説明

目盛り付きピペット

本発明は、ピストン(9)及び少なくとも封止点を通る部分で直径が変えられるバレルを有するピペットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を分配するために使用するためのピストン動作型ピペットに関し、上記ピペットは、表示される容積まで分配される容積の調整を可能にする較正機能を含む。本発明は、特に、この較正機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピストン動作型ピペットは、ピストンストロークを定めるための較正機能を通常有し、その結果、このストロークによって分配される液体の容積は、可能な限り示された容積に等しい。フインランド特許明細書(欧州特許第112887号に対応する)は、そのようなピペットを開示している。このピペットは、ストロークの下限の調整を可能にする較正装置を含んでいる。実施に際して、較正は、示された容積を備えるピペットによって分配される液体の量を測ることによって行われ、また、液体の容積が示された容積に等しくなるまで下限のストッパーを調整することによって行われる。較正は、通常、ピペットが使用される前に、製造中に行われ、また、必要なとき繰り返される。上記で述べたようなピペットは、与えられた容積の範囲で、ピペットの使用を可能にする、容積を分離する制御機能を通常有している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
請求の範囲1で決定されるようなピペットが発明された。他の請求の範囲は、本発明のいくつかの実施形態を記載している。
本発明のピペットは、可変の直径を備えるピストン又はバレルを含む。上記ピペットは、ストローク長とストローク開始点双方を変えることによって較正される(目盛りが定められる)。
添付の図面は、本発明の説明に関連するものであり、本発明の以下の詳細な記載に関連している。
【0004】
本発明のピペットは、ピストン及び少なくとも封止点(sealing point)のそばを通る部分において、可変直径を有するバレルを含む。好ましくは、バレルは、円筒型であり、ピストンの直径は、可変である。ピストンは、好ましくは円錐形であり、特に、例えば、円筒の方にだんだん細くなる端部を有してもよい。ピストンは、例えばまた、バレル(円筒部)又はアワーグラス(砂時計)に似た、非線形の可変形状を有してもよい。本発明のピペットは、ストローク長と、ストローク中のピストン直径の双方を変えることによって、較正される。これは、所望ならば、容積範囲の1点での容積の補正、又は、2点での互いに異なる補正、特に容積範囲の極値での補正を可能にするので、精度を増加させる。較正は、2点で実行できるので、ピストンの製造技術の不具合が、精度へ影響することはより小さいであろう。較正は、好ましくは、最上の設定の反復により達成される。
【0005】
封止点を通る直径が変わる時、封止はそのような変化に適応することを必要とする。必要な容積の制御範囲は、典型的には約1%であり、その時、直径の変化は、全操作範囲の0.5%のオーダーのみである。このオーダーでの大きさの封止をすることは、何ら問題を引き起こさない。
【0006】
直径の変更がなされる時、ストローク容積は、ストローク長と非線形の相互依存関係であろう。
ピペットによって分配された容積は、最も有利に調整可能である。この場合、容積表示は、したがって、非線形になる。調整(制御)のためのネジ山が使用される時、円錐に合う非線形の形状が与えられ、変化するネジ山を備える特別のナットが、それと結合される。調整のネジ山のピッチの変化は、容積変化に対して1%のオーダーであり、それで、1.6mmのピッチは、典型的には、0.016mmの変化を要求する。特定のナットは、例えば、ピッチの変化に等しい値だけ先細にされるネジ山の頂を備えるものを供給するように製造される。もし、ピペットがスプリング(第1のスプリング)を含むなら、ピストンが押されるものに対して、このように製造された軸のはたらきは、ピペットに悪影響を与えない。
表示は、また、必要に応じて、非線形で提供され得る。容積表示は、また、センサを使用する電気的手段で構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、円筒内の円錐ピストンのストローク容積を説明している。ピストンが距離lを越えて点d1からd3まで通るとき、ストローク容積V1は、πl(d1+d1d3+d3)/12である。ピストンが、太い部分の点d2から点d4まで同じ距離lを移動する時、ストローク容積V2は、したがってπl(d2+d2d4+d4)/12である。いいかえれば、与えられた距離の移動で得られた容積は、ストロークの始点に依存する。円柱ピストン及び円筒が使用されるとき(一定の直径dを有する)、ストローク容積は、移動距離のみに依存する。
【0008】
図2は、円筒内の円錐ピストンのストローク容積間の相互関係を説明しており、ピストンは、2点、移動距離lで目盛り付け(較正)できる。事実、容積変化は、非線形であり、直径はより長い距離で増加するので、容積は急激に増加する。較正は、2点、すなわち、ストロークの始点の変更による第一の点と、ストローク長さを変更することによる第二の点で、達成される。ストローク長の調整は、垂直方向にオフセット(補正)がある曲線を生じる(ケース1)。始点の調整は、また、上記曲線の傾きを変える(ケース2)。
【0009】
図3は、本発明に従うピペットの例を説明している。
ピペットは、その下端に先端(チップ)部2を備える本体1を含んでおり、先端収容体、すなわち、先端(チップ)は、上記先端部の下端に固定されている。スライドするチップ排出スリーブ3は、前記先端部を取り囲む。必要な駆動力を減少するためのチップ排出ボタン4が、ホイール5(参考 EP特許公開566939に対応するフィンランド特許92374)の手段によって、ハンドルに対して動かされることによって、前記チップ排出スリーブ3は延ばされる。前記チップ排出に対する戻しスプリング6は、前記本体の側部に配置される。ユーザの手に適合するような形状にされたハンドル部7は、前記本体に配置される。前記本体は、その頂部に指支持体8を含んでいる。
【0010】
チップ部2は、円い穴が開けられており、それは、本体1の貫通する穴に続いている。前記チップ部には、アーム10によって伸ばされるピストン9がある。前記アームの下端は、スリーブ状であり、前記ピストンの上部の周囲に配置される。前記アームの上部は、前記本体内に延長され、より狭くされている。ノブ11は、前記アームの上部に備えられている。前記チップ部の上部で、前記穴は拡大部を有し、その底部に、チップ部に対してピストンを封じるためのO−リング12を有する。前記O−リングは、前記本体とチップ部間に配置されるO−リングスプリング13によって、上から押さえられる。
【0011】
ピストンのアーム10は、調整ナット14を備える調整のためのネジ山を含み、その前記本体に対する回転は、長さ方向のガイドと溝の手段によって防止される。前記アームが回転するとき、結果として、ナットは、アームの長さ方向に動かされる。前記本体はストッパー15を含み、それに対して前記調整ナット、よって前記ピストンは、第1のスプリング16によって下側から押される。言い換えれば、前記調整ナット及びストッパーは、前記ピストンストロークの上限を決定する。スリーブ状第2支持体17は、前記アームの上部の周囲に滑るように配置され、この第2支持体は、下部に内部フランジを有する。第2の支持体の上部で、調整ナット18は、本体内の穴の中へネジ山ではめ込まれ、第2の支持体は、第1のスプリングよりも大きな力を持っている第2のスプリング19の手段によって、下から較正ナットに対して押される。
【0012】
ノブ11の本体は、前記第2の支持体内で動くように配置されている。しかし、この作動ノブは、第2の支持体の下部フランジによって形成される穴の直径よりも大きな直径を有する。第2の支持体のフランジとともに、このノブの下端は、ピストンストロークの下限を決定する。液体がチップ内に吸引される時、ピストンは下限にぶつかって押され、それから、上限の方へ戻される。液体が先端(チップ)から排除される時、ピストンは、できる限り完全に液体を排出するために下限まで通すように、第2のスプリングの力に抗してさらに押される。(同様な配置は、欧州特許第112887号および第737515号に対応するフィンランド特許第64752号に説明されている。)。
【0013】
第1のデジタルリング20は、これとともに回転するようにピストンアーム10の周囲にコッタ継手で取り付けられる。この第1デジタルリングの上端表面は、上記リング上の表示(示度数)と合う停止ノッチ(切り込み)を含み、この停止ノッチは、非回転リングスプリング21上の突起と結合する(フインランド特許第92374号)。このように、ピストンアームは、回転し、段階を追ってロックされる。各回転後、第1デジタルリングが1段階だけ第2の徐々に変わっていく円盤を回転できるように、前記第1のデジタルリングは、下に位置する第2のデジタルリングへ第1スプロケット22で結合される。同様に、第2の徐々に変わっていく円盤は、第2のスプロケット24上で第3のデジタルリング25に結合される。
【0014】
O−リングのそばを通るピストン9の部分は、その上端よりも狭い下端を備える円錐形状を有する。補正されるデジタルリング20、23、25によって示される容積に対して、ピストンアーム10の制御されるネジ山のピッチ角は、上記円錐にしたがって変化する。調整ナット14は、このような変化するネジ山と共動する特定のナットである。
【0015】
ノブ11は、スリーブ状で、内部フランジを含み、そこから前記ノブがネジ山26上でピストンアーム10の端部に取り付けられている。ロッキングナット17は、前記アームへのノブの非回転ロッキングのため、フランジ上に備えられる。ノブキャップ28は、取り外し可能であり、取り外されたとき前記ロッキングナットに接近できる。前記ロッキングナットが緩められるとき、ノブが回転でき、そして、ピストンが垂直方向に移動される。
【0016】
分配される容積は、通常、較正ナット18の回転で補正される最小容積を調整することによって測定される。(対応する調整装置は、欧州特許第112887号、及び第737515号に対応するフィンランド公開第64752号に説明されている)。第2の分配される容積、通常、最大容積は、ノブ11を回転することによって上限を調整し、より正確に測定できる。測定は、最適精度が達成されるまで、2容積繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ピペットの制御ピストンを示す。
【図2】図2は、容積とストローク長間の相互依存関係を示す。
【図3】図3は、本発明のピペットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルと、該バレル内で移動し、封止点(12)で前記バレルに封止されるピストン、
前記ピストンの移動の上限を決定するための機構(14,15)、
前記ピストンの移動の下限を決定するための機構(26,17)、
及び、できる限り正確に意図された容積に等しい分配容積を得るように、ピストンストローク長を変えられる較正機能を含む、較正可能なピペットであって、
前記ピストン(9)又は前記バレルの直径が、少なくとも前記封止点を通る部分内にあることを特徴とする較正可能なピペット。
【請求項2】
前記ピストン(9)の直径は可変である、ことを特徴とする請求項1記載のピペット。
【請求項3】
前記ピストン(9)の直径は、封止点を通る部分で、少なくとも円錐状である、ことを特徴とする請求項1又は2記載のピペット。
【請求項4】
できる限り正確に意図された容積に等しい分配容積を得るように、前記ストロークの始点又は終点の制御を可能にする第2の較正機能を、さらに含むことを特徴とする請求項1、2又は3記載のピペット。
【請求項5】
前記第2の較正機能(27)は、排出ストロークの終点の調整を可能にすることを特徴とする請求項4記載のピペット。
【請求項6】
前記ピストンの移動の下限を決定するための機構が、ピストンの長さ方向に可動であるストッパ(11)を含むことを特徴とする請求項5記載のピペット。
【請求項7】
前記ピストン内のストッパ(11)は、ネジ山(26)を備えるピストンアーム内に配置されていることを特徴とする請求項6記載のピペット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−534944(P2008−534944A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503541(P2008−503541)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/FI2006/000103
【国際公開番号】WO2006/103315
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(501286093)サーモ フィッシャー サイエンティフィック オイ (13)
【Fターム(参考)】