説明

白金中の不純物除去方法

【課題】 白金溶液等から回収した塩化白金酸アンモニウム及びまたは白金中の不純物濃度が高い場合、従来法では、工程の始めに戻すか、別途精製工程戻す等の必要があり、手間と時間がかかっていた。
上記の煩雑な処理をすることなく、容易に高純度の白金を得る方法提供することを目的とする。
【解決手段】白金中の不純物の除去に際して、塩化白金酸アンモニウム及びまたは白金に対して、酸素含有ガス気流中で800〜950℃に加熱し、少なくともルテニウムを30mass ppm以下にする白金中の不純物除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金中の不純物除去方法に関する。
特に、白金中のルテニウム等の不純物を効率良く除く方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅製錬殿物を原料とする白金の製造方法において、従来の不純物分離方法は、白金を製造する際の溶媒抽出条件や水溶液の中和条件をコントロールする方法が主なものであった。
【0003】
特許第3480216号(特許文献1)に抽出条件制御での分離精製例が、
特開平10-102156号(特許文献2)に中和条件制御での分離精製例が提示されている。
【0004】
上記の方法は、何れも回収した塩化白金酸アンモニウム或いは白金からルテニウムを除く方法ではなく、特許文献1では、溶媒抽出法において水相側にルテニウムを除去する方法であり、特許文献2では、湿式法において酸化処理後殿物中にルテニウムを回収する方法であるため、回収した塩化白金酸アンモニウム或いは白金を前工程に繰り返す必要があるため、工程が煩雑となり好ましくない。
【0005】
【特許文献1】特許第3480216号
【特許文献2】特開平10-102156号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回収した塩化白金酸アンモニウム或いは白金中の不純物濃度が高い場合、従来法では、工程の始めに戻すか、別途精製工程に戻す等の必要があり、手間と時間がかかっていた。
【0007】
本発明は、上記の煩雑な処理をすることなく、容易に高純度白金を得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、以下の発明を成した。
即ち本発明は、
(1)塩化白金酸アンモニウム或いは白金中の不純物の除去に際して、塩化白金酸アンモニウム及びまたは、白金に対して、酸素含有ガス気流中で800〜950℃に加熱し、少なくともルテニウムを30mass ppm以下にすることを特徴とする白金中の不純物除去方法。
【0009】
(2)上記(1)記載の酸素含有ガスが、空気であることを特徴とするスポンジ白金中の不純物除去方法。
【0010】
(3)上記(2)記載の空気量が、白金1g当たり0.005から0.05L/minである白金中の不純物除去方法。
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、
(1)白金中の不純物の除去ができ、99.99mass
%以上の高品質の白金が容易に得られる。
【0012】
(2)白金中のルテニウム、セレン等を容易に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明に関して、詳細に説明する。
本発明に関する対象は、塩化白金酸アンモニウム或いは、白金である。例えば、塩化白金酸アンモニウムは、不純物としてパラジウムを10mass ppmより少なく、ルテニウムを150から450 mass ppm、セレンを700から1000 mass ppm、テルルを5
mass ppmより少なく含むものである。
【0014】
又本発明の他の対象である白金は、例えば、不純物としてパラジウムを15 mass ppmより少なく、ルテニウム100から200 mass ppm、セレン100から200 mass ppm、テルルを5
mass ppmより少なく含むものである。
【0015】
塩化白金酸アンモニウムが加熱によって分解する温度は、500〜600℃であるが、本発明においては、酸素含有ガス中において、800から950℃で加熱処理する。
上記処理により、セレンが10mass ppm以下、ルテニウムが30 mass ppm以下の白金が得られる。
【0016】
酸素含有ガスは、空気であってもよく、酸素富化ガスであっても良い。
空気である場合は、白金1g当たり0.005から0.05L/min吹くことが好ましい。
この吹込みによりセレンを10mass ppm以下、ルテニウムを30 mass ppm以下にすることが出来る。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
表1に示す組成のルテニウム300mass ppm、セレン810mass ppm含む塩化白金酸アンモニウムを、図1に示す処理フローに沿い処理を行った。
この結果、分解炉で900℃まで加熱し、炉内温度500℃以上でになったところから空気を白金1g当たり0.02L/min吹き込むことで、ルテニウムが22
mass ppm、セレンが10 mass ppmより低い白金が得られた。
【0018】
この処理により、塩化白金酸アンモンから99.99mass%以上の高純度の白金を、容易に得ることができた。
【表1】

【0019】
(比較例1)
実施例1使用した塩化白金酸アンモニウムを、分解炉で600℃まで加熱し、炉内温度600℃に保持した。炉内温度500℃以上でになったところから、空気流量を白金1g当たり0.05L/min流すと、表1に示すように、ルテニウムが120mass
ppm、セレンが120 mass ppmの白金が得られた。
空気吹き込み時間はいずれも5時間である。
【0020】
(実施例2)
上記比較例1で得られた白金を再び加熱し、炉内温度500℃以上でになったところから空気を白金1g当たり0.01L/min流しながら、炉内温度:900℃まで加熱すると、表1に示すように、ルテニウムが17mass
ppm、セレンが10 mass ppmより低い白金が得られた。
空気吹き込み時間は5時間である。
【0021】
白金に空気を吹き込みつつ、加熱することにより、容易に高純度の白金を得た。
【0022】
(比較例2)
実施例2と同様に比較例1で得られた白金を、空気を吹き込まずに再び900℃まで加熱すると、表1に示すように、ルテニウムが110mass ppmと低下しなかった。
よって、酸素含有ガスを吹き込むことが、必須であることを把握した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用される処理フローの一態様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化白金酸アンモニウム及びまたは白金中の不純物の除去に際して、酸素含有ガス気流中で800〜950℃に加熱し、少なくともルテニウムを30mass ppm以下にすることを特徴とする白金中の不純物除去方法。
【請求項2】
請求項1記載の酸素含有ガスが空気であることを特徴とする白金中の不純物除去方法。
【請求項3】
請求項2記載の空気量が、白金1g当たり0.005から0.05L/minであることを特徴とする白金中の不純物除去方法。



【図1】
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【公開番号】特開2006−183099(P2006−183099A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378369(P2004−378369)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(397027134)日鉱金属株式会社 (29)
【Fターム(参考)】