説明

直接接触式コンデンサおよび軸流排気式蒸気タービン装置

【課題】直接接触式コンデンサの内部に不凝縮ガスを含んだ排気流が流入した場合における凝縮性能低下を緩和し、かつ圧力損失を低くする。
【解決手段】実施形態によれば、直接接触式コンデンサの本体胴容器を備え、前記本体胴容器は、排気蒸気入口部と、入口部と対面するように配置された排気蒸気出口部と、垂直および水平方向に複数個配列されたヘッダと、ヘッダに連なって設けられ、蒸気タービンから排出される水蒸気である排気を復水させる冷却水を噴射する複数個のスプレーノズルとを有し、液滴が噴出してから環水槽に到達するまでの当該液滴の無次元温度が0.70〜0.85の範囲内となるように、ヘッダ高さが低くなるにつれて、当該ヘッダに設置されるスプレーノズルのノズル径を小さくするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば地熱発電所のプラントに設置される直接接触式コンデンサおよび軸流排気式蒸気タービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地球温暖化防止およびCO2排出量削減等の観点から注目されている地熱発電システムでは、タービン蒸気が凝縮した復水をボイラに供給する必要がなく、復水の洗浄度に対する要求が厳しくないことから、タービン排気蒸気と冷却水とを直接接触させて蒸気を凝縮させる復水器である、直接接触式コンデンサ(condenser)が用いられる場合がある。
【0003】
直接接触式コンデンサは、主にトレイ式および液滴噴霧式に分類される。これらの方式のうち液滴噴霧式の直接接触式コンデンサの方式としては、下方排気タービンの下部に設けられる方式、および軸流排気タービンの後部に設けられる方式が挙げられる。
【0004】
前者の方式は、タービン出口からタービンの回転軸方向へ放出される排気流を上方へ転向して、その後、この排気流を再び下方へ転向させることにより、コンデンサ上部から排気流を導入する方式である。
【0005】
この方式では、タービン排気流を水平方向から鉛直方向へ転向させ、垂直に配置された複数のヘッダに設けられたスプレーノズルより液滴を噴出して、排気流を直接凝縮させる。
【0006】
しかし、この方式では、タービン上部に十分な空間が必要なこと、タービンの設置位置を高くしたりコンデンサ設置位置を下げたりするための掘削が必要なこと等、機器・建設コストが増大するという課題があった。さらに、この方式では、タービン排気流を転向させることによって、圧力損失が増大するという課題があった。
【0007】
後者の、軸流排気タービンの後部に設けられる方式は、タービン排気流を転向させることなくコンデンサ内部へ導入して、水平に配置された複数のヘッダに設けられた各々のスプレーノズルより均一な流量の液滴を噴出する方式である。
【0008】
この方式では、タービンの回転軸方向へ放出される排気流を転向させることなくコンデンサ内へ導入することが可能なため、排気流の転向による圧力損失を抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−23962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した、軸流排気タービンの後部に設けられて、スプレーノズルを水平に配置したコンデンサを用いることにより、タービンの回転軸方向へ放出される排気流を転向させることなくコンデンサ内へ導入可能なため、蒸気排気の圧力損失を抑えることが可能である。
【0011】
ところで、コンデンサにおける凝縮率も圧力損失へ影響を与える。凝縮率が低下すると、液滴と排気流との接触時間が長くなり、液滴は長時間抗力を受けるため、圧力損失が増大する。このことは、不凝縮ガスを含んだ蒸気を用いる地熱発電システムにおいて、特に顕著である。
【0012】
蒸気中に不凝縮ガスが混入すると、液滴の温度上昇が鈍化して、液滴温度が低下してしまう。不凝縮ガス混入率が増大すると、その影響はさらに顕著になる。この事は、不凝縮ガス含有率が高くなるほど、液滴の伝熱性能が低下する事を意味する。すなわち、実際のコンデンサにおいて、不凝縮ガスの混入が蒸気の凝縮量減少の要因となる。
【0013】
地熱発電システムに用いられるコンデンサでは、内部に滞留する前述の不凝縮ガスを抽出するために、エゼクタ(ejector)が設けられる場合がある。エゼクタは、タービン入口前より抽気した主蒸気を駆動蒸気として、コンデンサ内の不凝縮ガスを抽出する機器である。
【0014】
コンデンサの凝縮性能の低下は、コンデンサ器内に滞留する不凝縮ガスを抽出するためのエゼクタ駆動蒸気量の増大に繋がる。エゼクタの駆動蒸気はタービンを通過しないので、プラント出力に寄与しない。よって、コンデンサの凝縮性能低下はプラント出力低下の原因となる。
【0015】
ここまで説明した、軸流排気タービンの後部に設けられて、スプレーノズルを水平に配置したコンデンサは、運転時の信頼性やスプレー流量の均一化を目的としたものであることから、不凝縮ガスを含んだ排気流が流入した場合の凝縮性能低下を抑制することを考慮していない。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、内部に不凝縮ガスを含んだ排気流が流入した場合でも、凝縮性能低下を緩和し、かつ、低圧力損失の直接接触式コンデンサおよび軸流排気式蒸気タービン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
実施形態によれば、直接接触式コンデンサの本体胴容器を備え、前記本体胴容器は、タービン軸がほぼ水平に保持されて配設されてディフューザを備える軸流排気式蒸気タービンの下流側に設けられて当該ディフューザから排気蒸気が流入する排気蒸気入口部と、前記入口部と対面するように配置された排気蒸気出口部と、垂直および水平方向に複数個配列されたヘッダと、前記ヘッダに連なって設けられ、前記蒸気タービンから排出される水蒸気である排気を復水させる冷却水を噴射する複数個のスプレーノズルと、前記ヘッダに冷却水を供給する供給管と、前記スプレーノズルから噴出した液滴が流入する環水槽とを有し、前記液滴が噴出してから当該環水槽に到達するまでの当該液滴の無次元温度が0.70〜0.85の範囲内となるように、前記ヘッダ高さが低くなるにつれて、当該ヘッダに設置されるスプレーノズルのノズル径を小さくする。
【0018】
また、実施形態によれば、直接接触式コンデンサの本体胴容器を備え、前記本体胴容器は、タービン軸がほぼ水平に保持されて配設されてディフューザを備える軸流排気式蒸気タービンの下流側に設けられて当該ディフューザから排気蒸気が流入する排気蒸気入口部と、前記入口部と対向するように配置された排気蒸気出口部と、前記本体胴容器内における垂直および水平方向に複数個配列されたヘッダと、前記ヘッダに連なって設けられ、前記蒸気タービンから排出される水蒸気である排気を復水させる冷却水を噴射する複数個のスプレーノズルと、前記ヘッダに冷却水を供給する供給管と、前記スプレーノズルから噴出した液滴が流入する環水槽とを有し、前記入口部から、前記本体胴容器の流れ方向長さに対する前記入口部からの距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置では、所定のノズル径を有する前記スプレーノズルを設けて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出し、当該位置から前記排気蒸気出口までの位置では、前記距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置におけるノズル径より小さなノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴出する。
【0019】
また、実施形態によれば、本体胴容器を備え、前記本体胴容器は、タービン軸がほぼ水平に保持されて配設されてディフューザを備える軸流排気式蒸気タービンの下流側に設けられて当該ディフューザから排気蒸気が流入する排気蒸気入口部と、前記入口部と対向するように配置された排気蒸気出口部と、前記本体胴容器内における垂直および水平方向に複数個配列されたヘッダと、前記ヘッダに連なって設けられ、前記蒸気タービンから排出される水蒸気である排気を復水させる冷却水を噴射する複数個のスプレーノズルと、前記ヘッダに冷却水を供給する供給管と、前記スプレーノズルから噴出した液滴が流入する環水槽とを有し、前記本体胴容器の中心から角部への距離Rとして、前記中心からの距離rとした場合の距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域では所定のノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴射し、距離比r/Rが0.4以上かつ0.7以下の領域では、前記距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域におけるノズル径より大きなノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における直接接触式コンデンサの構成例を示す横断面図。
【図2】第1の実施形態における直接接触式コンデンサの落下液滴における液滴温度と落下時間との関係の一例を示す図。
【図3】第2の実施形態における直接接触式コンデンサの構成例を示す横断面図。
【図4】排気流速と臨界液滴径の関係を示す図。
【図5】第3の実施形態における直接接触式コンデンサの構成例を示す横断面図。
【図6】第3の実施形態における軸流排気タービンの排気流速分布の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態における直接接触式コンデンサの構成例を示す横断面図である。
このコンデンサは、本体胴容器5を備え、この本体胴容器5は、排気蒸気入口部3、排気蒸気出口部4、複数個のスプレーノズル6、ヘッダ7、供給管8および環水槽9を有する。
排気蒸気入口部3は、ディフューザ(diffuser)2を備えた軸流排気タービン1の下流側に設けられる。排気蒸気入口部3には、軸流排気タービン1からの排気蒸気がディフューザ2を介して流入する。
排気蒸気出口部4は、排気蒸気入口部3と対面するように配置される。スプレーノズル6は、本体胴容器5の内部のヘッダ7に取り付けられ、本体胴容器5内における設置箇所から下方に向かって、霧状化されることで生成された均一な流量の液滴を、例えば、ほぼ円錐形状の範囲といった所定の角度範囲にわたって分布して飛散するように噴出する。ヘッダ7は、スプレーノズル6へ冷却水を供給可能に当該スプレーノズル6を支持し、このノズルの箇所に応じて本体胴容器5内における垂直および水平方向に沿って、互いに平行するように複数個配列される。
供給管8は、ヘッダ7に連通され、このヘッダ7に供給するための冷却水を輸送する。環水槽9には、スプレーノズル6から噴出した液滴が流入する。以上説明した構成では、冷却水は、供給管8からヘッダ7に供給され、この冷却水がスプレーノズル6から液摘として本体胴容器5内に噴射され、この結果、排気蒸気が凝縮されることになる。
【0022】
本実施形態では、従来技術と比較して、本体胴容器5内の高さ方向のヘッダ7の位置が図1に示したように高さ1、高さ2、・・・、高さmの順に低くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さくなるという特徴を有する。
【0023】
図2は、第1の実施形態における直接接触式コンデンサの落下液滴における液滴温度Tと落下時間tとの関係の一例を示す図である。落下時間tは液滴の落下開始からの経過時間である。この図では、コンデンサに流入した排気蒸気における不凝縮ガス含有率の小さい順に曲線a、曲線b、曲線cが示される。つまり、これらの曲線について、この図における不凝縮ガス含有率の大小の関係はa<b<cである。
【0024】
本実施形態では、各ヘッダ7からスプレーノズル6により噴出される液滴が環水槽9に達する際の、以下の式(1)で定義する無次元温度Tが、図2に示すように0.70〜0.85の間となるようにして、液滴と排気流との熱交換および接触時間を規定する。
【0025】
=(Tm−T0)/(Ti−T0)」 …式(1)
式(1)のTmは液滴温度で、T0は液滴初期温度で、Tiは液滴表面温度である。このような規定を行なうことにより、ヘッダ7からの落下直後における液摘、つまり、ヘッダ7の位置が高い箇所における液摘の温度を従来技術と比較して上昇させることになり、上昇させない場合と比較して蒸気排気の凝縮性能が向上することになる。
【0026】
ただし、図2に示すように、落下開始からの経過時間が長くなるほど、時間あたりの温度上昇値が減少する。つまりヘッダ7の位置が低い箇所において、ヘッダ7の位置が高い箇所と同様にノルズ径が大きいスプレーノズル6から液摘を散布しても、ヘッダ7の位置が高い箇所と比較して凝縮性能低下の緩和の効果が見込めず、凝縮性能低下の緩和の効果が見込めない以上、大きな径を有する液滴を噴出させても無駄な圧力損失増大の原因となる。
【0027】
そこで、本実施形態では、ヘッダ7の位置が高い箇所ではスプレーノズル6のノズル径を大きくして凝縮性能低下を緩和する一方で、ヘッダ7の位置が低くなるにつれてスプレーノズル6のノズル径をヘッダ7の位置が高い箇所と比較して小さくして無駄な圧力損失が増大しないようにしている。
【0028】
このような構成では、コンデンサに流入した排気蒸気に不凝縮ガスが混入している状況における、スプレーノズル6から液滴を噴出した際の排気蒸気の凝縮性能低下を緩和させ、かつ低圧力損失を実現することが可能となる。また、排気蒸気に不凝縮ガスが混入している状況で、エゼクタにより不凝縮ガスを抽出しなくとも、排気蒸気の凝縮性能を向上させることができるので、当該エゼクタの使用によるプラント出力の低下を防止できる。
【0029】
以上のように、第1の実施形態における直接接触式コンデンサでは、本体胴容器5内のヘッダ7に取り付けられるスプレーノズル6から液滴が噴出してから環水槽9に到達するまでの当該液滴の無次元温度が0.70〜0.85の範囲内となるように、ヘッダ7高さが低くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径を小さくするようにしたので、排気蒸気に不凝縮ガスが混入している状況における凝縮性能低下を緩和するとともに無駄な圧力損失が増大しないようにすることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態における直接接触式コンデンサの構成のうち図1に示したものと同一部分の説明は省略する。
図3は、第2の実施形態における直接接触式コンデンサの構成例を示す横断面図である。
このコンデンサは、第1の実施形態と異なり、排気蒸気入口部3からの、当該入口部3を起点として出口部4に向かった流れ方向距離が、図3に示したように箇所1、箇所2、・・・、箇所nの順で長くなるにつれて、これらの箇所に設置されるヘッダ7に取り付けられるスプレーノズル6のノズル径が小さくなるようにしている。
【0031】
排気流の中に存在する液滴は、当該排気流から受ける外力(抗力)によって変形や振動を生ずる。液滴に作用する表面張力が大きい場合、この液滴は抗力を受けても分裂しない。ゆえに、液滴の表面張力に対して、当該液滴そのものを引き離そうとする力が強ければ、液滴は分裂する。
【0032】
図4は、排気流速と臨界液滴径の関係を示す図である。
臨界液滴径dは、臨界Weber数Weを用いて以下の式(2)で示される。
【0033】
=σ・We/ρu …式(2)
なお、ρは排気流密度で、uは排気流速で、σは液滴の表面張力である。
式(2)および図4に示すように、排気流速が高くなるほど臨界液滴径は著しく小さくなる。
【0034】
本実施形態では、図3に示すように、排気蒸気入口部3から任意の流れ方向位置までの流れ方向距離をxと定義して、当該排気蒸気入口部3を起点とした排気蒸気出口部4までの流れ方向距離をLと定義した際の、当該入口部から、長さ比x/L=0.5〜0.7の条件を満たす流れ方向位置までの間に設置されるヘッダ7にノズル径の大きなスプレーノズル6を取り付け、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を当該スプレーノズル6から噴出する。
【0035】
スプレーノズル6が臨界液滴径よりも大きな直径を有する液滴を噴出することにより、当該スプレーノズル6から噴射された液滴は、排気流によって分裂する。
液滴が分裂すると、当該液滴について、それまで周囲の気体に接していない新たな液面が出現する。これにより、分裂前と比較して熱伝達率の回復が見込まれるので、不凝縮ガスを含む排気流の凝縮がより有効になる。
【0036】
一方、コンデンサの排気蒸気入口部3からみて排気蒸気出口部4に近い位置では、蒸気が凝縮しているので、排気蒸気入口部3から前述した長さ比x/L=0.5〜0.7の条件を満たす流れ方向位置までの間と比較して排気流速が著しく低い。図4に示すように、排気流速が著しく低い条件下では臨界液滴径が著しく大きいので、この位置では、十分に大きな直径を有する液滴を噴出しない限り、液滴の分裂は期待できない。このように、液滴の分裂が期待できない以上、大きな直径を有する液滴を噴出させても無駄な圧力損失増大の原因となる。
【0037】
そこで、本実施形態では、前述した長さ比x/L=0.5〜0.7の条件を満たす流れ方向位置を起点として、この位置から排気蒸気出口部4までの間に設置されるヘッダ7に対し、前述した長さ比x/L=0.5〜0.7の条件を満たす流れ方向位置までの間に用いるスプレーノズル6と比較してノズル径の小さなスプレーノズル6を取り付け、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな直径を有する液滴を当該スプレーノズル6から噴出する。
【0038】
このような小さな直径の液滴をスプレーノズル6から噴出することで、排気蒸気から液滴への伝熱が促進されるので、出口部4に近い箇所における圧力損失を低減させることが可能となる。
【0039】
以上のように、第2の実施形態における直接接触式コンデンサでは、排気蒸気入口部3から、本体胴容器5の流れ方向長さに対する入口部3からの距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置では、ノズル径の大きなスプレーノズル6を設けて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出し、当該位置から排気蒸気出口部4までの位置ではノズル径の小さな前記スプレーノズル6を用いて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴出するので、排気蒸気から液滴への伝熱を促進し、かつ圧力損失を低減することが可能となる。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図5は、第3の実施形態における直接接触式コンデンサの構成例を示す横断面図である。
図6は、第3の実施形態における軸流排気タービンの排気流速分布の一例を示す図である。この図は、コンデンサ内部よりディフューザ2側を見た際の排気流速分布を示す。
本実施形態では、図6に示すように、本体胴容器5の内側では、軸流排気タービン1の軸方向と垂直の方向に沿った時計周りの旋回流Aが軸流排気タービン1から流入し、本体胴容器5の中心部近傍では内側・外側に比べて排気流速が高い無旋回流Bが軸流排気タービン1から流入し、本体胴容器5の外側では、軸流排気タービン1の軸方向と垂直の方向に沿った反時計周りの旋回流Cが軸流排気タービン1から流入する排気流速分布(旋回流の回転方向)を考慮している。
【0041】
本実施形態では、このような排気流速分布をもとに、以下に述べる手法にて、各スプレーノズル6のノズル径を設定する。なお、軸流排気タービン1の設計法および運転状態によって、排気流速分布が図6に示した場合と異なる場合でも、同様の手法にてノズル径を設定してよい。
【0042】
図6に示すように、本体胴容器5の断面の中心部から角部までの距離をRとして、本体胴容器5の断面の中心部からの距離をrと定義する。
本実施形態では、距離比r/Rが0.4≦r/R≦0.7の条件を満たす無旋回流Bの流入領域である領域Bでは、当該条件を満たさない領域のスプレーノズルのノズル径と比較して大きなノズル径を有するスプレーノズル6をヘッダ7に取り付けて、このスプレーノズル6から、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出する。
【0043】
第2の実施形態でも述べたように、スプレーノズル6が臨界液滴径よりも大きな直径を有する液滴を噴出することにより、当該スプレーノズル6から噴射された液滴は、排気流によって分裂する。
液滴が分裂すると、当該液滴について、それまで周囲の気体に接していない新たな液面が出現する。これにより、分裂前と比較して熱伝達率の回復が見込まれるので、不凝縮ガスを含む排気流の凝縮がより有効になる。
【0044】
一方、図6に示した旋回流Aの流入領域である領域Aおよび旋回流Cの流入領域である領域Cでは、領域Bと比較して排気流速が低い。図4に示すように、排気流速が低い条件下では臨界液滴径が大きいので、この位置では、十分に大きな直径を有する液滴を噴出しない限り、液滴の分裂は期待できない。このように、液滴の分裂が期待できない以上、大きな直径を有する液滴を噴出させても無駄な圧力損失増大の原因となる。
【0045】
そこで、本実施形態では、距離比r/Rが0≦r/R<0.4の条件を満たす領域、およびr/R>0.7の条件を満たす領域では、当該条件を満たさない領域のスプレーノズルのノズル径と比較して小さなノズル径を有するスプレーノズル6をヘッダ7に取り付けて、このスプレーノズル6から、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴射する。
【0046】
本実施形態では、このようなノズル径を有するスプレーノズル6を用いることで、排気流速が低い領域Aのうち距離比r/Rが0.4≦r/R≦0.7の領域に属する領域、つまり前述した大きなノズル径を有するスプレーノズル6が設けられる領域で噴出された液滴は、当該領域Aで分裂した後、旋回流の遠心力により、排気流速が高い領域Bへ運ばれる。この液滴は、当該領域Bのうち距離比r/Rが0.4≦r/R≦0.7の領域に属する領域、つまり前述した大きなノズル径を有するスプレーノズル6が設けられる領域で更に分裂する。このようにして、排気蒸気の更なる凝縮を促進することが出来る。
【0047】
本実施形態における直接接触式コンデンサを設計する際は、モデル試験や数値解析によって旋回流速や排気流速分布を予測して、上記手法を用いて各々の位置における液滴直径を設定すればよい。
【0048】
以上のように、第3の実施形態における直接接触式コンデンサでは、本体胴容器5の中心から角部への距離Rとして、中心からの距離rとした場合の距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域では所定のノズル径を有するスプレーノズル6を用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴射し、距離比r/Rが0.4以上かつ0.7以下の領域では大きなノズル径を有するスプレーノズル6を用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出するので、更なる蒸気の凝縮を促進することが出来る。
【0049】
第1の実施形態では、高さ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、mと低くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さいという特徴を有し、第2の実施形態では、流れ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、nと排気蒸気入口部3からの距離が長くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さいと説明したが、これらの特徴を組み合わせて、高さ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、mと低くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さく、かつ、流れ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、nと排気蒸気入口部3からの距離が長くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さくなるコンデンサを構成してもよい。これにより、第1の実施形態および第2の実施形態におけるそれぞれの効果を共に得ることができる。
【0050】
第1の実施形態では、高さ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、mと低くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さいという特徴を有し、第3の実施形態では、本体胴容器5の中心部から外側にかけての排気流速分布(旋回流の回転方向)を考慮してスプレーノズル6のノズル径を設定するという特徴を有すると説明したが、これらの特徴を組み合わせて、高さ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、mと低くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さく、かつ、本体胴容器5の中心部から外側にかけての排気流速分布を考慮してスプレーノズル6のノズル径を設定する構成としてもよい。これにより、第1の実施形態および第3の実施形態におけるそれぞれの効果を共に得ることができる。
【0051】
また、第2の実施形態および第3の実施形態の特徴を組み合わせて、流れ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、nと排気蒸気入口部3からの距離が長くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さく、かつ、本体胴容器5の中心部から外側にかけての排気流速分布を考慮してスプレーノズル6のノズル径を設定する構成としてもよい。これにより、第2の実施形態および第3の実施形態におけるそれぞれの効果を共に得ることができる。
【0052】
また、第1、第2および第3の実施形態の特徴を組み合わせて、高さ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、mと低くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さく、かつ、流れ方向のヘッダ7の位置が1、2、・・・、nと排気蒸気入口部3からの距離が長くなるにつれて、当該ヘッダ7に設置されるスプレーノズル6のノズル径が小さく、かつ、本体胴容器5の中心部から外側にかけての排気流速分布を考慮してスプレーノズル6のノズル径を設定する構成としてもよい。これにより、第1、第2および第3の実施形態におけるそれぞれの効果を共に得ることができる。
【0053】
これらの各実施形態によれば、内部に不凝縮ガスを含んだ排気流が流入した場合でも、凝縮性能低下を緩和し、かつ、低圧力損失の直接接触式コンデンサおよび軸流排気式蒸気タービン装置を提供することができる。
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…軸流排気タービン、2…ディフューザ、3…排気蒸気入口部、4…排気蒸気出口部、5…本体胴容器、6…スプレーノズル、7…ヘッダ、8…供給管、9…環水槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体胴容器を備え、
前記本体胴容器は、
タービン軸がほぼ水平に保持されて配設されてディフューザを備える軸流排気式蒸気タービンの下流側に設けられて当該ディフューザから排気蒸気が流入する排気蒸気入口部と、
前記入口部と対面するように配置された排気蒸気出口部と、
前記本体胴容器内における垂直および水平方向に複数個配列されたヘッダと、
前記ヘッダに連なって設けられ、前記蒸気タービンから排出される水蒸気である排気を復水させる冷却水を噴射する複数個のスプレーノズルと、
前記ヘッダに冷却水を供給する供給管と、
前記スプレーノズルから噴出した液滴が流入する環水槽とを有し、
前記液滴が噴出してから当該環水槽に到達するまでの当該液滴の無次元温度が0.70〜0.85の範囲内となるように、前記ヘッダ高さが低くなるにつれて、当該ヘッダに設置される前記スプレーノズルのノズル径を小さくするようにした
ことを特徴とする直接接触式コンデンサ。
【請求項2】
本体胴容器を備え、
前記本体胴容器は、
タービン軸がほぼ水平に保持されて配設されてディフューザを備える軸流排気式蒸気タービンの下流側に設けられて当該ディフューザから排気蒸気が流入する排気蒸気入口部と、
前記入口部と対向するように配置された排気蒸気出口部と、
前記本体胴容器内における垂直および水平方向に複数個配列されたヘッダと、
前記ヘッダに連なって設けられ、前記蒸気タービンから排出される水蒸気である排気を復水させる冷却水を噴射する複数個のスプレーノズルと、
前記ヘッダに冷却水を供給する供給管と、
前記スプレーノズルから噴出した液滴が流入する環水槽とを有し、
前記入口部から、前記本体胴容器の流れ方向長さに対する前記入口部からの距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置では、所定のノズル径を有する前記スプレーノズルを設けて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出し、
当該位置から前記排気蒸気出口までの位置では、前記距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置におけるノズル径より小さなノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴出する
ことを特徴とする直接接触式コンデンサ。
【請求項3】
本体胴容器を備え、
前記本体胴容器は、
タービン軸がほぼ水平に保持されて配設されてディフューザを備える軸流排気式蒸気タービンの下流側に設けられて当該ディフューザから排気蒸気が流入する排気蒸気入口部と、
前記入口部と対向するように配置された排気蒸気出口部と、
前記本体胴容器内における垂直および水平方向に複数個配列されたヘッダと、
前記ヘッダに連なって設けられ、前記蒸気タービンから排出される水蒸気である排気を復水させる冷却水を噴射する複数個のスプレーノズルと、
前記ヘッダに冷却水を供給する供給管と、
前記スプレーノズルから噴出した液滴が流入する環水槽とを有し、
前記本体胴容器の中心から角部への距離Rとして、前記中心からの距離rとした場合の距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域では所定のノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴射し、
距離比r/Rが0.4以上かつ0.7以下の領域では、前記距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域におけるノズル径より大きなノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出する
ことを特徴とする直接接触式コンデンサ。
【請求項4】
前記入口部から、前記本体胴容器の流れ方向長さに対する前記入口部からの距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置では、所定のノズル径を有する前記スプレーノズルを設けて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出し、
当該位置から前記排気蒸気出口までの位置では、前記距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置におけるノズル径より小さなノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴出する
ことを特徴とする請求項1に記載の直接接触式コンデンサ。
【請求項5】
前記本体胴容器の中心から角部への距離Rとして、前記中心からの距離rとした場合の距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域では所定のノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴射し、
距離比r/Rが0.4以上かつ0.7以下の領域では、前記距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域におけるノズル径より大きなノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直接接触式コンデンサ。
【請求項6】
前記液滴が噴出してから当該環水槽に到達するまでの当該液滴の無次元温度が0.70〜0.85の範囲内となるように、当該ヘッダ高さが低くなるにつれて、当該ヘッダに設置される前記スプレーノズルのノズル径を小さくするようにした
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の直接接触式コンデンサ。
【請求項7】
前記入口部から、前記本体胴容器の流れ方向長さに対する前記入口部からの距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置では、所定のノズル径を有する前記スプレーノズルを設けて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出し、
当該位置から前記排気蒸気出口までの位置では、前記距離の比率が0.5〜0.7の範囲内となる流れ方向位置までの位置におけるノズル径より小さなノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この位置における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴出し、
前記本体胴容器の中心から角部への距離Rとして、前記中心からの距離rとした場合の距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域では所定のノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも小さな径を有する液滴を噴射し、
距離比r/Rが0.4以上かつ0.7以下の領域では、前記距離比r/Rが0以上かつ0.4未満の領域、および距離比r/Rが0.7を超える領域におけるノズル径より大きなノズル径を有する前記スプレーノズルを用いて、この領域における排気蒸気の流速から求められる臨界液滴径よりも大きな径を有する液滴を噴出する
ことを特徴とする請求項1に記載の直接接触式コンデンサ。
【請求項8】
タービン軸がほぼ水平に保持されて配設されてディフューザを備える軸流排気式蒸気タービンと、
直接接触式コンデンサの本体胴容器とを備え、
前記本体胴容器は、
前記軸流排気式蒸気タービンの下流側に設けられて当該ディフューザから排気蒸気が流入する排気蒸気入口部と、
前記入口部と対面するように配置された排気蒸気出口部と、
前記本体胴容器内における垂直および水平方向に複数個配列されたヘッダと、
前記ヘッダに連なって設けられ、前記蒸気タービンから排出される水蒸気である排気を復水させる冷却水を噴射する複数個のスプレーノズルと、
前記ヘッダに冷却水を供給する供給管と、
前記スプレーノズルから噴出した液滴が流入する環水槽とを有し、
前記液滴が噴出してから当該環水槽に到達するまでの当該液滴の無次元温度が0.70〜0.85の範囲内となるように、当該ヘッダ高さが低くなるにつれて、当該ヘッダに設置される前記スプレーノズルのノズル径を小さくするようにした
ことを特徴とする軸流排気式蒸気タービン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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