説明

目封止ハニカム構造体

【課題】DPF等のフィルターとして使用した際に、濾過層の面積を減少させたり、全長を長くしたりすることなく、入口端面側における目封止部の端部へのスートの堆積や、出口端面側における再生時の端面クラックの発生を抑制できる目封止ハニカム構造体を提供する。
【解決手段】入口端面と出口端面との間を連通する複数のセルが、多孔質の隔壁によって区画形成されたハニカム構造体と、所定のセルの入口端面側の開口部及び残余のセルの出口端面側の開口部を目封止する目封止部とを備えた目封止ハニカム構造体1である。目封止部は、目封止部の構成材料を各セルに充填後、焼成することにより形成されたものであり、入口端面及び出口端面のそれぞれの外周から少なくとも幅20mmの領域Aにおいて、前記焼成時に目封止部の端部に生じた凹部の深さが浅くなるように、端面研磨による平滑化処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)等の集塵用フィルターとして好適に使用される目封止ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、環境汚染の原因となるスート(すす)が多量に含まれているため、それらの排気系には、スートを捕捉(濾過)して排ガス中から除去するためのフィルターが搭載されている。
【0003】
一般に、このような目的で使用されるフィルターには、図9に示すように、流体の入口側となる入口端面3と流体の出口側となる出口端面5との間を連通する複数のセル9が、多孔質の隔壁7によって区画形成されたハニカム構造体2と、所定のセル9aの入口端面3側の開口部及び残余のセル9bの出口端面5側の開口部を目封止する目封止部4とを備えた目封止ハニカム構造体1が用いられる。
【0004】
このような目封止ハニカム構造体1からなるフィルターにおいて、排ガスは、目封止ハニカム構造体1の入口端面3から内部に流入し、排ガス中に含まれるスートが除去された後、出口端面5から流出する。具体的には、まず排ガスは、この目封止ハニカム構造体1の入口端面3側において開口部が目封止されておらず、出口端面5側において開口部が目封止されたセル9bに流入し、多孔質の隔壁7の細孔を通って、入口端面3側において開口部が目封止され、出口端面5側において開口部が目封止されていないセル9aに移動し、このセル9aから外部に排出される。そして、この際に隔壁7が濾過層となり、排ガス中のスートが隔壁7に捕捉され隔壁7上に堆積する。
【0005】
ところで、通常、目封止ハニカム構造体1の目封止部4は、その構成材料をスラリー化するなどしてセルに充填した後、焼成することにより形成されるが、図3に示すように、この焼成時に目封止部4の端部に凹部(ヒケ)11が生じる。このように目封止部4の端部に凹部11が存在すると、入口端面3側において、スートが目封止部4の端部に堆積しやすくなる。一般に、目封止ハニカム構造体からなるフィルターを長期間継続的に使用する場合には、フィルター内部に経時的に堆積したスートにより増大した圧力損失を低減させてフィルター性能を初期状態に戻すため、堆積したスートを燃焼させて除去する処理(再生)を定期的に行う。
【0006】
しかしながら、目封止部4の端部に堆積したスートは、目封止ハニカム構造体1の再生時に、完全に燃焼されにくく、燃焼されなかったスートはそのまま目封止部4の端部に残存する。そして、そのように目封止部4の端部に残存したスートは、長期間の使用により次第に蓄積され、やがて目封止部4の端部のみならず隣接するセル9の開口部をも覆うようになる。その結果、フィルターの圧力損失が急激に増大し、燃費の悪化を招く。
【0007】
この目封止部の端部へのスートの堆積を抑制するための対策として、特許文献1には、目封止部の表面を緻密にし、表面粗さを小さくすることにより、スートが目封止部に堆積しにくくする技術が提案されている(特許文献1参照)。この技術において、目封止部の表面を緻密にし、表面粗さを小さくするための具体的な方法は、まず、通常どおり、目封止部の構成材料をセルに充填し、焼成した後、目封止ハニカム構造体の端面に、特性を調整した緻密化材料をスプレー塗布し、その材料を目封止部の端部に付着させるというものである。
【0008】
しかしながら、このような方法では、目封止ハニカム構造体の端面にスプレー塗布された緻密化材料が、目封止ハニカム構造体の端面に開口しているセルの内部に入り込んで、セルの開口部近傍の隔壁の表面にも付着するため、目封止部の端部だけでなく、隔壁までも緻密化してしまう。前述のとおり、セルを区画形成する多孔質の隔壁は、スートを捕捉するための濾過層として機能するものであるため、その一部に緻密化材料が付着して緻密化し、排ガスが通過しにくい状態になると、濾過層の面積が減少することになり、スートを捕集する能力の低下と、圧力損失の増大を招く。
【0009】
更に、目封止部の端部に緻密化材料が付着すると、目封止ハニカム構造体の全長が長くなり、これが目封止ハニカム構造体のキャニング時に問題となる。すなわち、目封止ハニカム構造体をDPF等のフィルターとして用いる場合には、図8に示すように、目封止ハニカム構造体1の外周壁の周りにセラミック繊維マット等からなる保持材22を巻くとともに、端部付近をリテーナーリング21で拘束した状態で筒状の金属容器20内に収容(キャニング)するのが一般的であるが、目封止部の端部に緻密化材料が付着した結果、公差を超えるような全長の目封止ハニカム構造体が製造されると、キャニング時に、目封止ハニカム構造体1の端面外周部に対するリテーナーリング21の圧縮荷重が過大となって、目封止ハニカム構造体1に割れ、欠け等の破損が生じる恐れがある。
【0010】
また、目封止ハニカム構造体1の再生時には、スートの燃焼により生じた熱が排ガスの流れにより下流側に移動する結果、入口端面3に対して出口端面5の温度が高くなるため、特に出口端面5側にて高い熱応力が発生する。このため、セルの出口端面5側の開口部を目封止する目封止部4の端部に凹部11が存在すると、熱応力が凹部11に集中し、端面クラックが生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−211836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、DPF等のフィルターとして使用した際に、濾過層の面積を減少させたり、全長を長くしたりすることなく、入口端面側における目封止部の端部へのスートの堆積や、出口端面側における再生時の端面クラックの発生を抑制できる目封止ハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の目封止ハニカム構造体が提供される。
【0014】
[1] 流体の入口側となる入口端面と流体の出口側となる出口端面との間を連通する複数のセルが、多孔質の隔壁によって区画形成されたハニカム構造体と、所定のセルの前記入口端面側の開口部及び残余のセルの前記出口端面側の開口部を目封止する目封止部とを備えた目封止ハニカム構造体であって、前記目封止部が、前記目封止部の構成材料を前記各セルに充填後、焼成することにより形成されたものであり、前記入口端面及び出口端面のそれぞれの外周から少なくとも幅20mmの領域において、前記焼成時に前記目封止部の端部に生じた凹部の深さが浅くなるように、端面研磨による平滑化処理が施されている目封止ハニカム構造体。
【0015】
[2] 前記凹部の深さが0.02mm未満となるように、前記端面研磨による平滑化処理が施されている[1]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0016】
[3] 前記入口端面及び出口端面のそれぞれに内包される最大の円の中心を中心とし、前記最大の円の直径の40%の長さの直径を持つ円の内側の領域においては、端面研磨による平滑化処理が施されていない[1]又は[2]に記載の目封止ハニカム構造体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の目封止ハニカム構造体は、各端面(入口端面及び出口端面)の外周から少なくとも幅20mmの領域において、焼成時に目封止部の端部に生じた凹部の深さが浅くなるように、端面研磨による平滑化処理を施されているため、入口端面側の当該領域においては、スートが目封止部の端部に堆積しにくく、その結果、再生時に燃えずに残ったスートの堆積によるセルの開口部の閉塞が抑制され、急激な圧力損失の増大や、それに伴う燃費の悪化を防ぐことができる。また、出口端面側の当該領域においては、目封止部の端部の凹部の深さが浅くなることにより、再生時の熱応力の凹部への集中が緩和され、端面クラックの発生が抑制される。そして、これらの効果は、端面研磨による平滑化処理により実現されるため、濾過層の面積の減少や、目封止ハニカム構造体の全長が長くなることによるキャニング時の破損といった問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の目封止ハニカム構造体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の目封止ハニカム構造体の端面(入口端面又は出口端面)を示す平面図である。
【図3】目封止部の端部に凹部(ヒケ)が生じている状態を示す断面図である。
【図4】端面研磨による平滑化処理を施す前後の目封止部の端部の状態を示す断面図である。
【図5】目封止ハニカム構造体の端面(入口端面又は出口端面)において、端面研磨による平滑化処理を施さない方が好ましい領域を示すための平面図である。
【図6】端面研磨による平滑化処理の方法の一例を示す説明図である。
【図7】端面研磨による平滑化処理の方法の一例を示す説明図である。
【図8】目封止ハニカム構造体のキャニング状態を示す断面図である。
【図9】従来の目封止ハニカム構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
図1に示すように、本発明の目封止ハニカム構造体1は、流体の入口側となる入口端面3と流体の出口側となる出口端面5との間を連通する複数のセル9が、多孔質の隔壁7によって区画形成されたハニカム構造体2と、所定のセル9aの入口端面3側の開口部及び残余のセル9bの出口端面5側の開口部を目封止する目封止部4とを備えたものである。
【0021】
このような構造の目封止ハニカム構造体1をDPF等のフィルターとして用いた場合の基本的な浄化機構は先述した従来の目封止ハニカム構造体と同様である。すなわち、まず排ガスは、この目封止ハニカム構造体1の入口端面3側において開口部が目封止されておらず、出口端面5側において開口部が目封止されたセル9bに流入し、多孔質の隔壁7の細孔を通って、入口端面3側において開口部が目封止され、出口端面5側において開口部が目封止されていないセル9aに移動し、このセル9aから外部に排出される。そして、この際に隔壁7が濾過層となり、排ガス中のスートが隔壁7に捕捉され隔壁7上に堆積する。
【0022】
本発明の目封止ハニカム構造体1において、目封止部4は、その構成材料をスラリー化するなどしてセル9に充填した後、焼成することにより形成されるものであり、図3に示すように、この焼成時に目封止部4の端部に凹部(ヒケ)11が生じる。この凹部11の深さは、通常0.06〜0.15mm程度である。そして、本発明の目封止ハニカム構造体1は、その特徴的な構造として、図2に示す、入口端面3及び出口端面5のそれぞれの外周から少なくとも幅20mmの領域Aにおいて、焼成時に目封止部4の端部に生じた凹部11の深さが浅くなるように、端面研磨による平滑化処理が施されている。
【0023】
この端面研磨による平滑化処理によって、図4に示すように、目封止部4の端部の凹部11の深さHが浅くなると、図1の入口端面3側においては、スートが凹部11に入り込みにくくなるため、目封止部4の端部に堆積しにくくなる。その結果、再生時に燃えずに残ったスートの堆積による目封止部4周囲のセル9の開口部の閉塞が抑制され、急激な圧力損失の増大や、それに伴う燃費の悪化が防止される。また、出口端面5側においては、目封止部4の端部の凹部11の深さHが浅くなることにより、再生時の熱応力の凹部11への集中が緩和され、端面クラックの発生が抑制される。そして、これらの効果は、端面研磨による平滑化処理により実現されるため、先述した従来技術のような、濾過層の面積の減少や、目封止ハニカム構造体1の全長が長くなることによるキャニング時の破損といった問題は生じない。
【0024】
なお、端面研磨による平滑化処理が施される領域Aの幅が20mm未満では、目封止部4の端部へのスートの堆積を抑制したり、再生時の熱応力の凹部11への集中を緩和したりすることのできる領域が狭すぎて、十分な効果を得ることができない。
【0025】
本発明の目封止ハニカム構造体1は、凹部11の深さHが0.02mm未満となるように、端面研磨による平滑化処理が施されていることが好ましい。凹部11の深さHが0.02mm未満であれば、目封止部4の端部へのスートの堆積や、再生時の熱応力の凹部11への集中を極めて効果的に抑制することができる。凹部11の深さは、例えば、光ゲージを用いて測定することができる。
【0026】
本発明の目封止ハニカム構造体1において、端面研磨による平滑化処理が施される領域Aは、入口端面3及び出口端面5のそれぞれの外周から幅20mmを超える領域であっても良い。ただし、目封止ハニカム構造体1の隔壁に、再生時のスートの燃焼を促進するために、Pt、Pd、Rh、Ag等の酸化触媒を担持するような場合には、図5のように、入口端面3及び出口端面5のそれぞれに内包される最大の円13の中心を中心とし、その最大の円13の直径Dの40%の長さの直径0.4Dを持つ円15の内側の領域Bにおいては、端面研磨による平滑化処理が施されていないことが好ましい。なお、図5は、各端面(入口端面3及び出口端面5)が楕円形の場合の例であるが、各端面が円形の場合には、各端面に内包される最大の円は、各端面の外周と合致する円(各端面と同一の直径及び中心を持つ円)となる。よって、その場合、各端面の中心と同一の中心を持ち、各端面の直径の40%の長さの直径を持つ円の内側の領域が、端面研磨による平滑化処理が施されていないことが好ましい領域となる。
【0027】
端面研磨による平滑化処理を施すと、当該処理により生じた研磨粉の一部がセルの内部に入り込んで隔壁に付着する。付着した研磨粉の大部分はエアブローなどにより除去されるが、全ての研磨粉を完全に除去することは難しい。そして、研磨粉が除去されずに隔壁上に残っていると、その研磨粉がスートと酸化触媒との接触を阻害するため、再生に要する時間が長くなる。通常、再生時のスートの燃焼は、排ガスにより温度が上昇しやすい目封止ハニカム構造体の断面(軸方向に垂直な断面)の中央部付近から始まり、そこで生じた燃焼熱が周囲に伝わって、目封止ハニカム構造体全体でスートの燃焼が生じるので、スートと酸化触媒との接触を阻害する研磨粉が、この中央部付近の隔壁に付着するのを極力防止すべく、前記領域Bにおいては、端面研磨による平滑化処理が施さないことが好ましい。
【0028】
本発明の目封止ハニカム構造体1において、ハニカム構造体(目封止部4を除く部分)2の構成材料は、特に制限されるものではないが、強度、耐熱性等の観点から、炭化珪素(SiC)、炭化珪素(SiC)を骨材としてかつ珪素(Si)を結合材として形成された珪素−炭化珪素系複合材料、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、Fe−Cr−Al系金属等が好適なものとして挙げられる。また、目封止部4の構成材料は、ハニカム構造体2との熱膨張差を小さくするため、ハニカム構造体2と同じ材料を用いることが好ましい。
【0029】
本発明の目封止ハニカム構造体1において、隔壁7の厚さは、7〜20mil(178〜508μm)であることが好ましく、8〜16mil(203〜406μm)であることがより好ましく、10〜14mil(254〜356μm)であることが更に好ましい。隔壁7の厚さが7mil(178μm)未満であると、強度が不足して耐熱衝撃性が低下する場合があり、一方、隔壁7の厚さが20mil(508μm)を超えると、圧力損失が大きくなりすぎる場合がある。
【0030】
また、本発明の目封止ハニカム構造体1において、セル密度は、140〜350セル/in(cpsi)(217キロ〜543キロセル/m)であることが好ましく、160〜320cpsi(248キロ〜496キロセル/m)であることがより好ましく、200〜300cpsi(310キロ〜465キロセル/m)であることが更に好ましい。セル密度が140cpsi(217キロセル/m)未満であると、流体との接触効率が不十分となる場合があり、一方、セル密度が350cpsi(543キロセル/m)を超えると、圧力損失が大きくなりすぎる場合がある。
【0031】
本発明の目封止ハニカム構造体1を構成するハニカム構造体(目封止部4を除く部分)2を作製する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的な方法の一例としては、前記のような材料に、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等のバインダー、造孔材、界面活性剤、溶媒としての水等を添加して、可塑性の坏土とし、この坏土を所定のハニカム形状となるように押出成形し、次いで、マイクロ波、熱風等によって乾燥した後、焼成する。焼成は、セル9に目封止部4を形成する前に行っても良いし、セル9に目封止部4を形成した後で、目封止部4の焼成と一緒に行うようにしても良い。
【0032】
セル9を目封止する方法にも、従来公知の方法を用いることができる。具体的な方法の一例としては、前記のような方法で作製したハニカム構造体2の端面にシートを貼り付けた後、当該シートの目封止しようとするセルに対応した位置に穴を開け、このシートを貼り付けたままの状態で、目封止部4の構成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム構造体2の端面を浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止しようとするセルの開口端部内に目封止用スラリーを充填し、それを乾燥、焼成して硬化させる。
【0033】
本発明の目封止ハニカム構造体1は、このような方法でセル9を目封止した後、端面研磨による平滑化処理を施すことによって得られる。図6及び図7は、端面研磨による平滑化処理の方法の一例を示す説明図である。この例においては、端面研磨による平滑化処理に、円形の回転板33と、回転板33の一方の面の中心に垂直に取り付けられた回転軸35と、回転板33の他方の面に取り付けられた環状の砥石37とからなる一対(二個一組)の研磨具31が用いられる。この一対の研磨具31は、回転板33の砥石37が取り付けられた側の面同士が対向し、かつ、互いの回転軸35が同軸上に位置するよう配置される。回転軸35は、図示しない駆動機構により回転され、それにより回転板33及び砥石37に回転が付与される。また、この一対の研磨具31は、それぞれ回転軸31の軸方向に移動可能に構成されることにより、互いの間隔が調整できるようになっている。
【0034】
端面研磨による平滑化処理が施される目封止ハニカム構造体1は、円板状のチャック部43と、チャック部43の一方の面の中心に垂直に取り付けられた回転軸45とからなる一対(二個一組)のチャック具41により、各端面の中央部が軸方向の両側からチャックされている。回転軸45は図示しない駆動機構により回転され、それにより目封止ハニカム構造体1に回転が付与される。また、チャック具45は、目封止ハニカム構造体1をチャックした状態で、目封止ハニカム構造体1を径方向に移動可能に構成されている。
【0035】
まず、図6のように、研磨具31の回転軸35とチャック具41の回転軸45とが平行となるように配置し、目封止ハニカム構造体1をチャックしたチャック具41を、目封止ハニカム構造体1の径方向に存在する研磨具に接近させて、図7のように、目封止ハニカム構造体1の各端面(入口端面及び出口端面)と研磨具31の砥石37とを接触させる。この時、研磨具31の砥石37は、50〜500rpm程度の回転数で高速回転させ、一方、チャック具41にチャックされた目封止ハニカム構造体1は、5〜30rpm程度の回転数で低速回転させる。こうして、目封止ハニカム構造体1の各端面と砥石37とを接触させつつ、両者を回転させることにより、目封止ハニカム構造体1の各端面に対して、端面研磨による平滑化処理が施される。なお、端面研磨の深さ方向における研磨量は、一対の研磨具31の間隔を制御することによって、調整することができる。また、端面研磨による平滑化処理が施される領域の幅は、研磨具31の回転軸35とチャック具41の回転軸45との距離を制御することによって、調整することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1〜5及び比較例1)
コージェライトを構成する原料(タルク、アルミナ、カオリンを所定量混合したもの)にバインダー、分散剤、水等を加えて混練し、成形用の坏土を作製した。この坏土を用いて押出成形し、ハニカム状の成形体(ハニカム成形体)を得た。次に、得られたハニカム成形体の所定のセルの入口端面側の開口部及び残余のセルの出口端面側の開口部に目封止材を充填した。目封止材の充填に際しては、開口部に目封止材が充填されたセルと目封止材が充填されないセルとが、各端面において市松模様状を呈するようにした。また、目封止材の組成はハニカム成形体の組成と同じになるようにした。その後、このハニカム成形体を所定の温度及び時間にて焼成し、外形が、直径144mm、長さ152mmの円柱形で、隔壁厚さが12mil(305μm)、セル密度が300cpsi(465キロセル/m)、セル形状が四角形である目封止ハニカム構造体を得た。なお、この時点で、得られた目封止ハニカム構造体の目封止部の端部には、深さが0.11〜0.12mm程度の凹部(ヒケ)が生じていた。
【0038】
次いで、この目封止ハニカム構造体の各端面(入口端面及び出口端面)において、図2に示す端面外周からの幅Kが、それぞれ表1に示す値となるような領域に対し、目封止部の端部に生じた凹部の深さHが0.02mm未満となるように、端面研磨による平滑化処理を施して、実施例1〜5及び比較例1の目封止ハニカム構造体を得た。なお、端面研磨による平滑化処理は、前述の図6及び図7に示す方法により行った。こうして端面研磨による平滑化処理を施した実施例1〜5及び比較例1の目封止ハニカム構造体について、下記の方法により、耐クラック性、圧力損失増加率、キャニング性及び再生性能を評価し、その評価結果を表1に示した。
【0039】
[耐クラック性及び圧力損失増加率の評価]
目封止ハニカム構造体をディーゼルエンジンの排気管に取り付けた。そして、ディーゼルエンジンを運転して、目封止ハニカム構造体に排ガスを流通させ、目封止ハニカム構造体にスートを6g/l堆積させた後、排ガス温度を約600℃まで上昇させるとともに、排ガス流量を2m/minに制御離して、目封止ハニカム構造体に堆積したスートを、下式(1)により求められる再生効率が50〜60%となるよう時間調整して燃焼させるという再生サイクルを20回繰り返した。その後、目封止ハニカム構造体を排気管から取り外して、出口端面にクラックが生じているかどうかを確認し、クラックが生じていなかった場合を「○」、クラックが生じていた場合を「×」とした。また、1回目の再生サイクルにおける、スートを燃焼させる前(スートを6g/l堆積させた状態)の目封止ハニカム構造体の圧力損失(1回目圧力損失)と、20回目の再生サイクルにおける、スートを燃焼させる前(スートを6g/l堆積させた状態)の目封止ハニカム構造体の圧力損失(20回目圧力損失)とを測定し、20回目圧力損失が1回目圧力損失の2倍以下であった場合を「○」、2倍超であった場合を「×」とした。
再生効率(%)=(初期スート量−再生後スート量)/初期スート量×100 (1)
【0040】
[キャニング性の評価]
目封止ハニカム構造体の長さについて、許容可能な限界の値を設定し、その設定値に基づいて、目封止ハニカム構造体を収容(キャニング)するための金属容器を作製した。この金属容器に目封止ハニカム構造体を押し込んで収容した後、金属容器の入口と出口とにコーンを装着した。そして、この金属容器に、振動加速度30G、振動周波数100Hzの振動を加えながら、150℃で10分間保持した後、800℃に昇温して10分間保持するという加熱加震サイクルを50回繰り返した。その後、金属容器から目封止ハニカム構造体を取り出して、金属容器との接触部位にクラックが生じているかどうかを確認し、クラックが生じていなかった場合を「○」、クラックが生じていた場合を「×」とした。
【0041】
[再生性能の評価]
目封止ハニカム構造体の隔壁に酸化触媒を含むスラリーを塗布することにより、隔壁上に酸化触媒を担持させた後、これを金属容器に収容し、ディーゼルエンジンの下流部の排気系に、別途用意した酸化触媒担体とともに組み込んだ。次いで、ディーゼルエンジンを運転して、目封止ハニカム構造体に排ガスを流通させ、目封止ハニカム構造体にスートを6g/l堆積させた後、排ガス温度を約600℃まで上昇させて5分間保持することにより、目封止ハニカム構造体に堆積したスートを燃焼させる再生処理を行い、再生前のスート量(初期スート量)と再生後のスート量とから、上式(1)により再生効率を求め、再生効率が50%以上であった場合を「○」とし、50%未満であった場合を「×」とした。
【0042】
(比較例2)
実施例1〜5及び比較例1と同様にして、端面研磨による平滑化処理を施す前の目封止ハニカム構造体を得、これを比較例2の目封止ハニカム構造体とした。この比較例2の目封止ハニカム構造体について、実施例1〜5及び比較例1と同様の方法により、耐クラック性、圧力損失増加率、キャニング性及び再生性能を評価し、その評価結果を表1に示した。
【0043】
(比較例3)
実施例1〜5及び比較例1と同様にして、端面研磨による平滑化処理を施す前の目封止ハニカム構造体を得、この目封止ハニカム構造体の各端面(入口端面及び出口端面)に対し、緻密化材料をスプレー塗布した後、約500℃で乾燥して、比較例3の目封止ハニカム構造体を得た。なお、緻密化材料は、コージェライトを構成する原料(タルク、アルミナ、カオリンを所定量混合したもの)に、バインダーや造孔材、分散材、水等を加えて混練し、スプレー塗布に適した粘度に調整することにより作製した。緻密化材料をスプレー塗布し、乾燥した後の目封止部の端部の凹部の深さHは、0.02mm未満となっていた。この比較例3の目封止ハニカム構造体について、実施例1〜5及び比較例1と同様の方法により、耐クラック性、圧力損失増加率、キャニング性及び再生性能を評価し、その評価結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すとおり、本発明の実施例である実施例1〜5の目封止ハニカム構造体は、端面研磨による平滑化処理が施されていない比較例2の目封止ハニカム構造体に比して、耐クラック性、圧力損失増加率、キャニング性において高い評価結果を示した。端面研磨による平滑化処理を行わず、緻密化材料のスプレー塗布により目封止部の端部を緻密化した比較例3の目封止ハニカム構造体は、目封止部の端部に付着した緻密化材料によって、その全長が長くなったため、キャニング性が悪化するとともに、目封止部の端部だけでなく、濾過層として機能する隔壁にまで緻密化材料が付着したため、圧力損失増加率の評価も実施例1〜5の目封止ハニカム構造体より劣る結果となった。また、端面研磨による平滑化処理が施されている領域が、各端面の外周から幅20mm未満の領域である比較例1の目封止ハニカム構造体は、当該処理が施されている領域が狭すぎるため、十分な処理効果が得られず、耐クラック性及び圧損増加率において低い評価となった。なお、実施例4及び5の目封止ハニカム構造体は、端面研磨による平滑化処理が、各端面に内包される最大の円の中心を中心とし、その最大の円の直径の40%の長さの直径を持つ円の内側の領域まで施されたものであるが、これらは再生性能においてのみ低い評価となった。これは、端面研磨による平滑化処理が、各端面の中央部付近まで施されため、研磨粉が中央部付近の隔壁に付着し、スートと酸化触媒の接触を阻害したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の目封止ハニカム構造体は、DPF等の集塵用フィルターとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:目封止ハニカム構造体、2:ハニカム構造体、3:入口端面、4:目封止部、5:出口端面、7:隔壁、9:セル、11:凹部、13:円、15:円、20:金属容器、21:リテーナーリング、22:保持材、31:研磨具、33:回転板、35:回転軸、37:砥石、41:チャック具、43:チャック部、45:回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の入口側となる入口端面と流体の出口側となる出口端面との間を連通する複数のセルが、多孔質の隔壁によって区画形成されたハニカム構造体と、所定のセルの前記入口端面側の開口部及び残余のセルの前記出口端面側の開口部を目封止する目封止部とを備えた目封止ハニカム構造体であって、
前記目封止部が、前記目封止部の構成材料を前記各セルに充填後、焼成することにより形成されたものであり、
前記入口端面及び出口端面のそれぞれの外周から少なくとも幅20mmの領域において、前記焼成時に前記目封止部の端部に生じた凹部の深さが浅くなるように、端面研磨による平滑化処理が施されている目封止ハニカム構造体。
【請求項2】
前記凹部の深さが0.02mm未満となるように、前記端面研磨による平滑化処理が施されている請求項1に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項3】
前記入口端面及び出口端面のそれぞれに内包される最大の円の中心を中心とし、前記最大の円の直径の40%の長さの直径を持つ円の内側の領域においては、端面研磨による平滑化処理が施されていない請求項1又は2に記載の目封止ハニカム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−206006(P2012−206006A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72748(P2011−72748)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】