説明

皿ねじ用孔の形成方法及び皿ねじ用孔を備えた部材

【課題】皿ねじ用孔を生産性良く、品質を低下せずに形成できる皿ねじ用孔の形成方法とする。
【解決手段】2つの溝6を有した部材(縦框20)を作製し、その2つの溝6間に下穴70を、2つの溝6の傾斜面となった外側面60を残存し、皿ねじ5が挿通すると共に、頭部5aが入り込むように形成し、その残存した外側面60が皿ねじ5の頭部テーパー面5bが接する皿ねじ支持面75となる皿ねじ用孔7を形成する方法で、下穴70を打ち抜き加工すれば良いから、皿ねじ用孔を生産性良く、品質を低下せずに形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皿ねじを用いて部材を固着する際に、その皿ねじが挿通する皿ねじ用孔を形成する方法及び、その皿ねじ用孔を備えた部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア枠に扉を開閉自在に取り付けたドアにおいては、ドア枠の縦枠に扉を丁番で回動自在に連結することがある。例えば、縦枠に丁番の一方の翼片を皿ねじで固着し、他方の翼片を扉に皿ねじで固着している。
前述のように皿ねじで固着する場合には、その皿ねじが挿通する皿ねじ用孔は、皿ねじの頭部テーパー面が嵌まり合う漏斗状凹部を有する皿孔としている。
前述の皿孔は、例えば特許文献1に開示したように、ポンチで下孔を打ち抜き加工し、次に面取りポンチで下孔の上端に皿状座を形成し、仕上げポンチで下孔の縁部を打ち抜いて皿状座(漏斗状凹部)を有する皿ねじ用孔としている。
または、下孔を穿孔した後に、その下孔の上部を漏斗状に切削加工して皿ねじ用孔としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52−132490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した前者のポンチによる皿ねじ用孔の形成方法は、3工程を必要とするので、生産性が悪い。
前述した後者の切削加工による皿ねじ用孔の形成方法は、切削加工時に切粉の巻き込みによる回転キズやスリキズが発生し、品質が低下することがある。
【0005】
本発明の目的は、生産性が良いと共に、品質が低下することがないようにした皿ねじ用孔の形成方法及び、その皿ねじ用孔を備えた部材とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の皿ねじ用孔の形成方法は、皿ねじの頭部テーパー面が接する傾斜面を備えた2つの溝を、その傾斜面が離隔して有した部材を作製し、
この部材における2つの溝間に、前記皿ねじが挿通すると共に、皿ねじの頭部が入り込む下穴を、2つの溝の傾斜面が残存するように形成し、
前記残存した傾斜面が皿ねじの頭部テーパー面が接触する皿ねじ支持面とすることを特徴とする皿ねじ用孔の形成方法である。
【0007】
本発明の皿ねじ用孔の形成方法においては、前記下穴は、一方の溝の底面に沿った第1直線面と、他方の溝の底面に沿った第2直線面と、前記第1直線面の一端と第2直線面の一端を連続する第1円弧面と、前記第1直線面の他端と第2直線面の他端を連続する第2円弧面とからなるほぼ長円形状であると共に、前記第1円弧面及び第2円弧面は皿ねじの頭部の最大直径の円形軌跡に沿った円弧形状であり、この下穴は、打ち抜き加工で形成するようにした。
このようにすれば、下穴を打ち抜き加工で1度に形成することができ、その下穴を短時間に効率良く形成できる。
【0008】
本発明の皿ねじ用孔の形成方法においては、前記2つの溝の傾斜面の外側間の寸法が、皿ねじの頭部最大直径と略同一で、
前記下穴を、その第1直線面と第2直線面が2つの溝の底面に沿って形成されて各傾斜面が全て残存するように形成することができる。
このようにすれば、皿ねじの頭部テーパー面が傾斜面の全面に接触するから、皿ねじをしっかりと支持できる。
【0009】
本発明の皿ねじ用孔の形成方法は、前記部材を、その表面に2つの溝を有した押出形材で作製することができる。
このようにすれば、2つの溝を有した部材を簡単に作製することができる。
【0010】
本発明の皿ねじ用孔を備えた部材は、皿ねじの頭部テーパー面が接する傾斜面を備えた2つの溝を有し、この2つの溝間に、下穴が形成され、この下穴の2つの溝間に皿ねじの頭部が入り込むと共に、2つの溝の傾斜面に皿ねじの頭部テーパー面が接触する皿ねじ用孔を備えていることを特徴とする皿ねじ用孔を備えた部材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の皿ねじ用孔の形成方法によれば、部材に下穴を形成するだけであるから、生産性が良いと共に、部材に傷をつけることがなく品質が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ドアの実施の形態を示す横断面図である。
【図2】図1の丁番取付部の拡大図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】皿ねじ用孔の部分拡大平面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図4のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、枠体1に扉2を丁番3で面外方向に回動自在に連結してドアとしてある。
この丁番3は一方の翼片30と他方の翼片31をピン32で回動自在に連結したもので、その一方の翼片30が扉2の縦框20に固着されると共に、他方の翼片31が枠体1の縦枠10に固着してある。
【0014】
縦框20は外面板21と内面板22と一対の側面板23で断面略矩形状の長尺材、例えばアルミ押出形材である。
その外面板21の裏面に丁番用の裏板4が皿ねじ5で固着され、前記一方の翼片30が外面板21の表面に接し、後述する取付ねじを丁番用の裏板4に螺合することで固着される。
つまり、外面板21が本発明の皿ねじ用孔を形成する部材で丁番用の裏板4が皿ねじで固着される部材である。
【0015】
縦枠10の内面板11の裏面に丁番用の裏板12がねじ13で固着して取り付けてある。
縦枠10の内面板11の表面に他方の翼片31を接し、その翼片31を前述の裏板12に螺合する取付ねじで固着して取り付けられる。
【0016】
次に、一方の翼片30の取り付けを図2、図3に基づいて詳細に説明する。
縦框20の外面板21の表面には、所定の幅を有し、長手方向に連続した2つの溝6が長手方向と直角方向(つまり、幅方向)に間隔を置いて有する。
この溝6は幅方向外側(つまり、隣接した他方の溝6と反対側)の外側面60と、幅方向内側(つまり、隣接した他方の溝6側)の内側面61と、底面62を有し、その外側面60は底面62から開口縁60a(外面板21の表面)に向けて、その外側面60の開口縁60aが底面62から順次幅方向に離れるように斜めの傾斜面となっている。
溝6の内側面61は底面62から開口縁61a(外面板21の表面)に向けて、その内側面61の開口縁61aが底面62から順次幅方向に離れるように斜めの傾斜面で、この溝6は断面V字形状である。
この溝6は断面V字形状に限ることはなく、底面62が平坦面となった断面逆台形状や、他の形状でも良く、内側面61は傾斜面に限ることはなく、外面板21と略直角な垂直面、円弧状面などでも良い。
【0017】
前記溝6の外側面60の傾斜角度は、皿ねじ5の頭部テーパー面の角度と同一で、その外側面60に皿ねじ5の頭部テーパー面が接触するようにしてある。
このとき、溝6は、皿ねじ5の頭部テーパー面が接触する傾斜面を有するものであれば良く、多少の角度の相違があっても問題はない。
【0018】
前記外面板21の2つの溝6間の部分に皿ねじ用孔7が形成され、この皿ねじ用孔7を挿通した皿ねじ5が丁番用の裏板4に螺合して裏板4を外面板21の裏面に固着している。
前記一方の翼片30には取付用孔33が形成されていると共に、外面板21にはねじ挿通孔24が形成され、取付用ねじ34を取付用孔33、ねじ挿通孔24を通して裏板4に螺合して一方の翼片30を外面板21の表面に取り付けている。
この取付用ねじ34は皿ねじで、取付用孔33は皿ねじの頭部テーパー面を嵌まり合う漏斗状凹部を有する皿孔である。
この皿孔である取付用孔33は後述するように、本発明の皿ねじ用孔7と同様に形成しても良いが、一方の翼片30を作製する際に従来と同様に形成される。
【0019】
次に、皿ねじ用孔7を形成する方法を図4〜図6に基づいて説明する。
図4に示すように、縦框20の外面板21に設けた2つの溝6,6の外側面60の開口縁60a間の距離L1を皿ねじ5の頭部5aの最大直径R1と同一とする。なお、距離L1と最大直径R1は、距離L1が最大直径R1よりも数mm大きい場合、数mm小さい場合等、多少の寸法の相違があっても良い。つまり、略同一であれば良い。
縦框20の外面板21における2つの溝6間に、皿ねじ5が挿通すると共に、頭部5aが入り込む下穴70を加工する。例えば、プレス機械や鍛造機械などを用いてポンチで下穴70を打ち抜き加工する。
この下穴70は、縦框20の幅方向(下穴70の径方向)に対向した第1直線面71と第2直線面72、縦框20の長手方向(下穴70の径方向)に対向し、第1直線面71の一端部と第2直線部72の一端部を連結する第1円弧面73、第1直線面71の他端部と第2直線部72の他端部を連続する第2円弧面74で囲まれた略長円形状である。
【0020】
例えば、第1円弧面73と第2円弧面74は前述の最大直径R1の円形軌跡に沿い、溝60の底面62までの長さの円弧形状で、第1直線面71は一方の溝6の底面62に沿った直線状で、第2直線面72は他方の溝6の底面62に沿った直線である。
このような下穴70を形成することで、2つの溝6の外側面60における前述の最大直径R1の円径軌跡で囲まれた斜線の部分60bが皿ねじ5の頭部テーパー面5bが接する皿ねじ支持面75となる。
【0021】
そして、図4〜図6に示す仮想線で示すように、皿ねじ5を皿ねじ用孔7(下穴70部分)に挿入することで、前述の溝6の外側面60における長手方向一部分60b(皿ねじ支持面75)に頭部テーパー面5bの径方向両側部分が接触し、この接触した部分以外の頭部テーパー面5bは第1・第2円弧面73,74内に入り込み、その皿ねじ5の上面は外面板21の表面と面一となる。
しかも、外側面60の幅方向全面に頭部テーパー面5bが接触するから、皿ねじ5をしっかりと支持できる。
【0022】
このように、縦框20を、その表面が2つの溝6を有する形状として作製しておくことで、その縦框20に下穴70をプレス機械などを用いて打ち抜き加工するだけで、皿ねじ用孔7を形成することができ、その皿ねじ用孔7を生産性が良いと共に、傷がついたりせずに品質が低下することなく形成することができる。
【0023】
縦框20を押出形材とすることで、押出成形時に前述した2つの溝6を有した縦框20とすることができるから、2つの溝6を有した縦框20を簡単に作製できる。
【0024】
本発明の皿ねじ用孔を形成するのは縦框20に限ることはなく、任意の部材に形成することができる。
例えば、鍛造や鋳造などで表面に2つの溝を有する素材を作製し、その素材を所定の長さや、形状に加工して皿ねじを形成する部材とする。
または、素材の表面に2つの溝を切削加工して形成し、その素材を所定の長さや、形状に加工して皿ねじ用孔を形成する部材とする。
いずれにしても、あらかじめ2つの溝を備えた部材を作製すれば良い。
【符号の説明】
【0025】
5…皿ねじ、5a…頭部、5b…頭部テーパー面、6…溝、7…皿ねじ用孔、60…外側面、61…内側面、62…底面、70…下穴、71…第1直線面、72…第2直線面、73…第1円弧面、74…第2円弧面、75…皿ねじ支持面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿ねじの頭部テーパー面が接する傾斜面を備えた2つの溝を、その傾斜面が離隔して有した部材を作製し、
この部材における2つの溝間に、前記皿ねじが挿通すると共に、皿ねじの頭部が入り込む下穴を、2つの溝の傾斜面が残存するように形成し、
前記残存した傾斜面が皿ねじの頭部テーパー面が接触する皿ねじ支持面とすることを特徴とする皿ねじ用孔の形成方法。
【請求項2】
前記下穴は、一方の溝の底面に沿った第1直線面と、他方の溝の底面に沿った第2直線面と、前記第1直線面の一端と第2直線面の一端を連続する第1円弧面と、前記第1直線面の他端と第2直線面の他端を連続する第2円弧面とからなるほぼ長円形状であると共に、前記第1円弧面及び第2円弧面は皿ねじの頭部の最大直径の円形軌跡に沿った円弧形状であり、
この下穴は、打ち抜き加工で形成するようにした請求項1記載の皿ねじ用孔の形成方法。
【請求項3】
前記2つの溝の傾斜面の外側間の寸法が、皿ねじの頭部最大直径と略同一で、
前記下穴を、その第1直線面と第2直線面が2つの溝の底面に沿って形成されて各傾斜面が全て残存するように形成する請求項2記載の皿ねじ用孔の形成方法。
【請求項4】
前記部材を、その表面に2つの溝を有した押出形材で作製した請求項1又は2又は3記載の皿ねじ用孔の形成方法。
【請求項5】
皿ねじの頭部テーパー面が接する傾斜面を備えた2つの溝を有し、この2つの溝間に、下穴が形成され、この下穴の2つの溝間に皿ねじの頭部が入り込むと共に、2つの溝の傾斜面に皿ねじの頭部テーパー面が接触する皿ねじ用孔を備えていることを特徴とする皿ねじ用孔を備えた部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−63448(P2013−63448A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202519(P2011−202519)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】