説明

皮膚試料におけるMC1Rバリアントおよびミトコンドリアマーカーをアッセイする方法

本発明は、皮膚の状態および皮膚疾患を予測し、診断し、監視する方法に関する。上記方法は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常、およびメラノコルチン1受容体(MC1R)のバリアントを決定する1つ以上のアッセイ法に、非侵襲的な皮膚の回収手法の使用を組み合わせて、光老化、紫外線照射(UVR)による損傷、または皮膚疾患の同定、予測、および/または監視のための包括的なツールを提供する。また、本発明の方法は、新しい治療剤、スキンケア製品、および処置計画に関するスクリーニングに有効であり得、予防処置または治療処置に対する対象の反応の監視にも有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本出願は、PCT特許出願第PCT/CA2007/001790号(出願日:2007年10月11日)および米国特許出願第60/999,074号(出願日:2007年10月15日)に基づいて優先権を主張するものである。これらの特許出願の内容の全体が、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、皮膚の状態および皮膚疾患を予測し、診断し、監視する方法に関する。特に、本発明は、ミトコンドリアの変異およびメラノコルチン1受容体(MC1R)のバリアントを決定するアッセイと、皮膚の試料を回収する非侵襲的な技術を組み合わせる方法に関する。上記変異およびバリアントは、疾患、光老化、および紫外線照射(UVR)損傷を予測し、監視する包括的なツールとして使用される。また、上記方法は、治療剤、スキンケア製品および処置計画の有効性、ならびに当該治療剤、スキンケア製品および処置計画に対する評価にとって有用である。
【0003】
〔発明の背景〕
皮膚疾患は、現代の世界における保健医療の主要な問題を代表している。皮膚がんと診断される新患者が米国において年に百万人を超えており(米国国立がん研究所、www.cancer.gov)、皮膚疾患の予測および診断は、皮膚疾患を管理する重要な側面である。現在の診断方法は、主に視覚的な観察および生検に依存している。しかし、視覚的な観察に依存する検出方法は、皮膚の状態または皮膚疾患の診断にとって必ずしも有効ではなく、臨床的な症状が現れるまで危険性または疾患を検出できない。さらに、侵襲的な方法、例えば生検は、試験される対象に外傷を与えるたけでなく、感染の可能性を増大させる。また、上記侵襲的な方法は、安全に実施されるために、医師によってなされなければならない。また、典型的に反応にとって一般に必要とされる細胞である、皮膚の表面における細胞を多く含む試料は、侵襲的な方法によって得られない。
【0004】
したがって、皮膚の状態および皮膚疾患の診断および監視の非侵襲的な方法は、患者の管理、ならびに既存および新規の治療剤、スキンケア製品およびスキンケア手順の有効性の評価にとって重要なツールである。さらに、これらの方法は、対象の皮膚の状態の元になっている特定の遺伝的な変化、および対象が皮膚疾患にかかる遺伝的な素因に関する重要な情報を提供し得る。これらの遺伝的な変化の同定によって、見込みのある薬剤の標的および防止策が特定される。そして、特定の治療用薬剤、スキンケア製品、または計画に対してある人が実際に反応するか否かの決定において、これらの遺伝的な変化は重要であり得る。さらに、検出方法および診断方法は、このような治療法、製品および手段の安全性の評価に重要である。
【0005】
紫外線照射(UVR)による損傷
紫外線照射(UVR)によって生じる皮膚の損傷には、未知の要因または十分に定量化できない要因がしばしば寄与する。既知の要因としては、種々のものが挙げられるが、とりわけ皮膚の色、UVRばくろの頻度および強度、メラニン生成、フェオメラニンに対するユーメラニンの割合、ならびに日焼け止めの使用などが挙げられる。行動性の要因は、UVRによる皮膚への損傷の重症度および度合いに大きな役割を果たしているが、当該要因が自己申告の正確さ、および患者の日光に関する生活習慣の誤認識にしばしば依存するので、当該要因は、臨床的に評価することが極めて困難である。また、日焼け止めを日常的に使用する多くの人は、十分な量を塗布するか、または推奨される使用間隔の間にふたたび塗布することを怠り、UVRへのばくろの増加を導き得る誤った認識をもたらして、日焼け止めを不適切に使用している。
【0006】
とりわけこれらの要因は、予防手段および治療法の成果および適切さを厳密に監視するためのツールの利用を必要とする。当該予防手段および治療法は、早期の光老化から皮膚がんの危険性の増大までの種々の結果をともなう、UVRによる皮膚に対する損傷を予防するために助言されるものである。個体の皮膚の状態、ならびにその結果として生じる光老化および皮膚がんのリスクを十分に評価するための試みにおいて、保健医療の熟練者が、患者の危険因子を理解し、伝えるために可能な限りの見識を有していることは必須である。したがって、UVRによる損傷の影響、および個体の日光に関する特有の生活習慣に関連する危険因子の同定に対する個々の遺伝的な素因を評価する診断方法があることが望ましい。
【0007】
そのような方法は、UVRによる損傷の指標であるミトコンドリアバイオマーカーの定量化、メラノコルチン1受容体(MC1R)の遺伝子型同定のために個体の皮膚の上皮または真皮の層からDNA試料を回収して、メラニン形成の制御に関与するバリアントを特定することを含み得る。両方の試験を組み合わせて使用することによって、光老化またはがんに対する患者の遺伝的な素因、ならびに患者の、紫外線照射に対する継続的なばくろの結果の両方を考慮して、患者を監視し、患者に助言し、患者を処置する包括的なツールが、保健医療提供者に提供される。
【0008】
UVRに関連したミトコンドリアにおける欠失
ヒトの皮膚組織は非常に複雑であり、多くの細胞種を含んでいる。したがって、ヒトの皮膚細胞のバイオマーカーの同定は、特に重要である。ヒトの皮膚おける、UVRへの蓄積するばくろに対する信頼性の高いマーカーを決定するために、発明者らは、UVによって誘導されるDNA損傷のバイオマーカーとして、核内DNAではなく、ミトコンドリアDNA(mtDNA)を利用する新規な着想を検討している(Pang et al., 1994、Berneburg et al., 1997、Birch−Machin et al., 1998、およびBirch−Machin, 2000)。
【0009】
ヒトの皮膚における蓄積的な日光に対するばくろに関するバイオマーカーとして、mtDNA損傷を使用することは、比較的に新しい研究領域であり、これまでの研究では、日光から保護された皮膚と日光にさらされた皮膚とを識別するために、mtDNA損傷を単純に比較している(Pang et al., 1994、Berneburg et al., 1997、およびBirch−Machin et al., 1998)。この手法には限界がある。これは、非黒色腫皮膚がん(NMSC)が、日光に“ときおり”さらされる体の部位とは対照的に、屋外にいるときに“たいてい”日光にさらされる部位に、主に形成されるからである(Armstrong, 2004)。
【0010】
本願出願人の同時係属PCT出願(国際公開第WO/06/111029号、その内容のすべてが参照によって本明細書援用される)では、ヒトのミトコンドリアDNA(mtDNA)における3895bpの欠失が、UVによって誘導されるDNA損傷のバイオマーカーとして同定された。この欠失は、547番目から4443番目までのヌクレオチドにまたがるマイナーarcにおいて同定された。この欠失は、これまでカーンズ・セイヤー症候群および慢性進行性外眼筋麻痺と関連付けられてきた(Moraes et al., 1995)。
【0011】
国際公開第第WO/06/111029号の実施例において、3895bpのmtDNA欠失の発生頻度が、日光に“たいてい”さらされる体の部位と“ときおり”さらされる部位との間において大きく異なることについて証明されている。さらに、上記実施例において、UVA+UVB光源から致死線量に満たない線量の繰返しの照射を用いて、インビトロにおける3895bpの欠失を誘導することによって、3895bpの欠失の原因と日光のUVR成分との間の関連性を実証した。
【0012】
重要なことに、国際公開第06/111029号において分析された皮膚試料は、日光による損傷および皮膚がんの危険性に対する個体の遺伝的な素因について評価されなかった。また、これらの試料は、当該分野に公知の痛みをともなう皮膚の回収方法によって得られた。
【0013】
メラノコルチン1受容体(MC1R)の遺伝子型同定
メラノコルチン−1受容体遺伝子(MC1R)は、メラニン合成の要になる膜結合型受容体タンパク質をコードしている。MC1Rのコード領域は高い多形性を有し、色素沈着の表現型を有するバリアントとの関連、ならびに黒色腫および非黒色腫皮膚がんに対する危険性が報告されている(Rees, Pigment Cell Research, Vol. 13(3), 135〜140(6), 2000年6月、およびKanetsky et al. Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention Vol. 13, 808〜819, 2004年5月)。黒色腫の発生率は、日光に感受性の高い白い肌の人において最も高い。このことは、メラニンの合成が増大することによってUVばくろに応答する能力が、黒色腫の予防における重要な要因であることを示唆している。同種の研究によって、白い肌の赤毛の人が、MC1Rの対立遺伝子の両方に機能的に重要な変化を有していることが示された。対立遺伝子であるD84E、R142H、R151C、R160H、およびD294Hは、赤毛および白い肌に対して高い浸透度を有している。また、浸透度のより低い2つの対立遺伝子(V60L、V92M)も、黒色腫の危険性についての一般的な要因である。
【0014】
したがってMC1Rは、日光に対する感受性の主要な決定因子および皮膚がんに対する遺伝的な危険因子である。より積極的な監視および処置手段を必要としている、非常に危険性の高い患者を特定するためのツールが、日光に対する感受性の増大、DNA損傷を受けやすいこと、および皮膚がんのリスクの増大に関連する特定のバリアントが存在するか否かを同定するために、メラノコルチン1受容体(MC1R)遺伝子のDNA配列またはアミノ酸配列を評価することによって提供される。日光に対する感受性のみに関連する表現型の特性の評価では、この増大した危険性を説明できないであろう。
【0015】
疾患(例えば皮膚がん)の診断または性質決定において使用する現状の皮膚試料回収方法としては、試験される個体に相当な不快を与え得る、浸襲性の方法または痛みをともなう方法が挙げられる。皮膚試料を回収する現状の方法の例としては、パンチ生検、テープリフト(tapelift)、および外科的切除などが挙げられる。また、現状の皮膚回収方法によって生じる不快感に加えて、これらの方法は、安全に実施されるためには医師によって実施されなければならない。
【0016】
このような侵襲的な手法には、他の欠点(感染の危険性、試料回収の不便さならびに回収された試料を紛失または誤認する可能性)がある。感染の危険性および不便さは、試料の回収が頻繁または定期的に必要な状況(例えば、UVRに対するばくろを監視する措置および長期治療の評価)において高まる。さらに、これらの侵襲的な試験方法に関する時間およびコストによって、個体の大きな集団に関して迅速に遺伝子型を同定し、DNA損傷を評価することが困難になる。したがって、家庭、臨床、または美容の環境において容易く迅速に実施され得る、非侵襲的なまたは低侵襲的な皮膚回収の方法を提供することが望ましい。
【0017】
この背景に関する情報は、出願人が本発明に関連する可能性があると考える情報を明らかにするという目的によって与えられている。上記情報のいずれもが、本発明に対する先行技術を構成していると自認することを必ずしも意図されるものではないし、そのように解釈されるべきでもない。
【0018】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、皮膚試料中のMC1Rのバリアントおよびミトコンドリアマーカーをアッセイする方法を提供することである。本発明の一態様によれば、UVRによる損傷に対する対象の皮膚の状態および遺伝的な素因を決定する診断の方法であって、
(a)対象から組織試料を回収する工程;
(b)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、第1の皮膚試料をアッセイする工程;
(c)メラノコルチン1受容体(MC1R)のバリアントの1つ以上に関して、第2の皮膚試料をアッセイする工程;および
(d)皮膚試料におけるmtDNAの異常およびMC1Rのバリアントの検出に基づいて、UVRによる損傷に対する上記対象の皮膚の状態および遺伝的な素因を判定する工程を包含している、方法が提供される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、光老化、UVRによる損傷、または皮膚疾患を予測するための、本発明の方法の使用が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、光老化、UVRによる損傷または皮膚がんの予防または寛解のための予防処置または治療処置を決定するための、本発明の方法の、使用が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、光老化、UVRによる損傷、または皮膚疾患を監視する非侵襲的な方法であって、
(a)非侵襲的な皮膚試料の回収手法を用いて、対象から皮膚試料を回収する工程;
(b)所定の期間にわたって一定の間隔をおいて、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して上記皮膚試料をアッセイする工程;
(c)上記所定の期間にわたって、同定されたmtDNAの異常における任意の変化を決定する工程を包含している、方法が提供される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、光老化、UVRによる損傷または皮膚疾患に関する予防または治療の処置に対する対象の反応を監視する方法であって、
(a)対象から第1の皮膚試料を回収する工程;
(b)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、第1の皮膚試料をアッセイする工程;
(c)メラノコルチン1受容体(MC1R)のバリアントの1つ以上に関して、第1の皮膚試料をアッセイする工程;
(d)第1の皮膚試料におけるmtDNAの異常およびMC1Rのバリアントの検出に基づいて、UVRによる損傷に対する、上記対象の皮膚の状態および遺伝的な素因を決定する工程;
(e)光老化、UVRによる損傷または皮膚疾患に関する予防処置または治療処置を施す工程;
(f)対象から第2の皮膚試料を回収する工程;
(g)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、上記第2の皮膚試料をアッセイする工程;
(h)所定の期間にわたって一定の間隔をおいて、工程(f)および(g)を繰り返す工程;および
(i)上記第1の皮膚試料と、mtDNAの異常における変化を検出するために一定の間隔をおいて取られた皮膚試料との間における、mtDNAの異常のレベルを比較して、上記処置の有効性を監視する工程;ならびに
(j)必要に応じて、上記対象の遺伝的な素因、および検出されたmtDNA異常における変化に基づいて、上記処置を調節する工程を包含している、方法が提供される。
【0023】
本発明の別の態様によれば、光老化、UVRによる損傷、または皮膚疾患の処置に有効な治療剤または美容剤をスクリーニングする方法であって、
(a)対象から第1の皮膚試料を回収する工程;
(b)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、上記第1の皮膚試料をアッセイする工程;
(c)上記治療剤または美容剤を用いて上記対象を処置する工程;
(d)所定の期間の後に対象から第2の皮膚試料を回収する工程;
(e)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、上記第2の皮膚試料をアッセイする工程;ならびに
(f)上記第1の皮膚試料と第2の皮膚試料との間の、対照に対するmtDNAの異常のレベルを比較して、上記治療剤または美容剤の有効性を決定する工程を包含している、方法が提供される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、対象の光損傷のレベルを決定する方法であって、
(a)対象から皮膚試料を回収する工程;
(b)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の欠失に関して、上記皮膚試料をアッセイする工程;
(c)上記皮膚試料のmtDNAの欠失のレベルを、年齢コホートにしたがって分類されるmtDNAの欠失の集団に対して比較し、上記対象に光老化度を割り当てる工程;および
(d)割り当てられた光老化度と対象の実年齢を比較することによって、上記対象の光損傷のレベルを決定する工程を包含している、方法が提供される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、UVRによる損傷に対する、対象の皮膚の状態および遺伝的な素因を決定するための診断用のキットであって、
(a)組織試料を回収するための器具;ならびに
(b)MC1Rの遺伝子型の同定およびmtDNA異常の検出の実施に適したプライマー、プローブ、および試薬を備えている、キットが提供される。
【0026】
〔図面の簡単な説明〕
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面を参照してなされる以下の詳細な説明においてより明確になる。
【0027】
図1は、本発明の方法を用いて鼻および踵から回収された皮膚試料における、3895bpのmtDNA欠失レベルに関連するリアルタイムPCRのデータを示す。
【0028】
図2は、本発明の方法を用いて体の様々な部位から回収された皮膚細胞における、3895bpのmtDNA欠失レベルに関連するリアルタイムPCRのデータを示す。
【0029】
図3は、本発明の方法を用いて体の様々な部位から回収された皮膚細胞における、3895bpのmtDNA欠失レベルに関連するリアルタイムPCRのデータを示す。
【0030】
図4は、種々の非侵襲的な皮膚の回収方法によって回収された試料に存在する増幅産物の存在を示すゲルである。
【0031】
図5は、種々の非侵襲的な皮膚の回収方法によって回収された試料に存在する増幅産物の存在を示すゲルである。
【0032】
図6〜図11は、対立遺伝子バリアントについて試験された対象の、遺伝子型の同定結果を示す。
【0033】
図12は、対立遺伝子バリアントR160Hについて試験するアッセイの結果を与えるゲルを示す。
【0034】
図13は、年齢コホートに分類された集団の3895bpのmtDNA欠失レベルを示すグラフを示する。
【0035】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、皮膚の状態および皮膚疾患を予測し、診断し、監視する方法を提供する。上記方法は、ミトコンドリアの変異およびメラノコルチン1受容体(MC1R)のバリアントを決定するアッセイと、非侵襲的な皮膚試料の回収手法を組み合わせることを包含している。この点において、上記方法は、疾患、加齢、および紫外線照射(UVR)損傷と関連した遺伝的な素因および危険因子を評価する、包括的なツールを提供する。また、上記方法は、治療剤、スキンケア製品、および処置計画に対する患者の反応の評価も可能にする。
【0036】
本明細書において使用される技術用語および学術用語のすべては、特に断りがないかぎり、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0037】
本明細書において使用されるとき、用語“約”は、記載された数値におよそ+/−10%の変動を指す。特に言及があるか否かに関わらず、このような変動が、本明細書に与えられている所定の数値に常に含まれていることを理解すべきである。
【0038】
本明細書において使用されるとき、“対立遺伝子”は、染色体上の特定の位置を占める、所定のDNA配列のいくつかの代替可能な形態のうちの一つを意味する。
【0039】
本明細書において使用されるとき、“サイクル閾値(cycle threshold)”(C)は、シグナル(例えば蛍光シグナル)によって示されるような、核酸配列の対象の増幅がバックグラウンドを超えて上昇する点である。Cは、調査されている配列の量と反比例の関係にある。
【0040】
本明細書において使用されるとき、“診断の”または“診断”は、疾患の診断または管理におけるパラメータとして、一つの変異または複数の変異の組合せの存在または非存在を利用することを意味する。一つまたは複数の変異の検出は、疾患の診断における工程であり得る。
【0041】
本明細書において使用されるとき、“欠失”は、DNAまたはmtDNAのある領域を、近接する核酸配列から除去することを意味する。欠失は、1塩基から数千塩基またはそれ以上のサイズに及び得る。
【0042】
本明細書において使用されるとき、“ミトコンドリアDNA”または“mtDNA”は、ミトコンドリア内に存在するDNAである。
【0043】
本明細書において使用されるとき、“変異”は、野性型の配列からの核内DNAまたはミトコンドリアDNAの任意の修飾または変化を包含している。当該修飾または変化としては、点変異、塩基転位、挿入、塩基転換、転座、欠失、反転、重複、組換え、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。配列の修飾または変化は、単一の塩基変更からDNA断片の全体の付加または除去までにわたる。
【0044】
本明細書において使用されるとき、用語“試料”は、対象の皮膚に由来する任意の調製物を指す。例えば、本明細書に記載の非侵襲的な方法を用いて得られた細胞の試料は、本発明の方法にとってのポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはミトコンドリアDNAの単離に使用され得る。本発明にとっての試料は、真皮または表皮から典型的に採取される。試料は、本明細書に記載の非侵襲的または低侵襲的な皮膚試料の回収方法を用いて表皮から好ましく採取される。
【0045】
本明細書において使用されるとき、用語“皮膚”は、身体の外部の保護的な被膜を指す。当該被膜は、真皮および表皮からなり、汗腺および皮脂腺とともに毛包構造を含んでいると理解される。一実施形態において、皮膚は、哺乳類(好ましくはヒト)の皮膚である。
【0046】
本明細書において使用されるとき、用語“皮膚の状態”は、日光に対するばくろ、日焼け用ベッド、またはUVRに関連する疾患などに起因して蓄積されるUVRによる損傷の量に関する皮膚の状態を指す。
【0047】
本明細書において交換可能に使用されるような、用語“治療”および“処置”は、対象の状態を改善する意図のもとに実施される介入を指す。改善は主観的または客観的であり得、皮膚疾患、皮膚障害もしくは皮膚の状態の症状に関連する寛解、当該症状の予防、または当該症状の変化に関する。このように、治療および処置という用語は、最も広義の意味に使用され、疾患、障害または状態の種々の段階における予防(prevemtion)(予防(prohylaxis))、緩和、減退、および治癒を包含している。また、対象の状態の悪化を予防することが上記用語に包含される。したがって、治療/処置を必要とする対象としては、上記疾患、障害または状態にすでになっている対象のほかに、上記疾患、障害または状態になりやすいか、またはなる危険性がある対象、ならびに上記疾患、障害、または状態が予防されるべき対象が挙げられる。
【0048】
(皮膚の状態を決定するアッセイ、および皮膚疾患に対する遺伝的な素因の評価)
本発明の方法は、個体の、皮膚疾患に対する遺伝的な素因、およびUVRに対するばくろに関連した危険因子の同定に有効なアッセイと、非侵襲的な皮膚の回収方法を組み合わせることを包含している。上記アッセイは、単独に実施され得るか、または他のアッセイと組み合わせて実施され得る。複数のアッセイを組み合わせて使用することによって、遺伝的な危険因子および日光に関する生活習慣を同時に評価する独自の能力が提供されて、光老化、UVRによる損傷、または皮膚疾患になりやすいか、またはなっている患者を良好に監視し、患者に良好に助言し、患者を良好に処置する診断ツールを保健医療の専門家に提供する。
【0049】
ミトコンドリアの変異を検出するアッセイ
ミトコンドリアDNA(mtDNA)の動態は、重要な診断ツールである。mtDNAにおける変異は、しばしば、かかっている疾患の初期の指標であり、発病に関連する危険因子の指標になるバイオマーカーとして機能し得る。また、核内DNAと比べてミトコンドリアDNAの細胞当たりのコピー数が多いことから、ミトコンドリアDNAは、極めて微量の核酸に頼るアッセイにとってより強力な標的である。したがって、本発明の方法は、ヒトのミトコンドリアのゲノムにおいて変異を検出するアッセイと、皮膚試料を回収する非侵襲的技術を組み合わせる。
【0050】
本明細書に記載のように、皮膚試料においてミトコンドリアDNAの異常のレベルを測定することによって、日光に対するばくろおよびUVRによる損傷の蓄積関して患者の皮膚の状態が同定され得る。さらに、一定の間隔(例えば2週間または1ヶ月間)においてmtDNAを測定することによって、UVRに起因する皮膚損傷の予防における処置の有効性を決定するために、処置の提案に対する比較のための、実時間の定量的な監視ツールが、保健医療専門家に提供される。
【0051】
したがって、本発明は、UVRによる損傷の蓄積に関する患者の皮膚の状態を決定する方法を提供し、当該方法は、ミトコンドリアの異常を検出するアッセイと、非観血的皮膚回収法を組み合わせることを包含している。本発明の一実施形態によれば、ミトコンドリアの変異は、欠失、置換および挿入からなる群より選択される。本発明の別の一実施形態によれば、上記変異は、mtDNAの欠失である。本発明のさらに別の一実施形態によれば、上記変異は、国際公開第WO/06/111029号に特定されている3895bpのmtDNAの欠失である。本発明のさらに別の一実施形態によれば、上記変異は、配列番号1に記載の3895bpの欠失である。本発明のさらにまた別の実施形態によれば、mtDNAの変異は、配列番号2に記載の配列に対応する。
【0052】
非侵襲的に皮膚試料を回収し、ミトコンドリアの変異をアッセイする例示的な方法は、実施例の項に示されている。試料からのmtDNA抽出は、任意の適した公知の方法を用いて実施され得る。当該技術分野において公知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., John Wiley & Sons, New York, 2007)に記載のように、、mtDNA抽出は、ミトコンドリアのゲノムのすべてまたはある領域の増幅に先立って実施され、ミトコンドリアのゲノムの配列決定を含み得る。同様に、mtDNAにおける変異の存在を検出する方法は、当業者にとって公知の適切な技術から選択され得る。例えば、mtDNAの分析は、mtDNAの配列決定、PCRによるmtDNAの増幅、(サザンブロット、ノザンブロット、ウエスタンブロット、またはサウス−ウェスタンブロットによる)ハイブリダイゼーション、変性HPLC、(マイクロアレイ、バイオチップ、または遺伝子チップに対する)ハイブリダイゼーション、分子マーカー分析、バイオセンサ、融解温度プロファイリング、または以上のものの任意の組合せを包含し得る。
【0053】
ミトコンドリアDNAの配列を決定するために、好適な任意の手法が使用され得る。mtDNAは、配列決定の前にPCRによって増幅されることが好ましい。PCRの方法は、当業者にとって公知であり、Mullis and Faloona, 1987, Methods Enzymol., 155: 335に記載のように実施され得る。PCR産物は、直接的に配列決定され得るか、またはベクターにクローン化され、それから細菌宿主に入れられ得る。DNA配列決定法の例は、Brumley, R. L. Jr. and Smith, L.M., 1991、 Rapid DNA sequencing by horizontal ultrathin gel electrophoresis, Nucleic Acids Res. 19:4121〜4126、およびLuckey, J.A., et al, 1993, High speed DNA sequencing by capillary gel electrophoresis, Methods Enzymol. 218: 154〜172に記載されている。mtDNAのPCRおよび配列決定の組合せの使用について、Hopgood, R., et al, 1992, Strategies for automated sequencing of human mtDNA directly from PCR products, Biotechniques 13:82〜92、およびTanaka, M. et al, 1996, Automated sequencing of mtDNA, Methods Enzymol. 264: 407〜421に記載されている。
【0054】
メラノコルチン1受容体(MC1R)の遺伝子型の同定
上記メラノコルチン1受容体は、メラニン形成における重要な制御点であり、皮膚における色素の蓄積量を決定する。皮膚の色素が、発がん性のUVRに対する個体の自然保護の程度を決定することを考えれば、MC1Rの遺伝子型を同定することによって、UVRに対するばくろに起因するDNA損傷受けやすさが決定され得、皮膚がんに関する危険因子が評価され得る。したがって、メラノコルチン1受容体(MC1R)遺伝子のDNAまたはアミノ酸配列を評価して、特定のバリアントが、日光に対する感受性およびUVRによる損傷の受けやすさの増大と関連するか否かを特定することによって、疾患にかかる危険性が非常に高い個体であり、より積極的な監視および処置の手法を必要とし得る個体を特定するための、有益なツールが提供される。
【0055】
本発明の上記方法は、MC1Rの遺伝子型を同定するアッセイと、非侵襲的な皮膚の回収方法を組み合わせる。皮膚試料から抽出されたDNAまたはRNAは、1つ以上のMC1Rのバリアントの対立遺伝子の同定に使用され得る。例えば、黒色腫になる高い危険性と関連するD84E、R142H、R151C、R160H、D294H、V60LおよびV92Mの7つの対立遺伝子のバリアントに関して、同時に試験され得る。代替的に、皮膚がんになる高い危険性と最も一般的に関連する5つの対立遺伝子のバリアント(つまり、D84E、R151C、D294H、V60LおよびV92M)に関するMC1Rの遺伝子型の同定が実施され得る。上記MC1R遺伝子(バリアントが挙げられる)が、配列番号3に記載されている。さらに、上記MC1RのRNA配列が、配列番号4に記載されている。
【0056】
したがって、本発明は、皮膚の損傷またはがんに対する個体の遺伝的な素因を決定する方法を提供し、当該方法は、皮膚試料内における1つ以上のMC1Rのバリアントの存在を確認するアッセイと、非侵襲的な皮膚の回収手法を組み合わせることを包含している。本発明の一実施形態によれば、試験される上記MC1Rのバリアントは、対立遺伝子のバリアントD84E、R142H、R151C、R160H、D294H、V60LおよびV92Mからなる群より選択される。本発明の別の一実施形態によれば、試験される上記MC1Rのバリアントは、D84E、R151C、D294H、V60LおよびV92Mからなる群より選択される。
【0057】
非侵襲的に皮膚試料を回収し、MC1Rの遺伝子型を同定する例示的な方法は、実施例に示されている。当業者であれば、UVRに対するばくろの傾向の結果として個体の生涯を通して変化し得るmtDNA変異の検出とは異なり、MC1Rの遺伝子型の同定から得られる結果は個体の生涯を通して変化しないことを正しく理解するであろう。したがって、MC1Rは、所望の場合に、患者の生涯のうちに一度だけ試験され得る。
【0058】
MC1R遺伝子の配列は遺伝性であり、生涯を通して変化しないので、遺伝子型を同定するアッセイ(例えばMC1Rのバリアントを評価するために使用されるアッセイ)は、いずれの体組織が試料であるのかに関わらず、ある個体において同一の結果を生じる。当業者であれば、試料は、非侵襲的な回収方法によって皮膚から得られるが、任意の他の体組織から回収して、同じ遺伝子型を得られることを理解できるであろう。本発明の方法における使用に好適な組織の回収は、当該技術分野においてよく理解されており、当該組織としては、頬側組織、筋組織、神経組織といった非限定的な例が挙げられ得る。これは、組織特異的な体細胞変異であるミトコンドリアのアッセイには当てはまらない。したがって、本発明の一実施形態によれば、皮膚組織以外の組織試料を対象から回収することを包含している方法が提供される。本発明の別の一実施形態によれば、頬側の試料である組織を対象から回収することを包含している方法が提供される。
【0059】
試料からのDNAまたはRNAの抽出は、任意の適切な公知の方法を用いて実施され得る。特定の対立遺伝子の検出は、例えばABIのa qPCR Taqman SNP genotyping assay法(https://products.appliedbiosystems.com/ab/en/US/direct/)などの、当該分野において認識されている手法を用いて行われ得る。同様に、特別なプライマーおよびプローブの調製方法が、当該技術分野において周知である(例えば、Ausubel, et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NYを参照)。
【0060】
代替的に、対立遺伝子バリアントの評価は、MC1R遺伝子のアミノ酸配列の評価に基づいて行われ得る。アミノ酸分析を実施する手法は、当該技術分野においてよく理解されており、当該手法としては、例えば高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)が挙げられる。
【0061】
皮膚タイプおよび皮膚がんリスクの判定
本発明の方法は、対立遺伝子のバリアントの存在について個体を評価するために使用され得るだけでなく、個体のフィッツパトリックの光反応性の分類(Fitzpatrick phototype)が近い皮膚の分類を決定するために使用され得る。この点において、MC1Rの遺伝子型の同定の結果によって、がんについての関連する危険性によって特徴付けられる特定の皮膚の分類に、さらに分けることが可能になる。
【0062】
これらの皮膚の分類は、以下のように規定される。
皮膚の分類1は、個体が、皮膚がんの危険性と関連が最も高い4つの対立遺伝子のバリアントのうちの2つ以上を有していることを特徴とする。
皮膚の分類2は、個体が、皮膚がんの危険性と関連が最も高い4つの対立遺伝子のバリアントのうちの1つを有していることを特徴とする。
皮膚の分類3または4以上は、個体が、皮膚がんの危険性と関連が最も高い4つの対立遺伝子のバリアントを1つも有していないことを特徴とする。
【0063】
したがって、一実施形態によれば、個体の皮膚の分類および皮膚がんの危険因子を、MC1Rの遺伝子型の同定に基づいて特定する方法が提供される。
【0064】
本発明は、遺伝子型の同定または診断上の試験のために皮膚試料を回収する、非侵襲的または低侵襲的な手法を提供する。本発明の内容に即して、“低侵襲的な”は、皮膚の1つ以上の層を貫通するが、ほとんどまたはまったく出血が生じない手法を指す。皮膚試料の回収に使用される非侵襲的または低侵襲的な手法の非限定的な例としては、これらに限定されないが、外科用テープを使ったテープリフト、8%マンデル酸を含ませた消毒綿(swab)、蒸留水を含ませた消毒綿、ワックス条片(wax strip)、コットンチップスワップ(cotton tip swap)、滅菌したメスを用いた皮膚の掻き取り、木製のスクレーパをを用いた皮膚の掻き取り、粘着パッド(CapSure(登録商標)Clean−up Pad、Arcturus)の粘着面、LCM MacroCap(登録商標)(Arcturus社)のフィルム、LCM MacroCap(登録商標)(Arcturus社)の加熱フィルム、および小さな内径の針(例えば、28ゲージ(gauge))を用いた皮膚組織の微小核(micro core)の回収が挙げられる。
【0065】
上記試料は、皮膚の真皮または上皮の層から回収され得、例えば、踵、鼻、腕の内側、耳、口、頭皮、胸部、肩部、殿部、背中、顔面、うなじ、手、および/または頭などの身体の部位から回収され得る。上記試料は、回収元から得られたままの状態において直接に使用され得るか、または試料の特性を調節するための前処置の後に使用され得る。したがって、皮膚試料は、例えば防腐剤または試薬などを用いて、使用前に処理され得る。
【0066】
当業者であれば、2つ以上の回収手法が一度に使用され得ることを理解するであろう。さらに、複数回の回収の過程が必要な場合(例えば、皮膚の状態を経時的に監視するために)、同じかまたは異なる手法が、試験期間を通して単独または一緒に使用され得る。この点において、皮膚回収は、1回のみか、または一定の間隔(例えば、2週間または1ヶ月間)をおいて実施され得る。
【0067】
また、当業者であれば、特定の回収方法によって、核内DNAを標的とするアッセイにとって有効ではない、極めて微量(およそ0.1ng)の核酸がもたらされるが、はるかに多量に存在する(およそ1000倍以上)ミトコンドリアのDNAの標的は、極めて収量の低いこのような回収手法に極めて適していることを理解するであろう。以下の例によっては、本発明の非侵襲的な方法によって回収された皮膚細胞が、これまでに使用されている皮膚の回収方法を介して得られるmtDNAに匹敵する結果を得るために充分なmtDNAを提供することが示される。
【0068】
本発明の特定の方法に関する一実施形態において、消毒綿(例えば、頬側細胞の回収に使用される消毒綿またはコットンチップスワップ)の使用に関する、非侵襲的な回収手法が提供される。消毒綿が包装から取り出され、所望の皮膚の部位に擦りつけられる。好ましくは、遺伝子型の同定または診断のために充分な数の皮膚細胞を確保するために、上記部位がおよそ15回にわたって拭き取られる。本発明は、特定の例について以下に説明されるが、上記方法はまた、疾患、老化、または紫外線照射へのばくろの診断または性質決定、ならびにこれらと関連する変異の同定用の皮膚試料を回収するために使用さ得る。
【0069】
皮膚の拭き取りの後、無菌の消毒面は滅菌チューブに挿入される。チューブに入っている遺伝子材料(つまりDNA)の完全な状態を維持するために、必要に応じて、緩衝液がをチューブに加えられ得る。それから当該DNAは、当該技術分野において周知の方法を用いて抽出される。
【0070】
本発明の別の一実施形態において、非常に小さな内径の針(28ゲージまたは29ゲージ)を用いた低侵襲的な手法が、遺伝子研究用の皮膚細胞を回収するために使用される。本実施形態において、皮膚細胞は、ほとんどまたはまったく出血がないように、テントのように摘み上げられた(tented)皮膚の層を貫通させることによって、対象の真皮および表皮から回収されるが、非常に微量な真皮組織および上皮組織は、針の内部の中空に付着する。皮膚は、例えば指、ピンセット、またはクランプの他の形態を用いて皮膚を引き上げることによって、テントのように摘み上げられ得る。皮膚の材料は、さらなる処理のために抽出(すなわちDNA抽出)されるまで、針に納めれている。皮膚試料を針から送り出すために、リン酸緩衝生理食塩水が、針のカラムに入れられ、それからプランジャーを用いて滅菌チューブに押し出される。DNAは、当該技術分野において周知の方法を用いて抽出される。以下の例によって示されるように、皮膚試料を回収するためのこの低侵襲的な方法は、例えばUVの照射に起因するDNAまたはmtDNAの損傷を評価するために充分なDNAまたはmtDNAをもたらす。上述の実施形態と同様に、皮膚試料を得るこの方法は、安全かつ無痛である。さらに、以下に示されるように、正確なアッセイを実施するために充分なDNAまたはmtDNAを回収できる。
【0071】
(皮膚の状態の診断および監視、ならびに疾患を関連する遺伝的な危険因子の検出)
本明細書に記載のように、本発明のアッセイは、例えば、皮膚の状態もしくは遺伝的な危険性を評価するために単独にか、または皮膚疾患に対する遺伝的な素因および個体の特定の生活様式と関連する因子の同定の両方を評価するために、組み合わせて使用され得る。以下に説明するように、これらの要因の同定および監視は、UVRによる損傷、光老化、および皮膚疾患に対する有効な予防手段および処置手段の決定に重要である。
【0072】
皮膚の状態の診断および監視
スキンケア製品(例えば日焼け止めおよび日焼け止めクリーム(sunblock))を日常的に使用する多くの個体は、製品を不適切に使用している。すなわち、多くの個体は、十分な量の製品を塗布すること、または推奨される使用間隔の間にふたたび塗布することを怠り、UVRへのばくろの増加を導き得る誤った認識をもたらしている。さらに、最近まで、日光にさらされるときに個体によって日常的に塗布される日焼け止めおよび日焼け止めクリームには、UVBの変異生成作用を一般に保護するが、UVA照射の有害作用に関する薬剤が含まれていなかった。
【0073】
とりわけこれらの要因は、UVRによる損傷に関する初期の皮膚の状態および研究の過程を経た皮膚の状態の両方を決定するためのツールを利用可能なことが必要とされる。当該ツールによって、皮膚に対するUVRによるさらなる損傷を予防するために助言しられる予防手段および治療法の成果および適切さが監視される。一定の間隔(例えば2週間または1ヶ月間(または他の任意の適切な間隔))をおいて、非侵襲的に皮膚試料を回収して患者の皮膚におけるミトコンドリアDNAの欠失のレベルを測定することによって、UVRに起因する皮膚損傷の予防における処置の有効性を決定するために、処置の提案に対する比較に関する実時間の定量的な監視ツールが、保健医療専門家に提供される。この回収方法は、なんら副作用または不快感をともなわずに、定期的な試料採取を可能にし、必要に応じて家庭において実施され得る。驚くべきことに、皮膚試料を回収するための手法(例えば拭き取り)がmtDNAの変異の検出に極めて適している。これは、このような分析の実施には、拭き取りによって得られるDNAであればごく微量しか必要ではないからである。
【0074】
つぎに、実施例を参照すると、本発明の一実施形態において、上記方法が使用されて、UV照射に起因する損傷に関するバイオマーカーを定量化するために、皮膚の細胞を回収する(実施例1を参照)。より詳細には、本発明の方法が使用されて、ヒトミトコンドリアのゲノムにおける欠失(すなわち、上述の3895bpのmtDNAの欠失)について試験するための皮膚試料を回収する。実施例は、本発明の非侵襲的な方法を介して回収された皮膚細胞が、従来の皮膚の回収方法を介して得られるmtDNAに匹敵する結果を得るために充分なmtDNAを提供することを示している。
【0075】
当業者であれぱ、光老化および皮膚がんといった結果を生じないように、UVRを関連する皮膚損傷およびDNA損傷の予防のための処置計画および推奨される生活習慣の有効性を監視する方法が、ミトコンドリアDNAの標的を定量化するためにヒトの皮膚の上皮または真皮の層からDNA試料を上記のように非侵襲的に回収することによって、保健医療従事者に提供されることを理解するであろう。
【0076】
また、当業者であれば、日光に関する悪い習慣、または効果的ではない保護方法を特定する際に、保健医療提供者によって用いられるmtDNA分析の有用性を理解できるであろう。このような有用性は、実施例6において証明されている。本発明の一実施形態にしたがって、実施例6において、日焼け止めの使用の結果が、年齢および肌の色の近い2人の個体について分析されて、日光からの保護計画の有効性を評価した。
【0077】
光老化の判定
ミトコンドリアマーカーの同定と組み合わせられた低侵襲的な試料の回収手順を利用する、本発明の付加的な診断方法は、光老化の決定である。実施例の項に記載のように、この方法の目的は、個体の顔もしくは頭部の皮膚組織を低侵襲的な皮膚の回収手法を用いて試料を回収すること、およびUVRによる損傷(例えばmtDNAの欠失)と関連するミトコンドリアの標的の量を測定することによって、当該個体のUVRに対するばくろを評価することである。それから、この結果は、同じ方法によって得られた結果のデータベースに照して比較され、上記個体は検出されたmtDNAの欠失のレベルに基づいて年齢コホートに分類される。光老化度を割り当てるために、個体のmtDNAの分析結果がその個体の実年齢と比較されて、当該個体が、同年齢のグループの他の個体より、高い光損傷または低い光損傷を有するか否かを決定する。
【0078】
このように、ミトコンドリアDNAマーカーの分析用の皮膚組織の微小核を回収するために、低侵襲的な手法を利用することによって、保健医療提供者は、個体の光老化を同定し得、該個体の光老化が実年齢と一致するのか、または一致しないのかを決定し得る。したがって、光老化の決定によって、光老化、UVRによる損傷または皮膚疾患に有効である予防法および処置法をより適切に指示するための手段が、保健医療の専門家に提供される。
【0079】
疾患に対する遺伝的な素因の判定
光老化および皮膚がんの、個体の危険性を十分に評価するためには、患者の危険因子を理解し、伝えるために、できるだけ多くの情報を保健医療提供者に提供するが必須である。MC1Rの遺伝子型の同定を利用することによって、UVRに対するばくろに起因する個体のDNA損傷の受けやすさ、および皮膚がんになる危険性の高まりやすさに寄与するだけではなく、より積極的な監視および処置手段を潜在的に必要とする、非常に高い危険性を有する患者を特定するための有用なツールが提供される。
【0080】
したがって、本発明は、MC1Rの遺伝子型を同定するためのDNA試料を回収する非侵襲的な方法を提供する。本発明の一実施形態によれば、本発明の方法によって回収された細胞から抽出されたDNAが、増大した黒色腫の危険性と関連する1つ以上の対立遺伝子のバリアントを同定するために使用され得る。該方法が使用されて、これらのバリアントついて個体を評価し得、個体の皮膚の分類を付加的に決定し得る。したがって、MC1Rの遺伝子型の同定の結果によって、がんについての関連する危険性によって特徴付けられる特定の皮膚の分類に、個体を分けることが可能になる。
【0081】
組合せ分析
MC1Rの遺伝子型の同定およびmtDNA分析を組み合わせた使用は、遺伝的な素因および日光に関する生活習慣の最終的な結果の両方を考慮して、患者を監視し、患者に助言し、よりよく患者を処置するためのツールを、保健医療の専門家に提供する。複数のアッセイの組合せのこの使用によって、危険因子および結果を同時に評価する特有の能力を提供する。重要なことに、MC1Rの試験は、mtDNA試験のための非侵襲的な回収を用いた繰返し試験から一時的に除外され得、タンデムに(in tamdem)使用され得る。上述のように、これが可能であるのは、MC1R試験から得られる情報が個体の生涯を通して変化しないが、ミトコンドリアDNAの欠失の測定によって解明されるDNAの損傷のレベルは、UVRに対するばくろ傾向の結果として変化するためである。
【0082】
注目すべきことは、UVRに起因する皮膚の損傷が多因子性の過程であることである。したがって、MC1Rのバリアントを有している個体が、MC1Rのバリアントを有していない個体より多くの損傷をつねに被るとは仮定され得ないし、日常的な日焼け止めの使用を申告する個体が、日焼け止めの不使用を申告する個体に比べて、少ない損傷を必ずしも有していない場合がある。このように、MC1R遺伝子型同定をmtDNA分析に組み合わせることによって、保護においてより詳しい情報に基づいて、個体に推奨するために必要な特異な見識が、保健医療従事者に提供される。
【0083】
治療用薬剤およびスキンケア用品の評価
本発明の方法は、さらに医薬および美容薬の両方の目的について広範な皮膚のスクリーニングに使用され得る。本発明の方法は、遺伝子型の同定、および/または皮膚がん(非黒色腫皮膚がんおよび黒色腫の両方)と関連する種々のバイオマーカーの測定のために使用され得る。任意の時点において、任意の解剖学的な外部の部位に由来する、個体の皮膚におけるUV照射に起因するのDNA損傷のレベルを評価する能力は、皮膚の健康に関する特有の有益なスクリーニング試験のための基礎であって、既存および新規の治療剤、スキンケア製品およびスキンケア手順の安全性および有効性を評価するための基礎を提供する。さらに、対象の皮膚疾患または皮膚の状態の背景にある、特定の遺伝的な変化を同定することによって、特定の治療剤、スキンケア製品、または手順に患者が反応するか否か、または反応する程度を容易に決定し得る。
【0084】
キット
本発明の方法に使用される回収器具は、消費者用または医療用のキットの中に、所望の用途に応じて梱包されて、臨床的環境において使用され得る。該キットは、1つ以上の試料回収手段(例えば、滅菌の消毒綿、コットンチップスワップまたは針)だけでなく、遺伝子型の同定および/またはmtDNAの変異の同定に必要な他の材料を備え得る。
【0085】
上記キットは、診断用のアッセイの実施必要な試薬(例えば、緩衝液、塩および検出試薬など)を、必要に応じて備え得る。また、他の構成要素(例えば試験試料の単離および/または処理のための緩衝液および溶液)が、キットに備えられ得る。キットの構成要素の1つ以上が凍結乾燥され得、キットがさらに、凍結乾燥された構成要素の再構成に適した試薬をさらに備え得る。
【0086】
また、上記キットは、反応容器、混合容器および試験試料の調製を容易にする他の構成要素を必要に応じて含み得る。また、上記キットは、紙の形態またはコンピュータ−読み取り可能な形態(例えば、ディスク、CDまたはDVDなど)において提供され得る取扱説明書を、必要に応じて備え得る。
【0087】
本明細書に記載の本発明がさらに理解されるように、以下に実施例を説明する。これらの実施例が、本発明の例証となる実施形態について説明することを意図しており、本発明の範囲の限定をなんら意図してないことが理解されるであろう。
【0088】
〔実施例〕
(実施例1:3895bpのヒトmtDNAの欠失の分析)
本発明の方法を用いて、PCT特許出願第WO/06/111029号に示されている3895bpのmtDNAの欠失を分析した。mtDNAの回収および抽出は、以下のように実施した。
1.皮膚試料は、滅菌の消毒綿を用いて皮膚の部位をおよそ15回にわたって拭き取ることによって回収された。皮膚試料は、踵(n=41)、鼻(n=43)、腕の内側(n=20)、耳(n=5)、肩部(n=5)、殿部(n=5)および背中(n=5)から回収された。
2.mtDNAは、市販のキット(QiaAMP(登録商標) DNA Micro Kit、製品番号56304、Qiagen、Maryland USA)を用いて、製造業者のプロトコルにしたがって抽出された。
3.二本鎖DNAは、Qubit(登録商標)蛍光光度計(製品番号Q32857)、Invitrogen、California USA)に対して、HS−DNA Quant−it(登録商標) dsDNA HS Assay Kit (製品番号Q32851、Invitrogen、California USA)を用いて定量化された。
4.それから、3895bpの欠失レベルは、iQ Sybr Green Supermix(登録商標)(製品番号170−8882、Bio−Rad、California USA)、および以下のプライマーを用いて、リアルタイムPCR(rt−PCR)によって定量化した。
フォワード 5’−CTGCTAACCCCATACCCCGAAAATGTTG−3’(配列番号5);
リバース 5’−GAAGGATTATGGATGCGGTTGCTTGCGTGAG −3’(配列番号6)。
【0089】
本実施例において、増幅プライマー対は、3895bpの欠失の存在を示す標的の領域を増幅するために使用された。フォワードプライマーは、3895bp配列の欠失が生じた後のmtDNAのスプライシング領域(つまり、mtDNAゲノムの547と4443との間の位置におけるスプライシング)と重複する。したがって、正しいサイズの増幅産物を生じる重複するプライマーの伸長は、3895bpの部分が欠失している場合にのみ生じ得る。
【0090】
3895bpの欠失を定量化する工程において、RT−PCR反応は以下のよう調整された。
12.5ulのiQ Sybr Green Supermix(登録商標);
350nmolのフォワードプライマー(配列番号5);
350nmolのリバースプライマー(配列番号6);
5ulの鋳型(およそ0.5ngのdsDNA);
水(25ulになるまで);
サイクルに関するパラメータ:
ステップ1.95℃において3分間
ステップ2.95℃において30秒間
ステップ3.67.5℃において30秒間
ステップ4.72℃において30秒間
ステップ5.プレートの読み取り
ステップ2〜ステップ5を45サイクル
55〜110℃の融解曲線において3秒ごとに1℃単位の読み取り
10℃において10分間にわたって維持する。
【0091】
これらのアッセイの結果は、図1〜図3に示されており、日光/UV照射にまれにさらされる領域(つまり、踵および殿部)から取られた皮膚のスワブ(swab)と、たいていさらされている領域(つまり、鼻および耳)の皮膚のスワブの間にある明らかな差異を証明している。3895bpの欠失レベルは、UV照射から通常は保護されている領域(例えば、踵および殿部)と比較すると、より高いレベルのUV照射を受ける領域(例えば、鼻および肩部)において、大幅に上昇した。
【0092】
図1および図2に示されるように、3895bpの欠失のリアルタイムPCRのサイクル閾値(C)は、UV照射にまれにさらされる皮膚の部位(踵または殿部)と比べて、UV照射にたいていさらされている皮膚の部位(鼻または耳)、またはUV照射にときおりさらされる皮膚の部位(肩部または背中)において、欠失の発生頻度が高いことを示している。
【0093】
図3は、UV照射にたいていさらされている部位(例えば鼻または耳)から得られた皮膚細胞から回収されたmtDNAが、UV照射にまれにさらされる部位(例えば踵または腕の内側)から得られた皮膚細胞から回収されたmtDNAと比べると、3895bpの欠失マーカーの増大したレベルによって特徴付けられることを示している。
【0094】
また、これらの結果は、アッセイの実施にとって充分なmtDNAを得るために、本発明にしたがった皮膚試料の回収の有効性を示している。したがって、本発明の非侵襲的な皮膚の回収技術は、分析用のmtDNAを得ることに関して、侵襲的な方法(例えば、本発明と同一出願人の国際公開第WO/06/111029において使用される方法)と同様に有効である。
【0095】
(実施例2:皮膚の回収方法の比較)
5つの異なる非侵襲的皮膚の回収方法が、定量的リアルタイムPCRといった分子分析の実施に充分な量および質の核酸をもたらすことを(もしそうであれば)確認するために、試験された。試験された5つの方法は、:
・外科用テープを使ったテープリフト;
・ビオレ(登録商標)粘着性のストリップ;
・8%マンデル酸を含ませた滅菌の消毒綿;
・蒸留水を含ませた無菌スワブ;および
・ワックスストリップ
であった。
【0096】
70%のイソプロパノールを塗布して皮膚の表面を消毒した後に、テープリフト、ビオレストリップ、およびワックスストリップを、当該表面に使用した。しっかりと圧力を加え、それからテープまたはストリップを素早く外した。70%のイソプロパノールを用いて消毒した後に、スワブは、まず、8%のマンデル酸または蒸留水の滅菌溶液に浸され、それから所望の皮膚の部位をしっかりと擦りつけられた。
【0097】
3人の個体から皮膚細胞を回収した後に、回収媒体のを200ulのリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)に浸し、56℃において一晩にわたってインキュベートした。
【0098】
つぎに、QiagenのQiaAMP(商標) DNA Mini Kit(製品番号51304)を頬側のスワブのプロトコルにしたがって用いて、試料のすべてが核酸抽出に供された。精製した試料を、NanoDrop(商標) ND−1000 分光光度計を用いて定量化して、抽出手順が成功であったか否かを確認した。
【0099】
【表1】

【0100】
核酸の濃度および試料の純度の両方を考慮すると、水もしくはマンデル酸のいずれかを湿潤薬剤として使用したスワブの試料、またはワックス試料について、最も一貫性を有する結果が得られた。
【0101】
つぎに、すべての試料がPCRにかけられて、増幅の阻害物質の有無、または処理中に試料の顕著な分解が生じたか否かを確認した。試料は、以下の条件にしたがって増幅された。
【0102】
【表2】

【0103】
使用されたプライマーは、以下に示される配列:
12sプライマー配列、フォワード 5’−CGTTCCAGTGAGTTCACCCTC−3’(配列番号7)
12sプライマー配列、リバース R5’−CACTCTTTACGCCGGCTTCTATT−3’(配列番号8)
を有するミトコンドリアDNAプライマーであった。
【0104】
増幅反応は、以下のプロトコル:反復した。
1.2分間にわたって94℃
2.30秒間にわたって94℃
3.30秒間にわたって64℃
4.30秒間にわたって72℃
5.ステップ2〜4を39回にわたって繰り返す
6.4℃に維持
にしたがって、DNA Engine Tetrad(Bio−Rad)において繰り返された。
【0105】
それから、増幅産物は、2%のアガロースゲルにおいて電気泳動にかけられ、臭化エチジウムを用いて染色された。増幅の結果は図4に示されている。ここで、ゲルの上半分には以下のもの:
レーン1 500ngの、100bpのGeneRuler SM0323(Fermentas)
レーン2 個体1由来のビオレ
レーン3 個体1由来の、水を用いたスワブ
レーン4 個体1由来の、マンデル酸を用いたスワブ
レーン5 個体1由来の外科用テープ
レーン6 個体1由来のワックス
レーン7 個体2由来のビオレ
レーン8 個体2由来の、水を用いたスワブ
レーン9 個体2由来の、マンデル酸を用いたスワブ
レーン10 個体2由来の外科用テープ
レーン11 個体2由来のワックス
レーン12 空
レーン13 増幅の陰性対照
レーン14 増幅の陽性対照
レーン15〜18 空
を含んでいる。
そして、ゲルの下半分は以下のもの:
レーン1 個体3由来のビオレ
レーン2 個体3由来の水を用いたスワブ
レーン3 個体3由来のマンデル酸を用いたスワブ
レーン4 個体3由来の外科用テープ
レーン5 個体3由来のワックス
レーン6 500ngの、100bpのGeneRuler SM0323(Fermentas)
レーン7 ビオレの抽出物の陰性対照
レーン8 水を用いたスワブの抽出物の陰性対照
レーン9 マンデル酸を用いたスワブの抽出物の陰性対照
レーン10 外科用テープの抽出物の陰性対照
レーン11 ワックスの抽出物の陰性対照
レーン12 空
レーン13 増幅の陰性対照
レーン14 増幅の陽性対照
レーン15〜18 空
を含んでいる。
【0106】
(結果)
上記ビオレストリップを用いて回収された皮膚細胞から回収されたmtDNAからは、mtDNAが増幅されなかった。水およびマンデル酸の両方に関するスワブは、増幅したが、水のスワブはより明らかに増幅した。外科用テープは散発的に増幅した。ワックスは明らかに増幅したが、ゲルの下半分のレーン11の抽出物の陰性対照には狭雑物が混入しており、これはワックスに関連する非滅菌性または取り扱い困難さから生じたと思われる。
【0107】
すべての要因を考慮すると、本実施例は、滅菌のスワブの使用が、好ましい非侵襲的な皮膚試料の好ましい回収方法であることを示している。スワブは、乾燥状態であり得るか、または試料の回収もしくは緩衝化を容易にするための種々の液体を含ませられ得る。
【0108】
(実施例3:付加的な皮膚の回収方法の比較)
本実施例では、皮膚試料を非侵襲的に回収する付加的な5つの方法が、定量的リアルタイムPCRといった分子分析を実施に充分な量および質の核酸をもたらすことを(もしそうであれば)確認するために、試験された。
【0109】
以下の方法:
滅菌したメスを用いた皮膚を掻き取り
木製のスクレーパを用いた皮膚の掻き取り
粘着パッドの粘着面(CapSure(商標) Clean−up Pad、Arcturus)
LCM MacroCap(商標)(Arcturus)のフィルム・LCM MacroCap(商標)(Arcturus)の加熱フィルム
を用いて、皮膚の試料は、単一の個体から2回にわたって回収された。
【0110】
皮膚は、最初に70%のイソプロパノールを含む拭き取り繊維を用いて清潔にすることによって準備された。木製のスクレーパおよびメスを、皮膚の表面上をしっかりと移動させて、皮膚細胞をはがし、それから遠心分離チューブに入れられた。粘着パッドおよびフィルムは、皮膚を擦らずに皮膚にしっかりと押しつけられて、皮膚細胞を回収した。
【0111】
複数の回収物を、2つの異なる核酸抽出法を用いて処理した。第1のセットは、当該分野において周知であるプロテイナーゼK消化を用いて抽出され、第2のセットは、QiaAMP DNA Mini Kit(Qiagen、51304)を用いて抽出された。
【0112】
Qiagenのキットを用いて処理された試料は、それからNanoDrop ND−1000分光光度計を用いて定量化された。PK消化のセット中の試料は、この種の定量化を容易にするために十分に不要なものが除去されなかったままではなかった。
【0113】
【表3】

【0114】
試料は、実施例2に示したプロトコルにしたがって増幅された。
【0115】
それから、増幅産物は、2%のアガロースゲルにおいて電気泳動にかけれら、臭化エチジウムを用いて染色された。結果は図5に示されている。ここで、ゲルは以下のもの:
レーン1 500ngの、100bpのGeneRuler(SM0323)
レーン2 増幅の陰性対照
レーン3 正の増幅制御増幅の陽性対照
レーン4 PKバッファ、木を用いた掻き取り
レーン5 PKバッファ、メスを用いた掻き取り
レーン6 PKバッファ、CapSureパッド
レーン7 PKバッファ、MacroCap
レーン8 PKバッファ、加熱したMacroCap
レーン9 PKバッファ、木を用いて掻き取り、抽出の陰性対照
レーン10 PKバッファ、メスを用いて掻き取り、抽出の陰性対照
レーン11 PKバッファ、CapSure、抽出の陰性対照
レーン12 PKバッファ、MacroCap、抽出の陰性対照
レーン13 PKバッファ、加熱したMacroCap、抽出の陰性対照
レーン14 QiaAMP、メスを用いて掻き取り
レーン15 QiaAMP、CapSureパッド
レーン16 QiaAMP、木を用いて掻き取り
レーン17 QiaAMP、メスを用いて掻き取り、抽出の陰性対照
レーン18 QiaAMP、CapSureパッド、抽出の陰性対照
レーン19 QiaAMP、木を用いて掻き取り、抽出の陰性対照
レーン20 QiaAMP、試薬の陰性対照
を含んでいる。
【0116】
メスを用いた掻き取りおよびMacroCap(商標)は、PKバッファを用いて増幅された。一方、CapSure(商標)パッドは、QiaAMP(商標)キットを用いて良好に増幅された。皮膚の拭き取りと比較すると、本実施例において試験された方法を用いて、回収されたmtDNAの量、および得られた増幅産物の量は、有効であるとは認められなかった。
【0117】
(実施例4:針を使った皮膚試料回収)
針を用いて、9人の個体の5箇所の異なる部位から皮膚試料を回収した。当該部位は、眉、耳朶、うなじ、手、および踵を含む。
【0118】
上述のように針を用いるとき、試料回収者の手の親指と人差し指との間に皮膚を挟むか、またはテントのように摘み上げた。針を皮膚に通したが、ほとんどまたはまったく出血しなかった。皮膚試料は、リン酸緩衝生理食塩水を針のカラムに入れ、それからプランジャー針から滅菌チューブに押し出すことによって、針から抽出された。それから、QiaAMP(商標) DNA Mini Kit(商標)(Qiagen、製品番号51304)を用いて、皮膚組織を含有しているこの容量から、DNAを抽出した。
【0119】
それから、上記試料を、3895bpのmtDNA欠失を同定するために増幅した。本実施例の反応条件およびサイクルパラメータは、上述の実施例1の反応条件およびサイクルパラメータと同じであった。結果を表3に示されている。
【0120】
【表4】

【0121】
この回収方法を介して得られた物質が、リアルタイムPCRといった分子分析にとって充分であることは明らかである。具体的には、表3に示されているように、3895bpのmtDNA欠失を示す増幅産物がが検出され、定量化されている。したがって、針を用いた皮膚試料の回収方法は、この種のアッセイにおける使用に充分なDNAをもたらす。
【0122】
(実施例5:MC1Rのバリアント検出)
頬側の試料を、3人の対象から回収した。対象のそれぞれは、水道水または瓶詰めの水を用いて口を漱ぎ、水を吐き出した。消毒綿を保護包装から取り出して、その柄を掴んだ。消毒綿の柄を掴んだまま、綿製の先端を対象の口内に入れて、綿製の先端によって頬の内側を30秒間にわたって擦った。消毒綿を滅菌チューブに入れて、さらに処理をするために密閉した。
【0123】
特定の対立遺伝子を、ABIのa qPCR Taqman SNP遺伝子型同定アッセイを用いて検出して確認した。対象のそれぞれは、7つの対立遺伝子バリアントD84E、R142H、R151C、R160H、D294H、V60L、およびV92Mについて試験された。
【0124】
D84E、R142H、R151C、V60L、およびV92Mの遺伝子型を、ABIのアッセイ(https://products.appliedbiosystems.com/ab/en/US/direct/)を用いて、以下のように同定した:
V60L−アッセイ法#C751905410
D84E−アッセイ法#C751905520
V92M−アッセイ法#C203340520
R142H−アッセイ法#C2754163410
R151C−アッセイ法#C203340420。
【0125】
以下に記載の注文に応じて作製された以下のプライマーおよびプローブ:
フォワードプライマー MC1R−294:CGCCCTCATCATCTGCAATG 配列番号9;
リバースプライマー MC1R−294:GGCTGTGGAAGGCGTAGAT 配列番号10;
プローブ1 MC1R−294V1 VIC:CCATCATCGACCCCCT 配列番号11;
プローブ2 MC1R−294M1 FAM:CCATCATCCACCCCCT 配列番号12
が、D294Hの対立遺伝子のバリアントの検出に使用された。
【0126】
すべてのアッセイにのために使用され反応条件は、Custom Taqman(商標) SNP Genotyping Assays Protocolに概要が記述されている通りであった。
【0127】
R160H対立遺伝子バリアントは、Sac II消化を用いて試験された。プライマーは、MC1R遺伝子のDNAの標的領域を増幅するために使用された。それから、増幅産物は、Sac II消化された。ゲルのレーン1〜4(図12を参照)は、3人の試験対象および対照試料の結果を示している。これらの4つの試料のすべては、ホモ接合体の野性型であった。この対立遺伝子の部位に対してホモ接合体の野性型を示す増幅産物のサイズは、436bpである(Sac II消化後には327bpの産物を生じる)。ホモ接合体のバリアントにおいて、消化が起こらないので、PCRの増幅産物は436bpのサイズを維持している。
【0128】
試験結果は、図6〜図12に示す。各個体に対して2つの試験を実施し、対照試料も試験を2回実施した。対照試料の遺伝子型は、V60Lについてヘテロ接合体であって、V92Mについてホモ接合体バリアントであって、残りの対立遺伝子ついて野性型であった。試験された第1の個体は、タイプ3の皮膚を有すると判定された(MC1Rのバリアントが見つからなかった)。試験された第2の個体は、タイプ3の皮膚を有すると判定された(MC1Rのバリアントが見らからなかった)。試験された第3の個体は、タイプ2の皮膚を有すると判定された(バリアントV60LおよびR151Cについてホモ接合体、R142Hについてヘテロ接合体)。
【0129】
この回収方法を介して得られる物質が、MC1Rの遺伝子型の同定にとって充分であることは明らかである。具体的には、頬側を拭き取る回収方法を介して得られたDNA試料の回収物は、この種のアッセイにおける使用に充分なDNAをもたらす。
【0130】
(実施例6:日焼け止め使用手順の有効性の分析)
背景:
UVBは、UVへの過剰なばくろの発生を示す視覚的な手がかりである紅斑(日焼け)を引き起こす、UVRのスペクトルである。紅斑の頻度および重症度は、日光から保護する個体の習慣の成果の指標としてしばしば使用される。しかし、現在、UVAが皮膚損傷およびDNA損傷にの原因になることが知られているが、日焼け止めおよび日焼け止めクリームにUVAを遮断するための薬剤が含められたのは、最近のことである。したがって、日焼け止めを使っている個体は、紅斑を誘導するUVBの作用から自身を保護しているが、個体が他の方法を有するときよりも、UVAの変異誘発作用に対してはるかに長くばくろを受けているのであろう、という状況が考えられる。この状態の個体は、日焼け止めを使用していることを自己申告するだろうし、保健医療の提供者は、その患者がUVAから実際に保護されておらず、根本的な危険性が依然として非常に高くあり得る場合に、UVRによる損傷を防止するための対策が取られたと誤って評価するだろう。
【0131】
実施例1において実施されたように、消毒綿を用いて一定の間隔(例えば2週間または1ヶ月間)をおいて回収された表皮における、3895bpのミトコンドリアDNAの欠失のレベルを測定することによって、UVRに起因する皮膚損傷の予防における処置の有効性を決定するために、処置の提案に対する比較に関する実時間の定量的な監視ツールが、保健医療の提供者に提供される。
【0132】
この回収方法は、あらゆる副作用または不快感なしに、定期的な試料回収を可能にする。消毒綿は、極めて微量の核酸(およそ0.1ng)をもたらす。このような微量の核酸は核内DNAを標的とするアッセイには有用ではない。しかし、ミトコンドリアDNAの標的(例えば3895bpの欠失)は、はるかに多量に存在し(およそ1000倍以上)、収量が極めて少ないこのような回収方法に非常に適している。
【0133】
研究:
日光に関する望ましくない習慣、または有効ではない保護方法を特定における、mtDNAの欠失の分析の有用性が、年齢および肌の色の近い2人の個体の結果によって示される。患者202は日焼け止めを全く使用しなかった。一方で、患者225は、日焼け止めを効果的に使用した。2人の損傷のレベルはこの行動を反映しており、患者202は、患者225と比べて3895bpの欠失がおよそ10倍の量であり、UVRへのばくろによる高いレベルのDNA損傷を示している(CTの3の差は、標的の量における10倍の差に等しい)。これらの2人の個体の表現型は、UVRに関連する皮膚損傷に対する危険性が同等であるか、または等しいことを示しているが、3895bpの欠失を非侵襲的な消毒綿による回収と組み合わせると、行動の差(例えば日焼け止めの使用)におそらく起因する、患者202がより大きな危険性を有していることを実証できる。
【0134】
【表5】

【0135】
(実施例7:日光の保護計画の有効性を予測するための、MC1RのバリアントおよびmtDNAの欠失の分析)
日光の保護計画の有効性を評価する代理物としてUVRと関連する3895バイオマーカー用いたDNA損傷の監視、およびMC1Rのバリアントの状態の決定の監視を組み合わせた有用性を以下に示す。以下に示されているのは、同様に日焼け止めを使用している、年齢および肌の色の近い2人の患者が、おそらく異なるMC1R遺伝子型の副産物として、異なるレベルのDNA損傷を受けている場合である。患者300は、UVRの皮膚への損傷作用の受けやすさの増大に関連するバリアントを有していない。一方、患者303は、92位アミノ酸に1つのバリアントを有している。これらの患者は表現の上では非常に近く、フィッツパトリックの光反応性の分類の段階について同程度を記録する(分類3)が、増大した作用の受け易さが、MC1Rのバリアントを有している患者において、MC1Rのバリアントを有していない患者と比べて、DNAの損傷レベルが3倍になって反映されている(CTの1の差は、標的の量においておよそ3倍である)。
【0136】
【表6】

【0137】
上述のように、UVRに起因する皮膚損傷は、多因子性の過程であり、したがって、MC1Rのバリアントを有している個体が、MC1Rのバリアントを有していない個体と比べて、より多くの損傷をつねに被ると仮定され得ないし、日常的な日焼け止めの使用を申告する個体が、日焼け止めの不使用を申告する個体と比べて、少ない損傷を必ずしも有していない場合があある。これらの2つの試験を組み合わせることによって、保護において個体に、より詳しい情報に基づいて推奨するために必要な特異な見識が、保健医療提供者に提供される。
【0138】
以下の2つの表は、バリアントを有する個体とバリアントを有しない個体とが、DNA損傷の範囲の全体にわたっておおむね等しく現れているように、この点を示している。
【0139】
【表7】

【0140】
危険性の表現型に一般に関連しないバリアントのみを考慮する場合、つぎの2つの表に例外が見られる。60位および92位のアミノ酸におけるこれらのバリアントは、損傷程度が低い集団にはあまり現れていない。これは、MC1Rのバリアントの結果として生じる損傷の受けやすさの特定の組合せが、視覚的な手がかり(例えば、白い肌または赤髪など)がないことと関連していたことをおそらく示している。これは、増大した危険性が、これらのバリアントの保有者におけるより高いレベルの損傷を生じることを示している。
【0141】
【表8】

【0142】
(実施例8:光老化判定のための針による試料採取)
UVRに対するばくろを評価するためのミトコンドリアマーカーと組み合わせた低侵襲的な試料の回収手順を利用する、付加的なツールが提供される。当該ツールは、顔または頭(例えば、眉隆線の周辺または耳朶)の皮膚組織を小さな内径の針(28ゲージ)を用いて回収すること、微小核を溶液中に排出させること、核酸の抽出を実施すること、およびUVRによる損傷(例えば3895bpの欠失)と関連するミトコンドリア標的の量を測定することによって提供される(実施例1を参照)。それから、この結果は、複数の結果のデータベースと比較され、3895bpの欠失レベルに基づいて年齢コホートに分類される。データベースは、0歳から80歳までを5年の区間に分けた複数の個体において、3895bpの欠失レベルを測定すること、各間隔に対するクラスタまたは平均値を見出だすこと、異常値を除去すること、および3895bpの欠失レベルの範囲を年齢の範囲に関連付けることによって作製される。例えば、21.5〜23.5のCT値は、45歳〜65歳の年齢の範囲に関連し得る。それから、個体の試験の結果は、実年齢と比較されて、当該結果がそれらの年齢の範囲における他の個体より高い光損傷または低い光損傷を有するか否かを決定し、それらの結果に基づいて光老化度を試験の結果に割り当てる。
【0143】
このデータベースを作製するために、289の個体からその耳朶および眉隆線の両方において微小核を回収した。図13に示すように、DNA抽出および3895bpの欠失レベルの定量化につづいて、互いに有意差のある(p<0.01)3グループに年齢コホートを分類して、データベースを上述のようにして作製した。
【0144】
本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの種々の変形は、当業者にとって明らかであり、本発明の精神および範囲から逸脱しない。当業者にとって明らかであるような、このような変形のすべては、以下の特許請求の範囲のの範囲に包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の方法を用いて鼻および踵から回収された皮膚試料における、3895bpのmtDNA欠失レベルに関連するリアルタイムPCRのデータを示す。
【図2】本発明の方法を用いて体の様々な部位から回収された皮膚細胞における、3895bpのmtDNA欠失レベルに関連するリアルタイムPCRのデータを示す。
【図3】本発明の方法を用いて体の様々な部位から回収された皮膚細胞における、3895bpのmtDNA欠失レベルに関連するリアルタイムPCRのデータを示す。
【図4】種々の非侵襲的な皮膚の回収方法によって回収された試料に存在する増幅産物の存在を示すゲルを示す。
【図5】種々の非侵襲的な皮膚の回収方法によって回収された試料に存在する増幅産物の存在を示すゲルを示す。
【図6】対立遺伝子バリアントについて試験された対象の、遺伝子型の同定結果を示す。
【図7】対立遺伝子バリアントについて試験された対象の、遺伝子型の同定結果を示す。
【図8】対立遺伝子バリアントについて試験された対象の、遺伝子型の同定結果を示す。
【図9】対立遺伝子バリアントについて試験された対象の、遺伝子型の同定結果を示す。
【図10】対立遺伝子バリアントについて試験された対象の、遺伝子型の同定結果を示す。
【図11】対立遺伝子バリアントについて試験された対象の、遺伝子型の同定結果を示す。
【図12】対立遺伝子バリアントR160Hについて試験するアッセイの結果を与えるゲルを示す。
【図13】年齢コホートに分類された集団の3895bpのmtDNA欠失レベルを示すグラフを示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UVRによる損傷に対する対象の皮膚の状態および遺伝的な素因を決定する診断の方法であって、
(a)対象から組織試料を回収する工程;
(b)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、第1の皮膚試料をアッセイする工程;
(c)メラノコルチン1受容体(MC1R)の、1つ以上のバリアントに関して、第2の皮膚試料をアッセイする工程;および
(d)皮膚試料におけるmtDNAの異常およびMC1Rのバリアントの検出に基づいて、UVRによる損傷に対する上記対象の皮膚の状態および遺伝的な素因を判定する工程を包含している、方法。
【請求項2】
上記異常が欠失、置換および挿入からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記異常がmtDNAの欠失である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記欠失が、mtDNAゲノムの546〜4444の核酸の間にある3895bpのmtDNAの欠失である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記MC1Rの、1つ以上のバリアントが、D84E、R142H、R151C、R160H、D294H、V60L、およびV92Mからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも上記第1の組織試料が、非浸襲的または低侵襲的な皮膚の回収手法を用いて得られる皮膚試料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記皮膚試料が、消毒綿、コットンチップスワップ、皮膚組織の微小核を回収するための小さな内径の針、またはこれらの組合せを用いて回収される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記皮膚が、上記対象の真皮または上皮の層から回収される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記皮膚試料が、踵、鼻、内腕、耳、口、頭皮、胸部、肩部、殿部、背中、顔面、首の項部、手、頭部またはこれらの組合せから得られている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
光老化、UVRによる損傷、または皮膚疾患を予測するための、請求項1に記載の方法の、使用。
【請求項11】
光老化、UVRによる損傷または皮膚がんの予防または寛解のための予防処置または治療処置を決定するための、請求項1に記載の方法の、使用。
【請求項12】
光老化、UVRによる損傷、または皮膚疾患を監視する非侵襲的な方法であって、
(a)非侵襲的な皮膚試料の回収手法を用いて、対象から皮膚試料を回収する工程;
(b)所定の期間にわたって一定の間隔をおいて、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して上記皮膚試料をアッセイする工程;
(c)上記所定の期間にわたって、同定されたmtDNAの異常における任意の変化を決定する工程を包含している、方法。
【請求項13】
上記非侵襲的な皮膚の回収手法が、超微量のDNAをもたらす、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記超微量のDNAが約0.1ngの核酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
光老化、UVRによる損傷または皮膚疾患に関する予防または治療の処置に対する対象の反応を監視する方法であって、
(a)対象から第1の皮膚試料を回収する工程;
(b)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、第1の皮膚試料をアッセイする工程;
(c)メラノコルチン1受容体(MC1R)の、1つ以上のバリアントに関して、第1の皮膚試料をアッセイする工程;
(d)第1の皮膚試料におけるmtDNAの異常およびMC1Rのバリアントの検出に基づいて、UVRによる損傷に対する、上記対象の皮膚の状態および遺伝的な素因を決定する工程;
(e)光老化、UVRによる損傷または皮膚疾患に関する予防処置または治療処置を施す工程;
(f)対象から第2の皮膚試料を回収する工程;
(g)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、上記第2の皮膚試料をアッセイする工程;
(h)所定の期間にわたって一定の間隔をおいて、工程(f)および(g)を繰り返す工程;および
(i)上記第1の皮膚試料と、mtDNAの異常における変化を検出するために一定の間隔をおいて取られた皮膚試料との間における、mtDNAの異常のレベルを比較して、上記処置の有効性を監視する工程;ならびに
(j)必要に応じて、上記対象の遺伝的な素因、および検出されたmtDNA異常における変化に基づいて、上記処置を調節する工程を包含している、方法。
【請求項16】
上記第1の皮膚試料、第2の皮膚試料、および一定の間隔をおいて取られた皮膚試料が、非浸襲的または低侵襲的な回収手法を用いて得られる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記第2の皮膚試料および一定の間隔をおいて取られた試料を回収するために使用された上記非浸襲的または低侵襲的な回収手法が、超微量のDNAをもたらす、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記超微量のDNAが約0.1ngの核酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記一定の間隔が2週間または1ヶ月間である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
光老化、UVRによる損傷、または皮膚疾患の処置に有効な治療剤または美容剤をスクリーニングする方法であって、
(a)対象から第1の皮膚試料を回収する工程;
(b)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、上記第1の皮膚試料をアッセイする工程;
(c)上記治療剤または美容剤を用いて上記対象を処置する工程;
(d)所定の期間の後に対象から第2の皮膚試料を回収する工程;
(e)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常に関して、上記第2の皮膚試料をアッセイする工程;ならびに
(f)上記第1の皮膚試料と第2の皮膚試料との間における、対照に対するmtDNAの異常のレベルを比較して、上記治療剤または美容剤の有効性を決定する工程を包含している、方法。
【請求項21】
上記第1の皮膚試料および第2の皮膚試料が、非浸襲的または低侵襲的な回収手法を用いて得られる、請求項20に記載のスクリーニング方法。
【請求項22】
対象の光損傷のレベルを決定する方法であって、
(a)対象から皮膚試料を回収する工程;
(b)ミトコンドリアDNA(mtDNA)の欠失に関して、上記皮膚試料をアッセイする工程;
(c)上記皮膚試料のmtDNAの欠失のレベルを、年齢コホートにしたがって分類されるmtDNAの欠失の集団に対して比較し、上記対象に光老化度を割り当てる工程;および
(d)対象の実年齢を、割り当てられた光老化度に対して比較することによって、上記対象の光損傷のレベルを決定する工程を包含している、方法。
【請求項23】
上記ミトコンドリアDNAの欠失が、3895bpの欠失である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
UVRによる損傷に対する、対象の皮膚の状態および遺伝的な素因を決定するための診断用のキットであって、
(a)組織試料を回収するための器具;ならびに
(b)MC1Rの遺伝子型の同定およびmtDNA異常の検出の実施に適したプライマー、プローブ、および試薬を備えている、診断用のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−500004(P2011−500004A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528251(P2010−528251)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001801
【国際公開番号】WO2009/046535
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510100508)ミトミクス インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】GENESIS GENOMICS INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 1000,290 Munro Street,Thunder Bay,Ontario P7A 7T1
【Fターム(参考)】