説明

盗難防止部材を装着可能な交換レンズ装置

【課題】交換レンズ装置を大型化することなく、その盗難を防止する。
【解決手段】交換レンズ装置は、非着脱式の三脚座40を備える。三脚座は、操作部材61,64と該操作部材が回転操作されることによって交換レンズ装置の鏡筒に対する三脚座の回転を阻止する機構とを含む回転ストッパ部50を有する。回転ストッパ部における操作部材の内側に、盗難防止部材を装着可能なロック装着部62が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズ装置に関し、特に盗難防止部材の装着が可能な交換レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
店内や展示会においては、交換レンズ装置をユーザが手に取れるように展示しておく場合が多い。このような場合、交換レンズ装置の盗難を防止する必要がある。
【0003】
一般的な展示品の盗難防止対策としては、展示品にセキュリティーワイヤを取り付けたり錠前を使用したりする方法がよく知られている。特許文献1には、セキュリティーワイヤを用いたカメラ用の盗難防止装置が開示されている。また、特許文献2には、パスワードによってカメラの正常動作を制限することで盗難を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−134565号公報
【特許文献2】特開平03−051834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示された盗難防止装置では、セキュリティーワイヤを装着するための大きなボックス状の部材(支持台)をカメラに固定する必要があり、同様の部材を交換レンズに固定すると、交換レンズ装置の大型化を招く。
【0006】
また、特許文献2にて開示された方法を交換レンズ装置に適用すると、交換レンズ装置の盗難を抑制することはできるものの、確実に盗難を防ぐことはできない。
【0007】
本発明は、交換レンズ装置を大型化することなく、その盗難を防止することができるようにした交換レンズ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての交換レンズ装置は、非着脱式の三脚座を備える。三脚座は、操作部材と該操作部材が回転操作されることによって交換レンズ装置の鏡筒に対する三脚座の回転を阻止する機構とを含む回転ストッパ部を有する。そして、回転ストッパ部における操作部材の内側に、盗難防止部材を装着可能なロック装着部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の三脚座にも設けられている回転ストッパ部における操作部材の内側にロック装着部を設けたので、交換レンズ装置を大型化することなく、その盗難を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例である交換レンズ装置の三脚ノブ部の分解斜視図。
【図2】実施例の交換レンズ装置とデジタル一眼レフカメラを示す断面図。
【図3】図2における(A)部の拡大図。
【図4】実施例における三脚ノブ部の平面図。
【図5】実施例における三脚ノブ部への盗難防止部材の装着/取り外しの仕方を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図2には、本発明の実施例である交換レンズ装置と該交換レンズ装置が着脱されるデジタル一眼レフカメラとを示している。
【0013】
1はデジタル一眼レフカメラ(以下、単にカメラという)である。2はカメラ1に取り外し可能に装着された交換レンズ装置である。
【0014】
カメラ1において、3は交換レンズ装置2からの光束をファインダ光学系7と撮像素子6とに選択的に導くメインミラーであり、ハーフミラーにより構成されている。図に示すように光路内に配置されたメインミラー3で反射した光束は、ファインダ光学系7および接眼光学系8を介してユーザの眼に導かれ、被写体像の観察を可能とする。また、メインミラー3を透過した光束は、サブミラー4で反射されて焦点検出ユニット5に導かれる。
【0015】
撮影時には、メインミラー3およびサブミラー4は光路外に退避する。このため、交換レンズ装置2からの光束は、撮像素子6上に被写体像を形成する。撮像素子6は、CCDセンサやCMOSセンサにより構成され、被写体像を光電変換する。撮像素子6からの出力信号から画像データが生成され、記録媒体に記録されたり、背面ディスプレイ9に表示されたりする。
【0016】
交換レンズ装置2は、その鏡筒の内部に、1群レンズL1、図示しない変倍レンズ、フォーカスレンズおよび防振レンズ等の複数のレンズや絞りによって構成される撮影光学系を有する。
【0017】
以下、鏡筒の構成について説明する。21は外装環であり、固定筒22の外周に取り付けられている。固定筒22および外装環21の後端部には、カメラ1に装着されるマウント27が固定されている。固定筒22の前端には、中間筒23が結合されている。
【0018】
中間筒23は、オートフォーカスおよびマニュアルフォーカス時にフォーカスレンズを光軸方向に移動させる不図示のフォーカス駆動ユニットを保持するフォーカス保持部24や、絞りを保持する絞り保持部等を有する。
【0019】
25は1群レンズL1を保持する1群鏡筒であり、中間筒23の前端部に結合されている。中間筒23の外周には、フォーカス環32が回転可能に配置されている。フォーカス環32が回転操作されることで、フォーカス駆動ユニットを介してフォーカスレンズを光軸方向に移動させ、マニュアルフォーカスを行える。
【0020】
外装環21の外周には、三脚リング41が取り付けられている。三脚リング41には、三脚足42が取り付けられている。三脚リング41は、外装環21に対して複数のベアリングによって光軸回りで回転可能に保持される。三脚リング41は、外装環21に周方向90°間隔で形成された不図示の溝部に対して嵌り込んだり外れたりするローラー43と、該ローラー43を外装環21に向けて付勢する付勢部材(図示せず)とを有する。ユーザが三脚リング41を鏡筒に対して回転させたときにローラー43が外装環21の溝部に嵌り込むことでクリック感が発生するため、三脚リング41の90°ごとの回転をユーザに認識させることができる。
【0021】
また、三脚座リング41には、回転ストッパ部50が設けられている。回転ストッパ部50には、ユーザによる回転操作が可能な操作部材と、該操作部材の回転操作に応じて外装環21に対する三脚リング41の回転にブレーキを掛けて、三脚リング41の外装環21に対する回転を阻止する機構とを有する。回転ストッパ部50については、より詳しく後述する。
【0022】
三脚足42には、不図示の三脚に固定されるねじ締め部44と、ユーザが持ち運びし易いようにするためのゴム部45とを有する。
【0023】
三脚座リング41、回転ストッパ部50および三脚足42によって、非着脱式の三脚座40が構成される。非着脱式とは、ユーザ等が意図的に分解しない限り、交換レンズ装置から取り外されることがなく、交換レンズ装置と常に一体のものとして用いられるという意味である。これに対して、着脱式の三脚座は、ユーザによる簡単な操作で交換レンズ装置に対して取り付けたり取り外したりすることができるものを意味する。
【0024】
次に、図1、図3および図4を用いて、三脚座40における回転ストッパ部50の構成について詳しく説明する。図1は図2中の(A)部を分解して示しており、図3は同部の断面を示している。また、図4は、同部の平面図である。なお、以下の説明では、回転ストッパ部50における鏡筒の径方向外側に向かう側を上側とし、径方向内側に向かう方向を下側とする。
【0025】
回転ストッパ部50は、ノブサブユニット60と、ノブ座51と、ノブ輪止め軸ビス52と、ノブ輪53と、ノブカバー54と、ノブ座固定用ビス55とにより構成されている。
【0026】
ノブサブユニット60は、図3に示す軸(O)を中心として回転可能な回転部材であるノブ軸61と、ノブ軸61の上部に形成された円筒形状の空間61bの上端開口を覆うように配置されるノブ板62と、該ノブ板62をノブ軸61に固定するビス63とを有する。さらに、ノブサブユニット60は、ノブ軸61の外周にインサート成型によってノブ軸61に対して一体的に形成され、ユーザが回転操作するために手で持つ操作リング64を有する。操作リング64とノブ軸61とは軸(O)回りで一体回転する。操作リング64とノブ軸61とにより操作部材が構成される。
【0027】
ノブ軸61の下部における軸(O)回りには、雄ネジ部61aが形成されている。ノブ座51には、雄ネジ部61aに螺合する雌ネジ部が形成されている。ノブ座51は、三脚リング41に対してノブ座固定用ビス55によって固定されている。このため、操作リング64とノブ軸61を回転させると、ノブサブユニット60がノブ座51(つまりは三脚リング41)に対して、三脚リング41および外装環21の径方向である図3の上下方向に移動する。
【0028】
ノブ軸61の下端部(三脚リング41および外装環21側の端部)には、ノブ輪53がノブ輪止め軸ビス52によってノブ軸61に対して回転可能に取り付けられている。操作リング64とノブ軸61の回転によってノブサブユニット60が下動すると、ノブ輪53が外装環21の外周面に押し付けられて三脚リング41の外装環21回りでの回転にブレーキが掛けられ、該回転が阻止される。
【0029】
本実施例では、高い強度が必要な雄ネジ部61aや後述するキー部材が挿入される空間部61bが形成されたり、ノブ板62が固定されたりするノブ軸61を、剛性の高い金属材料により形成する。一方、ユーザが手で触れる操作リング64は、プラスチック材やゴム材等の弾性または柔軟性のある材料により形成して、良好な操作感が得られるようにしている。
【0030】
ノブ板62のうち軸(O)が通る中央部には、図4に示すように、ノブ軸61内の空間部61bにつながる長穴形状の穴部62aが形成されている。この穴部62には、図5(a)に示すように、盗難防止部材であるセキュリティーワイヤ75の一端に設けられたロック部70のキー部材71を挿入することができる。本実施例では、ケンジントンロックを構成している。
【0031】
キー部材71は、穴部62を通ってノブ軸61内の空間部61bまで挿入される。そして、図5(b)に示すように、空間部61bまで挿入されたキー部材71が軸(O)回りで90°回転されると、キー部材71がノブ板62に係合して穴部62から抜けなくなる。これにより、セキュリティーワイヤ75のロック部70がノブ板62(つまりは回転ストッパ部50)に装着される。このように、ノブ板62は、回転ストッパ部50における操作部材の内側において、盗難防止部材が装着されるロック装着部を構成する。図5(b)の状態から図5(a)の状態にキー部材71を回転させれば、セキュリティーワイヤ75のロック部70を回転ストッパ部50から取り外すことができる。
【0032】
なお、本実施例では、ノブ板62をノブ軸61にビス63を固定した後に、ノブ板62とビス63まで覆うように操作リング64をノブ軸61の外周にインサート成型する場合を示している。このため、操作リング64のうちノブ板62を覆う部分には、穴部62aにつながる穴部64aが形成されている。このように、操作リング64によってノブ板62およびビス63まで覆うように形成することで、ノブ軸61からノブ板62が取り外されることを防止している。
【0033】
ノブカバー54は、セキュリティーワイヤ75のロック部70を回転ストッパ部50に装着しないときに操作リング64の上面を覆うカバー部54aと、該カバー部54aから伸びる脚部54bとを有する。カバー部54aは、操作リング64の穴部64aに嵌り込むことが可能な凸部54dを有する。操作リング64の穴部64aは、ノブ板62の穴部62aよりも若干大きく形成されており、穴部64aに挿入された凸部54dの先端は、ノブ板62の穴部62aの周辺部分でそれ以上の挿入が阻止される。
【0034】
脚部54bは、その先端に抜け止め部54cを有し、ノブサブユニット60に形成されたノブカバー取り付け穴60aに挿入されることで、ノブカバー54をノブサブユニット60に対して取り付ける。抜け止め部54cは脚部54bが伸びる方向に遊びを有しており、セキュリティーワイヤ75のロック部70を回転ストッパ部50に装着する際には、カバー部54aを邪魔にならない位置まで開くことができる。
【0035】
本実施例によれば、従来の三脚座にも設けられている回転ストッパ部50の操作部材(61,64)の内側に、盗難防止部材を装着可能なロック装着部としてのノブ板62を設けたので、交換レンズ装置2を大型化することなく、その盗難を防止ことができる。言い換えれば、盗難防止部材を装着するための大きな部材を追加することなく、高い盗難防止効果を得ることができる。
【0036】
なお、盗難防止部材の装着方法としては、ケンジントンロックに限らず、他の装着方法を用いてもよい。例えば、回転ストッパ部50に貫通穴を形成し、該貫通穴にワイヤや錠前を挿通する方法を用いてもよい。
【0037】
貫通穴を設ける箇所は、三脚座のノブ形状に限定されず、三脚リングや三脚足に設けてもよい。
【0038】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
盗難を防止できる小型の交換レンズ装置を提供できる。
【符号の説明】
【0040】
40 三脚座
50 回転ロック部
61 ノブ軸
64 操作リング
61b 空間部
62 ノブ板
70 ロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非着脱式の三脚座を備えた交換レンズ装置であって、
前記三脚座は、操作部材と該操作部材が回転操作されることによって前記交換レンズ装置の鏡筒に対する前記三脚座の回転を阻止する機構とを含む回転ストッパ部を有しており、
前記回転ストッパ部における前記操作部材の内側に、盗難防止部材を装着可能なロック装着部が設けられていることを特徴とする交換レンズ装置。
【請求項2】
前記ロック装着部は、前記操作部材の内側に形成された空間の開口を覆うように配置されて該空間につながる穴部を有する部材を用いて構成されており、
前記盗難防止部材は、前記穴部を通して前記空間に挿入されることにより前記ロック装着部に装着されることを特徴とする請求項1に記載の交換レンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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