説明

皿状部材の切出し方法およびその装置

【課題】 皿ばねや皿ばね座金のように上下面の凹凸部をもって積み重ねられる皿状部材を分離させることができる皿状部材の切出し方法およびその装置を目的とする。
【解決手段】 収納筒体3内に出没される切出し刃2により、収納筒体3内に積み重ね収納される皿状部材Wを所定枚数切り出し、残留皿状部材Wはその下側凸部を切り出されていく皿状部材Wの凹部斜面にガイドされて持ち上げられ、且つ収納筒体3内面に当接して収納筒体3を連動上昇させ、切り出した皿状部材Wの送出路15を形成する方法および、積み重ねされている皿状部材Wを所定枚数ずつ切り出す切出し刃2と、皿状部材Wを積み重ね収納するとともに収納筒体3内面に当接される残留の皿状部材Wの下側凸部を切り出されていく皿状部材Wの凹部斜面にガイドさせて残留皿状部材Wを切り出し枚数分の高さまで持ち上げて切り出し、皿状部材Wの送出路15を形成する昇降動自在な収納筒体3とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積み重ねられた皿ばねや皿ばね座金等の皿状部材を所定枚数毎に切り出す皿状部材の切出し方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、V字状の搬走路の各斜面に開口部を形成し、一方の開口部にワッシャの外径分を受けるシャッタと他方の開口部にワッシャの厚み分を受けるシャッタとを設けてワッシャを1枚ずつ分離させるものがある(例えば特許文献1)。また、ワッシャ受け部にワッシャ厚みの2倍以下のワッシャ凹部を形成し、該ワッシャ凹部にワッシャを収納させる方向に押圧するスクレイパを設けて1枚ずつ分離させるものがある(例えば、特許文献2)。
【0003】
しかし、これらの装置では皿ばねや皿ばね座金等のように上面の凹部に下面の凸部を重ね合わせて積み重ねられる皿状部材を分離することはできなかった。
【特許文献1】特開平9−183415号公報
【特許文献2】特開2004−1952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は皿ばねや皿ばね座金のように上下面の凹凸部をもって積み重ねられる皿状部材を分離させることができる皿状部材の切出し方法およびその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、収納筒体内に出没される切出し刃により、収納筒体内に凹部を上側にして積み重ね収納される皿状部材を所定枚数切り出し、該切り出しにより収納筒体内に残留する皿状部材はその下側凸部を切り出されていく皿状部材の凹部斜面にガイドされて持ち上げられるとともに収納筒体内面に当接して収納筒体を連動上昇させ、切り出した皿状部材の送出路を形成する皿状部材の切出し方法を請求項1の発明とし、凹部を上側にして積み重ねされている皿状部材を所定枚数ずつ切り出す切出し刃と、凹部を上側にした皿状部材を積み重ね収納するとともに収納筒体内面に当接される残留の皿状部材の下側凸部を切り出されていく皿状部材の凹部斜面にガイドさせて残留皿状部材を切り出し枚数分の高さまで持ち上げて切り出し皿状部材の送出路を形成する昇降動自在な収納筒体とからなる皿状部材の切出し装置を請求項2の発明とし、請求項2の発明において、収納筒体が摩擦係数の小さい直線運動機構を介して昇降動される皿状部材の切出し装置を請求項3の発明とし、請求項2または3の発明において、皿状部材上に錘が載置される皿状部材の切出し装置を請求項4の発明とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は収納筒体内に出没される切出し刃により、収納筒体内に凹部を上側にして積み重ね収納される皿状部材を所定枚数切り出し、該切り出しにより収納筒体内に残留する皿状部材はその下側凸部を切り出されていく皿状部材の凹部斜面にガイドされて持ち上げられるとともに収納筒体内面に当接して収納筒体を連動上昇させ、切り出した皿状部材の送出路を形成することにより、制御機構を組み込んでシリンダ等の駆動機構を制御することなく収納筒体の昇降動を行って積み重ねられた皿状部材を所定枚数ずつ確実に切り出すことができるため、収納筒体の昇降動に動力が不要となりランニングコストを低減できる。また、装置が簡単で安価なうえ故障の発生も少なく長期耐用できるものとなる。
【0007】
請求項3のように、収納筒体が摩擦係数の小さい直線運動機構を介して昇降動されるものとすることにより、例え、残留皿状部材に収納筒体を噛み込もうとする力が加わっても、その力によって収納筒体は上昇するのでより安定した切り出し動作が可能となる。
【0008】
請求項4のように、皿状部材上に錘が載置されるものとすることにより、皿状部材が切り出しの押圧力により積み重ね状態がばらばらになり、残留皿状部材による収納筒体の持ち上げ力が充分伝わらなくなることを防ぎ、切り出し動作を確実かつ安定させることができる。また、皿状部材の切り出し枚数が2枚以上の場合、収納筒体に充填収納される皿状部材の総数が切り出し回数と切り出し枚数との積に一致しないことがある。例えば、2枚づつ切り出していって、最後に皿状部材が1枚残った場合、切出し刃は錘に当たって停止されるので、枚数不足の皿状部材が送り出されることを的確に防止できるので不良品の発生がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1中、1は装置本体であり、該装置本体1は積み重ねられた皿状部材Wの所定枚数を切り出す切出し刃2と、該切出し刃2と直交して昇降動自在に設けられる皿状部材Wの収納筒体3とからなるものである。皿状部材Wは上側を凹部とする姿勢に配置され、該凹部に下面の凸部が嵌合されて多数枚が積み重ねられるものである。
【0010】
前記切出し刃2は収納筒体3と直交して配置され、収納筒体3内に積み重ねられる皿状部材Wに向けて出没されることにより、所定枚数の皿状部材Wの切り出して収納筒体3より押し出すものである。また、切出し刃2はその厚みを切り出す皿状部材Wの略枚数分の高さとするとともに、先端縁を皿状部材Wの円弧面と略等しい円弧面として皿状部材Wを安定して切り出すことができるようになっている。さらに、切出し刃2は後記する送出台7上に下面をガイドさせることにより切り出し高さの位置決めを行っているが、後記する駆動機構5のロッドを高い精度で位置決めできるものとすれば、切出し刃2を送出台7にガイドさせなくてよいことは勿論である。
【0011】
5は切出し刃2を間歇的に進退動させる電動シリンダまたは流体圧シリンダ等の駆動機構、6は前記収納筒体3を昇降動させる直線運動機構であり、該直線運動機構6は循環式ボールを用いたものとすれば摩擦係数が極めて小さいので、収納筒体3に加えられる僅かな持ち上げ力によっても容易に上昇運動を起こすことができる。
【0012】
また、前記収納筒体3は下端開口を送出台7上面に当接させるとともに下端周面に皿状部材Wの送出口10と切出し刃2の挿入口11を対向させて形成したものとしている。送出口10の開口幅は皿状部材Wの外径より僅かに大きいものとし、その開口高さは切り出す皿状部材Wの枚数分の合計高さより僅かに大きいものとしている。また、挿入口11の開口幅は切出し刃2の幅より僅かに大きめとし、その開口高さは切出し刃2の高さより僅かに大きいものとしている。12は皿状部材Wの残量を外部から確認できるようにする目視用切欠である。
【0013】
13は最上段の皿状部材W上に載置される錘であり、該錘13を皿状部材Wの上に載置することにより切出し刃2による皿状部材Wの切り出し動作の際、各皿状部材Wが踊って積み重ね状態が乱れて切り出し不良が発生することを防止するとともに、皿状部材W全体が収納筒体3の内面に均一に当接されるようにして切り出される皿状部材Wにより持ち上げられる残留皿状部材Wの上昇力が収納筒体3に的確に伝達されて収納筒体3が連動上昇されるようになっている。そして、残留皿状部材Wは最下端の残留皿状部材Wの下側凸部が切り出されていく皿状部材Wの凹部斜面にガイドされることにより切り出し枚数分の高さまで持ち上げられ、最下端の残留皿状部材Wの下方に切り出し皿状部材の送出路15が形成される。また、錘13は2枚以上の皿状部材Wを切り出して行く場合、収納筒体3に充填収納される皿状部材Wの総数が切り出し回数と切り出し枚数との積に一致しないと、切出し刃2は錘13に当たって停止されるので、枚数不足の皿状部材が送り出されることを的確に防止できることとなる。
【0014】
16は一側方部に送出台7を形成したベースであり、該ベース16の低段部に前記した切出し刃2の駆動機構5が設けられている。また、送出台7は先方部を先下がりのシュート部17として収納筒体3より押し出された皿状部材Wが自動的に滑落排出されるようになっている。
【0015】
このように構成されたものは、送出台7上に下端開口を当接させている収納筒体3内に多数枚の皿状部材Wをその凹部を上側として積み重ね充填する。そして皿状部材Wを充填収納後、その上部に錘13を載置する。
【0016】
このようにセットアップが完了後、駆動機構5を作動させれば、切出し刃2は間歇的な進退動を繰り返して収納筒体3の挿入口11を通じて筒内に出没されることとなる。筒内に進入した切出し刃2は収納筒体3内に積み重ねられている皿状部材Wを切出し刃2の厚み分、即ち必要とする枚数分を切り出すこととなる。
【0017】
この切り出しは図6に示されるように、切出し刃2の円弧状の先端が積み重ねられている皿状部材Wの外周縁に当接することにより行われる。この当接は切り出す皿状部材Wの枚数に応じるもので、好ましい実施の形態では図7に示されるように2枚の皿状部材Wを切り出すこととなる。切り出される下側の皿状部材Wの上側凹部と収納筒体3内に残る残留皿状部材Wの下側凸部とは嵌り合っているので、切り出される下側の皿状部材Wが押し出されることにより、図6に示されるように収納筒体3内の残留皿状部材Wは切り出される皿状部材Wの凹部斜面にガイドされて持ち上げられることとなる。
【0018】
この残留皿状部材Wを持ち上げる際、摩擦抵抗により残留皿状部材Wは横に移動して収納筒体3の前側内面に当接されることとなる。そして、この当接と残留皿状部材Wに加えられる持ち上げ力によって摩擦係数が小さい直線運動機構6により支持されている収納筒体3は連動上昇され、残留皿状部材Wの下方には切り出される皿状部材Wの送出路15が形成されることとなる。このため切り出された皿状部材Wは円滑に収納筒体3の送出口10より送り出され、送出台7のシュート部17から滑落され次工程に搬出されることとなる。
【0019】
なお、前記好ましい実施の形態では切り出される皿状部材Wは2枚としているが1枚以上であれば何枚でもよいことは勿論である。また、前記好ましい実施の形態では錘13を用いて積み重ねられた皿状部材Wが少なくなったときでも切り出しが円滑に行われるようにさせたり、切り出し枚数が不足した場合は、錘13に切出し刃2が当たって切り出しを停止させるようにしているが、残留皿状部材Wが常に一定枚数収納筒体3内に充填されるように補給して、下部の残留皿状部材Wに充分な重さが加えられるようにすれば、安定した切り出しができるうえに切り出し枚数の不足も起こらないので、錘13を用いなくてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す一部切欠正面図である。
【図2】同じく一部切欠平面図である。
【図3】同じく側面図である。
【図4】本発明において使用される皿状部材の平面図である。
【図5】同じく断面図である。
【図6】本発明における皿状部材の切り出し開始時を示す拡大断面図である。
【図7】本発明における皿状部材の切り出し状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0021】
2 切出し刃
3 収納筒体
5 駆動機構
6 直線運動機構
13 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納筒体内に出没される切出し刃により、収納筒体内に凹部を上側にして積み重ね収納される皿状部材を所定枚数切り出し、該切り出しにより収納筒体内に残留する皿状部材はその下側凸部を切り出されていく皿状部材の凹部斜面にガイドされて持ち上げられるとともに収納筒体内面に当接して収納筒体を連動上昇させ、切り出した皿状部材の送出路を形成することを特徴とする皿状部材の切出し方法。
【請求項2】
凹部を上側にして積み重ねされている皿状部材を所定枚数ずつ切り出す切出し刃と、凹部を上側にした皿状部材を積み重ね収納するとともに収納筒体内面に当接される残留の皿状部材の下側凸部を切り出されていく皿状部材の凹部斜面にガイドさせて残留皿状部材を切り出し枚数分の高さまで持ち上げて切り出し皿状部材の送出路を形成する昇降動自在な収納筒体とからなることを特徴とする皿状部材の切出し装置。
【請求項3】
収納筒体が摩擦係数の小さい直線運動機構を介して昇降動されることを特徴とする請求項2に記載の皿状部材の切出し装置。
【請求項4】
皿状部材上に錘が載置される請求項2または3に記載の皿状部材の切出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−264913(P2006−264913A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86434(P2005−86434)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】