説明

盗難防止ケースの解除具

【課題】凹入部の水平基台部上に過って各種磁気カードを落としても、磁石の影響を直接受けることがないようにした解除具を提供する。
【解決手段】商品出入用開口8を有するケース本体1の上壁を一部切除し、この切除部に、ストッパー片10を備えた回動壁体11を開閉可能に枢着し、ケース本体1側には切除部近傍所定位置に上向きに突出する複数の係止爪13を設け、回動壁体11には、複数のスライダ14をスライド自在に組み込むと共に、スライダ14に係止爪13に接近する方向の押圧力を付与するバネ15を設け、スライダ14には、回動壁体11を開放位置から閉鎖位置へと閉動するのに伴い係止爪13に当接してスライダ14を係止爪13と離反する方向に押し逃がし且つその閉動終了に伴い離反方向の押し逃がしが解放されて係止爪13と係合関係になるような係止部16と、磁気吸引用の鉄片17とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDカセットの音楽や映像を記録してあるディスクや、ビデオテープ、ゲームソフト、その他の商品(専用ケースに商品を収納してある)のレンタルシステム及び販売する商品やレンタル商品の盗難防止ケースを、商品とのロック状態から解除する解除具に関する。
【背景技術】
【0002】
レンタルショップの陳列棚に上記のような商品を収納した収納ケースを並べておくと、顧客による収納ケースの開放が可能なため、レンタルショップ側の盗難防止ケースに収納ケースを嵌め込んで陳列することにより、顧客による収納ケースの開放ができなくなり、商品の盗難を防止することができる。
【0003】
盗難防止ケースとして、下記特許文献1に記載されたようなものがある。この盗難防止ケースは、商品出入用開口を有するケース本体と、ケース本体の上壁に上面を開放させて設けたガイドと、ガイドの底面の上記開口側の直上に位置する辺縁に設けた長孔と、この長孔にストッパー片を貫通させてガイド内に昇降自在に嵌入した昇降体と、ストッパー片の両側縁突出方向端に設けた抜止め用の突起と、昇降体内に長孔に沿ってスライドするように組み込んだ左右一対のスライダと、両スライダに接近方向に押圧力を付与するバネと、ガイドの底からガイド方向に突出する係止爪と、両スライダに昇降体の押し込みにともない係止爪に当接して両スライダを離反方向に押し逃がし且つ昇降体の押し込み終了にともない前記離反方向の押し逃がしが解放されて係止爪と係合関係になるように設けた係止部と、両スライダに設けた鉄片からなるものである。
【0004】
この盗難防止ケースによれば、ガイドの底に昇降体を押し込むことで、係止爪に係止部が当接して押圧力に抗して両スライダを押し逃がし、係止部が係止爪を通過し終わると、押し逃がしの解除された両スライダを押し戻しながら、係止爪と係止部とが係合関係になり、昇降体と一体のストッパー片により開口の一部を閉鎖し、ケース本体内の商品の抜き取りを阻止することができる。
【0005】
そして、この盗難防止ケースをロック解除する解除具は、水平基台部と、この水平基台部の一端側に垂直に立ち上がる位置決め壁を有し、複数の並列する前記盗難防止ケースを上方から嵌入するように設けた凹入部と、この凹入部の底面に位置する水平基台部の両端側で盗難防止ケースの両スライダの鉄片外側に位置して両鉄片を磁気吸引力により引き寄せるように設けた2つの永久磁石とからなる。
【特許文献1】特開2007−314201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解除具は、レンタルショップ等のカウンターに設置し、顧客が持参してケースを凹入部に嵌入して商品のロックを解除するが、このロック解除の後、顧客が料金を支払いをするのにクレジットカード等の磁気カードを使用することがあり、そのカードの受け渡しをする際に、カードを解除具の凹入部内に誤って落とすことが考えられる。然るに、上述した従来の解除具では、水平基台部側に永久磁石が埋設されているため、凹入部の底面側である水平基台部上に、クレジットカード、キャッシュカード等の各種磁気カードを過って落とした場合、磁石の影響をまともに受けて、情報が消失するという危険性がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑み、凹入部の水平基台部上に過って各種磁気カードを落としても、磁石の影響を直接受けることがないようにした解除具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の解除具は、商品取出用開口8を有するケース本体1の所要部に一つ又は複数の係止爪13,13′を設け、前記開口8に突入して商品Bをケース本体1内にロックするストッパー片10を備えた可動壁体11に、複数のスライダ14を壁体長手方向にスライド自在に組み込むと共に、スライダ14に前記係止爪13,13′に接近する方向の押圧力を付与するバネ15を設け、スライダ14には、可動壁体11を開放位置から閉鎖位置へと閉動するのに伴い係止爪13,13′に当接してスライダ14を係止爪13,13′と離反する方向に押し逃がし、その閉動終了に伴い前記離反方向の押し逃がしが解放されて係止爪13,13′と係合関係になるような係止部16と、磁気吸引力を受けてスライダ14を前記バネ15の押圧力に抗して前記係止爪13,13′と離反する方向に移動させるための鉄片17とを設けてなる盗難防止ケースA,A′におけるストッパー片10を前記開口8から脱出させてロック解除する解除具C,C′であって、
水平基台部26とこれの奥端部から垂直に立ち上がる垂直壁部27と水平基台部26の左右両側に位置する両側壁部28,28との間に、盗難防止ケースA,A′を水平基台部26の手前側から垂直壁部27に向かって嵌入させるケース嵌入部29を設け、垂直壁部27には下端部位とそれより上方へ所定間隔置きに、盗難防止ケースA,A′の複数のスライダ14の鉄片17外側に位置して鉄片17を磁気吸引力により引き寄せる複数の永久磁石31,32,33を設けてなることを特徴とする。
【0009】
なお、上記可動壁体は、後述する実施形態の回動壁体11のことであるが、この実施形態の回動壁体11に限るものではなく、前述した特開2007−314201号公報に記載されているような従来の盗難防止ケースの昇降体も含むものとする。
【0010】
請求項2は、請求項1に記載の解除具において、垂直壁部27には2つの永久磁石31,32が設けられ、この2つの永久磁石31,32は、盗難防止ケースAの可動壁体11に設けられた2つ鉄片17,17に対応するようになっていることを特徴とする。
【0011】
請求項3は、請求項1に記載の解除具において、垂直壁部27には3つの永久磁石31,32,33が設けられ、この3つの永久磁石31,32,33のうちの何れが2つが、盗難防止ケースAの可動壁体11に設けられた2つの鉄片17,17に対応するようになっていることを特徴とする。
【0012】
請求項4は、請求項1に記載の解除具において、垂直壁部27には3つの永久磁石31,32,33が設けられ、この3つの永久磁石31,32,33は、盗難防止ケースA′の可動壁体11に設けられた3つの鉄片17,17,17に対応するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の解除具によれば、ケース嵌入部29に、ケースA,A′を可動壁体11を先端側にして水平基台部26の手前側から嵌入し、可動壁体11側を垂直壁部27に当接させると、永久磁石31,32,32の磁気吸引力によって、可動壁体11にあるスライダ14の鉄片17を吸引して係止爪13,13′と係止片16との係合関係を解除し、この状態からケースA,A′を手前側へ引っ張ることで、ストッパー片10がケース本体1の開口8から退出して、開口8の一部閉鎖が解除される。
【0014】
特に、この解除具では、永久磁石31,32,33は、水平基台部26ではなく、この水平基台部26の奥端部から垂直に立ち上がった垂直壁部27に設けてあるため、解除具の操作中などに、水平基台部26上に、過って、クレジットカードやキャッシュカード等の各種磁気カードを落としても、垂直壁部27側の永久磁石31,32,33の影響を直接受けることがない。因みに、従来の解除具では、水平基台部側に永久磁石が埋設してあるから、水平基台部上に上記のようなカードを落とすと、磁石の影響をまともに受けて、カードを台無しにする。
【0015】
請求項2によれば、垂直壁部27に2つの永久磁石31,32が設けてあるから、この2つの永久磁石31,32は、盗難防止ケースAの可動壁体11に設けられた2つの鉄片17,17に対応させて使用することができる。
【0016】
請求項3によれば、垂直壁部27に3つの永久磁石31,32,33が設けてあるから、この3つの永久磁石31,32,33のうちの何れが2つを、盗難防止ケースA′の可動壁体11に設けられた2つの鉄片17,17に対応させて使用することができる。
【0017】
請求項4によれば、垂直壁部27に3つの永久磁石31,32,33が設けてあるから、この3つの永久磁石31,32,33を、盗難防止ケースA′の可動壁体11に設けられた3つの鉄片17,17,17に対応させて使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明に係る盗難防止ケースを正面側から見た斜視図、図2の(a) 〜(c) は同盗難防止ケースAの回動壁体が開閉する状態を示す部分正面図であり、図3の(a) は同盗難防止ケースAの一部縦断面正面図、(b) は(a) の一部拡大図であり、図4の(a) はケース本体の正面図、(b) は平面図であり、図5の(a) は図4の(b) のX−X線断面図、(b) は図4の(b) のY−Y線断面図、(c) は図4の(b) のZ−Z線断面図である。これらの図において、Aは本発明に係る盗難防止ケースで、このケースA内に商品Bが収納される。この商品Bとしては、例えば収納ケースにディスクを収納したものとする。
【0019】
盗難防止ケースAは合成樹脂で一体形成されたケース本体1を有する。このケース本体1は、前面壁2と背面壁3と上下壁4,5と左右壁6,7とからなるもので、前面壁2には商品Bの丈よりも短い商品出入用開口8が設けられ、この開口8より商品の出し入れを行うようになっている。この開口8の丈を商品Bの丈よりも短くするのは、開口8の下縁8bからケース本体1内に商品Bの下縁側を先行させて嵌め込んだ後、商品Bの上縁を開口8の上縁8aの下側を通過させることによって商品Bをケース本体1内に嵌め込むが、その際、開口8の下縁8bの内側に商品Bの下縁部が納まって、開口8に対する商品Bのすべり出しを阻止するためである(図1及び図3の(a) 参照)。
【0020】
ケース本体1は、図4及び図5から分かるように、上壁4の一部が切除され、その切除部9には、ストッパー片10を備えた回動壁体11の一端部が、前記切除部9を閉じてストッパー片10が商品出入用開口8に突入する閉鎖位置(図2の(a) 参照)と、前記切除部9を開放してストッパー片10が前記開口8から退出する開放位置(図2の(c) 参照)とにわたって開閉可能に枢軸12により枢着されている。なお、実施形態では、切除部9は、上壁4の一部だけでなく、商品出入用開口8の上端部に一部形成されている前面壁2の一部も切除されており、従って切除部9は上壁4の切除部分と前面壁2上端部の切除部分とを含む。回動壁体11も合成樹脂で一体形成されたものである。また、ケース本体1の背面壁3には貫窓30が設けてある。
【0021】
また図4及び図5に示すように、ケース本体1側には前記切除部9の近傍所定位置に、ケース本体1と一体に形成された上向きに突出する山形の係止爪13が設けられている。この実施形態の山形係止爪13は、一対の山形テーパ面部13a,13aを有する。
【0022】
上記切除部9に枢着された回動壁体11には、図3の(a) 及び(b) に概略示すように、一対のスライダ14,14が壁体長手方向に一定範囲スライド自在に組み込まれると共に、各スライダ14にケース本体1側の係止爪13に接近する方向の押圧力を付与するためのコイルバネ15が回動壁体11との間に介装され、また各スライダ14には、回動壁体11を開放位置から閉鎖位置へと閉動するのに伴い係止爪13に当接してスライダ14を係止爪13と離反する方向に押し逃がし且つ回動壁体11の閉動終了に伴い係止爪13の山形テーパ面部から外れて前記離反方向の押し逃がしが解放されて係止爪13と夫々係合関係になるような係止部16と、磁気吸引用の鉄片17とが設けられている。
【0023】
上記鉄片17は、後述する解除具Cに設けられた永久磁石31,32の磁気吸引力を受けて、両スライダ14,14をコイルバネ15,15の押圧力に抗して係止爪13と離反する方向に強制スライドさせるための強磁性体である。
【0024】
上記スライダ14、バネ15及び鉄片17の取付構造について図6及び図7により詳しく説明すると、先ず、図6は回動壁体11を示すもので、(a) は正面図、(b) は平面図、(c) は底面図、(d) は左側面図、(e) は右側面図、(f) は(b) のV−V線断面図、(g) は背面図である。これらの図から、回動壁体11は、閉鎖位置でケース本体1の上壁4と面一を成す天板部11a及び閉鎖位置でケース本体1の前面壁2と面一を成す外板部11bを有し、この外板部11bの下部にストッパー片10が一体に形成されている。
【0025】
そして、天板部11aの下面側には下向きに突出する一対の側板11c,11dが外板部11bと平行に設けられ(図6の(c) 参照)、両側板11c,11dには、前記一対のスライダ14,14を壁体長手方向に夫々一定範囲スライドさせるためのスリット18,19が左右両側対称位置に形成され、また天板部11aの下面側にはスリット18,19の設けられた領域の両端側にバネ係止用突片20,20が下向きに突設されている。また回動壁体11の一端部には枢軸挿入孔21が設けてある。
【0026】
図7はスライダ14を示したもので、(a) は左右一対のスライダ14,14を左右対称位置に並べた状態で示す拡大正面図、(b) は同一対のスライダ14,14の拡大平面図、(c) はスライダ14の拡大側面図である。各スライダ14は、合成樹脂で一体形成されたもので、先端部に正面視三角形の係止片16を有すると共に、先端部両側面と中間部両側面の夫々上端部には、回動壁体11の両側板11c,11dに設けられているガイド用スリット18,19に係合して各スライダ14を壁体長手方向にスライド案内する係合突起22,23が突設されている。
【0027】
図8の(a) は回動壁体11と、これに取り付けるスライダ14、バネ15及び鉄片17の配置関係を示す説明図、(b) はそれらを回動壁体11に取り付け状態の説明図である。取付けにあたっては、先ず、各スライダ14内の底部側にコイルバネ15を収納し、その上側の先端側寄りに鉄片17を(a) の仮想線図示のように収納しておき、しかして左右両スライダ14,14を回動壁体11内にその下方より挿入して、各スライダ14の係合突起22,23を図6に示す回動壁体11の両側板11c,11dに設けてあるガイド用スリット18,19に係合させると共に、各コイルバネ15は、(b) に示すように、一端側を回動壁体11側のバネ係止用突片20に係止させ、他端側をスライダ14の内壁部nに係止させるようにする。
【0028】
図8の(b) に示す取付状態において、各スライダ14は、その係合突起22,23が回動壁体11側のガイド用スリット18,19に係合して案内されることにより、一定範囲スライド自在であって、常時は、回動壁体11側のバネ係止用突片20とスライダ14の内壁部nとの間に介装したコイルバネ15の付勢力によって、左右両スライダ14,14の係止片16,16が図示のように接近する状態に保持されている。
【0029】
なお、この実施形態では、ケース本体1側に、一対のテーパ面部13a,13aを有する山形の係止爪13を一つ設け、そして回動壁体11には、山形係止爪13を挟んでその両側に一対のスライダ14,14を設けると共に、両スライダ14,14を夫々バネ15によって係止爪13に両側から接近する方向に押圧するようにしているが、山形の係止爪13に代えて、一つのテーパ面部を有する片流れ形状の係止爪を所要間隔をおいて左右一対設け、各片流れ係止爪ごとにスライダをバネによって接近させるようにしてもよい。
【0030】
図9は、盗難防止ケースAのロック状態にあるストッパー片10をロック解除するための解除具Cを示す外観斜視図である。この解除具Cは解除具本体25を有する。この解除具本体25は、水平基台部26と、この水平基台部26の奥端部から垂直に立ち上がる垂直壁部27と、水平基台部26の左右両側に位置する両側壁部28,28との間に、複数の並列する盗難防止ケースAを水平基台部の手前側から垂直壁部27に向かって嵌入するようなケース嵌入部29を設け、そして垂直壁部27には下端部位とそれより上方へ所定間隔をおいた位置との2ヶ所に、盗難防止ケースAに設けてある2つのスライダ14,14の鉄片17,17の夫々の端部側の外側に位置して、両鉄片17,17を夫々磁気吸引力により引き寄せる永久磁石31,32を埋設したものである。
【0031】
上述した本発明の盗難防止ケースAの作用について説明すると、回動壁体11が図2の(c) に示すような開放位置にある時、ストッパー片10はケース本体1の商品出入用開口8から退出し、切除部9を開放した状態にあり、またこの時、回動壁体11内にある一対のスライダ14,14は、図7の(b) に示すように、鉄片17,17と共に、コイルバネ15,15によって互いに接近する方向に引き寄せられた状態にある。
【0032】
しかして、回動壁体11が図2の(c) に示すような開放位置にある状態で商品Bを開口8からケース本体1内に嵌め込んだ後、回動壁体11を枢軸12を中心に下向きに回動させると、上壁4の切除部9を閉じながらストッパー片10が開口8に突入するのに伴い、左右両スライダ14,14の係止片16,16がケース本体1側の係止爪13のテーパ面部13a,13aに当接して、テーパ面部13aの楔作用により、両スライダ14,14をコイルバネ15,15の付勢力に抗して互いに離反方向に押し逃がし、係止片16,16が係止爪13を通過し終わると、コイルバネ15,15の押圧力により両スライダ14,14が互いに接近する方向にスライドして、図3の(b) に示すように係止爪13と両係止片16,16とが係合関係になり、それにより回動壁体11はストッパー片10が開口8に突入した閉鎖位置に保持され、盗難防止ケースAのケース本体1がロックされる。
【0033】
上記のように回動壁体11が閉鎖位置に位置してストッパー片10により商品出入用開口8の一部を閉鎖するので、ケース本体1からの商品Bの抜き取りが阻止され、盗難防止を図ることができる。なお、ショップからのケースAの持ち出しは、周知のように、ケースAに設けられる盗難防止タグ(図示省略)によって検出されるようになっている。
【0034】
次に、商品Bの販売やレンタルのためにショップ側で商品Bを盗難防止ケースAから取り出す場合は、解除具Cのケース嵌入部29に、単数並列する複数のケースAを、図9,図10に示すように回動壁体11を先端側にして水平基台部26の手前側から嵌入し、回動壁体11側を解除具Cの垂直壁部27に当接させる。そうすると、垂直壁部27に埋設してある永久磁石31,32の磁気吸引力によって、回動壁体11にある両スライダ14,14の2つの鉄片17,17を夫々吸引し、両スライダ14,14を互いに離反する方向にスライドさせて、図11に示すように係止爪13と係止片16,16との係合関係を解除する。
【0035】
この状態から、図12に示すようにケース本体1を手前側へ引っ張ると、垂直壁部27側の永久磁石31,32によって回動壁体11側の鉄片17,17を吸引しているので、回動壁体11の先端部側が垂直壁部27側に止まった状態となり、しかして回動壁体11は枢軸12を中心に遊端部側がケース本体1の切除部9を開放するように回動して、ストッパー片10がケース本体1の商品出入用開口8から退出し、それにより開口8の一部閉鎖が解除される。従って、ケースAを解除具Cから抜き去った後、ショップ側でケース本体1から商品Bを取り出すことができる。
【0036】
以上説明した実施形態では、解除具Cの垂直壁部27には、下端部位とそれより上方へ所定間隔をおいた部位との2ヶ所に永久磁石を設けたが、盗難防止ケースAの回動壁体11側にスライダ14が2つ以上設けられる場合も考えられることから、各スライダ14毎に取り付けられる鉄片17に対応して、垂直壁部27に2つ以上、例えば3つの永久磁石を、その下端部位から上方へ所定間隔置きに設けることができる。
【0037】
図13は垂直壁部27の下端部位と上端部位とその中間部位との3ヶ所に永久磁石31,32、33を埋設した解除具C′を示す。この解除具C′は、垂直壁部27に3つの永久磁石31,32、33が設けてある以外は、図9に示す解除具Cと同様の構造である。図14には、解除具C′によってロック解除されている盗難防止ケースA′を示す。この解除具C′の垂直壁部27にある3つの永久磁石は、盗難防止ケースA′の回動壁体11に設けられた3つの鉄片17,17,17に対応するようになっている
【0038】
上記盗難防止ケースA′のケース本体1には、図15〜図17から分かるように、一対のテーパ面13a,13aを有する一つの山形係止爪13と、1つのテーパ面13a′を有する1つの片流れ形係止爪13′とが設けられ、回動壁体11には、山形係止爪13に対し接近離反する一対のスライダ14,14と、片流れ形係止爪13′に対し接近離反する一つのスライダ14との3つのスライダ14,14,14が設けられ、各スライダ14とケース本体1との間にはスライダ14を係止爪13′に接近方向の押圧力を付与するコイルバネ15が設けられ、また各スライダ14には係止部16及び鉄片17が設けられている。この盗難防止ケースA′の作用は、前記盗難防止ケースAと同様である。図15〜図17において、40は永久磁石31,32,33の夫々の取付台座である。
【0039】
上記解除具C′の使用にあたり、ケース嵌入部29に複数のケースA′を回動壁体11を先端側にして水平基台部26の手前側から嵌入し、回動壁体11側を解除具C′の垂直壁部27に当接させると、垂直壁部27に設けられた永久磁石31,32,33の夫々の磁気吸引力によって、回動壁体11にある3つのスライダ14,14,14の3つの鉄片17,17,17を夫々吸引し、それらのスライダ14,14,14を山形係止爪13及び片流れ形係止爪13′に対し離反する方向にスライドさせて、係止爪13,13′と係止片16,16、16との係合関係を解除する(図16参照)。
【0040】
この状態では、垂直壁部27の永久磁石31,32,33によって回動壁体11の鉄片17,17が垂直壁部27に吸引されているので、図17に示すようにケースA′のケース本体1を手前側へ引っ張ると、回動壁体11は垂直壁部27側に止まった状態となり、従って回動壁体11を除くケース本体1が、図17に示すように枢軸12を中心として、回動壁体11の遊端部から離れるように回動して、ストッパー片10がケース本体1の商品出入用開口8から退出し、それにより開口8の一部閉鎖が解除される。従って、ケースA′を解除具C′から抜き去った後、ショップ側でケース本体1から商品Bを取り出すことができる。
【0041】
以上説明した本発明に係る解除具C,C′は、図1〜図12に示す盗難防止ケースA及び図14〜図17に示す盗難防止ケースA′をロック解除する場合について説明したが、これら本発明に係る解除具C,C′は、前述した特開2007−314201号公報に記載されているような従来タイプの盗難防止ケースについても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る盗難防止ケースを正面側から見た斜視図である。
【図2】(a) 〜(c) は同盗難防止ケースの回動壁体が開閉する状態を示す部分正面図である。
【図3】(a) は同盗難防止ケースAの一部縦断面正面図、(b) は(a) の一部拡大図である。
【図4】(a) はケース本体の正面図、(b) は平面図である。
【図5】(a) は図4の(b) のX−X線断面図、(b) は図4の(b) のY−Y線断面図、(c) は図4の(b) のZ−Z線断面図である。
【図6】(a) は正面図、(b) は平面図、(c) は底面図、(d) は左側面図、(e) は右側面図、(f) は(b) のV−V線断面図、(g) は背面図である。
【図7】スライダを示すもので、(a) は左右一対のスライダを左右対称位置に並べた状態で示す拡大正面図、(b) は同一対のスライダの拡大平面図、(c) はスライダの拡大側面図である。
【図8】(a) は回動壁体と、これに取り付けるスライダ、バネ及び鉄片の配置関係を示す説明図、(b) はそれらを回動壁体に取り付け状態の説明図である。
【図9】解除具を外観斜視図である。
【図10】解除具の使用状態を示す縦断面図である。
【図11】解除具の使用状態を示す一部拡大縦断面図である。
【図12】解除具の使用状態を示す一部拡大縦断面図である。
【図13】垂直壁部の3ヶ所に永久磁石を設けた解除具の斜視図である。
【図14】図13に示す解除具によってケースをロック解除している状態の斜視図である。
【図15】図14のロック解除の詳細を説明する拡大図である。
【図16】同じくロック解除の詳細を説明する拡大図である。
【図17】同じくロック解除の詳細を説明する拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
A,A′ 盗難防止ケース
B 商品
C,C′ 解除具
1 ケース本体
4 ケース本体の上壁
8 商品出入用開口
9 切除部
10 ストッパー片
11 回動壁体
13 山形係止爪
13′ 片流れ形係止爪
14 スライダ
15 バネ
16 係止部
17 鉄片
26 水平基台部
27 垂直壁部
31,32,33 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品取出用開口を有するケース本体の所要部に一つ又は複数の係止爪を設け、前記開口に突入して商品をケース本体内にロックするストッパー片を備えた可動壁体に、複数のスライダを壁体長手方向にスライド自在に組み込むと共に、スライダに前記係止爪に接近する方向の押圧力を付与するバネを設け、スライダには、可動壁体を開放位置から閉鎖位置へと閉動するのに伴い係止爪に当接してスライダを係止爪と離反する方向に押し逃がし、その閉動終了に伴い前記離反方向の押し逃がしが解放されて係止爪と係合関係になるような係止部と、磁気吸引力を受けてスライダを前記バネの押圧力に抗して前記係止爪と離反する方向に移動させるための鉄片とを設けてなる盗難防止ケースにおけるストッパー片を前記開口から脱出させてロック解除する解除具であって、
水平基台部とこれの奥端部から垂直に立ち上がる垂直壁部と水平基台部の左右両側に位置する両側壁部との間に、盗難防止ケースを水平基台部の手前側から垂直壁部に向かって嵌入させるケース嵌入部を設け、垂直壁部には下端部位とそれより上方へ所定間隔置きに、盗難防止ケースの複数のスライダの鉄片外側に位置して鉄片を磁気吸引力により引き寄せる複数の永久磁石を設けてなる解除具。
【請求項2】
垂直壁部には2つの永久磁石が設けられ、この2つの永久磁石は、盗難防止ケースの可動壁体に設けられた2つの鉄片に対応するようになっている請求項1に記載の解除具。
【請求項3】
垂直壁部には3つの永久磁石が設けられ、この3つの永久磁石のうちの何れが2つが、盗難防止ケースの可動壁体に設けられた2つの鉄片に対応するようになっている請求項1に記載の解除具。
【請求項4】
垂直壁部には3つの永久磁石が設けられ、この3つの永久磁石は、盗難防止ケースの可動壁体に設けられた3つの鉄片に対応するようになっている請求項1に記載の解除具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−47292(P2010−47292A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213742(P2008−213742)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(597007710)ACTUNI株式会社 (8)
【Fターム(参考)】