説明

目封止ハニカム構造体の製造方法

【課題】投入した原料(セラミック粒子)が効率よく捕集層形成に使用され、原料が無駄にならず、原料の再利用が不要であり、且つ、捕集層となる膜の製膜に時間を要さず、更には、セラミック粒子が均一に堆積していて、均質な捕集層が形成されたハニカム構造体を得る手段を提供すること。
【解決手段】目封止ハニカム構造体の一方の端面側において、セラミック粒子と気体を混合し、目封止ハニカム構造体の他方の端面側から、セラミック粒子が混合された気体を吸引することによって、その気体に混合されたセラミック粒子を、目封止ハニカム構造体のセル内へ送り込み、そのセラミック粒子を、目封止ハニカム構造体のセル内の表面に付着させる過程を有する目封止ハニカム構造体の製造方法の提供による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体からなる基材と、その基材の表面に設けられた、粒子状物質を捕集するための捕集層と、を有する目封止ハニカム構造体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスには、スート(スス)を主体とする粒子状物質(パティキュレートマター(PM))が、多量に含まれている。このPMがそのまま大気中に放出されると、環境汚染を引き起こすため、排出ガスの流路には、PMを捕集するためのフィルタ装置が搭載される。
【0003】
このようなフィルタ装置の中心となるフィルタエレメントとして、例えば、目封止されたハニカム構造体(目封止ハニカム構造体)が用いられる。この目封止ハニカム構造体は、多数の細孔を有するセラミックの多孔質体からなる隔壁によって区画された、ガスの流路となる複数のセルを有し(ハニカム構造を呈し)、隣接する複数のセルの、一方の開口端と他方の開口端とを、互い違いに目封止してなるものである。この目封止ハニカム構造体をキャニングし、一のセルの開口端から排出ガスを流入させると、排出ガスは、隔壁を通過して隣接するセルの他方の開口端から流出し、その際にPMが隔壁に捕集され、排出ガスは浄化される。
【0004】
しかし、このような目封止ハニカム構造体では、PMが多孔質体(基材)の内部へ侵入して細孔を閉塞させるので、圧力損失(圧損)が急激に増加し易い。そこで、圧損の抑制を図るべく、例えば、特許文献1,2には、新たな構造の目封止ハニカム構造体あるいはその用途であるフィルタエレメントが、開示されている。これらの目封止ハニカム構造体(フィルタエレメント)に共通する特徴は、多孔質体(基材)の表面に、PMを捕集するための捕集層を設け、その捕集層によって、基材の内部へのPMの侵入を防ぎ、圧損の上昇を抑制しようとするところにある。そして、特許文献1,2には、その新たな目封止ハニカム構造体の製造方法も開示されている。
【0005】
特許文献1は、多孔質体の一側面にフィルタ層を一体的に備えたセラミック材料からなるフィルタエレメントであって、多孔質体とフィルタ層の接合部の境界に緻密な中間層が存在せず、圧力損失が低く、且つ目詰まりの少ないフィルタエレメントを製造することを、課題としている。この課題を解決するため、特許文献1では、セラミック粒子を多孔質体の一側面に気流を介して搬送して付着させるとともに、付着したセラミック粒子に水分(水又はスチーム)を付与して多孔質体の一側面に吸着させ、粒子を相互に適度に凝集させて二次粒子の状態で付着させることによって、セラミック粒子が多孔質体の気孔へ侵入して緻密な中間層を形成することを、防止している。具体的には、フィルタ層の細孔径を多孔質体の平均細孔径より小さくし、(フィルタ層を形成する)セラミック粒子の平均粒子径を多孔質体の平均細孔径の1/2〜2/3としている。又、空気とセラミック粒子をブロアで吸引して、フィルタ層を製膜するものであり、セラミック粒子は、多孔質体の上流側と下流側の差圧によって、多孔質体に付着する。
【0006】
特許文献2は、フィルタとして使用した際の圧力損失と捕集効率のバランスに優れた目封止ハニカム構造体及びその製造方法を提供することを、課題としている。この課題を解決するため、特許文献2では、物(目封止ハニカム構造体)として、その隔壁の表面に固着したセラミック粒子を有し、そのセラミック粒子の平均粒子径が、隔壁平均細孔径の1.5倍以上であって、200μm以下であること、及び、中心軸から外周までの長さの1/2の範囲内における隔壁の表面にセラミック粒子が分布していること、隔壁はその気孔率が50%〜80%でありその平均細孔径が15μm〜40μmであること、等を規定している。又、製造方法として、セラミック粒子を少なくとも一方の端面からセル内へ流体(気体)により送り込むこと、ハニカム構造体を加工した際に生じるセラミック粒子を用いること、等を規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−249124号公報
【特許文献2】特開2006−685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示された製造方法では、投入した原料(セラミック粒子)が効率よく捕集層を形成せず、原料が無駄になり、所望の量を製膜するのに長時間を要してしまう。又、原料を無駄にしないためには、再利用する設備や工程が必要になる。更に、製膜の際に、セラミック粒子を搬送する気体の中に含まれるそのセラミック粒子の量が多いと、セラミック粒子どうしが凝集し易く、セラミック粒子が、均一に堆積せず、偏積した状態で、製膜されてしまう。
【0009】
本発明は、このような従来技術の抱える問題に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、投入した原料(セラミック粒子)が効率よく捕集層形成に使用され、原料が無駄にならず、原料の再利用が不要であり、且つ、捕集層となる膜の製膜に時間を要さず、更には、セラミック粒子が均一に堆積していて、均質な捕集層が形成されたハニカム構造体を得る手段を提供することである。研究が重ねられた結果、以下の手段によって、この課題が解決されることが見出され、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明によれば、目封止ハニカム構造体の一方の端面側において、セラミック粒子と気体を混合し、目封止ハニカム構造体の他方の端面側から、セラミック粒子が混合された気体を吸引することによって、その気体に混合されたセラミック粒子を、目封止ハニカム構造体のセル内へ送り込み、そのセラミック粒子を、目封止ハニカム構造体のセル内の表面に付着させる過程を有する目封止ハニカム構造体の製造方法が提供される。
【0011】
本明細書において、セラミック粒子を混合した気体を、エアロゾルということがある。又、気体の体積あたりの、その気体に混合されたセラミック粒子の質量を、エアロゾル密度とよぶ。エアロゾル密度=セラミック粒子の質量/気体の体積、である。
【0012】
上記過程は、目封止ハニカム構造体に表面捕集層を設けるための、製膜過程である。本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法は、その製膜過程に特徴がある。目封止ハニカム構造体は、外形が略柱状の多孔質体からなり、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有するものであり、本明細書において、基材ともいう。セルは、基材を構成する隔壁によって区画されており、流体の流路となる。セラミック粒子を付着させる目封止ハニカム構造体のセル内の表面は、多孔質体である隔壁で構成される。従って、セル内における目封止ハニカム構造体(基材)の表面を、セル内面、あるいは隔壁の表面ということがある。そして、隣接する複数のセルは、一方の開口端と他方の開口端とが、互い違いに目封止されていて、目封止ハニカム構造体の端面を見ると、何れも市松模様のようになっている。
【0013】
上記のような目封止ハニカム構造体において、一方の端面側においてセラミック粒子と気体を混合しておき、他方の端面側からそのセラミック粒子を混合した気体を吸引すれば、セラミック粒子は、気体によって搬送され、セル内に送り込まれ、セル内における目封止ハニカム構造体(基材)の表面に、即ち隔壁に、付着し、これによって目封止ハニカム構造体は製膜される。
【0014】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法において、目封止ハニカム構造体の一方の端面側においてセラミック粒子と気体を混合しておき、目封止ハニカム構造体の他方の端面側からセラミック粒子が混合された気体を吸引するが、吸引される対象は、一方の端面側において混合されたセラミック粒子と気体(エアロゾル)のみに限定されず、セラミック粒子を混合していない気体(空気)も吸引される場合がある。
【0015】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法においては、セラミック粒子が混合された気体において、セラミック粒子の質量/気体の体積(エアロゾル密度)が、1g/m以上、1600g/m以下であり、セル内における上記セラミック粒子が混合された気体(エアロゾル)の流速が、0.2m/sec.以上、100m/sec.以下であることが好ましい。エアロゾル密度は、20g/m以上、1600g/m以下であることが、より好ましい。又、上記セル内におけるエアロゾルの流速は、2m/sec.以上、100m/sec.以下であることが、より好ましい。セル内におけるセラミック粒子が混合された気体の流速(エアロゾルの流速)を、セル内流速ともいう。
【0016】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法においては、上記の、セラミック粒子をセル内における目封止ハニカム構造体の表面に付着させる過程の後で、目封止ハニカム構造体の端面に付着したセラミック粒子を除去することが好ましい。除去を行う端面は、セラミック粒子の供給側の端面である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、目封止ハニカム構造体の一方の端面側において、セラミック粒子と気体を混合し、目封止ハニカム構造体の他方の端面側から、セラミック粒子が混合された気体を吸引することによって、その気体に混合されたセラミック粒子を、目封止ハニカム構造体のセル内へ送り込み、そのセラミック粒子を、目封止ハニカム構造体のセル内の表面に付着させる過程を有するので、セラミック粒子が、セル内へ良好に供給され、セルの入口端や終端におけるセラミック粒子の付着、堆積を抑制することが出来る(端とは、目封止ハニカム構造体の端面近傍部分であり、そのうち、入口端はセラミック粒子の供給側の端であり、終端は目封止のセル内側である)。又セラミック粒子を気体で圧送する場合と比較して、粒子の飛散が抑制され、無駄が少なく、且つ、製造環境が改善される。
【0018】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法では、他方の端面側において、セラミック粒子が混合された気体の吸引流量を調節することによって、製膜分布を制御することが可能となる。吸引流量が大きいと、突入してくるセラミック粒子の慣性運動によって、主に、目封止ハニカム構造体の終端(吸引している側のセル内側)に、セラミック粒子が堆積してしまい、目封止ハニカム構造体の他方の端面(セラミック粒子が入る側の端面)から中央にかけては、セラミック粒子が付着しない(製膜しない)状態になり、捕集層が良好に形成されないおそれがある。しかし、吸引流量を小さくしていけば、突入してくるセラミック粒子の慣性運動は弱まり、目封止ハニカム構造体の他方の端面から中央にも、セラミック粒子が付着し、捕集層が良好に形成されるようになる。
【0019】
又、吸引流量を調節することで捕集層の緻密さも制御することが可能である。流量が大きいと捕集層を形成する粒子が充填し易く緻密な構造を形成させることが可能であり、流量が小さいと捕集層を形成する粒子が充填し難く疎な構造を形成させることが可能となる。
【0020】
更に、一方の端面側において、セラミック粒子を混合する気体の流量を調節することによっても、突入してくるセラミック粒子の運動エネルギーを調整することが出来、吸引によって形成される(気流の)流路に、均一に流れ込ませることが可能である。この点については、後述する。このように、本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法は、製膜分布を制御することが出来るので、目的の性能を満たす捕集層を形成することが容易である。
【0021】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法では、目封止ハニカム構造体の一方の端面側においてセラミック粒子と気体を混合し、こちらが、セラミック粒子の供給側になる。そして、目封止ハニカム構造体の他方の端面側からセラミック粒子を混合した気体を吸引することによって、その気体でセル内にセラミック粒子を送り込む。他方の端面側におけるセラミック粒子を混合した気体の吸引流量の調節を、一方の端面側(供給側)におけるセラミック粒子と気体との混合とは、別々に制御することが出来る上に、吸引法によりセラミック粒子を混合した気体の流量を調整し易いため、所望の製膜分布を作り、所望の捕集層を形成することが容易である。
【0022】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法では、他方の端面側から気体を吸引するので、目封止ハニカム構造体(基材)自体が整流板として機能し、気体の流れが安定する。そのため、セラミック粒子が隔壁の表面に均一に堆積し、セラミック粒子の偏積が少ない、均質な膜を形成することが出来る。その膜を熱処理すれば捕集層になるから、本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、均質な捕集層が形成されたハニカム構造体を得ることが可能である。
【0023】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法によれば、複数種類のセラミック粒子を用いて、連続して又は同時に製膜することが可能であり、多層構造の捕集層が形成されたハニカム構造体を得ることが可能である。又、セラミック粒子に造孔材等を添加して、均一に混合し、これを製膜することが可能である。
【0024】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法は、その好ましい態様では、セラミック粒子が混合された気体において、セラミック粒子の質量/気体の体積(エアロゾル密度)が、1g/m以上、1600g/m以下であり、セル内における気体の流速が、0.2m/sec.以上、100m/sec.以下であるので、投入した原料(セラミック粒子)は、良好にセル内面に付着し、効率よく捕集層形成に使用され、原料収率が高い。原料の無駄が少なく、無駄防止のための原料の再利用は不要であり、製膜に時間を要さない。セラミック粒子は、セル内へ良好に供給されて、セルの入口端や終端におけるセラミック粒子の付着、堆積は抑制される結果、確実にセラミック粒子が隔壁の表面に均一に堆積するようになり、均質な膜を形成することが可能になる。
【0025】
セラミック粒子の密度が1g/m未満であると、セラミック粒子がブリッジを組まずに基材の細孔を通り抜け易くなり、収率が低下することがある。又、製膜に要する時間も長くなり、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の製造コストが増加する。一方、セラミック粒子の密度が1600g/m超であると、セラミック粒子どうしが凝集してしまい、セルの入口(目封止ハニカム構造体の端面)におけるセラミック粒子の付着、堆積が生じたり、セル内においてもセラミック粒子の偏積が起こり、均質な膜を形成し難くなる。
【0026】
セル内における気体の流速が0.2m/sec.未満であると、セラミック粒子がセルの入口端付近に堆積し易くなり、セル内の隔壁の表面に到らないセラミック粒子が増大し、あるいは、堆積したセラミック粒子によってセルの入口(開口)が閉塞してしまい、製膜(捕集層の形成)を阻害することがある。一方、セル内における気体の流速が100m/sec.超であると、慣性によってセラミック粒子がセルの終端に堆積し易くなり、隔壁の表面へ堆積するセラミック粒子が減少することがある。セルの終端に堆積したセラミック粒子は、フィルタとして機能する隔壁の表面積を低下させ、その結果、圧力損失を増大させ、フィルタとしての性能を低下させる。
【0027】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法は、その好ましい態様において、セラミック粒子をセル内における目封止ハニカム構造体の表面に付着させる過程の後で、目封止ハニカム構造体の端面に付着したセラミック粒子を除去するので、PM付圧損低減率を維持したまま、初期圧損上昇率を抑制することが可能である。尚、PM付圧損低減率、初期圧損上昇率については、後述する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法の一の実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法の他の実施形態を示す工程図である。
【図3】本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法の実施に用いられる装置の、一の実施形態を示す模式図である。
【図4A】本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法の実施に用いられる装置の、他の実施形態を示す模式図である。
【図4B】図4Aに示される装置の一部を拡大して示す模式図である。
【図4C】図4Aに示される装置の一部を拡大して示す模式図である。
【図5】本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法の実施に用いられる装置の、更に他の実施形態を示す模式図である。
【図6】表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の利点を説明する図であり、表面捕集層が設けられていない目封止ハニカム構造体の1/4を切り取って内部を表した斜視図である。
【図7】表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の利点を説明する図であり、表面捕集層が設けられていない目封止ハニカム構造体の一部分(隔壁とセル)を拡大して表した断面図である。
【図8】表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の利点を説明する図であり、付着したPM量と、圧力損失と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0030】
先ず、本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法の製造対象である表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の利点について、図6〜図8を参照しながら説明する。目封止ハニカム構造体を、PM除去用のフィルタとして使用した場合、表面捕集層の設けられていない目封止ハニカム構造体1であっても、PM5を含む排出ガス6は、一のセル3a内へ導入され、目封止ハニカム構造体1の隔壁4を通過して、隣接するセル3bの他方の開口端から流出する。その際にPM5は、隔壁4に捕集され、排出ガス6は浄化されるのである(図6、図7を参照)。
【0031】
しかし、このとき、表面捕集層がないと、PM5が隔壁4(基材)の細孔内へ侵入し、細孔を閉塞させるので、初期に圧損が急上昇してしまう(図8を参照)。表面捕集層があれば(表面捕集層付の目封止ハニカム構造体であれば)、PM5が隔壁4(基材)の細孔内へ侵入することを防止出来るので、細孔がPM5で閉塞することはなく、従って、初期に圧損が上昇することもなく、圧損の低減が図れる(図8を参照)。本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法は、このような優れた表面捕集層付の目封止ハニカム構造体を製造する手段である。
【0032】
次に、図1を参酌して、本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法の特徴である製膜過程を含む、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の製造工程について説明する。図1は、後述するセグメント型とは異なる、一体型の、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の概略製造工程を表している。尚、製膜過程以外については、以下の工程によらない公知の工程に基づいて、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体を製造することが可能である。
【0033】
(混練工程)骨材粒子(好ましくはコージェライト化原料、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、及び窒化珪素のうちの何れかからなるもの)、水、有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、ニーダ、真空土練機等を用いて混練することによって坏土を得る。
【0034】
(成形工程)次いで、その坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を備えた押出成形機を用いて、押出成形して、所望の形状に成形し、その後、例えばマイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥することによって、一体型の成形体を得る。これは、外形が、例えば円柱状であり、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルが隔壁で区画されてなるハニカム構造の成形体である。成形体のセル形状、隔壁厚さ、セル密度等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の仕様に合わせて、適宜、決定することが出来る。
【0035】
(目封止工程)その後、その成形体の隣接する複数のセルに対し、成形体の一の端面と他の端面を見ると、ともに市松模様のようになるように、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止する。より詳細には、好ましくは上記骨材粒子と同じ材料からなる目封止用のスラリーを、容器に貯留しておき、成形体の一方の端面において、市松模様のようになるように、概ね半数のセルをマスクし、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。成形体の他方の端面については、一方の端面において目封止されたセルについてマスクを施し(当然にマスクされる部分は市松模様のようになる)、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。こうすると、一方の端面において目封止されていないセルは、他方の端面において目封止され、他方の端面において目封止されていないセルは、一方の端面において目封止され、両端面において市松模様のようにセルが交互に塞がれた構造となる。
【0036】
(焼成工程)そして、目封止された成形体を仮焼きして脱脂し、その後、焼成(本焼成)を行えば、目封止ハニカム構造体が得られる。この目封止ハニカム構造体が基材である。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の温度は200〜1000℃程度とすればよい。焼成温度は、骨材粒子の原料により異なるため、それに応じて適当な条件を選択すればよい。一般に、1400〜1500℃程度である。
【0037】
(捕集層製膜工程)次に、基材の一方の端面側においてセラミック粒子と気体を混合し、他方の端面側からその気体を吸引して、エアロゾルを基材のセル内へ送り込み、基材のセル内面にセラミック粒子を付着させ、堆積させる。このとき、好ましくはエアロゾル密度を、1g/m以上、1600g/m以下とし、エアロゾルのセル内における流速を、0.2m/sec.以上、100m/sec.以下とする。セラミック粒子は、基材に対し、適宜、選択することが出来るが、セラミック粒子平均粒子径/基材平均細孔径が、0.02より大きく、1.5より小さい範囲が、好ましい。セラミック粒子平均粒子径/基材平均細孔径とは、基材の平均細孔径に対するセラミック粒子の平均粒子径の比である。基材の平均細孔径は、より厳密には、目封止ハニカム構造体のセル内の表面を構成する隔壁の平均細孔径である。このような条件を満たせば、特に、投入した原料(セラミック粒子)が、良好にセル内面に付着し、効率よく捕集層の形成に使用され、原料収率が高くなる。これは、吸引された気体に含まれるセラミック粒子が、隔壁の細孔の入口に付着し、且つ、細孔の入口を覆うような層を形成するためと考えられる。セラミック粒子平均粒子径/基材平均細孔径が0.02以下であると、セラミック粒子が細孔を通り抜けてしまって収率が低下したり、セラミック粒子が隔壁の表面において層を形成せずに細孔内(の壁面)に付着して細孔径を小さくしてしまうおそれがある。一方、セラミック粒子平均粒子径/基材平均細孔径が1.5以上であると、フィルタとして使用した際に、PMが捕集層を通り抜け細孔を塞いて、フィルタの圧損が上昇し易くなる。セラミック粒子の平均粒子径は、当然に基材の平均細孔径によって異なることとなるが、概ね1〜15μmであることが好ましい。セラミック粒子の材料としては、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト化原料、アルミナ、ジルコニア、シリカ等が、好ましく用いられる。特に好ましい材料は、(基材の)上記骨材粒子と同じ材料である。セラミック粒子は、より詳細には、その材料を分粒した後、ジェットミル(乾式)、ポットミル(湿式)によって、粗粒子を更に粉砕し、微粒、且つシャープな粒子径分布を持つ粉砕粒子として、得ることが出来る。
【0038】
(端面除去工程)基材のセル内面に、セラミック粒子を付着させ堆積させたら、その後、エアノズル等を用いて、基材の、エアロゾルが送り込まれた側(セラミック粒子の供給側)の端面に残存したセラミック粒子を除去する。
【0039】
(熱処理工程)そして、熱処理を施して、セル内面に堆積させたセラミック粒子を焼結させ安定させる。このときの熱処理温度は、基材を得た際の焼成温度よりも低いことが好ましい。セラミック粒子を焼結固定させるために必要な温度が加熱されればよい。セラミック粒子の材料によって異なるが、一般に、焼成温度は1250〜1350℃であることが好ましい。
【0040】
(加工工程)その後、例えば研削加工を施し、所望の形状に整える。
【0041】
(外周コート工程)最後に、コート材を基材の外周に塗布して、乾燥させ、外周部を配設すれば、一体型の、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体が得られる。外周部を配設すると、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の外周の凹凸が少なくなる。コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤、水等を混合したもの等を用いることが出来る。コート材を塗布する方法は、特に限定されず、基材を、ろくろ上で回転させながら、ゴムへら等でコーティングする方法等を挙げることが出来る。
【0042】
次に、図2を参酌して、セグメント型の、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の製造工程について説明する。図2は、セグメント型の、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の概略製造工程を表している。目封止工程は、各セグメントを接合する前に、各セグメントに対して行うことが好ましい。又、捕集層製膜工程も、各セグメントに行うことが好ましい。但し、セグメントを接合した後に製膜してもよい。尚、捕集層製膜工程を各セグメントに行う場合には、各セグメントが、本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法における(製膜対象の)目封止ハニカム構造体に相当することになるので、以下の説明において、冗長であるが、各セグメント等を、目封止ハニカム構造体(セグメント)等と、表記する。捕集層製膜がなされた目封止ハニカム構造体(セグメント)を接合して、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体を得ることが出来る。
【0043】
(混練工程)骨材粒子(好ましくはコージェライト化原料、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、及び窒化珪素のうちの何れかからなるもの)、水、有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、ニーダ、真空土練機等を用いて混練することによって坏土を得る。セグメント型の、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体では、骨材粒子として、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料が多用される。
【0044】
(成形工程)次いで、その坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を備えた押出成形機を用いて、押出成形して、所望の形状に成形し、その後、例えばマイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥することによって、一体型の成形体を得る。これは、外形が、例えば角柱状であり、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルが隔壁で区画されてなるハニカム構造の成形体(セグメントとなる成形体)である。成形体のセル形状、隔壁厚さ、セル密度等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の仕様に合わせて、適宜、決定することが出来る。
【0045】
(目封止工程)その後、その成形体(セグメントとなる成形体)の隣接する複数のセルに対し、成形体の一の端面と他の端面を見ると、ともに市松模様のようになるように、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止する。より詳細には、好ましくは上記骨材粒子と同じ材料からなる目封止用のスラリーを、容器に貯留しておき、成形体の一方の端面において、市松模様のようになるように、概ね半数のセルをマスクし、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。成形体の他方の端面については、一方の端面において目封止されたセルについてマスクを施し(当然にマスクされる部分は市松模様のようになる)、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。こうすると、一方の端面において目封止されていないセルは、他方の端面において目封止され、他方の端面において目封止されていないセルは、一方の端面において目封止され、両端面において市松模様のようにセルが交互に塞がれた構造となる。
【0046】
(焼成工程)そして、目封止された成形体(セグメントとなる成形体)を仮焼きして脱脂し、その後、焼成(本焼成)を行えば、セグメントである目封止ハニカム構造体が得られる。次に、製膜工程を行うならば、この目封止ハニカム構造体(セグメント)が基材である。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の温度は200〜1000℃程度とすればよい。焼成温度は、骨材粒子の原料により異なるため、それに応じて適当な条件を選択すればよい。一般に、1400〜1500℃程度である。
【0047】
(捕集層製膜工程)次に、基材(目封止ハニカム構造体(セグメント))の一方の端面側においてセラミック粒子と気体を混合し、他方の端面側からその気体を吸引して、エアロゾルを基材のセル内へ送り込み、基材のセル内面にセラミック粒子を付着させ、堆積させる。このとき、一体型の、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の製造工程と同様に、好ましくはエアロゾル密度を、1g/m以上、1600g/m以下とし、エアロゾルのセル内における流速を、0.2m/sec.以上、100m/sec.以下とする。又、セラミック粒子についても、一体型の、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の製造工程と同様であり、セラミック粒子は、基材に対し、適宜、選択することが出来る。セラミック粒子平均粒子径/基材平均細孔径が、0.02より大きく、1.5より小さい範囲が、好ましい。セラミック粒子平均粒子径/基材平均細孔径とは、基材の平均細孔径に対するセラミック粒子の平均粒子径の比である。基材の平均細孔径は、より厳密には、目封止ハニカム構造体のセル内の表面を構成する隔壁の平均細孔径である。このような条件を満たせば、特に、投入した原料(セラミック粒子)が、良好にセル内面に付着し、効率よく捕集層の形成に使用され、原料収率が高くなる。これは、吸引された気体に含まれるセラミック粒子が、隔壁の細孔の入口に付着し、且つ、細孔の入口を覆うような層を形成するためと考えられる。セラミック粒子平均粒子径/基材平均細孔径が0.02以下であると、セラミック粒子が細孔を通り抜けてしまって収率が低下したり、セラミック粒子が隔壁の表面において層を形成せずに細孔内(の壁面)に付着して細孔径を小さくしてしまうおそれがある。一方、セラミック粒子平均粒子径/基材平均細孔径が1.5以上であると、フィルタとして使用した際に、PMが捕集層を通り抜け細孔を塞いて、フィルタの圧損が上昇し易くなる。セラミック粒子の平均粒子径は、当然に基材の平均細孔径によって異なることとなるが、概ね1〜15μmであることが好ましい。セラミック粒子の材料としては、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト化原料、アルミナ、ジルコニア、シリカ等が、好ましく用いられる。特に好ましい材料は、(基材の)上記骨材粒子と同じ材料である。セラミック粒子は、より詳細には、その材料を分粒した後、ジェットミル(乾式)、ポットミル(湿式)によって、粗粒子を更に粉砕し、微粒、且つシャープな粒子径分布を持つ粉砕粒子として、得ることが出来る。
【0048】
(端面除去工程)基材(目封止ハニカム構造体(セグメント))のセル内面に、セラミック粒子を付着させ堆積させたら、その後、エアノズル等を用いて、基材の、エアロゾルが送り込まれた側(セラミック粒子の供給側)の端面に残存したセラミック粒子を除去する。
【0049】
(熱処理工程)そして、熱処理を施して、セル内面に堆積させたセラミック粒子を焼結させ安定させる。このときの熱処理温度は、基材を得た際の焼成温度よりも低いことが好ましい。セラミック粒子を焼結固定させるために必要な温度が加熱されればよい。セラミック粒子の材料によって異なるが、一般に、焼成温度は1250〜1350℃であることが好ましい。
【0050】
(接合工程)次いで、所望数の目封止ハニカム構造体(セグメント)を、接合材で接合し、乾燥させて、複数個のセグメントが、互いの側面どうしが対向するように隣接して配置されるとともに、その対向する側面どうしが、接合部により接合された目封止ハニカム構造体を得る。接合部は、対向する側面全体に配設されることが好ましい。接合部は、各セグメントが、熱膨張、熱収縮したときに、体積変化分を緩衝する(吸収する)役割を果たすとともに、セグメントを接合する役割を果たす。接合材を各セグメントの側面に配設する方法は、例えば刷毛塗り等の塗布手段を用いることが出来る。接合材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したスラリー等を挙げることが出来る。
【0051】
(加工工程)その後、(セグメントを接合して得られた)目封止ハニカム構造体に対し、例えば研削加工を施し、外形を、例えば円柱状にする。
【0052】
(外周コート工程)最後に、コート材を基材の外周に塗布して、乾燥させ、外周部を配設すれば、セグメント型の、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体が得られる。外周部を配設すると、表面捕集層付の目封止ハニカム構造体の外周の凹凸が少なくなる。コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤、水等を混合したもの等を用いることが出来る。コート材を塗布する方法は、特に限定されず、基材を、ろくろ上で回転させながら、ゴムへら等でコーティングする方法等を挙げることが出来る。
【0053】
次に、本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法において使用される装置を例示しながら、目封止ハニカム構造体の一方の端面側においてセラミック粒子と気体を混合し、他方の端面側からその気体を吸引することによって、その気体でセル内に前記セラミック粒子を送り込み、そのセラミック粒子を、セル内における目封止ハニカム構造体の表面に付着させる、具体的な方法について説明する。
【0054】
[第1の製膜方法]一の手段としては、図3に示されるように、目封止ハニカム構造体30の一の端面30a及び他の端面30bの両側に、筒状体35で流路を形成し、一の端面30aの側に容器32を設ける。そして、容器32に、セラミック粒子36を入れておき、空気33を吹き込んで流動させれば、セラミック粒子36と空気33(気体)が混合し、流動状態になって、エアロゾル31となる。この状態で、他の端面30bの側から、例えば(図示しない)ファン34で吸引すれば、気流に搬送されて、目封止ハニカム構造体30のセル内に、セラミック粒子36が送り込まれ、セラミック粒子36は、セル内における目封止ハニカム構造体30の表面に付着する。
【0055】
[第2の製膜方法]他の手段としては、図4Aに示されるように、目封止ハニカム構造体40の一の端面40a及び他の端面40bの両側に、筒状体45で流路を形成し、一の端面40aの側にエジェクタ48及びセラミック粒子供給器47を設ける。そして、セラミック粒子供給器47から、一定量のセラミック粒子46を供給し、エジェクタ48に、高速で空気43を吹き込むと、負圧が発生して、セラミック粒子46が吸引され、セラミック粒子46と気体(空気)が混合し、セラミック粒子46は気流に乗って、一の端面40aへ向けて排出される。この状態で、他の端面40bの側から、例えば(図示しない)ファン44で吸引すれば、空気(気流)に搬送されて、目封止ハニカム構造体40のセル内に、セラミック粒子46が送り込まれ、セラミック粒子46は、セル内における目封止ハニカム構造体40の表面に付着する。
【0056】
[第3の製膜方法]更に他の手段としては、図5に示されるように、目封止ハニカム構造体50の一の端面50a及び他の端面50bの両側に、筒状体55で流路を形成し、一の端面50aの側にエジェクタ58及び容器52を設ける。そして、容器52にセラミック粒子56を入れておき、容器52を走査して、セラミック粒子56を供給する。併せて、エジェクタ58に、高速で空気53を吹き込むと、負圧が発生して、セラミック粒子56が吸引され、セラミック粒子56と気体(空気)が混合し、セラミック粒子56は気流に乗って、一の端面50aへ向けて排出される。この状態で、他の端面50bの側から、例えば(図示しない)ファン54で吸引すれば、空気(気流)に搬送されて、目封止ハニカム構造体50のセル内に、セラミック粒子56が送り込まれ、セラミック粒子56は、セル内における目封止ハニカム構造体50の表面に付着する。
【0057】
尚、例えば、上記の図4Aに示される装置において(図5に示される装置においても同じ)、エジェクタ48に吹き込む空気43の量を調節すれば、エジェクタ48から噴射されるエアロゾルの噴射角、及び、噴射されたエアロゾルないしそれに含まれるセラミック粒子の慣性エネルギーを調整することが出来る。このことは、既述のように、製膜分布の形成に影響する。例えば、エジェクタ48に吹き込む空気43の量を多くすると、図4Bに示されるように、エジェクタ48から噴射されるセラミック粒子46と気体(エアロゾル)の噴射角は小さくなり、目封止ハニカム構造体40へ、ダイレクトに突入していき、(図示しない)ファン44による吸引の流路に、均一に乗り難くなる。又、同時に、目封止ハニカム構造体40の出口側の方において、セラミック粒子46が堆積し易くなる。
【0058】
一方、エジェクタ48に吹き込む空気43の流量を少なくすると、図4Cに示されるように、エジェクタ48から噴射されるセラミック粒子46と気体(エアロゾル)の噴射角は大きくなり、ファン44による吸引の流路に均一に乗り易くなる。又、同時に、セラミック粒子46の運動エネルギーが小さくなっているため、ファン44の吸引のみが形成する流路に従って、目封止ハニカム構造体40のセル内へ入り、製膜され易くなる。尚、ファン44の吸引によって、エジェクタ48から噴射されるセラミック粒子46と気体(エアロゾル)以外の気体(空気)も吸引されるが、このエアロゾル以外の気体は、エジェクタ48から噴射されるセラミック粒子46と気体(エアロゾル)が有する運動エネルギーと比較すると、製膜に与える影響は小さいと考えられる。
【0059】
以下、本発明を、実験例によって、具体的に説明する。
【0060】
(実験例1〜9)炭化珪素80部、金属珪素20部、造孔材として平均粒子径10μmのコークス13部、分散媒として水35部、有機バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、分散剤としてエチレングリコール0.5部を混合、混練して坏土を調製した。次いで、セル形状が四角形であり所定スリット幅を有する金型を用いて、坏土を押出成形し、セル形状が四角形であり、全体形状が角柱(角筒)形のハニカム状基材を得た。得られたハニカム状基材をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム状基材の端面のセル開口部に、市松模様状に交互にマスクを施し、マスクを施した側の端部を、前述の炭化珪素を含有する目封止スラリーに浸漬して市松模様状に交互に配列された目封止部を形成した。両端に目封止部を形成した後、乾燥し、アルゴン雰囲気下で1430℃、10時間焼成した。このようにして、四角柱状の目封止ハニカム構造体を作製した。この目封止ハニカム構造体の(隔壁の)平均細孔径は13μmであった。
【0061】
そして、上記基材と同じ材料からなり、平均粒子径が3μmのセラミック粒子を使用して、上記第2の製膜方法に基づいて、その目封止ハニカム構造体に製膜を施した。その後、その1つの(製膜により捕集層が設けられた)目封止ハニカム構造体を熱処理し、端面除去を行い、これを表面捕集層付の目封止ハニカム構造体として評価した。結果を表1に示す。尚、四角柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさは36.2mm×36.2mmであり、セル密度は46.5セル/cm、隔壁の厚さは300μmである。製膜の条件、及び評価項目は、以下の通りである。
【0062】
【表1】

【0063】
[製膜時間]セラミック粒子が吸引され始めてから、全て送り込まれるまでの時間を計測し、これを製膜時間とした。
【0064】
[吸引流量]目封止ハニカム構造体における吸引側に、風量計を設け、流量換算して、これを吸引流量[m/min.]とした。
【0065】
[製膜量]端面除去を行った場合には、(製膜後に端面除去を施した後の目封止ハニカム構造体の質量)−(製膜前の目封止ハニカム構造体の質量)を、製膜量[g]とした。端面除去を行わない場合には、(製膜後の目封止ハニカム構造体の質量)−(製膜前の目封止ハニカム構造体の質量)を、製膜量[g]とした。
【0066】
[エアロゾル密度]製膜量[g]÷(吸引流量[m/min.]×製膜時間[min.])によって求めた。
【0067】
[セラミック粒子の平均粒子径]JIS R 1629に準拠して、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA−920(商品名))にて測定した。
【0068】
[セル内流速]吸引流量[m/min.]÷(目封止ハニカム構造体の断面積[m]×セル開口率[%])によって求め、これをセル内流速[m/sec.]とした。
【0069】
[基材の平均細孔径]基材から5mm×5mm×15mmの試料を切り出し、水銀ポロシメーター(株式会社島津製作所製、水銀ポロシメーターMIC−9405(商品名))により測定した。
【0070】
[PM付圧損低減率]目封止ハニカム構造体の製膜したものと未製膜のものを、コモンレール式2.0Lディーゼルエンジンのターボチャージャー直下に搭載し、エンジン回転数2000rpm、トルク50Nm一定でエンジンを運転し、粒子状物質としてのスート(スス)が4g/L堆積した状態における圧力損失(圧損)を測定し、未製膜のものに対する製膜のものの測定値の削減割合を求め、これをPM付圧損低減率[%]とした。尚、ススの堆積量は、目封止ハニカム構造体1Lあたりのススの堆積量[g]である。
【0071】
[初期圧損上昇率]大型風洞装置において、1m/min.における(後述する実験例10〜12においては10m/min.における)圧力損失を測定し、未製膜のものに対する製膜のものの、測定値の上昇割合を求め、これを初期圧損上昇率[%]とした。
【0072】
[原料収率]セラミック粒子の、目封止ハニカム構造体への付着量/供給量によって、求めた。尚、付着量[g]は製膜後、(セグメントの質量−未製膜セグメントの質量)により求め、供給量[g]は、電子天秤による秤量値によって求めた。
【0073】
(実験例10〜12)アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを混合したコージェライト化原料100部、造孔材として平均粒子径10μmのコークス13部、分散媒として水35部、有機バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、分散剤としてエチレングリコール0.5部を混合、混練して坏土を調製した。次いで、セル形状として、八角形セルと四角形セルが交互に形成される所定スリット幅の金型を用いて坏土を押出成形し、セル形状が八角形セルと四角形セルの形状であり、全体形状が円柱(円筒)形のハニカム状基材を得た。得られたハニカム状基材をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム状基材の端面のセル開口部に、市松模様状に交互にマスクを施し、マスクを施した側の端部を、前述のコージェライト化原料を含有する目封止スラリーに浸漬して市松模様状に交互に配列された目封止部を形成した。両端に目封止部を形成した後、乾燥し、大気雰囲気下で1430℃、10時間焼成した。このようにして、円柱状の目封止ハニカム構造体を作製した。この目封止ハニカム構造体の(隔壁の)平均細孔径は11μmであった。
【0074】
そして、上記基材と同じ材料からなり、平均粒子径が3μmのセラミック粒子を使用して、上記第3の製膜方法に基づいて、その目封止ハニカム構造体に製膜を施した。その後、その(製膜により捕集層が設けられた)目封止ハニカム構造体を熱処理し、端面除去を行い、これを評価した。結果を表1に示す。尚、円柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の直径は143.8mmであり、セル密度は46.5セル/cm、隔壁の厚さは300μmである。
【0075】
(実験例13)骨材粒子として炭化珪素を用い、四角柱状の目封止ハニカム構造体を作製し、その目封止ハニカム構造体について、上記第2の製膜方法に基づいて製膜を施し、その後、その1つの(製膜により捕集層が設けられた)目封止ハニカム構造体のまま、端面除去は行わず、その後、熱処理してから、これを表面捕集層付の目封止ハニカム構造体として、評価した。これら以外の条件は、実験例3と同じとした。結果を表1に示す。
【0076】
(考察)実験例1〜5、10〜12から、エアロゾル密度が1.0g/m未満であると、原料収率が大幅に低下し、エアロゾル密度が1600g/mを超えると、PM付圧損低減率が小さくなっていることがわかる。
【0077】
又、実験例1〜4、6〜11から、エアロゾル密度が1.0〜1600g/mの範囲内において、セル内流速が0.2m/sec.未満では、原料収率が大幅に低下し、セル内流速が100m/sec.を超えると、PM付圧損低減率が小さくなっていることがわかる。このことより、エアロゾル密度が1.0〜1600g/mの範囲にあり、且つ、セル内流速が0.2〜100m/sec.の範囲にある条件であれば、PM付圧損低減率を大きくしつつ、原料収率を高くして効率よく製膜することが可能なことがわかる。
【0078】
そして、実験例3、13から、端面除去を施すことによって、初期圧損上昇率を低く出来ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る目封止ハニカム構造体の製造方法は、DPFとして用いられる表面捕集層付の目封止ハニカム構造体(ハニカムフィルタ)を製造する手段として、好適に利用される。DPFは、ディーゼルエンジンをはじめとする内燃機関や、各種燃焼装置から排出されるガス中に含まれるパティキュレートを捕集し、ガスを浄化するために使用されるフィルタである。
【符号の説明】
【0080】
1,30,40,50:(表面捕集層の設けられていない)目封止ハニカム構造体
3a,3b:セル
4:隔壁
5:PM(粒子状物質、パティキュレートマター)
6:排出ガス
30a,40a,50a:(目封止ハニカム構造体の)一の端面
30b,40b,50b:(目封止ハニカム構造体の)他の端面
31:エアロゾル
32,52:容器
33,43,53:空気
34,44,54:ファン
35,45,55:筒状体
36,46,56:セラミック粒子
47:セラミック粒子供給器
48,58:エジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目封止ハニカム構造体の一方の端面側において、セラミック粒子と気体を混合し、
前記目封止ハニカム構造体の他方の端面側から、前記セラミック粒子が混合された気体を吸引することによって、
その気体に混合されたセラミック粒子を、前記目封止ハニカム構造体のセル内へ送り込み、
そのセラミック粒子を、前記目封止ハニカム構造体のセル内の表面に付着させる過程を有する目封止ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記セラミック粒子が混合された気体において、セラミック粒子の質量/気体の体積が、1g/m以上、1600g/m以下であり、
セル内における前記セラミック粒子が混合された気体の流速が、0.2m/sec.以上、100m/sec.以下である請求項1に記載の目封止ハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−224514(P2011−224514A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99140(P2010−99140)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】