説明

皮膚用保護膜の形成方法及び皮膚用保護膜

【課題】 樹脂溶液を用いて、手に直接、保護膜を形成する際に、多量の樹脂溶液を要していた点を解消し、また噴霧法で行なう際に、乾燥速度が適度に遅い溶剤を樹脂溶液中に加える必要があった点を解消することを目的とする。
【解決手段】 本発明の皮膚用保護膜は、容器内の水の表面に樹脂溶液を浮かべ、手を前記容器内の前記樹脂溶液および前記水の中に浸漬した後、手を引き上げて、手の表面に樹脂溶液を付着させ、その後、樹脂溶液を固化させて手の表面に樹脂膜が形成されるものであり、手を浸漬させる溶液全体が樹脂溶液ではなく、溶液の表面だけに樹脂溶液を使用するため、多量の樹脂溶液を要することがなく、製造コストが低く、また省資源上で有効なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手などの皮膚を保護する皮膚用保護膜の形成方法及びそれにより形成される皮膚用保護膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療関係もしくは衛生関係の産業分野、または他の様々な産業において、作業に従事する人の手を、感染、汚染、もしくは刺激等から保護するための防具として、手袋がよく使用されている。また、クリーンルーム内での作業の際には、作業の対象物を手あかや病原体などに汚染しないために、手袋が使われている。これらの目的で使用される手袋として、気密性を要する場合には、天然ゴム、合成ゴム、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂等の材質で形成された薄いものが用いられる。
【0003】
従来の手袋の製造法は、例えば、特許文献1にあるように、伸縮性を有する熱可塑性樹脂からなる材料シートを2枚重ね合わせ、該重ね合わせたシートを熱シールにより手形状に賦形して手袋を得ることが示されている。また、特許文献2にあるように、柔軟な弾性体の製造法として、柔軟な弾性材料のパリソンの吹込み成形、あるいは射出成形のような成形技術を使用して、手袋を製造することが示されている。
【0004】
しかしながら、上記のような従来の手袋は、市販されている数種類のサイズの手袋のうちから選択して使用する必要があり、この場合、使用する各人の手(指)ごとのサイズに適合させることは難しい。各人ごとのサイズに合わせた手袋を製造し、準備しておくことも却って、製造コストが非常に高くつき、また面倒である。
【0005】
上記のような手袋を手に嵌めて、装着する形態で、手袋を使用する以外に、特許文献3に示されているように、適当な樹脂溶液を用いて、手に直接、保護膜を形成する試みが以前からなされている。また、目的は異なるが、類似したものとして、特許文献4に示されているように、皮膚に塗布して薬剤を含有した被膜を形成し、薬効の促進を図ることが行なわれている。また、特許文献4記載のものと同様な被膜を絆創膏の代わりに使うことも行なわれている。
【0006】
しかし、上記の特許文献3および特許文献4に記載された発明によって、手に保護膜を形成しようとすると、容器中に溜めた樹脂溶液中に手を浸漬する浸漬法を採用する必要があり、手の全体を浸漬しようとすると、少なくとも数千cm3程度の多量の樹脂溶液を要する。また、保護膜の形成をスプレイ塗装法で行なおうとすると、乾燥速度が遅い溶剤を樹脂溶液中に加える必要があり、乾燥後も溶剤臭がなかなか抜けないという問題がある。
【特許文献1】特開平11−12821号公報
【特許文献2】特表平8−504372号公報
【特許文献3】特開平6−154242号(例えば、請求項7〜請求項10)
【特許文献4】特開平5−58914号(例えば、請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、樹脂溶液を用いて、手に直接、保護膜を形成する際に、多量の樹脂溶液を要していた点を解消すること、および、噴霧法で行なう際に、乾燥速度が適度に遅い溶剤を樹脂溶液中に加える必要があった点を解消することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者の検討によれば、容器に樹脂溶液のみを溜めて手を漬けるのに代えて、容器に十分な深さの水を満たし、水面上に樹脂溶液を流した後、手を漬けることにより、樹脂溶液を手の表面に有効に付着させることが可能となり、その後、固化工程を経ることを主体とする下記の発明により、上記の課題を解決することができた。
【0009】
第1の発明は、容器内の水の表面に樹脂溶液を浮かべ、手を前記容器内の前記樹脂溶液および前記水の中に浸漬した後、手を引き上げて、手の表面に樹脂溶液を付着させ、その後、樹脂溶液を固化させて手の表面に樹脂膜を形成することを特徴とする皮膚用保護膜の形成方法に関するものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記樹脂として熱可塑性、かつ溶剤溶解性であるものを用い、乾燥により樹脂溶液を固化させることを特徴とする皮膚用保護膜の形成方法に関するものである。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、前記樹脂として熱硬化性のものを用い、熱架橋により樹脂溶液を固化させることを特徴とする皮膚用保護膜の形成方法に関するものである。
【0012】
第4の発明は、第1の発明において、前記樹脂として紫外線硬化性のものを用い、紫外線照射により樹脂溶液を固化させることを特徴とする皮膚用保護膜の形成方法に関するものである。
【0013】
第5の発明は、第1〜4のいずれかに記載された皮膚用保護膜の形成方法により、形成されたことを特徴とする皮膚用保護膜に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の皮膚用保護膜は、容器内の水の表面に樹脂溶液を浮かべ、手を前記容器内の前記樹脂溶液および前記水の中に浸漬した後、手を引き上げて、手の表面に樹脂溶液を付着させ、その後、樹脂溶液を固化させて手の表面に樹脂膜が形成されるものであり、手を浸漬させる溶液全体が樹脂溶液ではなく、溶液の表面だけに樹脂溶液を使用するため、多量の樹脂溶液を要することがなく、製造コストが低く、また省資源上で有効なものである。また、本発明の皮膚用保護膜は、手の表面に密着し、手の表面と皮膚用保護膜との間には空隙がなく、また手の動きに合わせて、皮膚用保護膜も共に動き、素手の指で細かい作業を行なう時と同様の感触で作業を行なうことができ、非常に役立つものである。
【0015】
また、噴霧法で皮膚用保護膜を形成する際に、乾燥速度が適度に遅い溶剤を樹脂溶液中に加えることもなく、乾燥後も溶剤臭が残存することなく、簡単に、皮膚用保護膜が得られる。さらに、樹脂溶液を固化させる方法として、熱可塑性、かつ溶剤溶解性である樹脂を用い、乾燥により樹脂溶液を固化させたり、熱硬化性樹脂を用い、熱架橋により樹脂溶液を固化させたり、紫外線硬化性樹脂を用い、紫外線照射により樹脂溶液を固化させたりすることができ、これらにより、手に付着した樹脂溶液の固化する時間を早めることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明においては、図1に示すように、まず、手を浸漬するのに十分な深さを有する容器内に溜めた水の表面に樹脂溶液を浮かべた状態を作る。
容器の形状は、適宜選択でき、好ましくは手を浸漬した際に手が底に触れない程度の深さに水を溜めることが可能な容器を用意し、この容器内に水を溜める。容器の形状、深さは適宜に定めればよいが、容器の平面形状が四角形である場合、一例として、容器の左右幅は40cm以上、奥行は30cm以上であり、容器の深さは、水を30cm以上の深さに溜めることが可能であることが好ましい。いずれの寸法も容器の内側で測定したものである。
【0017】
容器内に溜める水は、中性もしくは中性に近いものを用いることが好ましく、最終的に得ようとする皮膚用保護膜に異物が付着しないよう、適宜なフィルタを用いて濾過し、直径1μm以上の粒子が無い状態の水を用いることが好ましい。
【0018】
容器内の水の表面に浮かべる樹脂溶液は、基本的には、樹脂および樹脂を溶解する溶剤、ならびに必要に応じて加える希釈剤とからなる一様な組成物である。樹脂溶液を構成する樹脂としては、柔軟性があり、皮膚用保護膜が使用される環境において、溶解、膨潤、変形、もしくは破損が起きないものであることが好ましい。また、皮膚用保護膜を形成する際に、樹脂を溶解する溶剤が手に触れることを考慮すると、皮膚に刺激を与えにくい溶剤によって溶解可能なものであることが好ましい。
【0019】
具体的な樹脂としては、一般的な塗料用の樹脂を基本的に使用することができ、各種のセルロース系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、もしくはフッ素系樹脂を使用することが好ましい。使用できる樹脂は熱可塑性であり、かつ溶剤溶解性である。
【0020】
樹脂を溶解する溶剤の皮膚への刺激を考慮すると、上記のうち、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。セルロース系樹脂は、エステル化したものも含む意味で用い、例えば、二硝酸エステル(ピロキシリンとも言う。)も使用できる。また、水溶性樹脂と言われることの多い樹脂のうち、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等を用いることもできる。
上記の各種の樹脂は、形成される皮膚用保護膜の性質の改善、溶解性の制御、もしくはその他の理由で、適宜に二種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
溶剤もしくは希釈剤としては、アルコール系、ケトン系、もしくはエステル系等の各種のものを用いることができる。樹脂溶液の乾燥速度を考慮すると、低沸点の溶剤を用いることが好ましい。これらの溶剤もしくは希釈剤は、適宜に二種類以上を混合して用いてもよい。
【0022】
上記の樹脂および樹脂を溶解する溶剤は適宜な割合で溶解し、もしくは溶解および希釈して、粘稠な溶液を調製し、皮膚用保護膜形成用組成物とする。容器内に溜める水の場合と同様、調製後、適宜なフィルタを用いて濾過し、直径1μm以上の粒子を除去して用いることが好ましい。
【0023】
皮膚用保護膜形成用組成物には、上記の各成分に加えて、得られる保護膜の機能を高めるか、もしくは機能を加えるための添加物を添加することができる。例えば、保護膜の表面の粘着性を低くするための充填剤、もしくは保護膜の表面の摩擦係数を調製するための充填剤等である。これらの充填剤としては、例えば、炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムの微粒子が挙げられる。但し、上記に説明したように、フィルタにより濾過することにより、除去されない程度の大きさの粒子である。
【0024】
皮膚用保護膜形成用組成物には、必要に応じて、着色剤を添加してもよく、隠蔽性を付与するための充填剤を併用する等してもよい。二酸化チタンを配合すれば、保護膜を白色に着色すると共に、隠蔽性を付与することもできる。
【0025】
皮膚用保護膜形成用組成物には、医薬、もしくは医薬以外の薬品を配合しておき、得られる保護膜が皮膚に対して美白効果などの薬効を発揮したり、その他の作用、例えば、肌荒れ防止の作用などを施すようにしてもよい。
【0026】
容器に溜めた水の表面に樹脂溶液を浮かべるには、静止した水面上に、樹脂溶液を静かに流すことが好ましく、水面に近い位置から樹脂溶液をパイプ状の吐出口から吐出させるか、スリット状の吐出口から吐出させるとよい。水面上に流して形成する樹脂溶液の厚みは、50μm〜30mm程度であることが好ましい。
なお、本発明においては、最終的に得られる皮膚用保護膜の厚みは、用いる樹脂溶液の粘度によって決まり、この粘度は樹脂溶液の温度によって決まるため、用いる水および樹脂溶液は必要に応じて加温する等により温度を調節することが好ましい。
【0027】
次に、水の表面に樹脂溶液を浮かべた状態の容器中の水および樹脂溶液の中に、手を浸漬し、浸漬後、手を引き上げて、手の表面に樹脂溶液を付着させる。(浸漬工程)
片手毎に行なうこともできるが、皮膚用保護膜の形成時間が長くなることを考慮すると、両手を同時に行なうことが好ましい。浸漬の際には、手の指どうしが互いに離れるように、手を開いた状態とし、開いた状態を、樹脂溶液の固化まで保つようにすることが好ましい。なお、浸漬に先立って、必要に応じ、手を洗浄するか、洗浄に加えて、消毒を行なっておくことが好ましい。
【0028】
手を浸漬する際の浸入速度は、樹脂溶液と手の間に気泡が入らない程度に、また、樹脂溶液の付着しない部分が生じない程度に遅くすることが好ましい。手を浸漬し、その後、引き上げるには、手を動かしてもよいが、手を所定の位置に置いておき、容器を上昇および下降させてもよい。上記の侵入速度および浸漬された手を引き上げる速度(引上速度)は、ともに同程度が好ましく、具体的には、0.5cm/秒〜5cm/秒程度の速度である。
【0029】
手を引き上げた後、風を用いた乾燥により、樹脂溶液を乾燥させ、固化させる。(乾燥工程)
必要に応じて加温してもよい。人の手の表面に付着した樹脂溶液を乾燥させる点を考慮し、加温する場合の温度の上限は、40℃以下とすることが好ましい。この場合は、樹脂としては熱可塑性、かつ溶剤溶解性であるものを用い、乾燥により樹脂溶液を固化させる方法であり、この方法は実施する際に、人の手に与える負荷や刺激が少ない利点がある。
【0030】
なお、形成された皮膚用保護膜がピンホールを有していたり、膜厚のムラを有していることも考えられるので、必要に応じて、以上の工程(浸漬工程、乾燥工程)を2回以上の複数回、効率を考慮すると2回繰り返して、つまり浸漬工程→乾燥工程→浸漬工程→乾燥工程を順に行なってもよい。以降に述べるような上記とは異なる樹脂溶液および固化の方法を採用する場合も、同様に浸漬工程と乾燥工程を繰り返して行なうことができる。
【0031】
本発明の皮膚用保護膜の形成方法を複数回行なう際には、最初の状態、即ち、手を浸漬するのに十分な深さに溜めた水の表面に樹脂溶液を浮かべた状態は、皮膚用保護膜を1回形成する毎に、更新されることが好ましい。更新のためには、手の浸漬/引き上げのたびに、残った水および樹脂溶液の全部、もしくは上澄みを排出することが好ましく、その後、水および樹脂溶液を新たに補給する。
【0032】
皮膚用保護膜を形成するには、上記のものとは異なる樹脂溶液および固化の方法を採用することも可能である。例えば、樹脂溶液を構成する樹脂として熱硬化性のものを選び、加熱を行なって硬化させる方法を採用してもよいし、あるいは、樹脂溶液を構成する樹脂として紫外線硬化性のものを選び、紫外線照射により硬化させる方法を採用してもよい。または、樹脂溶液および固化の方法として、当初説明した樹脂溶液を用い、乾燥により固化を行なって皮膚用保護膜を形成する方法も含めて、二種類以上の方法を併用してもよい。
【0033】
樹脂として熱硬化性のものを選んで用いる方法としては、例えば、側鎖や末端に官能基を有する反応性シリコーンを用い、熱架橋させる方法を挙げることができる。このほか、ウレタン結合を形成する系であってもよい。また、ポリエステル系、エポキシ系、メラミン系、等の熱硬化性樹脂でも使用することができる。加熱は、上記の乾燥の際に説明した加温した風による乾燥(温風乾燥)によってもよいし、赤外線源からの輻射を利用してもよい。この熱硬化性の樹脂を用いて行なう方法によれば、固化は熱架橋によって行なわれるので、乾燥により固化させるものに比べ、物理的もしくは化学的性状のより優れた皮膚用保護膜を得ることが可能になる。
【0034】
樹脂として紫外線硬化性のものを選んで用いる方法としては、アクリレート系の樹脂、プレポリマー、もしくはモノマーを用い、光重合開始剤を配合して樹脂溶液(必ずしも溶液でない樹脂液である場合も含めて樹脂溶液と称する。)を用い、必要に応じ、溶剤を加えたものを用い、紫外線照射により架橋させる方法を挙げることができる。この紫外線硬化性の樹脂を用いて行なう方法によれば、固化は紫外線照射によって引き起こされる架橋によって行なわれるので、乾燥により固化させるのに比べ、物理的もしくは化学的性状のより優れた皮膚用保護膜を得ることが可能になる。
【0035】
本発明は、上記に説明したような方法により、皮膚用保護膜を形成するものであり、結果として得られる皮膚用保護膜は、図2に示すように、例えば、人の手全体を均一に被覆し、手の表面に密着し、手の表面と皮膚用保護膜との間には空隙がなく、また手の動きに合わせて、皮膚用保護膜も共に動き、素手の指で細かい作業を行なう時と同様の感触で作業を行なうことができ、作業性の非常に有効な手袋として、利用できる。本発明は、手を保護する皮膚用保護膜について、説明してきたが、人の手だけに限らず、動物も含め、足などの皮膚を保護する皮膚用保護膜として、利用できるものである。
【0036】
本発明の方法や用いる材料については、基本的には以上の通りであるが、本発明の方法を実施する際には、溶剤を用いたり、乾燥のための風、熱、紫外線を用いることがあるので、周囲の環境や手に保護膜を形成する本人に悪影響を与えないよう、また、皮膚用保護膜を形成する最中、および、皮膚用保護膜の形成後、皮膚用保護膜の表面に不用意に汚染が生じないよう、皮膚用保護膜を形成するための用具、および用具を設置する環境を整える必要がある。
【0037】
すなわち、浸漬および固化を行なう環境は、クリーンルーム内であるか、クリーンベンチ内であることが好ましく、これにより、皮膚用保護膜の形成過程で、塵埃等が付着することを防止できる。浸漬および固化を行なう場所は、溶剤の臭気の発生を考慮すると、排気されていることが好ましい。浸漬を行なうための容器と乾燥を行なうための区域は、固化の手段が容器内の樹脂溶液に与える影響を考慮すると、別々であることが好ましい。ただし、これら両区域が離れ過ぎると、人が移動しなければならないので、あまり好ましくない。従って、両区域は、水平方向に隣接させるか、垂直方向に隣接させることが好ましい。両区域の間は自動開閉の板等で遮られていることが好ましい。また、固化のための風、温風、輻射される赤外線、もしくは紫外線は、手の表面の樹脂溶液に当たる以外、人に影響を与えないよう、適宜に遮蔽して人に当たらないようにすることが好ましい。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、文中、部または%とあるのは特に断りのない限り質量基準とする。
(実施例1)
関東化学株式会社製セルロースエステルインキ(セルロースエステルの酢酸プロピル25%溶液)を、1μmメッシュフィルターでろ過(塵、異物を除去)し、皮膚用保護膜の形成用溶液とした。1μmメッシュフィルターでろ過をした水道水3Lを、専用容器に満たし、この水道水の水面上に、用意した皮膚用保護膜の形成用溶液100mlをパイプ状の吐出口から流し込むと、皮膚用保護膜の形成用溶液が、水道水と界面を作って分離し、上から、皮膚用保護膜の形成用溶液(樹脂溶液)層/水道水層の安定な2層構造体が形成された(図1に示すように形成された)。この際の皮膚用保護膜の形成用溶液層の厚さは、約1mmであった。この2層構成体(実際は樹脂溶液層)の上面から両手を直接挿入し、所定の部分まで浸漬した後、引き上げ、松下電器産業株式会社製電気温風器にて数秒加温乾燥し、両手に所望の皮膚保護膜を形成した。皮膚保護膜を形成後、(水道水層に塵、異物の混入が認められなかったため、水道水層はそのままで)消耗した皮膚用保護膜の形成用溶液を補充し、全く同様にして皮膚保護膜を形成できることが分かり、繰り返し使用可能であることを確認した。
【0039】
(実施例2)
皮膚用保護膜の形成用溶液を、関東化学株式会社製セルロースエステルインキ(セルロースエステルの酢酸プロピル25%溶液)に対し、関東化学株式会社製酸化チタン分散液を、セルロース/酸化チタン=10/1(重量比)になるように混合した溶液に変えた以外は、実施例1と同様にして、両手に白色の皮膚保護膜を形成した。
【0040】
(実施例3)
関東化学株式会社製ポリアクリルアミド1gを、同社製大豆油10gに加温攪拌させることにより完全に溶解させ溶液とした。この溶液を1μmメッシュフィルターでろ過(塵、異物を除去)し、皮膚用保護膜の形成用溶液とした。1μmメッシュフィルターでろ過をした水道水3Lを、専用容器に満たし、この水道水上に、用意した皮膚用保護膜の形成用溶液100mlをパイプ状の吐出口から流し込むと、皮膚用保護膜の形成用溶液が、水道水と界面を作って分離し、上から、皮膚用保護膜の形成用溶液(樹脂溶液)層//水道水層の安定な2層構造体が形成された。この際の皮膚用保護膜の形成用溶液層の厚さは、約1mmであった。この2層構成体(実際は樹脂溶液層)の上面から両手を直接挿入し、所定の部分まで浸漬した後、引き上げ、松下電器産業株式会社製電気温風器にて数秒加温乾燥し、両手に所望の皮膚保護膜を形成した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の皮膚用保護膜の形成方法において、使用する容器内に溜めた水の表面に樹脂溶液を浮かべた状態を示す概略図である。
【図2】本発明の皮膚用保護膜の一つの実施形態を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の水の表面に樹脂溶液を浮かべ、手を前記容器内の前記樹脂溶液および前記水の中に浸漬した後、手を引き上げて、手の表面に樹脂溶液を付着させ、その後、樹脂溶液を固化させて手の表面に樹脂膜を形成することを特徴とする皮膚用保護膜の形成方法。
【請求項2】
前記樹脂として熱可塑性、かつ溶剤溶解性であるものを用い、乾燥により樹脂溶液を固化させることを特徴とする請求項1に記載する皮膚用保護膜の形成方法。
【請求項3】
前記樹脂として熱硬化性のものを用い、熱架橋により樹脂溶液を固化させることを特徴とする請求項1に記載する皮膚用保護膜の形成方法。
【請求項4】
前記樹脂として紫外線硬化性のものを用い、紫外線照射により樹脂溶液を固化させることを特徴とする請求項1に記載する皮膚用保護膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された皮膚用保護膜の形成方法により、形成されたことを特徴とする皮膚用保護膜。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−153753(P2007−153753A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347586(P2005−347586)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】