説明

白煙防止方法、及びこれを実現する装置

【課題】白煙を防止しつつも、処理設備の熱効率を高める。
【解決手段】大気を吸い込んで送り出す空気供給ファン51と、湿式洗煙塔20で用いられた洗浄循環水WWが流れる熱交換用循環水ライン53と、熱交換用処理水ライン53からの洗浄循環水WWと空気供給ファン51から送り出された大気Aとの間で熱交換して、大気Aを混合用空気AMとして加熱する混合用空気加熱器52と、湿式洗煙塔20で湿式処理された燃焼排気ガスEp中に混合用空気AMを供給する混合用空気ライン57と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式洗煙塔で湿式処理された排気ガスの白煙防止方法、及びこれを実現する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥焼却処理設備では、汚泥を焼却炉で焼却し、そこで発生した排気ガスを湿式洗煙塔等のガス浄化処理塔で浄化した後、煙突から大気に放出している。ところで、この排気ガスは、水分を多量に含むため、このまま大気に放出すると白煙が生じることがある。このため、この排気ガスが有害ガスとして誤認されることがある。
【0003】
そこで、以下の特許文献1では、排気ガスの白煙防止方法を提案している。この白煙防止方法では、汚泥を溶融処理する溶融炉からの排気ガスを処理塔で浄化してから煙突に送る一方で、溶融炉からの排気ガスで大気を加熱し、これを煙突に送って、煙突内で排気ガスと加熱された大気とを混合することで、煙突から放出されるガスの白煙化を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−159139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炉を含む処理設備では、熱効率を高めて、処理に必要なエネルギーをできるかぎり少なくすることが望まれている。しかしながら、上記特許文献1に記載の白煙防止方法では、炉から排気された高温の排気ガスと大気との間で熱交換し、この熱交換で加熱された大気を白煙防止に利用しており、炉を含む処理設備の熱効率を低下させる、という問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、処理設備の熱効率を高めることができる白煙防止方法、これを備えている装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するための発明に係る白煙防止装置は、
湿式洗煙塔で湿式処理された排気ガスの白煙防止装置において、大気を吸い込んで送り出す空気供給機と、前記湿式洗煙塔で用いられた処理水が流れる熱交換用処理水ラインと、前記熱交換用処理水ラインからの前記処理水と前記空気供給機から送り出された前記大気との間で熱交換して、該大気を混合用空気として加熱する熱交換器と、前記排気ガス中に前記混合用空気を供給する混合用空気ラインと、を備えていることを特徴とする。
【0008】
当該白煙防止装置では、余剰熱として扱われていた比較的低温の熱源である処理水の熱を白煙防止用に利用するので、湿式洗煙塔で処理される前の排気ガスを高温の熱源として有効利用することができる。
【0009】
ここで、冬場の大気温度が低いとき、白煙発生の可能性が高まり、白煙の非発生条件も厳しくなる。しかも、湿式洗煙塔で処理に用いられた処理水は、非発生条件が厳しいときでも、比較的低温である。このため、従来においては、湿式洗煙塔で処理に用いられた処理水を白煙防止用の熱源として利用することがためらわれていたと考えられる。
【0010】
しかしながら、発明者は、冬場の大気温度が低いとき、前述したように、白煙発生の可能性が高まり、白煙の非発生条件が厳しくなるものの、このときの大気は絶対湿度が低いため、湿度の面から混合用空気として好適であり、この大気をあまり高い温度に加熱しなくても、白煙発生を防止できる、ということに気付いた。そこで、発明者は、比較的低温で従来は十分に活用されていなかった処理水の熱を白煙防止用に利用することにした。
【0011】
ここで、前記白煙防止装置において、前記熱交換用処理水ラインは、前記湿式洗煙塔の内外で循環する洗浄循環水の少なくとも一部を前記処理水として、前記熱交換器に導き、該熱交換器で熱交換された該洗浄循環水を前記湿式洗煙塔に戻すための熱交換用循環水ラインであってもよい。
【0012】
洗浄循環水は、ほぼ、湿式洗煙塔内における飽和蒸気温度になり、ほぼ一定である。このため、この洗浄循環水の温度管理が実質的に不要で、大気との熱交換用の熱源として利用し易い。よって、当該白煙防止装置では、洗浄循環水との熱交換で得られる混合用空気の温度制御を容易に行うことができる。
【0013】
また、前記白煙防止装置において、前記大気中に放出される前記排気ガスを含む放出ガスの温度及び絶対湿度を検知するガス状態検知器と、前記大気の温度及び絶対湿度を検知する大気状態検知器と、前記空気供給機を駆動制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、温度と絶対湿度とをパラメータとした飽和蒸気圧特性と、前記大気状態検知器で検知された温度及び絶対湿度とに基づいて、前記放出ガスを放出した際に白煙が発生すると判断すると、前記空気供給機に駆動を指示する白煙防止制御部を有してもよい。この場合、前記白煙防止制御部は、前記飽和蒸気圧特性を用いて、前記大気状態検知器で検知された温度及び絶対湿度の前記大気中に、前記放出ガスを放出した際に白煙が発生しない非発生条件を定める非発生条件設定部と、前記ガス状態検知器で検知された温度及び絶対温度が前記非発生条件を満たすか否かを判断する白煙発生判断部と、前記白煙発生判断部により前記非発生条件を満たさず白煙が発生すると判断されると、前記空気供給機に駆動を指示する駆動指示部と、を有してもよい。
【0014】
当該発煙防止装置では、白煙発生のおそれがない場合には空気供給機を駆動せず、白煙発生のおそれがある場合に空気供給機を駆動することになるため、空気供給機の駆動用エネルギーの省エネルギー化を図ることできる。
【0015】
また、前記白煙防止装置において、前記混合用空気の流量を調節する流量調節器を備え、前記制御装置は、前記白煙発生判断部により前記非発生条件を満たさず白煙が発生すると判断されると、前記流量調節器に駆動を指示する駆動指示部を有してもよい。
【0016】
当該白煙防止装置では、確実に白煙を防止することができる混合用空気を確保することができる。
【0017】
また、前記白煙防止装置において、前記混合用空気ライン中の前記混合用空気の温度を検知する混合用空気状態検知器と、前記混合用空気状態検知器で検知される前記混合用空気の温度が予め定めた設定温度になるよう、前記熱交換用処理水ラインを流れる前記処理水の流量を調節する熱交換用処理水調節器と、を備えてもよい。
【0018】
当該白煙防止装置では、混合用空気の温度を固定化したことで、白煙防止できる状態の混合用空気を比較的容易に得ることができる。
【0019】
また、前記問題点を解決するための発明に係る燃焼処理設備は、
前記白煙防止装置と、処理対象物を加熱又は燃焼処理する処理炉と、前記処理炉からの排気ガスを湿式で浄化する前記湿式洗煙塔と、を備えていることを特徴とする。
【0020】
当該燃焼処理設備は、以上で説明した白煙防止装置を備えているので、余剰熱として扱われていた比較的低温の熱源である処理水の熱を白煙防止用に利用するので、湿式洗煙塔で処理される前の排気ガスを高温の熱源として有効利用することができる。
【0021】
ここで、前記燃焼処理設備において、前記処理炉として、処理対象物を酸素欠乏雰囲気で加熱して炭化させる炭化炉を備え、炭化処理設備を成してもよい。
【0022】
当該燃焼処理設備、つまり炭化処理設備では、処理対象物を完全燃焼させずに、不完全燃焼させて炭化物を得ているため、この処理設備での発生熱量が処理対象物を完全燃焼させる処理設備よりも小さい。よって、このような炭化処理設備で、湿式洗煙塔で処理される前の排気ガスを高温の熱源として有効利用できる意義は大きい。
【0023】
また、前記燃焼処理設備において、前記湿式洗煙塔に送られる前の前記処理炉からの前記排気ガスと大気とを熱交換して、該大気を加熱し燃焼用空気とする熱交換器を備えていてもよい。
【0024】
当該燃焼処理装置では、湿式洗煙塔に送られる前の処理炉からの高温の排気ガスの熱を燃焼用空気の予熱に有効利用することができる。
【0025】
また、前記問題点を解決するための発明に係る白煙防止方法は、
湿式洗煙塔で湿式処理された排気ガスの白煙防止方法において、前記湿式洗煙塔で用いられた処理水と大気との間で熱交換して、該大気を混合用空気として加熱する熱交換工程と、前記湿式洗煙塔から排気された前記排気ガス中に前記混合用空気を供給する混合工程と、を実行することを特徴とする。
【0026】
当該白煙防止方法では、余剰熱として扱われていた比較的低温の熱源である処理水の熱を白煙防止用に利用するので、湿式洗煙塔で処理される前の排気ガスを高温の熱源として有効利用することができる。
【0027】
ここで、前記白煙防止方法において、前記処理対象物を炭化させる炭化炉と、該炭化炉からの排気ガスを湿式で浄化する前記湿式洗煙塔と、を備えている炭化処理設備で、前記熱交換工程と前記混合工程とを実行してもよい。
【0028】
前述したように、炭化処理設備は、処理対象物を完全燃焼させる処理設備よりも発熱量が小さい。よって、このような炭化処理設備で、湿式洗煙塔で処理される前の排気ガスを高温の熱源として有効利用できる意義は大きい。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、余剰熱として扱われていた比較的低温の熱源である処理水の熱を白煙防止用に利用するので、湿式洗煙塔で処理される前の排気ガスを高温の熱源として有効利用することができる。
【0030】
よって、本発明によれば、処理設備の熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る第一実施形態における燃焼処理設備の系統図である。
【図2】本発明に係る第一実施形態における白煙防止装置の系統図である。
【図3】本発明に係る第一実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態における非発生条件及び白熱非発生状態の定め方を示す説明図である。
【図5】本発明に係る第二実施形態における白煙防止装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る燃焼処理設備の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0033】
「第一実施形態」
まず、本発明に係る燃焼処理設備の第一実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0034】
本実施形態の燃焼処理設備は、図1に示すように、下水汚泥の炭化処理設備で、下水汚泥を脱水する脱水機11と、脱水された汚泥に熱風を直接接触させてこの汚泥を乾燥させる乾燥炉12と、乾燥した汚泥を炭化処理する外熱式ロータリーキルン型の炭化炉13と、炭化炉13で汚泥を炭化させる過程で発生した熱分解ガス中から炭化物を分離除去するサイクロン14と、乾燥炉12内に送る高温の燃焼排気ガスEaを発生する第一燃焼炉15と、大気を燃焼用空気として第一燃焼炉15に送り込む第一送風ファン16と、炭化炉13に送る燃焼排気ガスEbを発生する第二燃焼炉17と、大気を燃焼用空気として第二燃焼炉17に送り込む第二送風ファン18と、第二燃焼炉17から炭化炉13を経てきた燃焼排気ガスEbで第二送風ファン18が吸い込んだ大気を加熱する空気予熱器(熱交換器)19と、空気予熱器19からの燃焼排気ガスEbを湿式で浄化する湿式洗煙塔20と、湿式洗煙塔20で浄化された燃焼排気ガスEpを排気する煙突30と、この煙突30に湿式洗煙塔20で浄化された燃焼排気ガスEpを送る排ガスファン32と、煙突30から排気される燃焼排気ガスEpの白煙化を防ぐ白煙防止装置50と、を備えている。
【0035】
炭化炉13は、前述したように、外熱式ロータリーキルン型で、乾燥炉12からの乾燥汚泥が送り込まれる内筒13bと、この内筒13bと同心で且つ内筒13bの外周側に配置されている外筒13aと、を有している。内筒13bは、外筒13aと一体回転して、内容物を攪拌する。外筒13a内には、第二燃焼炉17からの燃焼排気ガスEbが送り込まれる。
【0036】
第一燃焼炉15には、第一送風ファン16からの燃焼用空気の他に、乾燥炉12から排気された燃焼排気ガスEa、サイクロン14で炭化物Cが分離除去された熱分解ガスD及び助燃料が送り込まれ、熱分解ガスD中の未燃分及び助燃料が燃焼する。この燃焼で形成された燃焼排気ガスEaは、前述したように、乾燥炉12内に熱風として送り込まれ、脱水機11で脱水された汚泥を乾燥させる。
【0037】
第二燃焼炉17には、空気予熱器19で加熱された第二送風ファン18からの燃焼用空気の他に、炭化炉13から排気された燃焼排気ガスEb及び助燃料が送り込まれ、助燃料が燃焼する。助燃料の燃焼で発生した燃焼排気ガスEbは、前述したように、炭化炉13の外筒13a内に送り込まれ、炭化炉13の内筒13b内の乾燥汚泥を炭化させる。
【0038】
炭化炉13の外筒13aには、炭化炉13の内筒13b内の乾燥汚泥を加熱した燃焼排気ガスEbが通る排ガスライン28が接続されている。この排ガスライン28は、空気予熱器19を介して、湿式洗煙塔20に接続されている。この排ガスライン28中の燃焼排気ガスEbは、前述したように、空気予熱器19で、第二送風ファン18が吸い込んだ大気を加熱した後、湿式洗煙塔20に送られて浄化される。この排ガスライン28は、空気予熱器19の手前で分岐し、排ガス戻しライン28bとして、第二燃焼炉17に接続されている。
【0039】
なお、ここでは、炭化炉13として、外熱式ロータリーキルンを用いているが、この代わりに、内熱式ロータリーキルンや、外熱式スクリューコンベアー等を用いてもよい。また、ここでは、第一燃焼炉15に供給する大気を予熱していないが、乾燥炉12又は炭化炉13からの燃焼排気ガスと熱交換して、この大気を加熱してから、第一燃焼炉15に燃焼用空気として供給するようにしてもよい。また、乾燥炉12についても、ここでは熱風乾燥炉を用いているが、この代わりに、間接加熱式蒸気乾燥機や気流乾燥機等を用いてもよい。すなわち、本発明において、炭化炉13における炭化処理工程以前の工程を実行する設備構成は、以上の実施形態に限定されるものではない。
【0040】
湿式洗煙塔20は、図2に示すように、円筒状の塔21と、塔21内の空間を上下に仕切る仕切板22と、塔21内の下部の空間である浄化処理空間26内に洗浄循環水WWを噴霧する循環水スプレー24aが取り付けられている循環水スプレーヘッダ24と、塔21内の上部の空間である減温・減湿空間27内に冷却水CWを噴霧する冷却水スプレー25aが取り付けられている冷却水スプレーヘッダ25と、を有している。循環水スプレーヘッダ24は、浄化処理空間26内の上部に配置され、冷却水スプレーヘッダ25は、減温・減湿空間27内の上部に配置されている。仕切板22には、上下に貫通した開口22aが形成されている。さらに、この仕切板22には、減温・減湿空間27側に、開口22a縁に沿って上方に延びる筒状のダム23が設けられている。
【0041】
塔21の下部には、排ガス入口21aが形成され、ここに排ガスライン28が接続されている。塔21の下部には、さらに、循環水出口21bが形成され、ここに洗浄循環水ライン35が接続されている。この洗浄循環水ライン35は、循環水ポンプ36を介して、循環水スプレーヘッダ24に接続されている。循環水ポンプ36より上流側の洗浄循環水ライン35には、ここを通る洗浄循環水WWのペーハー値を検知するペーハー計37が設けられている。塔21の排ガス入口21aは循環水スプレーヘッダ24より下方に形成され、循環水出口21bは、この排ガス入口21aよりさらに下方に形成されている。
【0042】
塔頂部には、排ガス出口21cが形成され、ここに浄化排ガスライン31が接続されている。この浄化排ガスライン31は、排ガスファン32を介して煙突30と接続されている。塔21の減温・減湿空間27に冷却水CWを噴霧する冷却水スプレーヘッダ25には、ここに冷却水CWを送る冷却水ライン38が接続されている。また、塔21の減温・減湿空間27の下部に相当する部分には、冷却排水ライン39が接続されている。この冷却排水ライン39は、例えば、廃液処理設備又は冷房設備等に接続されている。
【0043】
白煙防止装置50は、大気を吸い込んで送り出す空気供給ファン(空気供給機)51と、洗浄循環水(処理水)WWと空気供給ファン51からの大気との間で熱交換させて、この大気を混合用空気AMとして加熱する混合用空気加熱器(熱交換器)52と、洗浄循環水ライン35中の洗浄循環水WWを混合用空気加熱器52に送って再び洗浄循環水ライン35に戻す熱交換用循環水ライン(熱交換用処理水ライン)53と、空気供給ファン51を介して大気Aを混合用空気加熱器52に導く大気ライン55と、混合用空気AMを煙突30に導く混合用空気ライン57と、混合用空気AMの温度を検知する混合用空気温度計58と、この混合用空気温度計58で検知される温度が予め定められた設定温度(例えば、65℃)になるよう、熱交換用循環水ライン53を流れる洗浄循環水WWの流量を調節する循環水流量調節弁(熱交換用処理水調節器)54と、を備えている。なお、洗浄循環水(処理水)WWの代わりに、冷却排水(処理水)CDを用いてもよい。
【0044】
白煙防止装置50は、さらに、煙突30中の放出ガスMの圧力を検知するガス圧力計61、その温度を検知するガス温度計62と、大気ライン55中の大気Aの圧力を検知する大気圧力計63、その温度を検知する大気温度計64と、混合用空気AMの流量を調節する空気流量調節ダンパ(流量調節器)56と、空気供給ファン51及び空気流量調節ダンパ56を駆動制御する制御装置70と、を備えている。
【0045】
制御装置70は、機能的には、図3に示すように、大気圧力計63で検知された大気圧力Pa及び大気温度計64で検知された大気温度Taを用いて、この大気Aの絶対湿度Haを算出する大気湿度算出部71と、ガス圧力計61で検知された放出ガス圧力Pm及びガス温度計62で検知された放出ガス温度Tmを用いて、煙突30中の放出ガスMの絶対湿度Hmを算出する放出ガス湿度算出部72と、この放出ガスMを煙突30から放出した際に白煙が発生しない非発生条件を定める非発生条件設定部73と、放出ガス温度Tm及び放出ガス絶対湿度Hmが非発生条件を満たすか否かを判断する白煙発生判断部74と、白煙発生判断部74により非発生条件を満たさず白煙が発生すると判断されると、空気供給ファン51に駆動を指示するファン駆動指示部75と、白煙発生判断部74により非発生条件を満たさず白煙が発生すると判断されると、空気量調節ダンパ56に駆動を指示するダンパ駆動指示部76と、白煙発生判断部74により非発生条件を満たさず白煙が発生すると判断されると、循環水流量調節弁54に空気温度制御開始を指示する混合用空気温度制御指示部77と、を有している。
【0046】
この制御装置70は、コンピュータで構成されており、各計器61〜64からのデータを受け付ける入力インタフェースと、空気供給ファン51や空気流量調節ダンパ56や循環水流量調節弁54への指示内容等を示す信号を出力する出力インタフェースと、入力インタフェースが受け付けた各種データを用いて各種演算を実行するCPUと、CPUが実行する演算処理のプログラムが格納されているハードディスクドライブ等の補助記憶装置と、CPUの演算処理の実行エリアを構成するワークメモリ等とを備えている。なお、この制御装置70の上記各機能部71〜77は、いずれも、CPUと、このCPUが実行するプログラムが格納されている補助記憶装置とを有して構成されている。
【0047】
ここで、本実施形態において、大気状態検知器は、大気圧力計63と大気温度計64と大気湿度算出部71とを有して構成されている。また、ガス状態検知器は、ガス圧力計61とガス温度計62と放出ガス湿度算出部72とを有して構成されている。
【0048】
次に、本実施形態の燃焼処理設備の動作について説明する。
【0049】
脱水機11は、外部から受け入れた下水汚泥を、水分量が例えば80%程度になるまで脱水する。乾燥炉12では、この汚泥に第一燃焼炉15からの高温の燃焼排気ガスEaを直接接触させて、この汚泥中の水分量が例えば30%程度になるまで、この汚泥を乾燥させる。この乾燥汚泥は、炭化炉13の内筒13b内に導かれる。また、炭化炉13の外筒13aには、第二燃焼炉17からの高温の燃焼排気ガスEbが送られてくる。炭化炉13では、回転する内筒13b内の酸素欠乏環境下で乾燥汚泥が攪拌されつつ、外筒13a内の燃焼排気ガスEbにより加熱され、固体燃料になる炭化物Cと熱分解ガスDとが生成される。
【0050】
内筒13b内で生成された炭化物Cの一部は、内筒13bから直接炭化物ホッパ29に送られる。また、炭化物Cの残りの一部は、内筒13bから未燃分を含む熱分解ガスDと共にサイクロン14に送られ、このサイクロン14で熱分解ガスDと分離されて、炭化物ホッパ29に送られる。
【0051】
サイクロン14により、炭化物Cが分離除去された熱分解ガスDは、第一燃焼炉15内に送られる。第一燃焼炉15には、この熱分解ガスDの他に、前述したように、第一送風ファン16からの燃焼用空気、乾燥炉12から排気された燃焼排気ガスEa、及び助燃料が送り込まれ、この第一燃焼炉15内で熱分解ガスD中の未燃分及び助燃料が燃焼する。この第一燃焼炉15内で発生した燃焼排気ガスEaは、乾燥炉12内に熱風として送られ、前述したように、脱水機11で脱水された汚泥を乾燥させる。
【0052】
第二燃焼炉17から炭化炉13の外筒13aに送られた燃焼排気ガスEbは、この外筒13aから排ガスライン28を介して、空気予熱器19に送られる。空気予熱器19では、第二送風ファン18から送られてくる大気が排ガスライン28を通ってきた500℃〜700℃程度の燃焼排気ガスEbにより加熱されて、燃焼用空気として第二燃焼炉17内に送られる。第二燃焼炉17には、この燃焼用空気の他に、前述したように、排ガスライン28、この排ガスライン28から分岐した排ガス戻しライン28bを経た燃焼排気ガスEb、及び助燃料が送り込まれ、この第二燃焼炉17内で助燃料が燃焼する。この第二燃焼炉17内で発生した燃焼排気ガスEbは、前述したように、炭化炉13の外筒13a内に送られる。
【0053】
空気予熱器19に送られた500℃〜700℃程度の燃焼排気ガスEbは、この空気予熱器19で、大気との熱交換により例えば300℃程度にまで冷却されてから、排ガスライン28を経て湿式洗煙塔20の浄化処理空間26内に送られる。
【0054】
この浄化処理空間26内に送られてきた燃焼排気ガスEbは、ここで、循環水スプレー24aから噴霧された80℃程度の洗浄循環水WWと接触し、燃焼排気ガスEb中に含まれているSOx分やダスト等が洗浄循環水WWに吸収される。SOx分等を吸収した洗浄循環水(処理水)WWは、浄化処理空間26の下部に一時的に溜まり、循環水出口21bから排出される。この洗浄循環水WWは、循環水ポンプ36により加圧されて、洗浄循環水ライン35から再び循環水スプレー24aに供給され、浄化処理空間26内に噴霧される。
【0055】
洗浄循環水WWとの接触で浄化された燃焼排気ガスEbは、洗浄循環水WWの温度とほぼ同じ80℃程度の飽和ガスとなって、仕切板22の開口22aを経て、減温・減湿空間27内に流入する。この燃焼排気ガスEbは、冷却水スプレー25aから噴霧された20℃程度の冷却水CWと接触して、冷却されて、20℃〜40℃程度の飽和ガスとなり、排ガス出口21cから排気される。排ガス出口21cから排気される飽和ガス(燃焼排気ガスEp)は、このように、浄化処理空間26からの飽和ガス(燃焼排気ガスEb)よりも温度が低いため、その絶対湿度も低くなっている。よって、減温・減湿空間27では、浄化処理空間26からの燃焼排気ガスEbが減温されると共に減湿される。
【0056】
塔21の排ガス出口21cから排気された燃焼排気ガスEpは、浄化排ガスライン31を経て、排ガスファン32により加圧されて、煙突30に送られる。また、減温・減湿空間27内で燃焼排気ガスEbと接触した冷却水CWは、減温・減湿空間27内の下部、つまり仕切板22上に一時的に溜まり、一部は、ダム23からオーバーフローして、浄化処理空間26内に流れ落ち、他の一部は、冷却排水ライン39を介して、冷却排水CDとして、前述したように、例えば、廃液処理設備又は冷房設備へ送られる。
【0057】
ところで、洗浄循環水WWは、循環を繰り返すに従ってSOx濃度が高まってくる。このため、ペーハー計37で検知されたペーハー値が予め定められた値以下になると、つまり、洗浄循環水WWの酸性度が高くなると、洗浄循環水WW内に例えば苛性ソーダが投入される。また、浄化処理空間26内には、減温・減湿空間27から流れ落ちた冷却水CWが溜まり、洗浄循環水WWになるため、洗浄循環水WWは、時間経過に伴って増加する。このため、この洗浄循環水WWは、SOxと苛性ソーダとの中和反応により生成する塩等と共に少量ずつ廃液処理設備等へ排出される。
【0058】
制御装置70の大気湿度算出部71は、大気圧力計63で検知された大気圧力Pa及び大気温度計64で検知された大気温度Taを用いて、この大気Aの絶対湿度Haを算出する。この大気湿度算出部71は、予め記憶されているファニングの式に、大気圧力Paや大気温度Ta等を代入して、単位体積あたりのガス重量であるガス密度を求める。このガス密度の値は、ガスの単位重量あたりに含まれる水分重量である絶対湿度Haの値と極めて近似しているため、大気湿度算出部71は、求めたガス密度の値をこの大気Aの絶対湿度Haの値として出力する。
【0059】
また、放出ガス湿度算出部72は、ガス圧力計61で検知された放出ガス圧力Pm及びガス温度計62で検知された放出ガス温度Tmを用いて、放出ガスMの絶対湿度Hmを算出する。この放出ガス湿度算出部72も、予め記憶されているファニングの式に、放出ガス圧力Pmや放出ガス温度Tm等を代入して、単位体積あたりのガス重量であるガス密度を求め、このガス密度の値をこの放出ガスMの絶対湿度Hmの値として出力する。
【0060】
なお、以上では、ガス圧力とガス温度とを用いてガスの絶対湿度を求めているが、ガス湿度計を設け、このガス湿度計からの出力に基づいてガスの絶対湿度を得るようにしてもよい。
【0061】
非発生条件設定部73は、温度と絶対湿度をパラメータとした飽和蒸気圧特性を用いて、大気Aに中に放出ガスMを放出した際に白煙が発生しない非発生条件を定める。
【0062】
具体的に、非発生条件設定部73は、まず、図4に示すように、予め記憶されている、温度と絶対湿度をパラメータとした飽和蒸気圧曲線SCを示すグラフ中に、現状の大気の温度及び絶対湿度が示すポイントを大気状態点Saとしてプロットする。次に、非発生条件設定部73は、この大気状態点Saを通り、飽和蒸気圧曲線SCに接する接線TLを求める。そして、非発生条件設定部73は、この接線TLよりも温度及び絶対温度が低い領域内の状態点の条件を非発生条件とする。なお、ここでは、飽和蒸気圧曲線SCは、f(t)=4.0017e0.0625t(tは温度)として、制御装置70内に記憶されている。
【0063】
例えば、現在の大気の温度が25℃で、絶対湿度が15g/kgである場合、非発生条件設定部73は、これら温度と絶対湿度とが示す大気状態点Saを通り、飽和蒸気圧曲線SCに接する接線TLを求める。そして、前述したように、この接線TLよりも温度及び絶対温度が低い領域内の状態点の条件を非発生条件とする。また、現在の大気の温度が0℃で、絶対湿度eが4g/kgである場合、非発生条件設定部73は、これら温度と湿度とが示す大気状態点Saを通り、飽和蒸気圧曲線SCに接する接線TLを求める。そして、この接線TLよりも温度及び絶対温度が低い領域内の状態点の条件を非発生条件とする。
【0064】
次に、白煙発生判断部74が、現在の大気中に、現在の放出ガスMを煙突30から放出した際に、白煙が発生するか否かを判断する。具体的に、白煙発生判断部74は、現在の放出ガスMの温度Tm及び絶対湿度Hmが非発生条件設定部73の定めた非発生条件を満たすか否かを判断することで、非発生条件を満たさない場合には白煙が発生すると判断し、非発生条件を満たす場合には白煙が発生しないと判断する。
【0065】
仮に、現在の大気の温度が25℃で絶対湿度が15g/kgで、これらが示す大気状態点Saに対する接線TL1が求められ、現在の放出ガスMの温度が35℃で絶対湿度が35g/kgである場合、接線TL1よりも温度及び絶対湿度が低い領域内に放出ガス状態点Se(温度35℃、絶対湿度35g/kg)が存在するため、白煙発生判断部74は、非発生条件を満たす、つまり、白煙が発生しないと判断する。
【0066】
また、仮に、現在の大気の温度が0℃で絶対湿度が4g/kgで、これらが示す大気状態点Sa2に対する接線TLが求められ、現在の放出ガスMの温度が35℃で絶対湿度が35g/kgである場合、接線TLよりも温度及び絶対湿度が高い領域内に放出ガス状態点Se(温度35℃、絶対湿度35g/kg)が存在するため、白煙発生判断部74は、非発生条件を満たさない、つまり、白煙が発生すると判断する。
【0067】
このように、現在の放出ガス状態点Seが同じである場合でも、現在の大気温度Taが比較的高ければ、白煙は発生しないと判断され、現在の大気温度Taが比較的低ければ白煙は発生すると判断される。すなわち、白煙発生の可能性は、現在の大気温度Taが低くなるほど高まる。
【0068】
白煙発生判断部74により、白煙は発生しないと判断されると、制御装置70は、白煙防止装置50の空気供給ファン51や空気流量調節ダンパ56や循環水流量調節弁54に対して何ら指示を与えない。一方、白煙発生判断部74により、白煙が発生すると判断されると、ファン駆動指示部75が空気供給ファン51に対して駆動を指示して、この空気供給ファン51を駆動させる。さらに、白煙発生判断部74により、白煙が発生すると判断されると、ダンパ駆動指示部76が空気流量調節ダンパ56に対して駆動を指示して、この空気流量調節ダンパ56を駆動させる。この際、ダンパ駆動指示部76は、予め定められた初期駆動量の駆動を空気流量調節ダンパ56に指示する。なお、この初期駆動量は、例えば、弁開度30%である。
【0069】
この結果、白煙発生判断部74により、白煙が発生すると判断されると、空気供給ファン51が駆動すると共に、空気流量調節ダンパ56の弁開度が調節されて、大気ライン55に大気Aが流れ始める。そして、この大気Aは、混合用空気加熱器52で設定温度まで加熱された後、混合用空気ライン57を通って煙突30内に流れ込む。よって、本実施形態では、煙突30内でこの混合用空気AMと燃焼排気ガスEpとが混合して、放出ガスMとなり、この放出ガスMが煙突30から放出される。
【0070】
煙突30内でこの混合用空気AMと燃焼排気ガスEpとが混合した放出ガスMが、この煙突30から放出された後も、制御装置70の大気湿度算出部71は現在の大気Aの絶対湿度Haを算出する。また、放出ガス湿度算出部72も、現在の放出ガスMの絶対湿度Hmを算出する。非発生条件設定部73は、前述したように、大気Aに中に放出ガスMを放出した際に白煙が発生しない非発生条件を定める。なお、この大気Aの状態は、先に非発生条件を定めた際の大気の状態と基本的に同じであるため、ここで定める非発生条件は、先に定めた非発生条件と基本的に同じである。続いて、白煙発生判断部74が、非発生条件を参照して、現在の大気中に現在の放出ガスMを煙突30から放出した際に、白煙が発生するか否かを判断する。
【0071】
この際、仮に、白煙発生判断部74により、白煙が発生すると判断されると、ダンパ駆動指示部76は、予め定められた駆動量の駆動を空気流量調節ダンパ56に指示する。なお、この予め定められた駆動量は、空気流量調節ダンパ56が開く方向の駆動量で、例えば、全開状態の5%分の駆動量である。また、ファン駆動指示部75は、空気流量調節ダンパ56が開いている限り、空気供給ファン51に対して駆動指示を維持する。この処理が繰り返し実行されると、最終的に、放出ガスMが煙突から放出されても白煙は発生しなくなる。
【0072】
また、一旦、煙突30内に混合用空気AMを供給し始めると、仮に、白煙発生判断部74により、白煙は発生しないと判断されても、ダンパ駆動指示部76は、予め定められた駆動量の駆動を空気流量調節ダンパ56に指示する。但し、この場合、この予め定められた駆動量は、空気流量調節ダンパ56が閉じる方向の駆動量で、例えば、全開状態の5%分の駆動量である。また、白煙発生判断部74により、白煙は発生しないと判断されても、ファン駆動指示部75は、空気流量調節ダンパ56が開いている限り、空気供給ファン51に対して駆動指示を維持する。
【0073】
以上のように、本実施形態では、炭化炉13から排気された高温の燃焼排気ガスEbと大気との間で熱交換を行い、この熱交換で加熱された大気を第二燃焼炉17の燃焼用空気として利用している。さらに、本実施形態では、湿式洗煙塔20で用いられた比較的低温(例えば80℃)の洗浄循環水(処理水)WWと大気との間で熱交換を行い、この熱交換で加熱された大気である混合用空気AMを白煙防止用の空気として利用している。すなわち、本実施形態では、高温の熱源(排気ガス)を従来技術のように白熱防止用の熱に利用せず、余剰熱として扱われていた比較的低温の熱源(洗浄循環水WW)の熱を白煙防止用に利用し、高温の熱源を燃焼用空気の予熱用の熱に利用している。よって、本実施形態では、処理設備の熱効率を高めることができる。
【0074】
特に、本実施形態の処理設備は、下水汚泥を炭化処理する炭化処理設備であり、処理対象の下水汚泥を完全燃焼させずに、不完全燃焼させて炭化物Cを得ているため、この処理設備での発生熱量が汚泥を完全燃焼させる焼却処理設備よりも小さい。よって、下水汚泥を炭化処理する炭化処理設備において、熱効率を高めることは極めて大きな意義がある。
【0075】
ところで、冬場の大気温度が低いとき、前述したように、白煙発生の可能性が高まり、非発生条件も厳しくなる。しかも、湿式洗煙塔20で処理に用いられた処理水、つまり洗浄循環水WWは、非発生条件が厳しいときでも、前述したように、比較的低温(例えば、80℃)である。このため、従来においては、湿式洗煙塔20で処理に用いられた処理水を白煙防止用の熱源として利用することがためらわれていたと考えられる。
【0076】
しかしながら、発明者は、以下の二点について気付き、湿式洗煙塔20の洗浄循環水WWを白煙防止用の熱源として利用することにした。
(1)湿式洗煙塔20の洗浄循環水WWの温度は、飽和蒸気圧温度(例えば、80℃)でほぼ一定であるため、この洗浄循環水WWの温度管理が実質的に不要で、熱交換用の熱源として利用し易い。
また、冷却排水CDの温度も、減温・減湿空間27の容積次第でほぼ一定であるため(例えば、50〜70℃)、この冷却排水CDの温度管理が実質的に不要で、熱交換用の熱源として利用し易い。
(2)冬場の大気温度が低いときは、白煙発生の可能性が高まり、非発生条件が厳しくなるものの、このときの大気は絶対湿度が低いため、湿度の面から混合用空気AMとして好適であり、この大気をあまり高い温度に加熱しなくても、白煙発生を防止できる。
【0077】
本実施形態は、以上のような発明者の新たな認識のもとで創出されたもので、この結果、前述したように、処理設備の熱効率を高めることができる。
【0078】
「第二実施形態」
次に、本発明に係る燃焼処理設備の第二実施形態について、図5を用いて説明する。
【0079】
本実施形態の燃焼処理設備は、下水汚泥の炭化処理設備で、白煙防止装置を除く構成は第一実施形態と同様である。
【0080】
本実施形態の白煙防止装置aは、第一実施形態の白煙防止装置に対し、湿式洗煙塔20の冷却排水(処理水)CDを白煙防止用の熱源として利用する点、及び、混合用空気AMの流量を調節する流量調節器として空気供給ファン51の回転数を変えるインバータ51aを用いる点が異なっている。
【0081】
本実施形態では、湿式洗煙塔20の減温・減湿空間27の下部に接続されている冷却排水ライン39a中には、混合用空気加熱器52と、ここを通る冷却排水CDの流量を調節する冷却排水流量調節弁(熱交換用処理水調節器)54aと、湿式洗煙塔20からの冷却排水CDを混合用空気加熱器52に送るための冷却排水ポンプ59と、が設けられている。混合用空気加熱器52には、第一実施形態と同様、空気供給ファン51からの大気Aを混合用空気加熱器52に送るための大気ライン55が接続されていると共に、混合用空気加熱器52で加熱された大気A、つまり混合用空気AMを煙突30に送るための混合用空気ライン57が接続されている。
【0082】
混合用空気ライン57には、第一実施形態と同様、混合用空気温度計58が設けられている。冷却排水流量調節弁54aは、この混合用空気温度計58で検知される温度が予め定められた設定温度(例えば、60℃)になるよう、冷却排水ライン39aを流れる冷却排水CDの流量を調節する。また、大気ライン55には、第一実施形態と同様、大気圧力計63及び大気温度計64が設けられている。但し、本実施形態の大気ライン55には、第一実施形態における流量調節器としての空気流量調節ダンパ56は設けられていない。
【0083】
空気供給ファン51は、図示されていないモータで駆動する。インバータ51aは、このモータに供給される交流電力の周波数を変えることで、吸い込む大気Aの流量、言い換えると、混合用空気AMの流量を調節する。
【0084】
白煙防止装置50aの制御装置70は、基本的に、第一実施形態のものと同一構成で同一動作する。但し、本実施形態の制御装置70のファン駆動指示部75は、白煙発生判断部74により、白煙が発生すると判断されると、インバータ51aに対して、モータの初期回転数又はモータに供給する交流電力の初期周波数を出力する。また、その後、白煙発生判断部74により、白煙が発生すると判断されると、例えば、先に出力したモータ回転数にモータの最大回転数の5%分加えた回転数、又は、先に出力した周波数に最大周波数の5%分を加えた周波数を出力する。一方、一旦、インバータ51aに対して、モータの初期回転数又はモータに供給する交流電力の初期周波数を出力した後、白煙発生判断部74により、白煙が発生しないと判断されると、例えば、先に出力したモータ回転数からモータの最大回転数の5%分を引いた回転数、又は、先に出力した周波数から最大周波数の5%分を引いた周波数を出力する。
【0085】
以上、本実施形態でも、第一実施形態と同様、余剰熱として扱われていた比較的低温の熱源(冷却排水CD)の熱を白煙防止用に利用し、高温の熱源を燃焼用空気の予熱用の熱に利用している。よって、本実施形態でも、処理設備の熱効率を高めることができる。
【0086】
但し、本実施形態において、白煙防止用の熱源である冷却排水CDの温度が、50℃〜80℃の間で変化し、しかも洗浄循環水WWの温度以下である上に、冷却排水CDを混合用空気加熱器52に送るために別途冷却排水ポンプ59を設置する必要になることがあるため、白煙防止のための熱交換用の熱源としては、第一実施形態で用いた洗浄循環水WWの方が好ましい。ここで、本実施形態では、冷却排水ポンプ59は必ずしも必要なものではない。例えば、湿式洗煙塔20内で上方に冷却排水CDが溜まる仕切板22の高さが混合用空気加熱器52よりも十分に高く、この冷却排水CDに圧力を別途加えなくても、この冷却排水CDが混合用空気加熱器52に送れる場合には、冷却排水ポンプ59を設置する必要はない。
【0087】
なお、以上の各実施形態では、混合用空気AMの温度が予め定められた設定温度になるよう、熱交換用循環水ライン53を流れる洗浄循環水WWの流量、又は冷却排水ライン39aを流れる冷却排水CDの流量を調節しているが、大気Aが混合用空気加熱器52で加熱されるのであれれば、この混合用空気AMの温度制御は必ずしも必要ではない。
【0088】
また、以上の各実施形態では、白煙発生判断部74により白煙が発生すると判断されると、段階的に混合用空気AMの流量を増やすことで白煙防止を実現している。しかしながら、白煙発生判断部74により白煙が発生すると判断されると、白煙発生を抑えることができる混合用空気AMの必要流量を求め、混合用空気AMがこの必要流量になるよう、空気流量調節ダンパ56の弁開度、又はインバータ51aに指示する周波数を定めることで、白煙防止を実現してもよい。この場合、浄化排ガスライン31中の燃焼排気ガスEpの流量を検知する排ガス流量計、及び、大気ライン55中の大気Aの流量を検知する大気流量計を設ける。そして、浄化排ガスライン31中の燃焼排気ガスEpの質量流量を求める。次に、非発生条件設定部73が定めた非発生条件を満たす放出ガスの目標状態点(温度及び絶対湿度で定まる点)を定める。続いて、浄化排ガスライン31中の燃焼排気ガスEpの温度及び質量流量と混合用空気AMの温度等から、放出ガスMが目標状態点になる混合用空気AMの必要質量流量を求める。そして、この必要質量流量が得られるよう、大気流量計で示される流量が必要質量流量相当の流量になるよう、空気流量調節ダンパ56の弁開度、又はインバータ51aに指示する周波数を定める。
【0089】
また、以上の実施形態は、下水汚泥を炭化する炭化処理設備であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、下水汚泥を焼却する焼却処理設備や、バイオマスの熱分解処理(炭化処理)設備等、排気ガスが発生し、この排気ガスを湿式洗煙塔20で浄化する設備であれば、如何なる処理設備に適用してもよい。
【符号の説明】
【0090】
11:脱水機、12:乾燥炉、13:炭化炉、14:サイクロン、15:第一燃焼炉、16:第一送風ファン、17:第二燃焼炉、18:第二送風ファン、19:空気予熱器、20:湿式洗煙塔、26:浄化処理空間、27:減温・減湿空間、28:排ガスライン、30:煙突、31:浄化排ガスライン、35:洗浄循環水ライン、36:循環水ポンプ、38:冷却水ライン、39,39a:冷却排水ライン、50,50a:白煙防止装置、51:空気供給ファン、52:混合用空気加熱器、53:熱交換用循環水ライン、54:循環水流量調節弁、54a:冷却排水流量調節弁、55:大気ライン、56:空気流量調節ダンパ、57:混合用空気ライン、58:混合用空気温度計、61:排ガス圧力計、62:ガス温度計、63:大気圧力計、64:大気温度計、70:制御装置、71:大気湿度算出部、72:ガス湿度算出部、73:非発生条件設定部、74:白煙発生判断部、75:ファン駆動指示部、76:ダンパ駆動指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式洗煙塔で湿式処理された排気ガスの白煙防止装置において、
大気を吸い込んで送り出す空気供給機と、
前記湿式洗煙塔で用いられた処理水が流れる熱交換用処理水ラインと、
前記熱交換用処理水ラインからの前記処理水と前記空気供給機から送り出された前記大気との間で熱交換して、該大気を混合用空気として加熱する熱交換器と、
前記排気ガス中に前記混合用空気を供給する混合用空気ラインと、
を備えていることを特徴とする白煙防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の白煙防止装置において、
前記熱交換用処理水ラインは、前記湿式洗煙塔の内外で循環する洗浄循環水の少なくとも一部を前記処理水として、前記熱交換器に導き、該熱交換器で熱交換された該洗浄循環水を前記湿式洗煙塔に戻すための熱交換用循環水ラインである、
ことを特徴とする白煙防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の白煙防止装置において、
前記大気中に放出される前記排気ガスを含む放出ガスの温度及び絶対湿度を検知するガス状態検知器と、
前記大気の温度及び絶対湿度を検知する大気状態検知器と、
前記空気供給機を駆動制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、温度と絶対湿度とをパラメータとした飽和蒸気圧特性と、前記大気状態検知器で検知された温度及び絶対湿度とに基づいて、前記放出ガスを放出した際に白煙が発生すると判断すると、前記空気供給機に駆動を指示する白煙防止制御部を有する、
ことを特徴とする白煙防止装置。
【請求項4】
請求項3に記載の白煙防止装置において、
前記白煙防止制御部は、前記飽和蒸気圧特性を用いて、前記大気状態検知器で検知された温度及び絶対湿度の前記大気中に、前記放出ガスを放出した際に白煙が発生しない非発生条件を定める非発生条件設定部と、前記ガス状態検知器で検知された温度及び絶対温度が前記非発生条件を満たすか否かを判断する白煙発生判断部と、前記白煙発生判断部により前記非発生条件を満たさず白煙が発生すると判断されると、前記空気供給機に駆動を指示する駆動指示部と、を有する、
ことを特徴とする白煙防止装置。
【請求項5】
請求項4に記載の白煙防止装置において、
前記混合用空気の流量を調節する流量調節器を備え、
前記制御装置は、前記白煙発生判断部により前記非発生条件を満たさず白煙が発生すると判断されると、前記流量調節器に駆動を指示する駆動指示部を有する、
ことを特徴とする白煙防止装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の白煙防止装置において、
前記混合用空気ライン中の前記混合用空気の温度を検知する混合用空気状態検知器と、
前記混合用空気状態検知器で検知される前記混合用空気の温度が予め定めた設定温度になるよう、前記熱交換用処理水ラインを流れる前記処理水の流量を調節する熱交換用処理水調節器と、
を備えていることを特徴とする白煙防止装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の白煙防止装置と、
処理対象物を加熱又は燃焼処理する処理炉と、
前記処理炉からの排気ガスを湿式で浄化する前記湿式洗煙塔と、
を備えていることを特徴とする燃焼処理設備。
【請求項8】
請求項7に記載の燃焼処理設備において、
前記処理炉として、処理対象物を酸素欠乏雰囲気で加熱して炭化させる炭化炉を備え、
炭化処理設備を成すことを特徴とする燃焼処理設備。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の燃焼処理設備において、
前記湿式洗煙塔に送られる前の前記処理炉からの前記排気ガスと大気とを熱交換して、該大気を加熱し燃焼用空気とする熱交換器を備えている、
ことを特徴とする燃焼処理設備。
【請求項10】
湿式洗煙塔で湿式処理された排気ガスの白煙防止方法において、
前記湿式洗煙塔で用いられた処理水と大気との間で熱交換して、該大気を混合用空気として加熱する熱交換工程と、
前記湿式洗煙塔から排気された前記排気ガス中に前記混合用空気を供給する混合工程と、
を実行することを特徴とする白煙防止方法。
【請求項11】
請求項10に記載の白煙防止方法において、
前記処理対象物を炭化させる炭化炉と、該炭化炉からの排気ガスを湿式で浄化する前記湿式洗煙塔と、を備えている炭化処理設備で、前記熱交換工程と前記混合工程とを実行する、
ことを特徴する白煙防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87988(P2013−87988A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226886(P2011−226886)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】