説明

白色調整装置及び白色調整プログラム

【課題】蛍光灯やフィルタのかけられた光源などの影響を受けた画像であっても白色の調整を行うことができる白色調整装置を提供する。
【解決手段】色温度推定部1は、処理対象の画像より色温度を推定する。代表色値取得部2は、処理対象の画像の各画素における色値が、予め設定されている白色値から予め決められた色範囲の色が存在する領域である白色近傍領域となる画素の色値から、代表となる色値を代表色値として取得する。補正代表色値算出部3は、色温度推定部1で推定した色温度に対応する色値と代表色値取得部2で取得した代表色値から補正代表色値を算出する。白色変換部4は、補正代表色値算出部3で算出した補正代表色値を予め設定されている白色値とする色変換を処理対象の画像に対して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色調整装置及び白色調整プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像に対してホワイトバランスなどと呼ばれる白色の調整が行われている。例えば撮影された画像では、撮影の対象物を照明する光源によって、白色の色値は変化する。この光源によって異なる白色を、予め決められている白色に調整している。もちろん、太陽光の場合も晴天の日中、曇天、朝夕など、撮影状況によって白色の調整は必要となり、そのようなそれぞれの撮影状況における光を光源として含めることとし、白色の調整を行う。白色の色バランスの崩れは、視覚的に敏感であり、画質に影響してしまう。
【0003】
このような白色の調整を行う際に、使用された光源が分からない場合には、調整対象となる画像から、使用された光源を推定する必要がある。そのための方法として、光源の色と熱源となる黒体から放射される光の色との対応をもとに、画像中の白と考えられる領域の色から光源の温度(色温度)を推定し、この推定した色温度に応じた白色の調整を行っている。例えば特許文献1では、黒体輻射の色度の軌跡をもとに設定されている色領域を低色温度側の領域と高色温度側の領域に分割し、各領域に含まれる画素を計数し、その割合で白色の調整を制御して、複数の光源が使用されている場合に対応している。また、白色の調整に際しては、例えば特許文献2に記載されている白の面積に応じた補正を行う技術もある。
【0004】
また特許文献3では、白色点と推定された画素の色温度値に対して重み付けした加重平均色温度を算出し、この加重平均色温度に従って白色の調整を行い、複数の光源が使用されている場合にも対応している。
【0005】
上述の黒体輻射の色度を用いる場合、熱発光である光源が用いられることが前提となるが、例えば屋内において蛍光灯が用いられ、あるいはフィルタのかけられた光源が用いられる場合がある。これらの光源が用いられた場合には、黒体輻射を基準として光源の色温度を推定しても、白色が補正されない場合が生じる。
【0006】
例えば特許文献4では、画像を複数のブロックに分割し、各ブロックにおける代表色差と最大色差から光源色推定ベクトルを生成し、光源色推定ベクトルの収束点を光源色として求め、白色の補正を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−135802号公報
【特許文献2】特開2007−300184号公報
【特許文献3】特開2008−148009号公報
【特許文献4】特開2006−324840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、蛍光灯やフィルタのかけられた光源などの影響を受けた画像であっても白色の調整を行うことができる白色調整装置及び白色調整プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、処理対象の画像より色温度を推定する推定手段と、前記画像中の予め設定されている白色値から予め決められた色範囲の色が存在する領域である白色近傍領域から代表となる色値を代表色値として取得する取得手段と、前記推定手段で推定した色温度に対応する色値と前記取得手段で取得した代表色値から補正代表色値を算出する算出手段と、前記補正代表色値が前記白色値となるように前記画像の色を変換する変換手段を有することを特徴とする白色調整装置である。
【0010】
本願請求項2に記載の発明は、本願請求項1に記載の発明における前記算出手段が、前記推定手段で推定した色温度に応じた重み付けにより前記補正代表色値を算出することを特徴とする白色調整装置である。
【0011】
本願請求項3に記載の発明は、本願請求項1または請求項2に記載の発明における前記取得手段が、前記白色値からの色差に応じた重み付けを行って前記代表色値を取得することを特徴とする白色調整装置である。
【0012】
本願請求項4に記載の発明は、コンピュータに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の白色調整装置の機能を実行させるものであることを特徴とする白色調整プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1に記載の発明によれば、蛍光灯やフィルタのかけられた光源などの影響を受けた画像についても白色の調整を行うことができる。
【0014】
本願請求項2に記載の発明によれば、推定した色温度に対応する色値と代表色値との相違を吸収することができる。
【0015】
本願請求項3に記載の発明によれば、代表色値としてより白色値に近い色を取得することができる。
【0016】
本願請求項4に記載の発明によれば、蛍光灯やフィルタのかけられた光源などの影響を受けた画像についても白色の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の一形態における動作の一例を示す流れ図である。
【図3】代表色値取得部の動作の一例を示す流れ図である。
【図4】代表色値とする色値を算出する際に用いる重みの一例の説明図である。
【図5】補正代表色値を算出する際に用いる重みを得るための関数の一例の説明図である。
【図6】抽出した色温度と代表色値との関係の一例の説明図である。
【図7】画像の具体例における処理の一例の説明図である。
【図8】本発明の実施の一形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の一形態を示す構成図である。図中、1は色温度推定部、2は代表色値取得部、3は補正代表色値算出部、4は白色変換部である。色温度推定部1は、処理対象の画像より色温度を推定する。推定方法は従来から行われている方法を用いればよい。例えば特許文献3に記載されている方法、すなわち白色点の推定に使用する画素を抽出してその画素の色温度値に対して重み付けした加重平均色温度を算出する方法を用いてもよい。
【0019】
代表色値取得部2は、処理対象の画像の各画素における色値が、予め設定されている白色値から予め決められた色範囲の色が存在する領域である白色近傍領域となる画素の色値から、代表となる色値を代表色値として取得する。代表色値は、例えば、白色近傍領域となる画素の色値に対して、その色値と予め設定されている白色値との色差に応じた重み付けを行って算出した色値を代表色値として取得するとよい。
【0020】
補正代表色値算出部3は、色温度推定部1で推定した色温度に対応する色値と代表色値取得部2で取得した代表色値から補正代表色値を算出する。補正代表色値を算出する際には、例えば、色温度推定部1で推定した色温度に応じた重み付けを行うとよい。そのほか、代表色値が画像中で使用されている割合と色温度に対応する色値が画像中に存在する割合など、他の指標を使用し、あるいは組み合わせて用いてもよい。
【0021】
白色変換部4は、補正代表色値算出部3で算出した補正代表色値を予め設定されている白色値とする色変換を処理対象の画像に対して行う。これにより画像に対する白色の調整が行われることになる。この色変換処理については、既存の色変換技術を使用すればよい。
【0022】
図2は、本発明の実施の一形態における動作の一例を示す流れ図である。以下の説明では、白色として補正の目標とする色値を白色値として予め設定しておくものとする。白色値は、例えば色温度により設定するほか、色座標系における原点とするなど、種々の設定方法がある。
【0023】
処理対象の画像が与えられたら、S11において、与えられた画像に対して前処理を行っておくとよい。例えば画素を間引いて補正代表色値を得るまでの処理量を間引かない場合に比べて少なくしてもよい。もちろん、前処理が不要であればS11を行わなくてもよい。
【0024】
色温度推定部1は、処理対象の画像より色温度を推定する。ここでは与えられた処理対象の画像の代わりに S11で前処理を行った後の画像を使用して色温度を推定する。また、色温度を推定する方法の一例として特許文献3に記載されている方法を用いることとし、まずS12において、白色点の推定に使用する画素を抽出する。そしてS13において、S12で抽出した画素の色温度値に対して重み付けした加重平均色温度を算出して、この加重平均色温度を色温度推定部1で推定した色温度とする。重みは、予め決められている色温度の範囲で1とし、当該色温度の範囲から離れるに従って小さくなる重みを使用するとよい。さらにS14において、色温度の推定に用いた画素数と処理対象の画像(S11で前処理を行った場合には前処理後の画像)全体の画素数との割合を算出しておく。
【0025】
一方、代表色値取得部2は、処理対象の画像より代表色値を取得する。ここでは与えられた処理対象の画像の代わりに、S11で前処理を行った後の画像を用いて代表色値を取得する。まずS15において、処理対象の画像(前処理を行った後の画像)から、白色値から予め決められた色範囲の色値を有する画素の領域を白色近傍領域として抽出する。そしてS16において、S15で抽出した白色近傍領域内の画素の色値から代表色値を取得する。例えば、色値の平均値を代表色値として取得してもよいし、画素の色値と白色値との色差に応じた重み付けを行って、加重平均した色値を代表色値として取得してもよい。
【0026】
図3は、代表色値取得部の動作の一例を示す流れ図である。図2のS16における動作の一例を図3に示している。なお、具体例として処理対象の画像(前処理を行った後の画像)はYCbCr色空間の画像であるものとする。もちろん、YCbCr色空間の画像に限られるものではない。また、画像の色空間と代表色値を取得する処理に用いる色空間が異なるのであれば、図3に示す処理または図2のS15の処理より前に色空間の変換処理を行っておけばよい。
【0027】
まずS31において、白色近傍領域の画素から処理を行う画素を順に選択し、その画素を選択画素とする。
【0028】
S32において、選択画素の色値と白色値との色差を算出する。例えば白色値としてCb=Cr=0が設定されている場合、色差dは
d=√(Cb2 +Cr2
により算出すればよい。本来の色差はY成分についても用いられるが、白色の調整であることから、この具体例ではY軸からの距離を色差に代えて使用してもかまわない。
【0029】
S33において、S32で算出した色差に応じた重みを計算する。重みは、色差が大きくなるに従って小さくなる関数により計算すればよい。一例として、重みwは色差を上述のdとし、
w=1/{1+(d/inf)}G
により求めるとよい。ここで、inf及びGは定数であり、色差に対する重みを変更する際にはこれらの定数を変更すればよい。図4は、代表色値とする色値を算出する際に用いる重みの一例の説明図である。上述の重みwを求める式において、定数inf及びGとしてある値を設定した場合の色差dと重みwとの関係を示している。色差dが大きくなるほど重みwが小さくなっていることが分かる。もちろん、重みを計算する関数はこの例に限られるものではない。
【0030】
S34において、S33で計算した重みを用い、画素の色値を重み付けして積算する。例えばCb成分の積算値をWCb、Cr成分の積算値をWCrとし、画素の色値のCb、Cr成分をcb、crとし、重みwを用いて
WCb=WCb+w・cb
WCr=WCr+w・cr
により計算すればよい。また、重みの総和をWsumとして、この値についても
Wsum=Wsum+w
として求めておく。
【0031】
なお、このS34における積算値の計算は、Y成分が予め決められた値よりも大きい画素について行うようにするとよい。この条件を満たす画素よりも暗い、Y成分が予め決められた値以下となる画素については、白色とは言えなくなることから除外するとよい。図2のS15において白色近傍領域を抽出する際に明るさについても考慮して抽出を行っている場合には、Y成分はある範囲に収まっており、S34でY成分を考慮しなくてもよい。
【0032】
S35において、選択されていない画素が残っているか否かを判断し、残っていればS31へ戻ってそれらの画素についての処理を続ける。画素の選択が終了していれば、S36において平均値を算出する。ここまでの処理で、
WCb=Σw・cb
WCr=Σw・cr
Wsum=Σw
が得られている。例えばCb成分の平均値をmCb、Cr成分の平均値をmCrとすると、
mCb=WCb/Wsum
mCr=WCr/Wsum
により算出すればよい。算出したmCb、mCrを成分とする色値を代表色値として取得すればよい。
【0033】
なお、図3に示した処理の一例では、Y軸から離れるほど小さくなる重みを用いていることから、例えば重みwが0になれば代表色値の取得には影響しない。従って、重みwの関数によっては、図2のS15における白色近傍領域の画素を抽出する機能も併せ持っており、その場合には図2のS15の処理を行わずに処理対象の画像(前処理を行った後の画像)に対して図3に示した処理を行ってもかまわない。またこの場合、上述したY成分が予め決められた値よりも大きい画素を積算の対象とする構成を設けておくとよい。
【0034】
また、S32で算出している色差を用い、色差が予め決められた値以下の場合に白色近傍領域の画素であると判断し、色差が予め決められた値を超える場合にはS35へ進むこととして構成してもよい。この場合も、図2のS15の処理を行わずに処理対象の画像(前処理を行った後の画像)に対して図3に示した処理を行えばよい。
【0035】
もちろん、図2のS15の処理を行って抽出した白色近傍領域の画素に対して図3に示した処理を行えば、抽出しない場合に比べて処理対象の画素が減るとともに、白色近傍領域の色値に限定した代表色値が取得されることになる。
【0036】
図2に戻り、S17において、代表色値を取得する際に使用した画素数と処理対象の画像(前処理後の画像)全体の画素数との割合を算出しておく。
【0037】
S18において、補正代表色値算出部3は色温度推定部1で推定した色温度に対応する色値と代表色値取得部2で取得した代表色値から補正代表色値を算出する。例えば、補正代表色値算出部3は色温度推定部1で推定した色温度に対応する色値のCbCr成分をtCb、tCr、代表色値取得部2で取得した代表色値のCbCr成分をmCb、mCrとし、重みをwとすると、補正代表色値のCbCr成分であるcCb、cCrは
cCb=tCb・(1−w)+mCb・w
cCr=tCr・(1−w)+mCr・w
により算出すればよい。この例では、重みwが1の場合に代表色値が選択され、重みwが0の場合には推定した色温度に対応する色値が選択される。また、重みwが1より小さく0より大きい場合には、重みwにより色温度に対応する色値と代表色値とを線形補間した値となる。
【0038】
図5は、補正代表色値を算出する際に用いる重みを得るための関数の一例の説明図である。上述の式により補正代表色値を算出する際に用いる重みwとしては、予め決めておいた値や関数を用いて取得すればよい。例えば図5に示す関数により取得してもよい。図5に示す例では、色温度推定部1で推定した色温度に対応する重みを取得する例を示しており、色温度a以上色温度b以下では重みを1としている。また、色温度が色温度aよりも低い場合には色温度aとの差が大きくなるに従って重みwが小さくなり、色温度が色温度bよりも高い場合には色温度bとの差が大きくなるに従って重みwが小さくなるようにしている。
【0039】
色温度aと色温度bによる色温度の範囲には、白色点とする色温度を含めておくとよい。上述の補正代表色値を求める式では、白色点を含む色温度aと色温度bの範囲では重みwが1であることから代表色値が選択される。また、色温度が色温度aよりも低い場合及び色温度が色温度bよりも高い場合には、この色温度aと色温度bの範囲から離れる、すなわち白色点から離れるに従って重みwが小さくなり、推定した色温度の影響をより受けることになる。そして、重みwが0となると、推定した色温度が選択されることになる。
【0040】
図6は、抽出した色温度と代表色値との関係の一例の説明図である。図6ではYCbCr色空間におけるCb−Cr平面を示しており、曲線Lは色温度に対応する色値の軌跡である。また、Mは代表色値取得部2で白色近傍領域を抽出する際に用いた色範囲の一例を示している。この色範囲の縁の色温度をそれぞれ図5における色温度a及び色温度bとしている。色値Aは代表色値取得部2で取得された代表色値であるものとする。なお、予め設定されている白色点はCb=Cr=0であるものとする。
【0041】
色温度推定部1で推定された色温度に対応する色値が色値Bであった場合と色値Cであった場合について説明する。色温度推定部1で推定された色温度に対応する色値が色値Bであった場合には、色温度aと色温度bの色範囲の色値であることから、図5に示した重みwの関数から重みwは1となる。従って、代表色値取得部2で取得した代表色値を選択して補正代表色値とする。この場合には、光源として熱光源ではない蛍光灯などが使用され、あるいはフィルタが用いられた場合が想定され、熱光源を前提とした色温度は誤推定であるとしている。
【0042】
熱光源でない光源が使用されている場合やフィルタが使用されている場合には、もともと白色である領域が色づいてしまうが、その色は熱光源による色温度に対応する色とは異なる色の場合がある。例えば蛍光灯が使用された場合には、白色は緑がかった色となるが、この色は熱光源による色温度に対応する色とは異なる色である。このような場合に、例えば蛍光灯が使用された場合の緑がかった色を代表色値として取得しており(例えば図6の色値A)、誤って推定された熱光源による色温度に対応する色値(例えば図6の色値B)を選択しないようにしている。
【0043】
また、色温度推定部1で推定された色温度に対応する色値が色値Cであった場合には、推定された色温度が色温度aより低温であることから、図5に示した重みwの関数から重みwは1より小さくなる。従って、重みwにより推定した色温度に対応する色値と代表色値とから補間することになる。色温度aからの温度差が大きくなるほど、重みwは小さい値となって、補正代表色値は推定した色温度に対応する色値に近づくことになる。重みwが0であれば、推定した色温度に対応する色値が補正代表色値となる。この場合、白色値から予め設定されている色範囲の色から代表色値を取得しているため、光源の影響がこの色範囲を逸脱している場合が想定され、推定した色温度の色値を優先している。
【0044】
例えば熱光源であるタングステン光を用いて得られた画像では、光源の色温度により赤みを帯びた画像となる。この場合、推定された色温度に対応する色値として、例えば図6の色値Cが得られる。このような画像から、白色値から予め決められた範囲の色の画素を抽出して代表色値を取得(例えば図6の色値Aを取得)した場合、この代表色値が光源の影響を受けた色を取得していないことが想定される。従って、このような場合には推定した色温度に対応する色値を優先して補正代表色値としている。
【0045】
上述の例では推定した色温度から重みwを算出し、その重みwを用いて補正代表色値を算出したが、これに限らず、例えば代表色値が画像中で使用されている割合と色温度に対応する色値が画像中に存在する割合など、他の指標を使用し、あるいは組み合わせて用い、補正代表色値を算出してもよい。また、図2のS14で算出した色温度の推定に用いた画素数の割合が予め決めておいた割合より小さい場合には代表色値を補正代表色値とし、あるいは、図2のS17で代表色値を取得する際に使用した画素数の割合が予め決めておいた割合より小さい場合には推定した色温度に対応する色値を補正代表色値としてもよい。
【0046】
図2に戻り、S18で補正代表色値が算出されたら、白色変換部4は、S19において、補正代表色値を予め設定されている白色値とする変換係数を生成し、その変換係数を用いて与えられた処理対象の画像に対してS20において色変換の処理を行う。この色変換の処理によって、白色の調整が行われることになる。
【0047】
図7は、画像の具体例における処理の一例の説明図である。図7(A)には処理対象の画像の一例を示している。この画像は、窓が配された白い壁紙の室内で蛍光灯の照明のもとで人物を撮影したものとしている。蛍光灯の影響により、全体に緑がかった色となっているものとし、図示の都合上、緑がかっていることを斜線により示している。なお、前処理を行う場合には、図7(A)は前処理が施された画像であるものとする。
【0048】
色温度推定部1では、図7(A)に示した画像から熱光源の色温度を推定する。色温度の推定には、例えば図6に曲線Lとして示した熱光源の色温度の軌跡に沿った色領域の色をもとにして行う。そのため、色温度の推定は図7(B)に黒く示した領域、例えば蛍光灯の光源部や人物の顔などの領域が色温度の推定に使用される。この例の場合、蛍光灯の光源部の色から6000K程度の色温度が推定される。
【0049】
一方、代表色値取得部2では、図7(A)に示した画像から白色近傍領域を抽出して、その領域から代表色値を取得する。白色近傍領域の一例を図7(C)に黒く示している。この場合、蛍光灯の光源部及び蛍光灯により照明されている壁面などが含まれている。この白色近傍領域から代表色値を取得すると、蛍光灯の影響により緑がかった色値が代表色値として取得される。
【0050】
例えば予め設定されている白色値が6500Kの色温度に対応する色値であるとすると、色温度推定部1で推定された色温度は例えばタングステン光源の色温度である3500K等と比べて白色値に近い。従って、補正代表色値算出部3で算出する重みwは1または1に近い値となり、代表色値が優先された補正代表色値となる。
【0051】
よって、蛍光灯の影響により緑がかった色値から予め設定されている白色値へ変換する変換係数が算出され、白色を補正する色変換処理が行われることになる。これにより、図7(D)に示すように、緑がかった白色が設定されている白色に補正された画像が得られる。図示の都合上、図7(D)では図7(A)と比較して斜線を除くことにより補正されたことを示している。
【0052】
この具体例では、図6における色値Bが色温度推定部1で推定された色温度の色値に対応し、色値Aが代表色値取得部2で取得された代表色値に対応しており、白色値をCb=Cr=0の点とすると、色値AからCb=Cr=0の点への色変換の処理が行われることになる。推定した色温度を用いる場合には、色値BからCb=Cr=0の点への色変換の処理となるため、緑がかった色は別の色へと変換されて白くはならない。色値BからCb=Cr=0の点への色変換の処理が行われることにより、緑がかった色は白色へと補正されることになる。
【0053】
例えばフィルタを使用して撮影された画像においても、使用したフィルタの色が画像全体に影響することになる。この場合も、熱光源を前提とする色温度の軌跡からはフィルタの色の影響は推定されず、代表色値取得部2でフィルタの影響による色値を代表色値として取得し、白色の調整を行うことになる。
【0054】
また、例えばタングステン光源が使用されて撮影された画像では、色温度推定部1でタングステン光源の色温度が推定されるが、この色温度に対応する色値は上述の蛍光灯を用いた場合に比べてCb=Cr=0の点からの色の違いが大きく、例えば図6の色値Aと色値Cとの関係になる。このような場合、推定した色温度に対応する色値が優先されて補正代表色値となり、タングステン光源の色温度に応じた白色の補正が行われることになる。また、代表色値取得部2で白色値との色差が予め決められた範囲の画素を白色近傍領域として抽出する際に、タングステン光源で照明された部分の色値が色範囲外となり、照明の影響を受けている画素が白色近傍領域に含まれなくなる。そのため、画像全体に占める白色近傍領域の割合が図7に示した例に比べて小さくなる。このような場合、補正代表色値算出部3では代表色値を考慮せずに、推定した色温度に対応する色値を補正代表色値とし、白色の補正を行ってもよい。
【0055】
もちろん、太陽光のもとで撮影された画像などでは、色温度推定部1で推定された色温度に対応する色値と代表色値取得部2で取得した代表色値とは、上述のいずれの例よりも差が小さく、補正代表色値も推定された色温度に対応する色値及び代表色値と変わらない色値となって、問題なく白色の補正が行われることになる。
【0056】
図8は、本発明の実施の一形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、41はプログラム、42はコンピュータ、51は光磁気ディスク、52は光ディスク、53は磁気ディスク、54はメモリ、61はCPU、62は内部メモリ、63は読取部、64はハードディスク、65はインタフェース、66は通信部である。
【0057】
上述の本発明の実施の一形態で説明した各部の機能を全部あるいは部分的に、コンピュータに実行させるプログラム41によって実現してもよい。その場合、そのプログラム41およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取る記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部63に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部63にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク51,光ディスク52(CD、DVDなどを含む)、磁気ディスク53,メモリ54(ICカード、メモリカード、フラッシュメモリなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0058】
これらの記憶媒体にプログラム41を格納しておき、例えばコンピュータ42の読取部63あるいはインタフェース65にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム41を読み出し、内部メモリ62またはハードディスク64(磁気ディスクやシリコンディスクなどを含む)に記憶し、CPU61によってプログラム41を実行することによって、上述の本発明の実施の一形態で説明した機能が全部あるいは部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム41をコンピュータ42に転送し、コンピュータ42では通信部66でプログラム41を受信して内部メモリ62またはハードディスク64に記憶し、CPU61によってプログラム41を実行することによって実現してもよい。
【0059】
コンピュータ42には、このほかインタフェース65を介して様々な装置と接続してもよい。もちろん、部分的にハードウェアによって構成してもよいし、全部をハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の構成とともに本発明の実施の一形態で説明した機能の全部あるいは部分的に含めたプログラムとして構成してもよい。他の用途に適用する場合には、その用途におけるプログラムと一体化してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…色温度推定部、2…代表色値取得部、3…補正代表色値算出部、4…白色変換部、41…プログラム、42…コンピュータ、51…光磁気ディスク、52…光ディスク、53…磁気ディスク、54…メモリ、61…CPU、62…内部メモリ、63…読取部、64…ハードディスク、65…インタフェース、66…通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の画像より色温度を推定する推定手段と、前記画像中の予め設定されている白色値から予め決められた色範囲の色が存在する領域である白色近傍領域から代表となる色値を代表色値として取得する取得手段と、前記推定手段で推定した色温度に対応する色値と前記取得手段で取得した代表色値から補正代表色値を算出する算出手段と、前記補正代表色値が前記白色値となるように前記画像の色を変換する変換手段を有することを特徴とする白色調整装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記推定手段で推定した色温度に応じた重み付けにより前記補正代表色値を算出することを特徴とする請求項1に記載の白色調整装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記白色値からの色差に応じた重み付けを行って前記代表色値を取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の白色調整装置。
【請求項4】
コンピュータに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の白色調整装置の機能を実行させるものであることを特徴とする白色調整プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−21534(P2013−21534A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153776(P2011−153776)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】