説明

監視装置

【課題】低コストで開閉器のモータの動作を監視することが可能な監視装置を提供する。
【解決手段】複数の開閉器の夫々を入り状態または切り状態とするために複数の開閉器の夫々に設けられた複数のモータと、複数のモータに対して電源線を介して電源を供給する電源装置と、を備える電気所における監視装置であって、電源線における複数の開閉器が電源線に接続される夫々のノードの全ての位置より上流側に流れる電流を測定する測定部と、複数の開閉器のうち何れかの開閉器の状態が変化される際の測定部の測定結果に基づいて、何れかの開閉器に設けられたモータに電流が流れる期間を算出する算出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、変電所等の電気所には、遮断器や断路器等の開閉器が設けられている。一般的な開閉器においては、開閉器の内部に設けられたモータが動作することにより、開閉器の入り状態または切り状態が変化する。開閉器の状態を変化させるモータに異常が発生すると、開閉器は所望の動作をしなくなることがある。このため、開閉器のモータに異常があるか否か等を、例えば、開閉器のモータが回転する角速度を測定することにより把握することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−4483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、開閉器のモータが回転する角速度を測定してモータの動作を監視する監視装置は、開閉器のモータ毎に設ける必要がある。
このため、電気所に多数の開閉器が設置されている場合、モータの動作を監視する監視装置も多数設ける必要があり、コストが高くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、低コストで開閉器のモータの動作を監視することが可能な監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、複数の開閉器の夫々を入り状態または切り状態とするために前記複数の開閉器の夫々に設けられた複数のモータと、前記複数のモータに対して電源線を介して電源を供給する電源装置と、を備える電気所における監視装置は、前記電源線における前記複数の開閉器が前記電源線に接続される夫々のノードの全ての位置より上流側に流れる電流を測定する測定部と、前記複数の開閉器のうち何れかの開閉器の状態が変化される際の前記測定部の測定結果に基づいて、前記何れかの開閉器に設けられたモータに電流が流れる期間を算出する算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
低コストで開閉器のモータの動作を監視することが可能な監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態である監視システム10の構成を示した図である。
【図2】遮断器20が投入される際の制御電流I0の波形の一例を示す図である。
【図3】遮断器21が投入される際の制御電流I0及び投入電流I1の波形の一例を示す図である。
【図4】断路器23が投入される際の制御電流I0の波形の一例を示す図である。
【図5】断路器24が投入される際の制御電流I0及び投入電流I1の波形の一例を示す図である。
【図6】マイコン74が実現する機能ブロックを示す図である。
【図7】記憶装置71に記憶される基準期間Trefの値を示す図である。
【図8】監視装置27が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】監視装置27が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】波形判定部102が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】判別部103が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図12】算出部104が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である監視システム10の構成を示した図である。監視システム10は、遠隔制御装置15、遮断器20〜22、断路器23,24、直流電源装置25、監視装置27、変流器28,29、電源線30,31を含んで構成される。なお、遮断器20〜22、および断路器23,24は、開閉器に相当し、電源線30,31は、電源線に相当する。
【0011】
遠隔制御装置15は、制御所に設けられ、利用者の操作結果に応じて遮断器20〜22、断路器23,24の動作(入り状態、または切り状態)を制御する。
【0012】
遮断器20は、いわゆる小型電動ばね投入式の遮断器であり、遮断器20の状態(入り状態、切り状態)を変化させるためのモータ50を含んで構成される。また、遮断器20は、遠隔制御装置15からの制御に基づいて状態が変化するとともに、送電線Aに流れる電流が所定以上となると切り状態となる。なお、遮断器20は、小型電動ばね投入式の遮断器であるため、モータ50が動作する際にモータ50に流れる電流値は小さい。
【0013】
遮断器21は、いわゆる中型電動ばね投入式の遮断器であり、遮断器21の状態を変化させるためのモータ51を含んで構成される。また、遮断器21は、遠隔制御装置15からの制御に基づいて状態が変化するとともに、送電線Bに流れる電流が所定以上となると切り状態となる。なお、遮断器21は、中型電動ばね投入式の遮断器であるため、モータ51が動作する際にモータ51に流れる電流は、モータ50に流れる電流より大きい。
【0014】
遮断器22は、いわゆる大型電動ばね投入式の遮断器であり、遮断器22の状態を変化させるためのモータ52を含んで構成される。遮断器22は、例えば遠隔制御装置15からの制御に基づいて状態が変化するとともに、送電線Cに流れる電流が所定以上となると切り状態となる。なお、遮断器22は、大型電動ばね投入式の遮断器であるため、モータ52が動作する際にモータ52に流れる電流は、モータ51に流れる電流より大きい。
【0015】
断路器23は、いわゆる小型の電動式断路器であり、断路器23の状態を変化させるためのモータ53を含んで構成される。断路器23は、遠隔制御装置15からの制御に基づいて状態が変化し、例えば送電線Dの下流側に電源の供給を停止する際には切り状態となる。また、断路器23は、小型の電動式断路器であるため、モータ53が動作する際のモータ53の電流値は小さい。
【0016】
断路器24は、電磁ブレーキ機能を備えた大型の電動式断路器であり、断路器24の状態を変化させるためのモータ54を含んで構成される。断路器24は、遠隔制御装置15からの制御に基づいて状態が変化し、例えば送電線Eの下流側に電源の供給を停止する際には切り状態となる。なお、断路器24は、電磁ブレーキ機能を備えているため、モータ54が動作する期間、すなわち、モータ54に電流が流れる期間は、モータ53に電流が流れる期間より長くなる。
【0017】
直流電源装置25は、電気所における開閉器(遮断器20等)の動作を制御するための制御用電源と、開閉器を動作させるための投入用電源とを生成する装置である。直流電源装置25は、整流器40、蓄電池41、配電用遮断器42〜44、直流母線45、及び端子46,47を含んで構成される。
【0018】
整流器40は、交流電源(不図示)から入力される交流電流を直流電流に変換し、配電用遮断器42と、直流母線45とを介して蓄電池41を充電する。また、整流器40は、直流母線45に接続される開閉器に直流電源を供給する。
【0019】
蓄電池41は、例えば、停電等で整流器40に交流電源が入力されない場合や過渡的に直流母線45の電圧が低下した場合、直流母線45に接続される開閉器に直流電源を供給する。
【0020】
配電用遮断器42〜44の夫々は、直流母線45に接続される開閉器を過電流から保護するための遮断器である。配電用遮断器42は、整流器40の電源を直流母線45に配電する。
【0021】
配電用遮断器43は、直流母線45の電源を遮断器20〜22及び断路器23,24の動作を制御するための制御用電源として、端子46及び電源線30を介して遮断器20〜22及び断路器23,24に配電する。さらに、配電用遮断器43は、動作時の電流が小さいモータ50,53を動作させるために、直流母線45の電源を、モータ50,53に配電する。
【0022】
配電用遮断器44は、動作時の電流が大きいモータ51,52,54を動作させるべく、直流母線45の電源を投入用電源として、モータ51,52,54に配電する。本実施形態においては、投入用電源は、端子47及び電源線31を介してモータ51,52,54に配電される。
【0023】
監視装置27は、配電用遮断器43から端子46へ流れる制御電流I0と、配電用遮断器44から端子47へ流れる投入電流I1を測定することにより、電気所における開閉器のモータの動作を監視する装置である。監視装置27は、ADコンバータ(ADC)70、記憶装置71、操作部72、表示部73、及びマイコン74を含んで構成される。なお、監視装置27の詳細については後述する。
【0024】
変流器28は、電源線30において開閉器が接続される夫々のノードの全ての位置より上流側に流れる電流である制御電流I0を測定し、変流器29は、電源線31において開閉器が接続される夫々のノードの全ての位置より上流側に流れる電流である投入電流I1を測定する。なお、変流器28は、例えば直流電源装置25における配電用遮断器43及び端子46の間に設けられ、変流器29は、例えば直流電源装置25における配電用遮断器44及び端子47の間に設けられている。
【0025】
また、変流器28,29は、測定部に相当する。
【0026】
==モータの動作電流波形について==
ここで、正常なモータ50〜54の夫々が動作する際の制御電流I0、投入電流I1の代表的な波形について説明する。
【0027】
図2は、遮断器20が投入される際の制御電流I0の代表的な波形である。なお、前述のように、遮断器20のモータ50には制御用電源が供給されているため、モータ50の動作電流は制御電流I0に含まれる。
【0028】
時刻t0に投入指示が遮断器20に入力されると、遮断器20のリレー(不図示)が動作するために制御電流I0は初期値Ip0から増加する。なお、遮断器20のリレーは、モータ50を動作させるための装置であり、初期値Ip0は、遮断器20等、一般負荷(不図示)に対して定常的に流れる定常電流の値である。そして、時刻t1に遮断器20のリレーの動作が完了すると、制御電流I0は初期値Ip0まで低下する。
【0029】
また、時刻t1以降にモータ50の動作が開始すると、モータ50の動作電流が流れ始めるため、制御電流I0は急激に上昇する。そして、時刻t2にモータ50の動作が完了すると、モータ50の動作電流はゼロとなるため、制御電流I0の電流値は、再び初期値Ip0となる。
【0030】
なお、モータ50の動作している大半の期間、制御電流I0の電流値は、例えば所定値Iq0(>Ip0)よりも大きくなる。また、本実施形態では、モータ50が動作する期間(例えば、2秒以上)は、遮断器20のリレーが動作する期間(例えば、1秒以内)と比べると長くなる。このため、制御電流I0における時刻t0〜t1までの波形と、時刻t1〜t2までの波形のうち、電流値Iq0より大きくなる期間が所定期間(例えば2秒)以上ある波形を、モータ50の動作電流の波形であるとして判別できる。なお、遮断器20が投入される際には、投入電流I1は変化しない。また、特に図示しないが、モータ50に異常が発生すると、モータが動作する期間は長くなり、モータ50の動作電流も大きくなる場合もある。
【0031】
図3は、遮断器21が投入される際の制御電流I0、投入電流I1の代表的な波形である。前述のように、遮断器21のモータ51には、投入用電源が供給されているため、モータ51の動作電流は投入電流I1に含まれる。
【0032】
時刻t10に投入指示が遮断器21に入力されると、遮断器21のリレー(不図示)が動作するために制御電流I0は初期値Ip0から増加する。そして、時刻t11に遮断器21のリレーの動作が完了すると、制御電流I0は初期値Ip0まで低下する。
【0033】
また、リレーの動作が完了し、時刻t11以降にモータ51の動作が開始すると、モータ51の動作電流が流れ始めるため、投入電流I1はゼロ(初期値)から急激に上昇する。そして、時刻t12にモータ51の動作が完了すると、モータ51の動作電流はゼロとなるため、投入電流I1の電流値は再びゼロとなる。なお、モータ51が動作する期間、すなわち、モータ51に電流が流れる期間は、例えば2秒以上である。さらに、モータ51の動作している大半の期間において、投入電流I1の電流値は、例えば所定値Iq1(>0)よりも大きくなる。図3には、遮断器21が投入される際の制御電流I0、投入電流I1の波形を示したが、大型の遮断器である遮断器22が投入される際も図3と同様の波形となる。
【0034】
図4は、断路器23が投入される際の制御電流I0の代表的な波形である。前述のように、断路器23のモータ53には、制御用電源が供給されているため、モータ53の動作電流は、制御電流I0に含まれる。
【0035】
時刻t20に投入指示が断路器23に入力されると、断路器23のリレー(不図示)が動作するために制御電流I0は初期値Ip0から増加する。そして、時刻t21に断路器23のリレーの動作が完了すると、制御電流I0は初期値Ip0まで低下する。
【0036】
また、時刻t21以降にモータ53の動作が開始すると、モータ53の動作電流が流れ始めるため、制御電流I0は急激に上昇する。そして、時刻t22にモータ53の動作が完了すると、モータ53の動作電流はゼロとなるため、制御電流I0の電流値は、再び初期値Ip0となる。本実施形態では、モータ53の動作している大半の期間、制御電流I0の電流値は、例えば所定値Iq0(>Ip0)よりも大きくなる。また、モータ53が動作する期間(例えば、2秒以上)は、断路器23のリレーが動作する期間(例えば、1秒以内)と比べると長くなる。このため、図2の場合と同様に、例えば、時刻t20〜t21までの波形と、時刻t21〜t22までの波形のうち、電流値Iq0より大きくなる期間が所定期間(例えば2秒)以上ある波形を、モータ53の動作電流の波形として判別することが可能である。
【0037】
なお、図2及び図4を比較すると明らかなように、電動式の断路器23のモータ53の動作電流の波形に含まれるピークの数は、ばね投入式の遮断器20のモータ50の動作電流の波形に含まれるピークの数よりも多くなる。このため、例えば、動作波形に含まれるピークの数に基づいて、投入された開閉器が遮断器であるか、断路器であるかを判別することが可能である。
【0038】
図5は、断路器24が投入される際の制御電流I0、投入電流I1の代表的な波形である。前述のように、断路器24のモータ54には、投入用電源が供給されているため、モータ54の動作電流は、投入電流I1に含まれる。
【0039】
時刻t30に投入指示が断路器24に入力されると、断路器24のリレー(不図示)が動作するために制御電流I0は初期値Ip0から増加する。そして、時刻t31に断路器24のリレーの動作が完了すると、制御電流I0は初期値Ip0まで低下する。
【0040】
また、リレーの動作が完了し、時刻t31以降にモータ54の動作が開始すると、モータ54の動作電流が流れ始めるため、投入電流I1はゼロ(初期値)から急激に上昇する。そして、時刻t32にモータ51の動作が完了すると、断路器24の電磁ブレーキの動作が開始するため、投入電流I1の電流値はほぼ一定値となる。そして、時刻t33に電磁ブレーキの動作が終了すると、投入電流I1の電流値は再びゼロとなる。なお、モータ54が動作する期間、すなわち、モータ54に電流が流れる期間は、例えば2秒以上である。さらに、モータ54の動作している大半の期間において、投入電流I1の電流値は、所定値Iq1(>0)よりも大きくなる。
【0041】
図2〜図5では、開閉器を投入させる際の代表的な動作波形を示したが、開閉器を遮断させる際の動作波形も同様である。
【0042】
==監視装置27の詳細について==
ここで、図1に示した監視装置27の詳細について説明する。
ADC70は、変流器28,29で測定された電流の電流値をデジタルデータに変換し、マイコン74に出力する。
記憶装置71(記憶部)は、マイコン74が実行するプログラムデータや各種データを記憶する。
操作部72は、利用者が監視装置27を操作するために設けられたキーボード、タッチパネル等のインターフェースであり、操作結果をマイコン74に出力する。
表示部73は、例えば、操作結果や、モータの動作の監視結果等の表示を行うディスプレイである。
マイコン74は、記憶装置71に記憶されるプログラムを実行することにより、図6に示すような検出部100、記録部101、波形判定部102、判別部103、算出部104、遮断器判定部105、異常判定部106、及び警報出力部107を実現する。
【0043】
検出部100は、開閉器の状態が変化したことを検出するために、制御電流I0、または投入電流I1の電流値が所定値以上となったか否かを検出する。
【0044】
記録部101は、制御電流I0、または投入電流I1の電流値が所定値以上となったことが検出されると、記憶装置71に制御電流I0及び投入電流I1の電流値を所定期間記録する。なお、記録部101が記録する期間は、例えば、開閉器の状態が変化する際にモータの動作波形の全てが記録されるよう十分長い期間(例えば、15秒程度)であることとする。
【0045】
波形判定部102は、記録された制御電流I0または投入電流I1に、モータの動作電流が含まれているか否かの判定を行う。また、波形判定部102は、モータの動作電流が含まれていると判定した場合、制御電流I0または投入電流I1からモータの動作電流に相当する電流を特定する。
【0046】
判別部103は、モータの動作電流の波形から、状態が変化された開閉器が遮断器であるか、開閉器であるかの判別を行う。
【0047】
算出部104は、モータの動作電流の波形からモータの動作電流が流れる期間、すなわち、モータが動作する期間を算出する。
【0048】
遮断器判定部105は、状態が変化された開閉器が遮断器であると判別された場合、さらに、状態が変化された遮断器の容量(小型、中型、大型)を判定する。
【0049】
異常判定部106は、算出されたモータの動作電流が流れる期間を、正常なモータが動作する期間の基準となる基準期間Trefと比較する。ところで、一般に基準期間Trefは、開閉器の種類や容量等によって異なる。本実施形態では記憶装置71には、例えば図7に示すように、断路器や遮断器の容量に応じた4種類の期間Ta〜Tdを基準期間Trefとして記憶されている。そして異常判定部106は、状態が変化された開閉器に応じた基準期間Trefと、算出された期間とを比較する。さらに異常判定部106は、算出された期間が基準期間Trefより長い場合、モータに異常があることを特定する。
【0050】
警報出力部107は、モータに異常があると特定されると、表示部73に警報を表示する。また、警報出力部107は、モータの動作電流が流れる期間が算出される度に、算出された期間を時刻とともに記憶装置71に記憶させる。
【0051】
==監視装置27が実行する処理の一例==
図8〜図11は、監視装置27が実行する処理の一例である。なお、図8〜図11の各処理は、マイコン74の各機能ブロックにより実行される。
【0052】
まず、検出部100は、ADC70によりデジタルデータに変換された制御電流I0,投入電流I1を監視する(S100)。そして、検出部100は、制御電流I0または投入電流I1の電流値が所定値以上になると(S100:YES)、記録部101に、制御電流I0および投入電流I1の電流値を記録させる(S101)。なお、制御電流I0および投入電流I1の電流値は、記憶装置71に格納される。
【0053】
一方、検出部100、制御電流I0または投入電流I1の電流値が所定値以上とならない場合(S100:NO)、制御電流I0または投入電流I1の電流値の監視を継続する(S100)。
【0054】
波形判定部102は、記録された電流に、モータの動作電流が含まれているか否かの判定を行う(S102)。ここで、図10を参照しつつ、波形判定部102が実行する処理の詳細について説明する。まず、波形判定部102は、所定値以上(例えば、図3に示した電流値Iq1)以上の投入電流I1が、所定期間(例えば、一般的なモータの動作期間である2秒)継続したか否かを判定する(S200)。そして、波形判定部102は、所定値以上の投入電流I1が所定期間継続した場合(S200:YES)、記録された投入電流I1にモータの動作電流は含まれていると判定する(S201)。なお、処理S200が実行されることにより、例えば、図3、図5に示すように、投入電流I1にモータの動作電流が含まれている場合が検出される。
【0055】
一方、所定値以上の投入電流I1が所定期間継続していない場合(S200:NO)、波形判定部102は、制御電流I0の電流値から定常電流の電流値Ip0を減算する(S202)。そして、波形判定部102は、電流値が所定値以上(例えば、図2に示したIq0−Ip0)となる減算結果(I0−Ip0)が、所定期間(例えば、一般的なモータの動作期間である2秒)継続したか否かを判定する(S203)。そして、波形判定部102は、所定値以上の減算結果が所定期間継続した場合(S203:YES)、記録された制御電流I0にモータの動作電流は含まれていると判定する(S201)。なお、処理S203が実行されることにより、例えば、図2、図4に示すように、制御電流I0にモータの動作電流が含まれている場合が検出される。
【0056】
一方、所定値以上の減算結果が所定期間継続していない場合(S203:NO)、波形判定部102は、記録した電流にモータの動作電流が含まれていないと判定する(S204)。なお、例えば、検出部100がノイズ等を検出し、記録部101に電流の記録を開始させた場合には、波形判定部102は、記録した電流にモータの動作電流が含まれていないと判定する。
【0057】
また、図8に示すように、記録した電流にモータの動作電流は含まれる場合(S103:YES)、波形判定部102は、制御電流I0、投入電流I1からモータの動作電流を特定する(S104)。具体的には、例えば、投入電流I1にモータの動作電流が含まれていると判定された場合、波形判定部102は、記録された投入電流I1をモータの動作電流とする。また、制御電流I0にモータの動作電流が含まれていると判定された場合、波形判定部102は、記録された制御電流I0のうち、モータの動作電流の波形(例えば、図2の時刻t1〜t2までの波形)が含まれている範囲の電流をモータの動作電流として特定する。そして、波形判定部102は、判別部103に、開閉器の判別処理を実行させる(S105)。
【0058】
一方、波形判定部102は、記録した電流にモータの動作電流は含まれると判定しなかった場合(S103:NO)、検出部100に処理100を実行させる。
【0059】
判別部103は、図11に示すような処理を実行して、状態が変化した開閉器の種類を判別する。まず、判別部103は、例えばモータの動作電流の電流値を微分し、モータの動作電流に含まれるピークの数を算出する(S300)。なお、判別部103には、モータの動作電流の電流値を微分する前に、移動平均等の処理を実行し、モータの動作電流に含まれる高周波ノイズを除去させても良い。
【0060】
また、判別部103は、モータの動作期間におけるピークの数が所定値以上であるか否かを判定し(S301)、ピークの数が所定値以上である場合(S301:YES)、状態が変化した開閉器は断路器であると判別する(S302)。一方、判別部103は、ピークの数が所定値以上でない場合(S301:NO)、状態が変化した開閉器は遮断器であると判別する(S303)。
【0061】
そして、図9に示すように、判別部103が開閉器の種類が断路器であると判別すると(S106:断路器)、算出部104は、断路器のモータに適した方法でモータの動作期間を算出する(S107)。具体的には、算出部104は、図12に示すような処理を実行する。
【0062】
ところで、断路器のモータの動作電流の波形は、図4、図5に示したように、電磁ブレーキ期間の有無により変化する。そこで、まず算出部104は、モータの動作電流において、電磁ブレーキによる電流が含まれているか否かを判定する(S400)。具体的には、算出部104は、モータの動作電流の後半に、モータの動作電流の電流値が初期値ではなく、電流値の傾きの変化が所定値より小さい領域があるか否かを判定する。そして、電流値の傾きの変化が所定値より小さい領域がある場合、すなわち、電磁ブレーキによる電流が含まれていると判定した場合(S400:YES)、算出部104は、電磁ブレーキの期間を加味してモータの動作電流が流れる期間を算出する(S401)。具体的には、算出部104は、電流が初期値から増加するタイミング(例えば、時刻t31)から、電流の変化電流値の傾きの変化が所定値より小さくなるタイミング(例えば、時刻t32)までの期間を、モータの動作電流が流れる期間を算出する。
【0063】
一方、電磁ブレーキによる電流が含まれていないと判定した場合(S400:NO)、算出部104は、電磁ブレーキの期間を考慮せずにモータの動作電流が流れる期間を算出する(S402)。具体的には、算出部104は、電流が初期値から増加するタイミング(例えば、時刻t21)から、電流が初期値へと戻るタイミング(例えば、時刻t22)までの期間を、モータの動作電流が流れる期間として算出する。
【0064】
一方、図9に示すように、判別部103が開閉器の種類が遮断器であると判別すると(S106:遮断器)、算出部104は、遮断器のモータに適した方法でモータの動作期間を算出する(S108)。具体的には、算出部104は、電流が初期値から増加するタイミング(例えば、時刻t1)から、電流が初期値へと戻るタイミング(例えば、時刻t2)までの期間を、モータの動作電流が流れる期間として算出する。
【0065】
また、処理S108が実行されると、遮断器判定部105は、モータの動作電流の積分値を計算する(S109)。そして、遮断器判定部105は、積分値が所定のしきい値Vt1より小さい場合(S109:小)、状態の変化された遮断器は小型であると判定する(S110)。また、遮断器判定部106は、積分値が、所定のしきい値Vt1以上、かつ所定のしきい値Vt2(>Vt1)以下の場合(S109:中)、状態の変化された遮断器は中型であると判定する(S111)。さらに、遮断器判定部106は、積分値が、所定のしきい値Vt2より大きい場合(S109:大)、状態の変化された遮断器は大型であると判定する(S112)。
【0066】
また、上述した処理S107が実行されるか、処理S110〜S112の何れかが実行されると、異常判定部106は、算出されたモータの動作電流の期間、すなわち、算出されたモータの動作期間は、基準期間Trより長いか否かを判定する(S113)。具体的には、例えば処理S107が実行された場合、異常判定部106は、算出されたモータの動作期間と、図7に示した期間Taとを比較する。なお、他の処理S110〜S112が実行された場合は、期間Tb〜Tdが適宜選択される。
【0067】
そして、モータの動作期間が基準期間Trより長い場合(S113:YES)、異常判定部106はモータに異常があることを特定した後、警報出力部107に、表示部73にモータに異常があることを警報として表示させる(S114)。そして、警報出力部107は、モータの動作期間を記憶装置71に記録するとともに、期間を表示部73に表示させる(S115)。一方、モータの動作期間が基準期間Trより短い場合(S113:NO)、警報出力部107は、警報出力部107は、算出されたモータの動作期間を記憶装置71に記録するとともに、算出した期間を表示部73に表示させる(S115)。
【0068】
以上、本実施形態の監視システム10について説明した。監視装置27の変流器28,29は、複数のモータ50〜54に流れる電流を測定可能な位置に設けられている。また、監視装置27は、変流器28,29の測定結果から、複数のモータ50〜54の動作電流の期間を算出することができる。このため、例えば、モータ50〜54の夫々にモータ50〜54を監視する装置を設ける場合と比較すると、監視システム10は、低コストで開閉器のモータの動作を監視することが可能である。
【0069】
また、異常判定部106は、算出されたモータの動作期間を正常なモータの動作期間に応じた所定の基準期間Trefと比較する。このような比較結果を利用者が把握することにより、利用者は、客観的に開閉器のモータの異常の有無を判断することができる。
【0070】
また、異常判定部106は、算出されたモータの動作期間と基準期間Trefとの比較結果に基づいて、複数のモータ50〜54のうち何れかに異常があることを特定できる。
【0071】
また、判別部103は、状態が変化された開閉器が、遮断器であるか断路器であるかを判別可能である。
【0072】
また、利用者は、判別結果に基づいて、複数のモータ50〜54のうち異常のあるモータが遮断器のモータであるか、断路器のモータであるかを特定できる。
【0073】
また、モータに異常があると判定された場合、表示部73には警報が表示されるため、利用者は、直ちにモータの異常を把握できる。
【0074】
また、記憶装置71には、算出されたモータの動作期間が逐次記憶される。このため、逐次記録された動作期間の変化(例えば、動作期間が徐々に長くなっている等)から、利用者は、事前にモータの異常の兆候を把握することが可能となる。
【0075】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10 監視システム
15 遠隔制御装置
20〜22 遮断器
23,24 断路器
25 直流電源装置
27 監視装置
28,29 変流器
30,31 電源線
40 整流器
41 蓄電池
42〜44 配電用遮断器
45 直流母線
70 ADコンバータ
71 記憶装置
72 操作部
73 表示部
74 マイコン
100 検出部
101 記録部
102 波形判定部
103 判別部
104 算出部
105 遮断器判定部
106 異常判定部
107 警報出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開閉器の夫々を入り状態または切り状態とするために前記複数の開閉器の夫々に設けられた複数のモータと、前記複数のモータに対して電源線を介して電源を供給する電源装置と、を備える電気所における監視装置であって、
前記電源線における前記複数の開閉器が前記電源線に接続される夫々のノードの全ての位置より上流側に流れる電流を測定する測定部と、
前記複数の開閉器のうち何れかの開閉器の状態が変化される際の前記測定部の測定結果に基づいて、前記何れかの開閉器に設けられたモータに電流が流れる期間を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置であって、
前記算出部で算出された期間が、前記開閉器の状態が変化する際に前記開閉器に設けられた正常なモータに電流が流れる期間に応じた所定期間より長いか否かを判定する判定部を更に備えること、
を特徴とする監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の監視装置であって、
前記判定部は、
前記算出部で算出された期間が前記所定期間より長いことを判定すると、前記何れかの開閉器に設けられたモータに異常があることを特定すること、
を特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項1に記載の監視装置であって、
前記モータに電流が流れる期間における前記測定部で測定される電流値の変化に基づいて、前記何れかの開閉器が遮断器であるか断路器であるかを判別する判別部と、
前記何れかの開閉器が前記遮断器であると判別された場合、前記算出部で算出された期間が、前記遮断器の状態が変化する際に前記遮断器に設けられた正常なモータに電流が流れる期間に応じた第1所定期間より長いか否かを判定する第1判定部と、
前記何れかの開閉器が前記断路器であると判定された場合、前記算出部で算出された期間が、前記断路器の状態が変化する際に前記断路器に設けられた正常なモータに電流が流れる期間に応じた第2所定期間より長いか否かを判定する第2判定部と、
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の監視装置であって、
前記第1判定部は、
前記算出部で算出された期間が前記第1所定期間より長いことを判定すると、前記遮断器に設けられたモータに異常があることを特定し、
前記第2判定部は、
前記算出部で算出された期間が前記第2所定期間より長いことを判定すると、前記開閉器に設けられたモータに異常があることを特定すること、
を特徴とする監視装置。
【請求項6】
請求項3または請求項5に記載の監視装置であって、
前記モータに異常があることが特定されると、警報を出力する警報出力部を更に備えること、
を特徴とする監視装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の監視装置であって、
前記算出部が前記モータに電流が流れる期間を算出する毎に、算出された期間を記憶する記憶部を更に備えること、
を特徴とする監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−130141(P2012−130141A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278461(P2010−278461)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】