説明

皮革様シート状物およびその製造方法

【課題】着用時や装用時の保温性に優れ、かつ環境に配慮した皮革様シート状物を、製造工程に有機溶剤を使用しない環境に配慮した工程で効率よく製造する方法の提供。
【解決手段】平均単繊維直径が0.3μm以上7μm以下の極細繊維からなる不織布と、その内部に水分散型ポリウレタンを含有するシート状物であって、前記シート状物が、基材層と立毛層とを有し、それぞれの層を構成する極細繊維の繊維密度が、次の関係式を満たす皮革様シート状物。2>立毛層繊維密度/基材層繊維密度>0.5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用時や装用時の保温性に優れ、かつ環境に配慮した皮革様シート状物とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として極細繊維と高分子弾性体からなる皮革様シート状物は、天然皮革にない優れた特徴を有しており、衣料、椅子張りおよび自動車内装材用途等にその使用が年々広がってきた。特に衣料用途では、冬物衣料として使用されることが多いため、着用時や装用時の保温性に優れる皮革様シート状物が求められている。
【0003】
一般に、保温性に係わる機能や性能が優れている繊維製品は、保温のための空気層の確保やエネルギーの出入りの制御が必要である。このような課題に対して、例えば、繊維として中空繊維を適用することが提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、中空繊維は、その形状を保持することができれば軽量で保温感は得られるが、一般に外部からの物理的な力によって容易に潰されてしまうことから、中空構造の維持が難しく、安定した保温感を得にくいという課題がある。
【0004】
また別に、繊維布帛の少なくとも片面に、高吸放湿吸湿発熱性有機微粒子を含有させ発熱させる手法が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、空気が乾燥した状態では発熱できないことから、安定した保温性能を得ることが難しいという課題がある。
【0005】
一方、皮革様シート状物を製造するにあたっては、不織布に高分子弾性体としてポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸させた後、得られた不織布をポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤溶液中に浸漬して、ポリウレタンを湿式凝固させる方法が一般的に採用されている。しかしながら、有機溶剤は、人体や環境への有害性が高いことから、近年、皮革様シート状物の製造に際しては、従来の有機溶剤タイプのポリウレタンに代えて、水中にポリウレタンを分散させたポリウレタン水分散液を用いる方法が検討されてきている。
【0006】
しかしながら、製造工程に有機溶剤を使用しない環境に配慮した皮革様シート状物の検討の歴史は浅く、機能の高度化の技術は十分確立されていない。特に、着用時や装用時の保温性を付与する有用な実用性のある技術については、まだ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−018907号公報
【特許文献2】特開2000−199180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の背景に鑑み、着用時や装用時の保温性に優れ、かつ環境に配慮した皮革様シート状物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、ポリウレタン水分散液を用いることで、製造工程に有機溶剤を使用しない環境に配慮した工程で上記特性の皮革様シート状物を効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために本発明者らは鋭意研究を行い、その結果、着用時や装用時の保温性に優れ、かつ環境に配慮した皮革様シート状物を得ることが可能であることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の皮革様シート状物は、平均単繊維直径が0.3μm以上7μm以下の極細繊維からなる不織布と、その内部に水分散型ポリウレタンを含有するシート状物であって、前記シート状物が、基材層と立毛層とを有し、それぞれの層を構成する極細繊維の繊維密度が、次の関係式を満たすことを特徴とする皮革様シート状物である。
【0012】
2 > 立毛層繊維密度/基材層繊維密度 > 0.5
本発明の皮革様シート状物の好ましい態様によれば、前記の極細繊維は、固有粘度に差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維、および/または固有粘度に差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が偏心した芯鞘構造を形成している偏心芯鞘複合繊維である。
【0013】
本発明の皮革様シート状物の好ましい態様によれば、前記の立毛層の立毛が捲縮を有することである。
【0014】
また、本発明の皮革様シート状物の製造方法は、極細繊維発現型繊維から得られる、固有粘度に差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた構造および/または偏心した芯鞘型構造の極細繊維からなる基材層と立毛層を有する不織布と、その内部に水分散型ポリウレタンを含有するシート状物の製造方法であって、下記の(1)と(2)の工程をこの順番で含むことを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
(1)極細繊維発現型繊維からなる不織布から極細繊維を発現させる工程、
(2)極細繊維からなる不織布に110℃以上150℃以下の温度で熱処理を施すことにより、立毛層の極細繊維に捲縮を発現させる工程。
【0015】
本発明の皮革様シート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の極細繊維発現型繊維は海島型複合繊維である。
【0016】
本発明の皮革様シート状物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の不織布は、短繊維からなる不織布である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、着用時や装用時の保温性に優れ、かつポリウレタン水分散液を用いることにより、製造工程に有機溶剤を使用しない環境に配慮した皮革様シート状物が得られる。
【0018】
ここで、保温性とは、人間が衣料を着用時に感じる総合的な暖かさを示す指標であり、後述するように、サンプルの置かれた環境が、温度25℃、湿度40%RHから、温度27℃、湿度80%RHに変更した時温度差を、調温湿効果の値として表される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の皮革様シート状物は、平均単繊維直径が0.3μm以上7μm以下の極細繊維からなる不織布と、その内部に水分散型ポリウレタンを含有する皮革様シート状物である。
【0020】
本発明における皮革様シート状物は、天然皮革のようなスエードやヌバックのような立毛調の外観において、滑らかなタッチと優れたライティングエフェクトを有するものである。
【0021】
本発明において、皮革様シート状物で用いられる不織布を構成する極細繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2 ,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステル系重合体、6−ナイロンや66−ナイロンなどのポリアミド系重合体、アクリル系重合体、ポリエチレン系重合体およびポリプロピレン系重合体などのポリマーからなる各種合成繊維を用いることができ、またそれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、強度、寸法安定性、耐光性および染色性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体からなるポリエステル繊維が好ましく用いられ、特にポリエチレンテレフタレート系重合体からなる極細繊維が好適である。
【0022】
本発明の皮革様シート状物を構成する極細繊維の平均単繊維直径は、0.3μm以上7μm以下である。極細繊維の平均単繊維直径が7μm以下、より好ましくは5.5μm以下、さらに好ましくは4.5μm以下とすることにより、柔軟性や立毛品位に優れたシート状物が得られる。一方、極細繊維の平均単繊維直径が0.3μm以上、より好ましくは0.65μm以上、さらに好ましくは1μm以上とすることにより、染色後の発色性に優れたシート状物が得られ、起毛処理時の繊維の分散性やさばけ易さにも優れる。
【0023】
本発明の皮革様シート状物を構成する極細繊維は、固有粘度差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維および/または固有粘度差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が偏心した芯鞘構造を形成している偏心芯鞘複合繊維からなることが好ましい。固有粘度が異なるポリエチレンテレフタレート系重合体を繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わせた構造および/または偏心した芯鞘構造を形成するよう紡糸、延伸して得られる極細繊維は、延伸時の高粘度側への応力集中により、2成分間で異なった内部歪みが生じる。この内部歪みのため、シート化した後に後述するように110℃以上の温度条件下で熱処理を施すことにより、高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて捲縮が発現する。この捲縮により、シート状物表面の立毛層部分の繊維密度が高くなり、シート状物に高い保温性が得られる。
【0024】
サイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維や偏心芯鞘複合繊維は、上述のように2種類のポリエチレンテレフタレート系重合体からなることが好ましく、当該2種類のポリエチレンテレフタレート系重合体の固有粘度差は0.2以上1.0以下であることが好ましい。固有粘度差を0.2以上大きくすると、捲縮特性の優れた繊維が得られる。一方、固有粘度差が1.0を超えると、得られた繊維の捲縮特性は良好であるものの、紡糸された繊維が高粘度成分側に過度に曲がるため、長時間にわたって安定して製糸することができないことがある。
【0025】
本発明におけるポリエチレンテレフタレート系重合体の固有粘度は、高粘度成分においては0.50以上1.50以下の範囲であることが好ましい。固有粘度を0.50以上とすることにより、十分な強度と伸度を兼ね備えた繊維を製造することが可能となる。また、固有粘度の上限は溶融押出し等の成形の容易さの点や、製造コストや工程途中の熱や剪断力によって起きる分子鎖切断による分子量低下の点から1.50以下が好ましい。一方、低粘度成分は、固有粘度を0.30以上1.00以下にすることにより安定した製糸性が得られる。
【0026】
また、両成分の複合比率は、質量比で、高粘度成分:低粘度成分=75:25〜35:65(質量%)の範囲が好ましく、より好ましくは65:35〜45:55(質量%)の範囲である。この範囲内であれば、得ようとするシート状物の保温性の目的に合わせて複合比を適宜設定可能であり、例えば、ソフト感に優れたシート状物を得るには、高粘度成分と低粘度成分の複合比差を大きく設定すれば良く、タフネスを得るには高粘度成分の複合比を低粘度成分対比、高く設定すると良い。
【0027】
ポリエチレンテレフタレート系重合体の固有粘度差は、重合の時間、温度、触媒量や共重合成分を適宜調整することにより、所望の粘度にすることができる。
【0028】
本発明でいう固有粘度は、後述するように、オルソクロロフェノール中に試料を溶かして25℃の温度で測定した値である。
【0029】
また、本発明でいうポリエチレンテレフタレート系重合体とは、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコールまたはその誘導体とが共重合してなる構造を主成分としたものであり、ここでいう主成分とは全体の重量に対して50重量%より多いことをいう。ポリエチレンテレフタレート系重合体は、他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物としては、例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸および5−イソフタル酸ナトリウムなどのジカルボン酸類や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、および着色顔料などを添加してもよい。
【0030】
本発明の皮革様シート状物を構成する極細繊維は、保温性に優れるシート状物の製造において最も適当な特性を有していることから、上記のポリエチレンテレフタレート系重合体からなることが好ましい。例えば、ポリトリメチレンテレフタレートを用いた極細繊維を使用してシート状物を作製する場合、ポリトリメチレンテレフタレートは熱に敏感な性質をもっているため、熱により収縮しやすい。そのため、このシート状物を適用して加工した場合、加工中にかかる熱により、意図しない工程で捲縮が発現することとなり、結果保温性に乏しいシート状物になりやすい。一方、ポリエチレンテレフタレートを用いた複合繊維は、比較的高い温度で捲縮が発現するため、意図しない工程での捲縮発現を防ぐことができ、保温性に優れたシート状物を得ることができる。また、ポリエチレンテレフタレート系重合体からなる複合繊維は反発感があるため、シート状物にした場合、適度な反発感があり、良好な手持ち感が得られる。
【0031】
本発明の皮革様シート状物を構成する極細繊維の単繊維繊度の均一性に関しては、繊維束内の繊度CVが10%以下であることが好ましい。ここで繊度CVとは、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)表示したものであり、値が小さいほど均一であることを示すものである。繊度CVを10%以下と繊度CVを小さくすることにより、本発明の皮革様シート状物の表面の立毛の外観は優美となり、また染色も均質で良好なものとすることができる。極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形でない場合の繊度CVは、平均単繊維繊度の算出と同様の方法による。
【0032】
本発明で用いられる極細繊維の断面形状は、丸断面でよいが、楕円、扁平および三角などの多角形、扇形および十字型などの異形断面のものを採用してもよい。不織布を構成する極細繊維の断面形状が異形断面の場合は、異形断面の外周円直径を繊維径として算出する。
【0033】
本発明の皮革様シート状物で用いられる不織布は、短繊維からなる不織布と長繊維からなる不織布のいずれでもよいが、風合いや品位を重視する場合には、短繊維からなる不織布が好ましく用いられる。
【0034】
本発明で用いられる短繊維からなる不織布における短繊維の繊維長は、25〜90mmであることが好ましい。繊維長を90mm以下とすることにより、風合いや品位に優れた皮革様シート状物が得られる。また、繊維長を25mm以上とすることにより、絡合による耐摩耗性に優れた皮革様シート状物が得られる。また、短繊維不織布における短繊維には、捲縮加工を施すことが、良好な絡合状態を得られることから好ましい態様である。短繊維の繊維長は、より好ましくは35〜80mmである。
【0035】
本発明において用いられる不織布の見掛け密度は、0.10〜0.60g/cmであることが好ましい。不織布の見掛け密度が上記範囲内であると、不織布構造が均一になり、面積方向において品質のバラツキが極めて大きくなることを避けることができ、また得られる皮革様シート状物の物性や風合いは良好となる。前記の不織布には、繊維の緻密感向上のために、温水やスチーム処理によって収縮処理を施してもよい。この場合も、均一で緻密な繊維絡合構造を得るためには、見掛け密度が上記の範囲であることが好ましい。不織布の見掛け密度は、より好ましくは0.15〜0.55g/cmである。
【0036】
また、本発明で用いられる不織布は、異なる素材の極細繊維が混合されて構成されていてもよく、また、強度を向上させるなどの目的で、不織布の内部に織物や編物を挿入したり、不織布に積層してもよい。織物や編物を構成する繊維の平均単繊維直径は、不織布を構成する極細繊維との絡合性の理由から、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0037】
本発明で用いられる織編物を構成する繊維糸条の種類としては、フィラメントヤーン、紡績糸、革新紡績糸およびフィラメントヤーンと紡績糸の混合複合糸などが挙げられる。紡績糸は、その構造上表面に毛羽が多数存在し不織布と織物を絡合する際、その毛羽が脱落し表面に露出すると欠点となるため、フィラメントヤーンを用いることが好ましい。フィラメントヤーンには、大別すると単繊維1本で構成されたモノフィラメントと複数本で構成されたマルチフィラメントがあるが、本発明で用いられる織編物では、マルチフィラメントを用いることが好ましい。モノフィラメントでは、繊維の剛性が高くなりすぎるため皮革様シート状物の風合いを損ねることがある。
【0038】
織編物を構成する繊維糸条の総繊度は、剛性および目付等の理由から、好ましくは50dtex〜150dtexである。
【0039】
前記織編物の目付は、20〜200g/mであることが好ましく、更に好ましくは30〜150g/mである。織編物の目付が20g/m未満になると織編物としての形態が極めてルーズになり、織編物を不織布と不織布の中層部にはさみ込んだとき、あるいは織編物を不織布の表面に重ねる際にシワが発生し、均一に広げることが困難になる傾向がある。また、織編物の目付が200g/mを超えると織編物の組織が密になり、織編物に対する不織布単繊維の貫通が不十分で不織布と織編物との絡合が進まず不離一体化した構造物を作るのが概して困難になる傾向がある。
【0040】
本発明において用いられる織物は、基本組織として平組織が好ましく用いられる。織物組織としてツイルやサテンを用いても良いが、組織に異方性があるため斜め方向の外力に対して挙動が異なること、また取り扱い上織物密度が低いと目ずれが発生しやすく、したがって平組織が好ましく用いられる。
【0041】
また、編物としては、経編やトリコット編で代表される緯編、レース編およびそれらの編み方を基本とした各種の編物が挙げられる。
【0042】
本発明においては、このような不織布に弾性樹脂バインダーとして水分散型ポリウレタン液を含浸して、水分散型ポリウレタンが不織布の内部空間に存在する構成としたものである。
【0043】
本発明に使用するポリウレタンは、有機溶剤系ポリウレタンではなく、水分散型ポリウレタンを使用することが重要である。水分散型ポリウレタン液は、有機溶剤を用いなくてもよい点で環境保全上好ましく、本発明は水分散型ポリウレタン液を用いて保温性に優れる皮革様シート状物を提供することを課題としている。
【0044】
本発明で用いられる水分散型ポリウレタンは、通常、ポリウレタンを水に分散した状態で取り扱われ、ポリウレタンのメーカーからもこの状態で入手することができる。これは、一旦乾燥すると再度水に分散させることが不可能となるためである。
【0045】
水分散型ポリウレタンは、ポリマージオール、ポリイソシアネート、鎖伸長剤および内部架橋剤を適宜反応させた構造を有するものを用いることができる。
【0046】
上記のポリマージオールの例としては、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールおよびポリカーボネートジオール等が挙げられる。ポリエステルジオールとしては、例えば、ポリヘキサメチレンアジペートやポリネオペンチルアジペート等のポリアジピン酸およびポリカプロラクトン等を用いることができる。また、ポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリ(メチルテトラメチレングリコール)等を挙げることができ、これらを単独あるいは混合して使用することができる。
【0047】
また、ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ヘキサンジオールやネオペンチルグリコール等のグリコールとアルキルカーボネートあるいはホスゲン等を反応させて得られるポリアルキレンカーボネートポリオールを例示することができる。
【0048】
ポリマージオールは、単独あるいは混合して用いることができるし、重合時に原料を混合することにより得られる共重合ポリマージオールも好適に用いることができる。
【0049】
上記のポリマージオールの分子量は、数平均分子量で500〜10000が好ましく、より好ましくは700〜5000であり、さらに好ましくは1000〜3000である。
【0050】
また、上記のポリマージオール1分子あたりの水酸基の数を2以上にすることにより、水分散型ポリウレタンに架橋構造を導入することもできる。
【0051】
また、必要に応じて、比較的低分子のポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピレングリコールおよびポリオキシエチレンテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールおよびソルビトール等の低分子量多価アルコール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンなどの低分子量アルキレンポリアミンにエチレンオキサイドを単独であるいはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド、およびブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの1種または2種以上を付加した親水成分をポリマージオールと混合して用いることができる。
【0052】
また、水分散型ポリウレタンを重合する際に用いられるジイソシアネートとしては、従来から知られているものを使用することができ、例として、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジククロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびノルボランジイソシアネートを挙げることができ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。
【0053】
また、水分散型ポリウレタンを重合する際に用いられる鎖伸長剤としては、イソシアネート基と反応しうる活性水素を2個以上含む低分子化合物を使用することができ、例として、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、およびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミンおよび4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等のジアミンが挙げられる。
【0054】
水分散型ポリウレタン液には、必要に応じて、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、シリコーンおよびポリウレタン等の水分散液、染料やカーボンブラック等の顔料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤、シリコーンオイル等の消泡剤、セルロース等の充填剤、およびポリウレタン凝固調整剤等を添加して用いてもよい。
【0055】
水分散型ポリウレタン液は、感熱ゲル化性を有することが好ましい。感熱ゲル化性とは、加熱したときに流動性を失いゲル状になる性質をいう。水分散型ポリウレタン液を含浸した後、加熱してゲル化させ、該水分散型ポリウレタン液の流動性を失わせることにより、マイグレーションを抑制することができる。これにより、水分散型ポリウレタンが不織布内に偏在することを抑制し、良好な表面品位や柔軟な風合いを得ることができる。感熱ゲル化性を有することにより、不織布に含浸し加熱乾燥する際のポリウレタンのマイグレーション現象を抑制することができる。
【0056】
水分散型ポリウレタン液の感熱ゲル化温度は、50〜100℃であることが好ましい。感熱ゲル化温度を100℃以下とすることにより、マイグレーション現象を効率良く抑制することができる。また、感熱ゲル化温度を50℃以上とすることにより、後述するように、水分散型ポリウレタン液を不織布に含浸させる時点で直ちに感熱ゲル化が開始してしまうことを防ぐことができ、またさらに安定した貯蔵性を得ることができる。
【0057】
水分散型ポリウレタン液は、単独で感熱ゲル化性を有することが好ましいが、水分散型ポリウレタン液に、感熱ゲル化性を付与するまたは感熱ゲル化温度を低下させる目的で、塩化カルシウム、硫酸ナトリウムおよび硫酸カリウム等の無機塩を添加してもよい。
【0058】
水分散型ポリウレタン液の濃度(水分散型ポリウレタン液に対する水分散型ポリウレタンの含有量)は、水分散型ポリウレタン液の貯蔵安定性と、不織布へ含浸し乾燥する際のマイグレーション現象抑制の観点から、15〜45質量%が好ましい。
【0059】
シート状物における繊維に対する水分散型ポリウレタンの含有量(付着量)は、20〜200質量%であることが好ましい。付着量を20質量%以上、より好ましくは30質量%以上とすることにより、皮革様シート状物の強度を得て、かつ繊維の脱落を防ぐことができる。また、付着量を200質量%以下、より好ましくは180質量%以下とすることにより、皮革様シート状物の風合いが必要以上に硬くなることを防ぐことができる。
【0060】
本発明において、水分散型ポリウレタンは単独で用いても複数種を併用してもよく、また、他のポリマー等を併用してもよい。他のポリマーとしては、例えば、アクリル系やシリコーン系等の水分散性や水溶性のポリマーが挙げられる。
【0061】
本発明の皮革様シート状物は、基材層と立毛層とを有し、それぞれの層を構成する繊維密度が、次の関係式を満たすことを特徴とする。
【0062】
2 > 立毛層繊維密度/基材層繊維密度 > 0.5
上記関係式を満たす皮革様シート状物は、固有粘度差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維および/または固有粘度差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が偏心した芯鞘構造を形成している偏心芯鞘複合繊維からなる極細繊維からなる不織布に、後述するように110℃以上150℃以下の温度の熱処理を施すことにより、極細繊維に捲縮を発現させ、立毛層繊維密度を向上させることで得られる。110℃よりも低い熱処理温度では、極細繊維に捲縮が発現せず、立毛層繊維密度が向上しないため、上記関係式を満たさず、保温性に優れる皮革様シート状物が得られにくくなる。
【0063】
また、熱処理温度が高いほど極細繊維の捲縮発現が進みやすく、立毛層繊維密度は向上するが、立毛層繊維密度/基材層繊維密度の値が2を越えると、立毛層を構成する極細繊維の分散性が悪くなり、立毛調の外観において、スエードやヌバックのような滑らかなタッチが得られなくなる。熱処理温度を150℃以下とすることで、立毛層を構成する極細繊維の分散性の悪化を防ぐことができる。
【0064】
本発明における立毛層とは、シート状物の立毛している繊維がなす層であり、基材層とはシート状物の立毛層以外の層を指す。本発明では、基材層と立毛層を構成する繊維密度が、上記の関係式を満たすことが重要であり、この条件を満たすことにより、立毛部分に空気層を確保・維持することで、着用時や装用時に保温性に優れた皮革様シート状物を得ることができる。
【0065】
本発明の皮革様シート状物は、例えば、染料、顔料、柔軟剤、風合い調整剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、撥水剤、耐光剤、および耐候剤等の機能性薬剤を含んでいてもよい。
【0066】
次に、本発明の皮革様シート状物の製造方法について説明する。
【0067】
本発明の皮革様シート状物に用いられる不織布を構成する極細繊維を得る手段として、極細繊維発現型繊維を用いることができる。極細繊維発現型繊維をあらかじめ絡合し不織布とした後で、繊維の極細化を行うことによって、極細繊維が絡合してなる不織布を得ることができる。
【0068】
極細繊維発現型繊維としては、アルカリ溶解性の異なる熱可塑性高分子成分を海成分および島成分とし、海成分を溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維を採用することができる。海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができ、かつ1本あたりの複合繊維から特に繊維径の小さな極細繊維を効率良く発現させることができ、シート状物に柔らかな風合いや嵩高性などを付与することができるので好ましく用いられる。
【0069】
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維が好ましく用いられる。
【0070】
また、本発明で用いられる海島型複合繊維における海成分と島成分の質量割合は、海成分:島成分=5:95〜80:20の範囲であることが好ましい。海成分の質量割合が5質量%を下回る場合、島成分の極細化が不十分となる。また、海成分の質量割合が80質量%を超える場合、溶出成分の割合が多いため生産性が低くなる。海成分と島成分の質量割合は、より好ましくは、海成分:島成分=10:90〜60:40の範囲である。
【0071】
本発明において、海島型複合繊維で代表される極細繊維発現型繊維を延伸する場合は、未延伸糸を一旦巻取り後、別途延伸を行うか、もしくは未延伸糸を引取りそのまま連続して延伸を行うなど、いずれの方法も採用することができる。延伸は、湿熱または乾熱あるいはその両者によって、1段〜3段延伸する方法で適宜行うことができる。次に、延伸された海島型複合繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカットして不織布の原綿を得る。捲縮加工やカット加工は通常の方法を用いることができる。
【0072】
得られた極細繊維発現型繊維からなる原綿を、クロスラッパー等により繊維ウエブとし、次いで極細繊維発現型繊維を絡合して不織布とする。極細繊維発現型繊維を絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチ等の通常の方法を用いることができる。
【0073】
本発明におけるアルカリ水溶液に対する溶解性の異なるとは、極細繊維を発現させる条件下で、溶解速度が20倍以上、より好ましくは40倍以上異なることをいう。溶解速度が20倍未満では、極細繊維を発現させる際に溶解性の低い熱可塑性高分子成分の繊度を制御することが困難になる。
【0074】
アルカリ水溶液に対する溶解速度は、JIS K6911法(1995)の耐薬品性試験(試験液:水酸化ナトリウム10%)に準じて処理時間を1時間として得た質量比より算出することができる。
【0075】
アルカリ水溶液に対する溶解性の高い海島型複合繊維の海成分としては、アルカリ水溶液に対する溶解速度と紡糸安定性の観点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルに、例えば、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、およびシクロヘキシルカルボン酸等を、好ましくは5〜12mol%共重合した共重合ポリエステルや、ポリ乳酸などを用いることができる。
【0076】
特に、耐熱性と弱アルカリ水溶液への溶解性の観点から、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを好ましくは5〜12mol%共重合したポリエチレンテレフタレート共重合体やポリ乳酸を用いることが好ましい。また、これらの共重合体は、2元のみならず3元以上の多元共重合体であってもよい。
【0077】
前記のようにして得られた不織布には、繊維の緻密感向上のために、温水やスチームによって収縮処理を施すことができる。温水やスチームの温度は、後述する極細繊維の捲縮が発現してしまうため、シート状物の温度が110℃未満となるように処理することが好ましい。シート状物自体の温度が110℃未満に保たれるのであれば、シート状物を収縮させるために付与する温水やスチームの温度は110℃以上であってもよい。
【0078】
水分散型ポリウレタン液を、前記のようにして得られた不織布に付与するにあたっては、不織布に水分散型ポリウレタン水分散液を含浸しまたは付与し、乾熱凝固する方法、不織布に水分散型ポリウレタン水分散液を含浸後、湿熱凝固して加熱乾燥する方法、熱水中で湿式凝固して加熱乾燥する方法およびそれらの組み合わせがある。
【0079】
乾燥温度と乾燥時間は、不織布の温度が高くなりすぎると、後述する極細繊維の捲縮が発現してしまうため、シート状物の温度が110℃未満となるよう乾燥することが好ましい。シート状物自体の温度が110℃未満に保たれるのであれば、乾燥するために付与する熱風の温度は110℃以上であってもよい。
【0080】
本発明で使用される水分散型ポリウレタン液には、貯蔵安定性や製膜性向上のために、水溶性有機溶剤を水分散液に対して0質量%以上40質量%以下含有させることができるが、製膜時の加熱による大気中への有機溶剤の放出や最終製品への有機溶剤の残留等の懸念から、有機溶剤は0質量%以上1質量%以下含有していることが好ましい。
【0081】
本発明の皮革様シート状物の製造方法においては、極細繊維発現型繊維からなる不織布に水分散型ポリウレタン液を付与した、アルカリ水溶液で処理することにより極細繊維を発現させてもよい。
【0082】
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水溶液、アンモニア塩等を好適に用いることができる。
【0083】
アルカリ水溶液の濃度は、極細繊維が発現できればよく、0.05mol/L以上10mol/L以下であることが好ましい。
【0084】
アルカリ水溶液での処理は、水分散型ポリウレタン付与後の極細繊維発生型繊維からなるシートを浸漬し、窄液を行うものであり、海島型複合繊維の場合は、アルカリ水に溶解する海成分を溶出して極細繊維を発生させるものであることから、方法としては、例えば、液流染色機や精錬装置等、さらにはそれらの組み合わせを用いての処理が挙げられる。
【0085】
極細繊維の発生を効率化する目的で、適宜加熱処理、スチーム処理および界面活性剤等の浸透剤を添加しての処理を行ってもよく、さらにはpH3以下の酸性水溶液による処理をあらかじめ行った後に、アルカリ水溶液で処理してもよい。極細繊維を発生させる際の熱処理とスチーム処理の温度は、後述する極細繊維の捲縮が発現してしまうため、シート状物の温度が110℃未満となるように処理することが好ましい。シート状物自体の温度が110℃未満に保たれるのであれば、極細繊維を発現させるために付与する熱処理温度やスチーム処理の温度は110℃以上であってもよい。
【0086】
本発明の皮革様シート状物は、少なくとも片面に極細繊維の立毛を有している立毛調の皮革様シート状物である。
【0087】
本発明の皮革様シート状物の表面に極細繊維の立毛を形成するための起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理の前に、皮革様シート状物にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を付与してもよい。
【0088】
また、上記の起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によって皮革様シート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる傾向にあり好ましい態様である。
【0089】
皮革様シート状物は、起毛処理を行う前に、シート状物厚み方向に半裁ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
【0090】
本発明の皮革様シート状物の製造方法は、下記(1)〜(2)の工程をこの順番で含むものである。
(1)極細繊維発現型繊維からなる不織布から極細繊維を発現させる工程、
(2)極細繊維からなる不織布に110℃以上150℃以下の温度の熱処理を施すことにより、立毛層の極細繊維に捲縮を発現させる工程。
【0091】
例えば、極細繊維発現型繊維からなる不織布から極細繊維を発現させる工程の前に、不織布に110℃以上の熱処理を施すと、極細繊維の周りに存在する海成分の存在により、捲縮が発現しにくく、本発明の目的とする保温性が得られにくくなる。
【0092】
また、本発明の皮革様シート状物の製造方法において、立毛層における極細繊維の捲縮は、極細繊維からなる不織布に110℃以上150℃以下の温度の熱処理を施すことにより達成される。立毛層の極細繊維が捲縮することにより、立毛層の繊維密度が向上し、基材層の繊維密度以上の繊維密度となる。立毛層の繊維密度が高いことにより、暖かい空気を把持する保温層となり、更には良好な触感と表面品位を得ることができる。
【0093】
極細繊維からなる不織布に110℃以上の温度で熱処理を施すためには、公知の装置を使用することができる。例えば液流染色機を用いることができる。
【0094】
処理温度は110℃以上150℃以下であることが必要であるが、より高い温度で処理を行う方が極細繊維の捲縮発現は進みやすい。ただし、あまり高温で処理を行うとポリウレタンを主成分とする高分子弾性体が熱劣化するため、好ましくは120℃以上150℃以下、より好ましくは125℃以上135℃以下である。
【0095】
本発明の皮革様シート状物は、染色されたものでもよい。染色方法は、皮革様シート状物を染色すると同時に揉み効果を与えてシート状物を柔軟化することができることから、液流染色機を用いることが好ましい。液流染色機は、通常の液流染色機を使用することができる。
【0096】
染色温度は、高すぎると水分散型ポリウレタンが劣化する場合があり、逆に、染色温度が低すぎると繊維への染着が不十分となるため、繊維の種類により変更することがよく、一般に80℃以上150℃以下であることが好ましく、より好ましくは110℃以上130℃以下である。
【0097】
また、上記の工程(2)における110℃以上150℃以下の温度の熱処理は、染色と同時に行ってもよい。
【0098】
染料は、不織布を構成する極細繊維にあわせて選択することができるが、ポリエステル系極細繊維では分散染料が好ましく用いられる。酸性染料や含金染料のような染料、およびそれらを組み合わせた染料を用いてもよい。分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
【0099】
また、染色の均一性や再現性を向上させる目的で、染色時に染色助剤を使用することができる。さらに、本発明の皮革様シート状物には、シリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、および耐光剤等の仕上げ剤処理を施してもよく、仕上げ処理は染色後でも染色と同浴でもよい。
【0100】
本発明の皮革様シート状物は、シャツ、ジャケット、鞄、ベルト、財布等およびそれらの一部、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、およびトリム等として好適に用いることができる。さらには、本発明の皮革様シート状物は、家具や椅子の表皮材や壁材に、さらには自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席や天井などの表皮材、および内装材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0101】
[評価方法]
(1)平均単繊維直径
不織布表面または皮革様シート状物表面を、走査型電子顕微鏡(SEM キーエンス社製VE−7800型)を用いて倍率2000倍で撮影し、得られた写真から円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を実測する。100本の繊維径の平均値を計算することにより、平均単繊維直径を算出した。
【0102】
(2)固有粘度
オルソクロロフェノール(以下、OCPと略記する。)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度でオストワルド粘度計を用いて相対粘度(ηr)を下式により求め、固有粘度(IV)を算出した。
【0103】
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
固有粘度IV=0.0242ηr+0.2634
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η0:OCPの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
t0:OCPの落下時間(秒)
d0:OCPの密度(g/cm)。
【0104】
(3)繊維直径CV
上記(1)により繊維径を測定し、繊維束を構成する繊維の繊維直径標準偏差を束内平均繊維直径で割った値を百分率(%)で、繊維直径CVを表した。5つの束状繊維について、同様の測定を行い、5つの平均値を繊維直径CVとした。異形断面の場合の繊維直径CVは異形断面の外周円を元に算出する。
【0105】
(4)皮革様シート状物の目付
JIS L 1096:1999 8.4.2に記載された方法で測定した。
20cm×20cmの試験片を5枚採取し、それぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
(5)基材層と立毛層の厚み
走査型電子顕微鏡(SEM キーエンス社製VE−7800型)を用いて、シート状物の断面を撮影(倍率50倍)し、基材層および立毛層の厚みを測定した。n数は5で、その平均値を求めた。
【0106】
(6)立毛層の繊維密度
20cm×20cmのシート状物の試験片から、立毛層を構成する繊維を剥ぎ取り、その剥ぎ取った繊維の質量をはかり、その平均値を1m当たりの質量(g/m)として、上記立毛層の厚みの値で割って、立毛層の繊維密度を求めた。n数は5で、その平均値を求めた。
(7)基材層の繊維密度
上記、20cm×20cmのシート状物の試験片から、立毛層を構成する繊維を剥ぎ取った後の試験片の質量を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)として、上記基材層の厚みの値で割って、基材層の繊維密度を求めた。n数は5で、その平均値を求めた。
【0107】
(8)保温性
JIS L1096(1999)に記載されている保温性A法(恒温法)で使用される保温性試験機(恒温法)を用い、保温性試験機(恒温法)を36℃の温度に設定する。環境条件を温度25℃、湿度40%RHに設定し、その上に各実施例および比較例に示したサンプルを裏地側が保温性試験機(恒温法)に接するように保温性試験機(恒温法)にのせ、10分後のサンプルの表地表面の温度をT1とする。次に、環境条件を温度27℃、湿度80%RHに変更し、同様にサンプルの後ろ身頃部分のみを裏地が保温性試験機(恒温法)になるようにのせ、10分後のサンプルの表地表面の温度をT2とする。そのときの温度差T2−T1を調温湿効果の値として用いた。T2−T1の温度差が1以上のとき、裏地側の熱を表地側に多く放熱する、つまり保温性があると判断した。
【0108】
<実施例1>
島成分として固有粘度(IV)が1.28のポリエチレンテレフタレートと固有粘度(IV)が0.81のポリエチレンテレフタレートを、それぞれ別に溶融して用い、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率60/40で溶融紡糸した繊維を、ローラープレート方式で通常の条件により延伸し捲縮加工後、繊維を51mmの長さにカットし、平均単繊維直径26μmの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0109】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層繊維ウエブを形成し、600本/cmのパンチ本数でニードルパンチした後に、3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施して、シート状物を得た。
【0110】
このシート状物を96℃の温度の熱水で処理し収縮させた後、乾燥温度100℃で5分間熱風乾燥した。次いで、ポリウレタン固形分濃度が10質量%の水分散型ポリウレタン液(エーテル系)を含浸し、乾燥温度100℃で10分熱風乾燥することにより、シート状物の島成分の質量に対するポリウレタン質量が47質量%となるように水分散型ポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0111】
次に、このようにして得られたシート状物を、80℃の温度に加熱された濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去し、極細繊維と水分散型ポリウレタンからなる皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維直径は0.4μmであり、繊維直径CVは7.5%であることを確認した。
【0112】
そして、皮革様シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。
【0113】
このようして得られたシート状物を、液流染色機を用いて、133℃の温度条件下で、捲縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機を用いて乾燥を行い、皮革様シート状物を得た。
【0114】
この皮革様シート状物について、立毛層部分を観察した結果、立毛層を構成する極細繊維に捲縮が発現していることを確認した。また、得られたシートの基材層の繊維密度と立毛層の繊維密度の比を測定した結果、立毛層繊維密度/基材層繊維密度=1.779であった。また、T2−T1の温度差は2.8であり、良好な保温性であった。結果を表1に示す。
【0115】
<実施例2>
島成分として固有粘度(IV)が0.78のポリエチレンテレフタレートと固有粘度(IV)が0.51のポリエチレンテレフタレートを、それぞれ別に溶融して用い、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率60/40で溶融紡糸した繊維を、ローラープレート方式で通常の条件により延伸し捲縮加工後、繊維を51mmの長さにカットし、平均単繊維直径26μmの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0116】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層繊維ウエブを形成し、600本/cmのパンチ本数でニードルパンチした後に、3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施して、シート状物を得た。
【0117】
このシート状物を96℃の温度の熱水で処理し収縮させた後、乾燥温度100℃で5分間熱風乾燥した。次いで、ポリウレタン固形分濃度が10質量%の水分散型ポリウレタン液(エーテル系)を含浸し、乾燥温度100℃で10分熱風乾燥することにより、シート状物の島成分の質量に対するポリウレタン質量が47質量%となるように水分散型ポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0118】
次に、このようにして得られたシート状物を、80℃の温度に加熱された濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去し、極細繊維と水分散型ポリウレタンからなる皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維直径は2.1μmであり、繊維直径CVは7.5%であることを確認した。
【0119】
そして、皮革様シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。
【0120】
このようして得られたシート状物を、液流染色機を用いて、130℃の温度条件下で、捲縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機を用いて乾燥を行い、皮革様シート状物を得た。
【0121】
この皮革様シート状物について、立毛層部分を観察した結果、立毛層を構成する極細繊維に捲縮が発現していることを確認した。また、得られたシートの基材層の繊維密度と立毛層の繊維密度の比を測定した結果、立毛層繊維密度/基材層繊維密度=0.750であった。また、T2−T1の温度差は2.4であり、良好な保温性であった。結果を表1に示す。
【0122】
<実施例3>
島成分として固有粘度(IV)が0.78のポリエチレンテレフタレートと固有粘度(IV)が0.51のポリエチレンテレフタレートを、それぞれ別に溶融して用い、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が16島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率75/25で溶融紡糸した後、得られた繊維をローラープレート方式で通常の条件により延伸し捲縮加工した後、51mmにカットし、平均単繊維直径14μmの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0123】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層繊維ウエブを形成し、300本/cmのパンチ本数でニードルパンチした後に、3400本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施して、シート状物を得た。
【0124】
この状物シートを96℃の温度の熱水で処理し収縮させた後、乾燥温度110℃で5分間熱風乾燥した。次いで、ポリウレタン固形分濃度が10質量%の水分散型ポリウレタン液(エーテル系)を含浸し、乾燥温度120℃で10分間熱風乾燥することにより、シート状物の島成分の質量に対するポリウレタン質量が43質量%となるように水分散型ポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0125】
次に、このシート状物を80℃の温度に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去し、極細繊維とポリウレタンからなる皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維直径は2.3μmであり、繊維直径CVは7.5%であることを確認した。
【0126】
そして、皮革様シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。
【0127】
このようにして得られた立毛調の皮革様シート状物を、液流染色機を用いて、112℃の温度の条件下で、捲縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機で乾燥を行い、皮革様シート状物を得た。
【0128】
この皮革様シート状物について、立毛層部分を観察した結果、立毛層を構成する極細繊維に捲縮が発現していることを確認した。また、得られたシートの基材層の繊維密度と立毛層の繊維密度の比を測定した結果、立毛層繊維密度/基材層繊維密度=0.550であった。また、T2−T1の温度差は1.5であり、良好な保温性があった。結果を表1に示す。
【0129】
<実施例4>
島成分として固有粘度(IV)が0.78のポリエチレンテレフタレートと固有粘度(IV)が0.51のポリエチレンテレフタレートを、それぞれ別に溶融して用い、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が16島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率75/25で溶融紡糸した後、得られた繊維をローラープレート方式で通常の条件により延伸し捲縮加工した後、51mmにカットし、平均単繊維直径14μmの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0130】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層繊維ウエブを形成し、織物貼り合わせ後の急激な幅変化による織物しわを抑えるために100本/cmのパンチ本数でニードルパンチした。その後、撚糸の単糸直径が経緯共に140μm(110dtex−288フィラメント)で、撚数2000T/m、織密度が1インチ当たり80×66(タテ×ヨコ)で、乾熱収縮率が8.8%である平織組織の織物を、前記の積層繊維ウエブの上下に挿入した。その後、3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施して、シート状物を得た。
【0131】
この状物シートを96℃の温度の熱水で処理し収縮させた後、乾燥温度110℃で5分間熱風乾燥した。次いで、ポリウレタン固形分濃度が10質量%の水分散型ポリウレタン液(エーテル系)を含浸し、乾燥温度120℃で10分間熱風乾燥することにより、シート状物の島成分の質量に対するポリウレタン質量が43質量%となるように水分散型ポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0132】
次に、このシート状物を80℃の温度に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去し、極細繊維とポリウレタンからなる皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維直径は2.3μmであり、繊維直径CVは7.5%であることを確認した。
【0133】
そして、皮革様シート状物を厚さ方向に積層繊維ウエブの箇所で半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。このようにして得られた立毛調の皮革様シート状物を、液流染色機を用いて、112℃の温度の条件下で、捲縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機で乾燥を行い、皮革様シート状物を得た。
【0134】
この皮革様シート状物について、立毛層部分を観察した結果、立毛層を構成する極細繊維に捲縮が発現していることを確認した。また、得られたシートの基材層の繊維密度と立毛層の繊維密度の比を測定した結果、立毛層繊維密度/基材層繊維密度=0.575であった。また、T2−T1の温度差は1.6であり、良好な保温性があった。結果を表1に示す。
【0135】
<比較例1>
液流染色機を用いて、100℃の温度の条件下で、捲縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機で乾燥を行ったこと以外は、実施例1と同じ処理を行い、皮革様シート状物を得た。
【0136】
この皮革様シート状物について、立毛層部分を観察した結果、立毛層を構成する極細繊維はほとんど捲縮は発現していないことを確認した。また、得られたシートの基材層の繊維密度と立毛層の繊維密度の比を測定した結果、立毛層繊維密度/基材層繊維密度=0.386であり、また、T2−T1の温度差は0.7であって、保温性は乏しいものであった。結果を表1に示す。
【0137】
<比較例2>
島成分として固有粘度(IV)が0.65のPETを単成分として用い、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海質量比率60/40で溶融紡糸した繊維を、ローラープレート方式で通常の条件により延伸し捲縮加工後、繊維を51mmにカットし、平均単繊維直径26μmの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0138】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層繊維ウエブを形成し、600本/cmのパンチ本数でニードルパンチした後に、3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施して、シート状物を得た。
【0139】
このシート状物を96℃の温度の熱水で処理し収縮させた後、乾燥温度100℃で5分間熱風乾燥した。次いで、ポリウレタン固形分濃度が10質量%の水分散型ポリウレタン液(エーテル系)を含浸し、乾燥温度100℃で10分熱風乾燥することにより、シート状物の島成分の質量に対するポリウレタン質量が47質量%となるように水分散型ポリウレタンを付与したシート状物を得た。
【0140】
次に、このようにして得られたシート状物を、80℃の温度に加熱された濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去し、極細繊維と水分散型ポリウレタンからなる皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維直径は2.1μmであり、繊維直径CVは7.5%であることを確認した。
【0141】
そして、皮革様シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成した。
【0142】
このようして得られたシートを、液流染色機を用いて、130℃の温度条件下で、捲縮処理と染色を同時に行った後に、乾燥機を用いて乾燥を行い、皮革様シート状物を得た。
【0143】
この皮革様シート状物について、立毛層部分を観察した結果、立毛層を構成する極細繊維は捲縮を発現していないことを確認した。また、得られたシートの基材層繊維密度と立毛層繊維密度の比を測定した結果、立毛層繊維密度/基材層繊維密度=0.450であり、また、T2−T1の温度差は0.5であって、保温性は乏しいものであった。結果を表1に示す。
【0144】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均単繊維直径が0.3μm以上7μm以下の極細繊維からなる不織布と、その内部に水分散型ポリウレタンを含有するシート状物であって、前記シート状物が、基材層と立毛層とを有し、それぞれの層を構成する極細繊維の繊維密度が、次の関係式を満たすことを特徴とする皮革様シート状物。
2 > 立毛層繊維密度/基材層繊維密度 > 0.5
【請求項2】
極細繊維が、固有粘度に差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維、および/または固有粘度に差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が偏心した芯鞘構造を形成している偏心芯鞘複合繊維であることを特徴とする請求項1記載の皮革様シート状物。
【請求項3】
立毛層の立毛が捲縮を有することを特徴とする請求項1または2記載の皮革様シート状物。
【請求項4】
極細繊維発現型繊維から得られる、固有粘度に差のある2種類以上のポリエチレンテレフタレート系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた構造および/または偏心した芯鞘型構造の極細繊維からなる基材層と立毛層を有する不織布と、その内部に水分散型ポリウレタンを含有するシート状物の製造方法であって、下記の(1)と(2)の工程をこの順番で含むことを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
(1)極細繊維発現型繊維からなる不織布から極細繊維を発現させる工程、
(2)極細繊維からなる不織布に110℃以上150℃以下の温度で熱処理を施すことにより、極細繊維に捲縮を発現させる工程。
【請求項5】
極細繊維発現型繊維が海島型複合繊維であることを特徴とする請求項4記載の皮革様シート状物の製造方法。
【請求項6】
不織布が、短繊維からなる不織布であることを特徴とする請求項4または5記載の皮革様シート状物の製造方法。

【公開番号】特開2012−136800(P2012−136800A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289958(P2010−289958)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】