発音構造体または請求項2に記載の発電構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−252405(P2010−252405A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95779(P2009−95779)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【出願人】(591028577)純正化学株式会社 (3)
【出願人】(509103484)有限会社シルテック (1)
【Fターム(参考)】