説明

直上高架橋の基礎工用施工装置及び施工方法

【課題】 架設ガーダー方式による汎用部材の使用を主体とした、低コストで工期短縮を実現することができる直上高架橋の基礎工用施工装置を提供する。
【解決手段】
直上高架橋の上部工に先立って杭構築等の基礎工を行う直上高架橋の基礎工用施工装置16であって、先行して構築される杭24または杭施工用の下地工に前後方向に移動可能に支持された下部ガーダー20と、下部ガーダー20に対して、移動装置付き脚44を介して移動可能に支持された上部ガーダー22とを有し、上部ガーダー22には、杭24または杭施工用の下地工を行なうために各種施工機や施工材料を吊り下げ可能とする同時使用可能な複数台の可動式吊り装置46を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直上高架橋の基礎工用施工装置及び直上高架橋の施工方法に関し、特に、直上高架橋の上部工に先立って杭構築等の基礎工を行う直上高架橋の基礎工用施工装置及び直上高架橋の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、踏切による交通渋滞の解消を図るため、鉄道の高架化が実施されており、その際の施工には、一般に仮線施工が実施されている。
【0003】
仮線施工による鉄道の高架化は、用地取得の長期化による事業遅延等が問題になっており、その解決方法として、直上施工の活用が期待されている。
【0004】
ところで、このような直上施工においては、専用の直上施工装置を用いるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−291809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような専用の直上施工装置にあっては、ある程度の汎用性を持たせるような努力もなされているが、ブーム式クレーンの搭載が前提となるため、全体重量が大きな専用機となり、製作コスト増を招き、その活用に当たっては、コスト低減及び更なる工期短縮が求められている。
【0007】
本発明の目的は、転用性が高い鋼製梁や柱などの汎用部材の使用を主体とした架設ガーダー方式による、低コストで工期短縮を実現することができる直上高架橋の基礎工用施工装置及び直上高架橋の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記目的を達成するため、本発明の直上高架橋の基礎工用施工装置は、直上高架橋の上部工に先立って杭構築等の基礎工を行う直上高架橋の基礎工用施工装置であって、
先行して構築される杭または杭施工用の下地工に前後方向に移動可能に支持された下部ガーダーと、
前記下部ガーダーに対して、移動装置付き脚を介して移動可能に支持された上部ガーダーとを有し、
前記上部ガーダーには、杭または杭施工用の下地工を行なうために各種施工機や施工材料を吊り下げ可能とする同時使用可能な複数台の可動式吊り装置を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、下部ガーダーと、上部ガーダーと、複数台の可動式吊り装置とを有する架設ガーダー方式による汎用部材の使用を主とした直上施工装置構成とすることが可能となり、低コストで工期短縮を図ることができる。
【0010】
また、吊り装置は、可動式で、複数台設けられているため、一方でスタンドパイプ等の杭施工用の下地工、他方で杭施工等の同時施工を実現することが可能となり、工期短縮に寄与することが可能となる。
【0011】
(2)本発明においては、(1)において、
前記吊り装置は、上部ガーダーに固定された前後方向の移動を可能とする前後方向ガイドレールに支持された横方向ガイドレールに支持され、
前記横方向ガイドレールは、前記前後方向ガイドレールに支持された前後方向と交差して伸びる第1のガイドレールと、
前記第1のガイドレールに沿って横方向に移動可能とされ、前記吊り装置を横方向に移動可能に支持する第2のガイドレールとを有し、
前記吊り装置が上部ガーダーの前後及び横方向の全域にわたり移動可能とすることができる。
【0012】
このような構成とすることにより、横方向ガイドレールは、前後方向ガイドレール、第1のガイドレール及び第2のガイドレールによって、吊り装置を上部ガーダーの前後及び横方向の全域にわたり移動可能とされているため、一方でスタンドパイプ、他方で杭施工等の同時施工を実現することが可能となり、工期短縮に寄与することが可能となり、さらに、下部ガーダーの外側両端部位置に杭施工用の下地工に固定し下部ガーダーを支持するブラケットの設置を可能にすることができる。
【0013】
(3)本発明においては、(1)または(2)において
前記上部ガーダーは、杭または杭施工用の下地工に用いる施工機を載置し、あるいは、施工材料を仮置きする施工用ステージを有するものとすることができる。
【0014】
このような構成とすることにより、施工用ステージに施工機を設置して施工用ステージから直接杭施工等を行ったり、施工済み高架橋からの資材の運搬、仮置き等を行って、施工の効率化、用地の有効利用を図ることが可能となる。
【0015】
(4)本発明においては、(1)〜(3)のいずれかにおいて
前記上部ガーダーと前記下部ガーダーとは、後方部で緊結部材により緊結可能にされ、施工時における下部ガーダーを支持する杭または杭施工用の下地工に作用する荷重の均等化及び上部ガーダーの転倒を防止するようにすることができる。
【0016】
このような構成とすることにより、施工時における下部ガーダーを支持する杭または杭施工用の下地工に作用する荷重の均等化を可能にするとともに、上部ガーダーの一方の吊り装置側で施工を行っている場合に、荷重が一方側にかかるため、緊結手段によって上部ガーダーと移動用下部ガーダーとを緊結しておくことで、基礎工用施工装置の転倒を簡単かつ確実に防止することができる。
【0017】
(5)本発明においては、(1)〜(4)のいずれかにおいて
前記上部ガーダーは、横方向で拡縮可能にする拡縮機構を有するものとすることができる。
【0018】
このような構成とすることにより、拡縮機構により上部ガーダーを横方向で拡縮することで、直上高架橋の通常幅部はもちろん、拡幅部等の変断面の施工にも容易に対応することが可能となる。
【0019】
(6)本発明の直上高架橋の施工方法は、(1)〜(5)のいずれかに記載の直上高架橋の基礎工用施工装置を用いて構築した基礎上に、後続の部材架設用施工装置を用いて上部工を構築することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、架設ガーダー方式による汎用部材の使用を主とした基礎工用施工装置を用いることにより、低コストで工期短縮を図ることができる。
【0021】
また、吊り装置は、可動式で、複数台設けられているため、一方でスタンドパイプ等の杭施工用の下地工、他方で杭施工等の同時施工を実現することが可能となり、工期短縮に寄与することが可能となる。
【0022】
さらに、前記基礎工用施工装置を用いて構築した基礎上に、後続の部材架設用施工装置を用いて上部工を構築することで、効率よく直上高架橋の構築が可能となる。
【0023】
(7)本発明においては、(3)または(3)を採用した(4)または(5)に記載の直上高架橋の基礎工用施工装置を用いた(6)に記載の直上高架橋の施工方法において、
前記部材架設用施工装置を用いて構築した直上高架橋上を利用して施工材料を前記部材架設用施工装置の手前まで搬送する工程と、
前記部材架設用施工装置の搬送手段及び基礎工用施工装置の吊り装置を用いて基礎工用の施工材料を前記直上高架上より前記施工用ステージまで搬送して仮置きする工程と、
前記基礎工の進捗状況に応じて前記吊り装置により前記施工用ステージに仮置きした施工材料を取り出し搬出する工程と、
を含むものとすることができる。
【0024】
このような構成とすることにより、構築した直上高架橋を利用して施工材料を上部工施工装置手前まで搬送し、部材架設用施工装置の搬送手段及び基礎工用施工装置の吊り装置を用いて基礎工用の施工材料を前記直上高架上より施工用ステージまで搬送して仮置きすることで、施工材料を他の搬送手段を用いることなく、さらには、他の用地を用いることなく搬送することができ、施工用ステージに仮置きした施工材料を進捗状況に応じて取り出し施工することが可能となる。
【0025】
また、部材架設用施工装置の搬送手段による搬送は、上部工の養生期間に行えば、部材架設用施工装置の稼働に影響を与えることなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる基礎工用施工装置を用いた直上高架橋の施工装置を示す側面図である。
【図2】図1の基礎工用施工装置の拡大側面図である。
【図3】下部ガーダー支持状態を示す部分拡大側面図である。
【図4】図3の矢視IV方向から見た側面図である。
【図5】下部ガーダーの連結部における中折れ機構の状態を示す拡大平面図である。
【図6】図5の矢視VI方向から見た側面図である。
【図7】図2の基礎工用施工装置における幅方向で縮小した状態の正面図である。
【図8】図7の状態から基礎工用施工装置を幅方向で拡張した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1〜図8は、本発明の一実施の形態にかかる基礎工用施工装置を示す図である。
【0029】
図1は、本実施の形態にかかる基礎工用施工装置を用いた直上高架橋の施工装置を示す側面図で、この直上高架橋の施工装置10は、既設の軌条12の直上に高架橋14を構築するもので、基礎工用施工装置16と、部材架設用施工装置18とを有している。
【0030】
各施工装置16及び18はそれぞれ下部ガーダー20、21及び上部ガーダー22、23を有している。
【0031】
基礎工用施工装置16は、杭構築等の基礎工を行うもので、下部ガーダー20と、上部ガーダー22とは汎用部材で形成されている。
【0032】
下部ガーダー20は、図2にも示すように、先行して構築される杭24または杭24施工用の下地工であるスタンドパイプ26に移動可能に支持されるようになっている。
【0033】
具体的には、基礎工は、既存の軌条12の外側位置に全周回転式圧入機等を設置し、杭施工用下地工のスタンドパイプ26を建て込み、杭施工機42にて掘削を行い、杭24を構築し、さらにフーチングを構築して形成されるようになっている。
【0034】
下部ガーダー20は、図3、図4に示すように、杭24または杭施工用下地工のスタンドパイプ26にブラケット28を取り付け、このブラケット28にジャッキ30を介して移動用ローラ32を支持させ、この移動用ローラ32が下部ガーダー20の下面側に取り付けたレール25と係合し、移動用ローラ32の駆動により軌条12(図1参照)に沿って移動可能に支持されるようになっている。
【0035】
この場合、下部ガーダー20は、杭24または杭施工用下地工のスタンドパイプ26等に対して偏心した位置に支持され、杭の構築や高架橋等の上部工となる部材架設等に影響を与えることなく施工が可能となる。
【0036】
また、下部ガーダー20は、ジャッキ30を介して支持されることで、このジャッキ30を既設の軌条12(図1参照)の縦断勾配に対応するものとして用い、ジャッキ30により既設の軌条12の縦断勾配に応じて容易に対応することができるようになっている。
【0037】
さらに、下部ガーダー20は、図5、図6に示すように、複数本のガーダー部材34を連結して形成されるようになっており、各ガーダー部材34間には両側に少なくとも一対の水平曲線対応用の中折れ機構としての中折れジャッキ36が設けられ、この中折れジャッキ36の調整により、既設の軌条12(図1参照)の水平曲線に応じて下部ガーダー20を容易に対応させることができるようになっている。
【0038】
上部ガーダー22は、図1及び図2に示すように、移動装置付き脚44を介して上部に前後方向に延びる前後方向ガイドレール41が支持されている。
【0039】
移動装置付き脚44は、図3及び図4に示すように、移動装置38により下部ガーダー20の上方に下部ガーダー20に沿って支持された状態となっており、移動装置38の下端に配設された移動用ローラ40が下部ガーダー20の上面側に設けたレール27と係合し、移動用ローラ40の駆動により下部ガーダー20上で移動可能にされている。
【0040】
前後方向ガイドレール41は、図7及び図8に示すように、上部ガーダー22の横方向両側に一対設けられた状態となっている。
【0041】
そして、この一対の前後方向ガイドレール41に、複数の可動式吊り装置46が設けられている。
【0042】
これら複数の吊り装置46は、杭24または杭施工用の下地工を行うための各種施工機や施工材料を吊り下げ可能とするもので、複数台が同時使用可能とされている。
【0043】
また、各吊り装置46は、上部ガーダー22に固定された前後方向の移動を可能とする前後方向ガイドレール41に支持された横方向ガイドレール48に支持されている。
【0044】
横方向ガイドレール48は、前後方向ガイドレール41に支持された前後方向と交差して伸びる第1のガイドレール50と、第1のガイドレール50に沿って横方向に移動可能とされ、吊り装置46を横方向に移動可能に支持する第2のガイドレール52とを有している。
【0045】
第1のガイドレール50は駆動装置51によって、第2のガイドレール52は駆動装置53によって駆動可能にされている。
【0046】
吊り装置46は、駆動装置45によって駆動可能にされている。
【0047】
そして、各吊り装置46が前後方向ガイドレール41、第1のガイドレール50、第2のガイドレール52によって、上部ガーダー22の前後及び横方向の全域にわたり移動可能となっている。
【0048】
また、この吊り装置46には、掘削排土用装置47(図1、図2参照)が取り付け可能とされ、杭施工用下地工のスタンドパイプ26内の中堀により圧入抵抗を減少させることで、礫質地盤にも容易に対応できるようにされている。
【0049】
このように、吊り装置46を上部ガーダー22の前後及び横方向の全域にわたり移動可能とすることで、一方で杭施工用下地工のスタンドパイプ26、他方で杭24の施工等の同時施工を実現することが可能となり、工期短縮に寄与することが可能となり、さらに、下部ガーダー22の外側両端部位置にブラケット28の設置を可能にすることができる。
【0050】
また、上部ガーダー22には、複数の移動装置付き脚44に支持させた施工用ステージ54が設けられている。
【0051】
この施工用ステージ54には、杭24または杭施工用の下地工に用いる施工機を載置し、あるいは、杭施工用下地工のスタンドパイプ26、鉄筋篭58(図1参照)、ブラケット28等の施工材料を仮置きするようになっている。
【0052】
このように、施工用ステージ54に杭施工機42(図1、図2参照)を載置して施工用ステージ54から直接地工を行ったり、施工済み高架橋14(図1参照)からの資材の運搬、仮置き等を行って、施工の効率化、用地の有効利用を図ることが可能となる。
【0053】
さらに、上部ガーダー22と下部ガーダー20とは、図1及び図2で示すように、後方部でロッド状の緊結部材60により緊結可能にされ、施工時における下部ガーダー20を支持する杭24または杭施工用の下地工に作用する荷重の均等化及び上部ガーダー22の転倒を防止するようにしている。
【0054】
このように、施工時における下部ガーダー22を支持する杭24または杭施工用の下地工に作用する荷重の均等化を可能にするとともに、上部ガーダー22の一方の吊り装置46側で施工を行っている場合に、荷重が一方側にかかるため、緊結部材60によって上部ガーダー22と下部ガーダー20とを緊結しておくことで、上部ガーダー22の転倒を簡単かつ確実に防止することができるようにしている。
【0055】
そしてさらに、上部ガーダー22は、図7及び図8に示すように、上部ガーダー22を横方向で拡縮可能にする拡縮機構62を有するものとされている。
【0056】
この拡縮機構62は、左右の移動装置付き脚44の上端部を連結する拡縮梁64と、各一対の拡縮ジャッキ66、68とを有している。
【0057】
拡縮梁64は、中央梁部材70と、この中央梁部材70に対してその両側より進退可能にされた一対の伸縮梁部材72とを有している。
【0058】
一方の拡縮ジャッキ66は、中央梁部材70と、その両側の伸縮梁部材72とを連結した状態となっている。
【0059】
他方の拡縮ジャッキ68は、中央梁部材70の上方に設けた補強梁部材74の両端部と、伸縮梁部材72の突出端とを連結する状態となっている。
【0060】
そして、拡縮ジャッキ66、68を作動させて、伸縮梁部材72を伸縮させることで、上部ガーダー22を横方向で拡縮可能としている。
【0061】
また、拡縮ジャッキ66、68は、伸張した伸縮梁部材72を水平状態で維持する機能を有している。
【0062】
このように、拡縮機構62により上部ガーダー22を横方向で拡縮することで、直上高架橋の通常幅部はもちろん、拡幅部等の変断面の施工にも容易に対応することが可能となっている。
【0063】
部材架設用施工装置18は、図1に示すように、基礎工上に高架橋14等の上部工を行うもので、下部ガーダー21と、上部ガーダー23とは基礎工用施工装置16の場合と同様に、汎用部材にて形成されている。
【0064】
下部ガーダー21は、基礎工用施工装置16の下部ガーダー20と同様に図3及び図4に示す構成となっており、詳細説明は省略する。
【0065】
上部ガーダー23は、前方移動装置39及び後方移動装置76により下部ガーダー21及び高架橋14の上方に下部ガーダー21及び高架橋14上の図示せぬレールに沿って移動可能に支持されている。
【0066】
前方移動装置39は、背の高い移動装置からなり、上部ガーダー23の前方部を支持し、後方移動装置76は、背の低い移動装置からなり、上部ガーダー23の後方部を支持している。
【0067】
後方移動装置76の下端部には、図示せぬが、移動用ローラが設けられ、この移動用ローラが構築された直上の高架橋14の上面に配設された図示せぬレールに係合し、移動用ローラの駆動により前記レールに沿って移動可能にされている。
【0068】
また、上部ガーダー23は、前方部及び後方部が前方移動装置39及び後方移動装置76に支持された状態で、幅方向に移動可能にされるとともに、前後方向で移動可能にされた天井クレーン装置78を搭載し、プレキャスト部材である高架橋14の橋脚79、橋梁80、床版81等を搬送、組み立て可能にされている。
【0069】
この部材架設用施工装置18は、基礎工用施工装置16と同様の拡縮機構により、拡幅部等の変断面の施工にも容易に対応することが可能である。
【0070】
なお、この実施の形態では、プレキャスト部材としてフルプレキャスト部材を用い更なる工期の短縮化を図っている。
【0071】
次に、このような直上高架橋の施工装置10を用いた直上高架橋の施工方法について、主に図1を参照しつつ説明する。
【0072】
まず、既存の軌条12の外側位置に全周回転式圧入機82等を配置し、杭施工用下地工のスタンドパイプ26を建て込み、このスタンドパイプ26にブラケット28及びジャッキ30(図2〜図4参照)を取り付け、ジャッキ30に移動用ローラ32(図2、図3参照)を取り付ける工程を複数箇所で行う。
【0073】
この状態で、基礎工用施工装置16の下部ガーダー20のレール25(図3参照)を移動用ローラ32(図3参照)に係合させて、下部ガーダー20を支持させ、下部ガーダー20上に移動装置付き脚44の移動装置38を移動可能に支持させ、その上に上部ガーダー22を支持させる。
【0074】
上部ガーダー22には、予め施工用ステージ54を取り付けておき、杭施工機42等を載置しておく。
【0075】
次いで、さらに前方位置に、複数の吊り装置46を用いて各種施工機、施工材料等を取り付けて、杭施工用下地工のスタンドパイプ26の建て込み及び杭施工機42を用いた杭24、フーチング(図示せず)等の構築を同時施工にて行いつつ、下部ガーダー20を前進させる。
【0076】
この場合、礫質等の地盤などでは、吊り装置46に掘削排土用装置47を取り付けて施工を行うことで杭施工用下地工の施工効率を高めるようにしている。
【0077】
次に、この後方の基礎工上に取り付けられた移動用ローラ32(図2、図3参照)に、部材架設用施工装置18の下部ガーダー21を移動可能に係合させ、その上に前方移動装置39を移動可能に支持させるとともに、後方の杭24上に橋脚79、橋梁80、床版81の組み立てを行い、構築した高架橋14上にレール(図示せず)を敷設して後方移動装置76を移動可能に支持させる。
【0078】
そして、前方移動装置39及び後方移動装置76上に部材架設用施工装置18の上部ガーダー23を支持させる。
【0079】
上部ガーダー23上には、天井クレーン装置78等を搭載しておく。
【0080】
次いで、前方の杭施工用下地工のスタンドパイプ26の建て込み、杭24の構築等の基礎工作業とともに、上部ガーダー23上の天井クレーン装置78を用いて後方の橋脚79、橋梁80、床版81等の組み立てを行う。
【0081】
次に、構築した高架橋14の床版81上にレール(図示せず)を敷設して、次の橋脚79上に橋梁80等を組み立てていく。
【0082】
次に、橋梁80を組み立てた隣の杭24上に橋脚79を組み立てて、次の高架橋14の組み立ての準備を行う。
【0083】
次の高架橋14の組み立て準備が整った状態で、移動装置38、前方移動装置39及び後方移動装置76により、各下部ガーダー20、21及び上部ガーダー22、23を前方に1スパン分移動させて、次の杭施工用下地工のスタンドパイプ26の建て込み及び高架橋14の組み立ての準備を行い、これを繰り返して高架橋14を構築していくようになっている。
【0084】
この場合、基礎工においては、部材架設用施工装置18を用いて構築した直上高架橋14上を利用して施工材料を部材架設用施工装置18の手前まで搬送し、部材架設用施工装置18の搬送手段である天井クレーン装置78及び基礎工用施工装置16の吊り装置46を用いて基礎工用の施工材料を直上高架橋14上より施工用ステージ54まで搬送して仮置きする。
【0085】
基礎工用の施工材料を直上高架橋14上より施工用ステージ54まで搬送するに際しては、部材架設用施工装置18の天井クレーン装置78にて直上高架橋14上の基礎工用の施工材料、例えば図1に示す鉄筋篭58を吊り上げ、その状態で天井クレーン装置78を前方に移動させ、部材架設用施工装置18と基礎工用施工装置16との間に待機させた地上の図示せぬ軌道上運搬車上に一旦鉄筋篭58を吊り下ろす。
【0086】
次いで、軌道上運搬車にて鉄筋篭58を基礎工用施工装置16の下部まで移動させ、そこで基礎工用施工装置16の吊り装置46にて施工用ステージ54まで搬送するようにしている。
【0087】
この場合、鉄筋篭58を軌道上運搬車とともに吊り下ろし、鉄筋篭58の搬送完了後に軌道上運搬車を天井クレーン装置78にて回収してもよい。
【0088】
また、天井クレーン装置78による施工材料の搬送は、直上高架橋14の養生期間中に行えば、部材架設用施工装置18の稼働に影響を与えることなく行うことが可能となる。
【0089】
そして、基礎工の進捗状況に応じて吊り装置46により施工用ステージ54に仮置きした施工材料を取り出し搬出して施工を行うことで、施工材料を他の搬送手段を用いることなく、さらには、他の用地を用いることなく搬送することができ、施工用ステージ54に仮置きした施工材料を進捗状況に応じて取り出し施工することが可能となる。
【0090】
なお、軌条12の縦断勾配及び水平曲折に対しては、図3〜図6に示すジャッキ30及び中折れジャッキ36の調節にて対応していくようになっている。
【0091】
このように、本実施の形態にかかる直上高架橋の施工装置10を用いる場合には、基礎工用施工装置16及び部材架設用施工装置18は、それぞれ下部ガーダー20,21及び上部ガーダー22、23を有する汎用性のある低コストのものとすることができ、しかも、各施工装置16、18は先行して構築される杭24または杭施工用の下地工であるスタンドパイプ26に支持させることで、荷重支持のための全面的な地盤改良や整地作業、横断する地下埋設物などの防護工等の必要もないため、大幅なコスト低減と工期短縮を実現することができる。
【0092】
また、基礎工用施工装置16で先行構築した杭24または杭施工用の下地工であるスタンドパイプ26に下部ガーダー20、21を支持させ、杭24が構築された状態で後続の部材架設用施工装置18により直上の高架橋14を構築することができ、一連の施工作業を効率よく行うことができることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0094】
例えば、前記実施の形態では、基礎工用施工装置及び部材架設用施工装置の下部ガーダーを別体としているが、基礎工用施工装置の移動装置と、部材架設用施工装置の前方移動装置とを兼用として下部ガーダーを一体として形成してもよい。
【0095】
また、杭施工用の下地工であるスタンドパイプに替えて、本設の鋼管杭を施工してもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 直上高架橋の施工装置
14 高架橋
16 基礎工用施工装置
18 部材架設用施工装置
20、21 下部ガーダー
22、23 上部ガーダー
24 杭
26 杭施工用下地工のスタンドパイプ
41 前後方向ガイドレール
42 杭施工装置
44 移動装置付き脚
46 吊り装置
48 横方向ガイドレール
50 第1のガイドレール
52 第2のガイドレール
54 施工用ステージ
58 施工材料の鉄筋篭
60 緊結部材
62 拡縮機構
78 天井クレーン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直上高架橋の上部工に先立って杭構築等の基礎工を行う直上高架橋の基礎工用施工装置であって、
先行して構築される杭または杭施工用の下地工に前後方向に移動可能に支持された下部ガーダーと、
前記下部ガーダーに対して、移動装置付き脚を介して移動可能に支持された上部ガーダーとを有し、
前記上部ガーダーには、杭または杭施工用の下地工を行なうために各種施工機や施工材料を吊り下げ可能とする同時使用可能な複数台の可動式吊り装置を備えたことを特徴とする直上高架橋の基礎工用施工装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記吊り装置は、上部ガーダーに固定された前後方向の移動を可能とする前後方向ガイドレールに支持された横方向ガイドレールに支持され、
前記横方向ガイドレールは、前記前後方向ガイドレールに支持された前後方向と交差して伸びる第1のガイドレールと、
前記第1のガイドレールに沿って横方向に移動可能とされ、前記吊り装置を横方向に移動可能に支持する第2のガイドレールとを有し、
前記吊り装置が上部ガーダーの前後及び横方向の全域にわたり移動可能とされていることを特徴とする直上高架橋の基礎工用施工装置。
【請求項3】
請求項1または2において
前記上部ガーダーは、杭または杭施工用の下地工に用いる施工機を載置し、あるいは、施工材料を仮置きする施工用ステージを有することを特徴とする直上高架橋の基礎工用施工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて
前記上部ガーダーと前記下部ガーダーとは、後方部で緊結部材により緊結可能にされ、施工時における下部ガーダーを支持する杭または杭施工用の下地工に作用する荷重の均等化及び上部ガーダーの転倒を防止することを特徴とする直上高架橋の基礎工用施工装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて
前記上部ガーダーは、横方向で拡縮可能にする拡縮機構を有することを特徴とする直上高架橋の基礎工用施工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の直上高架橋の基礎工用施工装置を用いて構築した基礎上に、後続の部材架設用施工装置を用いて上部工を構築する直上高架橋の施工方法。
【請求項7】
請求項3または請求項3に従属する請求項4または請求項5に記載の直上高架橋の基礎工用施工装置を用いた請求項6に記載の直上高架橋の施工方法において、
前記部材架設用施工装置を用いて構築した直上高架橋上を利用して施工材料を前記部材架設用施工装置の手前まで搬送する工程と、
前記部材架設用施工装置の搬送手段及び基礎工用施工装置の吊り装置を用いて基礎工用の施工材料を前記直上高架上より前記施工用ステージまで搬送して仮置きする工程と、
前記基礎工の進捗状況に応じて前記吊り装置により前記施工用ステージに仮置きした施工材料を取り出し搬出する工程と、
を含むことを特徴とする直上高架橋の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−93643(P2011−93643A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248011(P2009−248011)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成21年度、国土交通省、直上高架化の効率的な施工に関する技術検討業務請負事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】