説明

目用温湿化粧水シート

【課題】従来技術における低温火傷の防止や化粧効果の向上を含めて眼精疲労の回復が図れるような実用的な目用温湿化粧水シートを提供する。
【解決手段】目用温湿化粧水シートは、空気の存在によって発熱反応をする発熱部材3を不織布で形成した表面シート1と裏面シートとの間に挟み、裏面シートに含水親水性ゲル剤からなる粘着シートを取り付けた目用温湿化粧水シートであって、前記粘着シートの含水親水性ゲル剤中に少なくともヒアルロン酸ナトリウム若しくは酢酸トコフェロールを含んでいる構成としたことによって、眼精疲労の回復だけでなく、保湿性が良く肌荒れ改善について顕著な効果を期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目頭および目の周囲の肌を乾燥から守るまたは肌荒れを改善する若しくは目の疲れを癒すため、目頭および目の周囲に貼着して使用する温湿化粧水シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の温湿シートとしては、複数の発明(技術)が公知になっている。その公知に係る第1の従来技術として、例えば、化学エネルギーを利用した水蒸気発生部を有し、水蒸気発生面が目及び目の周囲に適用される水蒸気発生体において、該水蒸気発生面が透湿性素材から形成され、該水蒸気発生面から放出される水蒸気の温度が50℃以下に制御されており、適用時に目用水蒸気発生体が目及び目の周囲を覆うアイマスク様形状をなしており且つ水蒸気発生部が目上に位置するように配設されており、水蒸気温度を50℃以下に制御する温度調整部材として、(1)織布、不織布、(2)紙類、(3)プラスチック、天然ゴム、再生ゴム又は合成ゴムから形成した多孔性フィルム又は多孔性シート、(4)穿孔を有する金属箔の少なくとも1種を含む積層物が設けられている目用水蒸気発生体である(特許文献1参照)。
【0003】
この目用水蒸気発生体によれば、眼精疲労、その他の問題を引き起こす目の乾きに対し、化学エネルギーを利用した簡便な構成により、蒸しタオルのような安全な蒸気を持続的に目及び目の周囲へ導くことができるというものである。
【0004】
また、公知に係る第2の従来技術として、空気の存在によって発熱反応を起こす発熱組成物を、袋状、シート状等の所望形態の通気性収容体内に封入し、前記収容体に親水性高分子増粘剤から得られる含水親水性ゲル剤からなる粘着剤層を設けてなる発熱体であって、前記含水親水性ゲル剤に有機質充填剤を含ませた発熱体である(特許文献2参照)。
【0005】
この発熱体によれば、適度な粘着力を有し、貼付時及び使用初期においての身体に与えるひんやり感を低減し、使用性に優れた発熱性シート剤等の発熱体が得られる、というものである。
【0006】
更に、第3の公知に係る従来技術として、水蒸気発生組成物が内蔵され、該水蒸気発生組成物が少なくとも第1の透湿性シートと第2の透湿性シートとで順次覆われてなり、密封保存される目用水蒸気発生シートであって、第1の透湿性シートは透湿度(ASTM E−96−80D法)600g/m2/24hr以上、第2の透湿性シートは透湿度(ASTM E−96−80D法)700−3000g/m2/24hrであり、第1の透湿性シートと第2の透湿性シートが、双方の間に水蒸気滞留空間が生じ得るように設けられ、水蒸気発生組成物を覆う透湿性シートの少なくとも一つが耐水度400mm以上である目用水蒸気発生温熱シートである(特許文献3参照)。
【0007】
この目用水蒸気発生温熱シートは、包装材から取り出した後の水蒸気放出状態において、第1の透湿性シートと第2の透湿性シートとの間に水蒸気滞留空間が形成されるようにすることにより、目及びその周囲に供給する水蒸気温度を安全で、眼精疲労等の緩和に効果的な温度に調整し、かつその温度水蒸気を適用部位全体に均一に供給するので、幾層もの温度緩衝材が不要となる。したがって、目用水蒸気発生温熱シートを薄く形成できるもので、使用感、携帯性、流通効率が向上し、製造コストを抑えることが可能となる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3629956号公報
【特許文献2】特許第4323155号公報
【特許文献3】特開2004−73688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記第1の従来技術においては、化学エネルギーを利用した水蒸気発生部を有し、水蒸気発生面が目及び目の周囲に適用される水蒸気発生体において、該水蒸気発生面が透湿性素材から形成され、該水蒸気発生面から放出される水蒸気の温度が50℃以下に制御されているとしているが、それでも例えば50℃では3分間(圧迫)で受傷することから、低温火傷の防止までは解決されていないし、化粧効果についても言及されていないのである。
【0010】
また、前記第2の従来技術においては、空気の存在によって発熱反応を起こす発熱組成物と、親水性高分子増粘剤から得られる含水親水性ゲル剤に有機質充填剤を含ませものとを通気性収容体内に封入したもので、適度な粘着力を有し、貼付時及び使用初期においての身体に与えるひんやり感を低減し、使用性に優れた発熱性シート剤等の発熱体が得られるというだけのもので、低温火傷や化粧効果については言及されていない。
【0011】
更に、前記第3の従来技術においては、設定温度を35〜60℃で60分間の加熱が説明されているが、実際に50℃を超えることがあったりすると、短時間で低温火傷を負うことになり、また、化粧効果については言及されていない。
【0012】
いずれにしても、従来技術では、低温火傷に対する対策や、肌の化粧効果についての対策がなされていないのであり、これらを低温火傷の防止や化粧効果の向上を含めて眼精疲労の回復が図れるような実用的な目用温湿化粧水シートとして使用できるようにすることに解決課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決する具体的手段として、本発明は、空気の存在によって発熱反応をする発熱部材を不織布で形成した表面シートと裏面シートとの間に挟み、裏面シートに含水親水性ゲル剤からなる粘着シートを取り付けた目用温湿化粧水シートであって、前記粘着シートの含水親水性ゲル剤中に少なくともヒアルロン酸ナトリウム若しくは酢酸トコフェロールを含んでいることを特徴とする目用温湿化粧水シートを提供するものである。
【0014】
この発明においては、前記発熱部材の使用量と厚みとを調整して発熱温度と時間とを調整したこと、を付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る目用温湿化粧水シートにおいては、目用温湿化粧水シートを構成する粘着シートの含水親水性ゲル剤中に、少なくともヒアルロン酸ナトリウム若しくは酢酸トコフェロールを含んでいることによって、眼精疲労の回復だけでなく、保湿性が良く肌荒れ改善について優れた効果を奏する。
また、発熱部材の使用量と厚みとを調整して発熱温度と時間とを調整したことによって、発熱温度は45℃未満で発熱時間も1時間以下になるように設定してあるので、材料使用に無駄がなく経済的であると共に、うっかり睡眠しても低温火傷は生じないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る目用温湿化粧水シートを略示的に示した正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】同実施の形態に係る目用温湿化粧水シートの内部に収納する発熱体の構成が判るように一部を開いて示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を図示の実施の形態に基づいて詳しく説明する。まず、図1〜3に示した好ましい実施の形態において、本発明に係る目用温湿化粧水シートは、不織布で眼鏡状に形成された表面シート1と裏面シ−ト2との間に一対の発熱部材(一種のカイロ)3を介在させ、裏面シート2には保水剤等を含むゲル剤を保有し水蒸気を発生させる貼着シート4を取り付けた構成であって、該貼着シート4には、剥離用または保護用フィルム5が貼り付けてあり、さらに、樹脂フィルムで形成した機密性の包装用袋体6に収納し、周囲をシール7することにより密封されている。
【0018】
前記発熱部材3として、従来から知られている空気に触れることによって発熱する材料として、例えば、金属粉と活性炭と反応助剤とが用いられる。金属粉としては、鋳鉄粉、還元鉄粉、電解鉄粉等であり、活性炭として、椰子殻粉、木粉炭、ビート炭等であり、反応助剤としては、例えば、水、食塩、バーミキュライト等であり、これらの適当量を、図3に示したように、所要大きさの通気性を有する袋体8内に入れ、平均的に4mm以下の厚みにして、図1に示したように、眼鏡状の両側に配設して表面シート1と裏面シート2とで表裏から挟み周辺を接着させることで内部に保持するのである。
【0019】
水蒸気を発生させる貼着シート4としては、要するに、含水親水性ゲル剤に有機質充填剤を含ませたものであって、含水親水性ゲル剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等の親水性高分子増粘剤から選択される。有機質充填剤としては、例えば、結晶セルロース、木粉、植物乾燥粉末などから選択される。
【0020】
また、裏面シート2に設けられた粘着シート4は、使用時において顔面にある程度の粘着力をもって貼り付くものであるが、目用温湿化粧水シートとして使用する時まで他の部所または部品、例えば、包装用袋体6等と貼り付かないように、剥離用または保護用フィルム5を貼り付けて隔離してある。そして、機密性のある包装用袋体6に収納し、内部の空気を排除して封止することにより安定した状態を維持できる。
【0021】
さらに、発熱部材3として、発熱時間長さを調整する手段としては、発熱材料の収容量を増減することにより調整することができる。その場合には、収容する袋体8の大きさも大・中・小に形成すると共に全体を薄く(2〜4mm)形成して使い分けるのである。収容する量が多くて厚いと発熱温度が高くなるし時間も長くなり、収容する量が少なくて薄いと発熱温度が低くなるし時間も短くなる。また、発熱効果をより良くするために小径のものを複数枚(左右合計で4枚〜8枚)使用することもできる。
【0022】
前記実施の形態に係る成分の具体的配合例を実施例として比較例と共に表1-1として示す。また、発熱部材の使用量および厚みは、カイロ充填比率で示す。尚、カイロ充填比率はカイロ組成物の重量(g)をカイロ袋体占有(タテ・a×ヨコ・b)面積(cm2)で割って算出した数値である。カイロ充填比率は、0.24〜0.29g/cm2が好ましい。厚みは2〜4mmが好ましい。
[表1−1]発熱部材のカイロ組成およびカイロ充填比率

本発明の目用温湿化粧水シートを検体として1〜20枚包装用袋体から取り出し、当該目用温湿化粧水シートの粘着シートにガーゼを5枚重ね、粘着シート面から1枚目と2枚目のガーゼに温度計のフラットセンサーを発熱部材(一種のカイロ)のおよそ中央部に相当する位置に差し込み、経時的に温度を測定した。試験データを表1-2に示す。
発熱温度は35℃〜48℃、時間は30分〜1時間30分であることが好ましい。
[表1−2]温度特性試験データ




【0023】
[表2]貼着シートについて


【0024】
化粧効果のテストについて(パネラー7名)
室温15℃、湿度40%の環境下、本発明の目用温湿化粧水シートの入った袋を半開し、約3分間、袋中で目用温湿化粧水シートを発熱させた後、その袋を全開して温かな目用温湿化粧水シートを取り出して、目用温湿化粧水シートをパネラーの目元に適用する。15分間目用温湿化粧水シートを保持してもらった。そのあと、下記アンケート項目について回答してもらい、その回答を集計し表3に示した。

[表3]



【0025】
特に、前記表3から明らかなように、眼精疲労の回復と相俟って保湿性が良く肌荒れ改善について顕著な効果を示すのであります。そして、発熱部材3の収容量を調整して発熱温度は35℃〜48℃で、発熱時間も30分〜1時間30分になるように設定してあるので、材料使用に無駄がなく低温火傷は生じないのである。
【0026】
上記で説明した水蒸気を発生させる貼着シート4の有効成分としては、さらに、下記物質の圧搾物、抽出物または化合物等が挙げられる。
アロエ、カミツレ、カンゾウ、モモ葉、イチョウ、クマザサ、レイシ、冬虫夏草、セイヨウハッカ、ミドリハッカ、アップルミント、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン、ウコン、ボタンピ、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸Na、アミノ酸(グリシン、ヴァリン、ロイシン等)、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸−DL−α−トコフェロール、コハク酸−DL−α−トコフェロール、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステル、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、ビタミンP、ビオチン、アラントイン、ニコチン酸アミド、コハク酸−DL−α−トコフェロール( ビタミンE 類) 、カプサイシン、レチノール、レチノールパルミチン酸エステル、レチノイン酸、酢酸レチノール( ビタミンA 類) 、リボフラビン、酢酸リボフラビン、プラセンタ抽出物、乳酸菌、コレステロール、コレステロール高級脂肪酸エステル( コレステロール誘導体)、スフィンゴ脂質、セラミド、リン脂質、ムコ多糖類、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜などである。
【0027】
また、貼着シート4の含水親水性ゲル剤に配合できるものとしては、上記の他に、通常化粧料に配合される各種の顔料、油剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐防菌剤、香料、他の保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤等の成分を使用することができる。
【0028】
なお、前述の有効成分の抽出溶媒としては、水、アルコール類( 例えば、メタノール、無水エタノール、エタノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1 , 3 − ブチレングリコール等の多価アルコール) 、アセトン等のケトン類、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、クロロホルム等の有機溶媒の一種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0029】
本発明で用いられる有効成分の含有量は、貼着シート4の含水親水性ゲル剤の総量を基準として、成分固形分換算で0.01 〜 5.0 % が好ましく、特に好ましくは0.1 〜 2.0 % である。0.01 以上で、皮膚への保湿、コンディショニング機能などが十分に発揮され、コスト的に有利である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る目用温湿化粧水シートは、空気の存在によって発熱反応をする発熱部材を不織布で形成した表面シート1と裏面シート2との間に挟み、裏面シート2に含水親水性ゲル剤からなる粘着シート4を取り付けた目用温湿化粧水シートであること、そして、前記粘着シート4の含水親水性ゲル剤中に少なくともヒアルロン酸ナトリウム若しくは酢酸トコフェロールを含んでいることが要件であって、それによって、眼精疲労の回復だけでなく、保湿性が良く肌荒れ改善について顕著な効果を期待できるのであり、他の化粧用湿化粧水シートとして広く利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 表面シート
2 裏面シ−ト
3 発熱部材(一種のカイロ)
4 貼着シート
5 保護用フィルム
6 包装用袋体
7 シール
8 袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の存在によって発熱反応をする発熱部材を不織布で形成した表面シートと裏面シートとの間に挟み、裏面シートに含水親水性ゲル剤からなる粘着シートを取り付けた目用温湿化粧水シートであって、
前記粘着シートの含水親水性ゲル剤中に少なくともヒアルロン酸ナトリウム若しくは酢酸トコフェロールの有効成分を0.01〜5.0重量%配合してなることを特徴とする目用温湿化粧水シート。
【請求項2】
前記発熱部材の使用量と厚みとを調整して発熱温度と時間とを調整したことを特徴とする請求項1に記載の目用温湿化粧水シート。
【請求項3】
前記発熱部材の使用量が、カイロ充填比率で0.24〜0.29g/cm2で、厚みが2〜4mm、発熱温度が35℃〜48℃、発熱時間が30分〜1時間30分であることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の目用温湿化粧水シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−94484(P2013−94484A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241251(P2011−241251)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(505243870)株式会社トレードワークス (1)
【出願人】(000215958)帝國製薬株式会社 (44)
【Fターム(参考)】