皮下構造を破壊するための装置および方法
肌の凹凸および過剰な脂肪組織、セルライトおよび瘢痕化のような他の疾患を治療するために、哺乳類の身体の皮下構造を崩壊/破壊するための方法および装置が提供される。この装置および方法は、肌を介して非侵襲的に、より肌を介してより少ない侵襲性で、あるいは皮下アプローチを介して最小限に侵襲的に治療を行うための、エネルギーを伝達する印加装置、極微針、カテーテルおよび皮下の治療装置を備える。手技を援助してかつ改良する様々な薬剤もまた開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年9月7日に出願された米国仮特許出願第60/715,398号に基づく優先権を主張する。なお、この参照によってその内容の全体が本願明細書に組み込まれるものとする。
本発明は、表皮および皮下における皮膚の凹凸を治療するための方法および装置に関し、より詳しくは、過剰な脂肪組織、セルライトおよび瘢痕化のような皮膚の凹凸および他の疾患を治療するために、哺乳類の身体の皮下構造を崩壊/破壊する方法および装置を提供するものである。
この明細書において言及する全ての出版物および特許あるいは特許出願は、個々の出版物、特許あるいは特許出願があたかも具体的にかつ個別的に組み込まれるかのように、その参照により同一範囲で本願明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
女性型の脂肪栄養障害は、皮膚の表面(肌)の組織分布の変化、あるいは皮下のある領域において増大した流体保持力あるいは脂肪組織の増殖によって生じる陥凹形成効果につながる、皮下組織の限局性の代謝異常である。このような状態は、一般にセルライトとして公知であるが、思春期後の女性の90%およびいくらかの男性に影響を及ぼす。セルライトは一般に尻、臀部および脚部に出現するが、一般的に認識されているように必ずしも太りすぎによって生じるというわけではない。セルライトは、表皮および真皮層の下にある皮下レベルの組織に形成される。この領域において、脂肪細胞は、セプタムと呼ばれている結合組織のバンドによって取り囲まれた室の内部に配置される。水分が保持されると、これらの線維性セプタムによって定められる周辺部の内側に保持されている脂肪細胞が伸張し、かつセプタムおよび取り囲んでいる結合組織を伸張させる。最終的には、この結合組織が収縮しかつ硬化(硬化症)して柔軟性を持たない長さで肌を保持する一方、セプタム間の室が重量の増加および水分の増加によって伸張し続ける。このことは肌の領域が引き下げられることに帰着するが、その一方で他の部分が外側に膨張するので、皮膚表面上につぶつぶのある「ゆず肌」あるいは「カテージチーズ」のような外観をもたらす。
【0003】
肥満はセルライトの根本的な原因であるとは考えられないけれども、その領域における脂肪細胞の数の増大により、それは間違いなくセルライト領域における陥凹状の外観を悪化させる。深部の脂肪および解剖学的組織のより大きな領域を目標とする脂肪吸引のような従来の脂肪摘出技術は、時にはセルライトの外観を悪化させることがある。皮下の脂肪ポケットが残存するとともに、その領域の下方に横たわっている塊(深部の脂肪)の喪失によって目立つことになるからである。脂肪吸引を何度実行しても、患者はなお残存しているセルライトのような肌の凹凸の治療を要求する。
【0004】
セルライトのような肌の凹凸を治療するための様々なアプローチ、および不必要な脂肪組織の除去が提案されてきた。例えば、様々な局所的な薬剤の付加に加えた、吸引とマッサージの組合せあるいは吸引、マッサージおよびエネルギの適用によって患部に機械的なマッサージを提供する方法および装置が現在は利用可能である。1950年代に開発されたメソセラピーは、スポーツ傷害から慢性の痛みにおよぶ疾病のために肌を介して様々な治療溶液を注入するものであり、しわおよびセルライトを治療するための美容整形手技としてヨーロッパにおいて広く用いられてきた。この治療は、アミノフィリン、ヒアルロン酸、ノボカイン、植物エキスおよび他のビタミンといった様々な薬剤の肌を介しての注入あるいは移入を含み、血行および脂肪酸化の可能性の増大をもたらす。Acthyderm(Tumwood International、オンタリオ、カナダ)と名付けられた治療は、ビタミン、坑繊維化薬、脂肪分解薬(lypolitics)、抗炎症剤といった様々なメソセラピー薬剤の塗布に続いて、真皮に小さなチャネルを開けるために角質層を電気穿孔するローラシステムを用いる。
【0005】
リンパの排液を改善するマッサージ技術が1930年代の初期に試みられた。米国特許第5,885,232号および第5,961,475号に記載されている"Endermologie"装置(LPG Systems、フランス)、米国特許公開2005/0049543号に記載されている"Synergie"装置(Dynatronics、ソルトレークシティ、ユタ州)および"Silklight"装置(Lumenis、テルアビブ、イスラエル)のような機械的なマッサージ装置あるいはプレソテラピーもまた開発されてきたが、これらの全てが吸引および機械的なローラによる皮下マッサージを用いるものである。なお、これらの文献の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。他のアプローチは様々なエネルギー源を含んでいるが、Cynosureの"TriActive"装置(Cynosure、ウェストフォード、マサチューセッツ州)は機械的なマッサージに加えて半導体レーザのパルスを用いるし、"Cellulux"装置(Palomar Medical, Burlington, マサチューセッツ州)は冷却されたチラーを介して目標とする皮下脂肪組織に赤外光を放射する。米国特許第6,889,090号、第6,702,808号および第6,662,054号に詳述されている"VelaSmooth"システム(Syneron, Inc., Yokneam Illit、イスラエル)は、脂肪組織の代謝を増大させる吸引と共に双極性の高周波エネルギーを用いる。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。米国特許第5,755,753号、第6,749,624号、第5,948,011号、第6,387,380号、第6,381,497号、第6,381,498号, 第5,919,219号、第3,377,854号、第6,377,855号、第6,241,753号、第6,405,090号、第6,311,090号、第5,871,524号、第6,413,255号、第6,461,378号、第6,453,202号、第6,430,446号に詳述されている、"Thermacool"装置(Thermage, Inc., Hayward, カリフォルニア州)は、皮下の線維性セプタムを縮小させてしわおよび他の肌欠陥を治療するために高周波エネルギーを用いる。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。それらの全部において本願明細書に引用したものとする。いくつかの針の組を用いて低周波割込み電磁場を印加することにより循環の排液を助ける、脂肪電気泳動のような他のエネルギベースの治療法もまた開発されてきた("Cellulite. Aspects of Cliniques et Morpho-histologiques", J. med. Esth. Et Chir Derm (1983); 10(40), 229-223)。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。同様に"Dermosonic"装置(Symedex Medical、ミネアポリス、ミネソタ州)においては、保持された流体および毒素の再吸収および排液を促進するために無侵襲性の超音波が用いられる。さらに、米国特許出願第2004/0019371号は、細胞を改質して肌の凹凸を治療するためにエネルギーを付加することを記載している。また、米国特許出願第2003/0220674号ははセルライトを治療するために冷却の使用を記載している。
【0006】
瘢痕化および陥凹形成といった肌の凹凸の治療における他のアプローチは、サブシジョンと呼ばれる技術である。この技術は、陥凹形成あるいは瘢痕化の領域において比較的大きい寸法の針を皮膚下に挿入し、次いで肌の下において機械的に針を操作して皮下領域の線維性セプタムをバラバラにする。"Subcision: A treatment for cellulite", International Journal of Dermatology (2000) 39:539-544に詳述されているように、目標領域に局所麻酔薬を注入し、18サイズの針を皮膚表面の10〜20ミリメートル下方に挿入する。次いで、針を表皮に平行に案内して肌の下に剥離平面を作り出し、陥凹形成あるいは瘢痕化を生じさせている締め付けられたセプタムを殆ど完全に引き裂き、あるいは「自由に引き上げる」。それから、出血を制御するために圧力を負荷し、次いで手技に続けて圧縮布を使用する。いくらかの患者には臨床的な効果がある反面、痛み、挫傷、出血および瘢痕化に帰着することもあり得る。米国特許第6,916,328号は、サブシジョンのために横方向に配置される切削機構を記載している。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。また、超音波で支援されたサブシジョン技術を用いる技術が、"Surgical Treatment of Cellulite and its Results", American Journal of Cosmetic Surgery, (1999)16:4 299-303に詳述されている。なお、その内容はこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0007】
脂肪吸引、腫脹性脂肪の吸引、リポローシス(lypolosis)として公知の技術は、身体皮下および深部脂肪領域の脂肪組織を目標としている。これらの技術はまた、脂肪細胞を崩壊させてから取り除くこと、および身体の免疫/リンパシステムによる再吸収のためにそれらを残すことを含む。従来の脂肪吸引は、取り除かれる脂肪の部位に配置される外科的なカニューレの使用、流体の注入および脂肪組織をバラバラにするカニューレの機械的な動き、崩壊させた脂肪組織を患者から直接吸引するための吸入を含む。"Lysonix"システム(Mentor Corporation、サンタバーバラ、カリフォルニア州)は、米国特許第4,886,491号および第5,419,761号に詳述されているように、(目標部位の組織の空洞化によって)組織分裂を援助するために、吸引カニューレのハンドピース上にある超音波振動子を用いる。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。加えて、米国特許第6,041,787号および第6,032,675号に詳述されているように、脂肪組織を破壊するために低温冷却することが提案されてきた。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。腫脹性の脂肪吸引として公知の従来の脂肪吸引技術の変形例は1985年に導入されたが、現在では米国における標準的な治療となっている。それは、吸引カニューレによる機械的な破壊および除去の前における、目標領域への腫脹性の流体の注入を伴う。この流体は、機械的な破壊に伴う痛みの緩和を助けるとともに、組織を膨脹させて機械的な除去の作用を受けやすくする。リドカインのような局所麻酔薬、エピネフリン、食塩水、カリウム等の血管収縮剤を含む様々な組合せの流体を腫脹性の溶液として用いることができる。そのようなアプローチの利点は、以下の論文に詳述されている。"Laboratory and Histopathologic Comparative Study of Internal Ultrasound- Assisted Lipoplasty and Tumescent Lipoplasty" Plastic and Reconstructive Surgery, Sept. 15, (2002) 110:4, 1158-1164、および"When One Liter Does Not Equal 1000 Milliliters: Implications for the Tumescent Technique" Dermatol. Surg. (2000) 26:1024-1028、なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に明白に組み込まれるものとする。
【0008】
Liposonix (Bothell,ワシントン州)および、Ultrashape(テルアビブ、イスラエル)は、脂肪組織を非侵襲的に破壊するために焦点を合わせた超音波を用いる。米国特許第6,607,498号、米国特許公開20004/0106867号および2005/0154431号は、これらのシステムを記載している。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0009】
皮膚科的クリーム、化粧水、ビタミンおよびハーブサプリメントを用いる様々な他のアプローチもまた提案されてきた。個人的な温泉場およびサロンは、身体のこすり洗い、圧覚点マッサージを含むセルライトマッサージ治療を提供するが、植物性揮発油、海草、トクサ、クレマチスおよびツタのような植物化学種から抽出されたハーブ製品の使用もまた提案されてきた。多数の治療が存在するけれども、それらの殆どは肌の凹凸に対して永続的な効果を提供しないし、いくつかは(脂肪吸引が瘢痕化あるいはセルライトのより顕著な外観を生じさせるように)一つの治療が他のものを悪化させ、あるいはその採用を制限するマイナスの副作用を有している。ほとんどの治療は、継続する複数の治療を必要とし、それらの効果を維持するためにはかなりの出費がかかり、かつ結果もまちまちである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したことを考慮すると、肌の凹凸を治療するための最小限に侵襲性のあるいは無侵襲性の方法および装置を提供すること、および顔面、首、腕、脚部、大腿、臀部、胸部、腹部および他の目標領域のような人体の部位に継続する美的な結果を提供することが望ましい。
【0011】
また、肌の凹凸を治療するための、従来技術を改良して侵襲性がより少なくかつ副作用の少ない方法および装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述したことに鑑みて、本発明の一態様は、皮膚および皮下の凹凸、より詳しくは過剰な脂肪組織、セルライト、瘢痕化および関連した疾患を治療する、最小限に侵襲的あるいは非侵襲的で、制御されかつ選択的な、より耐久性のある効果を提供する方法および装置を提供する。
【0013】
本発明の一態様においては、(皮膚の表面に)非侵襲的に、(皮膚表面下3〜10ミリメートルの間で)より低侵襲的に、あるいは(深部脂肪層に対して6ミリメートルよりも深く)最小限に侵襲性の装置を適用し、電気、超音波あるいは他のエネルギー場を用いて哺乳類の身体の皮下構造を崩壊/破壊する、そのような状態を治療するための方法および装置が提供される。
【0014】
本発明の更なる態様において、そのようなエネルギー場は、標的細胞膜の透過化処理(permeabilization)を介して細胞レベルで組織を崩壊させるための、指定された持続期間および振幅の一つのパルスあるいは複数のパルスによって発生させることができる。本発明の更なる態様においては、標的皮下構造の細胞膜に孔を生成することにより、細胞の死滅に帰着する不可逆的な細胞損傷を生じさせることが望ましい。
【0015】
本発明の他の態様においては、高周波エネルギー、直流、電気抵抗による熱エネルギー、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギーあるいはレーザエネルギーを印加する本発明の装置および方法を用いて皮下の構造を破壊することが望ましい。
【0016】
本発明の別の態様においては、標的組織(結合組織、コラーゲン、脂肪組織等)への電気的な手技は、細胞膜の可逆的なあるいは不可逆的な電気穿孔を生じさせることにより細胞レベルの組織を破壊して印加された電界の作用を受けやすくするべく、低張塩水、カリウム等の促進剤の注入あるいは付加による細胞内の環境あるいはまた細胞膜の変化によって改良することができる。
【0017】
本発明の別の態様において、標的組織(結合組織、コラーゲン、脂肪組織等)の破壊は、微小な泡、攪拌された塩水、商業的に入手可能な超音波造影剤等のような促進剤を注入あるいは付加し、その領域に供給されたエネルギーを増大させ、空洞化等によって治療効果を高めることにより改良することができる。
【0018】
本発明の更なる態様において、エネルギー伝達部材は、標的部位へのエネルギー供給の改良に適するように、皮膚に、経皮的にあるいは皮下に配置することができる。
【0019】
本発明の更なる態様は、リドカイン、エピネフリン、低張塩水、カリウム、撹拌塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体等のような治療促進剤の治療部位への付加と共に、本発明のエネルギーアプローチを用いることにより、肌の凹凸および他の関係する疾患を治療する方法および装置を提供することにある。
【0020】
加えて、本発明の別の態様では、本発明の治療を施した後に、全体的な所望の効果を改良する必要に応じて、脂肪細胞、脂肪、PLLA、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、ヒアルロン酸等の充填剤を付加する。
【0021】
本発明の更なる態様において、体内の複数の位置から安全に適用することができる治療を提供するために、ある種の型の細胞は選択的に破壊するがそれ以外については破壊しない方法および装置を提供することが望ましい。
【0022】
本発明の一態様は、皮下組織を破壊するための医療装置であって、電界発生装置、この電界発生装置と電気的に接続された少なくとも2つの電極、および治療する皮下組織に治療促進剤の溶液を注入するように構成された注入モジュールを備える。少なくとも一つの電極は治療する皮下組織に挿入されるように構成され、かつ少なくとも一つの他の電極は治療する患者の表皮に当てられるように構成される。本発明の更に別の態様において、少なくとも2つの電極が治療する患者の表皮に当てられるように構成される。少なくとも2つの電極を、治療する皮下組織に挿入されるように構成してもよい。少なくとも2つの電極のうちの1つは接地電極として構成することができる。少なくとも2つの電極は双極電極として構成することができる。少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つは、概ね環状の形状である。少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つは概ね円柱の形である。さらに別の態様において、電界発生装置は電気穿孔(エレクトロポレーション)発生装置である。
【0023】
この医療用機器は、ハウジングを更に含み、少なくとも2つの電極のうちの1つがこのハウジングの内側に配設される。少なくとも1つの電極はハウジングの内側に配設される中央治療要素として構成することができ、この中央治療要素とハウジングとの間に環状領域を配設することができる。この環状領域は、負圧供給源に接続されるように構成することができ、それによってハウジングは治療する領域の上に重なっている肌と接触するように構成される。中央治療要素はハウジングの内側に埋め込むことができる。中央治療要素は、治療する患者の肌の上を転動するように構成することができる。
【0024】
本発明の更なる態様において、この装置は、注入モジュールに接続された極微針を有したパッドを備え、このパッドは治療する患者の肌に追従するように構成される。このパッドは、リザーバおよび極微針を配置させるための作動要素を含むことができる。なお本発明の更なる態様において、少なくとも極微針の1つが、少なくとも2つの電極のうちの1つとして構成される。
【0025】
本発明の更なる態様において、カテーテルデバイスは、治療する皮下領域に枝を配置するように構成することができる。これらの枝は、針、電極および切断要素からなるグループより選択される。
【0026】
本発明の更に別の態様は、皮下組織を破壊する装置であって、第1の近位端、皮下組織への挿入に適合した第2の遠位端、およびそれらの間で縦方向に配置されたチャネルを有した管状要素を備える。複数の伸長可能な細長い要素は、第1の近位端および第2の遠位端を有してチャネルの内側に配設されるとともに、チャネルの内側に引き込まれた第1の状態からチャネルの外に延びた第2の状態へと動くことができ、細長い要素の遠位端は、延びた状態のときに、引き込まれた状態におけるよりも遠くへと互いに離間する。複数の伸長可能な細長い要素は、針、電極および切断要素からなるグループより選択することができる。本発明の更なる態様においては、複数の伸長可能な細長い要素は、生物組織を破壊する効果のために、エネルギー場を形成するように幾何学的に構成される。
【0027】
本発明の一態様は皮下構造を選択的に破壊する方法であり、第1の電極および第2の電極を設け、治療する組織に隣接させて第1の電極を配置し、第1の電極および第2の電極をエネルギー供給システムに接続し、このエネルギー供給システムは第1および第2の電極の間に電流を生じさせるように構成され、第1の電極と第2の電極との間に電流を提供し、それによって少なくとも一つの細胞の透過性を増大する。少なくとも、第1の電極は、生物組織を破壊する効果のために、エネルギー場を作る幾何学的に構成することができる。この方法は、ハウジングの内側に配設された中央治療要素を治療組織上で転動させることを含むが、第1の電極は中央治療要素に配設される。本発明の更に別の態様においては、大気より低い圧力が、中央治療要素の周りに配設れた環状領域に与えられる。
【0028】
本発明の更なる特徴、その本質および様々な利点は、添付の図面および以下の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、コラーゲン、結合組織、脂肪組織(脂肪細胞)等の皮下構造(あわせて「標的組織」あるいは「皮下構造」)を標的として破壊する方法および装置に関する。本発明は、標的とする領域の美的な外観の改善に有用である。この標的領域は、人体において改善が望まれる、顔面、あご、首、胸部、乳房、腕、胴、腹部(骨盤領域を含む)、大腿、臀部、膝および脚部を含む任意の表面あるいは輪郭から成る。標的組織には、その領域の結合組織あるいはセプタム、または皮下および深部脂肪の沈澱あるいは層のような、その下に横たわっていて望ましくない身体の輪郭を悪化させ得る組織が含まれる。
【0030】
肌の凹凸は、セルライトや瘢痕化、あるいは首、あご、乳房、尻、腹部、腕等の領域における脂肪の沈澱あるいは過剰な脂肪といった、外側の様相に対する人の満足感を減少させる状態を指す。
【0031】
ここで図1Aおよび 図1Bを参照すると、治療すべき皮膚組織あるいはまた皮下組織の目標領域100の断面が示されているが、表皮102、真皮104、皮下脂肪106、線維性のセプタム108、微小循環、リンパ排液、およびより深部脂肪層110が含まれている。真皮は、実質的に縦のセプタムあるいは膠原線維を介して皮層に付着した脂肪皮下結合組織に接続されている。この皮下脂肪組織は、セプタムの繊維によって分離されて、脂肪組織あるいは脂肪の室112に区画されている。これらの室は増大した脂肪細胞あるいは保持されている流体の存在に起因して膨張し、脂肪領域が膨張してセプタムが張力下で厚くなると、セプタム上に張力を生じさせて最終的には皮膚表面に陥凹を形成する。次いで微小循環およびリンパ排液が弱まり、さらには局部的な代謝性の症状を悪化させる。図1Aは、肌の凹凸を呈していない全く通常の肌の断面を示している。図1Bは、膨張してセプタムに締め付けられて、不規則な皮膚表面の特徴につながる皮下脂肪層を示している。
【0032】
蓄えられたあるいは深部脂肪層110は、皮下脂肪層106の下位に配設されて肌の凹凸の一因となる。そのため、この開示においては「皮下の構造」として考慮する。少なくとも一つの実施形態において、本発明の装置は、上述したような目標領域100に向けることができる。いくつかの特定の実施形態には、エネルギー支援サブシジョン、線維性セプタム108の破壊、陥凹形成の原因となる皮膚表面上の外側の圧力を少なくするための皮下脂肪106の細胞の破壊、あるいは全体的な表面輪郭のためより深部脂肪層110の破壊が含まれる。
【0033】
本発明の目的を達成するためには、電気穿孔(可逆性あるいはまたは不可逆性)、パルス電界、高周波エネルギー、マイクロ波エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギ等を含む様々なエネルギー形態を用いて皮下構造106、108、110の破壊を達成する方法および装置を用いることが望ましい。例えば、パルス電界の適用、あるいはまた目標領域100に直接的にあるいは目標領域に近接させた電気穿孔の適用は、所望の破壊を生じさせることができる。この開示においては、「電気穿孔(エレクトロポレーション)」という用語はパルス電界(PEFs)、ナノ秒パルス電界(nsPEFs)、イオン浸透、電気泳動法、電子透過化処理、音響穿孔、あるいはまたその組合せの、恒久的なあるいは一時的な、可逆的なあるいは不可逆的な、補助的な薬剤を使用しあるいは使用しない、熱影響の存在を必要としない使用を含む。同様に、本願明細書において用いる「電極」という用語は、アンテナ、例えば極超短波送信装置や超音波要素を含む、種々のタイプのエネルギーを生み出す装置の使用を包含する。
【0034】
可逆的な電気穿孔は1970年代の初期に初めて認められたが、電子化学療法、遺伝子導入、経皮薬物送達、ワクチン等のような様々な目的のために、目標とする細胞への化学製品、薬物、遺伝子および他の微粒子を移入させるべく、医学および生物学において広範囲にわたって用いられてきた。不可逆性の電気穿孔は、電気穿孔技術を用いるときには歴史的にほとんどの場合に回避されてきたが、水および食品の細菌除去(debacterilization)、基幹細胞強化および癌細胞パージ(Mangano、米国特許第6,043,066号)、腫瘍性前立腺組織の統制された切除(Chomenky、US2003/0060856)、身体血管の再狭窄の治療(Jaafar、US2001/0044596)、脂肪細胞の選択的不可逆性電気穿孔法(Jaafar、US2004/0019371)および腫瘍切除(Davalos, et al Tissue Ablation with Irreversible Electroporation, Annals of Biomedical Engineering 33:2, pp. 223-231(2005年2月)の用途における細胞分離のために近年提案されてきている。
【0035】
さらに、超短パルスあるいはナノ秒パルス電界(nsPEFs)に適用されるエネルギー場も、本発明に用途を有している。そのような技術は、外膜を永久的に崩壊させることなしに細胞下の構造を目標とするために超短波パルス長を用いる。この技術の実例は、Schoenbach et al. In Intracellular Effect of Ultrashort Electrical Pulses in J. Bioelectromagnetics 22:440-448 (2001)に記載され、かつ、米国特許6,326,177に記載されている。なお、その内容はこの参照によって本願明細書に明白に組み込まれるものとする。短いパルスは細胞内の器官を目標とし、細胞膜に電気穿孔効果を呈するが、そのような効果は可逆的であるため恒久的な膜破壊につながることはない。ナノ秒パルスの適用に続いて細胞内の内容物における細胞自滅が誘起され、細胞の生存度(例えば再生能力)に影響を及ぼす。
【0036】
一般的に、電気穿孔は、電極の組あるいは電極の列を活性化させて電界を生じさせるように構成された装置を用いて達成することができる。そのような場は、多極、双極、あるいは単極の電極配置において発生させることができる。細胞に印加されると、印加されたパルスの持続期間および強度に応じて、この場は、細胞膜の透過化を増大させるように作用し、そして、1)細胞脂質二重層に孔が形成されるようにして短い期間の間細胞膜を可逆的に開き、様々な治療上の成分あるいは微粒子が侵入できるようにし、その後、エネルギーの印加が停止すると、細胞を殺すことなく孔が自然発生的に閉じるか、あるいは、2)より高い強度(より長い、より高いエネルギー)のパルスを用いて、不可逆的に細胞膜を開きあるいは孔を開けて細胞の不安定性を生じさせ、細胞死を引き起こすか、あるいは、3)ナノ秒パルスのエネルギーを印加して、細胞膜の不可逆的な穿孔を生じさせることなく、細胞自滅および細胞死につながる細胞内の基質の破壊を引き起こす。Weaver, Electroporation: A General Phenomenon for Manipulating Cells and Tissues Journal of Cellular Biochemistry, 51 : 426-435 (1993)によって特徴づけられるように、短い(1−100マイクロ秒)およびより長い(1〜10ミリ秒)パルスが様々な型の細胞電気穿孔を生じさせる。なお、この文献の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。単一の細胞モデルにおいては、ほとんどの細胞は、細胞全体に印加される1〜1.5Vの範囲(膜電位)において電気的な穿孔を呈する。細胞容積に電気穿孔を適用するために、10V/cm〜10,000V/cmおよび1.0ナノ秒〜0.1秒にわたるパルス持続時間を印加することができる。
【0037】
ある種の要因は、供給された電界が目標を定めた細胞にどの様に作用するかについて影響を及ぼすが、これらの要因には細胞のサイズ、細胞の形状、印加された電界に関する細胞の配向、細胞の温度、細胞間の距離(細胞と細胞の分離)、細胞の種類、組織の不均一性、細胞膜の特性などが含まれる。より大きい細胞は、損傷に対してより脆弱であり得る。例えば、骨格筋細胞が、すぐ近くの結合組織細胞よりも電気的な損傷の作用を受けやすいことが指摘されている(Gaylor el al. Tissue Injury in Electrical Trauma, J. Theor. Biol. (1988) 133, 223-237)。なお、その全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。脂肪組織あるいは脂肪細胞は、それらの断熱的な特性に起因して損傷に対し脆弱ではないため、細胞膜が損傷の作用を受けやすくするためには前処理あるいはエネルギーを印加する間の処理が必要である。
【0038】
この領域における研究によると、低張溶液は人間の脂肪細胞のセル直径をかなり増大させることができる。注入から15分以内では、4分の1の通常生理食塩溶液がセル直径に対してかなりの効果を有することが既に報告されている。低張溶液を超音波脂肪吸引と共に使用することの科学的な根拠は、(Jennifer M. Bennett, MS, abstract presented at Plastic Surgery 2004)に記載されている。例えば、脂肪細胞が本発明の標的組織である場合には、低張塩水のような溶液をその領域に注入する必要があるが、それは翻って脂肪細胞の腫大を生じさせて細胞膜上の応力の増加を引き起こし、電気穿孔あるいは超音波エネルギーの印加または他のエネルギー形態の印加によってより破壊の作用を受けやすくする。そのような増強効果は、細胞サイズの変化、増大した細胞伝導率、増大した細胞外伝導率、増大した壁応力であり、増大した透過性につながる。加えて、塩水、カリウムおよび他の溶液成分の濃度の変更は細胞膜の透過化に影響を及ぼす。
【0039】
それに加えて、細胞は、印加された場の中でどのように方向付けられているかによって、より損傷の作用を受けやすくなる。例えば、非球形細胞の長軸が電界に沿って方向付けられていると、より破壊の作用を受けやすい(Lee et al, Electrical Injury Mechanisms: Electrical Breakdown of Cell Membranes, Plastic and Reconstructive Surgery, November 1987, 672-679)。なお、この文献の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。例えば、本発明の前後関係においては、結合組織の方向付けに応じて、場の方向によっては印加されたエネルギー場の作用を受けやすくなる。使用するパルス発生器、あるいは所望の効果に応じて電気穿孔を達成するために正弦波のACパルス、DCパルス、方形波パルス、指数関数的に減衰する波形、組み合わせられたAC/DCパルス、あるいはCell Poralion and Cell Fusion using an Oscillating Electric Field, Biophysical Journal October 1989, Volume 56 pgs 641-652のChangに記載されているDCシフトされたRF信号のような他のパルス波形を含む、パルスの様々な波形あるいは形状のパルスを適用することができる。なお、上記の文献の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。印加されるエネルギーのパラメータは変更することができるが、それらには以下の全てあるいはそのいくつかが含まれる:波形形状、振幅、パルス持続時間、パルスの間隔、パルスの数、波形等の組合せ。本発明の電気穿孔カテーテルシステムは、Cytopulse Sciences, Inc.(Columbia、メリーランド州)、あるいはGene Pulser Xcell (Bio-Rad, Inc.)、IGEA(Carpi、イタリア)、またはInovio(San Diego、カリフォルニア州)から入手可能な、表面電極あるいはカテーテル電極のようなエネルギー印加装置に電気的に接続されたパルス発生装置を備える。この発生装置は、不可逆性の電気穿孔を引き起こすべく、より高い電圧、増大したパルス電気容量あるいは他の変更を生じさせるように変更することができる。一つの実施形態において、この発生装置は、電界(e-field)がより長くとどまり、それによって脂肪組織の細胞電気穿孔が高められ、あるいはまた筋組織の破壊が最小化されるように、その電流を制限することができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、所望の効果に応じて、様々なエネルギー形態の適用と共に様々な治療促進剤54を用いることができるが、そのいくつかについては以下に詳述する。例えば薬剤は、治療装置から直接的にあるいは遠く離れた注射部位から、静脈内供給を含めて、経皮的にあるいは皮下注射によって伝達することができる。治療促進剤には、リドカインのような麻酔薬、エピネフリンのような血管収縮の薬剤、低張塩水、カリウム、攪拌された塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体、脂肪細胞、脂肪、自己由来の組織(例えば、身体からの敵対的な反応を最小化するための組織移植片を形成するきれいな脂肪細胞を生み出す崩壊された脂肪細胞)、PLLA、ヒドロキシアパタイト(hydroxyappetite)が含まれる。治療促進剤は、本発明のエネルギー印加治療の前に、間に、あるいは後に供給することができる。
【0041】
本発明の装置は(皮膚表面あるいは表皮102に対して)非侵襲的に適用されるもの、(表皮表面102の下の約3〜10ミリメートル下方の肌を介した)より侵襲的でないもの、および(深部皮下領域106および深部脂肪層110に対して約8ミリメートルあるいはより深い)最小限に侵襲的なもの、を含む。所望の効果に応じて、選択されたエネルギーおよび電極の設計は、効率よく目標が定められた組織のタイプに影響を与える開示のために、ある種のエネルギー形態および電極を組み合せるが、本発明の範囲を制限することは意図していない。
【0042】
ここで図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る装置30は、ハウジング32および中央治療要素34を有している。ハウジングと中央治療要素の間には環状領域36が配設されている。この環状領域は、ハウジングから中央治療要素までの寸法が約5〜20ミリメートルの開口38を有している。一つの実施形態においては、中央治療要素はハウジングの内部に回転自在に接続されたローラとして構成され、ハウジングが肌の表面102(図1)上を移動するときに回転できるようにしている。さらに他の実施形態においては、中央治療要素は、ハウジングの内部に部分的に例えば約5〜30ミリメートルにわたって埋め込まれるが、皮膚表面に当てられると肌を押して電気的な接続のためのより良好な接触をもたらすように充分な距離で延びる。一つの実施形態においては、中央治療要素あるいはハウジングが電極となり、患者の身体のどこかに接地パッド(図示せず)の形態でアース(図示せず)が配置され、あるいは、ハウジングおよび中央の治療要素の両方が二極性のシステムを形成する活性電極となる。一つの実施形態においては、ハウジングおよび中央治療要素の両方が、電力が供給されている間にほぼ同時に肌あるいは表皮102に接触する。後に詳述するように、環状領域に関連させて管腔を挿入し、この装置を吸引性の管腔に接続することにより、この装置を肌に当てるときに吸引できるようにすることが有益である。例えば、少なくとも一つの実施形態において、医療的な吸引あるいは負圧を環状領域36に接続し、目標領域100(図1)とこの装置30が互いに引っ張り合うようにする。このようにして、肌あるいは表皮102との接触が維持されて所望の加圧が達成される。治療装置による様々な組織層の加圧は、治療効果を達成するために必要なエネルギー量に影響を与える。
【0043】
中央治療要素34あるいはハウジング32は、多くの形状に構成することができる。少なくとも一つの実施形態において、中央治療要素34は円柱、環状体、楕円等として形付けることができる。ある用途において、治療要素の一つの領域にエネルギーを供給して集中させるときには、少なくとも一つの曲率半径を有する幾何学的形状が「エッジ効果」を最小化するために望ましい。
【0044】
ここで図3を参照すると、本発明の他の実施形態は、目標とする組織100の領域のいずれかの側に配置されたクランプ40を含んでいる。一つの実施形態において、このクランプは、表皮102と接触する第1電極41および第2電極42を有した二極性の構造に構成されている。治療する皮下組織106は、これらの電極の間に配設される。第1電極が電圧を供給し、第2電極はアースである。
【0045】
ここで図3Bを参照すると、クランプ腕あるいは電極40の鋭い縁部における「エッジ効果」すなわち電流の集中が増大したエネルギー密度を呈するので、より一様なエネルギーの供給が最も有益である本発明の所期の効果にとっては望ましくない。エネルギーのより一様な供給は早すぎたインピーダンス上昇の可能性を減少させて、供給されるエネルギーの総計および持続期間あるいは表皮102(図1)のような取り囲んでいる構造への意図しない組織損傷を減少させる。
【0046】
図4は、本発明の他の実施形態の断面を表しているが、略円柱状の要素51,52を有したクランプ50が採用されて、「エッジ効果」を少なくするとともにより一様な電流を印加するようになっている。この実施形態においては、クランプの腕51が活性電極(アクティブな電極)として、かつクランプの他の腕52がアースとして示されている。しかしながら、実際には、両方のクランプアーム51、52を活性電極およびアース(図示せず)として、治療する領域100の近傍にあるいは治療する領域から離して患者の組織上に配置することができる。
【0047】
図5Aは、形状が環状で球面の直径が例えば45ミリメートルである中央治療要素34を用いた単極構造の図2の装置30の適用を示している。この実施形態においては、中央治療要素は正に帯電した活性電極であり、所望の標的組織は皮下脂肪106および線維性のセプタム108および筋肉層まで至る深部脂肪110(図1)を含む結合組織である。中央治療要素として様々な直径、例えば10ミリメートル〜50ミリメートルの球形を用いることができる。ここで図5Bを参照すると、中央治療要素の曲率半径により、皮下の層106、108、110(図1)の内部に目標が定められたエネルギーに加えて「エッジ効果」は存在していない。
【0048】
例示的な意味では、図2A〜図5Bに描かれている装置は様々なエネルギー源を用いて利用することができるが、実際には前述したような電気穿孔発生装置を用いる。5〜2000ボルトの範囲で、目標を定める組織の厚みおよび細胞のタイプに応じて50〜10,000V/cmの範囲、例えば100〜3,000V/cmの範囲の電界強度の様々な電力を供給することができる。そのようなエネルギーの供給はまた、目標組織に対する破壊的な効果を最大にする一方で筋収縮を最小化するためにパルスとしあるいは切替えることができる。
【0049】
本発明のエネルギー印加装置は、本願明細書の他の部分で詳述する注射可能な促進剤54と共に用いることができる。ここで図6を参照すると、本発明の少なくとも一つの実施形態は、治療促進剤54の皮下注射と共に用いられる中央治療要素34を有した、非侵襲性のエネルギー供給システムを含んでいる。この実施形態においては、エネルギー供給システム33は上述した電気穿孔発生装置であり、中央治療要素34が電極であるが、それはSiemens/Acuson(Malvern、ペンシルバニア州)によって製作されるシステムのような超音波振動子に作動的に接続される超音波発生装置とすることができる。注入は、皮下脂肪106、深部脂肪110(図1)、線維性のセプタム108あるいは破壊する他の結合組織を含む破壊すべき皮下構造の任意の位置に目標を定めることができる。このシステムは、皮膚表面から印加されたエネルギーに接触すると激増する泡やその他の形態の増大したエネルギーポテンシャルを治療部位に生み出すために、注入の前に溶液を「泡立たせ」あるいは攪拌する注射器56を含むことができる。
【0050】
図7A〜7Bおよび図8A〜図8Cを参照すると、本発明の更なる実施形態においては、ハンドピース268は、患者の皮膚表面に追従するパッド60を含んでいる。このパッドは、そこから延びる複数の極微針(マイクロニードル)62を含むとともに、リザーバ64と連通している。この装置は、空気あるいは流体によって膨張し、患者の肌の皮層を介して極微針を配置させる、ブラダのような作動要素66を更に備えている。肌を介した針の挿入は目標組織の抵抗を実質的に減少させ、目標組織を、印加されたエネルギーの作用をより受けやすいものとする。極微針は、治療する目標組織に応じて0.5ミリメートル〜20ミリメートルの距離で肌の内部に延びるが、いずれの場合も角質層を通過する。例えば、セルライトを治療するためには1〜5ミリメートルの針入深さが望ましいが、より深い皮下脂肪のためには3〜20ミリメートル、例えば5〜10ミリメートルの深さが望ましい。一つの実施形態においては、肌を不必要な組織損傷から保護するために極微針の作動部分以外は絶縁され、例えば最初の0.5ミリメートル〜1ミリメートルは絶縁体を支持することができる。さらに他の実施形態において、針は完全に絶縁することができる。別の実施例では針は絶縁されない。極微針は、上述した電気穿孔発生装置あるいは超音波発生装置のようなエネルギー源33(図6)に作動的に接続することができる。さらに、極微針を介して治療促進剤54を注入することができる。
【0051】
極微針62は、列の間で二極式とすることもできるし、あるいは患者のどこかに配置された接地パッド(図示せず)と共に単極式に作動させることもできる。ラスター走査の仕方で電力を印加して、様々な対あるいは対のセットをある間隔で活性化させることができる。極微針の列の間の間隔は、最大磁界が均一となるように、例えば0.5〜5.0ミリメートルの範囲の間隔に設定される。
【0052】
さらに他の実施例においては、ハンドピース268のベース266は、大気より低い圧力を用いて患者の肌102をベースに向かって上方に吸引するための吸引部材264を含むことができる。この吸引部材は、機械ポンプ(図示せず)、ハンドポンプ(図示せず)あるいは大気より低い圧力の他の供給源に接続できる、少なくとも一つの吸引管270を含んでいる。
【0053】
一つの実施形態においては、肌102は、肌に吸引を負荷する前にハンドピース268の外に配置されている針62に向かって上方に吸引される。その後、肌に吸引が負荷されると、肌はハンドピースのベース266に向かって上方に吸引され、針は治療する患者の少なくとも表皮102を貫通する。他の実施形態においては、ハンドピースは第1の状態で患者の上に配置されるが、このときには針の遠位端はハンドピースの内部にある。それから、ハンドピースのベースに対して肌を上方に引っ張るために吸引が負荷される。その後、針の遠位端がハンドピースの外側にある第2の状態に針を配置すると、針は治療する患者の少なくとも表皮を貫通する。一つの実施形態においては、針の遠位端は注入部材から自動的に配置される。第1の状態と第2の状態との間での針の移動は制御装置によって制御される。少なくとも一つの実施形態においては、第1の状態と第2の状態との間での針の自動的な配置のために、モータをハンドピースに含めることができる。
【0054】
図8A〜図8Bは、治療促進剤54を注入できるとともに、皮層104(角質層)を通って治療が望まれる皮下層106、108、110(図1)の内部へと延びるように構成された、一連の極微針62を示している。例えば、本発明による極微針62を介したエネルギーの印加は、皮下層のセプタム108を破壊することができ、エネルギー支援のサブシジョンおよびそれに続く肌の平滑化を生じさせる。加えて、極微針は、その直径および針入の深さに応じて、皮下脂肪106の細胞を破壊するために、治療促進剤が細胞に入ってその機能を破壊することができるように細胞膜の透過処理を生じさせるのに十分な、あるいは細胞死に結びつく不可逆性の電気穿孔を生じさせるのに十分なエネルギーを供給することができる。図8Bは、治療促進剤54を注入できる追従可能なパッド60あるいはリザーバ64上にある極微針62の配列を描いている。一つの実施形態においては、針は二極式の構造に配置することができる。他の実施形態においては、針が単極式の構造に配置され、かつ接地パッドが治療する組織から間隔を開けて患者に装着される。
【0055】
環状体電極51、52およびクランプ電極41(図2〜図6)を極微針62と共に構成することは本発明の範囲内であるが、この極微針62は、ユーザーによって、または装置30の環状領域36(図2)あるいは吸引部材264に負荷される負圧によって患者の肌の皮層104に押し込まれる。さらに、ユーザーが治療することを望む距離および位置に極微針を置くことができるようにすることは有益である。この際、それによってユーザーが別々の針62を配置できるテンプレート90(図15)を設けるとともに、選択された配置に応じたエネルギーのアルゴリズムを提供することは、本発明の範囲内である。
【0056】
ここで図9を参照すると、本発明の他の実施形態においては、針62、電極72あるいは電極列74を配置するように構成されたカテーテルデバイス70を、肌102、104を通して目標である皮下構造106、108、110に挿入するために設けることができる。例えば、扇形に広がった電極配列74を複数の延伸要素あるいは枝62、72と共に設けることができる。
【0057】
枝62、72は、メインカテーテルシャフト76を介して肌102、104を通して配置することができ、実質的に皮膚表面102と水平(平行)な配向で「扇形に展開する」。枝がまた電極72である実施形態においては、枝を皮膚表面に実質的に平行であるように配置してエネルギーを印加すると、皮下脂肪106あるいは線維性のセプタム108のような皮下の構造を破壊することができる。複数の枝を用いると、今日の装置によって予測されるよりも大きな領域をより短い時間で治療することが可能である。電極装置70の枝は、治療促進剤54の注入を可能にするために中空に構成することができる。中空の枝は、その全長に沿ってそしてその遠位端79に複数の流出口78を有することができる。
【0058】
一つの実施形態においては、扇形に広がる枝の配列74は、第1の近位端76p、皮下組織への挿入のために適合した第2の遠位端76d、およびそれらの間で長手方向に配設されたチャネル76cを有した、筒状要素70を含むことができる。第1の近位端(図示せず)および第2の遠位端79を有した複数の伸長可能な細長い要素72、74は、チャネルの中に配設されるとともに、チャネルの内部に引き込まれた第1の状態からチャネルの外に延びる第2の状態へと動くことができ、細長い要素の遠位端は延び出た状態においては引き込まれた状態よりも互いに離れている。一つの実施形態においては、高周波メスをこの配列に用いることができる。さらに他の実施形態においては、機械的なメスあるいは切断要素をこの配列に用いることができる。
【0059】
ここで図10を参照すると、本発明のさらに他の実施形態においては、枝はエネルギーを供給しない単に鋭利な切断要素80であるが、これらの枝を皮膚表面102に平行に配置してカテーテルシャフト76の縦軸77(図9)の周りに回転させ、あるいは肌に対して実質的に平行な配向で引き込ませると、この装置70は一度の回転あるいは引き込みにおいて複数のセプタム108を効率的に破壊することができる。さらに他の実施形態においては、少なくとも一つのカテーテルシャフト76を、治療する組織の内部への治療促進剤54の注入のために構成することができる。さらに他の実施形態においては、針の先端の幾何学的形状は、特定の組織を破壊する効果のためのエネルギー場を形作る構成とすることができる。
【0060】
ここで図11を参照すると、さらに他の実施形態においては、作動要素80、例えば切断要素をカテーテルシャフト76の中心軸77に対して鋭角に配置することができる。この装置の作動領域80は、カテーテルシャフトに挿入するために折り畳むとともに、皮下のスペース106、108、110に配置するときには伸張させることができる。切断する状態に配置されると、図11に示したように、カテーテルシャフトは皮膚表面102に平行に方向付けられ、装置70を引き戻すと、そのチャネルにおいてセプタム108を捕捉して切断する。装置70の作動領域80は、例えば、鈍い解剖器具、機械的なカッター、あるいはエネルギー支援された装置とすることができる。高周波エネルギーあるいは電気抵抗の熱エネルギーを含む、任意の適用可能なエネルギーの物理療法を利用することができる。
【0061】
ここで図12〜図14を参照すると、少なくとも一つの実施形態においては、皮下注射用針62あるいは電極72を組織破壊装置30と共に用いることができる。一つの実施形態においては、組織破壊装置30、例えば図2〜図6に示して上述した装置のような、ハウジング32および転動する中央治療要素34、クランプ40あるいはトロイド形の電極50と共に、扇形に広がる電極74が配置される。さらに他の実施形態においては、扇形に広がる電極74を、装置30、例えば転動する中央治療要素34とは独立させて配置することができる。
【0062】
一つの実施形態においては、線維性のセプタム108のような結合組織に目標を定めるために、それらが生み出す電界を有利に配置できるように、扇形に広がる針電極74を方向付けることができる。図12〜図13を参照すると、少なくとも一つの実施形態においては、中央治療要素34が正に帯電し、かつ針電極62、72、74は負に帯電する。図13に示した一実施形態は、トロイド形の中央治療要素34の中心を通って扇型の電極74の配備を含めることができる。扇形に広がる電極は、治療する組織のエネルギーによる破壊を助けるために機械的に回転させることができる。図14に示した他の実施形態は、ハウジング32の内部に配置されるとともにトロイド形の中央治療要素34の周縁に配置された、真っ直ぐな針電極62、72を含むことができる。これらの針は、電界線がセプタムに対して垂直にあるいは平行に方向付けられるように皮下に形付けられあるいは構成され、セプタムは電気的に崩壊させられる。図14を参照すると、針電極62、72は、その近位側が電気的に絶縁されるとともに、電気的に活性な遠位端が露出している。少なくとも一つの実施形態においては、中央治療要素34が負に帯電し、かつ針電極62、72、74が正に帯電する。ここで図14Aを参照すると、正に帯電する中央治療要素34とそれを取り囲んで負に帯電している電極62、72、74との間の距離「D」は、形状に治療する組織に対する破壊的なエネルギーの分布を形付けるために変更することができる。
【0063】
ここで図15を参照すると、少なくとも一つの実施形態においては、ハウジング32は、真っ直ぐな針電極62、72の挿入を案内するチャネル35を有したテンプレート90として構成することができる。様々なサイズのテンプレートを設けることができ、それによって針電極の様々な挿入パターンが可能となる。これらのテンプレート90は、瘢痕化した領域、あるいは重症なセルライトの場合には特定の凹みあるいは凹みの集合体といった、特定の領域に焦点を合わせたサイズとすることができる。大型のセルライトの凹みはより大型のテンプレートで治療することができ、より小さいセルライトの凹みはより小さいテンプレートで治療することができる。エネルギーは、患者を治療するために用いる特定のテンプレートに合わせて調整することができる。
【0064】
一つの実施形態においては、中央治療要素34は、有効な治療領域を最大化するために、少なくとも一つの針電極62、72と共に作用することができる。さらに、針電極は、装置30のハウジング32の周囲に配置して、一緒にエネルギーを印加し、あるいは多重化することができる。ここで図16を参照すると、少なくとも一つの実施形態においては、中央治療要素を正に帯電する電極として構成し、かつ周囲に分配される複数の針電極72を負に帯電する電極として構成することができる。このような極性は、単なる例示であって、供給されるエネルギーのタイプおよび所望の効果に応じて電極の極性を切り替えあるいは変更できることは理解されなければならない。ユーザによる電極72あるいは針62の配置を案内するために、テンプレート90を用いることができる。先に言及したように、治療する組織の望ましい容量に応じて、様々に異なって寸法決めされかつ形作られたテンプレートを提供することができる。
【0065】
ここで図16をより詳しく参照すると、一つの実施形態においては、中心電極34から連続的にエネルギーを供給することができるが、周囲の接地電極72A〜72Rは時間的な順番で活性化される。したがって、周辺電極72A〜72Rは順番に活性化される。このことは、エネルギー供給を一定にすることによって筋肉刺激を減少させるとともに、単一の接地電極の高いインピーダンスに起因して供給される総エネルギーを減少させる。各組織部分にはわずかな時間だけエネルギーが印加され、それによって組織の加熱および温熱損傷を最小化する。この電極配列が治療領域全体の上でゆっくり移動すると、低エネルギーの治療となる。一つの実施形態においては、中央の正電極とそれを取り囲んでいる周辺電極との間の距離は10.0ミリメートルである。少なくとも一つの実施形態においては、エネルギーが10オーム、200ボルト、0.5アンペアあるいはまた100ワットで供給される。さらに他の実施形態においては、20分の1のデューティーサイクルが一つの領域に用いられる。さらに他の実施形態においては、より高いインピーダンスおよびより低い電力が用いられる。
【0066】
ここで図17A〜図17Bを参照すると、本発明のさらに他の実施形態においては、超音波エネルギーを印加することによって皮下の構造を崩壊させるために、超音波装置120、例えばハンドピース122および治療シャフト124を有した超音波カテーテルが用いられる。この超音波装置は、例えば高周波メスを含み、あるいは針カニューレの先端に超音波振動子を取り付けることができる。この装置120は、治療シャフトの開口125あるいは別個の注入装置56(図6)を介した、治療領域、例えば皮下脂肪106に向けての治療促進剤54の注入と共に用いることができる。エネルギー印加の前における治療促進溶液の注入を保証するために、選択的な制御装置128をいることができる。さらに、治療領域に微小な泡132(攪拌した塩水等)を注入するために、上述したものに類似した注入および泡立ち装置56、130を用いることができる。一つの実施形態においては、高周波針あるいは超音波治療シャフトは、治療する皮下組織あるいはセルライト凹みの下方で前後方向に動かされるように構成する。
【0067】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、哺乳類の患者の皮下構造106、108(図1)を崩壊させる装置を含む。この装置は、その表面に配設された1つ若しくは複数のエネルギー伝達部材34、40、50あるいは電極72、74を有する印加装置30、70(図2、図9)を備えることができる。一つの実施形態において、この印加装置はカテーテル70(図9)として構成される。電極は、電気パルスを伝達するように構成される。この装置は、印加装置に作動的に接続されるとともに約10V〜3000Vの電気パルスを供給するように構成されたパルス発生器33(図6)を更に備える。印加装置および発生装置は、膠原性の皮下構造、例えば線維性のセプタム108を破壊するように構成することができる。
【0068】
他の実施形態(図9〜図13)においては、この印加装置は、治療する皮下の構造106、108に隣接する領域へと哺乳類の患者の肌102、104を介して挿入されるように構成されたカテーテルデバイス70である。このカテーテルあるいは印加装置は、治療する目標膠原性構造108に対しある角度に配置することができる。
【0069】
少なくとも一つの実施形態(図4)において、この印加装置50は、少なくとも一つの曲率半径および少なくとも一つの表面を有したトロイド形の形状を有する。
【0070】
再び図2を参照すると、さらに他の実施形態において、この印加装置34は、ハウジング32の内側に取り付けられるとともに、ハウジングに対して動くように構成される。さらに他の実施形態においては、ハウジングが活性電極であり、この印加装置がリターン電極あるいはアースである。他の実施形態においては、ハウジングがリターン電極あるいはアースであり、この印加装置が活性電極である。一つの実施形態において、この印加装置は、ハウジングに回転自在に接続されて複数の方向に回転できるようになっている。
【0071】
再び図7A〜図8Cを参照すると、他の実施形態においては、この印加装置の少なくとも一つの表面は、哺乳類の患者の肌を貫通できる極微針62を更に含む。これらの極微針は、エネルギー伝達要素を含むことができる。さらに他の実施形態において、この印加装置は、追従可能なパッド60として構成される。この追従可能なパッドは、哺乳類の患者の肌102、104を貫通できる、そこから延びる極微針を更に含む。この印加装置は、1つ若しくは複数の電極が、哺乳類の患者の肌を貫通することができる極微針を含むように構成することができる。
【0072】
さらに他の実施例において、本発明はまた、哺乳類の身体の肌の凹凸の一因となる皮下構造を選択的に破壊する方法を含む。この方法は、第1電極41および第2電極42を有したエネルギー伝達装置を提供することを含む。第1および第2の電極の間に電界を生み出すように構成された、パルス発生器33が提供される。このエネルギー伝達装置は、治療する皮下組織106、108に隣接した領域に配置され、皮下構造を破壊するために少なくとも一つの細胞の透過化を生じさせるべく、この皮下構造に細胞レベルでエネルギーを与える。一つの実施例において、この細胞の透過化は可逆的である。他の一実施例において、この細胞の透過化は不可逆的である。さらに他の実施形態において、不可逆的な細胞の透過化は、細胞内の基質の細胞自滅の生成を介して達成される。
【0073】
再び図6を参照すると、さらに他の実施形態において、本発明の皮下組織を治療する方法は、治療促進剤54を準備し、第1電極34と第2電極32の間の電界活性化と共に例えば注射器56により治療促進剤を供給することを含む。治療促進剤は、リドカインのような麻酔薬、エピネフリンのような血管収縮薬、低張溶液、低張塩水、カリウム、攪拌された塩水、微小な泡、あるいはまた微小球体、リドカイン、あるいは腫脹性溶液を含む。
【0074】
なお他の実施形態において、セルライトを治療する方法は、患者の皮下領域にある線維性セプタム108の細胞への局所的なエネルギーの供給を含む。このエネルギーは、セプタムを破壊するのに十分な程度に線維性セプタムの細胞膜を透過化させるために、選択された条件の下で細胞に供給される。
【0075】
再び図12を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、哺乳類の患者の皮下構造を破壊するための装置は、その表面上に配設された1つ若しくは複数のエネルギー伝達部材34を有する印加装置30を備え、このエネルギー伝達部材はエネルギー場を伝達するように構成されている。エネルギー場の伝達と共に、治療促進剤54を治療する組織100に付加することができる。エネルギー伝達部材および治療促進剤は、膠原性の皮下構造108を破壊するように作動する。この皮下構造は、印加装置に対し実質的にある角度で方向付けることができる。
【0076】
本願明細書において議論する方法および装置は、肌の凹凸を治療するための、および過剰な脂肪組織、セルライトおよび瘢痕化といった他の疾患を治療するための、哺乳類の身体における皮下構造106、108の破壊あるいはまた破壊にとって有益である。この装置および方法は、エネルギーを伝える印加装置、極微針、カテーテル、および肌を介した非侵襲的な、肌を介したより侵襲的でない、あるいは最小限に侵襲的な皮下アプローチによる治療を適用するための皮下治療装置を含む。この分野の公知でありかつ本願明細書において議論する様々な薬剤は、皮下組織を治療するためのこれらの手技を支援しあるいは改良する。
【0077】
一つの実施形態において、本発明は、軟組織を治療するための装置を含む。他の実施形態において、本発明は、線維組織を治療するための方法を含む。一つの実施形態において、本発明は、脂肪細胞およびセプタム108を含む皮下脂肪層106を治療するための方法および装置を更に含む。一つの実施形態において、本発明は、セルライトを治療するための方法および装置を更に含む。本発明は、セルライトの外観の一時的な減少、あるいはセルライトの恒久的な減少のために有益である。本発明はまた、脂肪吸引の補助的な手段として用いることができる。さらに本発明は、セルライトの外観を一時的に改善するための、皮下への流体の注入および分散を提供する。本発明はまた、良性新生物、例えば脂肪腫の除去のために有益である。
【0078】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、標的領域の美的な外観を改善するために、コラーゲン、結合組織、脂肪組織(脂肪細胞)等といった皮下の構造(あわせて「標的組織」あるいは「皮下構造」)に目標を定めて破壊する方法および装置を指向している。この標的領域は、人体において改善が望まれる、顔面、あご、首、胸部、乳房、腕、胴、腹部(骨盤領域を含む)、大腿、臀部、膝および脚部を含む任意の表面あるいは輪郭から成る。目標とする組織には、その領域の結合組織あるいはセプタム、または皮下およびより深い脂肪の沈澱あるいは層のような、その下に横たわっていて望ましくない身体の輪郭を悪化させ得る組織が含まれる。肌の凹凸は、セルライトや瘢痕化、あるいは首、あご、乳房、尻、腹部、腕等の領域における脂肪の沈澱あるいは過剰な脂肪といった、外側の様相に対する人の満足感を減少させる状態を指す。
【0079】
本願明細書において使用する促進剤54という用語は、外因性のガス、液体、混合物、溶液、化学薬品のうちの少なくとも一つ、または組織に適用されたときにエネルギー供給システム33の破壊的な生物学効果を改良する材料を指す。促進剤の一つの実例は、促進溶液である。一つの実施形態において、この促進溶液は、外因性の気体、例えば微小な泡132を含む。促進剤あるいは促進溶液は、例えば、塩水、通常生理食塩溶液、低張塩水、低張溶液、高張液、リドカイン、エピネフリン、腫脹性溶液、あるいはまた微小な泡溶液を含むことができる。他の促進剤は、本願明細書において更に詳細に説明される。一つの実施形態において、本発明は、促進溶液を攪拌しあるいはまた混合するように構成された撹拌システム56、および溶液を注入するように構成された注入部材56、122を備える組立体である。少なくとも一つの実施形態において、この組立体は、また、溶液を格納するための容器、例えばその内部に溶液を格納するためのリザーバ64を備える。このリザーバは、従来技術において周知の点滴バッグとすることができる。
【0080】
ここで図18を参照すると、一つの実施形態において、組立体200はエネルギー供給システム33を備える。医師が促進溶液210を調製して吊り下げると、この組立体は、前もってプログラムされたあるいはユーザが定めたアルゴリズムに基づいて混合し、注入し、かつ治療する組織にエネルギーを付加する。このアルゴリズムは、制御装置228にプログラムすることができる。この制御装置は、他の構成部分を含む単一構造の組立体に含めることもできるし、あるいはこの組立体の他の構成部分と連絡するように構成された別個のユニットとすることもできる。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はプロセッサおよびメモリーを含む。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置は、また、入力装置236、例えば電気スイッチ、ボタン、あるいはキーパッドを含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はまた、出力装置238、例えば従来技術において周知のLEDライト、液晶画面、計器、あるいは他のスクリーンおよび出力表示器を含むことができる。他の実施形態において、入力装置236および出力装置238は制御装置から分離することができるが、制御装置と電気的に通信する。組立体は、促進溶液210をリザーバ220から攪拌機208へと搬送し、そこにおいて溶液が混合されかつ攪拌されるように構成される。撹拌機208は単一構造のハンドピース242に含めることができる。組立体は、その後、注入部材214を用いて患者に溶液を注入するように構成される。組立体はまた、ハンドピースに含まれるエネルギー供給装置204を用いて、治療のために注入した組織100にエネルギーを印加するように構成される。このハンドピースは、中央治療要素34を有したハウジング32、例えば図2に示した組織破壊装置30として構成することができる。一つの実施形態においては、少なくとも一つの皮下注射針62が溶液注入部材214に配設される。さらに他の実施形態において、溶液注入部材は、格納式の針62と共に構成することができる。
【0081】
本発明はまた、患者の皮下脂肪106に対する皮下注射に対して生体適合性を有した様々な治療促進剤54を含む。一つの実施形態において、溶液は腫脹性の溶液である。腫脹性の溶液は、局所麻酔の適用をもたらすために特に適合させたものであり、周知の技術である。腫脹性の溶液は、様々な医薬用溶液を含むことができる。腫脹性溶液の一つの実施例は、2%のリドカインを含有した1000mlの通常生理食塩溶液、30ml(600mg)のエピネフリン、および1モル(12.5mlあるいは12.5mg)の重炭酸ナトリウムを含む溶液である。腫脹性溶液の少なくとも一つの他の実施例は、1000mlの通常生理食塩溶液、50mlの1%のリドカイン、1ccの1:1000エピネフリンを含む溶液である。これらの添加物は商業的に入手可能である。腫脹性溶液は、治療部位の出血を減少させるとともに、手技の間および後における痛みを減少させる局所麻酔効果を提供する。
【0082】
一つの実施形態において、促進溶液54は正常食塩溶液である。さらに他の実施形態において、促進溶液は低張溶液である。さらに他の実施形態において、溶液は微小な泡あるいはナノサイズの泡を含む溶液である。この溶液は、微小な泡を含む溶液を生じさせるために、2つの注射器の間で1回若しくは複数回攪拌される。本願明細書の他の部分で詳細に説明するように、微小な泡あるいはナノサイズの泡を含むいくつかの溶液は商業的に入手可能である。
【0083】
促進剤は所望する効果に応じるが、その幾つかは以下に詳述される。例えば促進剤は、経皮的にあるいは治療する組織への注入により伝達することができる。治療促進剤には、リドカインのような麻酔薬、界面活性剤、エピネフリンのような血管収縮の薬剤、低張塩水、カリウム、攪拌された塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体、脂肪細胞、脂肪、自己由来の組織(例えば、身体からの敵対的な反応を最小化するための組織移植片を形成するきれいな脂肪細胞を生み出す崩壊された脂肪細胞)、PLLA、ヒドロキシアパタイトが含まれる。治療促進剤は、皮下組織への音波の負荷の前に、間に、あるいはその後に供給することができる。
【0084】
一つの実施形態において、溶液注入部材214に対する電源は、溶液注入部材に含まれる。他の実施形態において、溶液注入部材の電源は溶液注入部材の外部に配置される。例えば、溶液注入部材の電源は制御装置228によって供給することができる。少なくとも一つの実施形態において、注入容量、深さ、タイミング、および注入と超音波の負荷との同期を制御するアルゴリズムは、溶液注入部材に含まれているメモリあるいはまたプロセッサに含めることができる。少なくとも他の実施形態においては、注入容量、深さ、タイミング、および注入と超音波の負荷との同期を制御するアルゴリズムは、溶液注入部材の外部に配置された、例えば制御装置に含めることができる。
【0085】
一つの実施形態において、溶液注入部材214は少なくとも一つの皮下注射針62を含む。皮下注射針は、溶液注入部材に接続された近位端、および治療のために標的領域100に貫通するように構成された遠位端を有している。針の遠位端は、周知のように、肌に対するより外傷的でない貫入のために、斜めに切断(図示せず)することができる。一つの実施形態において、針は極微針を含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、針は角錐状(図示せず)に形付けることができる。さらに他の実施形態において、溶液注入部材は複数の皮下注射針を含む。皮下注射針は、溶液が針を通って組織に流入するように構成された中央管腔を具備した、管状のチャネルを有している。一つの実施形態において、溶液注入部材は、溶液注入部材の内部の位置から針が表皮102を介して治療する皮下組織に貫通する位置へと、皮下注射針を移動させるための作動要素(図示せず)を有している。一つの実施形態において、針は、少なくとも皮下脂肪106を貫通するように構成される。さらに他の実施形態において、針は、深部脂肪層110を貫通するように構成される。
【0086】
注射針の直径は40ゲージから7ゲージのサイズにわたる。一つの実施形態において、注射針は30ゲージのサイズである。さらに他の実施形態において、注射針は28ゲージのサイズである。さらなる実施形態において、注射針は25ゲージのサイズである。追加の実施形態において、注射針は22ゲージのサイズである。さらに他の実施形態において、注射針は20ゲージのサイズである。さらに一つの実施形態において、注射針は18ゲージのサイズである。針の全てを一つの長さとすることもできるし、あるいは異なる長さすることもでき。一つの実施形態において、針の全長は2.0ミリメートル〜10.0cmである。一つの実施形態においては、針の全長は5ミリメートル未満である。他の実施形態において、針の全長は5.0ミリメートル〜2.0cmの範囲である。他の一つの実施形態において、針の全長は1.0cm〜3cmの範囲である。さらに他の実施形態において、針の全長は2.0cm〜5cmの範囲である。他の実施形態においては、針の全長は3.0cm〜10.0cmの範囲である。
【0087】
少なくとも一つの実施形態において、注射針62は極微針を含む。一つの実施形態において、極微針の直径は20ミクロン〜500ミクロンの範囲である。一つの実施形態において、極微針の全長は100ミクロン〜2000ミクロンの範囲である。少なくとも一つの実施形態において、針は表皮102から深部脂肪層110に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの他の実施形態において、針は表皮から筋肉層26に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの実施形態において、患者の快適性を増大させるために、局所的な麻酔クリームあるいはゲル、局所冷却法あるいは局所ブロックを用いて、更なる麻酔を治療領域に付加することができる。局所麻酔薬は、唯一必要な麻酔薬とすることもできるし、促進剤として用いられる任意のリドカインに代えることもできる。
【0088】
一つの実施形態において、針62は、治療する標的組織に応じて、皮膚表面から0.2ミリメートル〜40ミリメートルの距離にある皮下組織106に延びるのに十分な長さとすることができる。針は、針の遠位端226が少なくとも角質層を通って延びることができるように十分に長い。例えば、セルライトを治療するためには1.0ミリメートル〜5.0ミリメートルの針入の深さが望しく、より深い皮下脂肪のためには3.0ミリメートル〜40ミリメートルの針入深さが望ましい。1つ若しくは複数の皮下注射針が、手動であるいは制御装置228によって自動的に、様々な深さに移動することができる。少なくとも一つの実施形態において、針は表皮102から深部脂肪層110に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの他の実施形態において、針は表皮102から筋肉層26に到達するのに十分な長さである。
【0089】
少なくとも一つの実施形態において、本発明の装置は、より深い組織層からより表面的な組織層へと、各段階の注入の間に組織に対してエネルギーを負荷しつつ、段階的な深さの注入を提供するようにに構成される。1つ若しくは複数の皮下注射針が、手動であるいは制御装置228によって自動的に様々な深さに移動することができ、更に後述するように組織は段階的な深さで治療される。
【0090】
組立体200は、注入部材214による溶液の注入の後に、様々な回数でエネルギー供給システム33を活性化できるように構成されている。少なくとも一つの実施形態において、治療する組織への溶液の注入に続いて、組織へのエネルギー負荷のタイミングに同期させるために、制御装置228を用いることができる。一つの実施形態において、注入部材は、少なくとも治療する組織への溶液の注入を開始させるためのスイッチを有するように構成される。少なくとも一つの実施形態において、注入部材は、注入を停止させあるいはまた患者から針62を引き抜くための停止ボタンを有するように構成することができる。
【0091】
本発明のさらに他の実施形態において、組立体200は冷却モジュール(図示せず)を含む。患者の肌への注入は、一般的に不快感、腫大、出血、瘢痕化あるいは他の望まれない効果といった副作用を伴う。さらにまた、本発明によって治療される皮下組織の破壊は、多くの美容整形あるいは皮膚科的治療に一般的ないくつかの副作用に結びつく。冷却モジュールの使用は本発明による治療の副作用を減少させる。組織の冷却は、出血、腫大および不快感を減少させる。この冷却モジュールは、従来技術において公知の多くの冷却方式のいずれかを含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、冷却モジュールの一部はハンドピース242に含めることができる。冷却モジュールの一つの利点は、本発明の治療に伴う不快感、腫大、瘢痕化および他の望まれない効果の治療あるいは予防を援助することにある。少なくとも一つの他の実施形態において、この冷却モジュールは別個のモジュールとして組立体に含めることができる。さらに他の実施形態において、促進溶液は、治療する組織への注入の前に冷却することができる。
【0092】
ハンドピース242は、異なる皮下異常あるいは異なる重症度の皮下異常を治療するように構成された、異なるサイズに設けることができる。一つのハンドピースは、他のものよりも高い針62の密度を有する。例えば、セルライトのより重症な領域は、針の密度がより高いパターンのハンドピースによって治療することができる。使い捨てのハンドピースを有する少なくとも一つの実施形態においては、そのハンドピースの他の患者への再利用を防止するために安全対策チップ(図示せず)をハンドピースに設けることができ、それによって例えば肝炎あるいはエイズといった疾患の拡散を防止することができる。安全対策チップは、偽造のハンドピースが流通して患者に用いられることを防止するために含めることができる。
【0093】
安定した結果を生み出すためのさらに他の要因は、治療する部位の肌表面積に対する注入溶液の容量である。一つの実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.1cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約2.0cc/平方cmの範囲である。他の実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.25cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約1.5cc/平方cmの範囲である。さらに他の実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.5cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約1.0cc/平方cmの範囲である。しかしながら、上述した注入容量は例示のためだけのものであり、治療する個々の患者の耐痛限界および治療する位置の脂肪層の深さに応じて変更することができる。
【0094】
安定した結果を生み出すためのさらに別の要因は、治療する組織への溶液の噴射率である。一つの実施形態において、溶液の噴射率は約0.01cc/秒〜約1.0cc/秒の範囲である。他の一実施形態において、溶液の噴射率は約0.02cc/秒〜約0.5cc/秒の範囲である。別の実施形態において、溶液の噴射率は約0.05cc/秒〜約0.2cc/秒の範囲である。しかしながら、前述した噴射率は例示のためだけのものであり、治療する個々の患者の耐痛限界および治療する位置の脂肪層の症状に応じて変更することができる。
【0095】
本発明は、皮下組織を崩壊させる方法を含む。この方法は、治療する皮下組織100に少なくとも一つの促進剤54を配設することを含む。促進剤には溶液を含めることができる。この溶液は、少なくとも一つの皮下注射針62を介して皮下脂肪106に注入することができる。それから、しばらくの間皮下組織に配設される促進剤を残して針を引き抜くことができる。エネルギー供給システム33は治療する組織にエネルギーを供給することができ、促進剤に近接する皮下脂肪106あるいはまた線維性のセプタム108は崩壊する。
【0096】
組織に伝達するエネルギー量および組織における生物学的な効果の一つの要因は、破壊的なエネルギーを組織に印加する前に注入された溶液が組織内に存在する時間の長さである。一つの実施形態において、注入された溶液は、破壊的なエネルギーを印加する前の約10分〜約30分で組織内に浸透する。さらに他の実施例において、注入された溶液は、破壊的なエネルギーを印加する前の約1分〜約10分で組織内に浸透する。さらに他の実施例において、注入された溶液は、破壊的なエネルギーを印加する前の約1秒〜約1分で組織内に浸透する。少なくとも一つの他の実施形態において、注入された溶液は、破壊的なエネルギーを印加する前の約50ミリ秒〜約1000ミリ秒で組織内に浸透する。少なくとも一つの他の実施形態において、破壊的なエネルギーは溶液の注入とほとんど同時に治療する組織に印加される。
【0097】
破壊的エネルギー照射の持続期間もまた、組織に対する破壊的エネルギーの生物学的な効果を決定し得る。一つの実施形態において、破壊的エネルギーは約10秒の持続期間で治療する組織100に印加される。他の実施形態において、破壊的エネルギーは約30秒の持続期間で治療する組織100に印加される。さらに他の実施形態において、破壊的エネルギーは約1分の持続期間で治療する組織100に印加される。さらに他の実施形態において、破壊的エネルギーは約2分の持続期間で治療する組織100に印加される。少なくとも一つの他の実施形態において、破壊的エネルギーは約5分の持続期間で治療する組織100に印加される。さらに他の実施形態において、破壊的エネルギーは約5分〜20分の間の持続期間で治療する組織100に印加される。なお他のひとつ実施形態において、破壊的エネルギーは約20分〜1時間の持続期間で治療する組織100に印加される。
【0098】
腫脹性の溶液は、例えば脂肪吸引手技の間に局所麻酔の適用を提供する、特に構成された溶液である。腫脹性の溶液は周知の技術である。腫脹性の溶液は様々な医薬用溶液を利用する。一つの実施形態において、腫脹性の溶液は、2%のリドカインを含有した1000mlの通常生理食塩溶液、30ml(600ミリグラム)のエピネフリン、および1モル(12.5mlあるいは12.5ミリグラム)の重炭酸ナトリウムを含む。少なくとも一つの他の実施形態において、腫脹性の溶液は、1000mlの通常生理食塩溶液、50mlの1%リドカイン、および1ccの1:1000エピネフリンを含む溶液である。これらの添加物は、商業的に入手可能である。一つの実施形態においては、この腫脹性の溶液は撹拌機208に加えることができる。他の実施形態においては、予備混合されたあるいは商業的に入手可能な腫脹性の溶液を用いることができる。腫脹性の溶液は、治療部位の出血を減少させることができるとともに、手技の間および後における痛みを減少させる局所麻酔効果を提供することができる。少なくとも一つの実施形態において、促進剤はまた腫脹性の溶液を含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、注入される促進溶液54は低張溶液である。
【0099】
少なくとも一つの他の実施形態において、様々な深さの皮下組織の治療は段階的に実行される。それぞれの注入に続いて、治療する組織への破壊的なエネルギーを負荷することができる。例えば、第1段階においては、深い位置への溶液の注入が実行されると、より深い層へ破壊的なエネルギーが印加される。第2段階においては、より表面的な位置への注入が実行されると、より表面的な層への破壊的なエネルギーが印加される。徐々に表面的となる深さにおける複数段階の溶液の注入は、破壊的なエネルギー、例えば溶液をそれぞれ注入した後における破壊的なエネルギーの印加と共に実行することができる。一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約0.5〜2.0cm浅い深さで実行される。一つの実施形態においては、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約0.5ミリメートル浅い深さで実行される。他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1ミリメートル浅い深さで実行される。さらに追加的な一実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約2ミリメートル浅い深さで実行される。他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約5ミリメートル浅い深さで実行される。さらに他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1.0センチメートル浅い深さで実行される。の他の実施形態、さらに一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1.5センチメートル浅い深さで実行される。さらに一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約2.0センチメートル浅い深さで実行される。、さらに他の実施形態において、皮下組織の浸透は、約30ミリメートル、約25ミリメートル、および約20ミリメートルの深さの段階において実行される。一つの他の実施形態において、皮下組織の浸透は、約10ミリメートル、約5ミリメートル、および約2ミリメートルの深さの段階において実行される。少なくとも一つの実施形態においては、各段階の注入の間に破壊的なエネルギーを印加するのではなく、全ての深さにおける注入の後に一連の破壊的なエネルギーが組織に印加される。
【0100】
一つの実施形態において、治療する組織は皮層104と深部脂肪層110との間において注入を受ける。他の実施例において、治療する組織は、表面的な脂肪層106と筋肉層26との間において注入を受ける。さらに他の実施形態において、治療する組織は、皮層104と筋肉層26との間において注入を受ける。一つの実施形態において、治療する組織は、約2ミリメートル〜4.0センチメートルの深さにおいて注入を受ける。一つの実施形態においては、治療される組織は、約0.5ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。少なくとも一つの実施形態において、治療される組織は、約1.0ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。さらに追加的な一実施形態において、治療される組織は、約1.5ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。一つの実施形態においては、組織は約2ミリメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。他の一実施形態において、組織は約5ミリメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに他の実施例においては、組織は約1.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約1.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約2.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約2.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約3.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約3.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約4.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。一つの実施形態においては、単一の深さの注入あるいは組織の浸透が実行される。少なくとも一つの他の実施形態においては、複数の深さにおける注入あるいは浸透が実行される。
【0101】
溶液の注入と破壊的なエネルギーの負荷との間の時間の経過は、約0秒〜1時間の範囲とすることができる。溶液54の注入に続く破壊的なエネルギーの印加のタイミングを同期させるために、自動制御装置228を用いることができる。一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーの印加は溶液の注入とほぼ同時とすることができる。一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約5秒未満前に注入を実行することができる。他の実施例においては、破壊的なエネルギーを印加する約5秒〜約20秒前に注入が実行される。さらに一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約20秒〜約60秒前に注入が実行される。さらに他の実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約1分〜5分前に注入が実行される。さらに一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約5分〜15分前に注入が実行される。もう一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約15分〜30分前に注入が実行される。さらに他の実施例においては、破壊的なエネルギーを印加する約30分〜60分前に注入が実行される。
【0102】
安定した結果を生じさせるさらに他の要因は、破壊的なエネルギーを印加する前に溶液をエネルギーによって組織内に分散させる期間である。一つの実施形態において、治療する組織に溶液を分散させるために超音波を用いることができる。一つの実施形態において、破壊的なエネルギーを印加する前に、エネルギーによって溶液を組織内に分散させる期間は約1秒〜5秒である。他の実施形態において、破壊的なエネルギーを印加する前に、エネルギーによって溶液を組織内に分散させる期間は約5秒〜30秒である。さらに一つの実施形態において、破壊的なエネルギーを印加する前に、エネルギーによって溶液を組織内に分散させる期間は約30秒〜60秒である。さらに他の実施形態において、破壊的なエネルギーを印加する前に、エネルギーによって溶液を組織内に分散させる期間は約1分〜5分である。
【0103】
一つの実施形態においては、治療する組織の破壊に続いて、破壊された組織を患者の内部に残し、例えば患者の身体によって吸収させることができる。他の実施例においては、破壊した組織は、例えば脂肪吸引によって患者の身体から取り除くことができる。
【0104】
一つの実施形態において、電極は、肌の上に配置できるとともに、望まれない表面の火傷を回避するために最小限のエッジ効果を有するように構成される。さらに他の実施形態おいて、皮下の針電極は、少なくとも一つの針の遠位端に隣接した特定の位置にエネルギー電界強度を集中させるように構成することができる。例えば、ピラミッド状あるいは斜めに切断した遠位側を有する針は、その遠位端に隣接するきわめて高いエッジ効果を有する傾向がある。さらに他の実施形態においては、針の配列の配置、例えば針を並べて配置すると、複数の高い電界強度の組織治療箇所に結びつき、それによって治療する組織のより大きな領域の全体に局所性の組織剥離を生じさせる。身体が治療された組織を回復させてリモデリングすると、これらの組織の治療部位は再吸収され、破壊させた脂肪細胞は取り除かれる。このことは、局所性の火傷が健康な組織の島と共に治療された組織に作り出されて治癒および移動を容易にする、高い強度で焦点合わせされた超音波アレイを含む治療の後に生じるリモデリングに類似している。少なくとも一つの他の実施形態においては、鈍い針電極を含めることができ、それによって治療した組織におけるより大きな治療破壊効果領域に結びつく。
【0105】
本発明は、組織を治療する他の方法あるいは装置と組み合わせることができる。例えば、本発明は、肌を締める手技、例えばHayward(カリフォルニア州)のThermage Corporationから入手可能なThermage(商標)、Brisbane(カリフォルニア州)のCutera, Inc.から入手可能なCutera Titan(商標)、あるいは、Santa Clara(カリフォルニア州)のLumenis, Inc.から利用可能なAluma(商標)の使用を含むことができる。
【0106】
本発明は、その精神および必須の特徴から逸脱することなしに他の形態で具体化することができる。したがって、説明した実施形態はあらゆる観点において例示的なものであって限定的なものではないことが考慮されるべきである。ある好ましい実施形態について本発明を説明してきたが、当業者にとって明らかな他の実施形態もまた本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、添付の請求の範囲を参照することのみによって定められることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】皮膚および皮下組織の正常領域の様々な層を示す図。
【図1B】皮膚および皮下組織の病的な領域の様々な層を示す図。
【図2】非侵襲的にエネルギーを負荷する本発明の装置の一実施形態を示す図。
【図3A】本発明のクランプの実施形態を模式的に示す図。
【図3B】図3Aのクランプの実施形態における電流分布のモデルを模式的に示す図。
【図4】円柱状の電極を用いた図3Aのクランプの実施形態を模式的に示す図。
【図5A】本発明のローラボールの実施形態を模式的に示す図。
【図5B】図5Aのローラボールの実施形態における電流分布を模式的に示す図。
【図6】外側に設けられたエネルギー負荷装置を有した治療促進剤と共に用いる本発明の注入システムの実施形態を示す図。
【図7A】皮膚表面に当てられる極微針を具備したパッドを有するシステムを備えた本発明の実施形態を示す図。
【図7B】吸引が肌の表面をパッドに向けて上方に引っ張り上げたことにより極微針が肌表面を貫通している状態を示す図7Aの実施形態を示す図。
【図8A】目標とする組織に当てられた状態を示す図7Aの実施形態の断面図。
【図8B】パッド上に配列として配設された極微針を有した本発明の装置の一実施形態を示す図。
【図8C】図8Bの装置の要部拡大図。
【図9】本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図10】本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図11】本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図12】皮膚表面に当てられる電極と共に用いられる、本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図13】皮膚表面に当てられる電極と共に用いられる、本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図14】皮膚表面に当てられる電極および提案する治療のレイアウトと共に用いられる、本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図14A】電極治療のレイアウトの一例を示す図。
【図15】個別に配置されるエネルギー伝達要素に使用するテンプレートを示す図。
【図16】複数のエネルギー伝達要素に使用する治療アルゴリズムの一例を示す図。
【図17A】治療改善薬剤を注入するエネルギー負荷システムおよび装置を示す図。
【図17B】治療する組織にハンドピースが挿入される図17Aのシステムおよび装置を示す図。
【図18】皮下組織を治療するための組立体を示す図。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年9月7日に出願された米国仮特許出願第60/715,398号に基づく優先権を主張する。なお、この参照によってその内容の全体が本願明細書に組み込まれるものとする。
本発明は、表皮および皮下における皮膚の凹凸を治療するための方法および装置に関し、より詳しくは、過剰な脂肪組織、セルライトおよび瘢痕化のような皮膚の凹凸および他の疾患を治療するために、哺乳類の身体の皮下構造を崩壊/破壊する方法および装置を提供するものである。
この明細書において言及する全ての出版物および特許あるいは特許出願は、個々の出版物、特許あるいは特許出願があたかも具体的にかつ個別的に組み込まれるかのように、その参照により同一範囲で本願明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
女性型の脂肪栄養障害は、皮膚の表面(肌)の組織分布の変化、あるいは皮下のある領域において増大した流体保持力あるいは脂肪組織の増殖によって生じる陥凹形成効果につながる、皮下組織の限局性の代謝異常である。このような状態は、一般にセルライトとして公知であるが、思春期後の女性の90%およびいくらかの男性に影響を及ぼす。セルライトは一般に尻、臀部および脚部に出現するが、一般的に認識されているように必ずしも太りすぎによって生じるというわけではない。セルライトは、表皮および真皮層の下にある皮下レベルの組織に形成される。この領域において、脂肪細胞は、セプタムと呼ばれている結合組織のバンドによって取り囲まれた室の内部に配置される。水分が保持されると、これらの線維性セプタムによって定められる周辺部の内側に保持されている脂肪細胞が伸張し、かつセプタムおよび取り囲んでいる結合組織を伸張させる。最終的には、この結合組織が収縮しかつ硬化(硬化症)して柔軟性を持たない長さで肌を保持する一方、セプタム間の室が重量の増加および水分の増加によって伸張し続ける。このことは肌の領域が引き下げられることに帰着するが、その一方で他の部分が外側に膨張するので、皮膚表面上につぶつぶのある「ゆず肌」あるいは「カテージチーズ」のような外観をもたらす。
【0003】
肥満はセルライトの根本的な原因であるとは考えられないけれども、その領域における脂肪細胞の数の増大により、それは間違いなくセルライト領域における陥凹状の外観を悪化させる。深部の脂肪および解剖学的組織のより大きな領域を目標とする脂肪吸引のような従来の脂肪摘出技術は、時にはセルライトの外観を悪化させることがある。皮下の脂肪ポケットが残存するとともに、その領域の下方に横たわっている塊(深部の脂肪)の喪失によって目立つことになるからである。脂肪吸引を何度実行しても、患者はなお残存しているセルライトのような肌の凹凸の治療を要求する。
【0004】
セルライトのような肌の凹凸を治療するための様々なアプローチ、および不必要な脂肪組織の除去が提案されてきた。例えば、様々な局所的な薬剤の付加に加えた、吸引とマッサージの組合せあるいは吸引、マッサージおよびエネルギの適用によって患部に機械的なマッサージを提供する方法および装置が現在は利用可能である。1950年代に開発されたメソセラピーは、スポーツ傷害から慢性の痛みにおよぶ疾病のために肌を介して様々な治療溶液を注入するものであり、しわおよびセルライトを治療するための美容整形手技としてヨーロッパにおいて広く用いられてきた。この治療は、アミノフィリン、ヒアルロン酸、ノボカイン、植物エキスおよび他のビタミンといった様々な薬剤の肌を介しての注入あるいは移入を含み、血行および脂肪酸化の可能性の増大をもたらす。Acthyderm(Tumwood International、オンタリオ、カナダ)と名付けられた治療は、ビタミン、坑繊維化薬、脂肪分解薬(lypolitics)、抗炎症剤といった様々なメソセラピー薬剤の塗布に続いて、真皮に小さなチャネルを開けるために角質層を電気穿孔するローラシステムを用いる。
【0005】
リンパの排液を改善するマッサージ技術が1930年代の初期に試みられた。米国特許第5,885,232号および第5,961,475号に記載されている"Endermologie"装置(LPG Systems、フランス)、米国特許公開2005/0049543号に記載されている"Synergie"装置(Dynatronics、ソルトレークシティ、ユタ州)および"Silklight"装置(Lumenis、テルアビブ、イスラエル)のような機械的なマッサージ装置あるいはプレソテラピーもまた開発されてきたが、これらの全てが吸引および機械的なローラによる皮下マッサージを用いるものである。なお、これらの文献の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。他のアプローチは様々なエネルギー源を含んでいるが、Cynosureの"TriActive"装置(Cynosure、ウェストフォード、マサチューセッツ州)は機械的なマッサージに加えて半導体レーザのパルスを用いるし、"Cellulux"装置(Palomar Medical, Burlington, マサチューセッツ州)は冷却されたチラーを介して目標とする皮下脂肪組織に赤外光を放射する。米国特許第6,889,090号、第6,702,808号および第6,662,054号に詳述されている"VelaSmooth"システム(Syneron, Inc., Yokneam Illit、イスラエル)は、脂肪組織の代謝を増大させる吸引と共に双極性の高周波エネルギーを用いる。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。米国特許第5,755,753号、第6,749,624号、第5,948,011号、第6,387,380号、第6,381,497号、第6,381,498号, 第5,919,219号、第3,377,854号、第6,377,855号、第6,241,753号、第6,405,090号、第6,311,090号、第5,871,524号、第6,413,255号、第6,461,378号、第6,453,202号、第6,430,446号に詳述されている、"Thermacool"装置(Thermage, Inc., Hayward, カリフォルニア州)は、皮下の線維性セプタムを縮小させてしわおよび他の肌欠陥を治療するために高周波エネルギーを用いる。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。それらの全部において本願明細書に引用したものとする。いくつかの針の組を用いて低周波割込み電磁場を印加することにより循環の排液を助ける、脂肪電気泳動のような他のエネルギベースの治療法もまた開発されてきた("Cellulite. Aspects of Cliniques et Morpho-histologiques", J. med. Esth. Et Chir Derm (1983); 10(40), 229-223)。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。同様に"Dermosonic"装置(Symedex Medical、ミネアポリス、ミネソタ州)においては、保持された流体および毒素の再吸収および排液を促進するために無侵襲性の超音波が用いられる。さらに、米国特許出願第2004/0019371号は、細胞を改質して肌の凹凸を治療するためにエネルギーを付加することを記載している。また、米国特許出願第2003/0220674号ははセルライトを治療するために冷却の使用を記載している。
【0006】
瘢痕化および陥凹形成といった肌の凹凸の治療における他のアプローチは、サブシジョンと呼ばれる技術である。この技術は、陥凹形成あるいは瘢痕化の領域において比較的大きい寸法の針を皮膚下に挿入し、次いで肌の下において機械的に針を操作して皮下領域の線維性セプタムをバラバラにする。"Subcision: A treatment for cellulite", International Journal of Dermatology (2000) 39:539-544に詳述されているように、目標領域に局所麻酔薬を注入し、18サイズの針を皮膚表面の10〜20ミリメートル下方に挿入する。次いで、針を表皮に平行に案内して肌の下に剥離平面を作り出し、陥凹形成あるいは瘢痕化を生じさせている締め付けられたセプタムを殆ど完全に引き裂き、あるいは「自由に引き上げる」。それから、出血を制御するために圧力を負荷し、次いで手技に続けて圧縮布を使用する。いくらかの患者には臨床的な効果がある反面、痛み、挫傷、出血および瘢痕化に帰着することもあり得る。米国特許第6,916,328号は、サブシジョンのために横方向に配置される切削機構を記載している。なお、この文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。また、超音波で支援されたサブシジョン技術を用いる技術が、"Surgical Treatment of Cellulite and its Results", American Journal of Cosmetic Surgery, (1999)16:4 299-303に詳述されている。なお、その内容はこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0007】
脂肪吸引、腫脹性脂肪の吸引、リポローシス(lypolosis)として公知の技術は、身体皮下および深部脂肪領域の脂肪組織を目標としている。これらの技術はまた、脂肪細胞を崩壊させてから取り除くこと、および身体の免疫/リンパシステムによる再吸収のためにそれらを残すことを含む。従来の脂肪吸引は、取り除かれる脂肪の部位に配置される外科的なカニューレの使用、流体の注入および脂肪組織をバラバラにするカニューレの機械的な動き、崩壊させた脂肪組織を患者から直接吸引するための吸入を含む。"Lysonix"システム(Mentor Corporation、サンタバーバラ、カリフォルニア州)は、米国特許第4,886,491号および第5,419,761号に詳述されているように、(目標部位の組織の空洞化によって)組織分裂を援助するために、吸引カニューレのハンドピース上にある超音波振動子を用いる。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。加えて、米国特許第6,041,787号および第6,032,675号に詳述されているように、脂肪組織を破壊するために低温冷却することが提案されてきた。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。腫脹性の脂肪吸引として公知の従来の脂肪吸引技術の変形例は1985年に導入されたが、現在では米国における標準的な治療となっている。それは、吸引カニューレによる機械的な破壊および除去の前における、目標領域への腫脹性の流体の注入を伴う。この流体は、機械的な破壊に伴う痛みの緩和を助けるとともに、組織を膨脹させて機械的な除去の作用を受けやすくする。リドカインのような局所麻酔薬、エピネフリン、食塩水、カリウム等の血管収縮剤を含む様々な組合せの流体を腫脹性の溶液として用いることができる。そのようなアプローチの利点は、以下の論文に詳述されている。"Laboratory and Histopathologic Comparative Study of Internal Ultrasound- Assisted Lipoplasty and Tumescent Lipoplasty" Plastic and Reconstructive Surgery, Sept. 15, (2002) 110:4, 1158-1164、および"When One Liter Does Not Equal 1000 Milliliters: Implications for the Tumescent Technique" Dermatol. Surg. (2000) 26:1024-1028、なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に明白に組み込まれるものとする。
【0008】
Liposonix (Bothell,ワシントン州)および、Ultrashape(テルアビブ、イスラエル)は、脂肪組織を非侵襲的に破壊するために焦点を合わせた超音波を用いる。米国特許第6,607,498号、米国特許公開20004/0106867号および2005/0154431号は、これらのシステムを記載している。なお、これらの文献の内容の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【0009】
皮膚科的クリーム、化粧水、ビタミンおよびハーブサプリメントを用いる様々な他のアプローチもまた提案されてきた。個人的な温泉場およびサロンは、身体のこすり洗い、圧覚点マッサージを含むセルライトマッサージ治療を提供するが、植物性揮発油、海草、トクサ、クレマチスおよびツタのような植物化学種から抽出されたハーブ製品の使用もまた提案されてきた。多数の治療が存在するけれども、それらの殆どは肌の凹凸に対して永続的な効果を提供しないし、いくつかは(脂肪吸引が瘢痕化あるいはセルライトのより顕著な外観を生じさせるように)一つの治療が他のものを悪化させ、あるいはその採用を制限するマイナスの副作用を有している。ほとんどの治療は、継続する複数の治療を必要とし、それらの効果を維持するためにはかなりの出費がかかり、かつ結果もまちまちである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したことを考慮すると、肌の凹凸を治療するための最小限に侵襲性のあるいは無侵襲性の方法および装置を提供すること、および顔面、首、腕、脚部、大腿、臀部、胸部、腹部および他の目標領域のような人体の部位に継続する美的な結果を提供することが望ましい。
【0011】
また、肌の凹凸を治療するための、従来技術を改良して侵襲性がより少なくかつ副作用の少ない方法および装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述したことに鑑みて、本発明の一態様は、皮膚および皮下の凹凸、より詳しくは過剰な脂肪組織、セルライト、瘢痕化および関連した疾患を治療する、最小限に侵襲的あるいは非侵襲的で、制御されかつ選択的な、より耐久性のある効果を提供する方法および装置を提供する。
【0013】
本発明の一態様においては、(皮膚の表面に)非侵襲的に、(皮膚表面下3〜10ミリメートルの間で)より低侵襲的に、あるいは(深部脂肪層に対して6ミリメートルよりも深く)最小限に侵襲性の装置を適用し、電気、超音波あるいは他のエネルギー場を用いて哺乳類の身体の皮下構造を崩壊/破壊する、そのような状態を治療するための方法および装置が提供される。
【0014】
本発明の更なる態様において、そのようなエネルギー場は、標的細胞膜の透過化処理(permeabilization)を介して細胞レベルで組織を崩壊させるための、指定された持続期間および振幅の一つのパルスあるいは複数のパルスによって発生させることができる。本発明の更なる態様においては、標的皮下構造の細胞膜に孔を生成することにより、細胞の死滅に帰着する不可逆的な細胞損傷を生じさせることが望ましい。
【0015】
本発明の他の態様においては、高周波エネルギー、直流、電気抵抗による熱エネルギー、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギーあるいはレーザエネルギーを印加する本発明の装置および方法を用いて皮下の構造を破壊することが望ましい。
【0016】
本発明の別の態様においては、標的組織(結合組織、コラーゲン、脂肪組織等)への電気的な手技は、細胞膜の可逆的なあるいは不可逆的な電気穿孔を生じさせることにより細胞レベルの組織を破壊して印加された電界の作用を受けやすくするべく、低張塩水、カリウム等の促進剤の注入あるいは付加による細胞内の環境あるいはまた細胞膜の変化によって改良することができる。
【0017】
本発明の別の態様において、標的組織(結合組織、コラーゲン、脂肪組織等)の破壊は、微小な泡、攪拌された塩水、商業的に入手可能な超音波造影剤等のような促進剤を注入あるいは付加し、その領域に供給されたエネルギーを増大させ、空洞化等によって治療効果を高めることにより改良することができる。
【0018】
本発明の更なる態様において、エネルギー伝達部材は、標的部位へのエネルギー供給の改良に適するように、皮膚に、経皮的にあるいは皮下に配置することができる。
【0019】
本発明の更なる態様は、リドカイン、エピネフリン、低張塩水、カリウム、撹拌塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体等のような治療促進剤の治療部位への付加と共に、本発明のエネルギーアプローチを用いることにより、肌の凹凸および他の関係する疾患を治療する方法および装置を提供することにある。
【0020】
加えて、本発明の別の態様では、本発明の治療を施した後に、全体的な所望の効果を改良する必要に応じて、脂肪細胞、脂肪、PLLA、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、ヒアルロン酸等の充填剤を付加する。
【0021】
本発明の更なる態様において、体内の複数の位置から安全に適用することができる治療を提供するために、ある種の型の細胞は選択的に破壊するがそれ以外については破壊しない方法および装置を提供することが望ましい。
【0022】
本発明の一態様は、皮下組織を破壊するための医療装置であって、電界発生装置、この電界発生装置と電気的に接続された少なくとも2つの電極、および治療する皮下組織に治療促進剤の溶液を注入するように構成された注入モジュールを備える。少なくとも一つの電極は治療する皮下組織に挿入されるように構成され、かつ少なくとも一つの他の電極は治療する患者の表皮に当てられるように構成される。本発明の更に別の態様において、少なくとも2つの電極が治療する患者の表皮に当てられるように構成される。少なくとも2つの電極を、治療する皮下組織に挿入されるように構成してもよい。少なくとも2つの電極のうちの1つは接地電極として構成することができる。少なくとも2つの電極は双極電極として構成することができる。少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つは、概ね環状の形状である。少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つは概ね円柱の形である。さらに別の態様において、電界発生装置は電気穿孔(エレクトロポレーション)発生装置である。
【0023】
この医療用機器は、ハウジングを更に含み、少なくとも2つの電極のうちの1つがこのハウジングの内側に配設される。少なくとも1つの電極はハウジングの内側に配設される中央治療要素として構成することができ、この中央治療要素とハウジングとの間に環状領域を配設することができる。この環状領域は、負圧供給源に接続されるように構成することができ、それによってハウジングは治療する領域の上に重なっている肌と接触するように構成される。中央治療要素はハウジングの内側に埋め込むことができる。中央治療要素は、治療する患者の肌の上を転動するように構成することができる。
【0024】
本発明の更なる態様において、この装置は、注入モジュールに接続された極微針を有したパッドを備え、このパッドは治療する患者の肌に追従するように構成される。このパッドは、リザーバおよび極微針を配置させるための作動要素を含むことができる。なお本発明の更なる態様において、少なくとも極微針の1つが、少なくとも2つの電極のうちの1つとして構成される。
【0025】
本発明の更なる態様において、カテーテルデバイスは、治療する皮下領域に枝を配置するように構成することができる。これらの枝は、針、電極および切断要素からなるグループより選択される。
【0026】
本発明の更に別の態様は、皮下組織を破壊する装置であって、第1の近位端、皮下組織への挿入に適合した第2の遠位端、およびそれらの間で縦方向に配置されたチャネルを有した管状要素を備える。複数の伸長可能な細長い要素は、第1の近位端および第2の遠位端を有してチャネルの内側に配設されるとともに、チャネルの内側に引き込まれた第1の状態からチャネルの外に延びた第2の状態へと動くことができ、細長い要素の遠位端は、延びた状態のときに、引き込まれた状態におけるよりも遠くへと互いに離間する。複数の伸長可能な細長い要素は、針、電極および切断要素からなるグループより選択することができる。本発明の更なる態様においては、複数の伸長可能な細長い要素は、生物組織を破壊する効果のために、エネルギー場を形成するように幾何学的に構成される。
【0027】
本発明の一態様は皮下構造を選択的に破壊する方法であり、第1の電極および第2の電極を設け、治療する組織に隣接させて第1の電極を配置し、第1の電極および第2の電極をエネルギー供給システムに接続し、このエネルギー供給システムは第1および第2の電極の間に電流を生じさせるように構成され、第1の電極と第2の電極との間に電流を提供し、それによって少なくとも一つの細胞の透過性を増大する。少なくとも、第1の電極は、生物組織を破壊する効果のために、エネルギー場を作る幾何学的に構成することができる。この方法は、ハウジングの内側に配設された中央治療要素を治療組織上で転動させることを含むが、第1の電極は中央治療要素に配設される。本発明の更に別の態様においては、大気より低い圧力が、中央治療要素の周りに配設れた環状領域に与えられる。
【0028】
本発明の更なる特徴、その本質および様々な利点は、添付の図面および以下の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、コラーゲン、結合組織、脂肪組織(脂肪細胞)等の皮下構造(あわせて「標的組織」あるいは「皮下構造」)を標的として破壊する方法および装置に関する。本発明は、標的とする領域の美的な外観の改善に有用である。この標的領域は、人体において改善が望まれる、顔面、あご、首、胸部、乳房、腕、胴、腹部(骨盤領域を含む)、大腿、臀部、膝および脚部を含む任意の表面あるいは輪郭から成る。標的組織には、その領域の結合組織あるいはセプタム、または皮下および深部脂肪の沈澱あるいは層のような、その下に横たわっていて望ましくない身体の輪郭を悪化させ得る組織が含まれる。
【0030】
肌の凹凸は、セルライトや瘢痕化、あるいは首、あご、乳房、尻、腹部、腕等の領域における脂肪の沈澱あるいは過剰な脂肪といった、外側の様相に対する人の満足感を減少させる状態を指す。
【0031】
ここで図1Aおよび 図1Bを参照すると、治療すべき皮膚組織あるいはまた皮下組織の目標領域100の断面が示されているが、表皮102、真皮104、皮下脂肪106、線維性のセプタム108、微小循環、リンパ排液、およびより深部脂肪層110が含まれている。真皮は、実質的に縦のセプタムあるいは膠原線維を介して皮層に付着した脂肪皮下結合組織に接続されている。この皮下脂肪組織は、セプタムの繊維によって分離されて、脂肪組織あるいは脂肪の室112に区画されている。これらの室は増大した脂肪細胞あるいは保持されている流体の存在に起因して膨張し、脂肪領域が膨張してセプタムが張力下で厚くなると、セプタム上に張力を生じさせて最終的には皮膚表面に陥凹を形成する。次いで微小循環およびリンパ排液が弱まり、さらには局部的な代謝性の症状を悪化させる。図1Aは、肌の凹凸を呈していない全く通常の肌の断面を示している。図1Bは、膨張してセプタムに締め付けられて、不規則な皮膚表面の特徴につながる皮下脂肪層を示している。
【0032】
蓄えられたあるいは深部脂肪層110は、皮下脂肪層106の下位に配設されて肌の凹凸の一因となる。そのため、この開示においては「皮下の構造」として考慮する。少なくとも一つの実施形態において、本発明の装置は、上述したような目標領域100に向けることができる。いくつかの特定の実施形態には、エネルギー支援サブシジョン、線維性セプタム108の破壊、陥凹形成の原因となる皮膚表面上の外側の圧力を少なくするための皮下脂肪106の細胞の破壊、あるいは全体的な表面輪郭のためより深部脂肪層110の破壊が含まれる。
【0033】
本発明の目的を達成するためには、電気穿孔(可逆性あるいはまたは不可逆性)、パルス電界、高周波エネルギー、マイクロ波エネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギ等を含む様々なエネルギー形態を用いて皮下構造106、108、110の破壊を達成する方法および装置を用いることが望ましい。例えば、パルス電界の適用、あるいはまた目標領域100に直接的にあるいは目標領域に近接させた電気穿孔の適用は、所望の破壊を生じさせることができる。この開示においては、「電気穿孔(エレクトロポレーション)」という用語はパルス電界(PEFs)、ナノ秒パルス電界(nsPEFs)、イオン浸透、電気泳動法、電子透過化処理、音響穿孔、あるいはまたその組合せの、恒久的なあるいは一時的な、可逆的なあるいは不可逆的な、補助的な薬剤を使用しあるいは使用しない、熱影響の存在を必要としない使用を含む。同様に、本願明細書において用いる「電極」という用語は、アンテナ、例えば極超短波送信装置や超音波要素を含む、種々のタイプのエネルギーを生み出す装置の使用を包含する。
【0034】
可逆的な電気穿孔は1970年代の初期に初めて認められたが、電子化学療法、遺伝子導入、経皮薬物送達、ワクチン等のような様々な目的のために、目標とする細胞への化学製品、薬物、遺伝子および他の微粒子を移入させるべく、医学および生物学において広範囲にわたって用いられてきた。不可逆性の電気穿孔は、電気穿孔技術を用いるときには歴史的にほとんどの場合に回避されてきたが、水および食品の細菌除去(debacterilization)、基幹細胞強化および癌細胞パージ(Mangano、米国特許第6,043,066号)、腫瘍性前立腺組織の統制された切除(Chomenky、US2003/0060856)、身体血管の再狭窄の治療(Jaafar、US2001/0044596)、脂肪細胞の選択的不可逆性電気穿孔法(Jaafar、US2004/0019371)および腫瘍切除(Davalos, et al Tissue Ablation with Irreversible Electroporation, Annals of Biomedical Engineering 33:2, pp. 223-231(2005年2月)の用途における細胞分離のために近年提案されてきている。
【0035】
さらに、超短パルスあるいはナノ秒パルス電界(nsPEFs)に適用されるエネルギー場も、本発明に用途を有している。そのような技術は、外膜を永久的に崩壊させることなしに細胞下の構造を目標とするために超短波パルス長を用いる。この技術の実例は、Schoenbach et al. In Intracellular Effect of Ultrashort Electrical Pulses in J. Bioelectromagnetics 22:440-448 (2001)に記載され、かつ、米国特許6,326,177に記載されている。なお、その内容はこの参照によって本願明細書に明白に組み込まれるものとする。短いパルスは細胞内の器官を目標とし、細胞膜に電気穿孔効果を呈するが、そのような効果は可逆的であるため恒久的な膜破壊につながることはない。ナノ秒パルスの適用に続いて細胞内の内容物における細胞自滅が誘起され、細胞の生存度(例えば再生能力)に影響を及ぼす。
【0036】
一般的に、電気穿孔は、電極の組あるいは電極の列を活性化させて電界を生じさせるように構成された装置を用いて達成することができる。そのような場は、多極、双極、あるいは単極の電極配置において発生させることができる。細胞に印加されると、印加されたパルスの持続期間および強度に応じて、この場は、細胞膜の透過化を増大させるように作用し、そして、1)細胞脂質二重層に孔が形成されるようにして短い期間の間細胞膜を可逆的に開き、様々な治療上の成分あるいは微粒子が侵入できるようにし、その後、エネルギーの印加が停止すると、細胞を殺すことなく孔が自然発生的に閉じるか、あるいは、2)より高い強度(より長い、より高いエネルギー)のパルスを用いて、不可逆的に細胞膜を開きあるいは孔を開けて細胞の不安定性を生じさせ、細胞死を引き起こすか、あるいは、3)ナノ秒パルスのエネルギーを印加して、細胞膜の不可逆的な穿孔を生じさせることなく、細胞自滅および細胞死につながる細胞内の基質の破壊を引き起こす。Weaver, Electroporation: A General Phenomenon for Manipulating Cells and Tissues Journal of Cellular Biochemistry, 51 : 426-435 (1993)によって特徴づけられるように、短い(1−100マイクロ秒)およびより長い(1〜10ミリ秒)パルスが様々な型の細胞電気穿孔を生じさせる。なお、この文献の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。単一の細胞モデルにおいては、ほとんどの細胞は、細胞全体に印加される1〜1.5Vの範囲(膜電位)において電気的な穿孔を呈する。細胞容積に電気穿孔を適用するために、10V/cm〜10,000V/cmおよび1.0ナノ秒〜0.1秒にわたるパルス持続時間を印加することができる。
【0037】
ある種の要因は、供給された電界が目標を定めた細胞にどの様に作用するかについて影響を及ぼすが、これらの要因には細胞のサイズ、細胞の形状、印加された電界に関する細胞の配向、細胞の温度、細胞間の距離(細胞と細胞の分離)、細胞の種類、組織の不均一性、細胞膜の特性などが含まれる。より大きい細胞は、損傷に対してより脆弱であり得る。例えば、骨格筋細胞が、すぐ近くの結合組織細胞よりも電気的な損傷の作用を受けやすいことが指摘されている(Gaylor el al. Tissue Injury in Electrical Trauma, J. Theor. Biol. (1988) 133, 223-237)。なお、その全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。脂肪組織あるいは脂肪細胞は、それらの断熱的な特性に起因して損傷に対し脆弱ではないため、細胞膜が損傷の作用を受けやすくするためには前処理あるいはエネルギーを印加する間の処理が必要である。
【0038】
この領域における研究によると、低張溶液は人間の脂肪細胞のセル直径をかなり増大させることができる。注入から15分以内では、4分の1の通常生理食塩溶液がセル直径に対してかなりの効果を有することが既に報告されている。低張溶液を超音波脂肪吸引と共に使用することの科学的な根拠は、(Jennifer M. Bennett, MS, abstract presented at Plastic Surgery 2004)に記載されている。例えば、脂肪細胞が本発明の標的組織である場合には、低張塩水のような溶液をその領域に注入する必要があるが、それは翻って脂肪細胞の腫大を生じさせて細胞膜上の応力の増加を引き起こし、電気穿孔あるいは超音波エネルギーの印加または他のエネルギー形態の印加によってより破壊の作用を受けやすくする。そのような増強効果は、細胞サイズの変化、増大した細胞伝導率、増大した細胞外伝導率、増大した壁応力であり、増大した透過性につながる。加えて、塩水、カリウムおよび他の溶液成分の濃度の変更は細胞膜の透過化に影響を及ぼす。
【0039】
それに加えて、細胞は、印加された場の中でどのように方向付けられているかによって、より損傷の作用を受けやすくなる。例えば、非球形細胞の長軸が電界に沿って方向付けられていると、より破壊の作用を受けやすい(Lee et al, Electrical Injury Mechanisms: Electrical Breakdown of Cell Membranes, Plastic and Reconstructive Surgery, November 1987, 672-679)。なお、この文献の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。例えば、本発明の前後関係においては、結合組織の方向付けに応じて、場の方向によっては印加されたエネルギー場の作用を受けやすくなる。使用するパルス発生器、あるいは所望の効果に応じて電気穿孔を達成するために正弦波のACパルス、DCパルス、方形波パルス、指数関数的に減衰する波形、組み合わせられたAC/DCパルス、あるいはCell Poralion and Cell Fusion using an Oscillating Electric Field, Biophysical Journal October 1989, Volume 56 pgs 641-652のChangに記載されているDCシフトされたRF信号のような他のパルス波形を含む、パルスの様々な波形あるいは形状のパルスを適用することができる。なお、上記の文献の全体がこの参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。印加されるエネルギーのパラメータは変更することができるが、それらには以下の全てあるいはそのいくつかが含まれる:波形形状、振幅、パルス持続時間、パルスの間隔、パルスの数、波形等の組合せ。本発明の電気穿孔カテーテルシステムは、Cytopulse Sciences, Inc.(Columbia、メリーランド州)、あるいはGene Pulser Xcell (Bio-Rad, Inc.)、IGEA(Carpi、イタリア)、またはInovio(San Diego、カリフォルニア州)から入手可能な、表面電極あるいはカテーテル電極のようなエネルギー印加装置に電気的に接続されたパルス発生装置を備える。この発生装置は、不可逆性の電気穿孔を引き起こすべく、より高い電圧、増大したパルス電気容量あるいは他の変更を生じさせるように変更することができる。一つの実施形態において、この発生装置は、電界(e-field)がより長くとどまり、それによって脂肪組織の細胞電気穿孔が高められ、あるいはまた筋組織の破壊が最小化されるように、その電流を制限することができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、所望の効果に応じて、様々なエネルギー形態の適用と共に様々な治療促進剤54を用いることができるが、そのいくつかについては以下に詳述する。例えば薬剤は、治療装置から直接的にあるいは遠く離れた注射部位から、静脈内供給を含めて、経皮的にあるいは皮下注射によって伝達することができる。治療促進剤には、リドカインのような麻酔薬、エピネフリンのような血管収縮の薬剤、低張塩水、カリウム、攪拌された塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体、脂肪細胞、脂肪、自己由来の組織(例えば、身体からの敵対的な反応を最小化するための組織移植片を形成するきれいな脂肪細胞を生み出す崩壊された脂肪細胞)、PLLA、ヒドロキシアパタイト(hydroxyappetite)が含まれる。治療促進剤は、本発明のエネルギー印加治療の前に、間に、あるいは後に供給することができる。
【0041】
本発明の装置は(皮膚表面あるいは表皮102に対して)非侵襲的に適用されるもの、(表皮表面102の下の約3〜10ミリメートル下方の肌を介した)より侵襲的でないもの、および(深部皮下領域106および深部脂肪層110に対して約8ミリメートルあるいはより深い)最小限に侵襲的なもの、を含む。所望の効果に応じて、選択されたエネルギーおよび電極の設計は、効率よく目標が定められた組織のタイプに影響を与える開示のために、ある種のエネルギー形態および電極を組み合せるが、本発明の範囲を制限することは意図していない。
【0042】
ここで図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る装置30は、ハウジング32および中央治療要素34を有している。ハウジングと中央治療要素の間には環状領域36が配設されている。この環状領域は、ハウジングから中央治療要素までの寸法が約5〜20ミリメートルの開口38を有している。一つの実施形態においては、中央治療要素はハウジングの内部に回転自在に接続されたローラとして構成され、ハウジングが肌の表面102(図1)上を移動するときに回転できるようにしている。さらに他の実施形態においては、中央治療要素は、ハウジングの内部に部分的に例えば約5〜30ミリメートルにわたって埋め込まれるが、皮膚表面に当てられると肌を押して電気的な接続のためのより良好な接触をもたらすように充分な距離で延びる。一つの実施形態においては、中央治療要素あるいはハウジングが電極となり、患者の身体のどこかに接地パッド(図示せず)の形態でアース(図示せず)が配置され、あるいは、ハウジングおよび中央の治療要素の両方が二極性のシステムを形成する活性電極となる。一つの実施形態においては、ハウジングおよび中央治療要素の両方が、電力が供給されている間にほぼ同時に肌あるいは表皮102に接触する。後に詳述するように、環状領域に関連させて管腔を挿入し、この装置を吸引性の管腔に接続することにより、この装置を肌に当てるときに吸引できるようにすることが有益である。例えば、少なくとも一つの実施形態において、医療的な吸引あるいは負圧を環状領域36に接続し、目標領域100(図1)とこの装置30が互いに引っ張り合うようにする。このようにして、肌あるいは表皮102との接触が維持されて所望の加圧が達成される。治療装置による様々な組織層の加圧は、治療効果を達成するために必要なエネルギー量に影響を与える。
【0043】
中央治療要素34あるいはハウジング32は、多くの形状に構成することができる。少なくとも一つの実施形態において、中央治療要素34は円柱、環状体、楕円等として形付けることができる。ある用途において、治療要素の一つの領域にエネルギーを供給して集中させるときには、少なくとも一つの曲率半径を有する幾何学的形状が「エッジ効果」を最小化するために望ましい。
【0044】
ここで図3を参照すると、本発明の他の実施形態は、目標とする組織100の領域のいずれかの側に配置されたクランプ40を含んでいる。一つの実施形態において、このクランプは、表皮102と接触する第1電極41および第2電極42を有した二極性の構造に構成されている。治療する皮下組織106は、これらの電極の間に配設される。第1電極が電圧を供給し、第2電極はアースである。
【0045】
ここで図3Bを参照すると、クランプ腕あるいは電極40の鋭い縁部における「エッジ効果」すなわち電流の集中が増大したエネルギー密度を呈するので、より一様なエネルギーの供給が最も有益である本発明の所期の効果にとっては望ましくない。エネルギーのより一様な供給は早すぎたインピーダンス上昇の可能性を減少させて、供給されるエネルギーの総計および持続期間あるいは表皮102(図1)のような取り囲んでいる構造への意図しない組織損傷を減少させる。
【0046】
図4は、本発明の他の実施形態の断面を表しているが、略円柱状の要素51,52を有したクランプ50が採用されて、「エッジ効果」を少なくするとともにより一様な電流を印加するようになっている。この実施形態においては、クランプの腕51が活性電極(アクティブな電極)として、かつクランプの他の腕52がアースとして示されている。しかしながら、実際には、両方のクランプアーム51、52を活性電極およびアース(図示せず)として、治療する領域100の近傍にあるいは治療する領域から離して患者の組織上に配置することができる。
【0047】
図5Aは、形状が環状で球面の直径が例えば45ミリメートルである中央治療要素34を用いた単極構造の図2の装置30の適用を示している。この実施形態においては、中央治療要素は正に帯電した活性電極であり、所望の標的組織は皮下脂肪106および線維性のセプタム108および筋肉層まで至る深部脂肪110(図1)を含む結合組織である。中央治療要素として様々な直径、例えば10ミリメートル〜50ミリメートルの球形を用いることができる。ここで図5Bを参照すると、中央治療要素の曲率半径により、皮下の層106、108、110(図1)の内部に目標が定められたエネルギーに加えて「エッジ効果」は存在していない。
【0048】
例示的な意味では、図2A〜図5Bに描かれている装置は様々なエネルギー源を用いて利用することができるが、実際には前述したような電気穿孔発生装置を用いる。5〜2000ボルトの範囲で、目標を定める組織の厚みおよび細胞のタイプに応じて50〜10,000V/cmの範囲、例えば100〜3,000V/cmの範囲の電界強度の様々な電力を供給することができる。そのようなエネルギーの供給はまた、目標組織に対する破壊的な効果を最大にする一方で筋収縮を最小化するためにパルスとしあるいは切替えることができる。
【0049】
本発明のエネルギー印加装置は、本願明細書の他の部分で詳述する注射可能な促進剤54と共に用いることができる。ここで図6を参照すると、本発明の少なくとも一つの実施形態は、治療促進剤54の皮下注射と共に用いられる中央治療要素34を有した、非侵襲性のエネルギー供給システムを含んでいる。この実施形態においては、エネルギー供給システム33は上述した電気穿孔発生装置であり、中央治療要素34が電極であるが、それはSiemens/Acuson(Malvern、ペンシルバニア州)によって製作されるシステムのような超音波振動子に作動的に接続される超音波発生装置とすることができる。注入は、皮下脂肪106、深部脂肪110(図1)、線維性のセプタム108あるいは破壊する他の結合組織を含む破壊すべき皮下構造の任意の位置に目標を定めることができる。このシステムは、皮膚表面から印加されたエネルギーに接触すると激増する泡やその他の形態の増大したエネルギーポテンシャルを治療部位に生み出すために、注入の前に溶液を「泡立たせ」あるいは攪拌する注射器56を含むことができる。
【0050】
図7A〜7Bおよび図8A〜図8Cを参照すると、本発明の更なる実施形態においては、ハンドピース268は、患者の皮膚表面に追従するパッド60を含んでいる。このパッドは、そこから延びる複数の極微針(マイクロニードル)62を含むとともに、リザーバ64と連通している。この装置は、空気あるいは流体によって膨張し、患者の肌の皮層を介して極微針を配置させる、ブラダのような作動要素66を更に備えている。肌を介した針の挿入は目標組織の抵抗を実質的に減少させ、目標組織を、印加されたエネルギーの作用をより受けやすいものとする。極微針は、治療する目標組織に応じて0.5ミリメートル〜20ミリメートルの距離で肌の内部に延びるが、いずれの場合も角質層を通過する。例えば、セルライトを治療するためには1〜5ミリメートルの針入深さが望ましいが、より深い皮下脂肪のためには3〜20ミリメートル、例えば5〜10ミリメートルの深さが望ましい。一つの実施形態においては、肌を不必要な組織損傷から保護するために極微針の作動部分以外は絶縁され、例えば最初の0.5ミリメートル〜1ミリメートルは絶縁体を支持することができる。さらに他の実施形態において、針は完全に絶縁することができる。別の実施例では針は絶縁されない。極微針は、上述した電気穿孔発生装置あるいは超音波発生装置のようなエネルギー源33(図6)に作動的に接続することができる。さらに、極微針を介して治療促進剤54を注入することができる。
【0051】
極微針62は、列の間で二極式とすることもできるし、あるいは患者のどこかに配置された接地パッド(図示せず)と共に単極式に作動させることもできる。ラスター走査の仕方で電力を印加して、様々な対あるいは対のセットをある間隔で活性化させることができる。極微針の列の間の間隔は、最大磁界が均一となるように、例えば0.5〜5.0ミリメートルの範囲の間隔に設定される。
【0052】
さらに他の実施例においては、ハンドピース268のベース266は、大気より低い圧力を用いて患者の肌102をベースに向かって上方に吸引するための吸引部材264を含むことができる。この吸引部材は、機械ポンプ(図示せず)、ハンドポンプ(図示せず)あるいは大気より低い圧力の他の供給源に接続できる、少なくとも一つの吸引管270を含んでいる。
【0053】
一つの実施形態においては、肌102は、肌に吸引を負荷する前にハンドピース268の外に配置されている針62に向かって上方に吸引される。その後、肌に吸引が負荷されると、肌はハンドピースのベース266に向かって上方に吸引され、針は治療する患者の少なくとも表皮102を貫通する。他の実施形態においては、ハンドピースは第1の状態で患者の上に配置されるが、このときには針の遠位端はハンドピースの内部にある。それから、ハンドピースのベースに対して肌を上方に引っ張るために吸引が負荷される。その後、針の遠位端がハンドピースの外側にある第2の状態に針を配置すると、針は治療する患者の少なくとも表皮を貫通する。一つの実施形態においては、針の遠位端は注入部材から自動的に配置される。第1の状態と第2の状態との間での針の移動は制御装置によって制御される。少なくとも一つの実施形態においては、第1の状態と第2の状態との間での針の自動的な配置のために、モータをハンドピースに含めることができる。
【0054】
図8A〜図8Bは、治療促進剤54を注入できるとともに、皮層104(角質層)を通って治療が望まれる皮下層106、108、110(図1)の内部へと延びるように構成された、一連の極微針62を示している。例えば、本発明による極微針62を介したエネルギーの印加は、皮下層のセプタム108を破壊することができ、エネルギー支援のサブシジョンおよびそれに続く肌の平滑化を生じさせる。加えて、極微針は、その直径および針入の深さに応じて、皮下脂肪106の細胞を破壊するために、治療促進剤が細胞に入ってその機能を破壊することができるように細胞膜の透過処理を生じさせるのに十分な、あるいは細胞死に結びつく不可逆性の電気穿孔を生じさせるのに十分なエネルギーを供給することができる。図8Bは、治療促進剤54を注入できる追従可能なパッド60あるいはリザーバ64上にある極微針62の配列を描いている。一つの実施形態においては、針は二極式の構造に配置することができる。他の実施形態においては、針が単極式の構造に配置され、かつ接地パッドが治療する組織から間隔を開けて患者に装着される。
【0055】
環状体電極51、52およびクランプ電極41(図2〜図6)を極微針62と共に構成することは本発明の範囲内であるが、この極微針62は、ユーザーによって、または装置30の環状領域36(図2)あるいは吸引部材264に負荷される負圧によって患者の肌の皮層104に押し込まれる。さらに、ユーザーが治療することを望む距離および位置に極微針を置くことができるようにすることは有益である。この際、それによってユーザーが別々の針62を配置できるテンプレート90(図15)を設けるとともに、選択された配置に応じたエネルギーのアルゴリズムを提供することは、本発明の範囲内である。
【0056】
ここで図9を参照すると、本発明の他の実施形態においては、針62、電極72あるいは電極列74を配置するように構成されたカテーテルデバイス70を、肌102、104を通して目標である皮下構造106、108、110に挿入するために設けることができる。例えば、扇形に広がった電極配列74を複数の延伸要素あるいは枝62、72と共に設けることができる。
【0057】
枝62、72は、メインカテーテルシャフト76を介して肌102、104を通して配置することができ、実質的に皮膚表面102と水平(平行)な配向で「扇形に展開する」。枝がまた電極72である実施形態においては、枝を皮膚表面に実質的に平行であるように配置してエネルギーを印加すると、皮下脂肪106あるいは線維性のセプタム108のような皮下の構造を破壊することができる。複数の枝を用いると、今日の装置によって予測されるよりも大きな領域をより短い時間で治療することが可能である。電極装置70の枝は、治療促進剤54の注入を可能にするために中空に構成することができる。中空の枝は、その全長に沿ってそしてその遠位端79に複数の流出口78を有することができる。
【0058】
一つの実施形態においては、扇形に広がる枝の配列74は、第1の近位端76p、皮下組織への挿入のために適合した第2の遠位端76d、およびそれらの間で長手方向に配設されたチャネル76cを有した、筒状要素70を含むことができる。第1の近位端(図示せず)および第2の遠位端79を有した複数の伸長可能な細長い要素72、74は、チャネルの中に配設されるとともに、チャネルの内部に引き込まれた第1の状態からチャネルの外に延びる第2の状態へと動くことができ、細長い要素の遠位端は延び出た状態においては引き込まれた状態よりも互いに離れている。一つの実施形態においては、高周波メスをこの配列に用いることができる。さらに他の実施形態においては、機械的なメスあるいは切断要素をこの配列に用いることができる。
【0059】
ここで図10を参照すると、本発明のさらに他の実施形態においては、枝はエネルギーを供給しない単に鋭利な切断要素80であるが、これらの枝を皮膚表面102に平行に配置してカテーテルシャフト76の縦軸77(図9)の周りに回転させ、あるいは肌に対して実質的に平行な配向で引き込ませると、この装置70は一度の回転あるいは引き込みにおいて複数のセプタム108を効率的に破壊することができる。さらに他の実施形態においては、少なくとも一つのカテーテルシャフト76を、治療する組織の内部への治療促進剤54の注入のために構成することができる。さらに他の実施形態においては、針の先端の幾何学的形状は、特定の組織を破壊する効果のためのエネルギー場を形作る構成とすることができる。
【0060】
ここで図11を参照すると、さらに他の実施形態においては、作動要素80、例えば切断要素をカテーテルシャフト76の中心軸77に対して鋭角に配置することができる。この装置の作動領域80は、カテーテルシャフトに挿入するために折り畳むとともに、皮下のスペース106、108、110に配置するときには伸張させることができる。切断する状態に配置されると、図11に示したように、カテーテルシャフトは皮膚表面102に平行に方向付けられ、装置70を引き戻すと、そのチャネルにおいてセプタム108を捕捉して切断する。装置70の作動領域80は、例えば、鈍い解剖器具、機械的なカッター、あるいはエネルギー支援された装置とすることができる。高周波エネルギーあるいは電気抵抗の熱エネルギーを含む、任意の適用可能なエネルギーの物理療法を利用することができる。
【0061】
ここで図12〜図14を参照すると、少なくとも一つの実施形態においては、皮下注射用針62あるいは電極72を組織破壊装置30と共に用いることができる。一つの実施形態においては、組織破壊装置30、例えば図2〜図6に示して上述した装置のような、ハウジング32および転動する中央治療要素34、クランプ40あるいはトロイド形の電極50と共に、扇形に広がる電極74が配置される。さらに他の実施形態においては、扇形に広がる電極74を、装置30、例えば転動する中央治療要素34とは独立させて配置することができる。
【0062】
一つの実施形態においては、線維性のセプタム108のような結合組織に目標を定めるために、それらが生み出す電界を有利に配置できるように、扇形に広がる針電極74を方向付けることができる。図12〜図13を参照すると、少なくとも一つの実施形態においては、中央治療要素34が正に帯電し、かつ針電極62、72、74は負に帯電する。図13に示した一実施形態は、トロイド形の中央治療要素34の中心を通って扇型の電極74の配備を含めることができる。扇形に広がる電極は、治療する組織のエネルギーによる破壊を助けるために機械的に回転させることができる。図14に示した他の実施形態は、ハウジング32の内部に配置されるとともにトロイド形の中央治療要素34の周縁に配置された、真っ直ぐな針電極62、72を含むことができる。これらの針は、電界線がセプタムに対して垂直にあるいは平行に方向付けられるように皮下に形付けられあるいは構成され、セプタムは電気的に崩壊させられる。図14を参照すると、針電極62、72は、その近位側が電気的に絶縁されるとともに、電気的に活性な遠位端が露出している。少なくとも一つの実施形態においては、中央治療要素34が負に帯電し、かつ針電極62、72、74が正に帯電する。ここで図14Aを参照すると、正に帯電する中央治療要素34とそれを取り囲んで負に帯電している電極62、72、74との間の距離「D」は、形状に治療する組織に対する破壊的なエネルギーの分布を形付けるために変更することができる。
【0063】
ここで図15を参照すると、少なくとも一つの実施形態においては、ハウジング32は、真っ直ぐな針電極62、72の挿入を案内するチャネル35を有したテンプレート90として構成することができる。様々なサイズのテンプレートを設けることができ、それによって針電極の様々な挿入パターンが可能となる。これらのテンプレート90は、瘢痕化した領域、あるいは重症なセルライトの場合には特定の凹みあるいは凹みの集合体といった、特定の領域に焦点を合わせたサイズとすることができる。大型のセルライトの凹みはより大型のテンプレートで治療することができ、より小さいセルライトの凹みはより小さいテンプレートで治療することができる。エネルギーは、患者を治療するために用いる特定のテンプレートに合わせて調整することができる。
【0064】
一つの実施形態においては、中央治療要素34は、有効な治療領域を最大化するために、少なくとも一つの針電極62、72と共に作用することができる。さらに、針電極は、装置30のハウジング32の周囲に配置して、一緒にエネルギーを印加し、あるいは多重化することができる。ここで図16を参照すると、少なくとも一つの実施形態においては、中央治療要素を正に帯電する電極として構成し、かつ周囲に分配される複数の針電極72を負に帯電する電極として構成することができる。このような極性は、単なる例示であって、供給されるエネルギーのタイプおよび所望の効果に応じて電極の極性を切り替えあるいは変更できることは理解されなければならない。ユーザによる電極72あるいは針62の配置を案内するために、テンプレート90を用いることができる。先に言及したように、治療する組織の望ましい容量に応じて、様々に異なって寸法決めされかつ形作られたテンプレートを提供することができる。
【0065】
ここで図16をより詳しく参照すると、一つの実施形態においては、中心電極34から連続的にエネルギーを供給することができるが、周囲の接地電極72A〜72Rは時間的な順番で活性化される。したがって、周辺電極72A〜72Rは順番に活性化される。このことは、エネルギー供給を一定にすることによって筋肉刺激を減少させるとともに、単一の接地電極の高いインピーダンスに起因して供給される総エネルギーを減少させる。各組織部分にはわずかな時間だけエネルギーが印加され、それによって組織の加熱および温熱損傷を最小化する。この電極配列が治療領域全体の上でゆっくり移動すると、低エネルギーの治療となる。一つの実施形態においては、中央の正電極とそれを取り囲んでいる周辺電極との間の距離は10.0ミリメートルである。少なくとも一つの実施形態においては、エネルギーが10オーム、200ボルト、0.5アンペアあるいはまた100ワットで供給される。さらに他の実施形態においては、20分の1のデューティーサイクルが一つの領域に用いられる。さらに他の実施形態においては、より高いインピーダンスおよびより低い電力が用いられる。
【0066】
ここで図17A〜図17Bを参照すると、本発明のさらに他の実施形態においては、超音波エネルギーを印加することによって皮下の構造を崩壊させるために、超音波装置120、例えばハンドピース122および治療シャフト124を有した超音波カテーテルが用いられる。この超音波装置は、例えば高周波メスを含み、あるいは針カニューレの先端に超音波振動子を取り付けることができる。この装置120は、治療シャフトの開口125あるいは別個の注入装置56(図6)を介した、治療領域、例えば皮下脂肪106に向けての治療促進剤54の注入と共に用いることができる。エネルギー印加の前における治療促進溶液の注入を保証するために、選択的な制御装置128をいることができる。さらに、治療領域に微小な泡132(攪拌した塩水等)を注入するために、上述したものに類似した注入および泡立ち装置56、130を用いることができる。一つの実施形態においては、高周波針あるいは超音波治療シャフトは、治療する皮下組織あるいはセルライト凹みの下方で前後方向に動かされるように構成する。
【0067】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、哺乳類の患者の皮下構造106、108(図1)を崩壊させる装置を含む。この装置は、その表面に配設された1つ若しくは複数のエネルギー伝達部材34、40、50あるいは電極72、74を有する印加装置30、70(図2、図9)を備えることができる。一つの実施形態において、この印加装置はカテーテル70(図9)として構成される。電極は、電気パルスを伝達するように構成される。この装置は、印加装置に作動的に接続されるとともに約10V〜3000Vの電気パルスを供給するように構成されたパルス発生器33(図6)を更に備える。印加装置および発生装置は、膠原性の皮下構造、例えば線維性のセプタム108を破壊するように構成することができる。
【0068】
他の実施形態(図9〜図13)においては、この印加装置は、治療する皮下の構造106、108に隣接する領域へと哺乳類の患者の肌102、104を介して挿入されるように構成されたカテーテルデバイス70である。このカテーテルあるいは印加装置は、治療する目標膠原性構造108に対しある角度に配置することができる。
【0069】
少なくとも一つの実施形態(図4)において、この印加装置50は、少なくとも一つの曲率半径および少なくとも一つの表面を有したトロイド形の形状を有する。
【0070】
再び図2を参照すると、さらに他の実施形態において、この印加装置34は、ハウジング32の内側に取り付けられるとともに、ハウジングに対して動くように構成される。さらに他の実施形態においては、ハウジングが活性電極であり、この印加装置がリターン電極あるいはアースである。他の実施形態においては、ハウジングがリターン電極あるいはアースであり、この印加装置が活性電極である。一つの実施形態において、この印加装置は、ハウジングに回転自在に接続されて複数の方向に回転できるようになっている。
【0071】
再び図7A〜図8Cを参照すると、他の実施形態においては、この印加装置の少なくとも一つの表面は、哺乳類の患者の肌を貫通できる極微針62を更に含む。これらの極微針は、エネルギー伝達要素を含むことができる。さらに他の実施形態において、この印加装置は、追従可能なパッド60として構成される。この追従可能なパッドは、哺乳類の患者の肌102、104を貫通できる、そこから延びる極微針を更に含む。この印加装置は、1つ若しくは複数の電極が、哺乳類の患者の肌を貫通することができる極微針を含むように構成することができる。
【0072】
さらに他の実施例において、本発明はまた、哺乳類の身体の肌の凹凸の一因となる皮下構造を選択的に破壊する方法を含む。この方法は、第1電極41および第2電極42を有したエネルギー伝達装置を提供することを含む。第1および第2の電極の間に電界を生み出すように構成された、パルス発生器33が提供される。このエネルギー伝達装置は、治療する皮下組織106、108に隣接した領域に配置され、皮下構造を破壊するために少なくとも一つの細胞の透過化を生じさせるべく、この皮下構造に細胞レベルでエネルギーを与える。一つの実施例において、この細胞の透過化は可逆的である。他の一実施例において、この細胞の透過化は不可逆的である。さらに他の実施形態において、不可逆的な細胞の透過化は、細胞内の基質の細胞自滅の生成を介して達成される。
【0073】
再び図6を参照すると、さらに他の実施形態において、本発明の皮下組織を治療する方法は、治療促進剤54を準備し、第1電極34と第2電極32の間の電界活性化と共に例えば注射器56により治療促進剤を供給することを含む。治療促進剤は、リドカインのような麻酔薬、エピネフリンのような血管収縮薬、低張溶液、低張塩水、カリウム、攪拌された塩水、微小な泡、あるいはまた微小球体、リドカイン、あるいは腫脹性溶液を含む。
【0074】
なお他の実施形態において、セルライトを治療する方法は、患者の皮下領域にある線維性セプタム108の細胞への局所的なエネルギーの供給を含む。このエネルギーは、セプタムを破壊するのに十分な程度に線維性セプタムの細胞膜を透過化させるために、選択された条件の下で細胞に供給される。
【0075】
再び図12を参照すると、少なくとも一つの実施形態において、哺乳類の患者の皮下構造を破壊するための装置は、その表面上に配設された1つ若しくは複数のエネルギー伝達部材34を有する印加装置30を備え、このエネルギー伝達部材はエネルギー場を伝達するように構成されている。エネルギー場の伝達と共に、治療促進剤54を治療する組織100に付加することができる。エネルギー伝達部材および治療促進剤は、膠原性の皮下構造108を破壊するように作動する。この皮下構造は、印加装置に対し実質的にある角度で方向付けることができる。
【0076】
本願明細書において議論する方法および装置は、肌の凹凸を治療するための、および過剰な脂肪組織、セルライトおよび瘢痕化といった他の疾患を治療するための、哺乳類の身体における皮下構造106、108の破壊あるいはまた破壊にとって有益である。この装置および方法は、エネルギーを伝える印加装置、極微針、カテーテル、および肌を介した非侵襲的な、肌を介したより侵襲的でない、あるいは最小限に侵襲的な皮下アプローチによる治療を適用するための皮下治療装置を含む。この分野の公知でありかつ本願明細書において議論する様々な薬剤は、皮下組織を治療するためのこれらの手技を支援しあるいは改良する。
【0077】
一つの実施形態において、本発明は、軟組織を治療するための装置を含む。他の実施形態において、本発明は、線維組織を治療するための方法を含む。一つの実施形態において、本発明は、脂肪細胞およびセプタム108を含む皮下脂肪層106を治療するための方法および装置を更に含む。一つの実施形態において、本発明は、セルライトを治療するための方法および装置を更に含む。本発明は、セルライトの外観の一時的な減少、あるいはセルライトの恒久的な減少のために有益である。本発明はまた、脂肪吸引の補助的な手段として用いることができる。さらに本発明は、セルライトの外観を一時的に改善するための、皮下への流体の注入および分散を提供する。本発明はまた、良性新生物、例えば脂肪腫の除去のために有益である。
【0078】
少なくとも一つの実施形態において、本発明は、標的領域の美的な外観を改善するために、コラーゲン、結合組織、脂肪組織(脂肪細胞)等といった皮下の構造(あわせて「標的組織」あるいは「皮下構造」)に目標を定めて破壊する方法および装置を指向している。この標的領域は、人体において改善が望まれる、顔面、あご、首、胸部、乳房、腕、胴、腹部(骨盤領域を含む)、大腿、臀部、膝および脚部を含む任意の表面あるいは輪郭から成る。目標とする組織には、その領域の結合組織あるいはセプタム、または皮下およびより深い脂肪の沈澱あるいは層のような、その下に横たわっていて望ましくない身体の輪郭を悪化させ得る組織が含まれる。肌の凹凸は、セルライトや瘢痕化、あるいは首、あご、乳房、尻、腹部、腕等の領域における脂肪の沈澱あるいは過剰な脂肪といった、外側の様相に対する人の満足感を減少させる状態を指す。
【0079】
本願明細書において使用する促進剤54という用語は、外因性のガス、液体、混合物、溶液、化学薬品のうちの少なくとも一つ、または組織に適用されたときにエネルギー供給システム33の破壊的な生物学効果を改良する材料を指す。促進剤の一つの実例は、促進溶液である。一つの実施形態において、この促進溶液は、外因性の気体、例えば微小な泡132を含む。促進剤あるいは促進溶液は、例えば、塩水、通常生理食塩溶液、低張塩水、低張溶液、高張液、リドカイン、エピネフリン、腫脹性溶液、あるいはまた微小な泡溶液を含むことができる。他の促進剤は、本願明細書において更に詳細に説明される。一つの実施形態において、本発明は、促進溶液を攪拌しあるいはまた混合するように構成された撹拌システム56、および溶液を注入するように構成された注入部材56、122を備える組立体である。少なくとも一つの実施形態において、この組立体は、また、溶液を格納するための容器、例えばその内部に溶液を格納するためのリザーバ64を備える。このリザーバは、従来技術において周知の点滴バッグとすることができる。
【0080】
ここで図18を参照すると、一つの実施形態において、組立体200はエネルギー供給システム33を備える。医師が促進溶液210を調製して吊り下げると、この組立体は、前もってプログラムされたあるいはユーザが定めたアルゴリズムに基づいて混合し、注入し、かつ治療する組織にエネルギーを付加する。このアルゴリズムは、制御装置228にプログラムすることができる。この制御装置は、他の構成部分を含む単一構造の組立体に含めることもできるし、あるいはこの組立体の他の構成部分と連絡するように構成された別個のユニットとすることもできる。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はプロセッサおよびメモリーを含む。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置は、また、入力装置236、例えば電気スイッチ、ボタン、あるいはキーパッドを含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、この制御装置はまた、出力装置238、例えば従来技術において周知のLEDライト、液晶画面、計器、あるいは他のスクリーンおよび出力表示器を含むことができる。他の実施形態において、入力装置236および出力装置238は制御装置から分離することができるが、制御装置と電気的に通信する。組立体は、促進溶液210をリザーバ220から攪拌機208へと搬送し、そこにおいて溶液が混合されかつ攪拌されるように構成される。撹拌機208は単一構造のハンドピース242に含めることができる。組立体は、その後、注入部材214を用いて患者に溶液を注入するように構成される。組立体はまた、ハンドピースに含まれるエネルギー供給装置204を用いて、治療のために注入した組織100にエネルギーを印加するように構成される。このハンドピースは、中央治療要素34を有したハウジング32、例えば図2に示した組織破壊装置30として構成することができる。一つの実施形態においては、少なくとも一つの皮下注射針62が溶液注入部材214に配設される。さらに他の実施形態において、溶液注入部材は、格納式の針62と共に構成することができる。
【0081】
本発明はまた、患者の皮下脂肪106に対する皮下注射に対して生体適合性を有した様々な治療促進剤54を含む。一つの実施形態において、溶液は腫脹性の溶液である。腫脹性の溶液は、局所麻酔の適用をもたらすために特に適合させたものであり、周知の技術である。腫脹性の溶液は、様々な医薬用溶液を含むことができる。腫脹性溶液の一つの実施例は、2%のリドカインを含有した1000mlの通常生理食塩溶液、30ml(600mg)のエピネフリン、および1モル(12.5mlあるいは12.5mg)の重炭酸ナトリウムを含む溶液である。腫脹性溶液の少なくとも一つの他の実施例は、1000mlの通常生理食塩溶液、50mlの1%のリドカイン、1ccの1:1000エピネフリンを含む溶液である。これらの添加物は商業的に入手可能である。腫脹性溶液は、治療部位の出血を減少させるとともに、手技の間および後における痛みを減少させる局所麻酔効果を提供する。
【0082】
一つの実施形態において、促進溶液54は正常食塩溶液である。さらに他の実施形態において、促進溶液は低張溶液である。さらに他の実施形態において、溶液は微小な泡あるいはナノサイズの泡を含む溶液である。この溶液は、微小な泡を含む溶液を生じさせるために、2つの注射器の間で1回若しくは複数回攪拌される。本願明細書の他の部分で詳細に説明するように、微小な泡あるいはナノサイズの泡を含むいくつかの溶液は商業的に入手可能である。
【0083】
促進剤は所望する効果に応じるが、その幾つかは以下に詳述される。例えば促進剤は、経皮的にあるいは治療する組織への注入により伝達することができる。治療促進剤には、リドカインのような麻酔薬、界面活性剤、エピネフリンのような血管収縮の薬剤、低張塩水、カリウム、攪拌された塩水、微小な泡、商業的に入手可能な超音波造影剤、微小球体、脂肪細胞、脂肪、自己由来の組織(例えば、身体からの敵対的な反応を最小化するための組織移植片を形成するきれいな脂肪細胞を生み出す崩壊された脂肪細胞)、PLLA、ヒドロキシアパタイトが含まれる。治療促進剤は、皮下組織への音波の負荷の前に、間に、あるいはその後に供給することができる。
【0084】
一つの実施形態において、溶液注入部材214に対する電源は、溶液注入部材に含まれる。他の実施形態において、溶液注入部材の電源は溶液注入部材の外部に配置される。例えば、溶液注入部材の電源は制御装置228によって供給することができる。少なくとも一つの実施形態において、注入容量、深さ、タイミング、および注入と超音波の負荷との同期を制御するアルゴリズムは、溶液注入部材に含まれているメモリあるいはまたプロセッサに含めることができる。少なくとも他の実施形態においては、注入容量、深さ、タイミング、および注入と超音波の負荷との同期を制御するアルゴリズムは、溶液注入部材の外部に配置された、例えば制御装置に含めることができる。
【0085】
一つの実施形態において、溶液注入部材214は少なくとも一つの皮下注射針62を含む。皮下注射針は、溶液注入部材に接続された近位端、および治療のために標的領域100に貫通するように構成された遠位端を有している。針の遠位端は、周知のように、肌に対するより外傷的でない貫入のために、斜めに切断(図示せず)することができる。一つの実施形態において、針は極微針を含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、針は角錐状(図示せず)に形付けることができる。さらに他の実施形態において、溶液注入部材は複数の皮下注射針を含む。皮下注射針は、溶液が針を通って組織に流入するように構成された中央管腔を具備した、管状のチャネルを有している。一つの実施形態において、溶液注入部材は、溶液注入部材の内部の位置から針が表皮102を介して治療する皮下組織に貫通する位置へと、皮下注射針を移動させるための作動要素(図示せず)を有している。一つの実施形態において、針は、少なくとも皮下脂肪106を貫通するように構成される。さらに他の実施形態において、針は、深部脂肪層110を貫通するように構成される。
【0086】
注射針の直径は40ゲージから7ゲージのサイズにわたる。一つの実施形態において、注射針は30ゲージのサイズである。さらに他の実施形態において、注射針は28ゲージのサイズである。さらなる実施形態において、注射針は25ゲージのサイズである。追加の実施形態において、注射針は22ゲージのサイズである。さらに他の実施形態において、注射針は20ゲージのサイズである。さらに一つの実施形態において、注射針は18ゲージのサイズである。針の全てを一つの長さとすることもできるし、あるいは異なる長さすることもでき。一つの実施形態において、針の全長は2.0ミリメートル〜10.0cmである。一つの実施形態においては、針の全長は5ミリメートル未満である。他の実施形態において、針の全長は5.0ミリメートル〜2.0cmの範囲である。他の一つの実施形態において、針の全長は1.0cm〜3cmの範囲である。さらに他の実施形態において、針の全長は2.0cm〜5cmの範囲である。他の実施形態においては、針の全長は3.0cm〜10.0cmの範囲である。
【0087】
少なくとも一つの実施形態において、注射針62は極微針を含む。一つの実施形態において、極微針の直径は20ミクロン〜500ミクロンの範囲である。一つの実施形態において、極微針の全長は100ミクロン〜2000ミクロンの範囲である。少なくとも一つの実施形態において、針は表皮102から深部脂肪層110に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの他の実施形態において、針は表皮から筋肉層26に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの実施形態において、患者の快適性を増大させるために、局所的な麻酔クリームあるいはゲル、局所冷却法あるいは局所ブロックを用いて、更なる麻酔を治療領域に付加することができる。局所麻酔薬は、唯一必要な麻酔薬とすることもできるし、促進剤として用いられる任意のリドカインに代えることもできる。
【0088】
一つの実施形態において、針62は、治療する標的組織に応じて、皮膚表面から0.2ミリメートル〜40ミリメートルの距離にある皮下組織106に延びるのに十分な長さとすることができる。針は、針の遠位端226が少なくとも角質層を通って延びることができるように十分に長い。例えば、セルライトを治療するためには1.0ミリメートル〜5.0ミリメートルの針入の深さが望しく、より深い皮下脂肪のためには3.0ミリメートル〜40ミリメートルの針入深さが望ましい。1つ若しくは複数の皮下注射針が、手動であるいは制御装置228によって自動的に、様々な深さに移動することができる。少なくとも一つの実施形態において、針は表皮102から深部脂肪層110に到達するのに十分な長さである。少なくとも一つの他の実施形態において、針は表皮102から筋肉層26に到達するのに十分な長さである。
【0089】
少なくとも一つの実施形態において、本発明の装置は、より深い組織層からより表面的な組織層へと、各段階の注入の間に組織に対してエネルギーを負荷しつつ、段階的な深さの注入を提供するようにに構成される。1つ若しくは複数の皮下注射針が、手動であるいは制御装置228によって自動的に様々な深さに移動することができ、更に後述するように組織は段階的な深さで治療される。
【0090】
組立体200は、注入部材214による溶液の注入の後に、様々な回数でエネルギー供給システム33を活性化できるように構成されている。少なくとも一つの実施形態において、治療する組織への溶液の注入に続いて、組織へのエネルギー負荷のタイミングに同期させるために、制御装置228を用いることができる。一つの実施形態において、注入部材は、少なくとも治療する組織への溶液の注入を開始させるためのスイッチを有するように構成される。少なくとも一つの実施形態において、注入部材は、注入を停止させあるいはまた患者から針62を引き抜くための停止ボタンを有するように構成することができる。
【0091】
本発明のさらに他の実施形態において、組立体200は冷却モジュール(図示せず)を含む。患者の肌への注入は、一般的に不快感、腫大、出血、瘢痕化あるいは他の望まれない効果といった副作用を伴う。さらにまた、本発明によって治療される皮下組織の破壊は、多くの美容整形あるいは皮膚科的治療に一般的ないくつかの副作用に結びつく。冷却モジュールの使用は本発明による治療の副作用を減少させる。組織の冷却は、出血、腫大および不快感を減少させる。この冷却モジュールは、従来技術において公知の多くの冷却方式のいずれかを含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、冷却モジュールの一部はハンドピース242に含めることができる。冷却モジュールの一つの利点は、本発明の治療に伴う不快感、腫大、瘢痕化および他の望まれない効果の治療あるいは予防を援助することにある。少なくとも一つの他の実施形態において、この冷却モジュールは別個のモジュールとして組立体に含めることができる。さらに他の実施形態において、促進溶液は、治療する組織への注入の前に冷却することができる。
【0092】
ハンドピース242は、異なる皮下異常あるいは異なる重症度の皮下異常を治療するように構成された、異なるサイズに設けることができる。一つのハンドピースは、他のものよりも高い針62の密度を有する。例えば、セルライトのより重症な領域は、針の密度がより高いパターンのハンドピースによって治療することができる。使い捨てのハンドピースを有する少なくとも一つの実施形態においては、そのハンドピースの他の患者への再利用を防止するために安全対策チップ(図示せず)をハンドピースに設けることができ、それによって例えば肝炎あるいはエイズといった疾患の拡散を防止することができる。安全対策チップは、偽造のハンドピースが流通して患者に用いられることを防止するために含めることができる。
【0093】
安定した結果を生み出すためのさらに他の要因は、治療する部位の肌表面積に対する注入溶液の容量である。一つの実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.1cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約2.0cc/平方cmの範囲である。他の実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.25cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約1.5cc/平方cmの範囲である。さらに他の実施形態において、注入容量は、治療する部位の肌表面領域について約0.5cc/平方cm〜治療する部位の肌表面領域について約1.0cc/平方cmの範囲である。しかしながら、上述した注入容量は例示のためだけのものであり、治療する個々の患者の耐痛限界および治療する位置の脂肪層の深さに応じて変更することができる。
【0094】
安定した結果を生み出すためのさらに別の要因は、治療する組織への溶液の噴射率である。一つの実施形態において、溶液の噴射率は約0.01cc/秒〜約1.0cc/秒の範囲である。他の一実施形態において、溶液の噴射率は約0.02cc/秒〜約0.5cc/秒の範囲である。別の実施形態において、溶液の噴射率は約0.05cc/秒〜約0.2cc/秒の範囲である。しかしながら、前述した噴射率は例示のためだけのものであり、治療する個々の患者の耐痛限界および治療する位置の脂肪層の症状に応じて変更することができる。
【0095】
本発明は、皮下組織を崩壊させる方法を含む。この方法は、治療する皮下組織100に少なくとも一つの促進剤54を配設することを含む。促進剤には溶液を含めることができる。この溶液は、少なくとも一つの皮下注射針62を介して皮下脂肪106に注入することができる。それから、しばらくの間皮下組織に配設される促進剤を残して針を引き抜くことができる。エネルギー供給システム33は治療する組織にエネルギーを供給することができ、促進剤に近接する皮下脂肪106あるいはまた線維性のセプタム108は崩壊する。
【0096】
組織に伝達するエネルギー量および組織における生物学的な効果の一つの要因は、破壊的なエネルギーを組織に印加する前に注入された溶液が組織内に存在する時間の長さである。一つの実施形態において、注入された溶液は、破壊的なエネルギーを印加する前の約10分〜約30分で組織内に浸透する。さらに他の実施例において、注入された溶液は、破壊的なエネルギーを印加する前の約1分〜約10分で組織内に浸透する。さらに他の実施例において、注入された溶液は、破壊的なエネルギーを印加する前の約1秒〜約1分で組織内に浸透する。少なくとも一つの他の実施形態において、注入された溶液は、破壊的なエネルギーを印加する前の約50ミリ秒〜約1000ミリ秒で組織内に浸透する。少なくとも一つの他の実施形態において、破壊的なエネルギーは溶液の注入とほとんど同時に治療する組織に印加される。
【0097】
破壊的エネルギー照射の持続期間もまた、組織に対する破壊的エネルギーの生物学的な効果を決定し得る。一つの実施形態において、破壊的エネルギーは約10秒の持続期間で治療する組織100に印加される。他の実施形態において、破壊的エネルギーは約30秒の持続期間で治療する組織100に印加される。さらに他の実施形態において、破壊的エネルギーは約1分の持続期間で治療する組織100に印加される。さらに他の実施形態において、破壊的エネルギーは約2分の持続期間で治療する組織100に印加される。少なくとも一つの他の実施形態において、破壊的エネルギーは約5分の持続期間で治療する組織100に印加される。さらに他の実施形態において、破壊的エネルギーは約5分〜20分の間の持続期間で治療する組織100に印加される。なお他のひとつ実施形態において、破壊的エネルギーは約20分〜1時間の持続期間で治療する組織100に印加される。
【0098】
腫脹性の溶液は、例えば脂肪吸引手技の間に局所麻酔の適用を提供する、特に構成された溶液である。腫脹性の溶液は周知の技術である。腫脹性の溶液は様々な医薬用溶液を利用する。一つの実施形態において、腫脹性の溶液は、2%のリドカインを含有した1000mlの通常生理食塩溶液、30ml(600ミリグラム)のエピネフリン、および1モル(12.5mlあるいは12.5ミリグラム)の重炭酸ナトリウムを含む。少なくとも一つの他の実施形態において、腫脹性の溶液は、1000mlの通常生理食塩溶液、50mlの1%リドカイン、および1ccの1:1000エピネフリンを含む溶液である。これらの添加物は、商業的に入手可能である。一つの実施形態においては、この腫脹性の溶液は撹拌機208に加えることができる。他の実施形態においては、予備混合されたあるいは商業的に入手可能な腫脹性の溶液を用いることができる。腫脹性の溶液は、治療部位の出血を減少させることができるとともに、手技の間および後における痛みを減少させる局所麻酔効果を提供することができる。少なくとも一つの実施形態において、促進剤はまた腫脹性の溶液を含むことができる。少なくとも一つの実施形態において、注入される促進溶液54は低張溶液である。
【0099】
少なくとも一つの他の実施形態において、様々な深さの皮下組織の治療は段階的に実行される。それぞれの注入に続いて、治療する組織への破壊的なエネルギーを負荷することができる。例えば、第1段階においては、深い位置への溶液の注入が実行されると、より深い層へ破壊的なエネルギーが印加される。第2段階においては、より表面的な位置への注入が実行されると、より表面的な層への破壊的なエネルギーが印加される。徐々に表面的となる深さにおける複数段階の溶液の注入は、破壊的なエネルギー、例えば溶液をそれぞれ注入した後における破壊的なエネルギーの印加と共に実行することができる。一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約0.5〜2.0cm浅い深さで実行される。一つの実施形態においては、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約0.5ミリメートル浅い深さで実行される。他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1ミリメートル浅い深さで実行される。さらに追加的な一実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約2ミリメートル浅い深さで実行される。他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約5ミリメートル浅い深さで実行される。さらに他の実施例において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1.0センチメートル浅い深さで実行される。の他の実施形態、さらに一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約1.5センチメートル浅い深さで実行される。さらに一つの実施形態において、各段階の注入は、その前段階の注入よりも約2.0センチメートル浅い深さで実行される。、さらに他の実施形態において、皮下組織の浸透は、約30ミリメートル、約25ミリメートル、および約20ミリメートルの深さの段階において実行される。一つの他の実施形態において、皮下組織の浸透は、約10ミリメートル、約5ミリメートル、および約2ミリメートルの深さの段階において実行される。少なくとも一つの実施形態においては、各段階の注入の間に破壊的なエネルギーを印加するのではなく、全ての深さにおける注入の後に一連の破壊的なエネルギーが組織に印加される。
【0100】
一つの実施形態において、治療する組織は皮層104と深部脂肪層110との間において注入を受ける。他の実施例において、治療する組織は、表面的な脂肪層106と筋肉層26との間において注入を受ける。さらに他の実施形態において、治療する組織は、皮層104と筋肉層26との間において注入を受ける。一つの実施形態において、治療する組織は、約2ミリメートル〜4.0センチメートルの深さにおいて注入を受ける。一つの実施形態においては、治療される組織は、約0.5ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。少なくとも一つの実施形態において、治療される組織は、約1.0ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。さらに追加的な一実施形態において、治療される組織は、約1.5ミリメートルの深さにおいて注入を受ける。一つの実施形態においては、組織は約2ミリメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。他の一実施形態において、組織は約5ミリメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに他の実施例においては、組織は約1.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約1.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約2.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約2.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約3.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約3.5センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。さらに一つの実施形態において、組織は約4.0センチメートルの深さにおいて注入を受けて治療される。一つの実施形態においては、単一の深さの注入あるいは組織の浸透が実行される。少なくとも一つの他の実施形態においては、複数の深さにおける注入あるいは浸透が実行される。
【0101】
溶液の注入と破壊的なエネルギーの負荷との間の時間の経過は、約0秒〜1時間の範囲とすることができる。溶液54の注入に続く破壊的なエネルギーの印加のタイミングを同期させるために、自動制御装置228を用いることができる。一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーの印加は溶液の注入とほぼ同時とすることができる。一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約5秒未満前に注入を実行することができる。他の実施例においては、破壊的なエネルギーを印加する約5秒〜約20秒前に注入が実行される。さらに一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約20秒〜約60秒前に注入が実行される。さらに他の実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約1分〜5分前に注入が実行される。さらに一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約5分〜15分前に注入が実行される。もう一つの実施形態においては、破壊的なエネルギーを印加する約15分〜30分前に注入が実行される。さらに他の実施例においては、破壊的なエネルギーを印加する約30分〜60分前に注入が実行される。
【0102】
安定した結果を生じさせるさらに他の要因は、破壊的なエネルギーを印加する前に溶液をエネルギーによって組織内に分散させる期間である。一つの実施形態において、治療する組織に溶液を分散させるために超音波を用いることができる。一つの実施形態において、破壊的なエネルギーを印加する前に、エネルギーによって溶液を組織内に分散させる期間は約1秒〜5秒である。他の実施形態において、破壊的なエネルギーを印加する前に、エネルギーによって溶液を組織内に分散させる期間は約5秒〜30秒である。さらに一つの実施形態において、破壊的なエネルギーを印加する前に、エネルギーによって溶液を組織内に分散させる期間は約30秒〜60秒である。さらに他の実施形態において、破壊的なエネルギーを印加する前に、エネルギーによって溶液を組織内に分散させる期間は約1分〜5分である。
【0103】
一つの実施形態においては、治療する組織の破壊に続いて、破壊された組織を患者の内部に残し、例えば患者の身体によって吸収させることができる。他の実施例においては、破壊した組織は、例えば脂肪吸引によって患者の身体から取り除くことができる。
【0104】
一つの実施形態において、電極は、肌の上に配置できるとともに、望まれない表面の火傷を回避するために最小限のエッジ効果を有するように構成される。さらに他の実施形態おいて、皮下の針電極は、少なくとも一つの針の遠位端に隣接した特定の位置にエネルギー電界強度を集中させるように構成することができる。例えば、ピラミッド状あるいは斜めに切断した遠位側を有する針は、その遠位端に隣接するきわめて高いエッジ効果を有する傾向がある。さらに他の実施形態においては、針の配列の配置、例えば針を並べて配置すると、複数の高い電界強度の組織治療箇所に結びつき、それによって治療する組織のより大きな領域の全体に局所性の組織剥離を生じさせる。身体が治療された組織を回復させてリモデリングすると、これらの組織の治療部位は再吸収され、破壊させた脂肪細胞は取り除かれる。このことは、局所性の火傷が健康な組織の島と共に治療された組織に作り出されて治癒および移動を容易にする、高い強度で焦点合わせされた超音波アレイを含む治療の後に生じるリモデリングに類似している。少なくとも一つの他の実施形態においては、鈍い針電極を含めることができ、それによって治療した組織におけるより大きな治療破壊効果領域に結びつく。
【0105】
本発明は、組織を治療する他の方法あるいは装置と組み合わせることができる。例えば、本発明は、肌を締める手技、例えばHayward(カリフォルニア州)のThermage Corporationから入手可能なThermage(商標)、Brisbane(カリフォルニア州)のCutera, Inc.から入手可能なCutera Titan(商標)、あるいは、Santa Clara(カリフォルニア州)のLumenis, Inc.から利用可能なAluma(商標)の使用を含むことができる。
【0106】
本発明は、その精神および必須の特徴から逸脱することなしに他の形態で具体化することができる。したがって、説明した実施形態はあらゆる観点において例示的なものであって限定的なものではないことが考慮されるべきである。ある好ましい実施形態について本発明を説明してきたが、当業者にとって明らかな他の実施形態もまた本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、添付の請求の範囲を参照することのみによって定められることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】皮膚および皮下組織の正常領域の様々な層を示す図。
【図1B】皮膚および皮下組織の病的な領域の様々な層を示す図。
【図2】非侵襲的にエネルギーを負荷する本発明の装置の一実施形態を示す図。
【図3A】本発明のクランプの実施形態を模式的に示す図。
【図3B】図3Aのクランプの実施形態における電流分布のモデルを模式的に示す図。
【図4】円柱状の電極を用いた図3Aのクランプの実施形態を模式的に示す図。
【図5A】本発明のローラボールの実施形態を模式的に示す図。
【図5B】図5Aのローラボールの実施形態における電流分布を模式的に示す図。
【図6】外側に設けられたエネルギー負荷装置を有した治療促進剤と共に用いる本発明の注入システムの実施形態を示す図。
【図7A】皮膚表面に当てられる極微針を具備したパッドを有するシステムを備えた本発明の実施形態を示す図。
【図7B】吸引が肌の表面をパッドに向けて上方に引っ張り上げたことにより極微針が肌表面を貫通している状態を示す図7Aの実施形態を示す図。
【図8A】目標とする組織に当てられた状態を示す図7Aの実施形態の断面図。
【図8B】パッド上に配列として配設された極微針を有した本発明の装置の一実施形態を示す図。
【図8C】図8Bの装置の要部拡大図。
【図9】本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図10】本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図11】本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図12】皮膚表面に当てられる電極と共に用いられる、本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図13】皮膚表面に当てられる電極と共に用いられる、本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図14】皮膚表面に当てられる電極および提案する治療のレイアウトと共に用いられる、本発明の侵入型電極の配列の実施形態を示す図。
【図14A】電極治療のレイアウトの一例を示す図。
【図15】個別に配置されるエネルギー伝達要素に使用するテンプレートを示す図。
【図16】複数のエネルギー伝達要素に使用する治療アルゴリズムの一例を示す図。
【図17A】治療改善薬剤を注入するエネルギー負荷システムおよび装置を示す図。
【図17B】治療する組織にハンドピースが挿入される図17Aのシステムおよび装置を示す図。
【図18】皮下組織を治療するための組立体を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界発生装置と、
前記電界発生装置と電気的に接続された少なくとも2つの電極と、
治療する皮下組織に治療促進剤の溶液を注入するように構成された注入モジュールと、
を備えることを特徴とする皮下組織を崩壊させるための医療装置。
【請求項2】
少なくとも1つの電極が治療する皮下組織に挿入されるように構成されるとともに、少なくとも1つの他の電極が治療する患者の表皮に当てられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
少なくとも2つの電極が治療する患者の表皮に当てられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
少なくとも2つの電極が治療する皮下組織に挿入されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
少なくとも2つの電極のうちの1つが接地電極として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
少なくとも2つの電極が双極電極として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
少なくとも2つの電極のうちの1つが略トロイド形状であることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
少なくとも2つの電極のうちの1つが略円柱形に形作られていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記電界発生装置が電気穿孔発生装置であることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
ハウジングをさらに備え、
少なくとも2つの電極のうちの1つが前記ハウジングの内側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項11】
少なくとも一つの電極が前記ハウジングの内側に配設された中央治療要素として構成されるとともに、
前記中央治療要素と前記ハウジングの間に環状領域が配設されていることを特徴とする請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
前記環状領域は、負圧供給源と接続されるように構成され、それによって前記ハウジングが治療する領域の上に重なっている肌と接触するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記中央治療要素が前記ハウジングの内側に埋め込まれていることを特徴とする請求項11に記載の医療装置。
【請求項14】
前記中央治療要素は、治療する患者の肌の上で転動するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の医療装置。
【請求項15】
注入モジュールに接続された極微針を有するパッドをさらに備え、
このパッドは治療する患者の肌に追従するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項16】
前記パッドは、リザーバおよび極微針を配置するための作動要素を更に有していることを特徴とする請求項15に記載の医療装置。
【請求項17】
前記極微針の少なくとも1つが、少なくとも2つの電極のうちの1つとして構成されていることを特徴とする請求項15に記載の医療装置。
【請求項18】
治療する皮下の領域に枝を配置するように構成されたカテーテルデバイスを更に備えることを特徴とする請求項15に記載の医療装置。
【請求項19】
前記枝は、針、電極および切断要素からなるグループより選択されることを特徴とする請求項18に記載の医療装置。
【請求項20】
第1の近位端、皮下組織への挿入に適合した第2の遠位端、およびそれらの間で縦方向に配置されたチャネルを有する管状要素と、
第1の近位端および第2の遠位端を有して前記チャネルの内側に配設されるとともに、前記チャネルの内側に引き込まれた第1の状態から前記チャネルの外に延びた第2の状態へと動くことができる、複数の伸長可能な細長い要素と、
を備え、
前記細長い要素の遠位端は、延びた状態のときに、引き込まれた状態におけるよりも互いに遠くに離間していることを特徴とする皮下組織を破壊する装置。
【請求項21】
前記複数の伸長可能な細長い要素は、針、電極および切断要素からなるグループより選択されることを特徴とする請求項20に記載の皮下組織を破壊する装置。
【請求項22】
複数の伸長可能な細長い要素は、生物組織を破壊する効果のために、エネルギー場を形成するように幾何学的に構成されていることを特徴とする請求項20に記載の皮下組織を破壊する装置。
【請求項23】
第1の電極および第2の電極を設け、
治療する組織に隣接させて第1の電極を配置し、
前記第1および第2の電極の間に電流を生じさせるように構成されたエネルギー供給システムに前記第1の電極および前記第2の電極を接続し、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電流を提供し、それによって少なくとも一つの細胞の透過性を増大させることを特徴とする皮下構造を選択的に破壊する方法。
【請求項24】
少なくとも前記第1の電極が、生物組織を破壊する効果のためのエネルギー場を作る幾何学的形状に構成されていることを特徴とする請求項23に記載の皮下構造を選択的に破壊する方法。
【請求項25】
ハウジングの内側に配設された中央治療要素を治療する組織の上で転動させることをさらに含み、
前記第1の電極が前記中央治療要素に配設されていることを特徴とする請求項23に記載の皮下構造を選択的に破壊する方法。
【請求項26】
前記中央治療要素の周りに配設された環状領域に大気より低い圧力を提供することをさらに含むことを特徴とする請求項25に記載の皮下構造を選択的に破壊する方法。
【請求項1】
電界発生装置と、
前記電界発生装置と電気的に接続された少なくとも2つの電極と、
治療する皮下組織に治療促進剤の溶液を注入するように構成された注入モジュールと、
を備えることを特徴とする皮下組織を崩壊させるための医療装置。
【請求項2】
少なくとも1つの電極が治療する皮下組織に挿入されるように構成されるとともに、少なくとも1つの他の電極が治療する患者の表皮に当てられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
少なくとも2つの電極が治療する患者の表皮に当てられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
少なくとも2つの電極が治療する皮下組織に挿入されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
少なくとも2つの電極のうちの1つが接地電極として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
少なくとも2つの電極が双極電極として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
少なくとも2つの電極のうちの1つが略トロイド形状であることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
少なくとも2つの電極のうちの1つが略円柱形に形作られていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記電界発生装置が電気穿孔発生装置であることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
ハウジングをさらに備え、
少なくとも2つの電極のうちの1つが前記ハウジングの内側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項11】
少なくとも一つの電極が前記ハウジングの内側に配設された中央治療要素として構成されるとともに、
前記中央治療要素と前記ハウジングの間に環状領域が配設されていることを特徴とする請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
前記環状領域は、負圧供給源と接続されるように構成され、それによって前記ハウジングが治療する領域の上に重なっている肌と接触するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記中央治療要素が前記ハウジングの内側に埋め込まれていることを特徴とする請求項11に記載の医療装置。
【請求項14】
前記中央治療要素は、治療する患者の肌の上で転動するように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の医療装置。
【請求項15】
注入モジュールに接続された極微針を有するパッドをさらに備え、
このパッドは治療する患者の肌に追従するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項16】
前記パッドは、リザーバおよび極微針を配置するための作動要素を更に有していることを特徴とする請求項15に記載の医療装置。
【請求項17】
前記極微針の少なくとも1つが、少なくとも2つの電極のうちの1つとして構成されていることを特徴とする請求項15に記載の医療装置。
【請求項18】
治療する皮下の領域に枝を配置するように構成されたカテーテルデバイスを更に備えることを特徴とする請求項15に記載の医療装置。
【請求項19】
前記枝は、針、電極および切断要素からなるグループより選択されることを特徴とする請求項18に記載の医療装置。
【請求項20】
第1の近位端、皮下組織への挿入に適合した第2の遠位端、およびそれらの間で縦方向に配置されたチャネルを有する管状要素と、
第1の近位端および第2の遠位端を有して前記チャネルの内側に配設されるとともに、前記チャネルの内側に引き込まれた第1の状態から前記チャネルの外に延びた第2の状態へと動くことができる、複数の伸長可能な細長い要素と、
を備え、
前記細長い要素の遠位端は、延びた状態のときに、引き込まれた状態におけるよりも互いに遠くに離間していることを特徴とする皮下組織を破壊する装置。
【請求項21】
前記複数の伸長可能な細長い要素は、針、電極および切断要素からなるグループより選択されることを特徴とする請求項20に記載の皮下組織を破壊する装置。
【請求項22】
複数の伸長可能な細長い要素は、生物組織を破壊する効果のために、エネルギー場を形成するように幾何学的に構成されていることを特徴とする請求項20に記載の皮下組織を破壊する装置。
【請求項23】
第1の電極および第2の電極を設け、
治療する組織に隣接させて第1の電極を配置し、
前記第1および第2の電極の間に電流を生じさせるように構成されたエネルギー供給システムに前記第1の電極および前記第2の電極を接続し、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電流を提供し、それによって少なくとも一つの細胞の透過性を増大させることを特徴とする皮下構造を選択的に破壊する方法。
【請求項24】
少なくとも前記第1の電極が、生物組織を破壊する効果のためのエネルギー場を作る幾何学的形状に構成されていることを特徴とする請求項23に記載の皮下構造を選択的に破壊する方法。
【請求項25】
ハウジングの内側に配設された中央治療要素を治療する組織の上で転動させることをさらに含み、
前記第1の電極が前記中央治療要素に配設されていることを特徴とする請求項23に記載の皮下構造を選択的に破壊する方法。
【請求項26】
前記中央治療要素の周りに配設された環状領域に大気より低い圧力を提供することをさらに含むことを特徴とする請求項25に記載の皮下構造を選択的に破壊する方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図14A】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図14A】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【公表番号】特表2009−506873(P2009−506873A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530128(P2008−530128)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/034414
【国際公開番号】WO2007/030415
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(505418308)ザ ファウンドリー, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/034414
【国際公開番号】WO2007/030415
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(505418308)ザ ファウンドリー, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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