説明

皮膚バリアー機能回復促進物質のスクリーニング方法

【課題】新規な指標を用いた皮膚バリアー機能回復物質のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】本発明は、皮膚バリアー機能回復促進物質のスクリーニング方法であって、皮膚バリアー機能回復促進物質の候補物質の存在下、カスパーゼ−14とプロサポシンとをインキュベートする工程、及び対照物質と比較してプロサポシンからサポシンAへの分解が有意に促進されている場合に当該候補化合物を皮膚バリアー機能回復促進物質として選定する工程を含んで成る方法、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カスパーゼ−14によるプロサポシンの分解を指標とする皮膚バリアー機能回復促進物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケラチノサイトは終末分化することで、有害な環境に対する「角層」と称される保護バリアーを形成する。角層細胞間脂質はこの保護バリアーにおいて重要な役割を担っている。角層細胞間脂質は、表皮ケラチノサイトにおいて分化とともに生合成され、オドランド小体に蓄積される。角層細胞間脂質の主成分あるセラミドは、オドランド小体の開口分泌により角層細胞間に放出されたグルコシルセラミドの糖鎖が、グルコセレブロシダーゼにより切断されることで生じる。また、別の経路として、スフィンゴミエリナーゼによるスフィンゴミエリンからセラミドへの分解も知られている。
【0003】
スフィンゴ脂質活性化タンパク質であるサポシンは、スフィンゴ脂質の加水分解に必須のタンパク質であり、4種類のサポシン(サポシンA、サポシンB、サポシンB、サポシンD)の存在が知られている。サポシンは、角層間脂質の生成に必要なセラミド合成酵素、例えばグルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ等の補酵素として働く因子であることから、サポシンは皮膚バリアー機能にとって重要であると考えられる。
【0004】
これまで、サポシンA、C、Dが臓器に集積するとリソソーム蓄積病(例えば、ゴーシュ病、ニーマンピック病)が生じることや、プロサポシン遺伝子の突然変異が神経障害性の表現型をもたらすことが確認されている。皮膚との関連では、アトピー性皮膚炎や乾癬に罹患している患者において、プロサポシンが低下しているとの報告がある(それぞれ、Tezuka et al., Journal of Investigative Dermatology (1997) 109, 319-323及びAlessandrini et al., Journal of Investigative Dermatology (2001) 116, 394-400を参照のこと)。
【0005】
種々の皮膚疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、接触性皮膚炎等に見られる肌荒れ症状においては、皮膚からの水分の消失が、健常な皮膚に比べて盛んであることが知られている。このいわゆる経皮水分蒸散量(TEWL)の増加には、皮膚内において水分の保持やバリアーとしての機能を担っていると考えられる成分の減少が関与しているものと考えられてきた。
【0006】
これまでに、皮膚バリアー機能の低下に伴い皮膚の皮膚機能が低下し、その結果皮膚増殖性異常等が起こることが報告されている。特に高齢者の場合、低下した皮膚バリアー機能の回復には長い時間がかかるため、加齢に伴う皮膚の皮膚機能の低下による皮膚増殖性異常等を防止するのに有効な、新たな皮膚バリアー機能回復剤が要望されている。
【0007】
皮膚バリアー機能回復促進製剤等の化粧料に含めることが検討される物質は、動物実験においてその効果が確認される必要がある。しかしながら、近年化粧品開発の現場においては、倫理上の観点から動物実験が制限される傾向にあり、動物に適用することなく候補物質をスクリーニングする方法についての要求も高まっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Tezuka et al., Journal of Investigative Dermatology (1997) 109, 319-323
【非特許文献2】Alessandrini et al., Journal of Investigative Dermatology (2001) 116, 394-400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規な指標を用いた皮膚バリアー機能回復物質のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
カスパーゼ−14はカスパーゼファミリーの最新メンバーであり、専ら分化したケラチノサイトにおいて発現される。カスパーゼ−14はカスパーゼファミリーメンバー間で相同なESTとして同定された。最近の研究が示したところによれば、角化細胞中のカスパーゼ−14はプロセッシングされてヘテロダイマーになり、そしてカスパーゼ−1に対応する合成基質Trp-Glu-His-Asp-AFCに対し酵素活性を示す、とのことである(Mikolajczyk J. et al., Biochemistry 43, 10560-9 (2004))。この加水分解活性はタンパク質分解切断及びコスモトロピック塩の存在を必要とする。カスパーゼ−14の一次構造は、炎症性カスパーゼ、例えばカスパーゼ−1、−4及び−5と極めて近いものの、分化されたケラチノサイトに限定されるカスパーゼ−14の発現は、ケラチノサイト終末分化における別の態様での関与を示唆する(Lippens S. et al., Cell Death Differ. 7, 1218-24(2000))。しかしながら、カスパーゼ−14の活性化メカニズム、天然の基質又は調節因子は解明されていなかった。
【0011】
そこで、本発明者らが、分化した培養ヒト表皮角化細胞(NHEK)抽出物等からカスパーゼ−14と結合するタンパク質を単離してLC/MS/MS解析にかけたところ、カスパーゼ−14と結合するタンパク質の中から、プロサポシンが同定された。
【0012】
本発明者は、プロサポシンが基底層から顆粒層にかけて発現しており、そしてサポシンAが顆粒層の最上層部で発現していること、また、カスパーゼ−14がプロサポシンのプロセシングに関与し、サポシンの中間体及びサポシンAを産生することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
従って、本願は以下の発明を包含する:
(1)皮膚バリアー機能回復促進物質のスクリーニング方法であって、皮膚バリアー機能回復促進物質の候補物質の存在下、カスパーゼ−14とプロサポシンとをインキュベートする工程、及び対照物質と比較してプロサポシンからサポシンAへの分解が有意に促進されている場合に当該候補化合物を皮膚バリアー機能回復促進物質として選定する工程を含んで成る方法。
(2)前記分解が抗サポシンA抗体を用いたウェスタンブロット法により評価される、(1)に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
従来、in vitro試験において、カスパーゼ−14は、高濃度のコスモトロピック塩、例えばクエン酸の存在下でのみ活性化作用を示すことが知られていた。その結果、in vivoでカスパーゼ−14が果たす機能は長らく不明であった。今回、カスパーゼ−14がコスモトロピック塩を添加することなくプロサポシンを限定分解し、サポシンの中間体及びサポシンAを産生することが本発明者によって初めて明らかにされた(図1)。更に本発明者は、免疫染色により、プロサポシンが基底層から顆粒層にかけて発現しており、また、サポシンAが皮膚の顆粒層上部に存在することを明らかにした(図2)。以上の結果から、カスパーゼ−14は、生体内でプロサポシンのプロセシングに寄与しているものと考えられる。
【0015】
プロサポシンの分解産物であるサポシンは角層間脂質の生成に必要なセラミド合成酵素の補因子として働き、表皮バリアー形成に必須であることから、本発明の方法によれば、カスパーゼ−14によるサポシンAへの分解を指標とすることで、動物実験を行うことなく新規皮膚バリアー機能回復促進物質の探索が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カスパーゼ−14存在下又は不在下でのプロサポシンのプロセシングを示すウェスタンブロット図。
【図2】ヒト正常皮膚におけるプロサポシン及びサポシンAの局在を示す免疫染色図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、皮膚バリアー機能回復促進物質のスクリーニング方法であって、皮膚バリアー機能回復促進物質の候補物質の存在下、カスパーゼ−14とプロサポシンとをインキュベートする工程、及び対照物質と比較してプロサポシンからサポシンAへの分解が有意に促進されている場合に当該候補化合物を皮膚バリアー機能回復促進物質として選定する工程を含んで成る方法、を提供する。
【0018】
本発明の方法で使用する候補物質は、限定しないが、例えば、カスパーゼ−14を活性化し、これによりプロサポシンの分解が促進されるような物質が考えられる。カスパーゼ−14はシステインプロテアーゼであるため、例えば、還元剤若しくは還元作用を持つ物質、例えばメルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)等の試薬や、グルタチオン等の生体内物質、還元作用を有する植物抽出液はかかる候補物質となり得る。当該候補物質の存在下でカスパーゼ−14とプロサポシンとをインキュベートし、プロサポシンからサポシンAへの分解が対照物質と比較して有意に促進されている場合に当該候補物質を皮膚バリアー機能回復促進物質として選択することができる。その評価基準として、例えばプロサポシンからサポシンAへの分解が、コントロールを作用させた場合と比べ10%以上、又は20%以上、又は30%以上、又は50%以上、又は70%以上、又は100%促進されていたなら「プロサポシンからサポシンAへの分解が有意に促進されている」、と判断してよい。
【0019】
プロサポシンからサポシンAへの分解は、抗サポシンA抗体を用いたウェスタンブロット法により評価することができる。当該抗体は、抗サポシンA特異的抗体であることが好ましい。しかしながら、本発明はこの手法に限定されない。
【0020】
本発明のスクリーニング方法により選択された薬剤は、皮膚バリアー機能の回復が必要な皮膚、例えば皮膚疾患、種々のストレス、そして肌荒れ等により皮膚バリアー機能が低下した肌、移植皮膚で皮膚バリアー層の形成が充分でないため皮膚バリアー機能が低い肌、あるいは移植によって皮膚バリアー機能が低下した肌等の改善に有効であると考えられる。
【0021】
本明細書で使用する用語「皮膚バリアー機能」とは、皮膚のなかでも表皮による体内の水分保持及びウイルス、細菌等の進入阻止、などを意味する。ここで、当該機能は、発汗しない条件下で経皮水分蒸散量(TEWL)(単位:g/m2・h)を測定することにより評価することができる。よって、本発明により皮膚バリアー機能回復促進物質として選択された薬剤を皮膚に適用し、TEWLを測定することで、当該薬剤が実際に皮膚バリアー機能を回復させるか否かを決定することができる。
【0022】
以下、具体例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
1.カスパーゼ−14と相互作用する因子の解析
方法:
1. カスパーゼ−14を、抗カスパーゼ−14抗体固定化したアガロースビーズに結合させ、増殖期および、コンフルエント後、空気暴露し2 mMカルシウムを加えて培養を続けた分化誘導後の、ヒト正常表皮細胞(NHEK)抽出液と反応させた。PBSで洗浄後、Glycine-HCl緩衝液(pH2.3)で結合蛋白を溶出した。また、抗カスパーゼ−14抗体固定化したアガロースビーズに、正常表皮角層抽出液および、乾癬患者より採取した鱗屑抽出液を反応させ、PBSで洗浄後、同様にGlycine-HCl緩衝液(pH2.3)で結合蛋白を溶出した。これらの4つのサンプルを、LC/MS/MS分析にかけた。
【0024】
LC/MS/MS解析
内径100μm、長さ120mmの未充填のキャピラリーカラム(New Objetive社製)のテーパー状の出口側の端部に、充填剤を保持するために、シリカ製のフリットを作製した。得られたキャピラリーカラムに、平均粒径が5μmのオクタデシル化シリカ型充填剤Aqua C18(Phenomenex社製)を、高さが100mmとなるように充填し、分析用逆相キャピラリーカラムを得た。
【0025】
内径250μm、長さ150mmの未充填のキャピラリーカラム(Agilent社製)の出口側の端部に、充填剤を保持するために、シリカ製のフリットを作製した。得られたキャピラリーカラムの出口側に、平均粒径が5μmのカチオン交換樹脂型充填剤Partisphere SCX resins(Whatman社製)と、平均粒径が5μmのアニオン交換樹脂型充填剤PolyWAX LP(PolyLC社製)を質量比2:1で混合したもの、入口側に、平均粒径が5μmのオクタデシル化シリカ型充填剤Aqua C18(Phenomenex社製)を、それぞれ高さが25mmとなるように充填し、トラップ用逆相キャピラリーカラム及びSCX−WAX混合キャピラリーカラムからなる二相型キャピラリーカラムを得た。
【0026】
なお、分析用逆相キャピラリーカラム及び二相型キャピラリーカラムを作製する際には、高圧窒素ガス及び加圧型充填容器を用いて、スラリー充填法により充填剤を充填した。
【0027】
続いて、6ステップのMudPIT型分析(二次元HPLC/ESI MS/MS)により、上記4つのサンプルを分析した。
【0028】
まず、ペプチドを約4μg含む上清を、加圧法により、二相型キャピラリーカラムにロードした後、試料溶液の10倍以上の体積の移動相A(水、アセトニトリル及びギ酸の体積比95:5:0.1の混合液;pH〜2.6)を用いて、洗浄、脱塩した。この二相型キャピラリーカラム10を、貫通孔型ユニオン(Upchurch Scientific社製)(不図示)を介して、分析用逆相キャピラリーカラム20と接続した。次に、内径が100μmのキャピラリーを配管として用いたNanospace SI−2型HPLC装置(資生堂社製)に接続した。このとき、トラップ用逆相キャピラリーカラム11は、SCX−WAX混合キャピラリーカラム12及び分析用逆相キャピラリーカラム20の上流側に配置した。
【0029】
移動相としては、移動相A、移動相B(水、アセトニトリル及びギ酸の体積比20:80:0.1の混合液)、移動相C(500mMの酢酸アンモニウムを含む移動相A;pH〜6.8)を用い、ペプチドの溶出法は、矩形状に加える移動相Cの体積%をステップ毎に漸増させた、計6ステップのグラジエント溶出法とした。
【0030】
ステップ1のグラジエントプロファイルは、5分間移動相Aを流し、次の5分間で移動相Bの比率を0体積%から15体積%まで増加させ、次の60分間で移動相Bの比率を45体積%まで増加させ、次の10分間で移動相Bの比率を75体積%まで増加させた後、この比率で5分間流すものである。
【0031】
ステップ2〜6のグラジエントプロファイルは、1分間移動相Aを流し、次の4分間移動相Cの比率をX[体積%]として流し、次の5分間で移動相Cの比率を0体積%から15体積%まで増加させ、次の60分間で移動相Cの比率を45体積%まで増加させ、次の10分間で移動相Cの比率を75体積%まで増加させた後、この比率で5分間流すものである。このとき、ポンプの送液の流速を250μL/分とし、抵抗型キャピラリーによるスプリットにより、カラムの流速を300〜400nL/分に調整した。
【0032】
また、ESI MS/MSを測定する際には、イオントラップ型質量分析計LCQ−Deca(Thermo Fisher Scientific社製)を用いた。このとき、分析用逆相キャピラリーカラムから溶出されたペプチドは、スプリットすることなく、質量分析計に直接導入した。
【0033】
なお、質量電荷比(m/z)が400〜1400のフルスキャンMSスペクトル測定1回及びデータ依存型MS/MSスペクトル測定3回を、各ステップを通じて繰り返した。このとき、標準化解裂エネルギーは35%とした。また、マイクロスキャンは、MSスペクトル測定及びMS/MS測定ともに3とした。さらに、動的排除設定は、リピートカウント1、リピート期間0.50分、排除リストサイズ25、排除期間10.00分とした。
【0034】
得られたMS/MSスペクトルは、Bioworksソフトウェア(Thermo Fisher Scientific社製)上で動くSEQUESTアルゴリズムにより、非冗長ヒトデータベース(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/db/FASTA/nr.gz、2007/2/8版)に対して、検索した。
【0035】
分析の結果、分化誘導後のNHEKとの反応サンプル、および、正常表皮角層抽出液との反応後のサンプルにのみ共通して、プロサポシンの存在が認められた。
【0036】
2.カスパーゼ−14によるプロサポシンのプロセッシング
プロサポシンは通常のケラチノサイトの単層培養系では、プロセッシングを受けず、前駆体のままで存在する。これを利用して、前駆体であるプロサポシンとカスパーゼ−14の反応を検討した。プロサポシンを含む、ヒト正常表皮細胞(NHEK)抽出液と活性化カスパーゼ−14を、1.2Mのコスモトロピックイオン(クエン酸イオン)のあるなしの条件下で、37℃で1時間反応させ、水に対して透析後、凍結乾燥した。これをSDS電気泳動サンプルバッファーに溶解し、SDS電気泳動後、Western blotにより、それぞれのサポシンの生成について検討した。それぞれ用いた抗体は、抗プロサポシン抗体(PSAP polyclonal antibody(A01):Abnova社)、抗Saposin A特異抗体(自家製)、抗Saposin B抗体(E-15, sc-27014: Santa Cruz社)、抗Saposin C抗体(H-81, sc-32875: Santa Cruz社)、抗Saposin D抗体(E-14, sc-27024R: Santa Cruz社)である。希釈率はいずれも1/1000を用いた。尚、抗Saposin A特異抗体を除き、いずれの抗体もプロサポシンを認識する。結果を図1に示す。
【0037】
図1の結果から、カスパーゼ−14の存在下で、プロサポシンは複数の中間体に分解されたことが分かる。中でも、プロサポシンの最終分解産物の1つであるサポシンAが抗Saposin A特異的抗体により認識されたことから、カスパーゼ−14はプロサポシンをサポシンAに分解する役割を果たすと考えられる。
【0038】
3.免疫染色
形成外科手術により得られた正常皮膚切片を用いてプロサポシンおよびサポシンAの局在を明らかにするため、免疫染色を行なった。パラフィン切片をキシレンにより脱パラフィンを行い、PBS溶液に戻した後、10%ヤギ血清によりブロッキングを行なった。PBS洗浄後、抗プロサポシン抗体(PSAP mouse polyclonal antibody(A01):Abnova社、希釈率:1/200)もしくは、抗saposin A特異抗体(自家製)(希釈率:1/200)と室温で1時間反応させた。PBSで3回の洗浄後、Alexa Fluor 488 goat anti-mouse IgG(プロサポシン)、もしくは、Alexa Fluor 555 goat anti-rabbit IgG(サポシンA)、と室温で1時間反応させた。PBSで3回洗浄後、VectorShield mounting medium (DAPI)(Vector Laboratories社)を用いて封入し、蛍光顕微鏡による観察を行なった。結果を図2に示す。
【0039】
図2の結果から、プロサポシンは、正常なヒト表皮の基底層から顆粒層にかけて存在し、そしてサポシンAが顆粒層の最上層で発現していることが分かる。この結果は、上記ウェスタンブロットの結果とともに、専らケラチノサイトで発現するカスパーゼが、ヒトの皮膚においてプロサポシンを分解し、皮膚バリアー機能において重要な役割を果たすことを裏付けるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚バリアー機能回復促進物質のスクリーニング方法であって、皮膚バリアー機能回復促進物質の候補物質の存在下、カスパーゼ−14とプロサポシンとをインキュベートする工程、及び対照物質と比較してプロサポシンからサポシンAへの分解が有意に促進されている場合に当該候補化合物を皮膚バリアー機能回復促進物質として選定する工程を含んで成る方法。
【請求項2】
前記分解が抗サポシンA抗体を用いたウェスタンブロット法により評価される、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−115108(P2011−115108A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277034(P2009−277034)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】