説明

皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法、および美容方法

【課題】 皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法、および美容方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給すると、皮膚用外用剤の経皮吸収率が向上する皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法、および美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮と、真皮と、(皮膚の働きを助ける毛嚢、皮脂腺および汗腺などの付属器官を収納する)皮下組織とで構成される。表皮は、角質層と生きた表皮細胞の層とで構成されている。角質層は、ケラチン質の角質細胞とセラミドが主成分の細胞間脂質とで構成されている。ローション剤、軟膏剤、パップ剤、化粧剤などの皮膚用外用剤には、経皮吸収により種々の薬効を発揮する成分が配合されている。ところが、これらの成分が皮膚に浸透する際に、角質層が防御機構として働く。また、表皮は、細胞配置密度が大きく、油脂分が多い。このため、通常の外用剤基剤中に薬効成分を配合しただけでは、薬効成分は表皮を通過しにくく、十分な経皮吸収が得られない場合が多い。
【0003】
経皮吸収とは、皮膚に接触した成分が皮膚に浸潤・拡散していく現象をいい、皮膚が成分を吸収するのではなく、成分が皮膚に浸み込まれる受動拡散によるとされている。成分が皮膚に浸透する経路には、(1)毛嚢、皮脂腺および汗腺などの付属器官、(2)角質層の細胞間脂質、(3)角質層の角質細胞の実質、を通るルートが提唱されている。したがって、これらのルートのいずれかにおいて、成分の通過量を増加させれば、経皮吸収率が向上すると考えられる。
【0004】
皮膚用外用剤の経皮吸収率を向上させるために、ミセルを形成させる(例えば、特許文献1参照)、あるいは水溶性薬剤の浸透性を高めるための特定の成分を配合させる(例えば、特許文献2参照)などの種々の試みがなされている。しかし、これらの方法では、すべての皮膚用外用剤に適用できるものではなく、また製剤化の必要があるため容易に利用できる方法ではない。
【0005】
本発明者らは、毛染め用薬品、トリートメント剤、美顔剤、美容薬剤などを髪、皮膚につけた後、有圧水蒸気を噴射して、これらの薬剤の吸収率を上げることを試みている(たとえば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−245339号公報
【特許文献2】特開平9−157129号公報
【特許文献3】特開2004−57603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3に記載の方法でも、十分な経皮吸収が得られず、さらに十分な薬効を得る方法が必要とされている。
【0007】
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法、および美容方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給すると、皮膚用外用剤の経皮吸収率が向上することを見出した。
【0009】
本発明で用いる有圧水蒸気は圧力を有するので、噴射速度が速い。美容機器から噴射された噴射水蒸気流の内部は、空気中で凝縮せず、直接皮膚表面に達すると考えられる。このような有圧水蒸気は、細かいサイズのまま皮膚に接触して凝縮する。このため、皮膚表面で凝縮した水の集合状態のサイズも小さいと推定される。このように凝縮した水粒子、あるいは気体の水分子は、サイズが小さく、圧力を有しているので、毛嚢、皮脂腺および汗腺などの付属器官に浸透しやすいと考えられる。有圧水蒸気とともに皮膚表面に供給された皮膚外用剤も、水粒子または水分子とともに、付属器官に浸透する。この結果、皮膚用外用剤の経皮吸収率を向上させることができる。
【0010】
また、皮膚表面に接触した有圧水蒸気は、皮膚表面で凝縮する。水蒸気は、凝縮時に「潜熱」と呼ばれる大きな熱エネルギーを放出する。本発明においては、この熱エネルギーが、角質層の細胞間脂質の粘性率を低下させると考えられる。この結果、角質層の細胞間脂質中に皮膚外用剤が浸透する量を増加させるので、皮膚用外用剤の経皮吸収率を向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明で用いる有圧水蒸気は、上記したように細かいサイズのまま皮膚に接触して凝縮する。皮膚表面の「濡れ」が少ないので、洗い流される皮膚用外用剤の量は少ない。この結果、皮膚表面で無駄になる皮膚用外用剤の量を減少させることができる。
一方、通常の美容機器で用いられる有圧水蒸気ではない(無圧)水蒸気(湯気)は、美容機器から排出されると空気中ですぐに凝縮されるため、白く目視することができる。このような無圧水蒸気を皮膚に接触させると、皮膚表面の「濡れ」が多くなり、皮膚用外用剤が洗い流されてしまう。このため、皮膚用外用剤の経皮吸収率は向上しない。
【0012】
なお、本発明の皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法においては、皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、直接皮膚に供給するのが好ましいが、他の物体上で凝縮させた液を用いても、皮膚用外用剤の経皮吸収率を向上させることができる。
【0013】
前記有圧水蒸気は、スチーム噴射部から噴射される直前の圧力が、0.2〜0.5MPaであればよい。圧力がこの範囲内にあれば、水蒸気が凝結する前に皮膚に到達でき、かつ皮膚に損傷を与えない温度で水蒸気を供給できる。
【0014】
前記皮膚用外用剤は、L−アスコルビン酸またはその誘導体であってもよい。
【0015】
また、本発明は、皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給する美容方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法は、皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給する。この結果、皮膚用外用剤の経皮吸収率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明では、皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給する。
【0019】
[有圧水蒸気]
本発明で用いる有圧水蒸気とは、大気圧より高い圧力を有する水蒸気をいう。水蒸気の圧力が大気圧より高いので、蒸気温度は100℃を超える。
【0020】
このような有圧水蒸気は、密閉容器内で、水を沸騰させ、蒸気を発生することで得られる。有圧水蒸気の供給は、具体的には、例えば図1に示す有圧水蒸気供給装置を用いて行う。図1に示す有圧水蒸気供給装置は、ボイラー4に水を供給する給水タンク5と、高圧の水蒸気を発生させるボイラー4と、ボイラー4からの高圧の水蒸気を低圧にして下流へ送る減圧弁3と、低圧の水蒸気(即ち、圧力のある水蒸気)を噴射するスチーム吹出部1と、スチーム吹出部1と減圧弁3との間に配設されると共にスチーム吹出部1の手元スイッチ6により開状態乃至閉状態に切り換えられる電磁弁2と、を備えている。
【0021】
この装置は、ボイラー4にて高圧(例えば、0.5MPa)の水蒸気を発生させ、減圧弁3により低圧(例えば、0.2〜0.4MPa)にしてから、その低圧の(圧力のある)水蒸気をスチーム吹出部1から噴射させる。言い換えると、ボイラー4から、減圧弁3、電磁弁2を介して、圧力のある(低圧の)水蒸気を送って、スチーム吹出部1から強制的に噴射させる。なお、手元スイッチ6のON状態にて電磁弁2を開状態として水蒸気を噴射させ、他方、手元スイッチ6のOFF状態にて電磁弁2を閉状態として水蒸気の噴射を停止させる。
【0022】
上述の装置を使うことで、スチーム吹出部1から水蒸気を容易にかつ確実に勢いよく噴射させることができる。この装置では、減圧弁3を設けている。この結果、スチーム吹出部1から安定した量の水蒸気を噴射することができるので、使い勝手がよい。即ち、減圧弁3の上流側の水蒸気圧力が、減圧弁3の下流側の水蒸気圧力に減少するまで、同じ圧力の水蒸気を噴射することができる。なお、電磁弁2本体を閉状態においても、ボイラー4において水を加熱すると共に、スチーム吹出部1の蒸気流路を加熱することで、スチーム吹出部1から水蒸気と同時に高温の水滴が噴射するのを抑制でき、皮膚の火傷を防止することができる。
【0023】
さらに、スチーム吹出部1からの噴射直前の水蒸気(噴射直前水蒸気)は、その絶対圧力(噴射直前圧力P)を、0.2〜0.5MPaとし、さらに、その温度(噴射直前温度T)を、120〜150℃とすると好ましい。このような圧力とすることで、水蒸気を皮膚に勢いよく吹き付けることができ、かつ、皮膚に当たる水蒸気を適度な温度にすることができる。従って、皮膚のダメージを少なくし、火傷を防止するので、安全性が向上する。しかも、スチーム吹出部1を、適度な距離(20cm〜40cm)を保ったまま、皮膚から離間させて操作できるので、作業性が良好である。即ち、圧力P及び温度Tが下限値未満では、吹き付けられる水蒸気の勢いが弱過ぎて、水蒸気が皮膚に部分的にしか当たらなくなり、さらに、皮膚に当たる水蒸気の温度が低くなるため、皮膚用外用剤の経皮吸収が促進されない。他方、圧力P及び温度Tが上限値を越えると、吹き付けられる水蒸気の勢いが強過ぎて、水蒸気が皮膚以外に当たって不快なものとなり、さらに、皮膚用外用剤と皮膚内部の水分を奪ってしまい、皮膚にダメージを与えることとなる。
【0024】
図2は、図1の装置において、スチーム吹出部1を拡大した概略構成図である。スチーム吹出部1は、グリップ部7と、手元スイッチ6と、ボイラー4から有圧水蒸気が送られてくる蒸気ホース8と、スチーム吹出部1を操作するための電源コード9と、送られてきた有圧水蒸気を再加熱するスチーム加熱部10と、有圧水蒸気を噴射するスプレーノズル11と、皮膚用外用剤を収納するカートリッジ12と、皮膚用外用剤をスプレーノズルに導く導管13と、から構成される。上記皮膚用外用剤は、図2に示すように、スチーム吹出部1に取り付けられたカートリッジ12に収納されている。上記ボイラー4で発生した有圧水蒸気は、蒸気ホース8を通って、スプレーノズル11から噴射される。水蒸気が噴射されると、スプレーノズル11から導管13にいたる部分が負圧となる。この負圧により、皮膚用外用剤が、カートリッジ12から吸い出され、有圧水蒸気と混合して、水蒸気とともに霧状に噴射される。この場合に、有圧水蒸気の噴出量を調整することで、負圧の程度を調整できる。すなわち、有圧水蒸気の噴出量を調整することで皮膚用外用剤の配合量を調整することができる。
【0025】
[皮膚用外用剤]
本発明で用いる皮膚用外用剤としては、特に制限はなく、上記有圧水蒸気が噴射される際に生ずる負圧により組成物が吸出されるものであればよい。皮膚用外用剤の剤形は、溶液状、乳液状、ローション状などの任意の剤形であってもよい。また、皮膚用外用剤は、マイクロカプセルに封入する形体のものや界面活性剤で分散させる形体のものであってもよい。さらに、皮膚用外用剤のほかに、通常化粧料に含まれる任意の成分を含んでいてもよい。
【0026】
本発明に用いられる皮膚用外用剤は、特に限定されず、例えば、美白剤、抗炎症剤、抗菌剤、ホルモン剤、ビタミン剤、酵素、抗酸化剤、血行促進剤、アミノ酸類、角質柔軟剤、育毛用薬剤および動植物抽出液等が挙げられる。
【0027】
美白剤としては、L−アスコルビン酸およびその誘導体、アルブチン等のハイドロキノン誘導体、コウジ酸及びその誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、サリチル酸およびその誘導体、レゾルシノール誘導体、美白作用を有する植物抽出物などが例示される。
【0028】
L−アスコルビン酸誘導体としては、例えばL−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−硫酸エステルなどのL−アスコルビン酸モノエステル類や、L−アスコルビン酸2−グルコシドなどのL−アスコルビン酸グルコシド類、あるいはこれらの塩などが挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。塩としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、トリエタノールアミンなどの各塩が例示される。
【0029】
ハイドロキノン配糖体
としては、例えばハイドロキノンα−D−グルコース、ハイドロキノンβ−D−グルコース(「アルブチン」ともいう)、ハイドロキノンα−L−グルコース、ハイドロキノンβ−L−グルコース、ハイドロキノンα−D−ガラクトース、ハイドロキノンβ−D−ガラクトース、ハイドロキノンα−L−ガラクトース、ハイドロキノンβ−L−ガラクトース等が例示される。
【0030】
トラネキサム酸およびその誘導体としては、トラネキサム酸、トラネキサム酸の二量体〔例えば、塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等〕、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体〔例えば、トランス−4−アミノメチルシクロへキサンカルボン酸4’−ヒドロキシフェニルエステル、等〕、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体〔例えば、2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸およびその塩、等〕、トラネキサム酸のアミド体〔例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス−4−(p−メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス−4−グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、等〕などが挙げられる。
【0031】
サリチル酸およびその誘導体としては、サリチル酸、3−メトキシサリチル酸およびその塩、4−メトキシサリチル酸およびその塩、5−メトキシサリチル酸およびその塩などが挙げられる。塩としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、トリエタノールアミンなどの各塩が例示される。
【0032】
レゾルシンおよびその誘導体としては、レゾルシン、4−n−ブチルレゾルシノールなどのアルキルレゾルシノール、およびこれらの塩などが挙げられる。塩としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、トリエタノールアミンなどの各塩が例示される。
【0033】
抗炎症剤としては、グリチルレチン酸及びその塩、グリチルリチン酸塩(例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム等)、メフェナム酸、アラントイン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコールなどの非ステロイド系抗炎症剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン等のステロイド系抗炎症剤、オウバク、カミツレ等の生薬エキス、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリム等のムコ多糖類、アスコルビン酸等のビタミン類、アラントインなどが挙げられる。これらの中でも特に、グリチルレチン酸、アスコルビン酸が好適に使用される。
【0034】
抗菌剤としては、例えばレゾルシン、イオウ、サリチル酸、ジンクピリチオン、感光素101号、感光素102号、オルトビロックス、ヒノキチオールなどが挙げられる。
【0035】
ホルモン剤としては、例えばオキシトシン、コルチコトロピン、バソプレッシン、セクレチン、ガストリン、カルシトニンなどが挙げられる。
【0036】
ビタミン類としては、例えばビタミンB、ビタミンB塩酸塩等のビタミンB誘導体、ビタミンB、ビタミンB12、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等のニコチン酸誘導体、パントテニールエチルエーテルなどのビタミンB類、アスコルビン酸およびその誘導体などの水溶性ビタミン、パルミチン酸レチノールなどのビタミンA類、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類、酢酸トコフェロールなどのビタミンE類などの油溶性ビタミン類が挙げられる。
【0037】
酵素としては、例えばトリプシン、塩化リゾチーム、キモトリプシン、セミアルカリプロテナーゼ、セラペプターゼ、リパーゼ、ヒアルロニダーゼなどが挙げられる。
【0038】
抗酸化剤としては、例えばチオタウリン、グルタチオン、カテキン、アルブミン、フェリチン、メタロチオネインなどが挙げられる。
【0039】
血行促進剤としては、例えばアセチルコリン誘導体、セファランチン、塩化カルブロニウム、l−メントール、メントール誘導体、dl−カンフル、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシン、トウガラシエキス、バニリルブチルエーテル、酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、アルニカエキス、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム、セイヨウトチノミエキスなどがあげられる。好ましい血行促進剤は、l−メントール、メントール誘導体、ノニル酸ワニリルアミド、酢酸トコフェロール、トウガラシエキス、バニリルブチルエーテルである。
【0040】
アミノ酸類としては、例えばセリン、メチオニン、トリプトファン等が挙げられる。
【0041】
角質軟化剤としては、尿素、ビタミンA油、サリチル酸、レゾルシン等があげられる。
【0042】
育毛用薬剤としては、センブリエキス、アセチルコリン誘導体、セファランチン、塩化カルプロニウム等の血行促進剤、トウガラシチンキ、カンタリスエキス、ノニル酸バニルアミド等の局所刺激剤、ピリドキシン若しくはその誘導体等の抗脂漏剤、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノール、ジンクピリチオン、感光素101号、感光素102号、オルトピロックス、ヒノキチオール等の抗菌剤、感光素301号、プラセンタエキス、ビオチン等の代謝賦活剤、セリン、メチオニン、トリプトファン等のアミノ酸類、ビタミンB2、B12、パントテン酸若しくはその誘導体などのビタミン類等が挙げられる。
【0043】
動植物抽出物のうち植物抽出物としては、例えば、茶エキス、イザヨイバラエキス、オウゴンエキス、ドクダミエキス、オウバクエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、キナエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、コウホネエキス、ウイキョウエキス、サクラソウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、シコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、海藻エキス、キューカンバエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグルマギクエキス、ハマメリスエキス、カンゾウエキス、イチョウエキス、イチヤクエキス、センブリエキス、トウガラシチンキエキス、カンタリスエキスなどが挙げられる。また、動物抽出物としては、プラセンタエキス、コラーゲンなどが好ましく用いられる。
【0044】
本発明で用いられる皮膚外用剤には、上記成分の他、必要に応じて通常の皮膚外用剤に配合される各種成分、例えば界面活性剤、油性基剤、水溶性高分子、水性基剤、無機粉体、有機粉体、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、香料、水等が使用される。
【0045】
本発明の方法が適用される皮膚の場所は限定されず、頭皮を含み、体表面のあらゆる皮膚を含む。また、本発明方法を用いると、皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給すると、効能の優れた美容方法が得られる。
【実施例1】
【0046】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実験材料]
人工皮膚として、ヒト皮膚3次元モデル(東洋紡(株)製、MATREX LDM(LDM−001))を使用した。放射性ビタミンCとして、L−(カルボキシル−14C)アスコルビン酸(アマーシャム バイオサイエンス(株)製)を用いた。液体シンチレータとして、クリアゾルI(水溶性用)(ナカライテクス(株)製)を用いた。シンチレータ瓶は、プラスチック製のものを用いた。
【0048】
[実験例1]
(実施例1)
約40μCiの放射性ビタミンC(7mg)を20mlの蒸留水に溶解した。この液を図1に示す装置のリザーバにいれて、有圧水蒸気とともに秤量用トレーに吹き付けた。吹き付けた液のうち10μlをとり、これに90μlの蒸留水を混ぜたものを、人工皮膚にのせた。
【0049】
この人工皮膚を、箱に入れ、37℃で、15分、90分、3時間、8時間、1晩インキュベートした。
【0050】
インキュベートの後、未吸収液をシンチレータ瓶に入れ、さらに50μlの蒸留水で人工皮膚の表面を2回洗った洗浄液も、上記シンチレータ瓶に入れた(未吸着分)。放射性ビタミンCを吸着した人工皮膚は、別のシンチレータ瓶に入れた(吸着分)。未吸着分、吸着分の放射能を、シンチレーションカウンターで測定した。なお、人工皮膚や支持体に破損があった場合には、除外した。
【0051】
人工皮膚へのビタミンCの移動率は以下の式により求めた。結果を表1に示す。
人工皮膚へのビタミンCの移動率(%)=
吸着分の放射線カウント/(未吸着分の放射線カウント+吸着分の放射線カウント)×
100
【0052】
(比較例1)
約40μCiの放射性ビタミンC(7mg)を20mlの蒸留水に溶解した。この液を10μlをとり、これに90μlの蒸留水を混ぜたものを、人工皮膚にのせた以外は、上記実施例1と同様に処理して、人工皮膚へのビタミンCの移動率は上記の式により求めた。結果を表1に示す。
【表1】

【0053】
表1から、インキュベート時間がいずれの場合であっても、実施例のほうがビタミンCの人工皮膚への移行率が高いことがわかった。
【0054】
[実験例2]
(処理群)
人工皮膚に、噴射口から約10cm離した状態で、有圧水蒸気を5分間吹き付けた。この処理の後、人工皮膚の表面は、湿っており、表面温度は約40℃であった。この人工皮膚を、比較例1と同様に処理して、箱に入れ、37℃で、15分、30分、90分インキュベートし、人工皮膚へのビタミンCの移動率を調べた。結果を表2に示す。
【0055】
(対照群)
人工皮膚に少量の蒸留水を載せ、40℃で5分間高温槽で温めた。この人工皮膚を、比較例1と同様に処理して、箱に入れ、37℃で、15分、30分、90分インキュベートし、人工皮膚へのビタミンCの移動率を調べた。結果を表2に示す。
【表2】

【0056】
表2から、人工皮膚に有圧水蒸気を接触させた後に、ビタミンCを載せた場合には、人工皮膚へのビタミンCの移動率が低いことがわかった。
【0057】
以上の結果から、ビタミンCを有圧水蒸気とともに供給すると、ビタミンCの経皮吸収率が向上することがわかった。本実施例では、有圧水蒸気を直接人工皮膚に接触させてはいないが、皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給すると、皮膚用外用剤の経皮吸収率はさらに向上すると推定される。皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給すると、凝縮した水の集合状態のサイズも小さいことに加え、圧力を有し、さらには水蒸気が凝縮時に放出する潜熱を有するからである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の方法において、有圧水蒸気を供給する有圧水蒸気供給装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図2は、図1の装置において、スチーム吹出部を拡大した概略構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1 スチーム吹出部
2 電磁弁
3 減圧弁
4 ボイラー
5 給水タンク
6 手元スイッチ
7 グリップ部
8 蒸気ホース
9 電源コード
10 スチーム加熱部
11 スプレーノズル
12 カートリッジ
13 導管




【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給する皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法。
【請求項2】
前記有圧水蒸気が、スチーム噴射部から噴射される直前の圧力が、0.2〜0.5MPaである請求項1に記載の皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法。
【請求項3】
前記皮膚用外用剤が、アスコルビン酸またはその誘導体である請求項1または2に記載の皮膚用外用剤の経皮吸収率の向上方法。
【請求項4】
皮膚用外用剤を有圧水蒸気とともに、皮膚に供給する美容方法。


【図1】
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【図2】
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