説明

直接接触法による超音波探傷装置

【課題】気泡が入らないように探触子に水を確実に供給することができる、直接接触法による超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】直接接触法による超音波探傷装置であって、
給水ホースと、該給水ホースからの給水を内部に取込む取付けキャップと、
該取付けキャップとの間に、給水を一時溜める水溜部と該水溜部の給水中の気泡を分離する空間部とを形成する給水用キャップとからなる給水部と、
被検体と直接に接触し超音波を発信および被検体からの反射波を受信する探触子とを具備し、
前記給水部を着脱可能なように、前記探触子と一体化し、
前記給水用キャップに設けた溝または穴を通して、前記探触子の直上に給水できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体と探触子が直接接する直接接触法による超音波探傷装置に係り、特に、気泡が入らないように探触子近傍に水を確実に供給するこができる、直接接触法による超音波探傷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直接接触法を用いた超音波探傷装置では、正確な探傷を行うためには、探触子近傍への給水を確実に行うことが必要である。加えて、ノイズ低減のためには、水の中に気泡が入らないようにする必要もある。また、探触子近傍への給水は、被検体と探触子が直接接する直接接触法を用いた超音波探傷装置では、探触子を痛めないという探触子保護の役割もある。
【0003】
従来における、給水中から気泡を除去する技術としては、例えば、特許文献1または特許文献2に開示された技術がある。これらの技術は、探触子と離れた場所で、給水の上流側にて、気泡やごみなどを除去する技術である。
【0004】
また、探傷装置自体で気泡を除去しようとする技術としては、例えば、特許文献3または特許文献4に開示された技術がある。
【0005】
特許文献3には、探触子ホルダ下面に水溜り凹部を設けることにより、流水域でなく、溜まった水中で探傷を実施する技術が開示されている。また、特許文献4には、気泡抜き溝を設ける技術が開示されている。これらは、いずれも、「局部水浸法」という、被検体の一部を水の中に浸し、探触子から送信された超音波パルスが長い水距離を伝播してから被検体に入射するという方式を用いた超音波探傷装置に関する技術であり、本発明が対象としている直接接触法を用いた超音波探傷装置とは方式が異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭56−13177号公報
【特許文献2】実公平5−44781号公報
【特許文献3】実開平2−47568号公報
【特許文献4】特開昭58−92949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1および特許文献2では、当該除去装置より下流でかつ探触子より上流で新たに発生する気泡は除去できない、また除去装置が大掛かりで移動が困難であるという問題がある。
【0008】
また、上述した特許文献3は、給水路と排水路とを示しているだけで、特段の方策は示されていない。そして、上述した特許文献4では、気泡抜き溝を設けているものの、水溜部の断面積に対して空気溝は小さいため、気泡消滅効果が小さいという問題、また、探触子と被検体との間の水の気泡を抜く構造であるので、気泡が抜け切れていない水を介して探傷作業がおこなわれる可能性を否定できないという問題もある。
【0009】
本発明では、これら従来技術の問題点に鑑み、気泡が入らないように探触子に水を確実に供給することができる、直接接触法による超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の発明によって解決できる。
【0011】
[1] 直接接触法による超音波探傷装置であって、
給水ホースと、該給水ホースからの給水を内部に取込む取付けキャップと、
該取付けキャップとの間に、給水を一時溜める水溜部と該水溜部の給水中の気泡を分離する空間部とを形成する給水用キャップとからなる給水部と、
被検体と直接に接触し超音波を発信および被検体からの反射波を受信する探触子とを具備し、
前記給水部を着脱可能なように、前記探触子と一体化し、
前記給水用キャップに設けた溝または穴を通して、前記探触子の直上に給水できるようにすることを特徴とする直接接触法による超音波探傷装置。
【0012】
[2] 上記[1]に記載の直接接触法による超音波探傷装置において、
前記取付けキャップは空気抜き用の貫通穴を具備することを特徴とする直接接触法による超音波探傷装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気泡がなくなった水を探触子に供給しながら探傷することができるので、給水不足を生ずることなく、かつ気泡によるノイズが入らない高精度な超音波探傷が実現できる。
【0014】
また、給水部を着脱可能なように探触子と一体化できるようにしたことにより、給水部を有しない既存の探触子にも適用可能であるとともに、もし探触子に故障や経時劣化などといった異常が生じても、給水部を分離して新たな探触子に対して継続使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を実施するための第1の実施形態を示す図である。
【図2】給水用キャップの構造例を示す図である。
【図3】給水部に給水されている様子を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態において給水部に給水されている様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明を実施するための第1の実施形態を示す図である。1は給水ホース、2は取付けキャップ、3は給水用キャップ、4は探触子、および8は給水部をそれぞれ表している。
【0017】
給水ホース1を取付けた取付けキャップ2と給水用キャップ3とから、給水部8を形成する。探触子4は、被検体と直接に接触し超音波を発信および被検体からの反射波を受信する。
【0018】
図2は、給水用キャップの構造例を示す図である。図2(a)は正面図、(b)は上面図を示しており、給水用キャップ3の側面ならびに上面には、給水された水を探触子の直上に導く給水路を形成するために、溝31が6箇所設けられている。なお、上面の中心から円周方向への溝31は、給水用キャップ3の側面である円周面に設けた溝31への水の流れを確実にしようとするものであり、必ずしも必須のものではない。また、溝の代わりに、給水用キャップを貫通するように穴を設けて、給水路を形成するようにしてもよい。
【0019】
図3は、給水部に給水されている様子を模式的に示す図である。給水ホース1を取付けた取付けキャップ2と給水用キャップ3とから形成される給水部8に、給水ホース1を経由して給水されている様子を表している。
【0020】
取付けキャップ2と給水用キャップ3とで形成される上部には、給水ホース1を経由して給水された水5が一時に溜まる水溜部6と、この水溜部6に溜まった給水中の気泡の分離による空間部7ができる。そして、気泡の分離した水は、水溜部6から給水用キャップ3の側面に設けた溝31を経由して探触子4の直上に供給される。
【0021】
このように、気泡がなくなった水を探触子に供給しながら探傷することができるので、給水不足を生ずることなく、かつ気泡によるノイズが入らない高精度な超音波探傷が実現できる。
【0022】
また、上記給水部を着脱可能なように探触子と一体化できるようにしたことにより、給水部を有しない既存の探触子にも適用可能であるとともに、もし探触子に故障や経時劣化などといった異常が生じても、給水部を分離して新たな探触子に対して継続使用可能である。
【0023】
図4は、本発明の第2の実施形態において給水部に給水されている様子を模式的に示す図である。この実施形態においては、取付けキャップ2に空気抜き用の貫通穴21を設けている。これは、長時間の使用により空気が取付けキャップ上部に滞留すると、探触子に供給される水に気泡が混入して、ノイズ発生の原因となるおそれがあるためである。
【0024】
貫通穴を設けることにより、取付けキャップ上部に溜まった空気を外部に排気することができるようにするものである。これにより、長時間にわたり連続的に探傷作業を実施する場合にも、気泡がなくなった水を探触子に供給しながら測定することができるので、気泡によるノイズが入らない高精度な超音波探傷をさらに安定して継続できて好ましい。
【0025】
貫通穴を設ける場所は特に問わないが、空気が抜けやすい場所に設置するようにする。取付けキャップの内部において空気は上部に溜まることから、取付けキャップの上面または/および側面上部に空気抜き用貫通穴を設けることにより、さらに効果を発揮する。
【符号の説明】
【0026】
1 給水ホース
2 取付けキャップ
3 給水用キャップ
4 探触子
5 水
6 水溜部
7 空間部
8 給水部
21 空気抜き用の貫通穴
31 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接接触法による超音波探傷装置であって、
給水ホースと、該給水ホースからの給水を内部に取込む取付けキャップと、
該取付けキャップとの間に、給水を一時溜める水溜部と該水溜部の給水中の気泡を分離する空間部とを形成する給水用キャップとからなる給水部と、
被検体と直接に接触し超音波を発信および被検体からの反射波を受信する探触子とを具備し、
前記給水部を着脱可能なように、前記探触子と一体化し、
前記給水用キャップに設けた溝または穴を通して、前記探触子の直上に給水できるようにすることを特徴とする直接接触法による超音波探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の直接接触法による超音波探傷装置において、
前記取付けキャップは空気抜き用の貫通穴を具備することを特徴とする直接接触法による超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−54024(P2013−54024A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230286(P2011−230286)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】